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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085930
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】天井と間仕切壁の納まり構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20230614BHJP
   E04B 9/06 20060101ALI20230614BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E04B9/00 R
E04B9/06 D
E04B9/18 G
E04B9/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200253
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 弘之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌子
(72)【発明者】
【氏名】兼 憲一郎
(57)【要約】
【課題】天井の下方に間仕切壁が立設している天井と間仕切壁の納まりにおいて、天井やその構成部材の自由振動を保証することにより、ダイナミックダンパーに期待される天井の振動抑制効果を十分に発揮させることができ、天井に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することのできる、天井と間仕切壁の納まり構造を提供すること。
【解決手段】天井下地材11とその下面に固定されている天井面材15,16とを有する天井10と、天井10の下方に立設する間仕切壁60との納まり構造80Aであり、天井10の天井空間に対向する面にはダイナミックダンパー20が設置され、梁30から吊り治具40を介して垂下されている天井10を、間仕切壁60が貫通している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井下地材とその下面に固定されている天井面材とを有する天井と、該天井の下方に立設する間仕切壁との納まり構造であって、
前記天井の天井空間に対向する面には、ダイナミックダンパーが設置され、
梁から吊り治具を介して垂下されている天井を、前記間仕切壁が貫通していることを特徴とする、天井と間仕切壁の納まり構造。
【請求項2】
天井下地材とその下面に固定されている天井面材とを有する天井と、該天井の下方に立設する間仕切壁との納まり構造であって、
前記天井の天井空間に対向する面には、ダイナミックダンパーが設置され、
前記天井面材に対して、上片と、該上片の左右端から下方に延びる垂下片とを備えた、断面視コの字状の上ランナーが設置されており、
前記間仕切壁が、前記上片との間にクリアランスを有した状態で、前記垂下片に固定されていることを特徴とする、天井と間仕切壁の納まり構造。
【請求項3】
前記間仕切壁は、スタッドと間仕切面材を備え、
前記上ランナーの内側に前記スタッドが配設され、左右の前記垂下片の外側にそれぞれ間仕切面材が配設され、
前記スタッドと前記間仕切面材の双方が、前記上片との間に前記クリアランスを有した状態で、前記垂下片に固定されていることを特徴とする、請求項2に記載の天井と間仕切壁の納まり構造。
【請求項4】
前記天井の外壁側の領域は、胴差しから吊り治具を介して垂下されており、
前記天井の外壁側の端面は、外壁の内面に当接していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の天井と間仕切壁の納まり構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井と間仕切壁の納まり構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の上階の床衝撃音は、上階の床を介してその振動が下方にある下階の天井に伝搬され、下階の天井が励振されることにより下階へ放射される。尚、この床衝撃音には、重量床衝撃音と軽量床衝撃音が含まれる。
【0003】
上階からの床衝撃音を低減するべく、天井の天井空間に対向する面には、ダイナミックダンパーが設置される場合がある。ダイナミックダンパーは質量体(錘)と弾性体(バネ)を備え、天井全体や、天井を構成する天井下地材もしくは天井面材等の固有振動数にチューニングされた状態で天井に設置される。天井に代わってダイナミックダンパーが振動することにより、天井の各構成部材の振動を抑制することができる。
【0004】
ところで、天井の下方に間仕切壁が立設し、天井の一部が間仕切壁にて下方から支持されている場合、間仕切壁による拘束により、床衝撃音が天井に作用した際の天井やその構成部材の自由振動が生じ難くなる。この場合、天井やその構成部材の振動数は自由振動の際の固有振動数よりも一般に増加し、チューニングされているダイナミックダンパーの振動数が天井やその構成部材の振動数と乖離することになり、ダイナミックダンパーによる天井の振動抑制効果の低減に繋がる。
【0005】
