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特開2023-85868電子デバイス積層体、タイヤ及び電子デバイス取外し方法
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  • 特開-電子デバイス積層体、タイヤ及び電子デバイス取外し方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085868
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】電子デバイス積層体、タイヤ及び電子デバイス取外し方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200157
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】助川 新
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA20
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】過度な力を要さず容易に貼付対象から電子デバイスを除去することができる、電子デバイス積層体を、提供する。
【解決手段】本発明の電子デバイス積層体10は、電子デバイス11と、電子デバイス11を貼付対象に貼付するための接着層15と、を含む、電子デバイス積層体10であって、電子デバイス11と接着層15との間に、所定温度以上の熱で溶融し剥離する、剥離層14を、備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスと、前記電子デバイスを貼付対象に貼付するための接着層と、を含む、電子デバイス積層体であって、
前記電子デバイスと前記接着層との間に、所定温度以上の熱で溶融する、剥離層を、備えていることを特徴とする、電子デバイス積層体。
【請求項2】
前記電子デバイスは、ICチップ及び前記ICチップに接続されたアンテナを有する、RFタグである、請求項1に記載の電子デバイス積層体。
【請求項3】
前記剥離層は、熱可塑性樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載の電子デバイス積層体。
【請求項4】
前記電子デバイスの少なくとも外表面を覆う、保護層を、さらに備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子デバイス積層体。
【請求項5】
前記電子デバイスと前記剥離層との間に、クッション層を、さらに備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子デバイス積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子デバイス積層体が、タイヤ本体の内表面又は外表面に貼付されていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項7】
請求項6に記載のタイヤから前記電子デバイスを取り外すための、電子デバイス取外し方法であって、
前記電子デバイス積層体における前記剥離層を、前記所定温度以上に加熱して溶融する、剥離層溶融工程を、含むことを特徴とする、電子デバイス取外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス積層体、タイヤ及び電子デバイス取外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、RFタグ等の電子デバイスを含む電子デバイス積層体の接着層を介して、当該電子デバイスをタイヤ等のゴム物品の表面に貼付した構成が、知られている。この構成により、例えば、RFタグの記憶部から取得されるさまざまな情報を、当該タイヤ等のゴム物品の保守サービス等に活用したりすることができる。
例えば、特許文献1には、RFIDタグが接着層を介してタイヤ内面に貼付されたタイヤが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-130345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、タイヤ等のゴム物品のリサイクル時には、電子デバイスに含まれる可能性のある樹脂や異種金属の混入を防止して、リサイクルゴムの品質低下を招いたりスチールコード等のリサイクル時の邪魔にならないようにするために、ゴム物品に貼付されていた電子デバイスを取り外し除去することが好ましい。
一方、ゴム物品等に貼付されていた電子デバイスは、それ自体のリサイクルや当該電子デバイスに記録されていた情報等の利用のために、当該ゴム物品等のリサイクル時等に電子デバイスを除去し回収する際にも、引張りや曲げなどの過度な応力により故障や破損等せず容易に取り外し回収できることが要求される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、過度な力を要さず容易に貼付対象から電子デバイスを取り外すことができる、電子デバイス積層体、過度な力を要さず容易に電子デバイスを取り外すことができる、タイヤ、及び、過度な力を要さず容易にタイヤから電子デバイスを取り外すことができる、電子デバイス取外し方法を、提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子デバイス積層体は、
電子デバイスと、前記電子デバイスを貼付対象に貼付するための接着層と、を含む、電子デバイス積層体であって、
前記電子デバイスと前記接着層との間に、所定温度以上の熱で溶融する、剥離層を、備えていることを特徴とする。
本発明の電子デバイス積層体によれば、過度な力を要さず容易に貼付対象から電子デバイスを取り外すことができる。
【0007】
本発明の電子デバイス積層体において、
前記電子デバイスは、ICチップ及び前記ICチップに接続されたアンテナを有する、RFタグとすることができる。
