(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085913
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】動画配信システム、動画配信装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/2668 20110101AFI20230614BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H04N21/2668
H04N7/18 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200231
(22)【出願日】2021-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年1月21日にhttps://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2021/01/21_01.htmlにて公開 2021年2月4日にhttps://docomo-openhouse-2021.jp/pre/にて公開 2020年12月14日にhttps://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2020/12/14_00.htmlにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】的場 直人
【テーマコード(参考)】
5C054
5C164
【Fターム(参考)】
5C054CC05
5C054DA09
5C054EJ00
5C054FD02
5C054FE11
5C054HA00
5C164FA06
5C164MC04S
5C164PA33
5C164PA38
5C164SA25S
5C164SB02S
5C164SB21S
5C164SC05P
(57)【要約】
【課題】興味領域のパノラマ動画を作成すること。
【解決手段】一実施形態に係る動画配信システムは、1以上のカメラの各々で撮影された1以上の撮影画像を用いて、予め決められた興味領域を表す動画を構成するフレーム画像を作成する第1の作成部と、前記フレーム画像を所定の解像度に変換した全体画像を作成する第2の作成部と、前記全体画像をユーザ端末に配信する配信部と、を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のカメラの各々で撮影された1以上の撮影画像を用いて、予め決められた興味領域を表す動画を構成するフレーム画像を作成する第1の作成部と、
前記フレーム画像を所定の解像度に変換した全体画像を作成する第2の作成部と、
前記全体画像をユーザ端末に配信する配信部と、
を有する動画配信システム。
【請求項2】
前記動画はパノラマ動画であり、
前記興味領域は、正距円筒図法で表現された360°×180°パノラマ動画の領域の中で垂直角度0°より大きくかつ180°未満、水平角度が0°より大きくかつ360°未満の領域である、請求項1に記載の動画配信システム。
【請求項3】
前記興味領域は、
垂直角度が30°~150°、水平角度が60°~300°の範囲の領域である、請求項2に記載の動画配信システム。
【請求項4】
前記第1の作成部は、
前記興味領域と前記興味領域以外の領域とのいずれか一方又は両方に所定のコンテンツを埋め込んだ動画を構成するフレーム画像を作成する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の動画配信システム。
【請求項5】
前記フレーム画像に対して予め設定された複数の部分領域の各々を表す複数の部分領域画像であって、かつ、前記解像度の複数の部分領域画像を作成する第3の作成部を有し、
前記配信部は、
前記複数の部分領域画像の中で、前記動画が再生される際の前記ユーザ端末の表示範囲に応じた部分領域画像を前記ユーザ端末に更に配信する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の動画配信システム。
【請求項6】
1以上のカメラの各々で撮影された1以上の撮影画像を用いて、予め決められた興味領域を表す動画を構成するフレーム画像を作成する第1の作成部と、
前記フレーム画像を所定の解像度に変換した全体画像を作成する第2の作成部と、
前記全体画像をユーザ端末に配信する配信部と、
を有する動画配信装置。
【請求項7】
1以上のカメラの各々で撮影された1以上の撮影画像を用いて、予め決められた興味領域を表す動画を構成するフレーム画像を作成する第1の作成手順と、
前記フレーム画像を所定の解像度に変換した全体画像を作成する第2の作成手順と、
前記全体画像をユーザ端末に配信する配信手順と、
をコンピュータが実行する方法。
【請求項8】
1以上のカメラの各々で撮影された1以上の撮影画像を用いて、予め決められた興味領域を表す動画を構成するフレーム画像を作成する第1の作成手順と、
前記フレーム画像を所定の解像度に変換した全体画像を作成する第2の作成手順と、
前記全体画像をユーザ端末に配信する配信手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画配信システム、動画配信装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、上下左右の全方位360度を視聴可能な映像が知られており、このような映像はパノラマ映像(又は、「パノラマ動画」や「360度パノラマ映像」、「VR(Virtual Reality)映像」、「VR動画」、「3D動画」等とも称される。)と呼ばれている。一方で、パノラマ映像ではない通常の動画は、パノラマ動画との対比で「2D動画」等とも呼ばれる。
【0003】
また、例えば、動画配信サーバがパノラマ動画をクライアント端末にストリーミング配信等することで、当該クライアント端末でパノラマ動画を視聴することも行われている。しかしながら、パノラマ動画は一般にデータサイズが大きい場合が多く、パノラマ動画の配信に時間が掛かり、パノラマ動画がクライアント端末に表示されるまでに時間を要することがあった。
【0004】
これに対して、クライアント端末に表示される範囲(以下、「視野範囲」ともいう。)を通常の画質で配信し、クライアント端末に表示されない範囲は低画質で配信する技術が知られている(例えば、非特許文献1)。この技術を用いることで、ストリーミング配信等によりパノラマ動画を視聴する際に、ユーザの視聴品質の低下を抑制しつつ、パノラマ動画の配信に要する時間を削減することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】越智 大介、岩城 進之介、「リアルタイム全天球映像配信システム (特集 ドワンゴ×NTT R&Dコラボレーション)」、NTT技術ジャーナル 27(4)、51-54、2015-04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スポーツやコンサート、演劇等といったパノラマ動画で良く視聴されるコンテンツでは必ずしも360°×180°のパノラマ動画が要求されるものではない。例えば、一般に、コンサートや演劇等のコンテンツでは、視聴者は舞台やその周辺領域に興味があり、客席後方の領域には興味はないものと考えられる。このため、視聴者の興味がない領域は除き、興味がある領域のパノラマ動画を作成することで、ユーザの視聴品質を低下させずに、パノラマ動画のデータサイズを削減したり、より高画質化したりすることが可能になる。