以上のことから、天井の下方に間仕切壁が立設している天井と間仕切壁の納まりにおいて、天井やその構成部材の自由振動を保証することにより、ダイナミックダンパーに期待される天井の振動抑制効果が十分に発揮される、天井と間仕切壁の納まり構造が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、床衝撃音を抑えることのできる、建物の天井構造が提案されている。具体的には、建物上層階の床梁材(1)・・に軽量床衝撃音低減用の防振吊り具(2)・・を介して吊り下げ支持した複数の第1野縁受け(3)・・と、床梁材(1)・・に吊り下げ支持することなく、第1野縁受け(3)・・に対して略平行に配設した複数の第2野縁受け(4)・・と、第1及び第2野縁受け(3)(4)・・に対して略直交するように取り付けた複数の野縁(5)・・と、これら野縁(5)・・の下側に取り付けた天井板(8)とを備え、第1及び第2野縁受け(3)(4)・・のうちの第2野縁受け(4)・・のみに、重量床衝撃音低減用のダイナミックダンパー(30)・・が予め組み込んであり、長さの異なる数種類の第2野縁受け(4)・・が天井面の形状や大きさに応じて選択的に組み合わされながら配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-12829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の建物の天井構造は、天井の下方に立設している間仕切壁による拘束を想定していないことから、天井の一部が間仕切壁にて下方から拘束されることにより、天井やその構成部材の自由振動が生じ難くなることに起因して、ダイナミックダンパーによる天井の振動抑制効果の低減を防止することは難しい。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、天井の下方に間仕切壁が立設している天井と間仕切壁の納まりにおいて、天井やその構成部材の自由振動を保証することにより、ダイナミックダンパーに期待される天井の振動抑制効果を十分に発揮させることができ、天井に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することのできる、天井と間仕切壁の納まり構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による天井と間仕切壁の納まり構造の一態様は、
天井下地材とその下面に固定されている天井面材とを有する天井と、該天井の下方に立設する間仕切壁との納まり構造であって、
前記天井の天井空間に対向する面には、ダイナミックダンパーが設置され、
梁から吊り治具を介して垂下されている天井を、前記間仕切壁が貫通していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、梁から吊り治具を介して垂下されている天井を間仕切壁が貫通している、所謂間仕切壁勝ちの構成を有することにより、天井がその下方から間仕切壁にて拘束されることが無くなり、天井やその構成部材の自由振動を保証することができる。このことにより、天井全体やその構成部材(天井下地材もしくは天井面材等)の固有振動数にチューニングされているダイナミックダンパーの振動数が天井やその構成部材の振動数と乖離することが解消され、ダイナミックダンパーによる天井の振動抑制効果を十分に発揮することができ、天井に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【0012】
天井を貫通する間仕切壁の上端は、例えば天井空間にある梁に固定され、天井の間仕切壁側の端部は、この梁に固定される吊り治具を介して垂下されることにより、間仕切壁と天井が相互に縁切りされている間仕切壁の上端と天井の端部の安定姿勢を保持することができる。ここで、間仕切壁と天井の端部との間には、隙間のない形態と、例えば数mm程度のクリアランスのある形態があり得るが、多少のクリアランスがあることで、双方を完全に縁切りできることから好ましい。
【0013】
また、本発明による天井と間仕切壁の納まり構造の他の態様は、
天井下地材とその下面に固定されている天井面材とを有する天井と、該天井の下方に立設する間仕切壁との納まり構造であって、
前記天井の天井空間に対向する面には、ダイナミックダンパーが設置され、
前記天井面材に対して、上片と、該上片の左右端から下方に延びる垂下片とを備えた、断面視コの字状の上ランナーが設置されており、
前記間仕切壁が、前記上片との間にクリアランスを有した状態で、前記垂下片に固定されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、天井面材に設置されている上ランナーに対して間仕切壁が固定されている、所謂天井勝ちの構成において、間仕切壁が、上ランナーを構成する上片との間にクリアランスを有した状態で、上ランナーを構成する垂下片に固定されていることにより、天井勝ちの構成でありながらも、天井がその下方から間仕切壁にて拘束されることが無くなり、天井やその構成部材の自由振動を保証することができる。このことにより、天井全体やその構成部材の固有振動数にチューニングされているダイナミックダンパーの振動数が天井やその構成部材の振動数と乖離することが解消され、ダイナミックダンパーによる天井の振動抑制効果を十分に発揮することができ、天井に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【0015】