この場合、貼付対象に関する種々の情報を容易に取得することができる。
【0008】
本発明の電子デバイス積層体において、
前記剥離層は、熱可塑性樹脂で構成されていることが好ましい。
この場合、電子デバイス積層体が安価に調達でき、かつ、電子デバイス積層体の生産性が向上する。
【0009】
本発明の電子デバイス積層体において、
前記電子デバイスの少なくとも外表面を覆う、保護層を、さらに備えていることが好ましい。
この場合、電子デバイスの耐久性が向上する。
【0010】
本発明の電子デバイス積層体において、
前記電子デバイスと前記剥離層との間に、クッション層を、さらに備えていることが好ましい。
この場合、電子デバイスの耐久性が向上する。
【0011】
本発明のタイヤは、
上述のいずれかの電子デバイス積層体が、タイヤ本体の内表面又は外表面に貼付されていることを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、過度な力を要さず容易にタイヤから電子デバイスを取り外すことができる。
【0012】
本発明の電子デバイス取外し方法は、
上述のタイヤから前記電子デバイスを取り外すための、電子デバイス取外し方法であって、
前記電子デバイス積層体における前記剥離層を、前記所定温度以上に加熱して溶融する、剥離層溶融工程を、含むことを特徴とする。
本発明の電子デバイス取外し方法によれば、過度な力を要さず容易にタイヤから電子デバイスを取り外すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、過度な力を要さず容易に貼付対象から電子デバイスを取り外すことができる、電子デバイス積層体、過度な力を要さず容易に電子デバイスを取り外すことができる、タイヤ、及び、過度な力を要さず容易にタイヤから電子デバイスを取り外すことができる、電子デバイス取外し方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体を示す、平面図である。
図3図2のRFタグ積層体を、貼付対象としてのタイヤ本体に貼付した状態で、図2のA-A線に沿う断面により示す、断面図である。
図4図3のRFタグ積層体における剥離層が溶融し剥離した状態を説明するための、図3と同様の断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体を、貼付対象としてのタイヤに貼付した状態で、図2のA-A線に沿う断面と同様の断面により示す、断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る電子デバイス取外し方法を説明するための、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電子デバイス積層体は、任意の貼付対象に貼付するために好適に利用することができ、例えば、タイヤやゴムクローラ等のゴム物品、特にタイヤに貼付するために好適に利用することができる。
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤとして好適に利用でき、例えば、乗用車用タイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ、建設・鉱山車両用タイヤ等として好適に利用できる。
【0016】
以下、本発明に係る電子デバイス積層体、本発明に係るタイヤ及び本発明に係る電子デバイス取外し方法、の実施形態について、図面を参照しつつ例示説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
なお、以下の説明において、各図に共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0017】
<タイヤ>
説明の便宜上、まず、本発明に係るタイヤの実施形態について、説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤを説明するための図面である。図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
なお、本発明の実施形態に係るタイヤは、任意の種類のタイヤとして構成されてよい。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るタイヤ1は、トレッド部2と、このトレッド部2のタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる1対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部に設けられた1対のビード部4と、を備えている。トレッド部2は、タイヤ1のうち、1対の接地端どうしの間のタイヤ幅方向部分である。ビード部4は、タイヤ1をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成される。
また、タイヤ1は、1対のビード部4間に延在している(より具体的に、1対のビード部4におけるビードコア間に跨って、1対のサイドウォール部3及びトレッド部2を通って、トロイダル状に延在している)カーカス5と、カーカス5のクラウン部に対してタイヤ径方向外側に配置されているベルト6と、を備えている。タイヤ1は、最内表面にインナーライナー(特に図示せず)を有していてもよい。
カーカス5は、少なくとも1枚(図1の例では、1枚)のカーカスプライから構成されている。各カーカスプライは、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよいし、金属(例えばスチール)から構成されてもよい。タイヤ1がトラック・バス用又は建設・鉱山車両用空気入りタイヤとして構成される場合、カーカスコードは、金属(例えばスチール)から構成されると好適である。タイヤ1が乗用車用空気入りタイヤとして構成される場合、カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されると好適である。