【0007】
本発明の一実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、興味領域のパノラマ動画を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、一実施形態に係る動画配信システムは、1以上のカメラの各々で撮影された1以上の撮影画像を用いて、予め決められた興味領域を表す動画を構成するフレーム画像を作成する第1の作成部と、前記フレーム画像を所定の解像度に変換した全体画像を作成する第2の作成部と、前記全体画像をユーザ端末に配信する配信部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
興味領域のパノラマ動画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】部分領域タイル及び全体縮小タイルの一例を説明するための図である。
【
図2】第一の実施形態に係る動画配信システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図3】VR視聴モードと2D視聴モードの一例を説明するための図である。
【
図4】第一の実施形態に係る動画配信システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】第一の実施形態に係る動画配信処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図6】パノラマ動画用全体縮小タイルとサムネイルタイルの合成の一例を説明するための図(その1)である。
【
図7】パノラマ動画用全体縮小タイルとサムネイルタイルの合成の一例を説明するための図(その2)である。
【
図8】第一の実施形態に係るモード切替処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図9】VR視聴モードから2D視聴モードへの切り替えの一例を説明するための図(その1)である。
【
図10】VR視聴モードから2D視聴モードへの切り替えの一例を説明するための図(その2)である。
【
図11】2D視聴モードからVR視聴モードへの切り替えの一例を説明するための図である。
【
図12】ROIパノラマ動画の一例を説明するための図である。
【
図13】第二の実施形態に係る動画配信処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態として、第一の実施形態と第二の実施形態について説明する。
【0012】
[第一の実施形態]
まず、第一の実施形態について説明する。本実施形態では、パノラマ動画と2D動画を切り替えながら視聴可能な動画配信システム1について説明する。
【0013】
<パノラマ動画の配信方法>
本実施形態の前提となる技術として、非特許文献1に記載されているパノラマ動画の配信方法について説明する。この非特許文献1に記載されている技術では、クライアント端末に表示される視野範囲を通常の画質で配信し、それ以外の範囲は低画質で配信する。
【0014】
例えば、
図1に示すように、全天周投影球で表現されるパノラマ動画では、全天周投影球の中心を観測位置として、この観測位置にある疑似的なカメラ装置が所定の画角で撮影した範囲が視野範囲となる。また、全天周投影球で表現されるパノラマ動画は、垂直角度θが0~π、水平角度φが0~2πの正距円筒図法で表現することができる。このとき、非特許文献1に記載されている技術では、正距円筒図法で表現されたパノラマ動画(より正確には、そのパノラマ動画のフレーム画像)の視野範囲を含む部分領域を「部分領域タイル」、当該パノラマ動画全体を圧縮した画像を「全体縮小タイル」としてクライアント端末に配信する。この技術を用いることで、パノラマ動画の配信に要する時間を削減させることができると共に、視野範囲では高画質な動画が視聴可能であり、かつ、視野範囲を移動させた場合であっても動画が途切れることなく視聴可能とさせることができる。なお、ここでは圧縮とは画像サイズの縮小を意味する。
【0015】
なお、上記では「視野範囲」との用語を用いたが、これは、例えば、「視認範囲」や「表示範囲」、「視聴範囲」等と呼ばれてもよい。
【0016】
<動画配信システム1の全体構成>
本実施形態に係る動画配信システム1の全体構成を
図2に示す。
図2に示すように、本実施形態に係る動画配信システム1には、動画配信サーバ10と、1以上のクライアント端末20と、1以上のパノラマ動画用カメラ30と、1以上の2D動画用カメラ40とが含まれる。また、動画配信サーバ10と各クライアント端末20は、例えば、インターネット等の通信ネットワークN1を介して通信可能に接続される。更に、動画配信サーバ10と各パノラマ動画用カメラ30及び各2D動画用カメラ40は、例えば、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークN2を介して通信可能に接続される。
【0017】
動画配信サーバ10は、クライアント端末20からの要求に応じて、パノラマ動画や2D動画をストリーミング配信するコンピュータ又はコンピュータシステムである。このとき、動画配信サーバ10は、パノラマ動画と2D動画を切り替えながら視聴可能なようにクライアント端末20に配信する。
【0018】
クライアント端末20は、パノラマ動画や2D画像を視聴可能な各種端末である。クライアント端末20としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ヘッドマウントディスプレイ、ウェアラブルデバイス、PC(パーソナルコンピュータ)等を用いることができる。ユーザは、クライアント端末20を用いて、パノラマ動画と2D動画を切り替えながら視聴することができる。
【0019】
なお、ユーザは、クライアント端末20を操作等することで、パノラマ動画中における視野範囲を移動又は変更することができる。このような操作としては、例えば、クライアント端末20が備えるタッチパネルに対するスワイプ操作やフリック操作、視野範囲の移動ボタンの押下操作であってもよいし、マウス等のポインティングデバイスを用いた視野範囲の移動ボタンの押下操作等であってもよい。また、上下左右の全方位360度の向きを検出可能なセンサをクライアント端末20が備えている場合には、クライアント端末20の向きを変更することで、視野範囲の移動又は変更を行うことができてもよい。
