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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085890
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】揚陸準備方法及び揚陸準備システム
(51)【国際特許分類】
   F41H 11/12 20110101AFI20230614BHJP
【FI】
F41H11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200198
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】721009461
【氏名又は名称】山本 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂
(57)【要約】
【課題】機雷原や地雷原によって防御されている海岸への強襲揚陸を行う際に、人員や車両などが通過しても機雷や地雷が作動しないようにする。
【解決手段】揚陸目標海岸5における揚陸予定部位5aに、上側に加わった力を分散化して下側に加える均圧通路40を展開して、この均圧通路40の通行路面41cを通行することにより、人員や車両などが通過する際の荷重を圧力分散技術で分散させて、機雷や地雷が作動しないようにする。これにより、揚陸予定部位5aにおける通行を安全にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機雷(21a)と地雷(21b)の少なくとも一方を含む爆発物(21)が配置されている揚陸目標海岸(5)への揚陸を行うための揚陸準備方法であって、
前記揚陸目標海岸(5)における前記揚陸予定部位(5a)に、人員(2)と車両(3)の少なくとも一方を含む通行体(2、3)が通行する均圧通路(40)を展開して、前記均圧通路(40)の上側の通行路面(41c)に加わる荷重を分散化して下側の接地層(41A)に伝達することで前記爆発物(21)の爆発を回避して、前記揚陸予定部位(5a)における通行を安全にすることを特徴とする揚陸準備方法。
【請求項2】
前記均圧通路(40)の展開後において、前記均圧通路(40)を構成する圧力分散層(41B)の気体室(41b)に気体(A)を送り込んで、前記気体室(41b)内の内部気体圧(Pa)を大気圧よりも大きくすることで、前記均圧通路(40)の上側の前記通行路面(41c)に加わる力を分散化して下側の前記接地層(41A)に伝達することを特徴とする請求項1に記載の揚陸準備方法。
【請求項3】
前記均圧通路(40)の展開後において、前記均圧通路(40)の一部に水を供給して、この水の重みにより、踏圧により爆発する前記爆発物(21)を押圧して誘爆させる荷重工程M32bを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の揚陸準備方法。
【請求項4】
前記均圧通路(40)の展開後において、前記通行体(2、3)が水面上に配置されている前記通行路面(41c)を通行する際に、前記均圧通路(40)の浮力により、前記通行体(2、3)の荷重を支えて、前記通行体(2、3)の水没を回避することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の揚陸準備方法。
【請求項5】
機雷(21a)と地雷(21b)の少なくとも一方を含む爆発物(21)が配置されている揚陸目標海岸(5)への揚陸を行うために使用する揚陸準備システム(S1)であって、
水底(B)若しくは地底(C)に接する接地層(41A)と、気体室(41b)を有する圧力分散層(41B)と、通行路面(41c)を有する路面層(41C)とを積層して構成される積層構造体(41)と、内部水圧(Pw)又は内部気体圧(Pa)により形状を維持する骨組部材(42)を備える均圧通路ユニット(40U)で構成された均圧通路(40)を含む均圧通路システム(S40)と、前記気体室(41b)に気体を供給する高圧気体供給用システム(S52)とを備えていることを特徴とする揚陸準備システム。
【請求項6】
前記骨組部材(42)に水を供給する高圧水供給用システム(S51)を備えていることを特徴とする請求項5に記載の揚陸準備システム。
【請求項7】
前記均圧通路ユニット(40U)が、複数の前記気体室(41b)を有した圧力分散層(41B)を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の揚陸準備システム。
【請求項8】
前記均圧通路ユニット(40U)が、積層構造体(41)と前記骨組部材(42)を備えて構成されると共に、前記積層構造体(41)が、水底(B)若しくは地底(C)に接し、かつ、可撓性を有する前記接地層(41A)と、前記気体室(41b)を有する圧力分散層(41B)と、前記通行路面(41c)を有する路面層(41C)とを積層して構成されていることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の揚陸準備システム。
【請求項9】
前記均圧通路ユニット(40U)が、磁気、可視光線、赤外線、音、振動、電波の少なくとも一つを遮断若しくは減衰する遮蔽層(41D)と、前記通行路面(41c)を通行する人員(2)若しくは車両(3)を覆う覆い部材(46)と、浮力を発生する浮力層(41E)と、浮力を発生する浮力構造体(44)の少なくとも一つを備えて構成されていることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の揚陸準備システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機雷原や地雷原によって防御されている海岸への揚陸を行うための揚陸準備方法及び揚陸準備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機雷原や地雷原によって防御されている海岸への揚陸を行うためには、水際の前後の地上部分や水中(若しくは海中)部分に施設されている地雷と機雷等の爆発物と、逆茂木、鉄条網等の妨害物からなる水際障害物を無効化する必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
これらの水際障害物で目に見える妨害物は砲撃などにより除去すればよいが、埋設状態若しくは水没状態にある地雷、機雷、妨害物などの障害物は、それらの存在の有無を含めてその位置やその爆発の規模を予測することが困難である。
【0004】
そして、地面に埋設される地雷に関しては、人員を対象とする対人用地雷と戦車等の車両を対象とする対車両用地雷がある。この対人用地雷には、対人用地雷を踏んだ時の踏圧が有ったときに作動したり、対人用地雷を踏んだ足を挙げた時の踏圧が無くなるときに作動したり、対人用地雷の信管に繋留される索線を足で引っ掛けて安全ピンを外したりすることで作動したりする地雷がある。また、赤外線センサや磁気センサを用いている地雷もある。
【0005】
また、対車両用地雷では、接触や踏圧により作動したり、車両通過による磁気や振動の変化を検知して作動したりする。この対車両用地雷の想定される感知重量は、例えば、70kgf~130kgf、または、100kgf~300kgf程度である。さらには、太陽光の遮断を検知する可視光線検知器に加えてエンジン等から発せられる赤外線を検知する赤外線検知器を組み合わせた対車両用地雷信管を用いているものがある(例えば、特許文献1参照)。また、音響センサで検出した音と予め記憶している音響データと比較判定して適合したときに作動する車両用地雷もある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
