IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-空気調和システム 図1
  • 特開-空気調和システム 図2
  • 特開-空気調和システム 図3
  • 特開-空気調和システム 図4
  • 特開-空気調和システム 図5
  • 特開-空気調和システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085879
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20230614BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20230614BHJP
   F24F 11/56 20180101ALI20230614BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20230614BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20230614BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20230614BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230614BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20230614BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F11/61
F24F11/56
F24F11/52
F24F11/72
F24F6/00 G
F24F7/007 B
F24F6/00 E
F24F110:10
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200180
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】工藤 憲作
【テーマコード(参考)】
3L055
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L055AA01
3L055DA03
3L056BD02
3L056BD03
3L056BF06
3L260AA01
3L260AB02
3L260AB14
3L260AB15
3L260BA03
3L260BA06
3L260BA12
3L260BA74
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA28
3L260CB61
3L260CB63
3L260CB64
3L260CB68
3L260CB75
3L260FA03
3L260FA06
3L260GA11
3L260HA06
3L260JA18
(57)【要約】
【課題】加湿器や加湿機能付き空気清浄機の水タンク内の水の残量が、所定時間の運転において足りるかどうかを判断することができる空気調和システムを提供する。
【解決手段】残留水量を検出する水量検出手段16を備え加湿機能を有する加湿器4と、加湿器4を制御する制御手段10と、加湿器4が設置される居室3の温度および湿度と、居室3の空間の大きさに関連する情報と、所定時間の間、設定された目標設定湿度に基づいて加湿器4が運転するために必要な水量である必要水量を算出する水量算出手段17と、残留水量と必要水量とを比較する残留水量判断手段30と、を有する空気調和システム1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留水量を検出する水量検出手段を備え加湿機能を有する第1空気調和機と、
前記第1空気調和機を制御する制御手段と、
前記第1空気調和機が設置される室内の温度および湿度と、前記室内の空間の大きさに関連する情報と、所定時間の間、設定された目標設定湿度に基づいて前記第1空気調和機が運転するために必要な水量である必要水量を算出する水量算出手段と、