【0020】
パノラマ動画用カメラ30は、パノラマ動画を作成するための撮影画像(以下、パノラマ動画用撮影画像ともいう。)を生成するカメラ等の撮影装置である。パノラマ動画用カメラ30は、通常のカメラであってもよいし、魚眼レンズ等の広視野角レンズを備えたカメラであってもよいし、パノラマ動画撮影用の専用カメラ(例えば、魚眼レンズ等の広視野角レンズを複数備えたカメラ等)であってもよい。
【0021】
2D動画用カメラ40は、2D動画を作成するための撮影画像(以下、2D動画用撮影画像ともいう。)を生成するカメラ等の撮影装置である。
【0022】
なお、
図1に示す動画配信システム1の全体構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、クライアント端末20に音や音声等も配信する場合には、マイク等の集音装置が動画配信システム1に含まれていてもよい。
【0023】
また、パノラマ動画や2D動画をストリーミング配信ではなく、オンデマンド配信する場合には、パノラマ動画や2D動画を保持する記憶装置等が動画配信システム1に含まれていてもよい。以下では、主に、スポーツやコンサート、演劇等のライブコンテンツをストリーミング配信する場合を想定して説明するが、以下の説明は、当該コンテンツを録画し、オンデマンド配信する場合にも同様に適用可能である。
【0024】
<視聴モード>
ここで、クライアント端末20にはユーザがパノラマ動画を視聴するための「VR視聴モード」と2D動画を視聴するための「2D視聴モード」とが存在する。なお、「VR視聴モード」は、例えば、「パノラマ視聴モード」や「3D視聴モード」等と呼ばれてもよい。
【0025】
図3に示すように、VR視聴モードでは、クライアント端末20にはVR視聴画面1000が表示される。このVR視聴画面1000には、部分領域タイル(又は全体縮小タイル)からパノラマ動画1001が表示されると共に、そのパノラマ動画1001上に2D動画のサムネイル動画1002~1003が表示される。そして、2D動画のサムネイル動画1002又は1003がユーザにより選択された場合、VR視聴モードから2D視聴モードに遷移する。
【0026】
図3に示すように、2D視聴モードでは、クライアント端末20には2D視聴画面2000が表示される。この2D視聴画面2000には、ユーザにより選択された2D動画2001が表示されると共に、パノラマ動画のサムネイル動画2002と、現在表示されている2D動画2001とは異なる他の2D動画のサムネイル動画2003とが表示される。そして、パノラマ動画のサムネイル動画2002がユーザにより選択された場合は2D視聴モードからVR視聴モードに遷移し、他の2D動画のサムネイル動画2003が選択された場合は2D視聴モードのまま当該他の2D動画が表示する。なお、2D動画2001、サムネイル動画2002及び2003は、全体縮小タイルが表すパノラマ動画上に表示される。
【0027】
このように、本実施形態に係るクライアント端末20では、VR視聴モード中に2D動画のサムネイル動画を表示すると共に、2D視聴モード中にパノラマ動画及び他の2D動画のサムネイル動画を表示し、いずれかのサムネイル動画がユーザにより選択された場合にはそのサムネイル動画に対応する動画(パノラマ動画又は2D動画)を表示する。これにより、ユーザは、パノラマ動画と2D動画を容易に切り替えて視聴することが可能となる。なお、サムネイル動画は、例えば、「補助動画」や「補助映像」等と呼ばれてもよい。
【0028】
したがって、例えば、あるスポーツ中継で試合会場全体を見渡せるパノラマ動画と、ある選手の視点動画や試合会場に固定的に設置されたカメラの動画等である2D動画とが提供されるような場合に、ユーザは、パノラマ動画と2D動画とを切り替えながら試合観戦を行うことが可能となる。
【0029】
なお、
図3に示す例では、VR視聴画面1000及び2D視聴画面2000中のサムネイル動画が2つであるが、これは一例であって、サムネイル動画の個数は任意の個数とすることが可能である。また、サムネイル動画の個数はユーザが設定することができてもよいし、VR視聴画面1000と2D視聴画面2000でサムネイル動画の個数が異なっていてもよい。
【0030】
更に、
図3に示す例では、VR視聴画面1000及び2D視聴画面2000において、サムネイル動画が下部に表示されているが、これは一例であって、上部、左部、又は右部に表示されていてもよい。また、上部、下部、左部、右部の2つ以上の部分にサムネイル動画が分散して表示されていてもよい。ただし、上下方向よりも左右方向の方が広範囲を視認可能であるという人の視野特性によれば、下部又は上部(特に、下部)にサムネイル動画を表示することが好ましい。
【0031】
加えて、VR視聴画面1000及び2D視聴画面2000において、サムネイル動画は常時表示されている必要はない。例えば、通常はサムネイル動画が非表示となっており、何等かのユーザ操作が検知されたり、新たなサムネイル動画が追加配信されたりしたタイミングでサムネイル動画が表示されてもよい。また、一度表示されたサムネイル動画は、例えば、一定時間の間、ユーザ操作が検知されなかった場合に再度非表示となってもよい。
【0032】
以下では、主に、ユーザがある1つのパノラマ動画を視聴可能である場合を想定するが、ユーザが複数のパノラマ動画を視聴可能であってもよい。例えば、第1のパノラマ動画と第2のパノラマ動画とが視聴可能である場合、第1のパノラマ動画を視聴するための第1のVR視聴モードと、第2のパノラマ動画を視聴するための第2のVR視聴モードとが存在し、ユーザは、第1のVR視聴モードと第2のVR視聴モードと2D視聴モードとを相互に切り替えることができてもよい。この場合、第1のVR視聴モードでは第2のパノラマ動画のサムネイル動画も表示され、同様に第2のVR視聴モードでは第1のパノラマ動画のサムネイル動画も表示される。
【0033】
<動画配信システム1の機能構成>
本実施形態に係る動画配信システム1の機能構成を
図4に示す。
【0034】
≪動画配信サーバ10≫
図4に示すように、本実施形態に係る動画配信サーバ10は、機能部として、パノラマ動画作成部101と、パノラマ動画用タイル作成部102と、2D動画作成部103と、2D動画用タイル作成部104と、合成部105と、配信部106とを有する。これら各機能部は、例えば、動画配信サーバ10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサに実行させる処理により実現される。
【0035】
パノラマ動画作成部101は、パノラマ動画用カメラ30から取得した各パノラマ動画用撮影画像を用いてパノラマ動画を作成する。すなわち、パノラマ動画作成部101は、フレーム時間幅ごとに、各パノラマ動画用撮影画像をデコードした上で、スティッチングと呼ばれる既知の画像処理技術により各パノラマ動画用撮影画像を繋ぎ合わせることでパノラマ動画を作成する。なお、フレーム時間幅とは撮影画像の生成間隔のことであり、フレームレートの逆数である。