ベルト6は、少なくとも1層(図1の例では、2層)のベルト層から構成されている。各ベルト層は、1本又は複数本のベルトコードと、ベルトコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。ベルトコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。ベルトコードは、金属(例えばスチール)から構成されてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ本体1a(図3図5参照)の内表面又は外表面(本実施形態では、内表面)に、後述する本発明の実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10が、貼付されている。より具体的に、タイヤ1は、加硫成形済みのタイヤ本体1aに対して、その内表面(より具体的には、例えば、タイヤ本体1aのインナーライナー(特に図示せず)のタイヤ内腔側)に貼付されたRFタグ積層体10、ひいては、後述する当該RFタグ積層体10における接着層15(図3図5参照)を介して貼付されたRFタグ11(図3図5参照)を、さらに有している。換言すれば、本実施形態において、加硫成形済みのタイヤ本体1aに対して、RFタグ積層体10が、接着層15によりいわば後付けされている。
ここで、本明細書において、「タイヤ本体1a」とは、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)を有するタイヤ1のうち、当該電子デバイス積層体を除いた部分をいう。換言すれば、タイヤ本体1aとは、電子デバイスを貼付する前の、加硫成形済みのタイヤ1そのものを指す。但し、本明細書において、混乱の生じない限り、「タイヤ本体1aの内表面」等を、単に「タイヤ1の内表面」等と記載する場合がある。
また、本明細書において、「タイヤ1(又は、タイヤ本体1a)の内表面」(以下、単に「タイヤ内表面」ともいう。)とは、タイヤ1をリム(図示せず)に組み付けた場合における、環状の内腔に面するタイヤ1(又は、タイヤ本体1a)の表面を指し、「タイヤ1(又は、タイヤ本体1a)の外表面」(以下、単に「タイヤ外表面」ともいう。)とは、タイヤ1をリム(図示せず)に組み付けた場合における、外部に面するタイヤ1(又は、タイヤ本体1a)の表面を指す。本明細書において、上記「タイヤ内表面」と「タイヤ外表面」とを総称して、単に「タイヤ表面」と記載する場合がある。
電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10については、追って詳述する。
【0020】
本実施形態において、RFタグ積層体10は、後述するRFタグ11の長手方向LD(図2図5参照)がタイヤ周方向(図1の紙面表裏方向)に向くように、タイヤ本体1aの内表面に貼付されている。但し、RFタグ積層体10の配置方向は、これに限定されない。RFタグ積層体10は、RFタグ11の長手方向LDが、タイヤ周方向以外の任意の方向に向くように、タイヤ本体1aの表面に貼付されていてもよい。
また、本実施形態において、図1に示すように、RFタグ積層体10は、タイヤ本体1aの内表面に貼付されているが、タイヤ本体1aの外表面に貼付されていてもよい。RFタグ積層体10のRFタグ11内に蓄積された情報を外部から読み取りやすいという観点からは、RFタグ積層体10は、タイヤ本体1aの外表面に貼付されていることが好ましい。但し、RFタグ積層体10ひいてはRFタグ11が外傷を受ける危険性を減らす観点からは、RFタグ積層体10は、本実施形態のようにタイヤ本体1aの内表面に貼付されていることが好ましい。
さらに、本実施形態において、図1に示すように、RFタグ積層体10は、タイヤ1(タイヤ本体1a)のサイドウォール部3とビード部4との境界付近のタイヤ内表面に貼付されているが、タイヤ1(タイヤ本体1a)の他の部位に貼付されていてもよい。RFタグ積層体10は、タイヤ1(タイヤ本体1a)のビード部4、サイドウォール部3及びトレッド部2のうちの、いずれの部位のタイヤ表面に貼付されていてもよい。例えば、RFタグ積層体10が貼付される部位の変形が起こりにくく、かつ、金属等の無線通信による情報伝達の妨げになりやすい部材が近傍にないようにする、という観点からは、RFタグ積層体10は、ビード部4であってビードコアからは若干離隔した位置のタイヤ表面に貼付されていることが好ましい。
【0021】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)を含む電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が、タイヤ本体1aの内表面又は外表面に貼付されているので、電子デバイス積層体の貼付対象であるタイヤ本体1a(ひいては、タイヤ1)に関する種々の情報を取得しやすい。
また、本実施形態に係るタイヤ1によれば、タイヤ本体1aの内表面又は外表面に貼付されている電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が、後述する本発明の実施形態に係る電子デバイス積層体であるので、後述のとおり、過度な力を要さず容易にタイヤ1から電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)を取り外すことができる。
【0022】
<電子デバイス積層体>
次に、本発明の実施形態に係る電子デバイス積層体について、説明する。
以下の説明では、電子デバイスの典型例としてのRFタグ11を含む、電子デバイス積層体の典型例としてのRFタグ積層体10を例として、主に説明するが、電子デバイスひいては電子デバイス積層体は、RFタグ11ひいてはRFタグ積層体10以外であってもよい。
ここで、本明細書において、「電子デバイス」とは、RFタグ、センサ等の電子部品を備える装置を指す。