前記残留水量と前記必要水量とを比較する残留水量判断手段と、を有することを特徴とする空気調和システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記残留水量判断手段が、前記残留水量が前記必要水量より少ないと判断した場合は、前記残留水量が前記必要水量より少ないことを通知することを特徴とする請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記必要水量の算出に前記室内の単位時間当たりの換気量を加えて、前記水量算出手段は前記必要水量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記室内の温調機能を有する第2空気調和機を有し、
前記室内の温度を前記第2空気調和機で設定する目標設定温度として、前記水量算出手段は前記必要水量を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記第2空気調和機は、所定時刻に駆動し所定時間経過後に駆動を終了するタイマ運転が可能であり、
前記第2空気調和機のタイマ運転による駆動に連動して、前記第1空気調和機は駆動することを特徴とする請求項4に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記タイマ運転による駆動開始時刻あるいは前記駆動開始時刻の所定時間前に、前記残留水量判断手段は前記残留水量が前記必要水量より少ないかどうかを判断することを特徴とする請求項5に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記タイマ運転による駆動開始時刻あるいは前記駆動開始時刻の所定時間前に、前記残留水量が前記必要水量より少ないことを通知することを特徴とする請求項6に記載の空気調和システム。
【請求項8】
前記第1空気調和機は記憶部を有し、前記室内の空間の大きさに関連する情報として前記室内の容積を予め記憶部に記憶していることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項9】
前記空気調和システムと通信可能な携帯端末を有し、
制御手段は、前記携帯端末に前記残留水量が前記必要水量より少ないことを通知することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システムであって、加湿空気を室内に供給する加湿機能を備えた空気調和運転における制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷暖房機能を有するエアコンと、加湿機能を有する空気清浄機と、エアコンからの情報に応じて空気清浄機を制御する、あるいは、空気清浄機からの情報に応じてエアコンを制御する家電制御用のサーバとを備えたネットワークシステムが開示されている。例えば、エアコンが暖房運転を実行すると、サーバは空気清浄機に加湿運転をさせ、あるいは、空気清浄機に備えられた照度センサが部屋の照度が暗くなったことを検知すると、サーバはエアコンにおやすみ運転(タイマ運転)を開始させる。
【0003】
特許文献1に開示されたネットワークシステムでは、エアコンからの情報に応じて空気清浄機を制御する、あるいは、空気清浄機からの情報に応じてエアコンを制御することで互いの動作を連動させることによって、利用者にとってより快適な空調環境を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2019/064616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたネットワークシステムでは、エアコンの動作に連動して空気清浄機を動作させることができるため、例えば、所定時刻に運転が開始されて所定時間だけ運転が行われる、いわゆる、おやすみ運転が設定されており、このときの運転モードが暖房運転である場合は、利用者の就寝中にエアコンの暖房運転と、このエアコンの暖房運転に連動させて空気清浄機の加湿運転を動作させることができる。しかし、利用者の就寝中にエアコンの暖房運転に空気清浄機を連動させて加湿運転を行った場合、就寝中に空気清浄機に備えられた水タンクから水がなくなることがある。その場合、利用者が就寝中に水切れに気づくのは難しく、水がなくなった後は加湿されずに暖房運転のみ継続されてしまうという問題がある。このような問題の発生を防ぐためには、就寝前に利用者が空気清浄機に水を補充すればよいが、おやすみ運転の設定の度に水を補充するのは面倒である。