【0036】
パノラマ動画用タイル作成部102は、パノラマ動画作成部101により作成されたパノラマ動画を用いて、全体縮小タイルと、部分領域タイルと、2D視聴モード中にパノラマ動画のサムネイル動画を表示させるためのサムネイルタイル(以下、パノラマ動画用サムネイルタイルともいう。)とを作成する。
【0037】
ここで、全体縮小タイルとは、正距円筒図法で表現されたパノラマ動画(より正確には、パノラマ動画のフレーム画像)全体を所定の解像度(つまり、所定の幅及び高さ)に圧縮した画像のことである。ただし、非特許文献1に記載されている全体縮小タイルとは異なり、本実施形態では、全体縮小タイルにはパノラマ動画用領域とサムネイル用領域とが存在し、正距円筒図法で表現されたパノラマ動画を所定の解像度で圧縮した画像はパノラマ動画用領域に該当するものとする。なお、全体縮小タイルに有効領域が定義されている場合には、有効領域をパノラマ動画用領域、それ以外の非有効領域をサムネイル用領域としてもよい。また、以下では、画像の解像度を圧縮することを「縮小」との用語で統一するが、例えば、全体縮小タイルはパノラマ動画全体を所定の解像度に変換した画像ということもできるため、「縮小」の代わりに「変換」との用語が用いられてもよい。
【0038】
また、部分領域タイルとは、全体縮小タイルと同一解像度の画像であって、当該パノラマ動画(より正確には、そのフレーム画像)の一部の部分領域を表す画像である。なお、パノラマ動画の各フレーム画像に対して、そのフレーム画像全体を覆うように部分領域タイルが作成される。
【0039】
例えば、パノラマ動画の各フレーム画像の解像度を11520×6480(pixel)、部分領域タイルの解像度を1920×1080(pixel)として、水平方向に960(pixel)ずつ、垂直方向に540(pixel)ずつオーバーラップさせながら部分領域タイルを作成する場合、パノラマ動画の各フレーム画像に対して、11×11=121個の部分領域タイルが作成される。なお、これは一例であって、各フレーム画像に対して、どの解像度の部分領域タイルをどの程度オーバーラップさせて作成されるかは適宜設定することが可能である。一般に、よりオーバーラップさせて部分領域タイルを作成する方がより高い視聴品質をユーザに提供することが可能であるが、それに伴い多くの計算資源やメモリ等が必要になる。
【0040】
また、パノラマ動画用サムネイルタイルとは、部分領域タイルをサムネイル用の所定の解像度に圧縮した画像のことである。
【0041】
2D動画作成部103は、2D動画用カメラ40から取得した各2D動画用撮影画像を用いて各2D動画(より正確には、それらのフレーム画像)をそれぞれ作成する。すなわち、2D動画作成部103は、フレーム時間幅ごとに、各2D動画用撮影画像をデコードすることで、各2D動画をそれぞれ作成する。
【0042】
2D動画用タイル作成部104は、2D動画作成部103により作成された2D動画を用いて、当該2D動画を表示させるための2D動画タイルと、VR視聴モード又は2D視聴モード中に当該2D動画のサムネイル動画を表示させるためのサムネイルタイル(以下、2D動画用サムネイルタイルともいう。)とを作成する。
【0043】
ここで、2D動画タイルとは、部分領域タイル以下の解像度の画像である。2D動画タイルは各2D動画に対して作成される。2D動画用サムネイルタイルとは、パノラマ動画用サムネイルタイルと同一解像度の画像であって、2D動画タイルをサムネイル用の所定の解像度に圧縮した画像のことである。
【0044】
合成部105は、クライアント端末20がVR視聴モードである場合には各2D動画の2D動画用サムネイルタイルを全体縮小タイルのサムネイル用領域に合成する。また、合成部105は、クライアント端末20が2D視聴モードである場合には現在視聴中の2D動画以外の他の2D動画の2D動画用サムネイルタイルとパノラマ動画用サムネイルタイルとを全体縮小タイルのサムネイル用領域に合成する。
【0045】
配信部106は、クライアント端末20がVR視聴モードである場合には全体縮小タイルと、当該クライアント端末20の視野範囲に応じた部分領域タイルとを配信する。また、配信部106は、クライアント端末20が2D視聴モードである場合には全体縮小タイルと、ユーザにより選択された2D動画(つまり、ユーザが現在視聴中の2D動画)の2D動画タイルとを配信する。
【0046】
≪クライアント端末20≫
図4に示すように、本実施形態に係るクライアント端末20は、機能部として、動画視聴部201を有する。当該機能部は、例えば、クライアント端末20にインストールされた1以上のプログラムが、CPUやGPU等のプロセッサに実行させる処理により実現される。
【0047】
動画視聴部201は、現在の視聴モードに応じて、パノラマ動画又は2D動画とサムネイル動画とを表示するための配信要求を動画配信サーバ10に送信する。ここで、当該配信要求には、例えば、現在の視聴モードを示す情報と、視野範囲の中心座標又は当該中心座標を特定するための情報とが含まれる。視野範囲の中心座標を特定するための情報としては、例えば、視野範囲の各頂点の座標や対角頂点の座標等が挙げられる。
【0048】
また、動画視聴部201は、動画配信サーバ10から配信されたタイル(全体縮小タイルと部分領域タイル又は2D動画タイル)によりパノラマ動画又は2D動画とサムネイル動画とを表示する。
【0049】
<動画配信処理>
本実施形態に係る動画配信処理のシーケンス図を
図5に示す。ここで、以下のステップS101~ステップS102はパノラマ動画用撮影画像のフレーム時間幅ごとに繰り返し実行され、ステップS103~ステップS104は2D動画用撮影画像のフレーム時間幅ごとに繰り返し実行される。以下では、あるフレーム時刻tのステップS101~ステップS104について説明する。なお、フレーム時刻tとは、撮影開始時刻をt
0、フレーム時間幅をΔtとすればt=t
0+Δt,t
0+2Δt,t
0+3Δt,・・・と表される時刻のことである。
【0050】
動画配信サーバ10のパノラマ動画作成部101は、フレーム時刻tの各パノラマ動画用撮影画像を用いてパノラマ動画(より正確には、そのフレーム画像)を作成する(ステップS101)。
【0051】
次に、動画配信サーバ10のパノラマ動画用タイル作成部102は、上記のステップS101で作成されたパノラマ動画を用いて、フレーム時刻tの全体縮小タイルと部分領域タイルとパノラマ動画用サムネイルタイルとを作成する(ステップS102)。
【0052】
動画配信サーバ10の2D動画作成部103は、フレーム時刻tの各2D動画用撮影画像を用いて、各2D動画(より正確には、それらのフレーム画像)をそれぞれ作成する(ステップS103)。
【0053】
次に、動画配信サーバ10の2D動画用タイル作成部104は、上記のステップS103で作成された各2D動画を用いて、フレーム時刻tの2D動画タイルと2D動画用サムネイルタイルとをそれぞれ作成する(ステップS104)。なお、例えば、2D動画用カメラ40がM台存在し、これらM台の2D動画用カメラ40の各々から2D動画用撮影画像が得られた場合、M個の2D動画タイルとM個の2D動画用サムネイルタイルとが作成される。
