(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085866
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20230614BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200154
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】助川 新
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC47
3D131GA01
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】電子タグが埋設されている範囲を示すことができるタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ100は、表面よりも内側に配置された電子タグ7と、電子タグ7の位置を示す表示部8と、を備え、表示部8は、表面に配置され、電子タグ7の形状の表面への射影像を包含する範囲に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面よりも内側に配置された電子タグと、
前記電子タグの位置を示す表示部と、を備え、
前記表示部は、
前記表面に配置され、
前記電子タグの形状の前記表面への射影像を包含する範囲に形成されているタイヤ。
【請求項2】
前記表示部は、前記電子タグの形状の前記表面への正射影像を包含する範囲に形成されている請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記表示部は、前記電子タグの埋め込み深さを示す請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記表示部は、前記電子タグを包含する範囲にわたり形成されている請求項1から3の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記表示部は、前記周方向における、前記電子タグの位置を指し示す補助表示部を含む請求項1から4の何れか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トランスポンダを備えた空気入りタイヤが記載されている。トランスポンダは、タイヤに関する種々の情報や使用中のタイヤのデータを提供可能としている。このタイヤでは、トランスポンダは、送受信機能及び記憶機能を有し、例えばサイドウォール部に配置される。そして、トランスポンダが配置されたサイドウォールのタイヤ外表面又はトランスポンダが配置されたサイドウォール部とは逆側のサイドウォール部のタイヤ外表面に、トランスポンダの位置を示す識別標識が設けられている。トランスポンダの位置を示す識別標識は、色又は形状に基づいて他の部位から区別される。識別標識の色がタイヤ外表面の色とは異なる場合には、色彩、明度、色相のいずれかが異なる場合が含まれる。識別標識が立体形状である場合は、タイヤ外表面から窪んだ凹形状、タイヤ外表面から突出した凸形状、或いは、凹形状と凸形状とを組み合わせた形状等が採用される。
【0003】
特許文献2には、タイヤなどゴム含有製品からのゴムを含むゴム材料を処理するための方法が記載されている。タイヤなどゴム含有製品は、ゴムとその他の材料とを分離して処理されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-056443号公報
【特許文献2】特表2013-512134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に記載されるように、トランスポンダとして機能する電子チップ(いわゆる電子タグ又はRFIDタグ、以下、単に電子タグと記載する)をタイヤの内部又は内表面に設ける場合がある。そして、電子チップとの通信により、タイヤに関する情報を外部端末に提供可能とする場合がある。これにより、タイヤの型式、流通販売に係る情報、使用履歴やタイヤを取り付けた車両の走行情報等を把握したり、タイヤのリサイクル時における必要情報(例えば、タイヤの構成材料に係る情報)をタイヤから取得したり、タイヤの適正な廃棄、リサイクルに係るトレーサビリティの管理が容易となる。電子タグの位置がタイヤの外表面に表示されていると、電子タグから情報を取得する端末装置によって情報を取得する場合に、センサをかざす位置をその表示によって把握することができるため便利である。また、タイヤを廃棄又はリサイクルする際の分別処理において電子タグをタイヤから分別する際に、その電子タグの位置を知ることができるため便利である。