そして、水没状態で配置される機雷には係維式と沈底式がある。これらの水際に設けられる機雷の対象としては、15トン前後の車両や100トン前後の舟艇が想定されている。この機雷の信管には、磁気信管、振動信管、音響信管等が用いられ、更に、接触式信管や水圧式信管も用いられている。また、船の通行回数をカウントする航過計数機能が並用されているものある。
【0007】
一方、平和時における地雷の除去作業においては、次のような方法が提案されている。例えば、対人用地雷に対しては、遠隔操作によって自走可能な台車に備えた転動自在な転圧ローラで、地中埋設地雷に重量負荷を加えて誘爆爆発させることにより、地雷の機能を喪失させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
また、地表からの圧力付加により起爆する種類の対戦車地雷等の比較的大型地雷に対しては、チェーンの先端にハンマーを設けたフレールハンマーを用いて、チェーンを巻回した回転ドラムを回転させることでチェーンを振り回して地面に叩きつけて、地中に埋まっている地雷に衝撃を与えて爆発させる地雷処理車を、地雷原を走行させることによって爆破処理する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
また、埋設地雷の除去作業方法として、埋設地雷を探知した場合に、その埋設地雷の直上に排土装置を移動して、ウォータジェット流、または、ウォータジェット流と空気流によって地面を掘削し土砂を除去することで排土し、地雷を露出させて処理している排土方法と、更に、第2のウォータジェット流で地雷などの物体を破壊する方法が提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。
【0010】
また、地雷の特殊な対処方法として、未爆発の地雷が埋設された地盤に通気性または伸縮性を有する、織布、編布、不織布又は網布の防爆繊維シートを敷設して、地雷が爆発した際の地雷の爆破の圧力を緩和し、地雷破片などの飛散を阻止する、地雷に対する危険防止方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0011】
そして、この防爆繊維シートの敷設方法として、複数のヘリコプターによって、防爆繊維シートを吊り上げて、上方から垂らしながら敷設していく方法や、地雷埋設地帯の両側からクレーン等を使って吊り上げて上方から垂らしながら同様に敷設していく方法等が提案されている。
【0012】
しかしながら、これらの敷設方法の採用は敵側からの攻撃を受ける恐れがある強襲揚陸時には難しいと考えられる。また、防爆繊維シートを隔てた人員や車両を安全に保護するためには、防爆繊維シートを耐爆仕様にする必要があり、通気性を確保した場合には、その爆風の一部で人員が損傷を受ける可能性がある。また、防爆繊維シートが伸縮性を持っている場合には、その伸縮性の程度によっては、防爆繊維シートの変形により人員が損傷を受ける可能性がある。
【0013】
これらに対して、戦時における強襲揚陸の際に、これらの障害物を処理する方法としては、地雷処理車両の展開が難しいので、地雷原において外部から爆発を発生させ、その爆風および地面の振動等によって、構造物を壊したり、埋設された地雷の起爆を誘発させたりすることが行われており、爆索、ブロック爆薬、網爆薬、液体燃料などで障害物(水際障害)を処理する方法が行われている。
【0014】
この爆索(導爆索)を用いる方法では、水陸両用装甲車に搭載された装置から、ロケットモーターなどの飛翔体を、その後端部に連結された主索を牽引して飛翔させて、主索を直線状に延びた状態で落下させることで、この主索に間隔を隔てて連結される爆薬ブロックを地雷原に線状に展開して、その後、爆薬を爆発させることによってその威力で地雷と妨害物を処理する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
【0015】
また、気球を使用した曳航装置によって、浮力を持たせた曳航体を曳航して地雷原の上方に展張した後に、曳航体に爆薬を注入して、曳航体を着地させて、この爆薬を点火して爆発させる地雷処理方法も提案されている(例えば、特許文献9参照)。また、強磁性またはフェリ磁性材料からなる磁気コアを有する電磁石を用いて磁場を制御することにより、地雷を破壊する地雷除去モジュールを地震対策船舶に搭載することも提案されている(例えば、特許文献10参照)。
【0016】
その一方で、圧力分散技術が進歩してきており、この圧力分散技術に関して、人体の荷重の圧力を分散するマットとして、ポリウレタンからなる圧力分散マットや、ポリウレタンフォームプレートからなる圧力分散プレ-トを、圧縮エアーが充填されるゴム製のエアーマット上に載置したエアーマットレスが提案されている(例えば、特許文献11、12参照)。
【0017】
さらに、防弾用や防爆用や航空宇宙用の壁板材として使用されるこの圧力分散構造として、受けた受圧に対応するフロント側の繊維強化プラスチック部と、その靭性に基づく面的追従作用により、繊維強化プラスチック部について、配向パターンに沿った繊維基材部分への圧力分布の集中そして変形範囲の集中を分散化し、受圧を均一化し変形を減少化するエラストマー部とを備えた繊維強化プラスチックの圧力分散構造も提案されている(例えば、特許文献13参照)。
【0018】
また、磁気遮断技術に関して、磁気記憶媒体を外部の磁界から保護する軽量で磁気遮断性能に優れた磁気遮断シートや、磁気遮蔽室を構成するために、非晶質合金フレークと樹脂フィルムとを重ねて加熱圧着して積層シートを作成し、この積層シートと珪素鋼板とを複合したシート状磁気遮断材を、アルミニウム型材等の軽金属型材の骨組に貼り付けて構成されている磁気シールドパネルが提案されている(例えば、特許文献14、15参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開昭50-130300号公報
【特許文献2】特開昭61-138100号公報
【特許文献3】特開2001-241895号公報
【特許文献4】特開2013-120022号公報
【特許文献5】特開2006-249829号公報
【特許文献6】特開2004-332971号公報
【特許文献7】特開2007-17113号公報
【特許文献8】特開2017-62070号公報
【特許文献9】特開平8-233496号公報
【特許文献10】特開2018-32844号公報
【特許文献11】特開2002-238705号公報
【特許文献12】実開平9-28512号公報
【特許文献13】特開2019-109003号公報
【特許文献14】特開2008-10799号公報
【特許文献15】実開平5-53298号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】文谷孝司,「島嶼奪還!陸上自衛隊上陸作戦の再検証『導爆索』で水際障害の処理は可能か」,軍事研究,発行人横田博之,発行所株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー,2019年7月1日,7月号,p.194~p.229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のように、強襲揚陸に際しては、水際における機雷及び地雷等の障害物を無効化する必要があるが、平和時の地雷処理と違って、戦闘時における機雷及び地雷の無効化が必要なため、主として、爆索、ブロック爆薬、網爆薬、液体燃料などで障害物を処理する方法が考えられている。しかしながら、これらの方法では誘爆し難い地雷なども開発されてきており、無効化可能な範囲が限られてしまうという問題がある。
【0022】
一方、圧力分散技術の分野では、さまざまな技術開発がなされ、比較的安価な材料で、一方の面に加わる荷重を分散して他方の面に伝達できるようになってきている。
【0023】