また、利用者がおやすみ運転の設定時に空気清浄機の水タンクの水の残量を確認しても、その残量でおやすみ運転の加湿運転に足りるのかどうかを判断するのは難しいという課題がある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、加湿器や加湿機能付き空気清浄機の水タンク内の水の残量が、加湿運転を所定時間行うのに足りるかどうかを判断することができる空気調和システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、残留水量を検出する水量検出手段を備え加湿機能を有する第1空気調和機と、第1空気調和機を制御する制御手段と、第1空気調和機が設置される室内の温度および湿度と、室内の空間の大きさに関連する情報と、所定時間の間、設定された目標設定湿度に基づいて第1空気調和機が運転するために必要な水量である必要水量を算出する水量算出手段と、残留水量と必要水量とを比較する残留水量判断手段と、を有する空気調和システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加湿器や加湿機能付き空気清浄機の水タンク内の水の残量が、所定時間の運転において足りるかどうかを判断することができる空気調和システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る空気調和システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気調和システムの制御ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気調和システムにおける第2空気調和機の制御フロー図である。
図4】本発明の実施形態に係る空気調和システムにおける第1空気調和機の制御フロー図である。
図5】本発明の実施形態に係る第2空気調和機が配置された室内の加湿しない場合の温度と湿度の推移を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る第2空気調和機が配置された室内の換気をする場合であって加湿しない場合の温度と湿度の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る空気調和システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態の空気調和システム1の構成図である。図2は、本実施形態の空気調和システム1の制御ブロック図である。図3は、本実施形態の空気調和システムにおける第2空気調和機の制御フロー図である。図4は、本実施形態の空気調和システムにおける第1空気調和機の制御フロー図である。尚、以下に説明する加湿器制御部10または室内機制御部20が本発明の制御手段に相当する。
【実施例0012】
図1を参照して、空気調和システム1について説明する。図1は本発明の実施形態における空気調和システム1の全体構成図を示す。空気調和システム1は、加湿機能を有する加湿器4および暖房機能を有するエアコン6を有する。加湿器4は本発明における第1空気調和機であり、エアコン6は本発明における第2空気調和機である。加湿器4およびエアコン6は居室3に設置されて、加湿器4は居室3の加湿を行い、エアコン6は居室3の温調を行う。加湿器4は居室3を加湿するための水タンク5を備えており、水タンク5内の水は利用者により適宜補充される。エアコン6は暖房機能だけでなく冷房機能を有していても構わない。加湿器4は加湿器4を制御する加湿器制御部10を備え、エアコン6はエアコン6を制御する室内機制御部20を備えている。また、空気調和システム1は、加湿器4やエアコン6を遠隔で操作可能な例えばスマートフォンなどの携帯端末9を備えている。
【0013】
図2は本発明の実施形態における空気調和システム1の制御ブロック図を示す。なお、加湿器制御部10と室内機制御部20とが本実施形態の制御手段である。本実施形態においては、後述のように加湿器制御部10と室内機制御部20が、加湿器制御部10が備える通信部12と室内機制御部10が備える通信部22によって相互に接続され、加湿器4とエアコン6は連動して運転することが可能となっている。あるいは、制御手段は空気調和システム1とは別に設けられてもよく、例えば、加湿器制御部10および室内機制御部20と通信可能な図示しないサーバを備え、そのサーバが制御手段であっても構わない。また、図1に示すように制御手段にスマートフォンやタブレット端末といった携帯端末9が接続されていても構わない。それにより、携帯端末9から加湿器4やエアコン6を制御することができる。
【0014】