【0006】
ここで、電子タグがタイヤ内部に埋設されているような場合には、タイヤをくり抜いて電子タグを除去して分別する必要が生じる場合がある。そのため、電子タグの位置として、電子タグが設けられている範囲を把握可能とすることが望まれる。
【0007】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、電子タグが埋設されている範囲を示すことができるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るタイヤは、
表面よりも内側に配置された電子タグと、
前記電子タグの位置を示す表示部と、を備え、
前記表示部は、
前記表面に配置され、
前記電子タグの形状の前記表面への射影像を包含する範囲に形成されている。
【0009】
上記構成によれば、タイヤに設けられた電子タグの位置をわかりやすく示すことができる。また、射影像の範囲によって電子タグが埋設されている範囲を示すことができる。タイヤの廃棄やリサイクルにあたり、分別作業を行う場合には、表示部が示す射影像にしたがって、タイヤをくり抜くなどすれば、電子タグを容易にタイヤから除去することができる。
【0010】
本発明に係るタイヤでは、更に、
前記表示部は、前記電子タグの形状の前記表面への正射影像を包含する範囲に形成されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、表面に対して垂直な方向における、タイヤの内部に電子タグが埋設されていることを示すことができる。すなわち、表面に対して垂直な方向にタイヤをくり抜くなどすれば、電子タグをタイヤから除去することができる。
【0012】
本発明に係るタイヤでは、更に、
前記表示部は、前記電子タグの埋め込み深さを示してもよい。
【0013】
上記構成によれば、電子タグがタイヤの表面からどのくらいの深さに埋設されているのかを示すことができる。すなわち、表示部が示す深さまでタイヤをくり抜くなどすれば、電子タグをタイヤから除去することができる。
【0014】
本発明に係るタイヤでは、更に、
前記表示部は、前記電子タグを包含する範囲にわたり形成されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、表示部が示す範囲全体を分別の対象とすることで、確実に電子タグを取り除くことができるようになる。すなわち、表示部が示す範囲でタイヤをくり抜くなどすれば、電子タグをタイヤから確実に除去することができる。
【0016】
本発明に係るタイヤでは、更に、
前記表示部は、前記周方向における、前記電子タグの位置を指し示す補助表示部を含んでもよい。
【0017】
上記構成によれば、作業者は、タイヤの周方向におけるどちら側に電子タグが配置されているのかを容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係るタイヤにおける周方向に交差する断面であって、タグ及び表示部を含む部分の断面図である。
【
図3】
図1の断面図における、サイドウォール部の部分を拡大した拡大断面図である。
【
図4】タグと表示部との位置関係を示す概念図である。
【
図5】
図2における、サイドウォール部に配置された表示部の近傍を拡大して表示した図である。
【
図6】第二実施形態に係るタイヤにおける周方向に交差する断面であって、表示部を含む部分の断面図である。
【
図8】変形例1の表示部を備えたタイヤのサイドウォール部の部分を拡大した拡大断面図である。
【
図9】変形例2の表示部を備えたタイヤのサイドウォール部の部分を拡大した拡大断面図である。
【
図10】別のタイヤのサイドウォール部における表示部の近傍を拡大して表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るタイヤについて説明する。
【0020】
〔第一実施形態〕
図1、
図2には本実施形態に係るタイヤ100を示している。
図1には、周方向C(
図2参照)に交差するタイヤ100の断面を示している。
図2には、タイヤ100の斜視図を示している。タイヤ100は、