【0023】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体(以下、単に「本発明の第1実施形態に係るRFタグ積層体」ともいう。)10について、図2図4を参照しつつ説明する。
図2図4は、本発明の第1実施形態に係る電子デバイス積層体を説明するための図面である。図2は、本発明の第1実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体を示す、平面図であり、図3は、図2のRFタグ積層体を、貼付対象としてのタイヤ本体に貼付した状態で、図2のA-A線に沿う断面により示す、断面図であり、図4は、図3のRFタグ積層体における剥離層が溶融し剥離した状態を説明するための、図3と同様の断面図である。
図2図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10は、電子デバイスとしてのRFタグ11と、RFタグ11の少なくとも外表面を覆う保護層12と、クッション層13と、剥離層14と、RFタグ11を貼付対象であるタイヤ本体1aに貼付するための接着層15と、を有している。本実施形態において、タイヤ本体1aに直接接合される接着層15と、剥離層14と、クッション層13と、保護層12と、は、接着層15側からこの順に積層され、各層間で接着、溶着又はその他の手段により固着されている。本実施形態において、RFタグ11は、保護層12内に埋設されており、従って、RFタグ11の表面は、全体として保護層12で覆われている。
【0024】
本実施形態において、電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10は、電子デバイスとしてのRFタグ11を有している。
本実施形態において、RFタグ11は、平面視矩形(図2参照)(本例では、狭義の長方形)を呈するICチップ11aと、ICチップ11aの厚さ方向下端面(底面)11ab(図3参照)に接続されたアンテナ11bと、を有している。
「RFタグ」は、一般に、「RFID(Radio Frequency Identification)タグ」とも呼ばれるものである。RFタグ11は、例えば固有識別情報等を記憶可能な記憶部等を備え、RFタグ積層体10(ひいては、RFタグ11)の貼付対象(図示の例では、タイヤ本体1a)の外部にある所定外部装置(例えば、リーダ/ライタ)と無線通信を行うことができるように構成することができる。この構成により、例えば、RFタグ11の記憶部から取得されるさまざまな情報を、貼付対象である例えばタイヤ等のゴム物品の保守サービスに活用したりすることができる。RFタグ11は、パッシブ型に構成されると好適であるが、アクティブ型に構成されてもよい。
ここで、「矩形」とは、狭義の長方形(以下、単に「長方形」という。)及び正方形を指す。なお、矩形の頂点は、ICチップ11aに隣接する他の部材の損傷を抑制する等の観点から、若干丸みを帯びていてもよい。
また、本明細書において、RFタグ11について、平面視におけるICチップの前記矩形の長辺の延在方向と平行な方向を「長手方向LD」、平面視におけるICチップの前記矩形の短辺の延在方向と平行な方向を「短手方向SD」、長手方向LD及び短手方向SDに垂直な方向を「厚さ方向TD」という。「平面視」とは、RFタグ11を厚さ方向TDから視た場合をいう。
さらに、本明細書において、RFタグ積層体10及びRFタグ積層体10を構成する各部材について、「上」とは、RFタグ積層体10を貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a)に貼付した場合に、貼付対象からより遠い(離れた)位置となる側を指し、「下」とは、RFタグ積層体10を貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a)に貼付した場合に、貼付対象により近い位置となる側を指す。例えば、「ICチップ11aの厚さ方向下端面(底面)11ab」とは、図3等に示すとおり、ICチップ11aの厚さ方向TDにおける両端面のうち、RFタグ積層体10を貼付対象としてのタイヤ本体1aに貼付した状態で、タイヤ本体1aに近い側となる端面を指す。
【0025】
ICチップ11aは、RFタグ11が外部と無線通信を行う際の、制御部及び/又は記憶部を構成するものとすることができる。ICチップ11aは、1つ以上のアンテナで受信する電磁波により発生する誘導起電力により、動作する構成としてよい。
【0026】
アンテナ11bは、RFタグ11が外部と無線通信を行う際の、通信機能を行うように構成することができる。
アンテナ11bは、金属等の導電性材料から構成されるものとすることができる。
アンテナ11bは、図2図4においては模式的に描かれているが、その長手方向の全体が、螺旋、直線、波線(略2次元の波線)又はジグザグ状線(略2次元のジグザグ状線)を呈して延びていてよく、螺旋、直線、波線及びジグザグ状線のうちのいずれか2つ以上の形状を任意の順に呈して延びていてもよい。
また、図2図3の例では、アンテナ11bは、ICチップ11aの厚さ方向TD下端面(底面)11abに接続されているが、アンテナ11bは、例えば、ICチップ11aにおける一方又は両方の長手方向LD端面11aeに接続されていてもよい。
ICチップ11aとアンテナ11bとの接合形態は、特に制限されない。アンテナ11bは、例えば、ハンダ等でICチップ11aと接続されていてよい。
【0027】
上述のとおり、本実施形態において、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)は、電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)を含んでいるので、電子デバイス積層体の貼付対象(例えば、本実施形態のタイヤ1(タイヤ本体1a))に関する種々の情報を取得しやすい。
また、本実施形態において、貼付対象に貼付するための電子デバイスが、ICチップ11a及びICチップ11aに接続されたアンテナ11bを有する、RFタグ11であるので、貼付対象(例えば、本実施形態のタイヤ1(タイヤ本体1a))に関する種々の情報を容易に取得することができる。