加湿器4は居室3の湿度を検知する湿度センサ7を有し、この湿度センサ7で検出した居室3の湿度が、利用者が設定する目標設定湿度となるように居室3の加湿を行う。エアコン6は居室3の室温を検知する温度センサ8を有し、この温度センサ8で検出した居室3の室温が、利用者が設定する目標設定温度となるように居室3の温調を行う。また、加湿器4およびエアコン6はそれぞれ、所定時刻に運転を開始する、あるいは、所定時刻に運転を終了するタイマ運転機能を有している。タイマ運転は、例えば、就寝前の所定時刻に運転を開始し、運転を開始してから所定時間が経過した時刻に運転が終了する、いわゆる、おやすみ運転が可能である。タイマ運転中は、居室3の温度を利用者が設定した目標設定温度に維持できるようにエアコン6が運転され、居室3の湿度を利用者が設定した目標設定湿度に維持できるように加湿器4が運転される。
【0015】
また、加湿器制御部10は、エアコン6の運転に連動させて加湿器4を運転させることができる。そのため、エアコン6の運転と加湿器4の運転とが連動するように設定しておけば、例えば、エアコン6を暖房おやすみ運転に設定していた場合、エアコン6がおやすみ運転により運転を開始すれば、加湿器4もそれに連動して加湿運転が開始される。
【0016】
加湿器制御部10は、湿度センサ7、CPU11、通信部12、入力部13、記憶部14、報知部15、水量検出手段16、水量算出手段17、残留水量判断手段30を備えている。CPU11は、記憶部14に記憶されているプログラムを実行することにより、加湿器4を制御する。通信部12は、有線通信あるいは無線通信によってエアコン6、携帯端末9との間でデータをやり取りする。入力部13はボタンなどの入力手段を有し、利用者からの命令を受け付けて、命令をCPU11に入力する。例えば、目標設定湿度の設定やタイマ運転の設定は入力部13によって行われる。入力部13は加湿器4に備えられているが、図示しないリモコンがある場合はリモコンに備えられていてもよい。また、利用者から加湿器4への命令は、携帯端末9からでも可能である。記憶部14は、CPU11によって実行されるプログラムや、CPU11によるプログラムの実行により生成されたデータ、入力部13を介して入力されたデータ、携帯端末9やエアコン6から受信したデータなどを記憶する。報知部15は、CPU11からの信号に基づいて音声、文字、画像などを出力して利用者に加湿器4の運転情報を報知する。水量検出手段16は加湿器4に備えられた水タンク5に貯留する水の量である残留水量を検知する。水量算出手段17は、必要水量算出情報に基づいて、居室3内を所定時間(例えば、タイマ運転としてのおやすみ運転時間)の間、湿度を目標設定湿度とするために必要な水量である必要水量を算出する。必要水量算出情報は、加湿器4が設置される居室3における運転開始前の温度および湿度、居室3の空間の大きさに関連する情報、おやすみ運転時間における目標設定温度および目標設定湿度、である。
【0017】
室内機制御部20は、温度センサ8、CPU21、通信部22、情報入力部23、記憶部24、報知部25、を備えている。CPU21は、記憶部24に記憶されているプログラムを実行することにより、エアコン6を制御する。通信部22は、有線通信あるいは無線通信によって加湿器4、携帯端末9との間でデータをやり取りする。情報入力部23はボタンなどの入力手段を有し、利用者からの命令を受け付けて、命令をCPU21に入力する。例えば、目標設定温度の設定やタイマ運転の設定は情報入力部23によって行われる。情報入力部23はエアコン6に備えられているが、図示しないリモコンがある場合はリモコンに備えられていてもよい。また、利用者からのエアコン6への命令は、携帯端末9からでも可能である。記憶部24は、CPU21によって実行されるプログラムや、CPU21によるプログラムの実行により生成されたデータ、情報入力部23を介して入力されたデータ、携帯端末9、加湿器4から受信したデータなどを記憶する。報知部25は、CPU21からの信号に基づいて利用者に音声、文字、画像などを出力して利用者にエアコン6の運転情報を報知する。また、報知部25は室内機6の運転情報を報知部15に報知する、また、報知部15は加湿器10の運転情報を報知部25に報知する、というように、報知部25と報知部15は相互に相手方の運転情報を報知してもよい。
【0018】
また、加湿器制御部10は、残留水量判断手段30を備えている。残留水量判断手段30は水量算出手段17で求めた必要水量と水量検出手段16で求めた残留水量を比較し、その結果をCPU11に通知する。