図1に示すように、タイヤ100の表面よりも内側に配置された電子タグ7(以下、タグ7と記載する)と、タグ7の位置を示す表示部8と、を備えている。タグ7の一例は、いわゆるRFIDタグであり、通信を行うためのアンテナ回路、記憶回路及び制御回路を含む電子回路装置や電子チップである。以下、タイヤ100について詳述する。
【0021】
タイヤ100は、
図1、
図2に示すように、タイヤ100の側部に配置され、タイヤ100をリムに固定させるビード部1、タイヤ100の側部であるサイドウォール部2及び路面と接するトレッド部3を備えている。
【0022】
タイヤ100は、
図2に示すように、軸心Gを中心とする、およそ円形状の環状に形成されている。すなわち、トレッド部3、サイドウォール部2及びビード部1は、軸心Gを共通の中心とする、およそ円形状の環状である。
【0023】
以下の説明では、
図1,
図2に示すタイヤ100の幅方向W、周方向C(
図2参照)及び径方向Rは、トレッド部3の幅方向、周方向及び径方向と同じ意味である。径方向Rにおいて、環状の外側を径方向外側、環状の内側を径方向内側と称する。
【0024】
タイヤ100は、
図1に示すように、内部構造として、タイヤ100の骨格を形成するコード層であるカーカス5、ビード部1の内部骨格となり、カーカス5を支持するビードコア4及びトレッド部3の表面とカーカス5の間において周方向Cに沿って張られた補強帯であるベルト6を有している。
【0025】
ビード部1、サイドウォール部2及びトレッド部3はそれぞれ合成ゴムを含む。ビード部1及びサイドウォール部2の合成ゴムをサイドゴムと称する。トレッド部3の合成ゴムをトレッドゴムと称する。ビードコア4、カーカス5及びベルト6はサイドゴム及びトレッドゴムに包埋されている。タイヤ100では、トレッド部3の幅方向Wにおける両端部に、サイドウォール部2の径方向外側の端部が一体に接続されている。サイドウォール部2の径方向内側の端部にはビード部1が一体に接続されている。すなわち、周方向Cに交差するタイヤ100の断面は、アルファベットのC字形状となっている。本実施形態における、タイヤ100の表面とは、タイヤ100のC字形状における、C字の弧の外側の表面(以下、外表面と記載する場合がある)と、内側の表面(以下、内表面と記載する場合がある)とのことをいう。
【0026】
トレッド部3には、
図1,
図2に示すように、トレッドパターンが形成されており、外周面が路面に接する複数の凸部30(踏面の一例)と、凸部30に対して相対的に径方向内側に凹んだ複数の凹部31とが形成されている。凹部31は、例えば、周方向溝である。なお、外周面とは、タイヤ100における、トレッド部3の径方向外側の面のことである。
【0027】
本実施形態におけるタイヤ100は、上述のごとく、タグ7と表示部8とを更に備えている。
図1に示すタイヤ100の断面は、周方向C(
図2参照)に沿って見たタイヤ100の断面であって、タグ7及び表示部8を含む部分の断面を示している。
【0028】
図1、
図2では、タグ7が、一方のサイドウォール部2のビード部1に近い側における、タイヤ100の内部(表面より内側)であって、タイヤ100の幅方向Wにおける、カーカス5(
図2参照)よりも外側に配置されている場合を例示している。すなわち、タグ7は、タイヤ100の側部に埋設(配置)されている。なお、幅方向Wにおける外側とは、トレッド部3からみてサイドウォール部2の側と同じ側である。
【0029】
図3には、
図1で示した断面図における、サイドウォール部2の部分を拡大した拡大断面図を示している。
図3に示すように、表示部8は、サイドウォール部2に形成されている。
【0030】
表示部8は、
図3に示すように、タグ7から最も近いタイヤ100の外表面であるサイドウォール部2の外表面に向けてタグ7の位置から下した当該外表面に対する垂線が、当該外表面と交差する位置に配置されている。これにより、表示部8は、タグ7が埋設されている範囲をわかりやすく示すことができる。これにより、タイヤ100を廃棄やリサイクルする際に、タグ7の除去が容易となる。また、作業者が端末装置を用いてタグ7との通信を行うような場合においては、表示部8により作業者にタグ7の位置を示すことができるので、作業者は容易にタグ7の位置を把握して、円滑にタグ7との通信を行える。
【0031】
図2、
図4及び
図5に基づいて、表示部8の位置について詳述する。
図4には、表示部8の設置位置を説明するための、タグ7と表示部8との位置関係を示す概念図を示している。
図5は、
図2における、サイドウォール部2に配置された表示部8の近傍を拡大して表示した図である。
図2、
図4及び