天井に固定されている上ランナーを構成する上片と間仕切壁の上端の間にクリアランスがありながらも、上ランナーを構成する垂下片に対して間仕切壁が固定されることにより、天井が下方の間仕切壁からの押上げ(拘束)を受けることなく、間仕切壁の上方の安定姿勢を保持することができる。ここで、間仕切壁の上端と、上ランナーを構成する上片との間のクリアランスとしては、数mm乃至十数mm程度のクリアランスが設定できる。
【0016】
また、本発明による天井と間仕切壁の納まり構造の他の態様において、
前記間仕切壁は、スタッドと間仕切面材を備え、
前記上ランナーの内側に前記スタッドが配設され、左右の前記垂下片の外側にそれぞれ間仕切面材が配設され、
前記スタッドと前記間仕切面材の双方が、前記上片との間に前記クリアランスを有した状態で、前記垂下片に固定されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、間仕切壁を構成するスタッドと間仕切面材がいずれも、天井に固定される上ランナーを構成する上片との間にクリアランスを有した状態で、上ランナーを構成する垂下片に固定されていることにより、天井に固定されている上ランナーを構成する上片と間仕切壁の上端との間にクリアランスがありながらも、スタッドと間仕切面材の双方の上方の安定姿勢を保持することができる。
【0018】
また、本発明による天井と間仕切壁の納まり構造の他の態様において、
前記天井の外壁側の領域は、胴差しから吊り治具を介して垂下されており、
前記天井の外壁側の端面は、外壁の内面に当接していることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、天井の外壁側の領域が胴差しから吊り治具を介して垂下され、天井の外壁側の端面が外壁の内面に当接していることにより、天井が間仕切壁と外壁の双方の拘束を受けないことになり、天井やその構成部材の自由振動をより一層効果的に保証することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明の天井と間仕切壁の納まり構造によれば、天井やその構成部材の自由振動を保証することにより、ダイナミックダンパーに期待される天井の振動抑制効果を十分に発揮させることができ、天井に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造の一例の縦断面図である。
図2】天井と外壁の納まり構造の一例の縦断面図である。
図3】第2実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造の一例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[第1実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造]
はじめに、図1を参照して、第1実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造の一例の縦断面図である。
【0024】
天井と間仕切壁の納まり構造80は、水平方向に延設する天井10の下方に間仕切壁60が取り付けられている、所謂天井勝ちの納まり構造である。
【0025】
天井10は、天井下地材11(天井下地パネルフレーム)と、二枚の天井面材15,16とを有する。
【0026】
天井下地材11は、軽量鉄骨製のリップ付きの溝形鋼により形成される複数の野縁12と、同様に軽量鉄骨製の溝形鋼により形成される複数の野縁受け13とにより構成される。複数の野縁12は、長手方向が相互に平行になるようにして所定間隔を置いて配設され、複数の野縁受け13は、長手方向が野縁12に直交する態様で相互に平行になるようにして所定間隔を置いて配設され、野縁に対してビス(図示せず)等の固定手段にて固定されている。天井下地パネルフレーム11は、工場にて組み付けられ、現場搬送されてそのまま施工される天井下地であってもよいし、現場にて組み付けられてもよい。ここで、天井下地材11は、軽鉄製の天井下地材の他、木桟を井桁状に組み付けることにより形成される、木製の天井下地材であってもよい。
【0027】
天井面材15,16はいずれも石膏ボード等により形成され、天井面材15,16がドリル付きタッピングねじ等により天井下地材11に張り付けられることにより、天井10(天井パネル)が形成される。天井面材は一枚の面材により形成されてもよいが、二枚の面材を有することにより、天井の防音性能が向上する。天井面材16の下面には、さらに不図示のクロスが貼り付けられており、天井下地材11の上方には、現場においてロックウール等の防音材36が載置される。
【0028】
床梁30はH形鋼により形成され、床梁30の周囲には耐火被覆材35が配設されている。床梁80の有する下フランジ31の端部には吊り治具40が固定される。
【0029】
吊り治具40は、側面視L形の把持片41aと側面視略Z形の把持片41b、把持片41bに固定されている板バネ42(防振手段)、板バネ42に固定されている吊りボルト43、吊りボルト43から垂下される支持材44を有し、各構成部材はいずれも金属製部材(金属板、鋼ボルト等)により形成されている。
【0030】
二つの把持片41a,41bにて下フランジ31の端部を把持することにより吊り治具40が下フランジ31に固定され、支持材44が、天井下地材11の野縁受け13を支持することにより、吊り治具40を介して天井10が床梁30に吊り固定される。
【0031】
