(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085871
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20230614BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200161
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】助川 新
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC47
3D131GA01
3D131LA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイヤに設けられた通信装置の位置を把握しやすくする、タイヤを提供することにある。
【解決手段】通信装置20を備えるタイヤ1であって、前記タイヤ1を適用リムに組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態での、前記適用リムに接触している前記タイヤ1の外表面のうち、最もタイヤ径方向外側の端部を前記タイヤ1の離反点Sとし、前記適用リムに組み付け、前記規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態での、前記タイヤ1のタイヤ径方向内側端部から前記離反点までのタイヤ径方向に沿った長さを離反点距離SDとした場合に、前記基準状態での、タイヤ径方向に沿った前記タイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲における前記タイヤ1の前記外表面に、前記通信装置20の位置を示す表示部10を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置を備えるタイヤであって、
前記タイヤを適用リムに組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態での、前記適用リムに接触している前記タイヤの外表面のうち、最もタイヤ径方向外側の端部を前記タイヤの離反点とし、
前記適用リムに組み付け、前記規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態での、前記タイヤのタイヤ径方向内側端部から前記離反点までのタイヤ径方向に沿った長さを離反点距離SDとした場合に、
前記基準状態での、タイヤ径方向に沿った前記タイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲における前記タイヤの前記外表面に、前記通信装置の位置を示す表示部を備える、タイヤ。
【請求項2】
前記基準状態での、タイヤ径方向に沿った前記タイヤ径方向内側端部からの距離DがSD≦D≦1.2×SDを満たす範囲における前記タイヤの前記外表面に、前記表示部の少なくとも一部が位置する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記表示部は、タイヤ周方向において、前記表示部が延在する範囲に前記通信装置が含まれるように、設けられている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記表示部は、タイヤ全周の1/8~1/4の範囲に及ぶ、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記表示部は、タイヤ全周の半分以上の範囲に及ぶ、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
RFタグなどの通信装置が取り付けられたタイヤにおいて、通信装置の位置の把握しやすくする技術が知られている。例えば、特許文献1には、タイヤの外表面に、タイヤに配置されたトランスポンダの位置を示す識別標識が設けられたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信装置の位置を示す表示部のタイヤの外表面における位置によっては、タイヤが使用されていく中で、汚れの付着又は摩耗等により、視認しづらくなる場合がある。そのため、依然として、タイヤに設けられた通信装置の位置の把握しやすくすることが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤに設けられた通信装置の位置の把握しやすくする、タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るタイヤは、通信装置を備えるタイヤであって、前記タイヤを適用リムに組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態での、前記適用リムに接触している前記タイヤの外表面のうち、最もタイヤ径方向外側の端部を前記タイヤの離反点とし、前記適用リムに組み付け、前記規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態での、前記タイヤのタイヤ径方向内側端部から前記離反点までのタイヤ径方向に沿った長さを離反点距離SDとした場合に、前記基準状態での、タイヤ径方向に沿った前記タイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲における前記タイヤの前記外表面に、前記通信装置の位置を示す表示部を備える。
本開示に係るタイヤによれば、タイヤが適用リムに組み付けられた状態において、表示部に汚れの付着又は摩耗が生じにくい。したがって、タイヤに設けられた通信装置の位置を把握しやすくなる。
【0007】
本開示に係るタイヤでは、前記基準状態での、タイヤ径方向に沿った前記タイヤ径方向内側端部からの距離DがSD≦D≦1.2×SDを満たす範囲における前記タイヤの前記外表面に、前記表示部の少なくとも一部が位置することが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤが適用リムに組み付けられた状態でも、タイヤ外部から表示部を視認することができる。