図5では、タグ7の外形状をサイドウォール部2の外表面に投影した正射影像(射影像の一例)を、タグ射影像7sとして示している。
図4に示すように、本実施形態において、表示部8は、サイドウォール部2の外表面を含む範囲であって、タグ射影像7sを包含する範囲に形成される。なお、本実施形態において、タグ7の外形状をサイドウォール部2の表面に投影した正射影像、すなわち、タグ射影像7sとは、タグ7の中心から最も近いタイヤ100の表面(本実施形態ではサイドウォール部2の外表面)に向けてタグ7の中心から下した当該外表面に対する垂線に沿う方向において、タグ7の外形状を、その表面に投影した像である。
【0032】
表示部8は、
図3から
図5に示すように、タイヤ100の表面において、タグ射影像7s(
図2、
図4参照)を包含する範囲に形成されるとよい。これにより、タイヤ100の表面に対して垂直な方向における、タイヤ100の内部にタグ7が埋設されている位置を示すことができる。すなわち、表面に対して垂直な方向にタイヤ100(本実施形態では、サイドウォール部2)をくり抜くなどすれば、タグ7をタイヤ100から除去することができる。
【0033】
表示部8は、
図3から
図5に示すように、タイヤ100の表面において、タグ射影像7s(
図2、
図4参照)を包含し、且つ、タグ射影像7sよりも広い範囲に形成されること
が好ましい。これにより、タグ7をタイヤ100から除去する際に、表示部8が形成されている範囲をくり抜けば、より確実にタグ7をタイヤ100から除去することができるようになる。すなわち、表示部8が示す範囲全体を分別の対象とすることで、確実にタグ7を取り除くことができるようになるのである。
【0034】
表示部8は、トレッド部3における他の部分とは異なる色の素材(異色素材)で形成するとよい。これにより、表示部8の表示を色の違いで分かりやすく識別することができる。なお、異なる色とは、色彩、色調、明度、模様、光沢など、目視によって相違を把握できる違いがあること、すなわち、目視による識別性を有することを意味する。異色素材には、発光又は蓄光する素材も含まれる。本実施形態では、表示部8として、異色部87が形成されている場合を例示している。異色素材は、他の部分とは異なる色の顔料をゴムに添加したものや、ゴムからカーボンを除いたりしたものを用いてよい。
【0035】
表示部8では、トレッド部3における他の部分とは異なる色とすることで目視による位置や範囲の識別性を持たせる以外に、その色味(色彩、色調、明度、模様、光沢など)によって、タグ7の埋め込み深さを示すようにしてもよい。例えば、表示部8が黄色の場合は、表面から1mm以上5mm未満の深さ、表示部8が青色の場合は、表面から5mm以上15mm未満の深さ、といった具合である。
【0036】
表示部8では、その色味(色彩、色調、明度、模様、光沢など)によってタグ7の埋め込み深さを示す以外に、形状によってタグ7の埋め込み深さを示すようにしてもよい。例えば、表示部8が二重の長円で描かれる場合は、表面から1mm以上5mm未満の深さ、表示部8が二重の長方形で描かれる場合の場合は、表面から5mm以上15mm未満の深さ、といった具合である。
【0037】
表示部8としての異色部87は、タイヤ100の表面に単に着色のみされるような態様でもよいが、
図3に示すように、タイヤ100の表面(本実施形態ではサイドウォール部2の外表面)からタイヤ100の内部にかけて形成されていることが好ましい。つまり、表示部8としての異色部87は、異色素材がタイヤ100の表層部において、所定の厚みを有し、表層部に埋め込まれるようにして形成されているとよい。これにより、タイヤ100がある程度使用されて表面が摩耗した状態であっても、表示部8の識別性の低下を回避することができる。
【0038】
本実施形態において異色部87は、サイドウォール部2の外表面(タイヤ100の外表面)からタイヤ100の内部であって、タグ7よりも外表面側(本実施形態では幅方向Wにおける外側)の範囲にわたり、形成されている。
【0039】
〔第二実施形態〕
第二実施形態に係るタイヤ100は、第一実施形態に係るタイヤ100と、タグ7と表示部8との配置が異なり、その他は同じである。
【0040】
本実施形態におけるタイヤ100では、タグ7は、
図6、
図7に示すように、トレッド部3におけるタイヤ100の内部であって、カーカス5よりも径方向Rにおける外側に埋設されている。
【0041】
表示部8は、
図6、