【0028】
本実施形態において、RFタグ積層体10は、保護層12を有している。
本実施形態において、保護層12は、RFタグ11の少なくとも外表面を覆っている。
本実施形態において、図2図4に示すように、保護層12は、RFタグ積層体10のうち、最も上側(即ち、RFタグ積層体10を貼付対象であるタイヤ本体1aに貼付した状態で、タイヤ本体1aから最も遠い側)に積層されている。
ここで、RFタグ11の「外表面」とは、保護層12が無い状態でのRFタグ11の外部に露出する表面を指し、保護層12が、RFタグ11の「少なくとも外表面を覆っている」とは、保護層12が、RFタグ11が外部に露出する表面の全体を覆っている、換言すれば、保護層12が、RFタグ11が外部に露出する部分が無いように、RFタグ11を覆っていることを指す。
本実施形態では、図2図3に示すように、保護層12は、アンテナ11bの下端面(ひいては、RFタグ11の下端面)、ICチップ11aの長手方向LD両端面11ae、ICチップ11aの短手方向SD両端面11as及びICチップ11aの厚さ方向TD上端面(頂面)(ひいては、RFタグ11の上端面)11at等を含む、RFタグ11の表面の全体を覆っている。換言すれば、RFタグ11は、保護層12内に埋設されており、即ち、RFタグ11の表面は、全体として保護層12で覆われている。
但し、例えば、アンテナ11bの下端面(ひいては、RFタグ11の下端面)が、RFタグ積層体10を構成する他の部材(例えば、後述するクッション層13)と直接接合している場合等においては、保護層12は、外部に露出しないアンテナ11bの下端面(ひいては、RFタグ11の下端面)を除く、RFタグ11の表面の全体を覆っていればよい。本明細書において、保護層12が、RFタグ11の「少なくとも外表面を覆っている」とは、そのような構成も指すこととする。
【0029】
保護層12の材質は、特に制限されないが、RFタグ11を外傷等から保護するとともにRFタグ11それ自体を傷つけないようにする観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、シリコーン等の樹脂であることが好ましい。また、保護層12は、後述する剥離層14を構成する材料の融点よりも高い融点を有する材料で構成されることが好ましい。
保護層12は、例えば、RFタグ11を所定の射出成形型内に配置して所定の樹脂を射出する等の方法により、当該樹脂がRFタグ11の少なくとも外表面を覆うように、形成することができる。
【0030】
上述のとおり、本実施形態において、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が、電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)の少なくとも外表面を覆う、保護層12を備えているので、電子デバイス積層体が保護層12を備えず電子デバイスの表面の少なくとも一部が外部に露出している場合に比べ、電子デバイスが外部の異物や電子デバイス積層体の貼付対象への取付け・取外し作業時の不手際等から傷等を受けることが抑制され、ひいては、電子デバイスの耐久性が向上する。
但し、後述する第2実施形態のように、電子デバイス積層体(例えば、RFタグ積層体10)は、保護層12を備えていなくてもよい。また、電子デバイス積層体は、電子デバイス(例えば、RFタグ11)の表面の全体を覆う保護層12ではなく、保護層12と同様の上述の材質で、電子デバイスの表面の一部のみ(例えば、情報等の記憶部等を有し特に保護すべき要請の高い、ICチップ11aの表面の全体のみ)を覆う層を有していてもよい。
【0031】
本実施形態において、RFタグ積層体10は、接着層15を有している。
本実施形態において、図2図4に示すように、接着層15は、RFタグ積層体10のうち、最も下側(即ち、RFタグ積層体10を貼付対象であるタイヤ本体1aに貼付した状態で、タイヤ本体1aに最も近い側)に配置されている。
接着層15は、電子デバイスとしてのRFタグ11を貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a)に貼付するための層である。より具体的に、図3に示すように、本実施形態において、RFタグ11は、接着層15及びその他の部材(本実施形態では、保護層12の一部、後述するクッション層13及び後述する剥離層14)を介して、接着層15による接着により、貼付対象としての例えばタイヤ本体1aに貼付され固着される。
【0032】
接着層15の材質は、RFタグ積層体10の当該RFタグ積層体10の貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a)に対する接着機能を有する限り、特に制限されないが、後述する剥離層14を構成する材料の融点よりも高い融点を有する材料で構成されることが好ましい。
具体的に、接着層15は、例えば、少なくとも後述する剥離層14を構成する材料の融点よりも高い融点を有する、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマー(ゴム)等から構成することができる。RFタグ積層体10の貼付対象がタイヤやその他のゴム物品である場合、当該ゴム物品の弾力性や柔軟性を妨げない等の観点から、接着層15の材質は、ゴムであることが好ましく、より具体的に、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)及びニトリルゴム(NBR)からなる群の少なくとも一種であることが好ましい。接着層15は、上記の各物質を主成分とし、これに各種の配合剤(例えば、含水二酸化ケイ素、含水ケイ酸アルミニウム等)を混合処理することにより接着機能を発現させた材料で構成されてよい。
【0033】