【0008】
本開示に係るタイヤでは、前記表示部は、タイヤ周方向において、前記表示部が延在する範囲に前記通信装置が含まれるように、設けられていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤに設けられた通信装置のタイヤ周方向位置が把握しやすくなる。
【0009】
本開示に係るタイヤでは、前記表示部は、タイヤ全周の1/8~1/4の範囲に及ぶことが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、表示部が視認しやすく、かつ、タイヤに設けられた通信装置のタイヤ周方向位置が把握しやすくなる。
【0010】
本開示に係るタイヤでは、前記表示部は、タイヤ全周の半分以上の範囲に及ぶことが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、表示部が視認しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、タイヤに設けられた通信装置の位置の把握しやすくする、タイヤ・ホイール組立体及びホイールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されるタイヤのビード部のタイヤ幅方向断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されるタイヤ1の変形例の側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示されるタイヤ1の他の変形例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係るタイヤについて、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0014】
本開示において、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいう。「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいう。
【0015】
また、本開示において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0016】
本開示において、特に断りのない限り、タイヤの各要素の位置関係等は、基準状態で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤを適用リムであるホイールのリムに組み付け、規定内圧を充填し、無負荷とした状態である。以下において、タイヤは、内腔に空気が充填され、ホイールローダ又はダンプカー等、建設車両に装着されるものとして説明する。ただし、タイヤの内腔には空気以外の流体が充填されていてもよく、タイヤは建設車両以外の車両に装着されてもよい。
【0017】
本開示において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organization)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、或いは、将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTOのSTANDARDS MANUAL2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられる。
【0018】
本開示において、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、本開示において、「規定荷重」とは、上記産業規格に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する荷重をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合には、「規定荷重」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0019】
はじめに、
図1及び
図2を参照して、本開示の一実施形態に係るタイヤ1の概略構成について、詳細に説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ1を、タイヤ幅方向から見た側面図である。
図2は、タイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向断面図である。タイヤ1には、通信装置20が設けられている。例えば、通信装置20は、タイヤ1の内部に埋設されている、或いは、タイヤ1の内表面に張り付けられている。タイヤ1の外表面には、通信装置20の位置を示す表示部10が設けられている。具体的には、表示部10は、タイヤ1のタイヤ径方向内側端部からタイヤ1の離反点Sまでのタイヤ径方向に沿った長さを離反点距離SDとした場合に、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態での、タイヤ径方向に沿ったタイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲におけるタイヤ1の外表面に設けられている。ここで、離反点Sは、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態での、リムRに接触しているタイヤ1の外表面のうち、最もタイヤ径方向外側の端部である。これにより、タイヤ1が適用リムであるリムRに組み付けられた状態において、表示部10の少なくとも一部が、タイヤ1の外表面のうち、リムRに覆われる位置、又は、リムRに覆われない位置であってもタイヤ1の離反点Sの近傍に配置されるため、表示部10に汚れの付着又は摩耗が生じにくい。このため、タイヤ1に設けられた通信装置20の位置が把握しやすくなる。
