(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085964
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】流水に含まれる物質を収集する装置および流水に含まれる物質を収集する方法
(51)【国際特許分類】
E02B 15/00 20060101AFI20230614BHJP
B01D 43/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E02B15/00 Z
B01D43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200309
(22)【出願日】2021-12-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、「相反転プロペラ式潮流発電ユニットの高効率単索係留化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】村上 天元
(72)【発明者】
【氏名】平山 伸
【テーマコード(参考)】
2D025
【Fターム(参考)】
2D025AA00
(57)【要約】
【課題】安価かつ容易に製作でき、マイクロプラスチックを始め、水中の様々な微細な物質(ごみ)を収集することができる流水に含まれる物質を収集する装置および流水に含まれる物質を収集する方法の提供。
【解決手段】流水に含まれる物質を収集する装置1は、流水が通過する筒型の本体部10を有し、流水に含まれる物質を収集する装置であり、本体部10は、流水が入ってくる開口された面S1(以下「第一開口面S1」と言う)と、流水が出ていく開口された面S2(以下「第二開口面S2」と言う)と、第一開口面S1および第二開口面S2に設けられ、第一開口面S1の面積および第二開口面S2の面積よりも、流水が入ってくる面積および流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる制御板11と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水が通過する筒型の本体部を有し、前記流水に含まれる物質を収集する装置であり、
前記本体部は、
前記流水が入ってくる開口された面(以下「第一開口面」と言う)と、
前記流水が出ていく開口された面(以下「第二開口面」と言う)と、
前記第一開口面および前記第二開口面に設けられ、前記第一開口面の面積および前記第二開口面の面積よりも、前記流水が入ってくる面積および前記流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる制御板と、
を備える流水に含まれる物質を収集する装置。
【請求項2】
前記第一開口面および前記第二開口面は多角形であり、前記制御板は、当該多角形の各辺にそれぞれ設けられたものである請求項1に記載の流水に含まれる物質を収集する装置。
【請求項3】
前記第一開口面および前記第二開口面は四角形であり、前記制御板は、当該四角形の各辺にそれぞれ設けられたものである請求項2に記載の流水に含まれる物質を収集する装置。
【請求項4】
前記制御板は、前記本体部の前記流水が通過する方向に対して略平行に設けられた側面(以下「側面」と言う)から、30°~150°の角度で設けられたものである請求項1~3のいずれか1項に記載の流水に含まれる物質を収集する装置。
【請求項5】
前記制御板は、前記側面から、90°~150°の角度で設けられたものである請求項4に記載の流水に含まれる物質を収集する装置。
【請求項6】
前記側面の前記流水が通過する方向に延びる長さと、前記第一開口面および前記第二開口面の前記流水が通過する方向と略垂直に交わる方向に対する長さとの比は、1.0~2.0である請求項4または5に記載の流水に含まれる物質を収集する装置。
【請求項7】
流水が入ってくる開口された面(以下「第一開口面」と言う)と、
前記流水が出ていく開口された面(以下「第二開口面」と言う)と、
前記第一開口面および前記第二開口面に設けられ、前記第一開口面の面積および前記第二開口面の面積よりも、前記流水が入ってくる面積および前記流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる制御板と、を備える流水が通過する筒型の本体部
を有する収集装置を水面下に設置して、前記流水に含まれる物質を収集する方法。
【請求項8】