図7に示すように、タグ7から最も近いタイヤ100の外表面であるトレッド部3の外表面に向けてタグ7の位置から下した当該外表面に対する垂線が、当該外表面と交差する位置に配置されている。本実施形態では、タグ射影像7s(
図7参照)を包含し、且つ、タグ射影像7sよりも広い範囲にわたり、表示部8としての異色部87が配置されている。すなわち、異色部87は、
図7に示すように、タグ射影像7sよりも、周方向C及び幅方向Wにおいて広い範囲にわたり配置されている。本実施形態では、異色部87が、幅方向Wにおいて、タグ射影像7sが位置しているトレッド部3の中央の凸部30と、その凸部30の幅方向Wにおける両方の凹部31に渡り、配置されている。
【0042】
表示部8としての異色部87は、タイヤ100の表面に単に着色のみされるような態様でもよいが、
図6に示すように、タイヤ100の表面(本実施形態ではサイドウォール部2の外表面)からタイヤ100の内部にかけて形成されていることが好ましい。つまり、表示部8としての異色部87は、異色素材がタイヤ100の表層部において、所定の厚みを有し、表層部に埋め込まれるようにして形成されているとよい。これにより、タイヤ100がある程度使用されて表面が摩耗した状態であっても、表示部8の識別性の低下を回避することができる。
【0043】
なお、異色部87は、
図6に示す状態よりも、更に厚く形成してもよい。異色部87を分厚く形成すればするほど、タイヤ100が摩耗しても表示部8の識別性を維持することができるようになる。例えば、凸部30の表面から、トレッド部3の径方向Rの内側内部(トレッド部3の内部)であって、凹部31の谷底部分までの深さ(径方向Rにおける外表面からの深さ)の範囲にわたり、異色部87を形成してもよい。
【0044】
また、
図6、
図7に示した表示部8の配置によれば、表示部8の一部が凹部31に渡って形成されているため、凸部30が大きく摩耗した場合であっても、凹部31の表示部8が残る。そのため、表示部8が識別性を失うことを回避することができる。
【0045】
本実施形態において異色部87は、トレッド部3の外表面(タイヤ100の外表面)からタイヤ100の内部であって、タグ7よりも外表面側(径方向Rにおける外側)の範囲にわたり、形成されている。
【0046】
(変形例の説明)
以下では、上記実施形態の変形例を説明する。
【0047】
(変形例1)
上記実施形態では、表示部8としての異色部87は、タイヤ100の外表面からタイヤ100の内部であって、タグ7よりも外表面側の範囲にわたり、形成されている場合を説明した。しかし、異色部87は、
図8に示すように、タグ7を包含する(包み込む)範囲にわたり、形成してもよい。なお、
図8は、第一実施形態で例示した異色部87を変形した場合を例示している。このように異色部87を形成すれば、タグ7をタイヤ100から除去するにあたり、色の違いを目安にして異色部87全体をくり抜くなどにより除去することで、タグ7を確実に除去できるようになる。
【0048】
(変形例2)
上記実施形態では、表示部8は、タグ7から最も近いタイヤ100の外表面に向けてタグ7の位置から下した当該外表面に対する垂線が、当該外表面と交差する位置に配置されている場合を説明した。しかし、表示部8は、タグ7から最も近いタイヤ100の内表面に向けてタグ7の位置から下した当該内表面に対する垂線が、当該内表面と交差する位置に配置されてもよい。具体的には、表示部8は、
図9に示すように、タイヤ100の内表面を含む領域であって、タグ7の外形状をタイヤ100の内表面に投影した正射影像を包含する範囲に形成してもよい。なお、
図9は、第一実施形態で例示した表示部8を変形した場合を例示している。すなわち、
図9では、タイヤ100の外表面側に形成した表示部8としての異色部87と、タイヤ100の内表面側に形成した表示部8としての第二異色部88とが形成されている場合を示している。第二異色部88により、表示部8は、タグ7が埋設されている範囲を、タイヤ100の内表面側においてもわかりやすく示すことが
できる。そのため、内表面側からタイヤ100をくり抜くなどしてタグ7をタイヤ100から除去することもできるようになる。
【0049】
なお、
図9では、異色部87と、第二異色部88とが形成されている場合を示しているが、異色部87は形成せず、第二異色部88のみを形成してもよい。このようにすれば、外表面側におけるタイヤ100の外観、意匠に影響させることなくタグ7が埋設されている範囲を示すことができる。
【0050】
以上のようにして、タイヤに設けられた電子タグが埋設されている範囲を示すことができる。