【0020】
以下、
図2を参照して、タイヤ1の構成の一例について、詳細に説明する。
【0021】
図2に示されるように、タイヤ1は、一対のビード部2と、一対のサイドウォール部3と、トレッド部4とを有している。サイドウォール部3は、トレッド部4とビード部2との間に延在している。
図2において、タイヤ1は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組み付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。具体的には、タイヤ1のビード部2が、リムRのビードシートR1に着座させられ、リムフランジR2により側面から支えられている。
【0022】
本実施形態において、タイヤ1は、タイヤの赤道面CLに対して対称な構成であるものとして説明する。しかしながら、タイヤ1は、タイヤの赤道面CLに対して非対称な構成とされていてもよい。
【0023】
タイヤ1は、ビード部2に配置された一対のビードコア5と、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上のプライから成るカーカス6と、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層から成るベルト7と、を備えている。
【0024】
ビードコア5は、タイヤ周方向に延在する環状のケーブルビードからなっている。ケーブルビードは、例えば、高炭素の鋼線をゴム被覆して構成されている。ビードコア5の延在方向に直交する断面の形状(タイヤ幅方向断面の形状)は、円形とされている。ただし、ビードコア5のタイヤ幅方向断面の形状は、六角形等、任意の形状とされていてもよい。ビードコア5のタイヤ径方向外側には、ゴム材料等で形成されたビードフィラー8が設けられている。本実施形態において、ビードコア5及びビードフィラー8は、タイヤ幅方向断面において、カーカス6によって周囲を囲まれている。ただし、タイヤ1は、ビードフィラー8を備えない構成とされてもよい。
【0025】
カーカス6は、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上(本実施形態では1枚)のプライからなる。プライは、複数のコードをゴム被覆して構成されている。プライを構成するコードは、例えば、スチールコードであるが、レーヨン又はPET(ポリエチレンテレフタレート)などで構成された有機繊維コードであってもよい。本実施形態において、コードは、トレッド部4においてタイヤ幅方向に延在するように配置されている。即ち、カーカス6は、ラジアル構造とされている。ただし、カーカス6は、ラジアル構造に限られず、バイアス構造等、任意の構造とされていてもよい。
【0026】
カーカス6は、一対のビードコア5に係止されている。具体的には、カーカス6は、一対のビードコア5間をトロイダル状に延在するカーカス本体部6Aと、カーカス本体部6Aから延び、ビードコア5の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されているカーカス折返し部6Bと、を備える。本実施形態では、カーカス折返し部6Bは、基準状態におけるタイヤ最大幅の位置の近傍で終端している。ここで、「タイヤ最大幅の位置」とは、タイヤ幅方向断面におけるタイヤ1のタイヤ幅方向の長さが最も長くなるタイヤ径方向の位置である。ただし、カーカス6は、カーカス折返し部6Bを有していない構造又はカーカス折返し部6Bがビードコア5に巻きつけられている構造とされてもよい。
【0027】
ベルト7は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト7は、タイヤの赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された1層以上(本実施形態では3層)のベルト層によって構成されている。ベルト層は、例えば、スチールコード等のベルトコードを含む。ベルト7は、トレッド部4において、カーカス6をタイヤ径方向外側から覆うように設けられている。
【0028】
タイヤ1は、インナーライナー9を有している。インナーライナー9は、タイヤ1のタイヤ内壁面を構成している。インナーライナー9は、タイヤの赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された複数のインナーライナー層によって構成されていてもよい。本実施形態では、インナーライナー9は、例えば、空気透過性の低いブチル系ゴムで構成されている。しかしながら、インナーライナー9は、ブチル系ゴムに限られず、他のゴム組成物、樹脂、又はエラストマで構成されていてもよい。
【0029】
タイヤ1は、通信装置20を備える。本実施形態では、通信装置20は、タイヤ1のサイドウォール部3に、カーカス6のタイヤ幅方向外側に位置するように埋設されている。ただし、通信装置20は、タイヤ1の任意の位置に設けられていてもよい。通信装置20は、タイヤ1の内部の別の位置に埋設されていてもよく、或いは、タイヤ1の内表面に張り付けられていてもよい。本開示において、通信装置20がタイヤに埋設されていることは、通信装置20がタイヤ1に完全に埋設されていることに加え、部分的に埋設されていることを含む。
【0030】
通信装置20は、無線通信を行うことができる。通信装置20は、例えば、RF(Radio Frequency)タグである。RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグともいう。通信装置20は、制御部及び記憶部を構成するIC(Integrated Circuit)チップ20Aと、ICチップ20Aに接続された1つ以上のアンテナ20Bと、を備える。ICチップ20Aは、タイヤ1の識別情報、製造年月日など、タイヤ1に関する任意の情報を記憶してもよい。本実施形態では、
