(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085957
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】燃料電池発電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20230614BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230614BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230614BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20230614BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230614BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230614BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/0444
H02M7/48 E
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200289
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 史生
(72)【発明者】
【氏名】黒木 丈二
(72)【発明者】
【氏名】田淵 貴一
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
5H770
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB03
5H127AB08
5H127AB27
5H127AC05
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB14
5H127DB63
5H127DB69
5H127DC02
5H127DC42
5H127DC44
5H127DC45
5H127DC46
5H127DC89
5H770AA01
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA04
5H770DA03
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770HA04Y
5H770HA06Z
(57)【要約】
【課題】燃料電池の出力制御を行うパワーコンディショナを備える燃料電池発電システムにおいて、燃料電池の電流指令値と実際の出力電流値が解離することを抑制する。
【解決手段】燃料電池10と、燃料電池制御部12と、パワーコンディショナ20とを備える。燃料電池制御部は、燃料電池の目標発電電力である出力電力指令値P*と、燃料電池の目標発電電流である電流指令値Isofc*を設定し、燃料電池が電流指令値Isofc*で発電するために必要な燃料を燃料電池に供給するように燃料供給制御を行う。パワーコンディショナは、最大電力点追従制御を行い、燃料電池が発電する直流電力を交流変換する。パワーコンディショナは、外部からの入力信号に基づいて燃料電池の発電電力を制限するように構成されており、燃料電池制御部は、入力信号として出力電力指令値をパワーコンディショナに送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が供給されることで発電する燃料電池(10)と、
前記燃料電池の目標発電電力である出力電力指令値(P*)と、前記燃料電池の目標発電電流である電流指令値(Isofc*)を設定し、前記燃料電池が前記電流指令値(Isofc*)で発電するために必要な燃料を前記燃料電池に供給するように燃料供給制御を行う燃料電池制御部(12)と、
前記燃料電池の発電電力が最大となる動作点で前記燃料電池を作動させる最大電力点追従制御を行い、前記燃料電池が発電する直流電力を交流変換するパワーコンディショナ(20)と、
を備え、
前記パワーコンディショナは、外部からの入力信号に基づいて前記燃料電池の発電電力を制限するように構成されており、
前記燃料電池制御部は、前記入力信号として前記出力電力指令値を前記パワーコンディショナに送信する
燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記燃料電池制御部は、前記燃料電池の出力電流値(Isofc)と前記電流指令値との差が小さくなるように、前記出力電力指令値を調整する請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記燃料電池制御部は、前記燃料電池の出力電力値(P)と前記出力電力指令値との差が小さくなるように、前記出力電力指令値を調整する請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記出力電力値は、前記パワーコンディショナによって交流変換された交流電力である請求項3に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記燃料電池に供給された燃料のうち、発電に用いられることなく前記燃料電池から排出される燃料の濃度を検出する燃料センサ(15)を備え、
前記燃料電池制御部は、前記燃料電池から排出される燃料の濃度が所定範囲を下回っている場合には、前記電流指令値を増加させ、前記燃料電池から排出される燃料の濃度が所定範囲を上回っている場合には、前記電流指令値を低減させる請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
燃料が供給されることで発電する燃料電池(10)と、
前記燃料電池の目標発電電力である出力電力指令値(P*)と、前記燃料電池の目標発電電流である電流指令値(Isofc*)を設定し、前記燃料電池が前記電流指令値(Isofc*)で発電するために必要な燃料を前記燃料電池に供給するように燃料供給制御を行う燃料電池制御部(12)と、
前記燃料電池が発電する直流電力を交流変換するパワーコンディショナ(20)と、
を備え、
前記パワーコンディショナは、外部からの入力信号に基づいて前記燃料電池の発電電力を制限するように構成されており、
前記燃料電池制御部は、前記燃料電池の出力特性と前記電流指令値に基づいて、前記燃料電池の目標発電電圧である電圧指令値(Vsofc*)を取得し、前記入力信号として前記電圧指令値を前記パワーコンディショナに送信する
燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記燃料電池に供給された燃料のうち、発電に用いられることなく前記燃料電池から排出される燃料の濃度を検出する燃料センサ(15)を備え、