天井面材15の上面(天井空間に対向する面)には、複数のダイナミックダンパー20が設置されている。ダイナミックダンパー20は、金属製の質量体21と、質量体21を弾性支持する合成ゴム製の弾性体22とにより形成されている。ダイナミックダンパー20は、天井10やその構成部材である天井下地材11,天井面材15,16の振動に同調して振動するようにチューニングされている。
【0032】
天井面材16の下面には、上ランナー51がビス等の不図示の固定手段により固定されており、土台等の床55における上ランナー51に対応する位置には下ランナー52が同様にビス等により固定されている。上ランナー51と下ランナー52は、例えば断面視コの字状の溝形鋼により形成される。
【0033】
間仕切壁60は、鋼製のスタッド61とその両面に配設される間仕切面材62とを有し、上ランナー51と下ランナー52の内部にスタッド61が配設され、上ランナー51と下ランナー52の両外側面に対して間仕切面材62が配設され、スタッド61と間仕切面材62はいずれも、上ランナー51と下ランナー52に対してビス等により固定される。ここで、間仕切面材62は石膏ボード等により形成される。
【0034】
上ランナー51は、上片51aと、その左右にある二つの垂下片51bとを有し、下ランナー52も実質的に同様の構成を有する。
【0035】
スタッド61は、その上端が上ランナー51の上片51aとの間に高さt1のクリアランスC1を備えた状態で垂下片51bに固定されている。一方、間仕切面材62は、その上端が天井面材16(に貼り付けられている不図示のクロス)の下面との間に高さt2のクリアランスC2を備えた状態で垂下片51bに固定されている。
【0036】
ここで、高さt1は、数mm乃至10数mmの範囲で例えば10mmに設定され、高さt2は、クロスと接しない程度の数mm程度で例えば2mmに設定される。
【0037】
納まり構造80によれば、天井面材16に設置されている上ランナー51に対して間仕切壁60が固定されている、所謂天井勝ちの構成において、間仕切壁60が、上ランナー51を構成する上片51aとの間にクリアランスC1,C2を有した状態で、上ランナー51を構成する垂下片51bに固定されていることにより、天井勝ちの構成でありながらも、天井10がその下方から間仕切壁60にて拘束されることが無くなる。このことにより、天井10やその構成部材である天井下地材11や天井面材15,16の鉛直方向であるX1方向の自由振動を保証することが可能になる。
【0038】
天井10の自由振動が保証されることにより、天井10や天井10の構成部材の固有振動数にチューニングされているダイナミックダンパー20の振動数が天井10やその構成部材の振動数と乖離することが解消され、ダイナミックダンパー20による天井10の振動抑制効果を十分に発揮することができ、天井10に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【0039】
次に、図2を参照して、天井と外壁の納まり構造の一例について説明する。ここで、図2は、天井と外壁の納まり構造の一例の縦断面図である。
【0040】
図示する天井と外壁の納まり構造90は、下階(例えば一階)と上階(例えば二階)の階間の胴差し30Aから吊り治具45を介して天井10が固定されている納まり構造である。
【0041】
下階の外壁パネル70Aは、一例として、外壁面材71(外装材)と、ポリスチレンフォーム等の断熱ボード72と、グラスウールボード等の断熱ボード73と、外壁フレーム74と、外壁フレーム74の内部に充填されるグラスウール等の充填断熱材75とを備える。一方、上階の外壁パネル70Bも、下階の外壁パネル70Aと同様の構成を有し、図2には外壁面材71と断熱ボード72,73までを示している。これらの外壁パネル70A,70Bの構成は一例であり、多様な形態が存在している。
【0042】
胴差し30Aを形成するH形鋼の下フランジ31の一部は外壁フレーム74に重なり、下フランジ31の他部には吊り治具45が固定され、吊り治具45に対して天井下地材11を構成する下地金物14が固定されている。
【0043】
下階の外壁パネル70Aの外壁フレーム74の上端近傍の室内側には、横桟76が取り付けられており、断面視L字状の下地金物37が逆L字状の姿勢で横桟76の室内側面に取り付けられている。この下地金物37の室内側の面には、強化石膏ボード等の内壁面材78が配設され、ビス等の固定手段(図示せず)により内壁面材78が横桟76に固定されている。尚、本明細書においては、内壁面材78も外壁の構成要素の一部に含めるものとする。
【0044】
図示例の納まり構造90では、胴差し30Aに固定されている吊り治具45に対して、天井下地材11を構成する下地金物14が固定され、二枚の天井面材15,16の端面15a,16aは、内壁面材78の室内側面の上部に当接される、所謂内壁勝ちの構成を有している。ここで、図示例では、耐火性能や防音性能を高めるべく、胴差し30Aの周囲において、ロックウール等により形成される耐火被覆材35が充填され、天井下地材11の上方において、ロックウール等により形成される防音材36が充填されている。
【0045】
図2に示す納まり構造90においては、二枚の天井面材15,16の端面15a,16aが内壁面材78の室内側面に当接されていること、言い換えると、二枚の天井面材15,16が内壁面材78にて下方から支持されていないことにより、天井10やその構成部材である天井下地材11や天井面材15,16の外壁側の領域における、鉛直方向であるX2方向の自由振動を保証することができる。
【0046】
