(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008594
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】靴下の品質情報管理システム
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
A41B11/00 Z
A41B11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112272
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】500412529
【氏名又は名称】株式会社ホリホック
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雅史
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA02
3B018AA03
3B018AC10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、タグを縫い付ける必要がなく、かつ、外観デザインの制限や製造効率を低下させることなく、靴下の詳細な品質情報の管理する靴下の品質情報管理システムを提供する。
【解決手段】 靴下10を裏返して裏地側の縫着線15を露出させて裏糸15bの色名Xを確認する裏返し工程(S1)と、裏糸15bの色名Xを入力する入力工程(S2)と、色名Xに関連付けられた品質情報Qを判定して出力する出力工程(S3)と、を備え、縫着線15は、靴下10のつま先部14と本体部13の周縁を表糸15a及び裏糸15bとで縫着して形成され、裏糸15bは、表糸15aとは異なる色名Xの色糸から選択され、裏糸15bの色名Xと品質情報Qとが関連付けられていることを特徴とする靴下の品質情報管理システム。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下の品質情報を管理する品質情報管理システムであって、
前記靴下を裏返して裏地側の縫着線を露出させて裏糸の色名を確認する裏返し工程と、
前記裏糸の色名を入力する入力工程と、
前記裏糸の色名に関連付けられた品質情報を判定して出力する出力工程と、を備え、
前記縫着線は、前記靴下のつま先部と本体部の周縁を表糸及び裏糸とで縫着して形成され、
前記裏糸は、前記表糸とは異なる色名の色糸から選択され、前記裏糸の色名と前記品質情報とが関連付けられていることを特徴とする靴下の品質情報管理システム。
【請求項2】
裏糸は、少なくとも2本の異なる色名の色糸から選択され、前記裏糸の色名の組み合わせと複数の品質情報とが関連付けられていることを特徴とする請求項1記載の靴下の品質情報管理システム。
【請求項3】
品質情報は、靴下の製造年を含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の靴下の品質情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下の品質表示や製造情報を表示して管理する靴下の品質情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴下は、シャツやズボンなどの衣料品とは異なり、サイズ、素材、洗濯取扱方法などの品質表示のタグが縫い付けられておらず、包装袋に印字されたものや、タグのピン留めや貼着によって見やすい位置に表示されているものが一般的である。また、靴下は、足全体に密着させてはくものであり、タグを縫い付けて一体化することによってはき心地に影響するものである。
【0003】
また、包装袋やピン留めされたタグは、印字可能なスペースが少なく、サイズ、素材や洗濯取扱方法などの品質表示に加え、製造情報(メーカー名、製造工場、製造年月日、製造方法)が記載されていないことが多かった。
【0004】
そのため、靴下の品質表示が印字された包装やピン留めされたタグは、購入時に破棄されてしまうことが多く、購入後に品質表示を確認することが難しいという欠点があるのに対して、靴下にタグを縫い付けることなく、靴下に品質表示や製造情報の識別手段を備えた靴下が提案されている(例えば特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1-153304号公報
【特許文献2】実開平6-37304号公報
【特許文献3】実開平7-9905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した靴下の識別手段は、通常の靴下とは異なる特殊な網目を設けることや、異なる色糸を編み込むことで識別させるものであるため、靴下の外観に表れてしまって、靴下のデザインを制限してしまうことや、特殊な網目や異なる色糸を編成する別工程によって製造効率が低下してしまう欠点を有する。
【0007】
したがって、本発明は、靴下の外観デザインの制限や製造効率を低下させすることなく、靴下の品質情報を管理することができる品質情報管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、靴下の品質情報を管理する品質情報管理システムであって、