【0054】
続いて、クライアント端末20の視聴モードがVR視聴モードである場合はステップS105~ステップS108が実行され、2D視聴モードである場合はステップS109~ステップS112が実行される。以下のステップS105~ステップS108及びステップS109~ステップS112は、視聴モードが切り替わらない間、例えば、nを予め設定した1以上の整数として、n×フレーム時間幅ごとに繰り返し実行される。
【0055】
・VR視聴モードである場合
クライアント端末20の動画視聴部201は、VR視聴モード配信要求を動画配信サーバ10に送信する(ステップS105)。ここで、VR視聴モード配信要求には、タイルの配信を要求するn個以上のフレーム時刻を表す情報が含まれる。ただし、このn個以上のフレーム時刻を表す情報は必須ではなく、VR視聴モード配信要求に含まれていなくてもよい。
【0056】
動画配信サーバ10の合成部105は、該当のフレーム時刻(つまり、タイルの配信を要求するフレーム時刻)の各2D動画用サムネイルタイルをそのフレーム時刻の全体縮小タイルに合成する(ステップS106)。なお、例えば、ユーザが複数のパノラマ動画を視聴可能な場合には、合成部105は、更に、全体縮小タイルに対応するパノラマ動画以外のパノラマ動画のパノラマ動画用サムネイルタイルを当該全体縮小タイルに合成する。
【0057】
ここで、一例として、2D動画用カメラ40が2台存在し、あるフレーム時刻で2つの2D動画用サムネイルタイルが作成された場合の合成例を
図6に示す。
図6に示すように、この場合、全体縮小タイルのサムネイル用領域に各2D動画用サムネイルタイルを埋め込むことで合成する。
【0058】
次に、動画配信サーバ10の配信部106は、上記のステップS106における合成後の全体縮小タイルと、それと同一フレーム時刻の部分領域タイルとをクライアント端末20に送信する(ステップS107)。このとき、配信部106は、VR視聴モード配信要求に含まれる視野範囲の中心座標又は当該中心座標を特定するための情報を用いて、当該視野範囲が含まれる部分領域タイルを特定した上で、この特定した部分領域タイルをクライアント端末20に送信する。なお、全体縮小タイルと部分領域タイルはエンコードされた上で、このエンコード後のデータがクライアント端末20に送信される。
【0059】
そして、クライアント端末20の動画視聴部201は、動画配信サーバ10から送信された全体縮小タイルと部分領域タイルを用いて、VR視聴モードでパノラマ動画を再生する(ステップS108)。すなわち、動画視聴部201は、動画配信サーバ10から受信したデータをデコードした上で、部分領域タイルをパノラマ動画として表示すると共に、全体縮小タイルに含まれる2D動画用サムネイルをサムネイル動画として当該パノラマ動画上に表示する。これにより、クライアント端末20には、
図3に示したようなVR視聴画面1000が表示される。
【0060】
・2D視聴モードである場合
クライアント端末20の動画視聴部201は、2D視聴モード配信要求を動画配信サーバ10に送信する(ステップS109)。ここで、2D視聴モード配信要求には、現在視聴中の2D動画を示す情報と、タイルの配信を要求するn個以上のフレーム時刻を表す情報とが含まれる。ただし、このn個以上のフレーム時刻を表す情報は必須ではなく、2D視聴モード配信要求に含まれていなくてもよい。
【0061】
動画配信サーバ10の合成部105は、該当のフレーム時刻(つまり、タイルの配信を要求するフレーム時刻)の各2D動画用サムネイルタイルのうち現在視聴中の2D動画以外の2D動画用サムネイルタイルと、そのフレーム時刻のパノラマ動画用サムネイルタイルとをそのフレーム時刻の全体縮小タイルに合成する(ステップS110)。ここで、一例として、2D動画用カメラ40が2台存在し、あるフレーム時刻で2つの2D動画用サムネイルタイルが作成されたが、ユーザがある1台の2D動画用カメラ40の2D動画を視聴中である場合の合成例を
図7に示す。
図7に示すように、この場合、全体縮小タイルのサムネイル用領域にユーザが視聴していない2D動画(
図7に示す例では「2D動画1」)の2D動画用サムネイルタイルと、パノラマ動画用サムネイルタイルとを埋め込むことで合成する。ただし、このとき、合成部105は、2D視聴モード配信要求に含まれる視野範囲の中心座標又は当該中心座標を特定するための情報を用いて、当該視野範囲が含まれる部分領域タイルを特定した上で、この特定した部分領域タイルに対応するパノラマ動画用サムネイルタイルを全体縮小タイルに埋め込む。
【0062】
ただし、上記のステップS110において、パノラマ動画用サムネイルを全体縮小タイルに合成しなくてもよい。この場合、パノラマ動画用領域の画像がパノラマ動画のサムネイル動画に使用されてもよいし、ユーザの視野範囲が含まれる部分領域タイルをクライアント端末20に送信することで当該部分領域タイルがパノラマ動画のサムネイル動画に使用されてもよい。
【0063】
なお、
図6及び
図7に示す例ではいずれもサムネイル用領域が全体縮小タイルの下端に存在するが、これは一例であって、サムネイル用領域は全体縮小タイルの上端に存在してもよいし、左端や右端に存在してもよい。また、上端と下端の両方や左端と右端の両方等といったようにサムネイル用領域が複数存在してもよい。特に、サムネイルの個数が多い場合にはサムネイル用領域を複数設定してもよい。
【0064】
次に、動画配信サーバ10の配信部106は、上記のステップS105における合成後の全体縮小タイルと、それと同一フレーム時刻の2D動画タイルとをクライアント端末20に送信する(ステップS111)。このとき、配信部106は、2D視聴モード配信要求に含まれる現在視聴中の2D動画を示す情報からユーザが現在視聴中の2D動画を特定した上で、この特定した2D動画の2D動画タイルをクライアント端末20に送信する。なお、全体縮小タイルと2D動画タイルはエンコードされた上で、このエンコード後のデータがクライアント端末20に送信される。
【0065】
そして、クライアント端末20の動画視聴部201は、動画配信サーバ10から送信された全体縮小タイルと2D動画タイルを用いて、2D視聴モードで2D動画を再生する(ステップS112)。すなわち、動画視聴部201は、動画配信サーバ10から受信したデータをデコードした上で、2D動画タイルを2D動画として表示すると共に、全体縮小タイルに含まれる2D動画用サムネイルタイル及びパノラマ動画用サムネイルタイルをサムネイル動画として表示する。これにより、クライアント端末20には、
図3に示したような2D視聴画面2000が表示される。なお、このとき、2D動画タイルの解像度が部分領域タイルの解像度よりも低い場合(つまり、例えば、
図3に示す2D動画2001のように、パノラマ動画1001よりも解像度が低い場合)、背景として、全体縮小タイルに含まれるパノラマ動画用領域の画像が表示されてもよい。