上述のとおり、本実施形態において、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が、電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)を貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a(タイヤ1))に貼付するための接着層15を含んでいるので、電子デバイスを、貼付対象に容易に貼付し固着することができる。
【0034】
本実施形態において、RFタグ積層体10は、剥離層14を有している。
本実施形態において、図2図4に示すように、剥離層14は、電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10の厚さ方向(RFタグ11の厚さ方向TDと同じ。以下、同じ)において、電子デバイスとしてのRFタグ11と接着層15との間に、配置されている。
剥離層14は、所定温度以上の熱で溶融するように構成されている。図4は、当該所定温度以上の熱を加えた際に、剥離層14が溶融し、剥離部PEにおいて剥離層14が分断され分断部分どうしが互いに、ひいては、RFタグ積層体10におけるRFタグ11を含む一部がタイヤ本体1a側から、剥離した様子を示している。剥離層14は、当該所定温度以上の熱を加えた際に、完全に液体状に溶融し剥離しなくとも、十分軟化して低粘性の半溶融状態となり容易に剥離できる状態となればよい。
ここで、上記「所定温度」とは、材料の融点に相当するものである。
上記所定温度は、RFタグ積層体10を構成する、剥離層14以外の他の部材(本実施形態では、保護層12、接着層15及び後述するクッション層13、さらには、RFタグ11)を構成する材料の融点よりも、低いことが好ましい。換言すれば、本実施形態では、RFタグ積層体10を構成する、剥離層14以外の、保護層12、接着層15及び後述するクッション層13等を構成する材料の融点が、剥離層14の融点よりも、高いことが好ましい。
より具体的に、上記所定温度は、電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10の貼付対象(本実施形態では、タイヤ1)の稼働中に想定される温度よりも低い温度で、剥離層14が溶融しないようにする等の観点から、150°C以上であることが好ましく、同様の観点から、160°C以上とすることがより好ましい。換言すれば、剥離層14を構成する材料の融点は、150°C以上であることが好ましく、160°C以上であることがより好ましい。
上記所定温度は、電子デバイスとしてのRFタグ11を剥離層14の溶融により取り外す際に、RFタグ11への熱によるダメージを抑制する等の観点から、200°C以下であることが好ましく、同様の観点から、170°C以下であることがより好ましい。
【0035】
剥離層14は、熱可塑性樹脂で構成されていることが好ましい。剥離層14が入手し易い熱可塑性樹脂で構成されていることにより、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が安価に調達でき、かつ、電子デバイス積層体の生産性が向上する。
より具体的に、剥離層14は、融点が150°C以上200°C以下である、例えば、ポリウレタンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から構成されていることが、好ましい。
但し、剥離層14は、熱可塑性樹脂以外の材料で構成されていてもよい。例えば、剥離層14は、融点が150°C以上200°C以下である、ウレタンエラストマー等であってもよい。
【0036】
上述のとおり、本実施形態において、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が、電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)と接着層15との間に、所定温度以上の熱で溶融する、剥離層14を、備えているので、電子デバイスの貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a(タイヤ1))からの取外し時に、当該所定温度以上の熱を加えるだけで剥離層14が溶融し、剥離層14が容易に剥離し又は容易に剥離できる状態となるので、過度な力を要さず容易に電子デバイスの貼付対象から電子デバイスを取り外すことができる。
【0037】
本実施形態において、RFタグ積層体10は、クッション層13を有している。
本実施形態において、図2図4に示すように、クッション層13は、電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10の厚さ方向において、電子デバイスとしてのRFタグ11と剥離層14との間に、配置されている。
クッション層13は、電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10の貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a(タイヤ1))の稼働時の振動や衝撃を緩衝し、電子デバイスとしてのRFタグ11を保護するための層である。
クッション層13の材質は、特に制限されないが、外部からの振動や衝撃を効果的に緩衝しRFタグ11を十分保護する観点から、弾性を有する材料(エラストマー)であることが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)やスチレン・ブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴムであることが好ましい。
また、クッション層13を構成する材料のヤング率は、振動や衝撃からの十分な緩衝機能を発揮させる観点から、30MPa以下であることが好ましく、1MPa以上7MPa以下であることがより好ましい。
クッション層13は、剥離層14を構成する材料の融点よりも高い融点を有する材料で構成されることが好ましい。
【0038】