本発明は上記のことを鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、人員や車両などが通過する際の荷重を圧力分散技術を用いて分散させることにより、機雷や地雷を作動させることなく、機雷原や地雷原によって防御されている海岸への強襲揚陸を行うことができるようにする揚陸準備方法及び揚陸準備システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記のような目的を達成するための本発明の揚陸準備方法は、機雷と地雷の少なくとも一方を含む爆発物が配置されている揚陸目標海岸への揚陸を行うための揚陸準備方法であって、前記揚陸目標海岸における前記揚陸予定部位に、人員と車両少なくとも一方を含む通行体が通行する均圧通路を展開して、前記均圧通路の上側の通行路面に加わる荷重を分散化して下側の接地層に伝達することで前記爆発物の爆発を回避して、前記揚陸予定部位における通行を安全にすることを特徴とする。
【0025】
この均圧通路としては、例えば、空気や窒素ガス等の気体が入った気体室(例えば袋)の接続体で構成すると共に、各気体室の気体圧が相互に伝達できるように構成する。これにより、気体室の上側の通行路面に加わった荷重(踏圧)を、気体室の内部気体圧で受けて分散化及び均圧化して下側の接地層に伝達する。
【0026】
この気体室の上側の均圧通路を形成する路面材は、局所的な荷重に耐えるように剛体の材料であってもよい。一方、各気体室の気体圧が相互に伝達できるにするためには、気体室の相互間に連通管を設けることも考えられるが、気体室の仕切壁に柔軟性や可撓性を持たせることで、相互に内部気体圧を伝達可能にすることが好ましい。これにより、一部の気体室の破損による気体の漏れの影響が隣接する気体室に及ぶのを回避できる。また、気体室の下側の接地層の下面の材料は、気体圧が分散して均等に接地場所(地面または水底)に伝達されるように、地面や水底に沿って変形できる材料で構成することが好ましい。
【0027】
これらの構成により、通行路面を通行する人員や車両による局所的な大きな踏圧を分散して、小さな面圧で広範囲な接地面で支持することができ、人員や車両が通行路面を通行する際の踏圧により爆発物が爆発するのを回避できる。
【0028】
なお、均圧通路の重さや均圧通路の展開時の荷重により爆発物が爆発する可能性があるが、展開時に爆発させることにより爆発物が無効化できるので、その後の均圧通路の安全性を確保できる。その場合、爆破された均圧通路の部分は円滑に通行できるように交換又は補修することが好ましいが、通行さえできれば良いので、通行に支障が生じる爆発物の破片などを排除するだけでもよい。
【0029】
また、上記の揚陸準備方法において、前記均圧通路の展開後において、前記均圧通路を構成する圧力分散層の気体室に気体を送り込んで、前記気体室内の内部気体圧を大気圧よりも大きくすることで、前記均圧通路の上側の前記通行路面に加わる力を分散化して下側の前記接地層に伝達する方法とすることにより、次のような効果を発揮できる。
【0030】
この方法により、圧縮機で発生できる圧縮空気やボンベに充填された空気や窒素ガス等の気体を気体室に供給して、この気体を介して、非常に簡便に、上側の通行路面に加わる力を分散化して下側の接地層に伝達することができる。そのため、通行路面の上に人員や車両が載った場合でも、接地層における面圧の増加を、爆発物の爆発限界の踏圧よりも小さい圧力以下(例えば、0.2atm程度)にすることができる。
【0031】
また、上記の揚陸準備方法において、前記均圧通路の展開後において、前記均圧通路の一部に水を供給して、この水の重みにより、踏圧により爆発する前記爆発物を押圧して誘爆させる荷重工程M32bを含んでいると、この荷重工程により、均圧通路の下に爆発物が有った場合にはこの爆発物を誘爆させることができるので、均圧通路における安全性を容易に確認することができる。なお、この供給した水は荷重工程が終了した後に抜く。
【0032】
また、上記の揚陸準備方法において、前記均圧通路の展開後において、前記通行体が水面上に配置されている前記通行路面を通行する際に、前記均圧通路の浮力により、前記通行体の荷重を支えて、前記通行体の水没を回避する方法とすることにより、この浮力により、水面が有る場所においても、人員や車両を水没させることなく揚陸させることができるようになる。
【0033】
そして、本発明の揚陸準備システムは、機雷と地雷の少なくとも一方を含む爆発物が配置されている揚陸目標海岸への揚陸を行うために使用する揚陸準備システムであって、水底若しくは地底に接する接地層と、気体室を有する圧力分散層と、通行路面を有する路面層とを積層して構成される積層構造体と、内部水圧又は内部気体圧により形状を維持する骨組部材を備える均圧通路ユニットで構成された均圧通路を含む均圧通路システムと、前記気体室に気体を供給する高圧気体供給用システムとを備えていることを特徴とする。この揚陸準備システムによれば、上記の揚陸準備方法において、均圧通路の敷設を行うことができる。
【0034】
また、上記の揚陸準備システムにおいて、前記骨組部材に水を供給する高圧水供給用システムを備えていることを特徴とする。この骨組部材を硬化させるには、高圧気体供給用システムで骨組部材の内部に軽い気体を充填して均圧通路を軽量にしもよいが、気体は圧縮性があるため、硬化度合いを保持するためには骨組部材の内部に水を充填して内部水圧を加える方が効果的であるので、高圧水供給用システムを備えることがより好ましい。
【0035】
また、上記の揚陸準備システムにおいて、前記均圧通路ユニットが、複数の前記気体室を有した圧力分散層を備えて構成されると、展開後において、気体室に気体を送り込んで、気体室内の内部気体圧を大気圧よりも大きくすることで、均圧通路の上側の通行路面に加わる力を分散化して下側の接地層に伝達することが容易にできるようになる。
【0036】
この構成により、通行路面の上に人員や車両が載った場合でも、面圧の増加を、0.2atm程度にすることができ、また、通行路面の上を人員や車両が通過する際に、通行路面を通行可能な形状に維持できれば良いので、この内部気体圧は0.5atm程度でよい。そして、この内部気体圧で膨らんだときの気体室の壁材により、均圧通路の形状を維持する。
【0037】
また、上記の揚陸準備システムにおいて、前記均圧通路ユニットが、積層構造体と前記骨組部材を備えて構成されると共に、前記積層構造体が、水底若しくは地底に接し、かつ、可撓性を有する前記接地層と、前記気体室を有する圧力分散層と、前記通行路面を有する路面層とを積層して構成されていると、次のような効果を発揮することができる。
【0038】
この可撓性を有する接地層は、凹凸形状の発泡ウレタンなどで形成することができ、この接地層により、海底や海岸の地面による凹凸だけでなく、埋設地雷や埋設機雷等による凹凸を包み込む。そして、この可撓性を有する接地層を介して、圧力分散層の圧力を、地面や水底に伝達する。これにより、通行路面に加わる力を分散化して踏圧による爆発物の爆発を防止する。
【0039】
また、上記の揚陸準備システムにおいて、前記均圧通路ユニットが、磁気、可視光線、赤外線、音、振動、電波の少なくとも一つを遮断若しくは減衰する遮蔽層と、前記通行路面を通行する前記人員又は前記車両を覆う覆い部材と、浮力を発生する浮力層と、浮力を発生する浮力構造体の少なくとも一つを備えて構成されていると、次のような効果を発揮することができる。
【0040】
この遮蔽層で爆発物の敷設部位を覆うことにより、人員若しくは車両の通行による磁気、可視光線、赤外線、音、振動の変化を遮断若しくは縮小できるので、磁気信管、光学的信管、音響信管、振動信管を備えた爆発物の爆発を防止することができる。また、電波の遮断若しくは減衰により、無線指示による爆発物の爆発を防止することができる。
【0041】
また、覆い部材で通行路面を通行する人員又は車両を覆うことにより、風雨から人員又は車両を守ることで揚陸作業を効率化できる。また、敵側からの視界を遮ることができるので、人員又は車両が通行する時間と場所を秘匿することができ、敵側からの攻撃を受け難くすることができる。
【0042】