前記燃料電池制御部は、前記燃料電池から排出される燃料の濃度が所定範囲を下回っている場合には、前記電圧指令値を増加させ、前記燃料電池から排出される燃料の濃度が所定範囲を上回っている場合には、前記電圧指令値を低減させる請求項6に記載の燃料電池発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池が発電した直流電力をパワーコンディショナによって交流電力に変換する燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池が発電した直流電力をパワーコンディショナ(以下、「PCS(Power Conditioning System)」ともいう)で交流電力に変化する燃料電池発電システムが開示されている。特許文献1の燃料電池発電システムでは、PCSが燃料電池に過度な電力要求をしないように燃料電池の制御部からPCSの制御部に対して現在の電流指令値を常時出力し、PCSの制御部は電流指令値に基づいてコンバータ及びインバータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、PCSは燃料電池の制御部からの電流指令値に基づいて作動するため、燃料電池専用のPCSが必要となる。
【0005】
一方、汎用の太陽電池用PCSを燃料電池に用いることが考えられるが、太陽電池用PCSは燃料電池と独立して最大電力点追従制御(以下、MPPT(Maximum Power Point Tracking)」ともいう)を行う。このため、燃料電池の電流指令値と実際の出力電流値が解離し、出力電流が過大になった場合には、燃料電池が劣化、損傷するおそれがある。また、燃料電池への供給ガスが規定量より少ない場合には、燃料電池が劣化、損傷するおそれがあり、供給ガスが規定量より多い場合には、発電効率が低下する。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、燃料電池の出力制御を行うパワーコンディショナを備える燃料電池発電システムにおいて、燃料電池の電流指令値と実際の出力電流値が解離することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の燃料電池発電システムは、燃料電池(10)と、燃料電池制御部(12)と、パワーコンディショナ(20)とを備える。燃料電池は、燃料が供給されることで発電する。燃料電池制御部は、燃料電池の目標発電電力である出力電力指令値(P*)と、燃料電池の目標発電電流である電流指令値(Isofc*)を設定し、燃料電池が電流指令値(Isofc*)で発電するために必要な燃料を燃料電池に供給するように燃料供給制御を行う。パワーコンディショナは、燃料電池の出力電力が最大となる動作点で燃料電池を作動させる最大電力点追従制御を行い、燃料電池が発電する直流電力を交流変換する。
【0008】
パワーコンディショナは、外部からの入力信号に基づいて燃料電池の発電電力を制限するように構成されており、燃料電池制御部は、入力信号として出力電力指令値をパワーコンディショナに送信する。
【0009】
これにより、燃料電池制御部は、パワーコンディショナによる燃料電池の出力制御を外部からコントロールすることができる。パワーコンディショナは、出力電力指令値に基づいて燃料電池の出力電力抑制制御を行うことができ、MPPT制御を行うパワーコンディショナを備える燃料電池発電システムにおいて、燃料電池の電流指令値と実際の出力電流値が解離することを抑制できる。
【0010】
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の燃料電池発電システムの全体構成図である。
【
図2】第1実施形態の燃料電池発電システムの作動を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態の燃料電池の電力と電圧の関係を示すグラフである。
【
図4】第1実施形態の燃料電池の電流と電圧の関係を示すグラフである。
【
図5】第1実施形態の出力電流値Isofcの経時的変化を示すグラフである。
【
図6】第1実施形態の比較例における出力電流値Isofcの経時的変化を示すグラフである。
【
図7】第2実施形態の燃料電池発電システムの作動を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の燃料電池の電力と電圧の関係を示すグラフである。
【
図9】第2実施形態の燃料電池の電流と電圧の関係を示すグラフである。
【
図10】第2実施形態の出力電流値Isofcの経時的変化を示すグラフである。
【
図11】第3実施形態の燃料電池発電システムの全体構成図である。
【
図12】第3実施形態の燃料電池発電システムの作動を示すフローチャートである。
【
図13】第4実施形態の燃料電池発電システムの全体構成図である。
【
図14】第4実施形態の燃料電池発電システムの作動を示すフローチャートである。
【
図15】第5実施形態の燃料電池発電システムの全体構成図である。
【
図16】第6実施形態の燃料電池発電システムの全体構成図である。
【
図17】第6実施形態の燃料電池発電システムの制御ブロック図である。
【
図18】第6実施形態の燃料電池発電システムの作動を示すフローチャートである。
【
図19】第6実施形態の燃料電池発電システムの電流ばらつきを示す図である。
【
図20】第7実施形態の燃料電池発電システムの制御ブロック図である。
【
図21】第7実施形態の燃料電池発電システムの作動を示すフローチャートである。
【
図22】燃料電池発電システムの変形例を示す全体構成図である。
【
図23】燃料電池発電システムの変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、燃料電池発電システム1は、燃料電池10、PCS20を備えている。本実施形態の燃料電池発電システム1は、燃料電池10で発電した直流電力がPCS20で交流電力に変換され、負荷30で消費される。燃料電池発電システム1は例えば工場で用いることができ、負荷30は例えば工場内の電気機器とすることができる。
【0014】
燃料電池10は、燃料である水素と酸化剤である酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する発電装置である。燃料電池10は、電解質が一対の電極で挟まれた単セルが複数積層されたスタック構造を備えている。本実施形態では、燃料電池10として酸素イオン導電性酸化物からなる電解質を使用した固体酸化物型燃料電池(SOFC、Solid Oxide Fuel Cell)を用いている。
【0015】
燃料電池10には、燃料供給装置11から水素が供給される。燃料供給装置11としては、例えば高圧の水素が充填された水素タンクを用いることができる。燃料供給装置11から燃料電池10への水素供給量は、燃料電池制御部12によって制御される。
【0016】
図1では図示を省略しているが、燃料電池10には空気が供給される。燃料電池10では、水素と空気中の酸素との電気化学反応が起こり電気エネルギが発生する。燃料電池10に供給された水素のうち、電気化学反応に用いられなかった未反応水素は排ガスとして燃料電池10から排出される。
【0017】