このように、天井10やその構成部材の外壁側の領域における自由振動が保証されることにより、図1に示す室内側における納まり構造80と相俟って、天井10の全域における自由振動を保証することができる。このことにより、天井10の全域におけるダイナミックダンパー20による振動抑制効果を十分に発揮することができ、天井10の全域に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【0047】
[第2実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造]
次に、図3を参照して、第2実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造の一例について説明する。ここで、図3は、第2実施形態に係る天井と間仕切壁の納まり構造の一例の縦断面図である。
【0048】
天井と間仕切壁の納まり構造80Aは、水平方向に延設する天井10を、間仕切壁60が貫通している、所謂間仕切壁勝ちの納まり構造である点において、納まり構造80と相違する。
【0049】
床梁30の下フランジ31には吊り治具46が固定され、吊り治具46に対して上ランナー51が固定される。スタッド61は、その上端が上ランナー51の上片51aとの間にクリアランスC1を備えた状態で垂下片51bに固定されている。一方、間仕切面材62は、その上端が吊り治具46との間にクリアランスC2を備えた状態で垂下片51bに固定されている。さらに、天井10の端面10aと間仕切面材62の間には、クリアランスC3が設けられている。ここで、クリアランスC3は、クリアランスC2と同程度の幅である数mm程度(例えば2mm)に設定される。
【0050】
天井10は、図示を省略するが、例えば図1と同様に、床梁30の下フランジ31に固定されている吊り治具40等により支持され、吊り治具40等を介して床梁30から垂下されている。
【0051】
納まり構造80Aによれば、天井10を間仕切壁60が貫通している、所謂間仕切壁勝ちの構成において、間仕切壁60が、上ランナー51を構成する上片51aや吊り治具46との間にクリアランスC1,C2を有し、さらに天井10との間にクリアランスC3を有した状態で、上ランナー51を構成する垂下片51bに固定されていることにより、天井10がその下方から間仕切壁60にて拘束されないことから、天井10やその構成部材である天井下地材11や天井面材15,16の鉛直方向であるX1方向の自由振動を保証することができる。このことにより、天井10や天井10の構成部材の固有振動数にチューニングされているダイナミックダンパー20の振動数が天井10やその構成部材の振動数と乖離することが解消され、ダイナミックダンパー20による天井10の振動抑制効果を十分に発揮することができ、天井10に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【0052】
ここで、納まり構造80Aにおいても、天井10の外壁側は図2に示す納まり構造90をさらに適用することにより、天井10の全域における自由振動を保証することができ、天井10の全域におけるダイナミックダンパー20による振動抑制効果を十分に発揮することができ、天井10の全域に伝搬された床衝撃音を効果的に低減することが可能になる。
【0053】
[床衝撃音計測試験とその結果]
本発明者等は、A室、B室、C室の3室を設定し、従来一般の天井が間仕切壁にて下方から拘束されている納まり構造(比較例)と、図1もしくは図3に示すように天井が間仕切壁にて拘束されない納まり構造(実施例)における、それぞれのダイナミックダンパー上積み効果を検証する実験を行った。この実験では、天井の外壁側の納まり構造は、図2に示す構造と異なり、天井が内壁面材にて下方から拘束される天井勝ちの構造とした。実験結果を以下の表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1より、A室、B室、C室の3室いずれも、天井において間仕切壁による拘束を解除することにより、ダイナミックダンパーによる振動低減効果を上積みできることが実証されている。
【0056】
尚、外壁や間仕切壁による拘束の影響を受け易い小さな室では、振動低減効果が上積みされ易い傾向にあることが想定できる。
【0057】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0058】
10:天井
10a:端面
11:天井下地材(天井下地パネルフレーム)
12:野縁
13:野縁受け
14:下地金物
15:第一面材(天井面材)
15a:端面
16:第二面材(天井面材)
16a:端面
20:ダイナミックダンパー
21:質量体
22:弾性体
30:梁(床梁)
30A:梁(胴差し)
31:下フランジ
35:耐火被覆材
36:防音材
37:下地金物
40:吊り治具
41a:把持片
41b:把持片
42:板バネ
43:吊りボルト
44:支持材
45:吊り治具
46:吊り治具
51:上ランナー
51a:上片
51b:垂下片
52:下ランナー
55:床
60:間仕切壁
61:スタッド
62:間仕切面材
70:外壁パネル(外壁)
71:外壁面材
72,73:断熱ボード
74:外壁フレーム
75:充填断熱材
76:横桟(壁下地材)
78:内壁面材
80,80A:天井と間仕切壁の納まり構造(納まり構造)
90:天井と外壁(内壁面材)の納まり構造(納まり構造)
図1
図2
図3