また、均圧通路が浮力を備えることにより、水面上に敷設された均圧通路を人員又は車両が通過する際に、この浮力により均圧通路の水没などを避けることができ、人員又は車両を安全に効率よく揚陸することができるようになる。また、均圧通路の沈底を防ぐことで、沈底水雷の爆発を回避できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の揚陸準備方法及び揚陸準備システムによれば、機雷原や地雷原によって防御されている海岸への強襲揚陸を行う際に、通行路面を通行する人員や車両などによる局所的な大きな踏圧を分散化して下側の接地層に伝達して、人員や車両などの荷重を小さな面圧で支持することができるようになり、人員や車両等の踏圧により機雷や地雷が爆発するのを回避して、機雷原や地雷原によって防御されている海岸への強襲揚陸を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は本発明の実施の形態の揚陸準備方法の各工程を示す図である。
図2図2は本発明の実施の形態の揚陸準備システムの構成を模式的に示す図である。
図3図3は均圧通路ユニットの構成を模式的に示す展開状態における横断面図である。
図4図4は均圧通路ユニットの構成を模式的に示すシート状態における横断面図である。
図5図5は均圧通路ユニットの構成を模式的に示す、覆い部材と浮力構造体を省略した展開状態における斜視断面図である。
図6図6は揚陸目標海岸における、爆発物と構築物からなる障害物等の配置状態を模式的に示す図である。
図7図7は通路敷設工程の均圧通路配置工程における揚陸用コンテナの配置状況を模式的に示す図である。
図8図8は均圧通路配置工程における均圧通路ユニットの牽引途中の状況を模式的に示す図である。
図9図9は均圧通路配置工程における均圧通路ユニットの牽引終了の状況を模式的に示す図である。
図10図10は均圧通路配置工程における均圧通路ユニットの配置終了の状況を模式的に示す図である。
図11図11は通路敷設工程の均圧通路形成工程における均圧通路の形成状況と均圧通路の移動を模式的に示す図である。
図12図12は揚陸作業後における均圧通路の収容の状態を示す図である。
図13図13は無限軌道を備えた台車の上に搬送用コンテナを搭載した状態を模式的に示す図である。
図14図14は搬送用コンテナを揚陸させて、搬送用コンテナの側壁を左右に展開した状態を模式的に示す図である。
図15図15は人員と車両を搭載している状態の上陸用半潜水艇を模式的に示す図である。
図16図16は搬送用コンテナを台車ごと搭載している状態の上陸用半潜水艇を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明に係る揚陸準備方法及び揚陸準備システムの実施の形態について説明する。図1は揚陸準備方法の揚陸準備工程の構成図であり、図2は揚陸準備システムの構成図である。また、図3図5は、揚陸準備システムの均圧通路ユニットの構成を示す図であり、図6図12は、揚陸準備の各工程を示す図である。図13図14は均圧通路ユニットを搬送するための搬送用コンテナを示す図であり、図15図16は搬送用の上陸用半潜水艇を示す図である。
【0046】
本発明の実施の形態に係る揚陸準備方法は、図1に示すような揚陸準備工程M1を用いて実施される。揚陸準備方法は、図6に示すような、機雷21a又は地雷21b、21cの少なくとも一方である爆発物、逆茂木22a、鉄条網22b等の構築物からなる障害物で防御されている揚陸目標海岸5に、揚陸用艦艇1等に搭載した人員2、車両3、揚陸用コンテナ4等を揚陸する際に実施される方法である。
【0047】
なお、ここでは、図6に示すように、機雷21a、地雷(対人用地雷21b、対車両用地雷21c)等の爆発するものを「爆発物21」と呼称し、逆茂木22a、鉄条網22b等の爆発せずに物理的に揚陸を妨害するために構築されたものを「構築物22」と呼称し、この「爆発物21」と「構築物22」を合わせて「障害物20」と呼称している。また、塹壕23aとトーチカ23b等の有人または無人の銃器や砲やミサイルなどの武器が使用される構築物や施設を「防御施設23」と呼称している。
【0048】
この揚陸準備方法は、機雷21aと地雷21b、21cの少なくとも一方を含む爆発物21が配置されている揚陸目標海岸5への揚陸を行うための揚陸準備方法であって、揚陸目標海岸5における揚陸予定部位5aに、人員2と車両3の少なくとも一方を含む通行体2、3が通行する均圧通路40を展開して、均圧通路40の上側の通行路面41cに加わる荷重を分散化して下側の接地層41Aに伝達することで爆発物21の爆発を回避して、揚陸予定部位5aにおける通行を安全にする方法である。
【0049】
この揚陸準備方法は、図1に示すように、揚陸準備工程M1を用いて実施される。そして、この揚陸準備工程M1は通路敷設工程M30を含んでいる。また、通路敷設工程M30は、均圧通路40を配置するための均圧通路配置工程M31と、均圧通路40を構成する均圧通路ユニット40Uを展開して形成する均圧通路形成工程M32を含んでいる。更に、均圧通路形成工程M32は、送水工程(骨組部材)M32a、荷重工程(気体室への送水)M32b、送気工程(気体室)M32c、送気工程(浮力室)M32dを含んでいる。これらの各工程に関しては後で説明する。
【0050】
ここで、この揚陸準備方法の説明を分かり易くするために、この揚陸準備方法で使用する揚陸準備システムS1について説明する。図2に示すように、この揚陸準備システムS1は均圧通路システムS40と通路展開用システムS50を含んでいる。この均圧通路システムS40は、均圧通路40を有しており、この均圧通路40は図3図5に示すような均圧通路ユニット40Uを連結して構成される。
【0051】
図3に示すように、この均圧通路ユニット40Uは、積層構造体41と共に、内部水圧Pw又は内部気体圧Paにより形状を維持する骨組部材42と覆い部材43を備えている。また、図3図5に示すように、この積層構造体41は、下側から、凹凸形状の発泡ウレタン層からなる応力分散プレート41aを有する接地層41Aと、気体(空気や窒素ガスなど)を入れる気体室(空気の場合は空気室)41bを有する圧力分散層41Bと、通行路面41cを有する路面層41Cと、遮蔽シート41dを備えた遮蔽層41Dとを備えている。さらに必要に応じて、浮力室44aを備えた浮力構造体44を備える。この浮力構造体44の代わりに、浮力室41eを有する浮力層41Eを、積層構造体41の層構造の一部として設けてもよい。
【0052】
この均圧通路ユニット40Uの接地層41Aは、水底(海底、湖底、川底など)Bや岸辺(海岸、湖岸、川岸など)Cなどの地形に接触する部分であり、気体圧(空気圧)が均等に分散して水底Bまたは岸辺Cの地面に伝達されるように、水底Bまたは岸辺Cの地面の多少の凹凸や埋設物の凹凸に従って変形して、より好ましくは埋設物を包み込める材料で構成される。つまり、この接地層41Aは、力を加えると変形し、力を除くと元の形状に戻る可撓性を備えると共に、優れた耐衝撃性、優れた靱性と、ねばり強さ、粘性、柔軟性を備え、撓むが壊れ難い性能を持たせることが好ましい。
【0053】
この接地層41Aの材料としては、エラストマー(ゴム状の弾性、変形挙動を有する高分子材料の総称)を用いることができる。ここでは、接地面が凹凸形状のポリウレタンフォーム材で形成された応力分散プレート41aを用いて形成する。この応力分散プレート41aで形成される接地層41Aにより、水底Bや岸辺Cの地形による凹凸だけでなく、埋設地雷や埋設機雷等による凹凸に対応する。
【0054】
なお、エラストマーに関しては、熱硬化性樹脂系エラストマーとしては、ウレタンゴムの一部、シリコンゴム、フッ素ゴムなどがあり、熱可塑性樹脂系エラストマーとしては、ポリスチレン系(TPS)、オフレィン/アルケン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE、TPC)、ポリアミド系(TPAE)などがある。
【0055】