燃料電池制御部12から燃料供給装置11には、燃料電池10の目標発電電流である電流指令値Isofc*が出力される。電流指令値Isofc*は、燃料電池10が電流指令値Isofc*を発電するために必要な水素供給量に相当する値である。燃料供給装置11は、電流指令値Isofc*に基づいて燃料電池10への水素供給量を調整する。つまり、本実施形態では、電流指令値Isofc*を用いて燃料電池10に対する燃料供給制御が行われる。なお、本実施形態において、「*」が付された符号は、制御対象機器に送信される制御指令値を意味している。
【0018】
燃料電池制御部12には、電力会社から電力指令値P0*が入力可能となっている。電力指令値P0*は、電力会社が指定する燃料電池10の発電量であり、例えば電力会社が燃料電池10の発電量を制限する場合に、電力会社から燃料電池制御部12に入力する。
【0019】
燃料電池制御部12は、電力指令値P0*が入力した場合には、電力指令値P0*を超えない範囲で出力電力指令値P*を決定し、電力指令値P0*が入力していない場合には、負荷30の必要電力等に基づいて出力電力指令値P*を決定する。出力電力指令値P*は、燃料電池10の目標発電電力であり、燃料電池制御部12から後述するPCS制御部23に出力される。
【0020】
燃料電池10の電力供給用の配線には、燃料電池10の出力電流値Isofcを検出するFC出力電流センサ13と、燃料電池10の出力電圧値Vsofcを検出するFC出力電圧センサ14が設けられている。FC出力電流センサ13で検出した出力電流値Isofcと、FC出力電圧センサ14で検出した出力電圧値Vsofcは、それぞれ燃料電池制御部12に入力する。
【0021】
PCS20は、商用系統電源31に系統連系させるために、燃料電池10が出力する直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナである。本実施形態では、PCS20として、MPPT制御機能を備える太陽電池用PCSを用いている。
【0022】
本実施形態のPCS20は、燃料電池10が出力する直流電力を商用系統電源31と同じ200Vの三相交流電力に変換する。負荷30には、PCS20または商用系統電源31のいずれか、あるいはPCS20および商用系統電源31の両方から電力が供給される。
【0023】
PCS20は、コンバータ21、インバータ22、PCS制御部23を有している。コンバータ21は、燃料電池10が発電する直流電力が入力し、入力した直流電力の電圧を変換して昇圧する。コンバータ21は、燃料電池10の出力電圧を変化させることができる。インバータ22は、コンバータ21で昇圧された直流電力を交流電力に変換する。PCS制御部23は、コンバータ21およびインバータ22の作動を制御する。
【0024】
PCS20は、燃料電池10の出力電力が最大となる動作点で燃料電池10を作動させる最大電力点追従制御(MPPT制御)を行う。MTTP制御では、燃料電池10の出力電圧を変動させ、出力電圧を変動させる前後の燃料電池の出力電力を比較し、出力電力が最大となるように出力電圧を制御する。
【0025】
PCS制御部23は、外部からの入力信号に基づいて燃料電池10の発電電力を制限する出力電力抑制制御を行う。PCS制御部23には、入力信号として燃料電池制御部12から出力電力指令値P*が入力する。PCS制御部23は、燃料電池10の出力電力値Pが出力電力指令値P*を超えないように、燃料電池10の出力電力抑制制御を行う。つまり、PCS制御部23による燃料電池10の出力制御は、外部から制御可能となっている。
【0026】
PCS20には、コンバータ21に入力する燃料電池の出力電流値Isofcを検出するPCS入力電流センサ24と、コンバータ21に入力する燃料電池の出力電圧値Vsofcを検出するPCS入力電圧センサ25が設けられている。PCS入力電流センサ24で検出した出力電流値Isofcと、PCS入力電圧センサ25で検出した出力電圧値Vsofcは、それぞれPCS制御部23に入力する。
【0027】
PCS20には、インバータ22が出力する交流電流値Iacを検出するPCS出力電流センサ26と、インバータ22が出力する交流電圧値Vacを検出するPCS出力電圧センサ27が設けられている。PCS出力電流センサ26で検出した交流電流値Iacと、PCS出力電圧センサ27で検出した交流電圧値Vacは、それぞれPCS制御部23に入力する。
【0028】
次に、上記構成を備える燃料電池発電システム1の作動を
図2のフローチャートを用いて説明する。
図2に示すフローチャートの各処理は、繰り返し実行される。
図2に示すフローチャートは、燃料電池制御部12が行う処理と、PCS制御部23が行う処理が含まれている。
図2では、S101、S103は燃料電池制御部12が行う処理であり、S101、S103以外はPCS制御部23が行う処理である。
【0029】
まず、S100で、電圧制御値Vおよび出力電力値Pに、それぞれの前回値Vs、Psを設定する。電圧制御値VはPCS20による燃料電池10の電圧制御の制御目標値である。出力電力値Pは燃料電池10が発電した直流電力の測定値である。なお、本実施形態において、「s」が付された符号は、
図2のフローチャートが一巡する前の処理で用いられた前回値を示している。
【0030】
次に、S101で、電流指令値Isofc*、出力電力指令値P*を更新するか否かを判定する。電流指令値Isofc*、出力電力指令値P*の更新は、例えば以下のような場合に行われる。燃料電池10は、起動時に出力電力が徐々に上昇するため、出力電力の上昇速度に合わせて、電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*を更新し、燃料電池10への水素供給量を増大させる。あるいは負荷30の必要電力が変動した場合には、電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*を更新し、燃料電池10への水素供給量を変動させる。
【0031】
S101で電流指令値Isofc*、出力電力指令値P*を更新しないと判定された場合には、S102で電圧制御値VにΔVを加算する。ΔVは、電圧制御値Vを増加または減少させる変動値であり、「+」または「-」の符号が設定されている。ΔVに「+」の符号が設定されている場合には、S102で電圧制御値VがΔVだけ増大し、ΔVに「-」の符号が設定されている場合には、S102で電圧制御値VがΔVだけ減少する。PCS20は、電圧制御値Vに基づいてコンバータ21による燃料電池10の電圧制御を行う。
【0032】
次に、S103で出力電力値Pを測定する。出力電力値Pは、PCS入力電流センサ24で検出した出力電流値IsofcとPCS入力電圧センサ25で検出した出力電圧値Vsofcの積から求めることができる。
【0033】
次に、S104で出力電力値Pが出力電力指令値P*を下回っているか否かを判定する。S104で出力電力値Pが出力電力指令値P*を下回っていると判定された場合には、S105で出力電力値Pが前回電力値Psを上回っているか否かを判定する。
【0034】
S105で出力電力値Pが前回電力値Psを上回っていると判定された場合には、最大電力点に到達していないと判断できるので、S106でΔVの符号を変更せず、そのままとする。一方、S105で出力電力値Pが前回電力値Psを上回っていないと判定された場合には、最大電力点に到達したと判断できるので、S107でΔVの符号を反転する。つまり、ΔVの符号が「+」の場合は「-」に変更し、ΔVの符号が「-」の場合は「+」に変更する。