前記第一開口面および前記第二開口面を封止部材で閉じて前記収集装置を前記水面下から回収し、前記流水に含まれる物質を収集する請求項7に記載の流水に含まれる物質を収集する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮流、海流、河川などといった流れている水(流水)に含まれる物質を収集する装置(以下、単に「収集装置」とも言う)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋を漂流するごみが問題となっている。例えば、海洋を漂流するマイクロプラスチックごみは世界的な問題となっており、令和元年には環境省から「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」が発行されている。
【0003】
マイクロプラスチックは、海洋中のポリ塩化ビフェニルなどの有害化学物質を吸着する性質があり、食物連鎖を通じて、海洋生物や海洋生態系、さらに人の健康にも重大な影響を及ぼすことが懸念されている。
また、マイクロプラスチックは、直径が5mm以下の微細なプラスチックごみであるため、網で収集することは困難である。
【0004】
従来技術として、特許文献1に示すようなマイクロプラスチックの収集装置がある。特許文献1には、オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法が記載されている。
このマイクロプラスチックの収集装置は、浮力を提供するための浮力プレートと、浮力プレートの中央部に配置され、上端が浮力プレートの本体プレートと同じ高さで、海水を制限するための収集ボックスと、収集ボックス内に配置され、垂直方向に摺動可能で、マイクロプラスチックを収集するための収集ネットと、浮力プレートの外縁に回転可能に接続され、前記収集ネットに運動動力を提供する駆動装置を含んでいる。
【0005】
また、その他の従来技術として、特許文献2に示すような洋上ゴミ回収装置および複合洋上ゴミ回収装置がある。特許文献2には、自動的にゴミを回収することが可能で、洋上での使用に適した洋上ゴミ回収装置が記載されている。
この洋上ゴミ回収装置は、洋上に設置されて、海面に浮遊するゴミを回収する平面視略円形のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6818199号公報
【特許文献2】特開2020―101022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のマイクロプラスチックの収集装置は、上述したように網(収集ネット)によってマイクロプラスチックを収集する装置であるため、網の目よりも微細なマイクロプラスチックを収集することはできない。さらに、網の目よりも大きなごみが漂流してきた場合、網の目に詰まってしまう恐れがある。
【0008】
また、特許文献2に記載の洋上ゴミ回収装置は、海面を浮遊するマイクロプラスチックを回収する装置であり、海中のマイクロプラスチックを収集することはできない。なお、この洋上ゴミ回収装置は、多数の羽根を有していることから製作が困難で、可動部を有しているので比較的大型のゴミが詰まることにより、羽根車が破損する恐れがある。
【0009】
さらに、海洋を漂流するマイクロプラスチックごみは世界的な問題となっているため、収集装置の大規模・広範囲な展開を考えると、製作が容易であることや製作コストを抑えられることなどが求められる。
よって、本発明は、安価かつ容易に製作でき、マイクロプラスチックを始め、水中の様々な微細な物質(ごみ)を収集することができる流水に含まれる物質を収集する装置および流水に含まれる物質を収集する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の流水に含まれる物質を収集する装置は、流水が通過する筒型の本体部を有し、流水に含まれる物質を収集する装置であり、本体部は、流水が入ってくる開口された面(以下「第一開口面」と言う)と、流水が出ていく開口された面(以下「第二開口面」と言う)と、第一開口面および第二開口面に設けられ、第一開口面の面積および第二開口面の面積よりも、流水が入ってくる面積および流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる制御板と、を備える。
これにより、制御板により(流水が制御板に当たって)流水が入ってくる面積や流水が出ていく面積が制御されて、本体部内に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間が生じる。