図1に示されるように、通信装置20は、直線状、波状、又は螺旋状に延びる2つのアンテナ20BがICチップ20Aから互いに反対方向に延びるように設けられ、装置全体として長手状の形状を有している。ただし、通信装置20の構成は、図示例に限られない。例えば、通信装置20は、1つ又は3つ以上のアンテナ20BがICチップ20Aから直線状、波状、又は螺旋状に延びるように設けられた構成とされていてもよい。或いは、通信装置20は、ICチップ20Aから延びる1つのアンテナ20BがICチップ20Aの周囲を囲むように螺旋状に配置された構成とされていてもよい。
【0031】
ICチップ20Aは、1つ以上のアンテナ20Bで受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置20は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、通信装置20は、電池を更に備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置20は、アクティブ型の通信装置であってもよい。
【0032】
次に、
図3を参照して、タイヤ1の離反点Sについて説明する。
図3は、
図2に示されるタイヤ1のビード部2のタイヤ幅方向断面図である。
図3では、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態におけるタイヤ1が実線で示され、基準状態におけるタイヤ1が破線で示されている。
図3に示されるように、リムフランジR2は、ビードシートR1のタイヤ幅方向外端からタイヤ径方向に立ち上がり、タイヤ径方向外側に凸となる向きに湾曲して、タイヤ幅方向外側に延在している。ただし、リムフランジR2は、少なくともビードシートR1からタイヤ幅方向外側かつタイヤ径方向外側に延在していればよく、任意の形状とされていてもよい。
【0033】
タイヤ1の離反点Sは、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態での、リムR(本実施形態では、リムフランジR2)に接触しているタイヤ1の外表面のうち、最もタイヤ径方向外側の端部である。このため、タイヤ1がリムRに組み付けられた状態において、タイヤ1の外表面のうち、離反点Sよりもタイヤ径方向外側の範囲は、タイヤ1外部からも視認することができる可能性が高い。
【0034】
再び
図1を参照して、タイヤ1は、タイヤ1の外表面に、通信装置20の位置を示す表示部10を備える。
【0035】
表示部10は、任意の方法により、タイヤ1の外表面に設けられていてもよい。例えば、表示部10は、タイヤ1の外表面に塗装されていてもよい。また例えば、表示部10は、タイヤ1の外表面を突出させることにより形成されていてもよい。或いは、表示部10は、接着剤等により、タイヤ1の外表面に張り付けられていてもよい。表示部10が、タイヤ1の外表面に対して、立体的に設けられていることにより、表示部10に泥等が付着して汚れた場合でも、タイヤ1外部から把握することができる。この観点では、表示部10は、泥等が付着し難い突出部により形成されていることが好ましい。
【0036】
表示部10は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態での、タイヤ1のタイヤ径方向内側端部から離反点Sまでのタイヤ径方向に沿った長さを離反点距離SDとした場合に、基準状態での、タイヤ径方向に沿ったタイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲におけるタイヤ1の外表面に設けられている。これにより、タイヤ1が適用リムであるリムRに組み付けられた状態において、表示部10の少なくとも一部が、タイヤ1の外表面のうち、リムRに覆われる位置、又は、リムRに覆われない位置であってもタイヤ1の離反点Sの近傍に配置されるため、表示部10に汚れの付着又は摩耗が生じにくい。このため、タイヤ1に設けられた通信装置20の位置を把握しやすくなる。本開示において、「表示部10が、基準状態での、タイヤ径方向に沿ったタイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲におけるタイヤ1の外表面に設けられている」とは、表示部10の少なくとも一部が、タイヤ径方向において、タイヤ径方向内側端部から1.2×SDの範囲内に位置していればよい。そのため、当該記載は、
図2に示されるように、表示部10の全てが、タイヤ径方向内側端部から1.2×SDの範囲内に位置していることに加え、表示部10のタイヤ径方向外側の少なくとも一部が、タイヤ径方向内側端部から1.2×SDの範囲を超えて位置していることを含む。
【0037】
好ましくは、基準状態での、タイヤ径方向に沿ったタイヤ径方向内側端部からの距離DがSD≦D≦1.2×SDを満たす範囲におけるタイヤ1の外表面に、表示部10の少なくとも一部が位置している。これにより、タイヤ1に規定荷重が負荷された状態においても、表示部10の少なくとも一部がタイヤ1外部から視認することができる。
【0038】
表示部10は、任意の形状とされてもよい。本実施形態では、
図1に示されるように、表示部10は、長手状の形状を有し、タイヤ周方向に沿って設けられている。具体的には、表示部10は、タイヤ周方向において、表示部10が延在する範囲に通信装置20が含まれるように、設けられている。これにより、タイヤ1に設けられた通信装置20のタイヤ周方向位置が把握しやすくなる。
図1に示される例では、表示部10は、通信装置20のタイヤ幅方向外側に位置するタイヤ1の外表面を覆っていない。ただし、表示部10は、通信装置20のタイヤ幅方向外側に位置するタイヤ1の外表面を覆うように設けられていてもよい。これにより、タイヤ1に設けられた通信装置20のタイヤ径方向位置がさらに把握しやすくなる。
【0039】