【0066】
<モード切替処理>
本実施形態に係るモード切替処理のシーケンス図を
図8に示す。以下、クライアント端末20のユーザはVR視聴モード又は2D視聴モードのいずれかの視聴モードでパノラマ動画又は2D動画を視聴しているものとする。
【0067】
クライアント端末の動画視聴部201は、ユーザによるモード切替操作を受け付ける(ステップS201)。モード切替操作とは視聴モードをVR視聴モードから2D視聴モード又は2D視聴モードからVR視聴モードに切り替えるための操作であり、本実施形態では、VR視聴モード中における2D動画のサムネイル動画の選択操作と2D視聴モード中におけるパノラマ動画のサムネイル動画の選択操作であるものとする。ただし、これら以外にも視聴モードを切り替え可能な任意の操作をモード切替操作としてもよい。
【0068】
続いて、VR視聴モードから2D視聴モードへのモード切替操作が受け付けられた場合はステップS202~ステップS206が実行され、2D視聴モードからVR視聴モードへのモード切替操作が受け付けられた場合はステップS207~ステップS211が実行される。
【0069】
・VR視聴モードから2D視聴モードへの切り替え
クライアント端末20の動画視聴部201は、2D視聴モード配信要求を動画配信サーバ10に送信する(ステップS202)。ここで、2D視聴モード配信要求には、モード切替操作で選択された2D動画を示す情報も含まれているものとする。
【0070】
次に、クライアント端末20の動画視聴部201は、モード切替操作で選択されたサムネイル動画の2D動画が表示されるまでの待機画面を表示する(ステップS203)。
【0071】
動画配信サーバ10の合成部105は、
図5のステップS110と同様に、該当のフレーム時刻の各2D動画用サムネイルタイルのうちモード切替操作で選択された2D動画以外の2D動画用サムネイルタイルと、そのフレーム時刻のパノラマ動画用サムネイルタイルとをそのフレーム時刻の全体縮小タイルに合成する(ステップS204)。
【0072】
次に、動画配信サーバ10の配信部106は、
図5のステップS111と同様に、上記のステップS204における合成後の全体縮小タイルと、それと同一フレーム時刻の2D動画タイルとをクライアント端末20に送信する(ステップS205)。このとき、配信部106は、2D視聴モード配信要求に含まれるモード切替操作で選択された2D動画を示す情報からユーザが選択した2D動画を特定した上で、この特定した2D動画の2D動画タイルをクライアント端末20に送信する。なお、全体縮小タイルと2D動画タイルはエンコードされた上で、このエンコード後のデータがクライアント端末20に送信される。
【0073】
そして、クライアント端末20の動画視聴部201は、
図5のステップS112と同様に、動画配信サーバ10から送信された全体縮小タイルと2D動画タイルを用いて、2D視聴モードで2D動画を再生する(ステップS206)。これにより、待機画面から2D視聴画面に表示が遷移する。
【0074】
ここで、VR視聴モードから2D視聴モードへ切り替える際のクライアント端末20の画面遷移の一例を
図9に示す。
図9に示すように、VR視聴画面1000にはパノラマ動画1001とサムネイル動画1002及び1003とが表示されており、例えば、ユーザがサムネイル動画1002を選択すると、上記のステップS203で待機画面1500が表示される。この待機画面1500では、低画質な2D動画1501と待機インジケータ1502とが表示される。なお、低画質な2D動画1501の背景として、全体縮小タイルに含まれるパノラマ動画用領域の画像が表示されてもよい。ここで、2D動画1501は、ユーザにより選択されたサムネイル動画1002に対応する2D動画用サムネイルタイルを2D動画タイルと同一の解像度に拡大したものである。そして、動画配信サーバ10から全体縮小タイルと2D動画タイルを受信すると、2D視聴画面2000が表示される。この2D視聴画面2000には、ユーザにより選択されたサムネイル動画1002に対応する2D動画2001が表示される。このように、ユーザにより選択された2D動画が表示されるまでの間、この2D動画の低画質な2D動画をサムネイルタイルから表示する。これにより、モード切替に伴うユーザの視聴品質の低下を抑止することができる。
【0075】
また、VR視聴モードから2D視聴モードへ切り替わる際のクライアント端末20の画面遷移の他の例を
図10に示す。
図10に示すように、上記のステップS203で待機画面1600を表示してもよい。この待機画面1600では待機インジケータと2D動画を読み込み中である旨の文字列とをエリア1601上に表示する。これにより、
図9と比較するとユーザの視聴品質は低下するが、簡易に実装することが可能となる。なお、待機インジケータと2D動画を読み込み中である旨の文字列の両方を表示するのではなく、いずれか一方のみを表示してもよい。
【0076】
・2D視聴モードからVR視聴モードへの切り替え
クライアント端末20の動画視聴部201は、VR視聴モード配信要求を動画配信サーバ10に送信する(ステップS207)。
【0077】
次に、クライアント端末20の動画視聴部201は、モード切替操作で選択されたサムネイル動画のパノラマ動画が表示されるまでの待機画面を表示する(ステップS208)。
【0078】
動画配信サーバ10の合成部105は、
図5のステップS106と同様に、該当のフレーム時刻の各2D動画用サムネイルタイルをそのフレーム時刻の全体縮小タイルに合成する(ステップS209)。
【0079】
次に、動画配信サーバ10の配信部106は、
図5のステップS107と同様に、上記のステップS209における合成後の全体縮小タイルと、それと同一フレーム時刻の部分領域タイルとをクライアント端末20に送信する(ステップS210)。このとき、配信部106は、VR視聴モード配信要求に含まれる視野範囲の中心座標又は当該中心座標を特定するための情報を用いて、当該視野範囲が含まれる部分領域タイルを特定した上で、この特定した部分領域タイルをクライアント端末20に送信する。なお、全体縮小タイルと部分領域タイルはエンコードされた上で、このエンコード後のデータがクライアント端末20に送信される。
【0080】
そして、クライアント端末20の動画視聴部201は、
図5のステップS108と同様に、動画配信サーバ10から送信された全体縮小タイルと部分領域タイルを用いて、VR視聴モードでパノラマ動画を再生する(ステップS211)。これにより、待機画面からVR視聴画面に表示が遷移する。
【0081】
ここで、2D視聴モードからVR視聴モードへ切り替える際のクライアント端末20の画面遷移の一例を
図11に示す。