【0011】
また、第一開口面および第二開口面は多角形であり、制御板は、当該多角形の各辺にそれぞれ設けられたものであることや、特に、第一開口面および第二開口面は四角形であり、制御板は、当該四角形の各辺にそれぞれ設けられたものであることが好ましい。
これにより、例えば、第一開口面および第二開口面が四角形である場合、当該四角形の各辺に制御板が設けられるため、本体部内に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間が複数、満遍なく生じる。
【0012】
また、制御板は、本体部の流水が通過する方向に対して略平行に設けられた側面(以下「側面」と言う)から、30°~150°の角度で設けられたり、特に、90°~150°の角度で設けられたものであることが好ましい。
なお、側面の流水が通過する方向に延びる長さと、第一開口面および第二開口面の流水が通過する方向と略垂直に交わる方向に対する長さとの比は、1.0~2.0であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の流水に含まれる物質を収集する方法は、流水が入ってくる開口された面(以下「第一開口面」と言う)と、流水が出ていく開口された面(以下「第二開口面」と言う)と、第一開口面および第二開口面に設けられ、第一開口面の面積および第二開口面の面積よりも、流水が入ってくる面積および流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる制御板と、を備える流水が通過する筒型の本体部を有する装置を水面下に設置して、流水に含まれる物質を収集する。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明の流水に含まれる物質を収集する装置は、流水が通過する筒型の本体部を有し、流水に含まれる物質を収集する装置であり、本体部は、流水が入ってくる開口された面(以下「第一開口面」と言う)と、流水が出ていく開口された面(以下「第二開口面」と言う)と、第一開口面および第二開口面に設けられ、第一開口面の面積および第二開口面の面積よりも、流水が入ってくる面積および流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる制御板と、を備える構成により、制御板により(流水が制御板に当たって)流水が入ってくる面積や流水が出ていく面積が制御されて、本体部内に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間(部分)が生じるため、流水に含まれる物質も、本体部内の当該部分に滞留し、収集することができる。
【0015】
(2)また、第一開口面および第二開口面は多角形であり、制御板は、当該多角形の各辺にそれぞれ設けられたものであることや、特に、第一開口面および第二開口面は四角形であり、制御板は、当該四角形の各辺にそれぞれ設けられたものである構成により、例えば、第一開口面および第二開口面が四角形である場合、当該四角形の各辺に制御板が設けられるため、本体部内に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間が複数、満遍なく生じるため、流水に含まれる物質を本体部内により効率的に滞留させ、収集することができる。
【0016】
(3)また、制御板は、本体部の流水が通過する方向に対して略平行に設けられた側面(以下「側面」と言う)から、30°~150°の角度で設けられたり、特に、90°~150°の角度で設けられたものであることが好ましい。
なお、側面の流水が通過する方向に延びる長さと、第一開口面および第二開口面の流水が通過する方向と略垂直に交わる方向に対する長さとの比は、1.0~2.0であることが好ましい。
このような構成により、後述するように、流水の速さが変わった場合であっても、より効率的に流水に含まれる物質を収集することができる。
【0017】
また、本発明の収集方法によれば、本発明の流水に含まれる物質を収集する装置と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る収集装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る制御板の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る制御板の構成を示す図である。
