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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085869
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】衝撃作動装置
(51)【国際特許分類】
   B25D 9/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
B25D9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200159
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】510155210
【氏名又は名称】アピュアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】渡部 幸雄
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA15
2D058CA03
2D058CB04
2D058CB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エアーハンマーによる打撃を増幅した力を加えることができると共に、部材の長寿命化を図ることができる衝撃作動装置を提供する。
【解決手段】エアーハンマー機構2の打撃によりリンク機構4を介して作動する衝撃増幅機構3は、一対の軸部13,13を介してベース部11に夫々枢支された一対の開閉部材12,12を備え、各開閉部材12,12に対向状に夫々設けられた歯車部の間に、該歯車部に噛合する歯部を有するスペーサー部材が介在されてなり、エアーハンマー機構2の打撃により一対の開閉部材12,12が該歯車部とスペーサー部材との連動を介して回動される。かかる構成によれば、エアーハンマー機構の打撃を衝撃増幅機構3により増幅できることから、これまで油圧式の機構に換えて用いることが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて平行に設けられた一対の軸部を介してベース部に夫々枢支され、該軸部よりも一側に位置する先片部と該軸部よりも他側に位置する基片部とを夫々有する一対の開閉部材を具備する衝撃増幅機構と、
圧縮空気の圧入により所定方向への打撃を発生させるエアーハンマー機構と、
前記エアーハンマー機構と前記開閉部材の基片部との間に介在され、該エアーハンマー機構の打撃により前記一対の開閉部材を夫々の前記軸部を中心に回動させるリンク機構と
を備えたものであって、
前記衝撃増幅機構は、
一対の前記開閉部材の先片部と基片部との間に対向状に夫々設けられた一対の歯車部と、
一対の前記歯車部の間に介在され、各歯車部と噛合される歯部を備えたスペーサー部材と
を有し、
前記エアーハンマー機構の打撃により前記歯車部と前記スペーサー部材の歯部とによって前記開閉部材が回動されることで、一対の開閉部材の先片部を開閉させるものであることを特徴とする衝撃作動装置。
【請求項2】
一方向へ移動可能に配設され、該一方向への移動によって所定の作用対象物に押圧力または引張力を加える加力部材と、
前記加力部材と一対の開閉部材の先片部との間に介在され、両先片部の開放作動または閉鎖作動を該加力部材の前記一方向への移動に変換する作動変換機構と
を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の衝撃作動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、番線カッターやボルトクリッパー等に適用される増幅機構を備えた衝撃作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボルトクリッパーは、例えば特許文献1に開示されているように、刃先を備える一対の刃部材に、互いに噛み合わされた歯車部が夫々一体形成されたものであり、これら歯車部を介して両刃部材の開閉作動をリンクさせることによって、大きな力を発生させることができる。尚ここで、一対の刃部材を夫々の歯車部によりリンクさせて開閉作動させる機構が、一般的に増幅機構と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-193626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の歯車部には非常に大きな負荷がかかるため、歯車部の消耗や破損が生じやすく、この歯車部の消耗や破損によりせん断性能が低下してしまう問題があった。このような問題が生じた場合には、刃部材全体を交換する必要があり、コスト高を招いてしまう。