【0051】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、表示部8としての異色部87や第二異色部88が、タグ7から最も近いタイヤ100の表面に向けてタグ7の位置から下した当該表面に対する垂線が、当該表面と交差する位置に配置されている場合のみを示した。そして、表示部8が、タグ7が埋設されている範囲を示す場合を説明した。しかしながら、表示部8は、タグ7が埋設されている範囲を示す以外に、タグ7が埋設されている位置を指し示す補助的な表示部を含んでもよい。
【0052】
図10では、タイヤ100の周方向Cにおけるタグ7と同じ位置であって、トレッド部3の表面に、表示部8としての補助表示部81を配置している場合を示している。これにより、表示部8としての補助表示部81は、タイヤ100の周方向Cにおけるタグ7の位置を指し示すことができる。なお、
図10に示す例では、補助表示部81が、トレッド部3において、幅方向Wにおける、タグ7に寄せた側に配置されている場合を示している。これにより、補助表示部81はタグ7が幅方向Wにおけるいずれの側にあるかを更に指し示している。
【0053】
例えば、上記第一実施形態で示したように、タグ7がタイヤ100の側部に位置している場合、例えばタイヤ100が平積みされた場合においては、異色部87が隣接する別のタイヤにより隠れてしまう場合がある。しかし、補助表示部81がトレッド部3にも設けられていれば、トレッド部3が露出して目視できる状態であれば、作業者は、タイヤ100の周方向Cにおける、タグ7と同じ位置に配置された補助表示部81を目印として、タイヤ100の周方向Cにおけるタグ7の位置を容易に把握することができる。また、補助表示部81の幅方向Wにおける位置を手掛かりにして、タグ7が幅方向Wにおけるどちらの側にあるかを容易に把握することができる。これにより、タイヤ100を廃棄やリサイクルする際に、タグ7の除去が更に容易となる。また、作業者がタグ7との通信を行うような場合においては、補助表示部81を手掛かりに、作業者は異色部87、すなわちタグ7の位置を容易に把握して、円滑にタグ7との通信を行える。
【0054】
また、
図11に示すように、タイヤ100の周方向Cにおけるタグ7とは異なる位置に、周方向Cにおけるタグ7の位置を指し示す、表示部8としての方向表示部89を配置してもよい。
【0055】
図11に示す例では、タイヤ100の周方向Cにおけるタグ7と同じ位置に対して、タイヤ100の周方向Cの前後にひとつずつ方向表示部89,89をトレッド部3の外表面に配置した場合を例示している。方向表示部89は、例えば三角形状に形成された矢印のような表示として形成されており、タイヤ100の周方向Cにおけるタグ7の位置を指し示すようになっている。これにより、作業者は、異色部87や補助表示部81が露出していない場合でも、方向表示部89によってタイヤ100の周方向Cにおけるタグ7の位置を知り、これを手掛かりに、作業者は、異色部87、すなわちタグ7の位置を容易に把握
して、タグ7との通信や、タグ7の除去を行える。
【0056】
(2)上記実施形態では、タグ7がタイヤ100に埋設されている場合を説明したが、タグ7の一部が、タイヤ100の内表面に露出していてもよい。この場合であっても、表示部8としての異色部87又は第二異色部88は、タグ7が埋設されている範囲を示すことができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、タグ射影像7sがタグ7の外形状をタイヤ100の表面に投影した正射影像である場合を例示して説明した。しかし、タグ射影像7sは、タグ7の外形状をタイヤ100の表面に対して傾斜した角度、すなわち、タイヤ100の表面に対して斜めに投影した射影像であってもよい。この場合、表示部8としての異色部87は、タグ7を包含する範囲にわたり、形成しておくことが好ましい。
【0058】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、タイヤに適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 :ビード部
100 :タイヤ
2 :サイドウォール部
3 :トレッド部
30 :凸部
31 :凹部
38 :異形部
4 :ビードコア
5 :カーカス
6 :ベルト
7 :タグ(電子タグ)
8 :表示部
81 :補助表示部
87 :異色部
88 :第二異色部
89 :方向表示部
C :周方向
R :径方向
W :幅方向