【
図4】シミュレーションにおける収集装置の構成を示す図である。
【
図12】本発明の別の実施の形態に係る構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0020】
[収集装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る収集装置の概略斜視図である。
図1(a)は、正面・上面・右側面から見た概略斜視図である。一方、
図1(b)は、背面・底面・右側面から見た概略斜視図である。
収集装置1は、潮流、海流、河川などといった流れている水(流水)に含まれる物質を収集する装置である。流水に含まれる物質とは、マイクロプラスチックなど、微細な物質である。つまり、収集装置1は、流水に含まれる、網で収集することが困難な微細なごみを収集することができる。また、流水とは、潮流、海流、河川などといった自然界に存在するものの他、流れているもの(流速があるもの)を言う。
【0021】
収集装置1は、
図1に示すように、流水が通過する筒型の本体部10を有する。
図1に示す例において、本体部10は角筒型の形状である。
【0022】
本体部10は、流水が入ってくる開口された部分を有する面(第一開口面S1)と、流水が出ていく開口された部分を有する面(第二開口面S2)とを備える。また、本体部10は筒型であるため、第一開口面S1と第二開口面S2を繋げる側面12を備える。
図1に示す例において本体部10は角筒型の形状であるため、側面12a,12b,12c,12dを備えている。要するに、
図1に示す例における本体部10は、側面12a、側面12b、側面12c、側面12d、第一開口面S1、および第二開口面S2を備える角筒型の形状である。
【0023】
第一開口面S1から流水が入ってきて、側面12を通過して、第二開口面S2から流水が出ていくことで本体部10内部を流水が通過する。なお、第一開口面と第二開口面は便宜上の定義であり、例えば、収集装置1を設置する方向を変えたり、潮流の向きが変わることに応じて、流水が入ってくる面・出ていく面(第一開口面・第二開口面)も変わる。
【0024】
さらに、本体部10は、第一開口面S1および第二開口面S2に設けられる制御板11を備える。制御板11は、第一開口面S1の面積および第二開口面S2の面積よりも、流水が入ってくる面積および流水が出ていく面積が小さくなるように設けられる。
言い換えると、制御板11は、本体部10へ流水が入ってくる面積が第一開口面S1よりも小さくなるように、および本体部10から流水が出ていく面積が第二開口面S2よりも小さくなるように、流水の量(流量)を制御するためのものである。
【0025】
図1に示す例において、本体部10は角筒型の形状であり、第一開口面S1および第二開口面S2は四角形である。そのため、制御板11は
図1(a)に示すように、第一開口面S1の各辺にそれぞれ設けられている(制御板11f1,11f2,11f3,11f4。)。
また、制御板11は
図1(b)に示すように、第二開口面S2の各辺にもそれぞれ設けられている(制御板11b1,11b2,11b3,11b4。)。
【0026】
ここで、第一開口面S1に設けられた制御板11f1,11f2,11f3,11f4と、第二開口面S2に設けられた制御板11b1,11b2,11b3,11b4とは、それぞれが対応するものである。対応するとは、側面12が延びる方向に沿って一対のペアとして設けられていることを言う。例えば、
図1に示す例においては、制御板11f1と制御板11b1とが対応している(一対のペアとなっている)。同様に、制御板11f2と制御板11b2とが、制御板11f3と制御板11b3とが、制御板11f4と制御板11b4とが、それぞれ対応している。また、位置関係だけでなく、対応している制御板同士で、制御板の大きさ(サイズ)や、後述するような制御板が設けられる角度が同じであることが好ましい。
【0027】
また、第一開口面S1に設けられた制御板11(11f1,11f2,11f3,11f4)は本体部10の流水が通過する方向に対して略平行に設けられた側面12(12a,12b,12c,12d)から、一定の角度で設けられている。つまり、制御板11f1~11f4は、その一辺が第一開口面S1や第二開口面S2の一辺にそれぞれ接合されており、さらに第一開口面S1や第二開口面S2の当該一辺にそれぞれ接合されている側面12a~12dから、一定の角度で設けられている。言い換えると、制御板11は、流水の流入方向に対して一定の角度で設けられている。