【0035】
そして、S108で、前回電力値Psに出力電力値Pを設定し、S101に戻る。以上の処理によって、燃料電池発電システム1はMPPT制御を行うことができる。
【0036】
次に、S101で電流指令値Isofc*、出力電力指令値P*を更新すると判定された場合には、S109で電流指令値Isofc*等が更新された後の電圧制御値Vおよび出力電力値Pを、それぞれの前回値Vs、Psとして設定し、S100の処理に戻る。これにより、前回値Vs、Psが現在の電圧制御値Vおよび出力電力値Pから大きくずれることを抑制できる。
【0037】
次に、S104で、出力電力値Pが出力電力指令値P*を下回っていないと判定された場合には、S110~S112で燃料電池10の発電電力を抑制する出力電力抑制制御を行う。
【0038】
S110では、出力電力値Pが前回電力値Psと等しいか否かを判定する。S110で出力電力値Pが前回電力値Psと等しいと判定された場合には、S111で前回電力値Psに出力電力値Pを設定し、S103に戻る。これにより、何らかの要因によって出力電力値Pが変動しない限り、電圧制御値Vは変更されず、出力電力値Pは一定になる。
【0039】
一方、S110で出力電力値Pが前回電力値Psと等しくない、すなわち出力電力値Pが出力電力指令値P*を上回っていると判定された場合には、S112でΔVの符号を「-」とし、S101に移行する。これにより、次回のS102で電圧制御値VからΔVが減算される。
【0040】
次に、
図3、
図4を用いて、本実施形態の燃料電池10の出力電力値P、電圧制御値V、出力電流値Isofcについて説明する。
図3に示す例では、P5が燃料電池10の最大電力点となっている。
【0041】
まず、
図2のS104、S110~S112の出力電力抑制制御を行う場合について説明する。
図3に示すように、出力電力指令値P*がP4とP5の間に設定されており、
図4に示すように、電流指令値Isofc*がI4とI5の間に設定されているものとする。
【0042】
電圧制御値VがV0、V1、V2・・・の順に変化すると、出力電流値IsofcはI0、I1、I2の順に変化し、出力電力値PはP0、P1、P2・・・の順に変化する。そして、出力電力値Pが最大電力点P5に到達した場合には、S104で出力電力値Pが出力電力指令値P*を下回っていないと判定される。
【0043】
S110では、出力電力値Pが前回電力値Psと等しくない、すなわち出力電力値Pが出力電力指令値P*を上回っていると判定され、S112でΔVの符号が「+」から「-」に反転し、次回のS102で電圧制御値VからΔVが減算される。これにより、電圧制御値VはV5からV4に移行し、出力電流値IsofcはI5からI4に移行し、S103で測定される出力電力値PはP5からP4に移行する。
【0044】
S104では、出力電力値Pが出力電力指令値P*を下回っていないと判定され、S105では、出力電力値Pが前回電力値Psを上回っていないと判定され、S107でΔVの符号が「-」から「+」に反転する。
【0045】
次回のS102では電圧制御値VにΔVが加算される。これにより、電圧制御値VはV4からV5に移行し、出力電流値IsofcはI4からI5に移行し、S103で測定される出力電力値PはP4からP5に移行する。
【0046】
つまり、S104、S110~S112の出力制御処理を行うMPPT制御では、出力電力値PはP4-P5-P4の順に変動する。このため、
図3に示すように、出力電力値PはP4とP5の間で脈動が生じる。
図3、
図4に示すように、出力電圧値VsofcはV4とV5の間で脈動が生じる。
図4、
図5に示すように、出力電流値IsofcはI4とI5の間で脈動が生じる。
【0047】
次に、
図2のS104、S110~S112の出力電力抑制制御を行わない場合のMPPT制御を比較例として説明する。
【0048】
電圧制御値VがV0、V1、V2・・・の順に変化すると、出力電流値IsofcはI0、I1、I2の順に変化し、出力電力値PはP0、P1、P2・・・の順に変化する。出力電力値Pは、S105の判定処理で出力電力値Pが前回値Psを上回っていないと判定されるまで増大する。
【0049】
出力電力値PがP5からP6に移行した場合に、S105の判定処理で出力電力値Pが前回電力値Psを上回っていないと判定され、S107でΔVの符号が反転する。これにより、出力電力値PはP6からP5に移行し、さらにP4に移行する。
【0050】
出力電力値PがP5からP4に移行した場合に、S105の判定処理で出力電力値Pが前回電力値Psを上回っていないと判定され、S107でΔVの符号が反転する。これにより、出力電力値PはP4からP5に減少し、さらにP6に移行する。
【0051】
つまり、S104、S110~S112の出力制御処理を行わないMPPT制御では、出力電力値PはP4-P5-P6-P5-P4の順に変動し、出力電力値PはP4とP6の間で脈動が生じる。また、
図6に示すように、出力電流値IsofcはI4とI6の間で脈動が生じる。
【0052】
以上説明した本実施形態では、燃料電池制御部12からPCS制御部23に出力電力指令値P*を送信し、PCS制御部23は出力電力指令値P*に基づいて燃料電池10の出力電力抑制制御を行っている。つまり、燃料電池制御部12は、PCS20による燃料電池10の出力制御を外部からコントロールしている。燃料電池10の出力電力抑制制御では、燃料電池10の出力電力値Pが出力電力指令値P*を超えた場合に電圧制御値Vを低下させ、燃料電池10の出力電力値Pが出力電力指令値P*と一致した場合に出力電力値Pを一定にしている。
【0053】
これにより、燃料電池10の出力電流値Isofcの変動幅を小さくして脈動を抑制することができる。この結果、MPPT制御を行うPCS20を備える燃料電池発電システム1において、燃料電池10の電流指令値Isofc*と実際の出力電流値Isofcが解離することを抑制できる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
本第2実施形態の燃料電池発電システム1は、
図1で説明した上記第1実施形態と同様の構成を備えている。本第2実施形態では、電流指令値Isofc*と出力電流値Isofcの差が小さくなるように出力電力指令値P*を調整している。
【0056】
本第2実施形態の燃料電池発電システム1の作動を
図7のフローチャートを用いて説明する。
図7のフローチャートは、燃料電池制御部12が実行する処理である。
図7に示す各処理は、上記第1実施形態で
図2を用いて説明した各処理と平行して実施される。
【0057】
まず、S200で、電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*に、それぞれの前回値Isofcs*、Ps*を設定し、さらにFlagに「0」を設定する。Flagは、現在設定されている電流指令値Isofc*での燃料電池10の出力特性において、出力電力値Pが最大電力点を超えたか否かを示している。出力電力値Pが最大電力点を超えていない場合にはFlagは「0」に設定され、出力電力値Pが最大電力点を超えた場合にはFlagは「1」に設定される。Flagは、後述のS206またはS207で設定される。