【0019】
必要水量算出情報において、加湿器4が設置される居室3における運転開始前の温度および湿度は、加湿器4が湿度センサ7に加えて温度センサを備えていれば、これら各センサで検出した値を用いても構わず、また、エアコン6が温度センサ8に加えて湿度センサを備えていれば、これら各センサで検出した値を用いても構わない。居室3の空間の大きさに関連する情報は、例えば、居室3の容積であり、加湿器4の入力部13から直接入力したもの、エアコン6の情報入力部23から直接入力したもの、あるいは、加湿器4の記憶部14またはエアコン6の記憶部24に予め記憶されたものでも構わない。おやすみ運転時間における目標設定温度は、エアコン6の情報入力部23により利用者が入力したものであり、目標設定湿度は、加湿器4の入力部13により利用者が入力したものである。
【0020】
尚、おやすみ運転において、エアコン6の暖房運転が行われず、加湿器4の運転だけが行われる場合において、必要水量を算出する場合は、必要水量算出情報として目標設定温度は無くても構わない。その場合の必要水量の算出に必要な必要水量算出情報は、加湿器4が設置される居室3における運転開始前の温度および湿度、居室3の空間の大きさに関連する情報、おやすみ運転時間における目標設定湿度である。また、例えば、24時間換気システムのように、単位時間当たりの概ねの換気量が把握できる場合は、当該換気量が必要水量算出情報に加わる。
【0021】
次に図5、6を用いて、居室3(室内)の暖房時における温度と湿度の変化について説明する。尚、単に湿度と示す場合は相対湿度を示す。図5は、居室3に換気扇などの換気設備がない場合に、暖房運転時に加湿器4を動作させない、つまり、加湿しないときの温度と湿度(相対湿度)の変化を示している。一例として、暖房前の室内の温度(室温)および湿度は外気の温度および湿度と略同じであり、例えば室温は6.8℃、湿度は42%である。この状態から暖房運転の目標設定温度を例えば20.5℃として暖房運転を開始すると、室温が上昇するにつれて居室3内の空気中に含むことができる最大の水蒸気量である飽和水蒸気量が大きくなって居室3の湿度が相対的に低下する。そして、室温が目標設定温度の20.5℃に達すると湿度は25%まで低下する。この後、室内の温度が目標設定温度に維持されかつ加湿器4による加湿がなければ、室内の湿度も変化せず湿度25%のままである。このように、換気設備がない居室3で暖房運転を行う際に加湿器4を動作させない場合は、室温が上昇するにつれて室内の湿度が下がってしまい、室内の温度が目標設定温度に達した後は室温が変化しない限り室内の湿度は変化しないこと分かる。以上のことから、換気設備がない居室3においては、暖房運転中、例えば、おやすみ運転で暖房運転を行うときに加湿器4を連動させて居室3の湿度を所定の目標湿度とするためには、室温が目標設定温度に達するまでの間加湿器4を運転すればよく、加湿器4の水タンク5には上記室温が目標設定温度に達するまでの間に、居室3の湿度を所定の目標湿度とするために必要な水分量以上の水が貯留されていればよい。
【0022】
次に、上記換気設備がない居室3において、室温が目標設定温度に達するまでの間に、居室3の湿度を所定の目標湿度とするために必要な水分量の算出方法について説明する。ここでは、先に例示した室温6.8℃、湿度42%の状態から、暖房運転により室温を20℃とし加湿器4の運転により相対湿度を60%にする場合を例に挙げて、必要な水分量の算出方法について説明する。
【0023】
まず、暖房運転により室温が20℃となったときの絶対湿度を式(1)~(3)を用いて求める。なお、式(1)はTetensのパラメータ値による近似式であり、理想気体ではない大気での飽和水蒸気圧を求める式である。

Et=6.1078×10((t×a)/(t+b))・・・(1)
Ep=Et×RH・・・(2)
VH=217×(Ep/(t+273.15))・・・(3)

Et:飽和水蒸気圧(単位:hPa)
Ep:水蒸気圧(単位:hPa)
VH:絶対湿度(単位:g/m
RH:相対湿度
t:室温(単位:℃)
a、b:定数(水の場合:a=7.5、b=237.3)

加湿器4による加湿が行われない状態で室温が20℃まで上昇した場合の湿度は図5より25%(湿度センサ7で検出した暖房運転前の居室3の湿度)である。これら室温20℃および湿度25%を上記式(1)~(3)に代入すれば、絶対湿度は4.32g/mとなる。つまり、室温20℃で湿度25%のときの居室3内の空気の1m当たりの水分量は4.32gとなる。