【0028】
ここで言う一定の角度とは、制御板11と側面12とが成す角度である。具体的には、制御板11と、制御板11が接合する側面12とが成す角度である。第一開口面S1を例に挙げると、制御板11f3は側面12cと接合されているため、制御板の角度は制御板11f3と側面12cとが成す角度である。
【0029】
図2の本発明の実施の形態に係る制御板の構成を示す図に基づいてより具体的に説明すると、
図2(A)場合、制御板11f3と側面12cとが成す角度は30°である。また、制御板11f1と側面12aとが成す角度も30°である。
なお、
図2(A)には記載されていないが、制御板11f2と側面12bとが成す角度、および制御板11f4と側面12dとが成す角度も同様に30°である。さらに、制御板11b1~11b4、側面12a~12dについても同様である。
これらの角度が全て0°であれば、流水が入ってくる面積は第一開口面S1の面積と同じになったり、流水が出ていく面積は第二開口面S2の面積と同じになったりする。
【0030】
図2および
図3は、本発明の実施の形態に係る制御板の構成を示す図である。
図2は、第一開口面S1および第二開口面S2に、側面12から30°~90°の角度で制御板11が設けられている構成を示している。一方、
図3は、側面12から105°~150°の角度で制御板11が設けられている構成を示している。具体的には、
図2(A)は30°、
図2(B)は45°、
図2(C)は60°、
図2(D)は75°、
図2(E)は90°の角度で制御板11が設けられており、
図3(F)は105°、
図3(G)は120°、
図3(H)は135°、
図3(I)は150°の角度で制御板11が設けられている。
なお、
図1に示す収集装置1は、制御板11(11f1~11f4、11b1~11b4)が45°で設けられている。
【0031】
図2(A)に示される30°を例に具体的に説明すると、制御板11f1と側面12aとが成す角度は30°であり、制御板11b1と側面12aとが成す角度も30°である。そのため、側面12a側に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間(領域)Vが生じる。
図2(A)に示す側面12c側についても、同様である。
【0032】
そして、第一開口面S1に設けられる他の制御板(制御板11f2,11f4)および第二開口面S2に設けられる他の制御板(制御板11b2,11b4)についても同様である。つまり、側面12b側や側面12d側についても、流水が直接入ってきたり、出たりしない一定の空間が生じる。
このように、第一開口面S1および第二開口面S2に制御板11を設けることにより、本体部10の内壁側に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間が生じる。
【0033】
なお、
図2,3において、第一開口面S1および第二開口面S2は、一辺が200mmの正方形である。また、側面の長さは300mmである。つまり、側面は縦200mm×横300mmの長方形である。そして、制御板11は、
図2,3に示すように、第一開口面S1や第二開口面S2において、水流が入ってくる面積や水流出ていく面積が100mm×100mmになるように設けられている。
つまり、制御板11は上述したように、第一開口面S1の面積(200mm×200mm)および第二開口面S2(200mm×200mm)の面積よりも、流水が入ってくる面積(100mm×100mm)および流水が出ていく面積(100mm×100mm)が小さくなるように設けられる。
【0034】
[シミュレーション]
続いて、本発明の実施の形態に係る収集装置について、シミュレーションによる解析を行った。シミュレーションには、汎用熱流体解析ソフトウェアの「Ansys Fluent(ver.19.0)」を用いた。
図4は、シミュレーションにおける収集装置の構成を示す図である。
図4に示す矢印の方向に水が流れ、本体部10の第一開口面S1から流水が入ってくる。また、入口における流水の流速を、それぞれ0.3m/s、0.6m/s、0.9m/sと3段階に変化させてシミュレーションを行った。
なお、その他のシミュレーションの詳細な条件(Ansys Fluentの設定)は以下に示す。
+Turbulent model : SST
+Numbers of grids : approximately 1,300,000
+Water density rw : 998.2 kg/m3