【0058】
次に、S201で電流指令値Isofc*を更新するか否かを判定する。S201で電流指令値Isofc*を更新しないと判定された場合には、S202で出力電力指令値P*にΔP*を加算する。ΔP*は、出力電力指令値P*を増加または減少させる変動値であり、「+」または「-」の符号が設定されている。ΔP*に「+」の符号が設定されている場合には、S202で出力電力指令値P*がΔP*だけ増大し、ΔP*に「-」の符号が設定されている場合には、S202で出力電力指令値P*がΔP*だけ減少する。
【0059】
S202で設定された出力電力指令値P*は、燃料電池制御部12からPCS制御部23に送信される。PCS制御部23では、出力電力指令値P*に基づいて燃料電池10の出力制御を行う。
【0060】
次に、S203で電流値差分ΔIsofcを取得する。S203では、ΔIsofcを出力電流値Isofcから電流指令値Isofc*を減算した差分の絶対値として算出している。
【0061】
次に、S204でFlag=0であるか否かを判定する。S204では、S202で出力電力指令値P*を変化させた後に出力電力値Pが最大電力点に到達しておらず、後述のS208でΔP*の符号を変化させる処理が行われていない場合に、Flag=0であると判定される。
【0062】
S204でFlag=0である、すなわち出力電力値Pが最大電力点を超えていないと判定された場合には、S205で電流値差分ΔIsofcと前回値ΔIsofcsを比較する。前回値ΔIsofcsは、
図7のフローチャートが一巡する前の処理で用いられた電流値差分ΔIsofcの前回値であり、S202で出力電力指令値P*を変化させる前の値である。
【0063】
出力電流値Isofcが電流指令値Isofc*に近づいている場合には、電流値差分ΔIsofcは前回値ΔIsofcsよりも小さくなる。出力電流値Isofcが電流指令値Isofc*から遠ざかっている場合には、電流値差分ΔIsofcは前回値ΔIsofcsよりも大きくなる。
【0064】
出力電力値Pが最大電力点を超えていない場合には、電流値差分ΔIsofcは前回値ΔIsofcsよりも減少し、出力電力値Pが最大電力点を超えた場合には、電流値差分ΔIsofcは前回値ΔIsofcsよりも増大する。電流値差分ΔIsofcと前回値ΔIsofcsを比較することで、出力電力値Pが現在の電流指令値Isofc*で得られる最大電力点を超えたか否かを判定することができる。
【0065】
S205で電流値差分ΔIsofcが前回値ΔIsofcsより小さいと判定された場合には、ΔP*の符号をそのまま変更せず、Flagに「0」を設定する。一方、S205で電流値差分ΔIsofcが前回値ΔIsofcsより大きいと判定された場合には、ΔP*の符号を反転させ、Flagに「1」を設定する。
【0066】
そして、S208で、前回電力指令値Ps*に出力電力指令値P*を設定し、前回電流指令値Isofc*に電流指令値Isofc*を設定し、S201に戻る。
【0067】
次に、S201で電流指令値Isofc*を更新すると判定された場合には、S209で更新後の電流指令値Isofc*を前回値Isofcs*に設定し、更新後の出力電力指令値P*を前回値Ps*に設定する。これにより、前回値Isofcs*、Ps*が現在の電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*から大きくずれることを抑制できる。
【0068】
次に、S204でFlag=0ではない、すなわち出力電力値Pが最大電力点を超えていると判定された場合には、S210でΔIsofcが所定値以下であるかを判定する。所定値は、出力電流値Isofcと電流指令値Isofc*の差の許容値であり、任意に設定することができる。
【0069】
S210でΔIsofcが所定値以下であると判定された場合には、S211でΔP*に「0」を設定し、S201に戻る。これにより、次回以降のS202で出力電力指令値P*が変更されず、出力電力指令値P*は一定になる。
【0070】
一方、S210でΔIsofcが所定値以下でないと判定された場合には、S212でΔP*を1/2倍し、Flagに「0」を設定し、S201に戻る。これにより、S202での出力電力指令値P*の変動幅を小さくすることができる。
【0071】
次に、
図8、
図9を用いて、本第2実施形態の燃料電池発電システム1の出力電力値P、電圧制御値V、出力電流値Isofcについて説明する。
図8に示す例では、P5が燃料電池10の最大電力点となっている。
【0072】
図8に示すように、出力電力指令値P*が出力電力値P4とP5の間に設定されており、
図9に示すように、電流指令値Isofc*が出力電流値I4とI5の間に設定されているものとする。本第2実施形態のS210~S212の制御処理が実行されることで、出力電力指令値P*は徐々にP4またはP5といった電力制御点に近づいていき、脈動を小さくすることができる。また、
図9、
図10に示すように、出力電流値IsofcはI4またはI5に近づいていき、脈動を小さくすることができる。
【0073】
以上説明した本第2実施形態では、電流指令値Isofc*と出力電流値Isofcの差が小さくなるように出力電力指令値P*を調整している。具体的には、出力電力指令値P*を変動させ、電流指令値Isofc*と出力電流値Isofcの差が拡大した場合に、出力電力値Pが最大電力点を超えたと判断し、出力電力指令値P*の変動幅を小さくしている。これにより、出力電力指令値P*をいずれかの電力制御点に近づけることができる。この結果、電流指令値Isofc*と出力電流値Isofcの差を小さくすることができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
図11に示すように、本第3実施形態の燃料電池発電システム1では、PCS20の電力供給用の配線に、出力電流センサ32と出力電圧センサ33が設けられている。出力電流センサ32は、PCS20が出力する交流電流値Iacを検出する。出力電圧センサ33は、PCS20が出力する交流電圧値Vacを検出する。出力電流センサ32で検出した交流電流値Iacと、出力電圧センサ33で検出した交流電圧値Vacは、それぞれ燃料電池制御部12に入力する。
【0076】
次に、本第3実施形態の燃料電池発電システム1の作動を
図12のフローチャートを用いて説明する。
図12のフローチャートは、燃料電池制御部12が実行する処理である。
図12において、S200~S212の処理は上記第2実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0077】
本第3実施形態では、S203でΔIsofcを算出した後、S213で電力値差分ΔPを取得する。S213では、ΔPをPCS20の出力電力値Pから出力電力指令値P*を減算した差分の絶対値として算出している。PCS20の出力電力値Pは、出力電流センサ32で検出した交流電流値Iacと出力電圧センサ33で検出した交流電圧値Vacの積から得られる交流電力である。