また、大きな力を発生させ得る前記増幅機構を、ボルトクリッパーや番線カッター等のせん断器具以外の用途に適用することも求められていた。
【0005】
そこで本発明は、せん断器具以外の用途で適用できると共に、増幅機構の長寿命化を図ることができる衝撃作動装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定間隔をおいて平行に設けられた一対の軸部を介してベース部に夫々枢支され、該軸部よりも一側に位置する先片部と該軸部よりも他側に位置する基片部とを夫々有する一対の開閉部材を具備する衝撃増幅機構と、圧縮空気の圧入により所定方向への打撃を発生させるエアーハンマー機構と、前記エアーハンマー機構と前記開閉部材の基片部との間に介在され、該エアーハンマー機構の打撃により前記一対の開閉部材を夫々の前記軸部を中心に回動させるリンク機構とを備えたものであって、前記衝撃増幅機構は、一対の前記開閉部材の先片部と基片部との間に対向状に夫々設けられた一対の歯車部と、一対の前記歯車部の間に介在され、各歯車部と噛合される歯部を備えたスペーサー部材とを有し、前記エアーハンマー機構の打撃により前記歯車部と前記スペーサー部材の歯部とによって前記開閉部材が回動されることで、一対の開閉部材の先片部を開閉させるものであることを特徴とする衝撃作動装置である。
【0007】
かかる構成にあっては、エアーハンマー機構の打撃による力を、衝撃増幅機構により増幅させて、一対の開閉部材の各先片部を開閉させる衝撃力に変換させ得るものである。すなわち、本発明の衝撃増幅機構は、エアーハンマー機構の打撃によって、一対の開閉部材の各基片部に、両基片部を相対的に離間させる方向または近接させる方向へ回転させる力が加わると、当該開閉部材が夫々の歯車部とスペーサー部材とにより連関して回動され、各基片部に加えられた力に比して大きな力によって、各先片部を開放または閉鎖させることができる。これにより、これまでエアーハンマー機構では力不足のために油圧式の機構を用いていた用途に、本発明の衝撃作動装置を採用して、所望の衝撃力を発揮できる。そして、エアーハンマー機構は、前記油圧式の機構に比して、簡便かつ容易に作動させることができ、作動に要するエネルギーを低減でき、さらに装置がコンパクト化される。これにより、本発明の構成は、作業性を向上できると共に、作業に要する手間とコストを低減することができる。さらに、油圧式の機構を使用する環境では、電気ショートやトラッキング現象などによる引火の危険性があるが、本発明の構成を油圧式の機構に換えて用いることによって該危険性を低減することができ得る。
【0008】
また、かかる構成にあっては、スペーサー部材がいわば「遊星歯車」として機能するところ、いわゆる歯車の歯が噛み合う箇所が、一方の開閉部材の歯車部とスペーサー部材における一方の歯部、および、他方の開閉部材の歯車部とスペーサー部材における他方の歯部と、の2か所となるため、回動時にかかる負荷が、各噛み合い箇所で分散されて過剰な応力集中が発生することを回避でき、各開閉部材の消耗や破損による不具合を生じにくくすることができる。また、スペーサー部材を構成する材料を、開閉部材を構成する材料に比して相対的に硬度の低い材料を選択すれば、当該スペーサー部材が衝撃吸収効果を発揮することになり、より一層、開閉部材の消耗や破損を防止することが可能となる。なお、仮にスペーサー部材の歯部が消耗したり破損したりした場合にも、従来のように開閉部材全体を交換する必要はないため、部品交換に伴うコストも大幅に抑えることができる。
【0009】
また、異なる寸法の作用対象物に先片部を介して力を作用させる場合には、一般的に力点や作用点を適正に変更すべく該作用対象物ごとに一対の開閉部材の軸間距離等を変更する必要が生じる場合がある。これに対して、本発明の構成では、作用対象物の寸法や作用対象物への負荷量に応じた寸法形状のスペーサー部材を採用すれば、開閉部材自体を変更することなくそのまま流用して使用することも可能となり、かかる場合にも部品交換に伴うコストを大幅に抑えることが可能となる。
【0010】
また、スペーサー部材の材料を適宜変更して硬度を変えることで、回動時のトルク調整を変更することも可能となる。また、スペーサー部材の歯部形状を、適宜変更することにより、開閉部材の回動時における初期区間のトルク、中期区間のトルク、および終期区間のトルクを相対的に異ならせることも可能となり、例えば中期区間において瞬間的な加速度を高めた開閉部材の作動を実現することも可能となる。