+Particle density rp : 1040 kg/m3 (Polystyrene)
+Maximum diameter : 0.005 m
+Mean diameter : 0.001 m
+Minimum diameter : 0.0001 m
+Particle numbers : approximately 22,200
【0035】
図5,6は、流速が0.9m/sにおけるシミュレーション結果を示す図である。
図5(A),(B),(C),(D),(E)が、制御板の角度がそれぞれ30°,45°,60°,75°,90°の場合のシミュレーション結果(斜視図)である。また、
図6(F),(G),(H),(I)が、制御板の角度がそれぞれ105°,120°,135°,150°の場合のシミュレーション結果(斜視図)である。なお、それぞれのシミュレーション結果において、収集装置内外を流れる流水に含まれるプラスチック粒子の軌跡が、速度ごとに色分けして示されている。各図面において、向かって左側(第一開口面S1)が流水が入ってくる側、向かって右側(第二開口面S2)が流水が出ていく側である。
【0036】
図5,6に示すように、制御板により(流水が制御板に当たって)、流水が入ってくる面積や流水が出ていく面積が制御されていることが分かる。言い換えると、濃淡が薄い部分である本体部10の内壁側など、制御板により流水の入り・出が制御されている部分のプラスチック粒子の速度(velocity)は遅い。しかし、濃淡が濃い部分である本体部10の中心部など、制御板により流水の入り・出が制御されていない部分(流水が入ってくる部分や流水が出ていく部分)の速度は速いことが分かる。
つまり、制御板により、
図2(A)に示すような空間Vの部分(本体部10の内壁側)に、流水が直接入ってきたり、直接出ていったりしない一定の空間が生じていることが分かる。
【0037】
また、
図7は、流速が0.6m/sにおけるシミュレーション結果を示す図である。
図7(A),(D),(G),(I)が、制御板の角度がそれぞれ30°,75°,120°,150°の場合のシミュレーション結果(平面図)である。
図5,6と同様に、それぞれのシミュレーション結果において、収集装置内外を流れる流水に含まれるプラスチック粒子の軌跡が、速度ごとに色分けして示されている。
図7も、各図面において、向かって左側(第一開口面S1)が流水が入ってくる側、向かって右側(第二開口面S2)が流水が出ていく側である。
【0038】
流速を0.6m/sに変えても、濃淡が薄い部分である本体部10の内壁側など、制御板により流水の入り・出が制御されている部分の速度は遅く、濃淡が濃い部分である本体部10の中心部など、制御板により流水の入り・出が制御されていない部分の速度は速いことが分かる。
【0039】
また、
図8は、流速が0.3m/sにおけるシミュレーション結果を示す図である。
図8(A),(D),(G),(I)が、制御板の角度がそれぞれ30°,75°,120°,150°の場合のシミュレーション結果(平面図)である。
図5,6や
図7と同様に、それぞれのシミュレーション結果において、収集装置内外を流れる流水に含まれるプラスチック粒子の軌跡が、速度ごとに色分けして示されている。
図8も、各図面において、向かって左側(第一開口面S1)が流水が入ってくる側、向かって右側(第二開口面S2)が流水が出ていく側である。
【0040】
流速を0.3m/sに変えても、流速が0.9m/sや0.6m/sの場合と同様に、濃淡が薄い部分である本体部10の内壁側など、制御板により流水の入り・出が制御されている部分の速度は遅く、濃淡が濃い部分である本体部10の中心部など、制御板により流水の入り・出が制御されていない部分の速度は速いことが分かる。
【0041】
[流線]
図9,10は、シミュレーション結果を示す図であり、流水が流れていく線(流線)を可視化したものである。
図9が、流速:0.9m/sの場合、
図10が、流速:0.3m/sの場合である。制御板の角度については、各図面に記載している通りである。
図9,10より、本体部10の内壁側に渦が生じていることが分かる(例えば、
図9(G)の点線枠参照)。特に、
図9(G)や
図10(G)に示すように、制御板の角度が120°の場合に顕著に渦が生じていることが分かる。
【0042】
このような現象により、本体部10内壁側に入り込んだ流水は、第二開口面S2から本体部10外へ出て行きにくく、本体部10内(本体部10の内壁側)に滞留することが分かる。つまり、流水に含まれる物質も、本体部10内に滞留し、収集することができると言える。