【0024】
次に、室温20℃における湿度を60%(=目標湿度)とする場合の絶対湿度を、同様に式(1)~(3)を用いて求めると、絶対湿度は10.38g/mとなる。つまり、室温20℃で湿度60%のときの居室3内の空気の1m当たりの水分量は10.38gとなる。従って、室温6.8℃、湿度42%の状態から、暖房運転を行うことによって室温を20℃とし、加湿器4の運転により居室3の湿度を目標湿度である60%にする場合に必要な水分量(空気の1m当たり)は、10.38g-4.32g=6.06gとなる。
【0025】
次に、居室3の空間容積に合わせた必要水量の予測について説明する。ここで、居室3は、一例として空間高さは2.4m、広さは6畳として説明する。居室3の空間容積は23.3m(=畳6枚分9.7m×2.4m)であるため、居室3を湿度60%にするのに必要な水量(必要水量)は、空間容積:23.3mに上で求めた1m当たりの必要水分量:6.06gを乗じて、23.3m×6.06g≒141.2g(ml)となる。図5を用いて説明したように、換気設備がない居室3においては、室温が設定温度に到達した後は湿度が変化しないため加湿器4による加湿は不要である。よって、加湿器4の運転前に水タンク5内に上記算出した141.2g以上の水が貯留されていれば、加湿運転の途中で湿度60%に到達する前に加湿器4から水がなくなることはない。
【0026】
次に、図6を用いて、居室3に換気設備が備えられている場合について説明する。本実施例では一例として、建築基準法で定められる24時間換気システムを居室3に備える場合について説明する。24時間換気システムでは、1時間で部屋の半分の空気が入れ替わる、つまり、部屋全部の空気が入れ替わるのに2時間を要する。おやすみ運転で運転時間を例えば8時間に設定したとすると、おやすみ運転中に湿度60%を維持するために必要な加湿回数は次のように予測することができる。ただし、目標設定温度は20℃で一定とする。
【0027】
実際の24時間換気システムでは、常に居室3の空気が少しずつ入れ替わっているが、前述したように24時間換気システムは居室3の空気は2時間で全て入れ替わるように駆動しているため、おやすみ運転を8時間行っている間に24時間換気システムによって居室3の全ての空気の入れ替えが3回行われる、と考えることができる。そこで、エアコン6において暖房運転でのおやすみ運転開始時に加湿器4を連動させる際は、図6に示すように、加湿器4の駆動による加湿運転の回数は4回必要と考えて、4回の加湿運転で使用される水分量を求める。
【0028】
上述したように、24時間換気システムでは2時間ごとに部屋全部の空気が入れ替わる。そのため、8時間のおやすみ運転の場合、図6に示すように居室3の全ての空気の入れ替えが3回行われるので、室温6.8℃、湿度42%の状態から室温を20℃、湿度を60%に維持するために必要な加湿運転は4回となる。従って、居室3が上述した居室3に換気設備がない場合と同様の大きさ(空間高さは2.4m、広さは6畳)である場合、8時間のおやすみ運転中に室温:20℃で湿度:60%を維持するのに必要な水量(必要水量)は、換気設備がない場合の必要水量:141.2g×加湿運転4回=564.8gとなり、加湿器4の水タンク5内には564.8g以上の水が貯留されていればよい。
【0029】
尚、必要水量については、単位時間当たりの換気量を用いて算出することもできる。すなわち、必要水量=(単位時間当たりの換気量)×(目標設定湿度に必要な単位容積当たりの水量)×(おやすみ運転での運転時間)という算出式となる。上記の例では、24時間換気システムは、1時間で居室3の空気が半分入れ替わるので、単位時間当たりの換気量は居室3の容積:23.3mの半分=11.65mとなる。従って、必要水量=11.65m×6.06g/m×8h=は、564.8mlとなる。
【0030】
本実施形態の空気調和システム1は、おやすみ運転などのタイマ運転で暖房運転を行っている間、室内の湿度を目標設定湿度にするために必要な水量である必要水量を上述した方法で求め、求めた必要水量と加湿器4の水タンク5内に残っている残留水量とを比較する。そして、比較した結果、残留水量が必要水量より少ない場合は、タイマ運転開始前に、利用者に残留水量が必要水量より少ないことを通知して、利用者に水タンク5内の水の補充を促すことができる空気調和システムである。