【0011】
前述した本発明にかかる衝撃作動装置にあって、一方向へ移動可能に配設され、該一方向への移動によって所定の作用対象物に押圧力または引張力を加える加力部材と、前記加力部材と一対の開閉部材の先片部との間に介在され、両先片部の開放作動または閉鎖作動を該加力部材の前記一方向への移動に変換する作動変換機構とを備えたものである構成が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、エアーハンマー機構の打撃によって、開閉部材の回動を介して加力部材で作用対象物に押圧力または引張力を加えるものであり、該エアーハンマー機構の打撃力を衝撃増幅機構により増幅させて、該増幅させた力により作用対象物を押圧または引張ることができる。本構成によれば、これまでエアーハンマー機構では力不足であった所望の押圧力または引張力を安定かつ容易に加え得ることから、該押圧力または引張力を必要とする作用対象物への行為(作業)に適用することができ、該行為に要する作業性の向上とコストおよび手間の軽減とを実現できる。
【発明の効果】
【0013】
前述したように、本発明の衝撃作動装置によれば、これまではエアーハンマー機構で力不足であった用途に適用して、所望の衝撃力を発揮できることから、従来の油圧式の機構に換えて採用することによって作業性の向上とコストおよび手間の軽減とを実現できる。さらに、本発明の構成は、衝撃増幅機構の長寿命化を図ることができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1にかかる衝撃作動装置1の平面図である。
図2】衝撃作動装置1を構成する衝撃増幅機構3の一部を切り欠いて示す拡大平面図である。
図3】加力部材41の作動説明図である。
図4】実施例2にかかる衝撃作動装置51の平面図である。
図5】加力部材81の作動説明図である。
図6】変形例の衝撃作動装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、以下の実施例1,2により説明する。
【0016】
(実施例1)
実施例1の衝撃作動装置1は、図1に示すように、動力源であるエアーハンマー機構2と、該エアーハンマー機構2により加わる力を増幅する衝撃増幅機構3と、該エアーハンマー機構2による力を該衝撃増幅機構3に伝達するリンク機構4と、該衝撃増幅機構3により押圧作動される撃力作動機構5とを備える。衝撃作動装置1は、こうしたエアーハンマー機構2、リンク機構4、衝撃増幅機構3、および撃力作動機構5が一方向に一列状に配設されてなるものである。ここで、実施例では、前記一方向を前後方向とし、エアーハンマー機構2側を後方、撃力作動機構5側を前方、横方向を左右方向として、以下説明する。
【0017】
衝撃増幅機構3は、図2に示すように、金属製の板状部材からなるベース部11と、金属製の左右一対の開閉部材12とを備える。ベース部11は、略矩形の平板からなり、一側の平板面から突出された左右一対の軸部13,13を備える。これら軸部13,13は、左右方向に所定間隔をおいて、互いに平行に設けられている。
【0018】
左右一対の開閉部材12は、前記リンク機構4に連結された基片部21と、前記ベース部11の軸部13を回転自在に支持する中央片部22と、前記撃力作動機構5を作動させる先片部23とが前後方向に夫々一体的に連成され、互いに略対称な形状となっている。ここで、一対の開閉部材12,12は、各中央片部22で前記ベース部11の軸部13に夫々枢支されて、互いに左右方向で対向状に配置され、夫々の軸部13を中心として相互に連関して回動可能となっている。尚、連関する機構については、本発明の要部にかかることから、詳細は後述する。
【0019】
一方、前記エアーハンマー機構2は、圧縮空気の流入によりピストン(図示せず)を打撃して、該ピストンを前後方向に往復移動させるものであり、従来から公知の構成が適用される。このエアーハンマー機構2のピストンが、前記リンク機構4を介して、前記開閉部材12,12の各基片部21,21と連結されている。リンク機構4は、エアーハンマー機構2のピストンの前後方向への移動を、開閉部材12,12の各基片部21,21の左右方向への移動に変換するものである。こうしたリンク機構4により、エアーハンマー機構2のピストンが前後方向に往復移動されると、左右の開閉部材12,12の各基片部21,21が左右方向に開閉される。ここで、左右の開閉部材12,12は、前述したように、ベース部11の軸部13,13に夫々軸支されていることから、各基片部21,21の開閉によって回動され、各先片部23,23が左右方向に閉開される。