【0043】
[試験例]
続いて、本発明の実施の形態に係る収集装置について試験(実験)を行った。試験手順を、以下に示す。なお、本試験は、循環式の水槽を用いて行った。
(1)収集装置を、流速が0.6m/sの水中(水槽内)に投入する。
(2)上流側から、粒径4mmのプラスチックを流す。
(3)(2)を30回繰り返し、プラスチックが収集装置内に収集(捕集。収集装置外へ出て行かない。)できた回数(収集回数)をカウントする。
(4)流速を0.3m/sに変えて、(1)~(3)を実施する。
【0044】
図11は、その試験結果を示すグラフである。縦軸が収集回数であり、横軸が制御板の角度である。例えば、制御板の角度が45°の場合、流速が0.6m/sだと30回のうち9回、流速が0.3m/sだと30回のうち17回、プラスチックを収集できたことを示す。
【0045】
収集装置を海や河川で使用する場合、水が流れる速さは変わり得るものである。そのため、流速が0.6m/sの場合でも流速が0.3m/sの場合でも収集回数が比較的多い(収集率が高い)制御板の角度:120°の場合が、最も安定してプラスチックを収集することができたと言える。要するに、制御板の角度:120°の場合が、流速によらず、最も安定してプラスチックを収集することができたと言える。
【0046】
制御板の角度が小さいと(例えば、30°の場合)、制御板は本体部10内に入り込むことになるため、流水の入り口と出口とが近くなってしまう。そうすると、本体部10内に入り込んだ流水は、入り口と出口との距離が短いため、本体部10内に滞留せずにそのまま流出してしまう場合も多くなる。
よって、制御板の角度が120°の場合のように、流水の入り口と出口との距離をある程度確保し得るような構成が、より効率的に流水に含まれる物質を収集することができると言える。
【0047】
その他、例えば
図3に示すように、制御板11が本体部10の外に出た形状(制御板11の角度が90°以上)である場合、本体部10内の清掃が容易である。つまり、利用者が第一開口面S1や第二開口面S2から本体部10内に手を入れて、本体部10内の隅の部分まで容易に清掃を行うことができるため、利便性が向上する。
【0048】
[収集方法]
以下、本発明の実施の形態に係る収集装置を用いた、流水に含まれる微細な物質を収集する収集方法について説明する。
【0049】
まず、利用者は、収集装置を海(湾岸部や沖など)や河川に設置する。具体的には、水が流れる方向に沿って(例えば、第一開口面が上流側を向くように)収集装置を水面下に設置する。なお、収集装置に設けられる制御板の角度は、収集装置が設置される場所の流速などによって、利用者が適宜調整することができる。
【0050】
利用者は収集装置を設置した後、一定時間(一定期間)放置する。そうすると、シミュレーションや試験で述べたように、収集装置の本体部内に入り込んだ流水に含まれる微細な物質が、収集装置の本体部の内壁側に溜まる(収集される)。
【0051】
利用者は一定時間(一定期間)経過後、収集装置を水中から引き揚げて回収する。この際利用者は、第一開口面および第二開口面を封止部材で閉じて、収集装置を水中から回収する。封止部材は、第一開口面や第二開口面から収集装置内の水が漏れ出ないものであれば、特に制限はない。
【0052】
収集装置により収集されたマイクロプラスチックなどの微細な物質は、収集装置内の水を気化(乾燥)させたり、ろ過したりすることで処理することができる。
【0053】
このように、本発明の収集装置や収集方法を用いれば、マイクロプラスチックを始め、水中の様々な微細な物質を収集することができる。また、上述の収集装置の構成の説明からも分かるように、本発明の収集装置は複雑な構造がなく、安価かつ容易に製作することができる。そのため、大量生産や大規模展開が可能である。
【0054】
また、本実施の形態において、制御板は左右(11f1,11f3,11b1,11b3)および上下(11f2,11f4,11b2,11b4)に設けられている。そのため、水流に含まれる物質のうち、水よりも密度が重い物質は本体部10の下側の内壁側に溜まることとなる。一方、水流に含まれる物質のうち、水よりも密度が軽い物質は本体部10の上側の内壁側に溜まることとなる。もちろん、水の流れにより、物質が本体部10の左側または右側の内壁側に溜まることもある。つまり、本発明の収集装置によれば、水よりも密度が重い/軽いを問わず、様々な物質を収集することができる。
【0055】