【0031】
室内の湿度を目標設定湿度にするために必要な水量である必要水量を求めるための式(1)~(3)は、加湿器制御部10の記憶部14に記憶されている。例えば、おやすみ運転が設定された場合、加湿器制御部10では、水量算出手段17が、湿度センサ7で検出した居室3の現在の湿度、入力部13から入力された目標設定湿度、エアコン6の室内機制御部20から入手した目標設定温度を、記憶部14に記憶された式(1)~(3)に代入して水量算出手段17に必要水量を算出する。残留水量判断手段30は、水量算出手段17が算出した必要水量と水量検出手段16によって検出された残留水量とを比較し、残留水量が必要水量より少ない場合は、その結果をCPU11に通知し、CPU11は報知部15に残留水量が必要水量より少ないことを通知するよう指示をする。
詳細な制御フローについては、次に説明する。
【0032】
図3の制御フロー図を用いて、第2空気調和機であるエアコン6の室内機制御部20が実行する制御の流れについて説明する。ここでは、タイマ運転の一例として暖房運転でのおやすみ運転(以降、暖房おやすみ運転と記載)が利用者によって予約された場合を説明する。まず、エアコン6の室内機制御部20は、タイマ運転としての暖房おやすみ運転が予約されたかどうか判断する(ST1)。暖房おやすみ運転が予約されている場合(ST1のYes)は、利用者によってエアコン6の運転と加湿器4との連動運転ありとされているかどうかを判断する(ST2)。加湿器4との連動運転ありの場合(ST2のYes)は、現時点がエアコン6の暖房おやすみ運転開始10分前かどうか判断する(ST3)。暖房おやすみ運転開始10分前になっていれば(ST3のYES)、エアコン6の暖房運転に加湿器4が連動して運転することを要求する連動要求信号および加湿に必要な水量を算出するための情報(必要水量算出情報)を加湿器4に送信する。ここで必要水量算出情報は、暖房おやすみ運転が開始される前の居室3の温度および湿度、居室3の空間の大きさに関する情報、目標設定温度、目標設定湿度であるが、目標設定湿度は加湿器4が有しているため、エアコン6から加湿器4に送信される必要水量算出情報から目標設定湿度の情報は除かれる。また、居室3の湿度は加湿器4の湿度センサ7で検出するため、居室3の湿度も必要水量算出情報から除かれる。なお、エアコン6で目標設定湿度の設定が可能である場合や、エアコン6に湿度センサを備える場合は、これら目標設定湿度や居室3の湿度を必要水量算出情報に含めてもよい。
【0033】
次に、室内機制御部20は暖房おやすみ運転の開始時刻になったかどうかを判断し(ST5)、暖房おやすみ運転の開始時刻になった場合は(ST5のYes)、暖房おやすみ運転開始信号を加湿器4に送信する(ST6)。次に、室内機制御部20はエアコン6で暖房おやすみ運転を開始し、タイマ計測を開始する(ST7)。なお、室内機制御部20には図示しない計時手段が搭載されている。次に、室内機制御部20は利用者によって予め設定された暖房おやすみ運転の運転時間が経過したかどうかを判断し(ST8)、暖房おやすみ運転の運転時間が経過した場合(ST8のYes)は、暖房おやすみ運転終了の信号を加湿器4に送信し(ST9)、エアコン6の暖房おやすみ運転を終了し、タイマ計測をリセットする(ST10)。なお、ST8の処理において暖房おやすみ運転の運転時間が経過していない場合は(ST8のNo)、室内機制御部20はST8に処理を戻して、暖房おやすみ運転の運転時間が経過するまでエアコン6と加湿器4とを連動させた暖房おやすみ運転を継続する。
【0034】
ST2の処理において、利用者によってエアコン6の運転と加湿器4との連動運転ありとされていない場合(ST2のNo)は、室内機制御部20は加湿器4を連動させて運転することなく暖房おやすみ運転を開始してタイマ計測を開始し(ST11)、暖房おやすみ運転の運転時間が経過した場合(ST12のYes)は、エアコン6の暖房おやすみ運転を終了し、タイマ計測をリセットする(ST10)。なお、ST12の処理において暖房おやすみ運転の運転時間が経過していない場合は(ST12のNo)、室内機制御部20はST12に処理を戻して、暖房おやすみ運転の運転時間が経過するまでエアコン6で暖房おやすみ運転を継続する。
【0035】