【0020】
次に、本発明にかかる要部について説明する。
【0021】
前述した左右一対の開閉部材12,12は、図2に示すように、夫々の中央片部22,22に、互いに対向する歯車部25,25が夫々形成されている。ここで、歯車部25,25は、互いに対向する中央片部22,22の側縁に、円弧に沿って夫々歯切りされて形成されている。
【0022】
さらに、左右の開閉部材12,12を構成する各歯車部25,25の間には、スペーサー部材31が介在される。スペーサー部材31は、前後方向に所定長さで形成されており、左右両側に、前記歯車部25,25に夫々噛み合う歯部32,32が前後方向に沿って設けられている。
【0023】
こうした左右の開閉部材12,12は、各基片部21,21を左右方向に開閉させることによって、ベース部11の各軸部13,13を中心として回動する(図3参照)。この際に、左右の歯車部25,25がスペーサー部材31の歯部32,32と夫々噛み合いながら、左右の開閉部材12,12が回動する。このように左右の開閉部材12,12がスペーサー部材31を介して回動されることにより、各基片部21,21を開閉させる力に比して大きな力で各先片部23,23が開閉され得る。
【0024】
開閉部材12,12の先片部23,23には、互いに対向する湾曲状の当接側縁部24,24が夫々設けられている。左右の開閉部材12,12は、その回動により両先片部23,23が閉作動すると、各当接側縁部24,24が互いに近接する一方、両先片部23,23が開作動すると、各当接側縁部24,24が互いに離間する。
【0025】
開閉部材12,12の前側には、図1に示すように、前記した撃力作動機構5が配設されている。撃力作動機構5は、前記開閉部材12,12の先片部23,23の開閉により前後方向へ移動される加力部材41を備える。加力部材41は、略半球状の受力部46と、受力部46から前方へ突出された略円柱状の押圧部47とが一体的に設けられたものであり、受力部46の半球面に、左右の開閉部材12,12を構成する各先片部23,23の当接側縁部24,24が当接される。さらに、撃力作動機構5は、加力部材41の押圧部47を前後方向へ摺動可能に内嵌する略円筒状の案内部材42を備える。そして、案内部材42の後端部と該加力部材41の押圧部47との間に、コイルスプリング43が介在されており、該コイルスプリング43によって、加力部材41が案内部材42に対して後方へ付勢されている。尚、前記押圧部47の先端には、ワーク(本発明にかかる作用対象物に相当)に衝突して押圧力を加える所定形状の衝突端部(図示せず)が設けられている。
【0026】
こうした撃力作動機構5は、図3に示すように、衝撃増幅機構3の左右の開閉部材12,12が、各先片部23,23を閉鎖する方向に回動することによって、各先片部23,23の当接側縁部24,24に当接された前記加力部材41が、前記コイルスプリング43の付勢力に抗して前方へ移動する(図3(B)参照)。この後、左右の先片部23,23が開放方向へ回動すると、加力部材41が前記コイルスプリング43の付勢力に従って後方へ移動する。このように撃力作動機構5は、衝撃増幅機構3の開閉部材12,12が回動することによって、加力部材41が前後方向へ移動する。
【0027】
尚、実施例1の構成にあって、左右の開閉部材12,12の各当接側縁部24,24と、加力部材41の受力部46とにより、本発明にかかる作動変換機構が構成されている。
【0028】
実施例1の衝撃作動装置1は、エアーハンマー機構2が駆動すると、該エアーハンマー機構2の打撃により、左右の開閉部材12,12の基片部21,21が急激に開放作動されて、先片部23,23が急激に閉鎖作動される。この先片部23,23の閉鎖により、加力部材41が前方へ急激に移動し、該加力部材41の前方に配置された所定のワーク(本発明の作用対象物)と衝突する。詳述すると、図3に示すように、エアーハンマー機構2の打撃により各開閉部材12,12の基片部21,21が互いに離間する方向へ急激に開放されると、開閉部材12,12の歯車部25,25がスペーサー部材31の歯部32,32と噛み合いながら回動して、先片部23,23が互いに近接する方向へ急激に閉鎖される。これにより、加力部材41が、各先片部23,23の当接側縁部24,24により前方へ押し上げられて、前方へ急激に移動する。そして、加力部材41の前方に配置された前記ワークに、加力部材41が衝突して押圧力が作用する。