この均圧通路ユニット40Uの圧力分散層41Bは、柔軟性のある気体室(例えば袋)41bの連続体で、各気体室41bの相互間で内部気体圧Paが互いに伝達できるように形成する。これにより、上側に加わった荷重(踏圧)が一旦、その直下の気体室41bの内部気体圧Paで人員2や車両3の荷重を受ける。この気体室41bの内部気体圧Paが均圧通路ユニット40Uの下側の各気体室41bに伝達されて、各気体室41bの内部気体圧Paが均圧化する。
【0056】
つまり、均圧通路ユニット40Uが、均圧通路40を形成若しくは支持する複数の気体室41bを有して形成される。そして、展開後は気体室41bに空気や窒素ガス等の気体を送り込んで、気体室41b内の内部気体圧Paを大気圧よりも大きくすることで、均圧通路40の形状の維持と浮力を備えるように構成する。窒素ガス(空気に対する比重が0.967)を用いると多少空気よりも軽いので、気体を充填したときの均圧通路40を多少軽くすることができる。
【0057】
この内部気体圧Paは、均圧通路40の通行路面41cの上に人員2や車両3が載った場合でも、応力分散プレート41aでの面圧の増加は0.2atm程度となる。そして、通行路面41cの上を人員2や車両3が通過する際に、均圧通路40を通過可能な形状に維持できれば良いので、内部気体圧Paは0.5atm程度でよい。この内部気体圧Paにより気体室41bの形状を維持し、骨組部材42により均圧通路ユニット40Uの形状を維持する。
【0058】
この圧力分散層41Bの気体室41bの区画の大きさと厚さは、気体室41bの区画の大きさにもよるが、車両3等が乗った時に局部的に圧縮されて、路面層41Cが直接下側の接地層41Aに接触することが無いような厚さに形成する。一般的には、区画が狭い程、厚さは小さくても良い方向になるが、区画に使用する材料が多くなり、均圧通路ユニット40Uの重量が増すことになる。また、区画が多い程、気体室41bの破損に対する耐ダメージ性能は増加するが、気体をそれぞれの気体室41bに充填するための気体用通路が多くなり、複雑化する。そのため、この気体室41bの区画の大きさに関しては、実験的に適した大きさを求めてその大きさとする。
【0059】
また、路面層41Cは、人員2や車両3と直接接触する通行路面41cがあるので、局所的な荷重に耐え、しかも、人員2の歩行や車両3の走行がし易いような滑り難い路面形状とする。また、銃弾や爆発物21の破片では簡単に破損を受けないように、ケプラー繊維などの防刃素材やポリカーボネート等の防弾素材を用いて均圧通路40の上側の通行路面41cを形成するのが好ましい。
【0060】
さらには、銃弾が通過して穴が生じても、下の気体室41bの気体が抜けないように、また、この穴を自動的に塞ぐことができるように、「防弾タンク(セルフシーリングタンク)」と同じような構造を設けることが好ましい。これらの素材を用いることにより、上側からの破損の危険性だけでなく、下側からの破損の危険性も軽減できる。つまり、除去または無効化しきれていなかった爆発物21が爆発したときの通行路面41cの上の人員2や車両3の被害を軽減できる。
【0061】
また、均圧通路40の展開により、爆発物21を覆って、遮蔽層41Dの遮蔽シート41dにより、車両3の通過による磁気、可視光線、赤外線、音、振動、電波の少なくとも一つを遮断若しくは減衰する。これにより、磁気を遮断して、磁気信管を備えた爆発物21の爆発を防止する。また、可視光や赤外線を遮断して、可視光や赤外線の変化により爆発する光学信管を備えた爆発物21の爆発を防止する。さらには、吸音や遮音により、音響により爆発する音響信管を備えた爆発物21の爆発を防止する。また、制振により、振動信管を備えた爆発物21の爆発を防止する。また、電波遮断により、遠隔操作での作動用の電波により爆発する爆発物21の爆発を防止する。
【0062】
また、必要に応じて浮力層41Eを設ける。この浮力層41Eは、車両3の通過時でも均圧通路ユニット40Uを浮かしておく役割を果たす。これにより、水深が深い場所(例えば、水深12m以上)に対して、臨時の浮き通路とする。この水深域では通常の掃海で機雷に対応できるが、水深の浅い場所では祖お迂回作業が難しい。また、水深の深い所を走行できる車両3は少ない。
【0063】
この浮力層41Eに関しては、水深が深く浮力が必要な部分と、水深が浅いか水面上で浮力が不要な部分とでは、均圧通路ユニット40Uの構成を別々の構成にしてもよい。また、浮力層41Eを備えた均圧通路ユニット40Uでは、浮力が不要な場合には浮力層41Eを使用しないで済むように、浮力室41eには必要に応じて気体を送る構成とする。また、浮力室41eに仕切41eaを入れて層状に形成して、必要な浮力を得られる浮力室41eのみに気体を送ったり、水底Bに着底する可能性がある場合は、気体を送る浮力室41eの層を選択したりする。あるいは、浮力層41Eを備えた均圧通路ユニット40Uで、浮力を必要とする場合は、別途、浮力室44aを備えた浮力構造体44を追加配置する。
【0064】
これらの気体室41b、浮力室41eのそれぞれの区画への送気は送気用ホース(図示しない)を通して送る。あるいは、圧縮気体を充填した気体用ボンベを配置しておき、この気体用ボンベから気体を供給する。しかし、それぞれの区画ごとに逆止弁(安全弁:図示しない)を設けて、気体の充填後に送気用ホースや一部の区画が破壊されても、充填した気体が気体室41bと浮力室41eから漏れないように構成する。また、回収時に排気できるようにそれぞれの区画ごとに排気弁(図示しない)を設ける。この排気弁は手動でもよいが、気体圧より排気弁を開弁する気体用回路(図示しない)を設けてもよい。
【0065】
また、同様に、骨組部材42に関しても、それぞれの役割に対応させて区画化して、骨組部材42のそれぞれの区画への送水は、高圧水供給用システムS51を使用して送水用ホース35(図10)を通して送る。この区画ごとに逆止弁(図示しない)を設けて、送水後に送水用ホース35や一部の区画が破壊されても、骨組部材42に送水された水が漏れないように構成する。また、回収時に排水できるようにそれぞれの区画ごとに排水弁を設ける。この排水弁は手動でもよいが、気体圧若しくは水圧により排水弁を開弁する水回路を設けてもよい。
【0066】
なお、骨組部材42を硬化させて、この硬化度合いを保持するためには骨組部材の内部に水を充填して内部水圧Pwを加える方が効果的であるが、均圧通路40が重くなるとともに、高圧水供給用システムS51が必要になる。そのため、気体の充填では気体の圧縮性のため、硬化度合いを保持し難い面があるが、高圧気体供給用システムS52を使用して骨組部材42の内部に気体を充填してもよい。
【0067】
これらの積層構造体41の構成により、人員2や車両3の通行に伴って路面層41Cに加わる荷重を、気体室41bの圧力分散層41Bにより通行路面41cに加わる荷重を分散して、さらに、地形に対応して変形する発泡ウレタン等の接地層41Aを介して、水底Bや岸辺Cに荷重を伝達する。これにより、踏圧を分散して小さな面圧にすることができ、爆発物21が踏圧により爆発するのを防止する。
【0068】
ちなみに、車両3の踏圧に関しては、自衛隊の「16式起動戦闘車」が全長8.45m、全幅2.98mで、重量26tであるので、これを8.5m×3.0mの面積の面で26tを支持するとした場合に、面圧は0.1kgf/cm(9.8kPa:約0.1atm)となる。また、自衛隊の「10式戦車」が全長9.42m、全幅3.24mで、重量44tであるので、これを、9.4m×3.3mの面積の面で44tを支持するとした場合でも、面圧は0.14kgf/cm(13.7kPa:約0.14atm)となる。従って、車両を対象物とした爆発物21であっても踏圧による爆発は回避できると考えられる。
【0069】
また、均圧通路ユニット40Uの幅Bp(図5)に関しては、人員2のみが通行する場合は、1m以上であればよく、車両3を通行させる場合は、通行する車両3の幅(「16式起動戦闘車」で全幅2.98m、「10式戦車」で全幅3.24m、自衛隊の「AAV7と呼ばれる水陸両用装甲車」で全幅3.27m)に対応して、通行路面41cの幅Bpは4m~5mで形成される。なお、現状の導爆索の公称除去範囲の幅は7m~9m程度である。