次に、図4の制御フロー図を用いて、第1空気調和機である加湿器4の加湿器制御部10が実行する制御の流れについて説明する。まず、加湿器4の加湿器制御部10は、エアコン6から連動要求信号を受信したかどうか判断する(ST21)。連動要求信号を受信した場合は(ST21のYes)、エアコン6から必要水量算出情報を受信したかどうかを判断する(ST22)。エアコン6から必要水量算出情報を受信していない場合は(ST22のNo)、加湿器制御部10はST22に処理を戻してエアコン6から必要水量算出情報を受信するのを待つ。エアコン6から必要水量算出情報を受信した場合は(ST22のYes)、加湿器制御部10は、加湿器4で利用者によって設定されている目標設定湿度と、湿度センサ7で検出した居室3の湿度と、エアコン6から送信された必要水量算出情報を用いて、すなわち、居室3における運転開始前の温度および湿度、居室3の空間の大きさに関連する情報、目標設定湿度および目標設定温度を用いて必要水量を算出する。なお、加湿器制御部10は算出した必要水量を記憶部14に記憶する。
【0036】
次に、加湿器制御部10は水量検出手段16を操作して水タンク5内の残留水量を検出し(ST24)、残留水量がST23で算出した必要水量より少ないかどうかを判断する(ST25)。残留水量が必要水量より少ない場合は(ST25のYes)、加湿器制御部10は水の補充を利用者に通知する(ST26)。水の補充の通知は、報知部15を介して行われ、例えば、音声、文字、画像などにより報知される。次に、加湿器制御部10はエアコン6からの暖房おやすみ運転開始信号を受信したかどうかを判断する(ST27)。暖房おやすみ運転開始信号を受信した場合(ST27のYes)は、加湿器制御部10は加湿器4による加湿運転を開始する(ST28)。次に、加湿器制御部10はエアコン6からの暖房おやすみ運転終了信号を受信したかどうかを判断する(ST29)。暖房おやすみ運転終了信号を受信した場合(ST29のYes)は、加湿器制御部10は加湿器4による加湿運転を終了する(ST30)。なお、ST29の処理において、暖房おやすみ運転終了信号を受信していない場合(ST29のNo)は、加湿器制御部10はST29に処理を戻して、暖房おやすみ運転終了信号を受信するまで加湿器4による加湿運転を継続する。
【0037】
ST21の処理において、エアコン6から連動要求信号を受信しない場合(ST21のNo)は、加湿器制御部10は加湿器4を起動せずに処理を終了する。また、ST25の処理において残留水量が必要水量以上である場合は(ST25のNo)、水を補充する必要はないので、加湿器制御部10は水の補充を利用者に通知することなくST27に処理を進める。なお、ST26の処理で水の補充を利用者に報知してから所定時間(例えば5分後)経過後に、加湿器制御部10が処理をST24に戻して再度残留水量を検出し、ST25の処理で残留水量が必要水量より多くなっているか否かを確認するようにしてもよい。
【0038】
以上に説明した本実施形態では、水の補充の報知は、加湿器4の報知部15を介して行われるが、空気調和システム1と接続している携帯端末9に報知しても構わない。
【0039】
また、本実施形態では、空気調和システム1は加湿器4とエアコン6を備えて、タイマ運転時に加湿器4とエアコン6を連動させ、居室3を目標設定湿度と目標設定温度とにする場合に、タイマ運転の間目標設定湿度を維持するのに必要な水量を求めることを例に挙げて説明したが、加湿器4のみをタイマ運転させて居室3を一定時間の間目標設定湿度とする場合においても、同様に必要水量を求めることができる。この場合は、必要水量を算出する場合の必要水量算出情報は加湿器4が取得する必要があり、例えば加湿器4は湿度センサ7に加えて温度センサも有し、加湿器4が設置される居室3における運転開始前の温度および湿度を各センサで検出する。また、居室3の空間の大きさに関連する情報は、利用者による加湿器4の入力部13からの入力により取得する。
【0040】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0041】
1…空気調和システム、2…制御手段、3…居室、4…加湿器、5…水タンク、6…エアコン、7…湿度センサ、8…温度センサ、9…携帯端末、10…加湿器制御部、11…CPU、12…通信部、13…入力部、14…記憶部、15…報知部、16…水量検出手段、17…水量算出手段、20…室内機制御部、21…CPU、22…通信部、23…情報入力部、24…記憶部、25…報知部、30…残留水量判断手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6