図11に示すように、2D視聴画面2000には2D動画2001と、パノラマ動画のサムネイル動画2002と、現在視聴中の2D動画とは異なる他の2D動画のサムネイル動画2003とが表示されており、例えば、ユーザがサムネイル動画2002を選択すると、上記のステップS208で待機画面1700が表示される。この待機画面1700では、低画質なパノラマ動画上に待機インジケータ1701が表示される。ここで、低画質なパノラマ動画は、全体縮小タイルにより表示されるパノラマ動画である。そして、動画配信サーバ10から全体縮小タイルと部分領域タイルを受信すると、VR視聴画面1000が表示される。このように、部分領域タイルによるパノラマ動画が表示されるまでの間、低画質なパノラマ動画を全体縮小タイルから表示する。これにより、モード切替に伴うユーザの視聴品質の低下を抑止することができる。
【0082】
なお、
図8ではVR視聴モードから2D視聴モード又は2D視聴モードからVR視聴モードに切り替える場合について説明したが、例えば、2D視聴画面において、現在視聴中の2D動画とは異なる他の2D動画のサムネイル動画が選択された場合も同様に待機画面が表示されてもよい。すなわち、この場合は2D視聴モードのままであり、視聴モードの切り替えは発生しないが、ユーザにより選択された新たな2D動画の2D動画タイルを動画配信サーバ10から受信する必要があるため、この新たな2D動画の配信要求を行ってから、当該新たな2D動画の2D動画タイルを受信して表示するまでの間、上記のステップS206又はステップS208と同様の待機画面が表示されてもよい。
【0083】
[第二の実施形態]
次に、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、垂直角度θが0~π、水平角度φが0~2πの正距円筒図法で表現されたパノラマ動画を配信対象として、このパノラマ動画から全体縮小タイルと部分領域タイルとを作成したが、本実施形態では、その代わりに、パノラマ動画の中で興味領域(ROI:Region of Interest)と呼ばれる領域を配信対象として、その興味領域から全体縮小タイルと部分領域タイルとを作成する場合について説明する。これは、一般に、360°×180°のパノラマ動画の中で視聴者が興味を持つのは被写体が映っている一部の領域等であることが多いためである。以下では、興味領域を表すパノラマ動画を「ROIパノラマ動画」という。
【0084】
なお、第二の実施形態では、主に、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同一又は同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0085】
<ROIパノラマ動画>
図12に示すように、ROIパノラマ動画(より正確には、そのフレーム画像)は、360°×180°の仮想的なパノラマ動画(より正確には、そのフレーム画像)の一部の領域と考えることができる。
図12は、ROIパノラマ動画は、360°×180°の仮想的なパノラマ動画の中の240°×120°の領域(つまり、正距円筒図法で表現した場合に、仮想的なパノラマ動画に対して垂直角度が30°~150°、水平角度が60°~300°の範囲の領域)である例を示している。
【0086】
以下では、360°×180°の仮想的なパノラマ動画(以下、仮想パノラマ動画ともいう。)の解像度をROIFULLEQWIDTH×ROIFULLEQHEIGHT(pixel)、ROIパノラマ動画の解像度をRESOLUTIONWIDTH×RESOLUTIONHEIGHT(pixel)、部分領域タイルの解像度をVIEWWIDTH×VIEWHEIGHT(pixel)とする。また、仮想パノラマ動画の左上の頂点座標に対するROIパノラマ動画の左上の頂点座標のオフセットをROILEFTINFULLEQ及びROITOPINFULLEQとする。ROILEFTINFULLEQは仮想パノラマ動画の左上の頂点座標の水平成分値に対するROIパノラマ動画の左上の頂点座標の水平成分値のオフセットであり、ROITOPINFULLEQは仮想パノラマ動画の左上の頂点座標の垂直成分値に対するROIパノラマ動画の左上の頂点座標の垂直成分値のオフセットである。ただし、座標は水平右方向及び垂直下方向をそれぞれ正の方向とする。
【0087】
このとき、動画配信サーバ10は、全体縮小タイルを送信する際にはROIパノラマ動画の幅及び高さ、仮想的なパノラマ動画におけるROIパノラマ動画の左端の座標及び上端の座標をそれぞれ表す4つのパラメータ(ROIFULLEQWIDTH、ROIFULLEQHEIGHT、ROILEFTINFULLEQ、及びROITOPINFULLEQ)も送信する。ただし、ROIパノラマ動画でなく通常の360°×180°のパノラマ動画の全体縮小タイルを送信する際には、上記の4つのパラメータにはデフォルト値を設定した上で送信する。ここで、ROIFULLEQWIDTH及びROIFULLEQHEIGHTのデフォルト値は解像度の最大値、ROILEFTINFULLEQ及びROITOPINFULLEQのデフォルト値は0とする。
【0088】
より具体的には、通常の360°×180°のパノラマ動画の全体縮小タイルを送信する際には、ROIFULLEQWIDTH=解像度の幅の最大値、ROIFULLEQHEIGHT=解像度の高さの最大値、ROILEFTINFULLEQ=0、ROITOPINFULLEQ=0と設定して送信する。一方で、ROIパノラマ動画の全体縮小タイルを送信する際には、ROIFULLEQWIDTH=解像度の幅の最大値、ROIFULLEQHEIGHT=解像度の高さの最大値、ROILEFTINFULLEQ=ROIパノラマ動画の全体縮小タイルの左端の座標、ROITOPINFULLEQ=ROIパノラマ動画の全体縮小タイルの上端の座標と設定して送信する。
【0089】
これにより、クライアント端末20の動画視聴部201を実現するプログラムがROIパノラマ動画の再生に対応していれば、後方互換が実現される。
【0090】
なお、ROIパノラマ動画のRESOLUTIONWIDTH及びROIFULLEQHEIGHTを送信する代わりに、例えば、ROIFULLEQWIDTHとVIEWWIDTHの比、RESOLUTIONHEIGHTはROIFULLEQHEIGHTとVIEWHEIGHTの比を送信してもよい。これは、どの解像度の部分領域タイルをどの程度オーバーラップさせて作成されるかは予め設定されるため、RESOLUTIONWIDTHはROIFULLEQWIDTHとVIEWWIDTHの比、ROIFULLEQHEIGHTはROIFULLEQHEIGHTとVIEWHEIGHTの比でそれぞれ表現可能なためである。また、この比は、例えば、仮想的なパノラマ動画に対するROIパノラマ動画の「縮小率」等と呼ばれてもよい。
【0091】
<動画配信処理>
本実施形態に係る動画配信処理のシーケンス図を
図13に示す。ここで、以下のステップS301~ステップS302はパノラマ動画用撮影画像のフレーム時間幅ごとに繰り返し実行され、ステップS303~ステップS304は2D動画用撮影画像のフレーム時間幅ごとに繰り返し実行される。以下では、あるフレーム時刻tのステップS301~ステップS304について説明する。
【0092】