【0070】
そして、均圧通路40の全体の長さは、揚陸目標海岸5における揚陸予定部位5aの奥行に関連して設定される。現状の導爆索の長さ(100m~200m)を参考にすると、200m程度となると考えられる。搬送や敷設の利便性と、各気体室41bや骨組部材42への気体や水の供給に必要な弁(バルブ)の数を考えれば、均圧通路ユニット40Uの単位長さLp(図示しない)は、10m~50m程度にすることが好ましい。そして、揚陸予定部位5aの奥行が長い場合には、幾つかの均圧通路ユニット40Uを繋ぎ合わせて用いることで、より長い均圧通路40を敷設する。
【0071】
また、この均圧通路ユニット40Uの深さDp(図5)に関しては、岸辺Cの地面上に展開されるような、浮力を考えなくてよい部分での厚さを考えた場合には、接地層41Aの厚さと圧力分散層41Bの厚さの合計でよく、0.2m~0.5m程度でよい。参考までに、寝台用や車いす用のポリウレタン製マットや布団では厚さ25mm~100mm程度となっている。なお、参考までに、現状の導爆索の器材の重量は1.4t程度である。
【0072】
一方、水面S上に展開された部分で、展開後の均圧通路40が通行予定の車両3の通行時に水没しない浮力を考えると、車両3の通行を支持できる浮力を発生させるためには、浮力室41eの深さが1.5m程度となる。例えば、重量44tの「10式戦車」を幅4m(5m)の通路で移動させるとして、長さ10mにおける浮力により支持しようとすると、1.1m(0.88m)の深さが必要となる。そのため、浮力が必要な部分では、幅4mの場合は深さ1.2m、幅5mの場合は深さ1mが必要となる。
【0073】
また、骨組部材42は、積層構造体41の側部や底部に配置され、内部水圧Pwによりその形状を維持して、通路の形状をより堅固にする構成である。内部水圧Pwを大きくすることで骨組み構造を維持するホースの形状または袋の形状を維持する。これは、消防用ホースが、内部水圧の小さいうちは、柔軟性を持っているが、内部水圧が大きくなるにつれて、柔軟性を失って硬直化して、堅固な構造部材となるのと同じ原理を用いて、骨組み構造を形成する。
【0074】
さらに、図4に示すように、必要に応じて、均圧通路40に通行路面41cの屋根となる覆い部材(カバー部材)43を設ける。この覆い部材43により、人員2や車両3を風雨から守って作業性を向上させる。この覆い部材43にも注水又は送気により膨張する骨組部材構造を設けて、必要に応じて、この骨組部材構造に注水又は送気することにより、覆い部材43を展張する。
【0075】
さらに、この覆い部材43に、視認、赤外線探知、レーダー探知などに対して遮断効果若しくは減衰効果を有する遮断部材を設けて、通行路面41cを通過する人員2や車両3に対する敵側の探知を妨害することが好ましい。また、通行時の音に対してはスピーカーからの発音などにより、通行の有無や通行位置を欺瞞をすることが好ましい。そして、人員2や車両3が均圧通路40を移動するときに、覆い部材43により敵側からの探知を妨害して、攻撃を受け難くする。また、赤外線やレーダー波を遮断することで、対戦車ミサイルなどの攻撃による被害を減少する。
【0076】
次に、通路展開用システムS50について説明する。この通路展開用システムS50は、均圧通路40を展開するためのシステムであり、図2に示すように、高圧水供給用システムS51と高圧気体供給用システムS52と通路運搬用システムS53を有して構成される。この高圧水供給用システムS51は、取水用システム、送水用システム、放水制御用システムを有して構成される。
【0077】
そして、この高圧水供給用システムS51を使用して、図1に示す送水工程M32aで、大気圧より大きな圧力(例えば、0.2Mpa~0.7Mpa程度)で、水を骨組部材42に供給することで、骨組部材42をその内部水圧Pwで硬直化して、均圧通路ユニット40Uを展開し、その形状を維持する。なお、骨組部材42をその内部気体圧Paで硬直化して、均圧通路ユニット40Uを展開し、その形状を維持してもよい。
【0078】
なお、ここでは、骨組部材42の内部気体圧Paと各気体室41b、41e、44aの内部気体圧Paを同じ「Pa」で表記しているが、骨組部材42の内部気体圧Paと各気体室41b、41e、44aの内部気体圧Paを全部同じ大きさの圧力としてもよいが、一般的にはそれぞれに適した大きさの圧力とする。
【0079】
あるいは、この高圧水供給用システムS51を使用して、図1に示す荷重工程M32bで、圧力分散層41Bの気体室41b、浮力層41Eの浮力室41e若しくは浮力構造体44の浮力室44a等に一時的に水を送ってその荷重により、爆発物21に対する踏圧を増加して爆発物21を誘爆させるか、爆発物21が爆発しないことで均圧通路40を安全に通行できることを確認する。
【0080】
また、高圧気体供給用システムS52は、圧縮機と送気用ホースを有して構成される。この高圧気体供給用システムS52は、気体用ボンベと送気用ホースとで構成してもよく、各気体室41b、41e、44aに配置した気体用ボンベで構成してもよい。
【0081】
この高圧気体供給用システムS52を使用して、図1に示す送気工程(気体室)M32cで、大気圧より大きな圧力(例えば、0.2Mpa~0.5Mpa程度)で、高圧気体を圧力分散層41Bの気体室41b、浮力層41Eの浮力室41e、浮力構造体44の浮力室44a等に供給する。これにより、これらの室41b、41e、44aの内部を気体で水と置き換える。そして、これらの室41b、41e、44aを内部気体圧Paの気体で充填して、これらの室41b、41e、44aの形状と均圧通路40の浮力を維持する。
【0082】
そして、通路運搬用システムS53は、均圧通路ユニット40Uを敷設場所となる揚陸予定部位5aの後端部位5b又はその近傍に運搬するために、揚陸用コンテナ4、牽引車両53、揚陸用艦艇1等を有して構成される。
【0083】
この揚陸用コンテナ4は、その内部に、均圧通路ユニット40Uを蛇腹状に折り畳んだ状態や巻回した状態で収容しておくものである。牽引車両53は均圧通路ユニット40Uを牽引して展開するための車両であり、均圧通路ユニット40Uと共に揚陸用コンテナ4の内部に収容される。揚陸用艦艇1は揚陸用コンテナ4を搭載して運搬する。
【0084】
なお、この揚陸用コンテナ4は、揚陸用艦艇1に搭載してもよく、揚陸用艦艇1によって搬送される別の搬送用手段で搬送されてもよい。また、揚陸用艦艇1ではない、別の自前の移動手段を持つ搬送用手段で搬送されてもよい。
【0085】
次に、揚陸準備方法に戻って説明する。図1に示す揚陸準備工程M1の通路敷設工程M30における均圧通路配置工程M31では、最初に、図6に示すように、揚陸目標海岸5における揚陸予定部位5aを設定する。次に、均圧通路40の敷設場所となる揚陸予定部位5aの後端部位5b又はその近傍に、均圧通路ユニット40Uを収容した揚陸用コンテナ4を搭載した揚陸用艦艇1を着岸させる。この揚陸用艦艇1の揚陸予定部位5aへの接近に際しては、敵側の攻撃による破損を防止するため、掃海作業や、ダミーにより欺瞞や、電子戦によるレーダーの無効化や、煙幕による視界制限や、水中の機雷に対しての音響欺瞞等を行う。
【0086】
図7に示すように、揚陸用艦艇1の着岸後に、揚陸用艦艇1の前側扉を開いて、ランプウエイ等で揚陸用艦艇1の内部と揚陸地点との間に架橋する。次に、揚陸用コンテナ4を架橋された通路上から揚陸予定部位5aの上又はその手前側の延長部分に移動させる。この移動は、揚陸用コンテナ4の下に、滑り板(橇)を敷いたりして、揚陸用艦艇1に備えたウィンチや人力により行う。あるいは、この揚陸用コンテナ4に収容した通路運搬用システムS53の牽引車両53により、揚陸用コンテナ4を移動する。また、図13に示すような無限軌道の台車6の上に揚陸用コンテナ4を搭載しておいて、この台車6の自走によって移動してもよい。
【0087】