ここで、加力部材41の衝突は、エアーハンマー機構2の打撃により急激に生じ、かつ該衝突では、前記歯車部25,25とスペーサー部材31とを介した回動によって、該打撃の力に比して大きな衝撃力が作用する。一方、エアーハンマー機構2のピストンが後方へ退避すると、開閉部材12,12の基片部21,21が近接方向へ閉鎖作動すると共に先片部23,23が離間方向へ開放作動する。これにより、加力部材41が前記コイルスプリング43の付勢力にしたがって後方へ移動する。このように加力部材41は、エアーハンマー機構2の駆動によって、基準位置(図3(A))から、該基準位置よりも前方の押圧位置(図3(B))へ急激に移動できると共に、該押圧位置から基準位置に復帰できる。
【0029】
こうした衝撃作動装置1は、前述したように、左右の開閉部材12,12を夫々の歯車部25,25とスペーサー部材31とを介して回動させることにより、エアーハンマー機構2の打撃による力を増幅させて、加力部材41の押圧力として生じさせ得る。本実施例1の構成によれば、これまでエアーハンマー機構では力不足のために油圧式を用いて前記ワークを押圧していた用途に、適用することができることから、所望の押圧力を該ワークに容易かつ安定して作用させることができる。
【0030】
また、衝撃増幅機構3が、左右の開閉部材12,12の各歯車25,25がスペーサー部材31を介して配設されていることから、回動時にかかる負荷を分散でき、消耗や破損による不具合の発生を抑制できる。これにより、長期的な使用による破損等の発生を抑制でき、ランニングコストを軽減することができる。
【0031】
また、本実施例の構成にあっては、左右の先片部23,23を開閉させる作動量(開閉方向の移動量)を調整することにより、加力部材41の前後方向への移動量を設定することができる。そのため、ワークを押圧する力や、加力部材41に衝突によるワークの変形量を調整できる。具体的には、ワークに応じて、軸部13,13の間隔を調整し、当該軸部13,13を備えたベース部11に、開閉部材12,12を枢支する。そして、前記ベース部11に枢支された開閉部材12,12の各歯車部25,25の間に、スペーサー部材31を介在させる。このようにして先片部23,23の開閉作動量を調整することができ、ワークに応じて押圧力や変形量を調整することが可能である。
【0032】
(実施例2)
実施例2の衝撃作動装置51は、図4,5に示すように、エアーハンマー機構2の駆動により開閉作動する左右一対の開閉部材62,62を有する衝撃増幅機構53と、該開閉部材62,62の開閉作動により前後方向へ移動する加力部材81を有する撃力作動機構55とを備える。そして、左右の開閉部材62,62の各基片部71,71が、実施例1と同様にリンク機構4を介して、前記エアーハンマー機構2に連結されている。尚、実施例2にあって、エアーハンマー機構2とリンク機構4とは、実施例1と同じであることから、同じ符号を記し、説明を省略する。
【0033】
衝撃増幅機構53は、実施例1と同様のベース部11と、該ベース部11の各軸部13,13に夫々枢支された左右一対の開閉部材62,62とを備え、各開閉部材62,62に夫々対向状に設けられた歯車部75,75間に、スペーサー部材31が介在されたものである。ここで、開閉部材62は、略L字状の先片部73と前記基片部71とが中央片部72を介して連成されたものであり、該中央片部72に前記歯車部75が形成されている。左右の開閉部材62,62は、左右対称に配置されて前記ベース部11に枢支されており、夫々の歯車部75,75がスペーサー部材31の歯部32,32に噛み合わされている。こうした左右一対の開閉部材62,62は、実施例1と同様に、夫々の歯車部75,75とスペーサー部材31の歯部32,32とが夫々噛み合いながら、各軸部13,13を夫々中心として連関して回動する。すなわち、エアーハンマー機構2の駆動によりリンク機構4を介して左右の開閉部材62,62が回動すると、該開閉部材62,62の先片部73,73が開閉される。尚、スペーサー部材31は、実施例1と同様の構成である。
【0034】
開閉部材62,62の先片部73,73は、閉鎖状態(図5(B)参照)で収容空隙66を介して左右方向に離間される主杆部73a,73aと、該主杆部73a,73aの前端から互いに近接する方向へ突出された突部73b,73bとを有し、各突部73b,73bに湾曲状の当接側縁部74,74が夫々設けられている。そして、左右の開閉部材62,62は、先片部73,73の前記閉鎖状態で、各突部73b,73bが所定間隔をおいて離間されるように、ベース部11の軸部13,13間の間隔が設定されている。