動画配信サーバ10のパノラマ動画作成部101は、フレーム時刻tの各パノラマ動画用撮影画像を用いてROIパノラマ動画(より正確には、そのフレーム画像)を作成する(ステップS301)。ここで、興味領域とする部分は任意に決定することが可能であるが、例えば、360°×180°のパノラマ動画の中で240°×120°の領域を興味領域として、240°×120°のROIパノラマ動画を作成することが考えられる。これは、上下部分(0°~30°及び150°~180°)や後方部分(0°~60°及び300°~360°)は一般的にユーザにより視聴されることは少ないためである。ただし、これは一例であって、360°×180°の中の任意の領域を興味領域として、その興味領域を表すROIパノラマ動画を作成することが可能である。
【0093】
次に、動画配信サーバ10のパノラマ動画用タイル作成部102は、上記のステップS301で作成されたROIパノラマ動画を用いて、フレーム時刻tの全体縮小タイルと部分領域タイルとパノラマ動画用サムネイルタイルとを作成する(ステップS302)。ここで、この全体縮小タイルは、正距円筒図法で表現されたROIパノラマ動画(より正確には、パノラマ動画のフレーム画像)全体を所定の解像度に圧縮した画像のことである。なお、それ以外は第一の実施形態と同様であり、全体縮小タイルにはパノラマ動画用領域とサムネイル用領域とが存在する。
【0094】
また、部分領域タイルは全体縮小タイルと同一解像度の画像であって、ROIパノラマ動画(より正確には、そのフレーム画像)の一部の部分領域を表す画像である。なお、ROIパノラマ動画の一部の部分領域であること以外は第一の実施形態と同様である。
【0095】
続くステップS303~ステップS304及びそれ以降の処理は第一の実施形態と同様である。
【0096】
このように、本実施形態に係る動画配信サーバ10は、360°×180°のパノラマ動画の代わりにROIパノラマ動画を作成した上で、このROIパノラマ動画から全体縮小タイルと部分領域タイルを作成する。これにより、360°×180°のパノラマ動画よりもROIパノラマ動画を高画質で作成することが可能となるため、全体縮小タイルも高画質となり、ユーザの視聴品質をより高めることが可能となる。
【0097】
また、例えば、360°×180°のパノラマ動画と同一又は同程度の画質のROIパノラマ動画を作成する場合には、全体縮小タイルのデータサイズを削減させることができると共に、パノラマ動画用カメラ30の台数を削減させることが可能となり、カメラの導入又は設置コスト等を削減することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、第一の実施形態を前提としてROIパノラマ動画を作成したが、必ずしも第一の実施形態を前提としなくてもよい。すなわち、本実施形態は、2D動画の存在を前提とせずに、パノラマ動画を配信及び視聴する場合にも適用することが可能である。
【0099】
[変形例]
以下、上記の各実施形態の変形例について説明する。
【0100】
・変形例1
図13のステップS301でROIパノラマ動画を作成する際に、パノラマ動画作成部101は、興味領域以外の領域に何等かのコンテンツ(例えば、CG(コンピュータグラフィックス)、アーティストやチームのロゴ等)を埋め込んでもよい。具体的には、360°×180°のパノラマ動画の中で240°×120°の領域を興味領域とする場合、パノラマ動画作成部101は、360°×180°のパノラマ動画の中で当該興味領域以外の領域に何等かのコンテンツを埋め込んでもよい。これにより、ユーザが興味領域以外の領域を視聴した際に何も表示されないといった事態が防止され、ユーザの視聴品質の低下が抑止されると考えられる。
【0101】
・変形例2
上記の変形例1では興味領域以外の領域に何等かのコンテンツを埋め込んだが、興味領域以外ではなく、興味領域内に何等かのコンテンツを埋め込んでもよい。具体的には、360°×180°のパノラマ動画の中で240°×120°の領域を興味領域とする場合、当該興味領域内に何等かのコンテンツの埋め込んでもよい。また、このとき、特に、興味領域のうち、部分領域タイルとなる部分領域内に当該コンテンツを埋め込んでもよい。
【0102】
なお、変形例2と変形例1を組み合わせて、興味領域とそれ以外の領域との両方の領域に何等かのコンテンツを埋め込んでもよい。
【0103】
・変形例3
VR視聴モード中には部分領域タイルがクライアント端末20に配信されるものとしたが、例えば、通信帯域に十分な余裕があり、またクライアント端末20側のハードウェア資源にも十分な余裕があり、かつ、全体縮小タイルによりパノラマ動画を再生した場合であっても十分な画質が見込めるときには、部分領域タイルをクライアント端末20に配信しなくてもよい。すなわち、全体縮小タイルの解像度が部分領域タイルの解像度よりも高解像度であってもよい。このように、全体縮小タイルの解像度(特に、それに含まれるパノラマ動画用領域の解像度)を、部分領域タイルの解像度と同じにしたり、それよりも高解像度にしたり、適宜、変更することができてもよい。
【0104】
・変形例4
サムネイル動画を選択した際に再生される動画は、2D動画用カメラ40で撮影された動画であるものとしたが、これに限られず、例えば、アニメーションやCG等の実写以外であってもよいし、その内容としても広告であってもよいし、パノラマ動画に関連するコンテンツ(例えば、スポーツのルール解説動画等)であってもよい。
【0105】
・変形例5
本実施形態ではクライアント端末20がVR視聴モードであるか2D視聴モードであるかで異なる全体縮小タイルの合成を行ったが、ユーザが視聴可能なパノラマ動画が1つである場合には、
図6に示すような全体縮小タイルを、VR視聴モードと2D視聴モードで共通の全体縮小タイルとして作成されてもよい。これは、パノラマ動画のサムネイル動画を表示する際には、パノラマ動画用領域の画像を使用すればよいためである。
【0106】
・変形例6
本実施形態ではパノラマ動画用サムネイルタイルをユーザの視野範囲に対応するものとしたが、必ずしもユーザの視野範囲に対応するものでなくてもよい。例えば、ユーザ以外の仮想的なエージェントの視野範囲に対応するパノラマ動画用サムネイルタイルが作成さてもよい。
【0107】
・変形例7
本実施形態では、サムネイル動画を複数表示する場合には、全てが2D動画のサムネイル動画であるか又は1つがパノラマ動画のサムネイル動画で残りが2D動画のサムネイル動画であるものとしたが、これに限られず、例えば、複数のサムネイル動画の全てがパノラマ動画のサムネイル動画であってもよい。
【0108】
本発明は、具体的に開示された上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 動画配信システム
10 動画配信サーバ
20 クライアント端末
30 パノラマ動画用カメラ
40 2D動画用カメラ
101 パノラマ動画作成部
102 パノラマ動画用タイル作成部
103 2D動画作成部
104 2D動画用タイル作成部
105 合成部
106 配信部
N1 通信ネットワーク
N2 通信ネットワーク