【0078】
次に、S214でΔPが所定値以下であるかを判定する。所定値は、出力電力値Pと出力電力指令値P*の差の許容値であり、任意に設定することができる。
【0079】
S214でΔPが所定値以下であると判定された場合には、S204の処理に移行する。一方、S214でΔPが所定値以下ではないと判定された場合には、出力電力値Pに対して出力電力指令値P*が高すぎると判断できる。そこで、S215で出力電力指令値P*および電流指令値Isofc*を低減し、S201の処理に移行する。S201では、Isofc*が更新されたと判定されるので、S209の処理が行われる。
【0080】
以上説明した本第3実施形態では、出力電力値Pと出力電力指令値P*の差であるΔPが小さくなるように、出力電力指令値P*および電流指令値Isofc*を調整している。これにより、燃料電池10の発電状態に応じて出力電力指令値P*および電流指令値Isofc*を適切に修正することができる。
【0081】
燃料電池10は、出力電力指令値P*や電流指令値Isofc*の変更後、出力電力値Pや出力電流値Isofcが変動するのに時間がかかることが一般的である。これに対し、PCS20は、変更された出力電力指令値P*に基づいて燃料電池10の電圧制御を行うため、出力電力指令値P*と出力電力値Pの差分が大きくなることがある。このため、ΔPに基づいて出力電力指令値P*を修正することで、燃料電池10の発電状態に対応してPCS20による燃料電池10の電圧制御を行うことができる。
【0082】
また、本第3実施形態では、燃料電池10の出力電力値PとしてPCS20が出力する交流電力を用いている。このため、PCS20における電力損失等を考慮して出力電力指令値P*の調整を行うことができる。
【0083】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0084】
図13に示すように、本第4実施形態の燃料電池発電システム1には、燃料電池10の発電後の排ガスに含まれる水素の濃度を検出する水素センサ15が設けられている。水素センサ15は、燃料電池10に供給された水素のうち、発電に用いられることなく燃料電池10から排出される水素の濃度を検出する。水素センサ15で検出した水素濃度は、燃料電池制御部12に入力する。なお、水素センサ15は、本発明の燃料センサに相当している。
【0085】
次に、本第4実施形態の燃料電池発電システム1の作動を
図14のフローチャートを用いて説明する。
図14のフローチャートは、燃料電池制御部12が実行する処理である。
図12において、S200~S212の処理は上記第2実施形態と同一であり、S213~S215の処理は上記第3実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0086】
図14に示すように、本第4実施形態では、S201で電流指令値Isofc*を更新しないと判定された場合に、S216で水素センサ15で検出した水素濃度が所定範囲内であるか否かを判定する。「所定範囲」は、燃料電池10が電流指令値Isofc*を発電するために必要な量の水素が供給された場合の排ガスに含まれる水素濃度の範囲である。
【0087】
S216で水素濃度が所定範囲内であると判定された場合には、燃料電池10への水素供給量が正常であると判断でき、S202の処理に移行する。一方、S216で水素濃度が所定範囲内でないと判定された場合には、S217で電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*を調整し、S202の処理に移行する。
【0088】
S217では、水素濃度に基づいて電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*の増減が行われる。
【0089】
水素濃度が所定範囲よりも高い場合には、燃料電池10への水素供給量が過剰であり、電気化学反応に用いられない水素が多いと判断できるので、燃料電池10への水素供給量を減少させるために電流指令値Isofc*または出力電力指令値P*を低減する。これにより、燃料電池10への水素供給量を低減させ、燃料電池10の発電効率を向上させることができる。
【0090】
水素濃度が所定範囲よりも低い場合には、燃料電池10への水素供給量が不足しており、燃料電池10が酸化して劣化するおそれがあると判断できるので、供給水素ガスを増加させるために電流指令値Isofc*または出力電力指令値P*を増大する。これにより、燃料電池10への水素供給量を増大することができる。
【0091】
以上説明した本第4実施形態では、燃料電池10の排ガス中の水素濃度に基づいて電流指令値Isofc*を調整している。これにより、燃料電池10の発電状態に応じて電流指令値Isofc*および出力電力指令値P*を適切に調整することができる。
【0092】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
図15に示すように、本第5実施形態の燃料電池発電システム1では、FC出力電流センサ13およびFC出力電圧センサ14が設けられていない。燃料電池制御部12には、PCS制御部23から、PCS入力電流センサ24で検出した出力電流値Isofcと、PCS入力電圧センサ25で検出した出力電圧値Vsofcが送信される。燃料電池制御部12は、PCS制御部23から受信した出力電流値Isofcおよび出力電圧値Vsofcを用いて各種制御を行う。
【0094】
以上説明した本第5実施形態によれば、PCS20が出力電流値Isofcおよび出力電圧値Vsofcを外部の燃料電池制御部12に送信することで、FC出力電流センサ13およびFC出力電圧センサ14を省略することができる。これにより、燃料電池発電システム1の構成を簡素化することができる。
【0095】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0096】
図16に示すように、本第6実施形態の燃料電池発電システム1では、燃料電池制御部12からPCS制御部23に電圧指令値Vsofc*が送信される。電圧指令値Vsofc*は、燃料電池10の目標発電電圧である。PCS制御部23は、外部から電圧指令値Vsofc*を受信した場合には、MPPT制御を停止し、電圧指令値Vsofc*に基づいて燃料電池10の出力電圧値Vsofcが一定になるように制御する電圧一定制御を行う。
【0097】
次に、
図17の制御ブロック図を用いて燃料電池制御部12が電圧指令値Vsofc*を取得する手順を説明する。
【0098】
まず、燃料電池制御部12は燃料電池10の電流と電圧の関係を示す出力特性を取得する。燃料電池10の出力特性は、燃料電池10の電流と電圧を変数とした回帰直線として得られる。
【0099】
燃料電池10の出力特性は、FC出力電流センサ13で検出した出力電流値IsofcおよびFC出力電圧センサ14で検出した出力電圧値Vsofcを用いて回帰計算を行うことで取得することができる。あるいは、燃料電池10の出力特性が判明している場合には、燃料電池10の電流および電圧を測定することなく、予め設定された出力特性を用いてもよい。