前記靴下を裏返して裏地側の縫着線を露出させて裏糸の色名を確認する裏返し工程と、
前記裏糸の色名を入力する入力工程と、
前記裏糸の色名に関連付けられた品質情報を判定して出力する出力工程と、を備え、
前記縫着線は、前記靴下のつま先部と本体部の周縁を表糸及び裏糸とで縫着して形成され、
前記裏糸は、前記表糸とは異なる色名の色糸から選択され、前記裏糸の色名と前記品質情報とが関連付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、上述した構成に加え、裏糸は、少なくとも2本の異なる色名の色糸から選択され、前記裏糸の色名の組み合わせと複数の品質情報とが関連付けられていることが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、品質情報は、靴下の製造年を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によれば、タグを縫い付ける必要がなく、外観デザインの制限や製造効率を低下させることなく、靴下の品質情報を管理する品質情報管理システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の靴下の一例を示す正面図である。
【
図2】
図1の靴下の表地側から見た縫着線の一部を拡大した模式図である。
【
図3】
図1の靴下をはき口から裏返して裏地側の縫着線を露出させた状態を示す正面図である。
【
図4】
図3の靴下の裏地側から見た縫着線の一部を拡大した模式図である。
【
図5】本実施形態の品質情報管理システムの概略図である。
【
図6】
図5のサーバー装置の提供するwebサイトの一例を示す概略図である。
【
図7】
図3の縫着線の裏糸を2本の異なる色名の色糸から選択した場合の裏地側から見た縫着線の一部を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る靴下10及びその品質情報管理システム100の一例について
図1-4に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態における品質情報Qは、外観だけでは品質識別が困難なものであり、例えば、サイズ、素材、洗濯取扱方法などの品質表示と、それに加え、メーカー名、製造工場、製造年月日、製造方法等の製造情報、及び、商品識別コードなどを示すものである。また、
図1、
図2において点状模様は靴下10の表地側を示すものである。
【0014】
靴下10は、糸をメリヤス編みして足に密着するように編成したものであり、はき口11と、踵を覆う踵部12と、足甲及び足底を覆う本体部13と、つま先を覆うつま先部14と、つま先部14と本体部13とを縫着した縫着線15と、を主体として構成される。
【0015】
本体部13は、はき口11から針釜を一定方向に回転運動させ、両端が開口した筒状編地を形成したものである。
【0016】
踵部12及びつま先部14は、本体部13の開口部に続いて、針釜を所定の回転角の範囲で回転運動させ、回転角を徐々に減少して目数を減らした目数減少編地、及び、回転角を徐々に増加して目数を増やした目数増加編地を適宜に組み合わせて形成したものである。
【0017】
縫着線15は、本体部13のつま先側の開口部につま先部14の周縁をロッソミシンによって表糸15a及び裏糸15bによる縫着を少なくとも2回行う。この縫着線15は、靴下10の表地から見て2本の表糸15aのみが露出し、裏地側から見て2本の裏糸15bのみが露出して形成される(
図2、
図4、
図7参照)。なお、本実施形態において、縫着線15は、
図1、
図3に示すように、本体部13の足の指上側に位置する開口部とつま先部14とを縫着してなるものを例示しているが、本体部13の足の指下側に位置する開口部とつま先部14とを縫着してなるもの(いわゆる下ロッソという)であってもよい。
【0018】
表糸15aは、靴下10の外観デザインを制限せず目立たないようにするために、靴下10の本体部13又はつま先部14の編地と同じ色名の色糸とする。
【0019】
裏糸15bは、後述する品質情報管理システム100のために、靴下10の外観デザインと同じ色の表糸15aに対して、異なる色名Xの色糸から選択され、靴下の品質情報Qと関連付けられている。また、さらに、裏糸15bは、2本の異なる色名X1、X2の色糸から選択され、より詳細な品質情報Qと関連付けてもよい。
【0020】
次に、上述した靴下10の品質情報管理システム100について
図5-7に基づいて詳細に説明する。
【0021】
品質情報管理システム100は、上述した縫着線15を備えた靴下10を裏返して裏地側の縫着線15を露出させて裏糸15bの色名Xを確認する裏返し工程(S1)と、裏糸15bの色名Xを入力する入力工程(S2)と、色名Xに関連付けられた品質情報Qを判定して出力する出力工程(S3)と、からなるものである。
【0022】