なお、本実施の形態において、第一開口面S1に設けられる制御板11と第二開口面S2に設けられる制御板11はそれぞれが対応しているため、例えば、潮の流れが変わった場合でも問題はない。つまり、潮の流れが変わり、これまで第一開口面S1から入ってきた流水が第二開口面S2から入ってくるようになったとしても、第一開口面S1に設けられる制御板11と第二開口面S2に設けられる制御板11の大きさや角度は同じであるため、収集装置を設置し直したりしなくとも、流水に含まれる物質を収集することができる。
【0056】
[側面の長さ]
以上のように説明した収集装置や収集方法はあくまで一例であり、本発明の要旨を変更しない限り、適宜設計変更可能である。変更例(変形例)として、側面の長さを変えた場合の例を以下に示す。ここで、側面の長さとは、流水が本体部内を通過する方向に沿った側面の長さである。
【0057】
上述した実施の形態において、側面の長さは、
図2,3に示されるように300mmである。その長さを、
図12に示すように、600mm(
図12(a)参照),900mm(
図12(b)参照)とそれぞれ変えた。なお、第一開口面S1および第二開口面S2の一辺の長さは200mmのままなので、縦l
a(第一開口面S1や第二開口面S2の一辺の長さ)と横l
b(側面の長さ)の比は、それぞれ「3.0」,「4.5」となる。なお、変える前(300mm)の場合の縦l
aと横l
bの比は、「1.5」である。
【0058】
そして、制御板の角度は120°として、シミュレーションによる解析を行った。シミュレーションの条件などは、上述した通りである。
図13,14は、そのシミュレーション結果を示す図である。
図13(A),(B),(C)は、それぞれ縦l
aと横l
bの比が「1.5」,「3.0」,「4.5」の場合のシミュレーション結果(斜視図)である。
図5,6と同様に、それぞれのシミュレーション結果において、収集装置内外を流れる流水に含まれるプラスチック粒子の軌跡が、速度ごとに色分けして示されている。向かって左側(第一開口面S1)が流水が入ってくる側、向かって右側(第二開口面S2)が流水が出ていく側である。
【0059】
また、14(A),(B),(C)は、
図9と同様に、それぞれ縦l
aと横l
bの比が「1.5」,「3.0」,「4.5」の場合の流線を可視化したものである。
図13,14より、側面の長さを変えた場合(側面の長さを長くした場合)でも、本体部内の内壁側に、渦が生じていることが分かる。つまり、側面の長さを変えても、生じる渦の大きさは多少変わるが、本発明の作用効果を奏することができると言える。
【0060】
しかし、
図14(C)に顕著に表れているように、縦l
aに比べて横l
bが長過ぎると、内壁側に生じた渦が下流(第二開口面S2)に届かないことが分かる(
図14(C)の点線枠参照)。これは、下流側に行くに従って、本体部内を通過する流水の流速が落ちるためだと考えられる。
よって、縦l
aと横l
bの比は、1.0~2.0が好ましく、1.5前後がさらに好ましいと言える。
【0061】
その他、変更例として、本体部などの材料(材質)は、金属製やプラスチック製、樹脂製など特に制限はない。例えば、収集装置が使用される場所の水質(例えば、海の場合は海水。河川の場合は淡水など。)に合わせて、利用者は適宜材料を選択することができる。つまり、収集装置を海で使用する場合には、海水で錆びないような材料を選択することができたり、流速が速い場所で使用する場合には、流されないように質量が大きい材料を選択することができる。
【0062】
また、本体部の形状も、本実施の形態では角筒型の形状であるとしたが、円筒型の形状であってもよい。なお、本体部の大きさや第一開口面S1および第二開口面S2の大きさ、または制御板により制御(調整)される流水が入ってくる面積および流水が出ていく面積も、収集装置が使用される場所や用途などに応じて、適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、安価かつ容易に製作でき、マイクロプラスチックを始め、水中の様々な微細な物質(ごみ)を収集することができる収集装置および収集方法として、世界的な問題となっている海洋を漂流するごみ問題などを解決することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 収集装置
10 本体部
11,11f1,11f2,11f3,11f4,
11b1,11b2,11b3,11b4, 制御板
12,12a,12b,12c,12d 側面
S1 第一開口面
S2 第二開口面
V 空間(領域)