次に、図8および図9に示す構成では、揚陸用コンテナ4に収容した牽引車両53により、均圧通路ユニット40Uの先端側を牽引して引き出して、揚陸予定部位5aまで展開した状態にする。これにより、この均圧通路ユニット40Uの連続体としての均圧通路40を配置する。この牽引車両53は、最前線に配備されて、敵の砲火を受ける可能性が大きいので、小型化したり装甲化したりして、敵側からの砲火による破損を防ぐことが好ましい。さらに、移動のための操縦に関しては、有線や無線による遠隔操縦や、予め設定したプログラムやデータに従って自律的に動くように構成しておくことが望ましい。
【0088】
次に、図10に示すように、均圧通路形成工程M32の送水工程(骨組部材)M32aで、高圧水供給用システムS51を用いて、均圧通路ユニット40Uの骨組構造となる骨組部材42の内部に送水用ホース35で水を送って内部水圧Pwにより、均圧通路40の骨組部材42を展張させて、図11に示すように、均圧通路40を展張時の形状にする。なお、骨組部材42をその内部気体圧Paで硬直化して、均圧通路ユニット40Uを展開し、その形状を維持してもよい。
【0089】
そして、この揚陸準備方法においては、均圧通路40の展開後において、均圧通路40の一部(気体室41b)に水を供給して、この水の重みにより、踏圧により爆発する爆発物21を押圧して誘爆させる荷重工程M32bを含んで構成することが好ましい。
【0090】
この荷重工程(気体室への送水)M32bでは、高圧水供給用システムS51を用いて、均圧通路ユニット40Uの気体室41bに水を送り、水の重量により、均圧通路40の重量を増加して揚陸予定部位5aの上に荷重を加えて、揚陸予定部位5aの爆発物21を爆発させる。爆発すればその爆発物21は取り除かれたことになり、爆発が起きなければ、踏圧による爆発物21に対しての安全性が確認されたと考えられる。このとき、残存していた爆発物21が爆発しても、その部分の均圧通路40が部分的に破壊されるだけであり、通行前の待機中の人員2や車両3には被害が及ばない。
【0091】
そして、爆発した場合には、その爆発により破損した部分(水漏れが生じるので視認による発見が容易である)に対して、新たな均圧通路ユニット40Uあるいは補修用の補修用ユニット(図示しない)を人員2の手作業等により取り替えるか補填する。なお、比較的大きな爆発を起こす爆発物21は、「殉爆」をしないように予め設定された離間距離(例えば、対上陸地雷では25m程度の例がある)を保って敷設されているので、ある程度離間して配置されている。
【0092】
これにより、均圧通路40を車両3が通過したときの荷重に相当する重量、例えば、浮力に相当する重量を、水の重量で均圧通路40の下側に加えることができるので、踏圧により爆発する爆発物21に対して安全であるか否かを確認できる。また、内部水圧Pwを変化させるだけで、均圧通路40の下側に加える荷重を容易に変化させることができるので、踏圧の回数をカウントするような爆発物に対しても、内部水圧Pwを繰り返し変化させることで容易に対応できる。
【0093】
なお、均圧通路40の気体室41b等の構成要素を細く区画しておくことにより、破損を受ける気体室41bの数を減少し、均圧通路40における欠損部分(気体の漏れが生じる気体室41bの部分)を小さくする。この破損部分に対して、気体室41bを形成する予備若しくは補修用の構成要素を人員2や車両3により運んで補填及び修復することで容易に対応できる。なお、緊急性が高く、また、既に、爆発物21の無効化が進んでおり、均圧通路40を配置した場所における安全性が高い場合には、荷重工程M32bを省いてもよい。
【0094】
次の段階の送気工程(気体室)M32cでは、高圧気体供給用システムS52を用いて、図10に示すように、均圧通路ユニット40Uの気体室41bに気体を送り、気体室41bの水を気体に入れ替える。これにより、均圧通路40の圧力均等化を図りつつ、均圧通路40の重量を軽減する。このとき、骨組部材42に入れた水はそのまま、あるいは、少し加圧して、骨組部材42の内部水圧Pwによる硬直化で、均圧通路40の骨組み構造を維持する。なお、均圧通路40のさらなる軽量化を必要とする場合は、骨組部材42に対しても水でなく、気体を充填する。
【0095】
また、揚陸予定部位5aの海側で、水深が深く、均圧通路40に浮力が必要な部位では、送気工程(浮力室)M32dで、高圧気体供給用システムS52を用いて、浮力発生用の浮力室41e(または、別体の浮力構造体44)に気体を送り、車両3の重量を浮力により支持する。
【0096】
均圧通路ユニット40Uの海岸の乗り上げている部分では、浮力が不要であり、その重量で海岸に置かれている状態になっている。一方、この部分に連続する水深が浅い所では、均圧通路ユニット40Uは、気体室41bは気体の充填によって膨らんだ状態のまま着底した状態となる。この状態で、浮力室41eに気体を送り続けると、気体の充填に伴って均圧通路40が浮力室41eの厚さの分だけ、部分的に持ち上がる状態となり、均圧通路40の通行路面41cに凹凸が発生する。
【0097】
この凹凸の発生を避けて、均圧通路40の高さの変化を滑らかにするために、次のようなことを行うのが好ましい。例えば、均圧通路40の厚みの変化が段階的になるように、事前にバルブ操作して浮力室41eの内部気体圧Paを段階的に変化させる。あるいは、均圧通路ユニット40Uが部分的に持ち上がる状態になると、内部気体圧Paに変化が出るので、この変化を検知して気体の送りを停止する。あるいは、浮力室41eを積層化しておいて、水深に応じて、予め選択しておいた積層部分の浮力室41eだけに気体を充填する。
【0098】
一方、水深が深く、浮力室41eが十分に膨らんで均圧通路ユニット40Uが浮いている状態になっても水底Bに着底しない部位に対しては、均圧通路ユニット40Uを浮力により浮かせる必要があるので、浮力室41eが所定の内部気体圧Paになるまで気体を送る。
【0099】
つまり、この揚陸準備方法では、均圧通路40の展開後において、人員2又は車両3の少なくとも一方である通行体2、3が水面上に配置されている通行路面41cを通行する際に、均圧通路40の浮力により、通行体2、3の荷重を支えて、水没を回避する。
【0100】
次に、揚陸作業について説明する。通常は、揚陸用艦艇1を均圧通路40の後端部位5bに接岸して、この揚陸用艦艇1に搭載した人員2や車両3などを通行路面41cの上に移動したり、水陸両用の車両3を均圧通路40の端部に導いて通行路面41cの上に移動したりする。
【0101】
また、揚陸用艦艇1の代わりに揚陸用コンテナ4を用いて、人員2や車両3などを揚陸させることも考えられる。例えば、図13に示すように、人員2や車両3などの揚陸対象物を水密の揚陸用コンテナ4に搭載して、この揚陸用コンテナ4を揚陸させることで、人員2や車両3を揚陸させる。この揚陸用コンテナ4は水密構造(但し、人員2に対する酸素供給等の呼吸対策が必要)で、内部から前扉や天井の一部を前倒して前方を開口して、この開口から人員2や車両3を進出させたり、後扉や側面に設けた扉を開口して後部から人員2や車両3を降ろしたりできる構造とする。これにより、車両3を水陸両用にする必要が無くなる。
【0102】
また、また、揚陸用コンテナ4の正面や天井や側面を、被弾形状や装甲仕様にすることで、内部の人員2や車両3の安全性を高めることができる。この揚陸用コンテナ4を前進位置に移動して配置することで、防御盾の代わりにすることができる。さらには、図14に示すように、揚陸用コンテナ4の側壁部分を前壁の横に展開させて、隣接する揚陸用コンテナ4と連携させることにより、幅広い防御壁又は敵側からの視界の遮蔽壁を短時間に構築できる。この場合は、前壁や側壁の構造を被弾構造(傾斜面)に変形するように上下方向や左右方向に関して中折れ可能な構造にしたり、視界用や銃口用の開口部となる水密式の窓部4aを設けたりしておくことが望ましい。
【0103】