裏返し工程(S1)は、上述した靴下10をはき口11から裏返してつま先部14の裏地側の縫着線15の裏糸15bを露出させ、縫着線15の裏糸15bの色名Xを確認する。この裏糸15bの色名Xは、グリーン、イエロー、レッド、ピンク、ライトブルー、ブルー、パープル、グレイ、ホワイト、ブラックなどの目視で識別しやすい色から適宜選択されることが好適である。
【0023】
入力工程(S2)は、裏糸15bの色名Xをネットワーク130に接続された端末装置120からサーバー装置110の提供するwebサイト113の入力フォーム114に色名Xを入力する。なお、この端末装置120は、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの情報通信端末であり、それらに備えつけられたキーボード、マウスやタッチパネルを利用して記入や選択することで行うものである。
【0024】
出力工程(S3)は、入力された色名Xに対応したサーバー装置110の記憶部111に格納された品質情報データベースにおいて対応する色IDが判定部112で判定され、その色IDに紐付けられた品質情報Qを出力する処理が行われる。この出力結果は、
図6に示すように、webサイト113に製造年を端末装置120のウェブブラウザなどを用いて液晶画面に表示する。
【0025】
上述した品質情報管理システム100によって、靴下10の品質情報Qの一つである製造年を表示して管理する場合について説明する。
【0026】
靴下10をはき口11から裏返して裏地側の縫着線15の裏糸15bを露出させ、裏糸15bの色名Xが「グリーン」であることを確認する。
【0027】
そして、ネットワーク130に接続された端末装置120を用いてサーバー装置110を接続し、サーバー装置110の提供するwebサイト113の入力フォーム114に「グリーン」を入力する。その入力結果に応じて、サーバー装置110の判定部112が、記憶部111に格納された表1の品質情報データベースを参照して「グリーン」に関連する色IDを「1」として判定し、その色ID「1」に紐付けられた製造年の「2022年」が端末装置120の画面121に表示される。その結果、靴下10の品質情報Qの一つである2022年を製造年とすることが確認できる。
【表1】
【0028】
また、靴下10の縫着線5の2本の裏糸16a、16bを異なる色名X1、X2の色糸から選択し、上述した靴下10の品質情報管理システム100によって、靴下10の複数の品質情報Qであるサイズ、及び、製造年を表示して同時に管理する場合について説明する。
【0029】
靴下10の縫着線15の裏糸15bは、
図7に示すように、第1の裏糸16aと、第1の裏糸16aとは異なる第2の裏糸16bを用いて縫着されたものであり、靴下10をはき口11から裏返して第1の裏糸16aと第2の裏糸16bを露出させ、縫着線15の第1の裏糸16aの色名X1が「ピンク」、第2の裏糸16bの色名X2が「レッド」であることを確認する。
【0030】
そして、ネットワーク130に接続された端末装置120を用いてサーバー装置110を接続し、サーバー装置110の提供するwebサイト113の入力フォーム114に第1の裏糸16aの色名X1を「ピンク」及び第2の裏糸16bの色名X2を「レッド」として入力する。その入力結果に応じて、サーバー装置110の判定部112が、記憶部111に格納された表2に示す品質情報データベースを参照して「ピンク」かつ「レッド」の組み合わせに関連する色IDを「1」として判定し、その色ID「1」に紐付けられたサイズの「22-24cm」、及び、製造年の「2022年」が端末装置120の画面121に表示される。その結果、靴下10の品質情報Qは、22-24cmのサイズであり、2022年を製造年とするものであることが確認できる。
【表2】
【0031】
なお、上述した品質情報Qは、サイズの代わりに洗濯取扱方法として「洗濯機洗い可」、「手洗い推奨」、「タンブラー乾燥不可」などを表示して確認できるようにしてもよい。
【0032】
したがって、上述した品質情報管理システム100によって、靴下10にタグを縫い付けることなく、靴下10の品質情報Qを管理することが可能である。
【0033】
また、特殊な編目や編製工程を必要としないため製造効率を下げることなく、靴下10の品質情報Qを管理することが可能である。
【0034】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、本実施形態の靴下10は、足首丈の靴下(いわゆるアンクレット)、踵から膝を覆う脚部を備えた靴下(いわゆるハイソックスやストッキング)などに適用してもよい。また、品質情報Qは、サイズ、製造年以外にも、品質情報データベースに項目を追加することで、サイズ、洗濯取扱方法、製造情報(メーカー名、製造工場、製造方法等)、商品識別コードなど組み合わせて管理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…靴下、11…はき口、12…踵部、13…本体部、14…つま先部、15…縫着線、15a…表糸、15b…裏糸、16a…第1の裏糸、16b…第2の裏糸、
X、X1、X2…色名、Q…品質情報、
100…品質情報管理システム、
110…サーバー装置、111…記憶部、112…判定部、113…webサイト、114…入力フォーム
120…端末装置、121…画面、
130…ネットワーク