【0100】
燃料電池10の出力特性は燃料電池10の温度によって変動するため、燃料電池制御部12は温度設定値T(i)*での出力特性を取得する。温度設定値T(i)*は、燃料電池10の運転温度として設定される値である。燃料電池10の運転温度は燃料供給量などに応じて変動するため、温度設定値T(i)*は電流指令値Isofc*に基づいて設定できる。なお、T(i)*のiは自然数であり、例えばT(1)*=600℃、T(2)*=650℃、T(3)*=700℃、・・・のように設定することができる。
【0101】
燃料電池制御部12は、電流指令値Isofc*と燃料電池10の出力特性を用いて暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*を算出する。さらに燃料電池制御部12は、暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*と、出力電流値Isofcおよび電流指令値Isofc*の差を補正するためのPI制御の補正項を加算することで、電圧指令値Vsofc*を算出する。
【0102】
次に、本第6実施形態の燃料電池発電システム1の作動を
図18のフローチャートを用いて説明する。
図18のフローチャートは、燃料電池制御部12が実行する処理である。
【0103】
まず、S300で電流指令値Isofc*、温度設定値T(i)*を設定し、S301でこれらの設定値(Isofc*、T(i)*)が変更されたか否かを判定する。
【0104】
S301で設定値が変更されていないと判定された場合は、S300の処理に戻る。一方、S301で設定値が変更されたと判定された場合は、S302でFC出力電流センサ13を用いて出力電流値Isofcを検出する。
【0105】
次に、S303で温度設定値T(i)*を用いて燃料電池10の出力特性を取得する。続いて、S304で電流指令値Isofc*を用いて燃料電池10の出力特性から暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*を算出する。Vsofc(T(i)*)*は、T(i)*における燃料電池10の出力特性を示す回帰直線として得られる。S304では、以下の数式(1)によって暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*を算出できる。
【0106】
Vsofc(T(i)*)*=a(T(i)*)×Isofc* + b(T(i)*)…(1)
数式(1)において、a(T(i)*)は回帰直線の傾きであり、b(T(i)*)は回帰直線の切片である。
【0107】
次に、S305で電圧指令値Vsofc*を算出する。S305では、以下の数式(2)によって電圧指令値Vsofc*を算出できる。
【0108】
Vsofc*=Vsofc(T(i)*)* + PI制御補正項…(2)
暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*は、燃料電池10の出力特性と電流指令値Isofc*から求まるフィードフォワード項である。PI制御補正項は、出力電流値Isofcと電流指令値Isofc*の差を補正するためのPI制御の補正項である。
【0109】
燃料電池制御部12は、以上の各処理を実行することで得られた電圧指令値Vsofc*をPCS制御部23に送信する。電圧指令値Vsofc*を受信したPCS制御部23は、燃料電池10が出力する出力電圧値Vsofcが電圧指令値Vsofc*となるように、燃料電池10の電圧一定制御を行う。
【0110】
次に、
図19を用いて本第6実施形態の電圧一定制御を行った場合の燃料電池10の電流のばらつきについて説明する。
図19では、横軸が燃料電池10の出力電力値Pであり、縦軸がPCS20に入力する出力電流値Isofcである。
【0111】
図19では、本第6実施形態の電流ばらつきを「×」で示している。
図19では比較のために、MPPT制御のみを行った場合の電流ばらつきを「□」で示し、第1実施形態の出力電力抑制制御を行った場合の電流ばらつきを「〇」で示している。
【0112】
図19に示すように、MPPT制御のみを行った場合には、出力電流値のばらつきが大きくなっている。PCS制御部23が取得する燃料電池10の出力電力値Pは、センサ誤差等によってばらつくことがある。MPPT制御では、ばらついた出力電力値Pに基づいて燃料電池10の出力制御を行うため、燃料電池10の電流および電圧の変動が大きくなりやすい。
【0113】
これに対し、第1実施形態の出力電力抑制制御を行った場合には、MPPT制御のみを行った場合よりも、出力電流値のばらつきが小さくなっている。さらに本第6実施形態の電圧一定制御を行った場合には、第1実施形態の出力電力抑制制御を行った場合よりも出力電流値のばらつきが小さくなっており、ほぼ一定になっている。
【0114】
以上説明した第6実施形態では、燃料電池制御部12からPCS制御部23に電圧指令値Vsofc*を送信することで、PCS制御部23はMPPT制御を行わず、電圧指令値Vsofc*に基づいて電圧一定制御を行う。これにより、燃料電池10の電流ばらつきを抑制でき、出力電流値Isofcが電流指令値Isofc*から乖離することを抑制できる。
【0115】
また、本第6実施形態では、燃料電池10の出力特性と電流指令値Isofc*から得られた暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*と、出力電流値Isofcと電流指令値Isofc*から得られたPI制御補正項を用いて電圧指令値Vsofc*を算出している。これにより、燃料電池10の出力特性と、出力電流値Isofcと電流指令値Isofc*との差を考慮して、電圧指令値Vsofc*を適切に算出することができる。
【0116】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0117】
図20に示すように、本第7実施形態の燃料電池発電システム1には、燃料電池10の温度測定値Tを検出する温度センサ16が設けられている。温度センサ16によって検出された燃料電池10の温度測定値Tは、燃料電池制御部12に入力する。
【0118】
本第7実施形態では、燃料電池10の温度測定値Tに基づいて燃料電池10の出力特性を補正する。温度測定値Tが温度設定値T(i)*と温度設定値T(i+1)*との間にある場合に、T(i)*とT(i+1)*における燃料電池10の出力特性を示す回帰直線を用いて線形補間し、温度測定値Tにおける燃料電池10の出力特性を取得する。例えばT(i)*=600℃、T(i+1)*=650℃、T=630℃の場合に、600℃と650℃における燃料電池10の出力特性を示す回帰直線を用いて線形補間し、630℃における燃料電池10の出力特性を取得する。
【0119】
次に、本第7実施形態の燃料電池発電システム1の作動を
図21のフローチャートを用いて説明する。
図21のフローチャートは、燃料電池制御部12が実行する処理である。
【0120】
まず、S400で電流指令値Isofc*、温度設定値T(i)*を設定し、S401でこれらの設定値(Isofc*、T(i)*)が変更されたか否かを判定する。