表示部10のタイヤ周方向における長さは、任意の長さとされてもよい。表示部10のタイヤ周方向における長さが長くされることにより、表示部10の一部に泥等が付着した場合でも表示部10が視認しやすくなる。一方で、表示部10のタイヤ周方向における長さが短くされることにより、表示部10によって示される通信装置20のタイヤ周方向位置の範囲が狭くなるため、タイヤ1に設けられた通信装置20の位置がより正確に把握される。好ましくは、表示部10は、タイヤ1全周の1/8~1/4の範囲に及んでいる。これにより、表示部10が視認しやすく、かつ、タイヤ1に設けられた通信装置20のタイヤ周方向位置が把握しやすくなる。
【0040】
表示部10の色は、表示部10が設けられているタイヤ1の表面と異なる色とされる。これにより、タイヤ1において表示部10が視認しやすくなる。好ましくは、表示部10の色は、表示部10が設けられているタイヤ1の表面の色の補色とされる。これにより、タイヤ1において表示部10がさらに視認しやすくなる。
【0041】
表示部10の色は、タイヤ1における通信装置20の位置に応じて変更されてもよい。例えば、タイヤ1の赤道面CLを中心に、通信装置20が表示部10と同じ側に設けられている場合と、表示部10と異なる側に設けられている場合とで、表示部10に異なる色が付けられていてもよい。これにより、表示部10は、通信装置20のタイヤ周方向位置に加え、タイヤ幅方向位置を示すことができる。
【0042】
表示部10は、発光領域を含んでいてもよい。発光領域は、光を外部に放出可能な領域である。表示部10が発光領域を含むことで、夜間又は暗所等の暗い環境において、表示部10をタイヤ1の外部から容易に視認することができる。そのため、暗い環境における、通信装置30の位置の特定が容易になる。
【0043】
発光領域は、光を外部に放出可能な領域であれば、特に限定されない。発光領域は、例えば、蓄光材を含む蓄光塗料により構成されてもよい。蓄光材には、例えば、組成式:SrAl2O4:Eu,Dy、Sr4Al14O25:Eu,Dy、SrAl2O4:Eu,Dy+Sr4Al14O25:Eu,Dy、Sr4Al14O25:Eu,Dy+CaAl2O4:Eu,Nd、CaAl2O4:Eu,Nd、ZnS:Cu,Mn,Co、ZnS:Cu等が挙げられる。或いは、発光領域は、ブラックライト等の紫外線を照射されることにより発光する蛍光物質を含む蛍光塗料により構成されてもよい。
【0044】
以下、タイヤ1の変形例について、
図4を参照して説明する。
図4は、
図1に示されるタイヤ1の変形例の側面図である。
【0045】
タイヤ1の変形例では、表示部10は、通信装置20の位置として、通信装置20のタイヤ幅方向位置を示すために用いられる。具体的には、表示部10は、タイヤ1の赤道面CLを中心として、通信装置20と同じ側のタイヤ1の外表面に設けられている。これにより、表示部10によって、表示部10が設けられた側に、通信装置20が設けられていることを把握することができる。
【0046】
本変形例においても、表示部10は、長手状の形状を有し、タイヤ周方向に沿って設けられている。表示部10のタイヤ周方向における長さは、任意の長さとされてもよい。好ましくは、表示部10は、タイヤ1全周の半分以上の範囲に及んでいる。これにより、表示部10の一部に泥等が付着した場合でも表示部10が視認しやすくなる。
【0047】
表示部10は、タイヤ周方向において、表示部10が延在する範囲に通信装置20が含まれるように、設けられている。これにより、タイヤ1に設けられた通信装置20のタイヤ幅方向位置に加え、タイヤ周方向位置が把握しやすくなる。ただし、
図5に示されるように、表示部10は、タイヤ周方向において、タイヤ1全周の半分以上の範囲に及んでおり、かつ、表示部10が延在する範囲に通信装置20が含まれないように、設けられていていてもよい。これにより、タイヤ周方向において表示部10が設けられていない範囲に通信装置20があることがわかるとともに、表示部10が長いことで、表示部が視認しやすくなる。
【0048】
以上述べたように、本開示の一実施形態に係るタイヤ1は、通信装置20を備えるタイヤ1であって、タイヤ1を適用リム(リムR)に組み付け、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態での、適用リムに接触しているタイヤ1の外表面のうち、最もタイヤ径方向外側の端部をタイヤ1の離反点Sとし、適用リムに組み付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態での、タイヤ1のタイヤ径方向内側端部から離反点Sまでのタイヤ径方向に沿った長さを離反点距離SDとした場合に、基準状態での、タイヤ径方向に沿ったタイヤ径方向内側端部からの距離DがD≦1.2×SDを満たす範囲におけるタイヤ1の外表面に、通信装置20の位置を示す表示部10を備える。
【0049】
かかる構成を有するタイヤ1によれば、タイヤ1に設けられた通信装置20の位置を把握しやすくなる。特に、タイヤ1が適用リムであるリムRに組み付けられた状態において、表示部10の少なくとも一部が、タイヤ1の外表面のうち、リムRに覆われる位置、又は、リムRに覆われない位置であってもタイヤ1の離反点Sの近傍に配置されるため、表示部10に汚れの付着又は摩耗が生じにくくなる。
【0050】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、タイヤ1に設けられる通信装置20は1つであるものとして説明した。しかしながら、タイヤ1には、複数の通信装置20が設けられていてもよい。かかる場合、タイヤ1の表面に、それぞれの通信装置20のタイヤ周方向位置を示す表示部10が複数設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示はタイヤに関する。
【符号の説明】
【0053】
1:タイヤ、 2:ビード部、 3:サイドウォール部、 4:トレッド部、 5:ビードコア、 6:カーカス、 6A:カーカス本体部、 6B:カーカス折返し部、 7:ベルト、 8:ビードフィラー、 9:インナーライナー、 10:表示部、 20:通信装置、 20A:ICチップ、 20B:アンテナ、 CL:タイヤ赤道面、 R:リム(適用リム)、 R1:ビードシート、 R2:リムフランジ、 S:離反点、 SD:離反点距離