【0035】
一方、撃力作動機構55は、左右の開閉部材62,62の前記収容空隙66に配置される基盤部材80と、該基盤部材80に対して前後方向へ移動される加力部材81とを備える。加力部材81は、略半球状の受力部86と、該受力部86の半球面中央から前方へ突出された略円柱状の引張部87とが一体的に設けられたものであり、該受力部86の半球面に、左右の開閉部材62,62を構成する各先片部23,23の当接側縁部74,74が当接される。ここで、左右の開閉部材62,62は、前記閉鎖状態における先片部73,73の突部73b,73b間の間隔が、前記引張部87の外径よりも広くなるように設定されている。尚、引張部87の先端には、作用対象物に係止するための係止先端部(図示せず)が設けられている。
【0036】
さらに、撃力作動機構55は、加力部材81の引張部87を前後方向へ摺動可能に内嵌する略円筒状の案内部材82を備える。そして、前記基盤部材80と加力部材81の受力部86との間にコイルスプリング83が介在されており、該コイルスプリング43によって加力部材81が基盤部材80に対して前方へ付勢されている。
【0037】
こうした撃力作動機構55は、図5に示すように、衝撃増幅機構53の開閉部材62,62が各先片部73,73を閉鎖する方向に回動すると、各先片部73,73の当接側縁部74,74に当接された前記加力部材81が、コイルスプリング83の付勢力に抗して後方へ移動する(図5(B)参照)。この後、左右の先片部73,73が開放されると、加力部材81がコイルスプリング83の付勢力に従って前方へ移動する。このように実施例2の撃力作動機構55は、左右の開閉部材62,62の回動によって、前述した実施例1と逆向きに加力部材81が移動する。
【0038】
尚、実施例2の構成にあって、左右の開閉部材62,62の各当接側縁部74,74と加力部材81の受力部86とにより、本発明にかかる作動変換機構が構成されている。
【0039】
実施例2の衝撃作動装置51は、エアーハンマー機構2が駆動すると、該エアーハンマー機構2の打撃により、各開閉部材62,62の基片部71,71が互いに離間する方向へ急激に開放され、これに伴って各開閉部材62,62の歯車部75,75がスペーサー部材31の歯部32,32と噛み合いながら回動して、先片部73,73が互いに近接する方向へ急激に閉鎖される。これにより、加力部材81が、各先片部73,73の当接側縁部74,74により後方へ引き寄せられて、後方へ急激に移動する。ここで、例えば、加力部材81の前方に所定のワークを配置して、該ワークに固結された部材(例えば、釘やアンカーなど)に該加力部材81を予め係止しておけば、エアーハンマー機構2の駆動によって、ワークから前記部材を引き外すことができる。一方、エアーハンマー機構2のピストンが後方へ退避すると、開閉部材62,62の先片部73,73が離間方向へ開放され、加力部材81が前記コイルスプリング83の付勢力にしたがって前方へ移動する。このように加力部材81は、エアーハンマー機構2の駆動によって、基準位置(図5(A))から、該基準位置よりも後方の引張位置(図5(B))へ急激に移動できると共に、該引張位置から基準位置に復帰できる。
【0040】
かかる実施例2の構成は、前述した実施例1と同様に、エアーハンマー機構2の打撃による力を衝撃増幅機構53により増幅させて、加力部材81の引張力として生じさせ得る。これにより、これまでエアーハンマー機構2では引張力が不足する用途であっても、本構成によれば、該用途に必要な引張力を容易かつ安定して発生させることができる。
【0041】
さらに、実施例1と同様に、左右の開閉部材62,62の回動による消耗や破損の発生を抑制できるという作用効果と、加力部材81による移動量などの調整を容易に行い得るという作用効果とを奏する。
【0042】
本発明は、前述した実施例1,2に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前記実施例1,2において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0043】