【0121】
S401で設定値が変更されていないと判定された場合は、S400の処理に戻る。一方、S401で設定値が変更されたと判定された場合は、S402で温度センサ16を用いて燃料電池10の温度測定値Tを検出する。続いて、S403でFC出力電流センサ13を用いて出力電流値Isofcを検出し、FC出力電圧センサ14を用いて出力電圧値Vsofcを検出する。
【0122】
次に、S404で温度測定値Tが温度設定値T(i)*とT(i+1)*の間であるか否かを判定する。例えばT(i)*=600℃、T(i+1)*=650℃であれば、温度測定値Tが600℃と650℃の間であるか否かを判定すればよい。
【0123】
S404で温度測定値TがT(i)*とT(i+1)*の間でないと判定された場合には、S402の処理に戻る。一方、温度測定値TがT(i)*とT(i+1)*の間であると判定された場合には、S405でT(i)*およびT(i+1)*における燃料電池10の出力特性を取得する。
【0124】
次に、S406で電流指令値Isofc*を用いて燃料電池10の出力特性から暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*、Vsofc(T(i+1)*)*を算出する。Vsofc(T(i)*)*は、T(i)*における燃料電池10の出力特性を示す回帰直線として得られる。Vsofc(T(i+1)*)*は、T(i+1)*における燃料電池10の出力特性を示す回帰直線として得られる。
【0125】
S406では、以下の数式(1)、(1a)によって暫定電圧指令値Vsofc(T(i)*)*、Vsofc(T(i+1)*)*を算出できる。
【0126】
Vsofc(T(i)*)*=a(T(i)*)×Isofc* + b(T(i)*)…(1)
Vsofc(T(i+1)*)*=a(T(i+1)*)×Isofc* + b(T(i+1)*)…(1a)
数式(1)、(1a)において、a(T(i)*)、a(T(i+1)*)は回帰直線の傾きであり、b(T(i)*)、b(T(i+1)*)は回帰直線の切片である。
【0127】
次に、S407でT(i)*およびT(i+1)*における回帰直線で線形補間して暫定電圧指令値Vsofc(T)*を算出する。S407では、以下の数式(3)によって暫定電圧指令値Vsofc(T)*を算出できる。
【0128】
Vsofc(T)*=((Vsofc(T(i+1)*)*-Vsofc(T(i)*)*)/(T(i+1)*-T(i)*))×(T-T(i)*)+Vsofc(T(i)*)*…(3)
次に、S408で電圧指令値Vsofc*を算出する。S408では、以下の数式(2)によって電圧指令値Vsofc*を算出できる。
【0129】
Vsofc*=Vsofc(T)* + PI制御補正項…(2)
暫定電圧指令値Vsofc(T)*は、燃料電池10の出力特性と電流指令値Isofc*から求まるフィードフォワード項である。PI制御補正項は、出力電流値Isofcと電流指令値Isofc*の差を補正するためのPI制御の補正項である。
【0130】
燃料電池制御部12は、以上の各処理を実行することで得られた電圧指令値Vsofc*をPCS制御部23に送信する。電圧指令値Vsofc*を受信したPCS制御部23は、燃料電池10が出力する出力電圧値Vsofcが電圧指令値Vsofc*となるように、燃料電池10の電圧制御を行う。
【0131】
以上説明した第7実施形態では、燃料電池10の温度測定値Tが温度設定値T(i)*とT(i+1)*の間である場合に、T(i)*とT(i+1)*の回帰直線を用いた線形補間によって、温度測定値Tにおける暫定電圧指令値Vsofc(T)*を算出している。これにより、燃料電池10の温度測定値Tに基づいて、電圧指令値Vsofc*をより適切な値に設定することができる。
【0132】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0133】
例えば、上記各実施形態では、燃料電池10として固体酸化物型燃料電池(SOFC)を用いたが、これに限らず、燃料電池10として溶融塩酸型燃料電池(MCFC、Molten Carbonate Fuel Cell)、リン酸型燃料電池(PAFC、Phosphoric Acid Fuel Cell)、アルカリ水溶液型燃料電池(AFC、Alkaline Fuel Cell)等を用いてもよい。
【0134】
また、上記各実施形態では、PCS20として太陽電池用PCSを用いたが、異なる種類のPCSを用いてもよい。
【0135】
例えばPCS20として、
図22に示すHEMS(Home Energy Management Service)のバッテリに充放電可能な蓄電池用PCSを用いてもよい。上記各実施形態のPCS20のコンバータ21は昇圧機能を備えていたのに対し、
図22に示す蓄電池用のPCS20の昇降圧コンバータ34は入力した直流電力を昇圧および降圧させる機能を備えている。
【0136】
また、PCS20として、
図23に示す風力発電用PCSを用いてもよい。
図23に示すように、風力発電用のPCS20には、風力発電機16が発電した交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータ35が設けられている。AC-DCコンバータ35から出力された直流電力はインバータ22に入力し、交流電力に変換される。
【0137】
また、上記各実施形態では、PCS20が燃料電池10の出力電力を三相交流電力に変換するように構成したが、これに限らず、PCS20が燃料電池10の出力電力を単相交流電力に変換するようにしてもよい。
【0138】
また、上記各実施形態では、電流指令値Isofc*を用いて燃料電池10に対する燃料供給制御を行うように構成したが、電流指令値Isofc*に代えて、電力指令値Wsofc*を用いて燃料電池10に対する燃料供給制御を行ってもよい。電力指令値Wsofc*は、燃料電池10が電力指令値Wsofc*を発電するために必要な水素供給量に相当する値である。燃料供給装置11は、電力指令値Wsofc*に基づいて燃料電池10への水素供給量を調整することができる。
【0139】
また、上記第4実施形態では、水素センサ15で検出した燃料電池10の排ガス中の水素濃度に基づいて電流指令値Isofc*または出力電力指令値P*を増減するようにしたが、この構成を燃料電池制御部12からPCS制御部23に電圧指令値Vsofc*を送信する上記第6、第7実施形態に適用してもよい。
【0140】
具体的には、水素センサ15で検出した水素濃度が所定範囲よりも高い場合には、電圧指令値Vsofc*または出力電力指令値P*を低減することで、燃料電池10への水素供給量を低減させることができる。また、水素濃度が所定範囲よりも低い場合には、電圧指令値Vsofc*または出力電力指令値P*を増大することで、燃料電池10への水素供給量を増大することができる。
【符号の説明】
【0141】
10 燃料電池
12 燃料電池制御部
15 水素センサ(燃料センサ)
20 PCS(パワーコンディショナ)
21 コンバータ
22 インバータ
23 PCS制御部