上述のとおり、本実施形態において、電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)が、クッション層13を備えているので、電子デバイス積層体の貼付対象(本実施形態では、タイヤ本体1a(タイヤ1))の稼働時の振動や衝撃がクッション層13により緩衝されて、電子デバイス(本実施形態では、RFタグ11)への損傷等が抑制され、ひいては、電子デバイスの耐久性が向上する。
但し、電子デバイス積層体(例えば、RFタグ積層体10)は、クッション層13を備えていなくてもよい。
【0039】
本実施形態において、図2図3に示すように、保護層12、クッション層13、剥離層14及び接着層15は、平面視(図2)において、この順で次層が前層の占有範囲を含むように、ひいては、平面視における次層の面積が前層の面積よりも大きくなるように(例えば、クッション層13の面積が保護層12の面積よりも大きくなるように)、構成されている。換言すれば、本実施形態において、上記の順で、次層のRFタグ11の長手方向LDの長さ及び短手方向SDの長さが、前層のそれらの長さよりも大きくされている。この構成によれば、RFタグ積層体10は、貼付対象への接着側に向かうにつれて順次平面視の面積が大きくなるので、貼付対象により強固に貼付できるとともに剥がれにくくなる。
但し、RFタグ積層体10は、上記の構成でなくてもよい。即ち、RFタグ積層体10を構成する各層の、平面視の面積やRFタグ11の長手方向LD及び/又は短手方向SDの長さは、任意であってよい。
【0040】
また、本実施形態において、図2に示すように、平面視において、RFタグ積層体10を構成する各層(本実施形態では、保護層12、クッション層13、剥離層14及び接着層15)の、RFタグ11の長手方向LD及び短手方向SDの端部は丸みを帯びているが、丸みを帯びていなくてもよい。
さらに、RFタグ積層体10を構成する上記各層それぞれの厚さ(RFタグ11の厚さ方向TDにおける長さ)は、特に制限されず、実用上問題のない限り任意であってよい。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体10について、図5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体を、貼付対象としてのタイヤに貼付した状態で、図2のA-A線に沿う断面と同様の断面により示す、断面図である。
図5について、図2図4と同様の部材については、図2図4と同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係る電子デバイス積層体としてのRFタグ積層体(以下、単に「本発明の第2実施形態に係るRFタグ積層体」ともいう。)10は、RFタグ11の少なくとも外表面を覆う保護層12を備えていない点のみ、本発明の第1実施形態に係るRFタグ積層体10と異なり、その他の点は、本発明の第1実施形態に係るRFタグ積層体10と実質的に同じである。
【0042】
本発明の第2実施形態に係るRFタグ積層体10は、図5に示すように、電子デバイスとしてのRFタグ11と、クッション層13と、剥離層14と、RFタグ11を貼付対象であるタイヤ本体1aに貼付するための接着層15と、を有しているが、本発明の第1実施形態に係るRFタグ積層体10と異なり、RFタグ11の少なくとも外表面を覆う保護層12を有していない。本実施形態において、タイヤ本体1aに接合される接着層15と、剥離層14と、クッション層13と、保護層12と、は、接着層15側からこの順に積層され、各層間で接着、溶着又はその他の手段により固着されている。本実施形態において、RFタグ11が保護層12内に埋設されていないことに伴い、RFタグ11の下端面(より具体的に、RFタグ11のアンテナ11bの下端面)は、クッション層13の上端面に直接固着されている。
本発明の第2実施形態に係る電子デバイス積層体(本実施形態では、RFタグ積層体10)によれば、保護層12を備えていないので、電子デバイス積層体の材料コスト及び製造コストを節約でき、例えば、電子デバイスを外部の異物から傷を受ける可能性の低いタイヤ内周面に貼付して用いる場合等に、特に有効に利用することができる。
本実施形態に係る電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)についての、その他の構成及び効果は、前述した、本発明の第1実施形態に係る電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)と同様である。
【0043】
<電子デバイス取外し方法>
次に、本発明の一実施形態に係る電子デバイス取外し方法について、図6を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る電子デバイス取外し方法を説明するための、フローチャートである。
本発明の一実施形態に係る電子デバイス取外し方法は、例えば前述した実施形態に係るタイヤ1から、電子デバイス(一例として、前述した各実施形態におけるRFタグ11)を取外すための、電子デバイス取外し方法である。
以下では、タイヤ1から取り外す電子デバイスが、前述したいずれかの実施形態に係るRFタグ積層体10におけるRFタグ11である場合を例として説明するが、電子デバイス(ひいては、電子デバイス積層体)は、RFタグ11(ひいては、RFタグ積層体10)以外の、任意の電子デバイス(ひいては、電子デバイス積層体)であってもよい。
図6に示すように、本実施形態の電子デバイス取外し方法は、 タイヤ準備工程(ステップS101)と、剥離層溶融工程(ステップS102)と、電子デバイス取外し工程(ステップS103)と、をこの順に含んでいる。
【0044】
(タイヤ準備工程)
まず、タイヤ準備工程では、例えば前述のいずれかの実施形態に係る電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)、ひいては、例えば前述のいずれかの実施形態における電子デバイス(RFタグ11)がタイヤ本体1aの内表面又は外表面に貼付された、タイヤ1(図1参照)を、準備する(ステップS101)。