実施例1,2は、加力部材がワークに前後方向への押圧力または引張力を作用させる構成であるが、これに限らず、前後方向(エアーハンマー機構のピストンの移動方向)と異なる向きの力をワークに作用させる構成とすることもできる。具体例として、図6に、実施例1の変形例を示す。この変形例の構成は、撃力作動機構105が実施例1と異なる構成であり、エアーハンマー機構2と衝撃増幅機構3とリンク機構4とは実施例1と同じ構成である。変形例の撃力作動機構105は、加力部材111と作動変換部材112とを備える。作動変換部材112は、略半球状の受力部116と、該受力部116から前方へ突出された略円錐状の圧力伝達部117とを備えたものであり、受力部116の半球面に、左右の開閉部材12,12の各当接側縁部24,24が当接される。一方、加力部材111は、前記圧力伝達部117の円錐状外周面に倣う内周面を有し且つ後方開口された凹部を有する円柱体が、周方向に複数分割(例えば、二分割や三分割など)されたものであり、複数の拡開分割部113により構成される。そして、加力部材111には、前記凹部の内周面に前記作動変換部材112の圧力伝達部117が内嵌される。こうした変形例は、エアーハンマー機構2の駆動により、左右の開閉部材12,12の各先片部23,23が急激に閉鎖され、これに伴って作動変換部材112が前方へ急激に移動する。そして、この作動変換部材112の移動により、加力部材111を構成する複数の拡開分割部113が横方向へ放射状に急激に移動する。この変形例は、エアーハンマー式の粉砕機(パッカー)として適用されるものであり、エアーハンマー機構2の駆動により作動変換部材112の拡開分割部113が急激に横方向へ放射状に移動することで、粉砕対象である岩石やコンクリート等を粉砕することができる。尚、図6では、図示省略したが、作動変換部材112を後方へ付勢する付勢手段や、複数の拡開分割部113を復帰させる付勢手段などを備える。これにより、左右の先片部23,23が開放されると、作動変換部材112が後方へ移動して、複数の拡開分割部113が常態の位置に退避される。この変形例の構成によれば、これまでエアーハンマー機構では力不足のために油圧式であった粉砕機に適用することができ、岩石やコンクリートなどを容易かつ安定して粉砕することができる。尚、変形例の構成では、開閉部材12,12の各当接側縁部24,24と、作動変換部材112と、加力部材111の凹部内周面とにより、本発明にかかる作動変換機構が構成されている。
【0044】
実施例1,2および変形例の構成にあって、リンク機構4が左右一対のリンク片16,16を各開閉部材12,12の基片部21,21に夫々枢支させた構成であるが、これに限らず、複数のギア(歯車)からなるリンク機構や、ラックアンドピニオンギアからリンク機構などを適用することもできる。
【0045】
実施例1,2および変形例の構成にあって、ベース部が長孔状の軸取付部を一対備え、各軸取付部に各軸部を夫々取り付け可能とすることで、軸部間距離を適宜変更することができるようにしてもよい。例えば、上記実施例よりも軸部間距離を大きくして開閉部材間の間隔を拡げた上で、加力部材を所望の移動量に設定できるスペーサー部材を配置することで、該移動量の調整をワーク(作用対象物)に応じて実行することができる。
【0046】
実施例1,2および変形例の構成では、ベース部11に軸部13,13が設けられた構成としたが、これに限らず、開閉部材に軸部が設けられ、該軸部を内嵌する一対の孔部がベース部に設けられた構成とすることもできる。さらには、ベース部、軸部、および開閉部材を夫々別部材として組み立てられる構成であっても良い。
【0047】
実施例1,2および変形例では、開閉部材の先片部に、加力部材の受力部に当接する湾曲状の当接側縁部を設けた構成であるが、これに限らず、直線状に傾斜する当接側縁部が先片部に設けられた構成としても良い。かかる構成にあっても、実施例と同様に加力部材を前後方向へ移動させることができる。
【0048】
実施例1,2および変形例では、開閉部材の当接側縁部と加力部材の受力部とにより、該開閉部材の回動を該加力部材の前後移動に変換する構成(作動変換機構)を備えたものであるが、これに限らず、例えばギア(歯車)などを用いて、開閉部材の回動を加力部材の移動に変換する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1,51 衝撃作動装置
2 エアーハンマー機構
3,53 衝撃増幅機構
4 リンク機構
5,55,105 撃力作動機構
11 ベース部
12,62 開閉部材
13 軸部
21,71 基片部
22,72 中央片部
23,73 先片部
24,74 当接側縁部
25,75 歯車部
31 スペーサー部材
32 歯部
41,81,111 加力部材
42,82 案内部材
43,83 コイルスプリング
46,86,116 受力部
47 押圧部
66 収容空隙
73a 主杆部
73b 突部
80 基盤部材
87 引張部
112 作動変換部材
113 拡開分割部
117 圧力伝達部
図1
図2
図3
図4
図5
図6