この揚陸用コンテナ4のサイズとしては、人員2と車両3等の搭載する対象物にもよるが、自衛隊の「10式戦車」が全長9.42m、全幅3.24m、全高2.30mで、全備重量44tであることを考えれば、幅約4m、長さ約12m、高さ2.5m程度が考えられる。ちなみに、参考までにISO規格の40フィートの海上輸送用のコンテナでは、幅約2.4m×長さ約12m×高さ約2.6mで、自重が約3.8t程度で、貨物搭載時で約30t程度である。
【0104】
また、揚陸用コンテナ4の形状は比較的単純な形状であってもよいので、同じ形状のダミーを多数用意しておき、揚陸時に車両と同じ重量の物を積み込んだ揚陸用コンテナ4や空の揚陸用コンテナ4(ある程度浸水させて搭載量を偽る)をダミーとして使用することで、敵側を欺瞞して、敵側の攻撃目標を分散させることができる。
【0105】
揚陸用コンテナ4の種類としては、搭載対象により、均圧通路ユニット40Uを搭載した均圧通路用コンテナ、人員2を運搬する人員運搬用コンテナ、車両3を運搬する車両運搬用コンテナ、展開して防御盾となる防御盾用コンテナ、欺瞞用のダミー用コンテナ等が考えられる。
【0106】
一方、揚陸用艦艇1や水面に浮かぶ水陸両用の車両3は、揚陸目標海岸5に接近する際に、空中に暴露されているため敵側に探知され易く、敵から砲撃やミサイルによる攻撃を受け易い。そのため、人員2や車両3や揚陸用コンテナ4を搬送する手段として、図15及び図16に例示するような上陸用半潜水艇31を用いることが好ましい。
【0107】
この上陸用半潜水艇31は、船体が有る程度まで水没した状態で航行できる艦艇であり、レーダー探知され難く、砲撃やミサイルの攻撃を受け難い。この上陸用半潜水艇31は、全没する必要は無く、水没する水深も浅くてもよく、また、シュノケール等を水面上に出していてもよい。このように水面上に出る部分が有る場合は、水面上の部分のダミー(図示しない)をこの上陸用半潜水艇31、または、別の航走体で、曳航したり、このダミー自航させたりすることで、敵側の探知に対して欺瞞をしたり、攻撃目標を分散させる。
【0108】
この上陸用半潜水艇31では、遠距離航行は、潜水母船に搭載または曳航されて移動し、揚陸目標海岸5の近傍のみで、個別走行に移行すればよい。これにより、上陸用半潜水艇31自体は、遠距離航行する必要も、早い航行速度も大きな航続距離も不要になる。また、水深も視認や、レーダーで探知し難い程度の水没でよいので、水密構造も簡素化できる。
【0109】
そして、揚陸作業が終了し、均圧通路40が不要になって撤収作業をするときには、図12に示すように、排水と排気を行って均圧通路ユニット40Uを平坦化した後、牽引車両53等を用いて蛇腹状に折り畳んだり、巻回したりして、揚陸用コンテナ4に収容する。この揚陸用コンテナ4を揚陸用艦艇1に搭載して撤収作業を終了する。
【0110】
上記の揚陸準備方法及び揚陸準備システムによれば、機雷原や地雷原によって防御されている揚陸目標海岸5への強襲揚陸を行う際に、通行路面41cを通行する人員2や車両3による局所的な大きな踏圧を分散して、広い接地面で小さな面圧で支持することができ、これにより、通行路面41cの通行時の踏圧により爆発物21が爆発するのを回避して、機雷原や地雷原によって防御されている揚陸目標海岸5への強襲揚陸を行うことができるようになる。
【0111】
なお、揚陸用コンテナ4を搬送する手段としては、更に次のような移動体が考えられる。この移動体としては、水上移動、水中移動、水底移動が考えられる。また、このそれぞれの移動に際しては、自航若しくは自走、または曳航若しくは牽引等が考えられる。
【0112】
この移動体として水上を走行する自走式の場合を考えると、例えば、自衛隊の「LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇」は、全長26.4m、全幅14.3m、全高3.32m、重量185tで、積載能力70tである。また、スランス海軍の「L-CT/EDA-R高速水上輸送艇」は、双胴揚陸艇で基準排水量285t、全長30.1mで、艇内に全長23m幅6.9mの車両デッキを有し戦車を含む60tの装備を輸送可能である。これらのことを考えれば、これらの艇体を改造して、揚陸用コンテナ4を搬送することも考えられる。
【0113】
そして、移動体が水中を走行する場合は、レーダーを躱したり、波の影響を少なくしたりできるが、深く潜る必要はなく、揚陸目標海岸5に接近するまでの間だけ、筐体が水面S上に露出しなければよい。そのため、水深数メートルを潜航若しくは走行できればよい。従って、移動体に設けた防水区画に機器類を搭載し、自走できるようにスクリュープロペラなどの移動システムを設ければよい
【0114】
また、移動体が地上と水上の両方を走行する場合を考えると、自衛隊の「AAV7と呼ばれる水陸両用装甲車」が全長8.16m、全幅3.27m、全高3.32m、重量25.7tで、貨物4.5tであることを考えれば、この車体を改造して、揚陸用コンテナ4を搬送することも考えられる。
【0115】
この移動体が地上を走行する場合は、自衛隊の「96式装輪装甲車」が全長6.84、全幅2.40m、全高1.85m、重量14.5tであることと、また、自衛隊の「16式起動戦闘車」が全長8.45m、全幅2.98m、全高2.87m、重量26tであることを考えれば、これに適した形状にして揚陸用コンテナ4を搬送することも考えられる。
【0116】
そして、この移動体が水底を走行する場合は、水深10m程度のところから自走できればよいので、無限軌道や車輪による走行システムを水底走行システムとすることができ、例えば、水陸両用ブルドーザーや水中ブルドーザー等の水底走行装軌車両のシステムを使用できる。
【0117】
この移動体の動力源としては、電力供給線による電気推進システムを用いてもよい。また、航行時間は比較的短くて良いので、蓄電池による電気推進システムを用いてもよい。この水中走行の移動体としては、水中ロボットの推進システムを使用することができる。また、推進システムを備えない移動体を水中ロボットで曳航するようにしてもよい。さらには、送水用ホースで送られる高圧水を駆動源にしてもよい。
【0118】
これらの移動体に関しては、最前線に配備されて、敵の砲火を受ける可能性が大きいので、小型化したり装甲化したりして、敵側からの砲火による破損を防ぐことが好ましい。また、この揚陸準備作業は敵側からの攻撃を受け易い危険な作業であるので、これらの移動体は無人化して、その移動のための操縦に関しては、有線や無線による遠隔操縦や、予め設定したプログラムやデータに従って自律的に動くように構成しておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0119】
1 揚陸用艦艇
2 人員
3 車両
4 揚陸用コンテナ
5 揚陸目標海岸
5a 揚陸予定部位
5b 揚陸予定部位の後端部位
5c 揚陸予定部位の先端部位
6 台車
20 障害物
21 爆発物
21a 機雷
21b 対人用地雷
21c 対車両用地雷
22 構築物
22a 逆茂木
22b 鉄条網
23 防御施設
23a 塹壕
23b トーチカ
31 上陸用半潜水艇
40 均圧通路
40U 均圧通路ユニット
41 積層構造体
41A 接地層
41B 圧力分散層
41C 路面層
41D 遮蔽層
41E 浮力層
41a 応力分散プレート
41b 気体室
41c 通行路面
41d 遮蔽シート
41e 浮力室
42 骨組部材
43 覆い部材
44 浮力構造体
44a 浮力室
53 牽引車両
B 水底(海底、湖底、川底など)
Bp 均圧通路の幅
C 岸辺(海岸、湖岸、川岸など)
Dp 均圧通路の深さ
Lp 均圧通路の長さ
M1 揚陸準備工程
M30 通路敷設工程
M31 均圧通路配置工程
M32 均圧通路形成工程
M32a 送水工程(骨組部材)
M32b 荷重工程(気体室への送水)
M32c 送気工程(気体室)
M32d 送気工程(浮力室)
Pa 内部気体圧
Pw 内部水圧
S1 揚陸準備システム
S40 均圧通路システム
S50 通路展開用システム
S51 高圧水供給用システム
S52 高圧気体供給用システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16