当該タイヤ1は、使用済みタイヤであってもよいし、その他の理由で不要となったタイヤであってもよい。また、タイヤの種類は、特に制限されない。
なお、電子デバイス積層体(ひいては、電子デバイス)としてのRFタグ積層体10(ひいては、RFタグ11)は、タイヤの加硫成形後に、前述の接着層15によって、タイヤ本体1aの内表面又は外表面に貼付されたものであること、換言すれば、タイヤ本体1aの加硫成形後に接着層15によっていわば後付けされたものであることが好ましい。
【0045】
(剥離層溶融工程)
次に、剥離層溶融工程では、電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)における剥離層14を、前述の所定温度以上に加熱して溶融する(ステップS102)。
剥離層溶融工程では、剥離層14を、電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)を構成する、剥離層14以外の他の部材(例えば、前述の実施形態における、保護層12、クッション層13及び接着層15、さらには、RFタグ11)を構成する材料の融点よりも、低い温度に加熱して溶融することが好ましい。
より具体的に、剥離層溶融工程では、剥離層14を溶融するために、剥離層14を、150°C以上、より好ましくは、160°C以上に加熱することが好ましい。さらに詳細に、剥離層溶融工程では、剥離層14を溶融するために、剥離層14を、上記温度以上であって、電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)を構成する、剥離層14以外の他の部材を構成する材料の融点よりも、低い温度に加熱することが好ましい。
また、剥離層溶融工程では、電子デバイス(RFタグ積層体10)への熱によるダメージを抑制する等の観点から、剥離層14を、200°C以下、より好ましくは、170°C以下に加熱して溶融することが好ましい。
剥離層溶融工程では、剥離層14を上記のとおりに加熱した結果、剥離層14が、完全に液体状に溶融し剥離しなくとも、十分軟化して低粘性の半溶融状態となり容易に剥離できる状態となればよい。
剥離層溶融工程における上記加熱は、例えば、熱線糸のこ、バーナー等を用いて行うことができる。
【0046】
(電子デバイス取外し工程)
次に、電子デバイス取外し工程では、剥離層溶融工程で溶融された剥離層14を剥離し、タイヤ1から電子デバイス(RFタグ11)を取り外す(ステップS103)。
より具体的に、電子デバイス取外し工程では、剥離層14を剥離することによって、電子デバイス積層体(RFタグ積層体10)における剥離層14より上側の部分をタイヤ1から剥離することにより、電子デバイスが貼付されていたタイヤ1から電子デバイス(RFタグ11)を、例えば保護層12やクッション層13とともに、取り外す。
電子デバイス取外し工程では、剥離層溶融工程において剥離層14が完全に液体状に溶融し剥離することにより、それと同時に特に外部から力が加えられずにタイヤ1から電子デバイスが取り外されてもよいし、剥離層溶融工程において剥離層14が十分軟化して低粘性の半溶融状態となった状態で、例えば手作業等でわずかな力を加えてタイヤ1から電子デバイスを取り外してもよい。
なお、電子デバイス取外し工程において、タイヤ1から取り外され回収された電子デバイスは、例えば、必要に応じ電子デバイスに蓄積された情報を収集後、リサイクル(再生利用)又はリユース(再使用)されてよい。
【0047】
本実施形態に係る電子デバイス取外し方法によれば、電子デバイス積層体(例えば、RFタグ積層体10)における剥離層14を、所定温度以上に加熱して溶融する、剥離層溶融工程を、含むので、当該加熱により剥離層14が容易に剥離し又は容易に剥離できる状態となるため、過度な力を要さず容易に貼付対象であるタイヤ1から電子デバイス(例えば、RFタグ11)を取り外すことができる。
【0048】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【0049】
例えば、上述した各実施形態では、電子デバイスとして、ICチップ11a及びICチップ11aに接続されたアンテナ11bを有するRFタグ11を例示して説明したが、電子デバイス(ひいては、電子デバイス積層体)は、RFタグ11(ひいては、RFタグ積層体10)でなくてもよい。電子デバイスは、例えば、タイヤ1の内圧を検出する圧力センサ、タイヤ1の内部温度等を検出する温度センサ、タイヤ1の回転速度を検出する加速度センサ等であってもよい。それらの場合でも、RFタグ11固有の構成に基づく効果を除き、本明細書で説明した効果と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る電子デバイス積層体は、任意の貼付対象に貼付するために好適に利用することができ、例えば、タイヤやゴムクローラ等のゴム物品、特にタイヤに貼付するために好適に利用することができる。
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤとして好適に利用でき、例えば、乗用車用タイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ、建設・鉱山車両用タイヤ等として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1:タイヤ(ゴム物品)、 1a:タイヤ本体、
2:トレッド部、 3:サイドウォール部、 4:ビード部、 5:カーカス、 6:ベルト、
10:RFタグ積層体(電子デバイス積層体)、
11:RFタグ(電子デバイス)、 11a:ICチップ、 11ab:厚さ方向下端面(底面)、 11ae:長手方向端面、 11as:短手方向端面、 11at:厚さ方向上端面(頂面)、 11b:アンテナ、
12:保護層、 13:クッション層、 14:剥離層、 15:接着層、
LD:長手方向、 SD:短手方向、 TD:厚さ方向、 PE:剥離部
図1
図2
図3
図4
図5
図6