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特開2023-85973物流倉庫制御システム及び物流倉庫制御方法
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  • 特開-物流倉庫制御システム及び物流倉庫制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085973
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】物流倉庫制御システム及び物流倉庫制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20230614BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20230614BHJP
【FI】
B65G1/137 F
G06Q10/08 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200325
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 亮太
【テーマコード(参考)】
3F522
5L049
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB24
3F522BB35
3F522CC01
3F522CC05
3F522CC06
3F522DD22
3F522GG13
3F522GG18
3F522GG22
3F522GG27
3F522JJ01
3F522JJ02
3F522JJ04
3F522LL31
3F522LL57
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】サブシステム群のパラメータを決定する際、単一のサブシステムだけでなく、複数のサブシステムのパラメータの好適な組み合わせを決定することで、物流システム全体の性能を向上させること。
【解決手段】物流システムに与えられる複数のオーダーを管理するオーダー管理部と、前記物流システムに含まれる複数の物流作業工程をそれぞれ担う複数のサブシステムについて、各サブシステムの動作に関するパラメータを前記複数のオーダーに基づいて決定するパラメータ決定部とを備え、前記パラメータ決定部は、決定したパラメータを前記サブシステムに入力し、当該パラメータが適用された状態で前記複数のオーダーを処理させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流システムに与えられる複数のオーダーを管理するオーダー管理部と、
前記物流システムに含まれる複数の物流作業工程をそれぞれ担う複数のサブシステムについて、各サブシステムの動作に関するパラメータを前記複数のオーダーに基づいて決定するパラメータ決定部と
を備え、
前記パラメータ決定部は、決定したパラメータを前記サブシステムに入力し、当該パラメータが適用された状態で前記複数のオーダーを処理させる
ことを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータ決定部は、前記複数のサブシステムのパラメータの組み合わせについて前記物流システム全体の生産性を評価し、前記複数のサブシステムの各々に適用するパラメータを決定することを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータ決定部は、前記物流システムにおける上流側のサブシステムを優先して前記パラメータを決定することを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項4】
請求項2に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータ決定部は、使用された実績のあるパラメータを優先して前記パラメータの組合せの探索範囲を削減することを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記複数のサブシステムに、ピッキングシステム、順建倉庫、コンベアのうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータは、前記サブシステムにおけるマテリアルハンドリングの動作のトリガーとなる閾値を含むことを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータは、前記サブシステムの制御パターンを特定する識別情報を含むことを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータ決定部が、前記パラメータに応じた前記物流システムの性能を出力する機能を有することを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の物流倉庫制御システムであって、
前記パラメータ決定部は、シミュレーションに基づくパラメータ空間の探索によって前記パラメータの組み合わせを決定することを特徴とする物流倉庫制御システム。
【請求項10】
物流システムに与えられる複数のオーダーを管理するオーダー管理ステップと、
前記物流システムに含まれる複数の物流作業工程をそれぞれ担う複数のサブシステムについて、各サブシステムの動作に関するパラメータを前記複数のオーダーに基づいて決定するパラメータ決定ステップと
決定したパラメータを前記サブシステムに入力し、当該パラメータが適用された状態で前記複数のオーダーを処理させるステップと
を含むことを特徴とする物流倉庫制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流システムの制御を行うための物流倉庫制御システムおよび物流倉庫制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流システムの効率化のため、特開2007-39181号公報(特許文献1)に記載の技術がある。この公報には「受注物品を複数のピッキング方式から選択された方式でピッキングするためのスケジュールを作成するピッキングスケジュール作成システムであって、受注物品の出荷先毎にピッキング方式に関するピッキング情報が書き換え自在に記憶される出荷作業管理テーブルのピッキング方式を、複数のピッキング方式(オーダーピッキング及びトータルピッキング)の中から選定して入力し、該出荷作業管理テーブルに入力されたピッキング情報に応じてピッキングスケジュールを作成する」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-39181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、「全体最適の観点から効率的な作業実施を目的として、サブシステムの動作に関するパラメータを物流システムの性能が向上するよう決定する」という点で不十分であった。例えば、顧客からの注文を表すオーダーの傾向、物流システムを構成するサブシステム群の特性や組み合わせに応じて設定すべきサブシステムのパラメータの設定値は変わる。しかしながら、サブシステムのパラメータの設定値は、これまでは1つのサブシステムの生産性向上を目的として設定・開発されていたため、物流システム全体の特性を考慮した設定値の決定はできていなかったのである。
【0005】
具体例として、上記の特許文献1では、出荷先ごとにピッキングの方式を示すパラメータを変えることが可能だが、ピッキングシステム以外のパラメータを合わせて適切に決定することができない。
【0006】
そこで、本発明は、物流倉庫制御システムが、サブシステム群のパラメータを決定する際に、例えばピッキングシステムだけでなく、他のサブシステムのパラメータを、各システムの特徴や相性を考慮し、システム全体の性能が上がるように決定することで、物流システム全体の性能を向上させる制御方式を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の物流倉庫制御システムの一つは、物流システムに与えられる複数のオーダーを管理するオーダー管理部と、前記物流システムに含まれる複数の物流作業工程をそれぞれ担う複数のサブシステムについて、各サブシステムの動作に関するパラメータを前記複数のオーダーに基づいて決定するパラメータ決定部とを備え、前記パラメータ決定部は、決定したパラメータを前記サブシステムに入力し、当該パラメータが適用された状態で前記複数のオーダーを処理させることを特徴とする。
また、代表的な本発明の物流倉庫制御方法の一つは、物流システムに与えられる複数のオーダーを管理するオーダー管理ステップと、前記物流システムに含まれる複数の物流作業工程をそれぞれ担う複数のサブシステムについて、各サブシステムの動作に関するパラメータを前記複数のオーダーに基づいて決定するパラメータ決定ステップと決定したパラメータを前記サブシステムに入力し、当該パラメータが適用された状態で前記複数のオーダーを処理させるステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
サブシステム群のパラメータを決定する際、単一のサブシステムだけでなく、複数のサブシステムのパラメータの好適な組み合わせを決定することで、物流システム全体の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態による物流倉庫制御システムの概略図である。
図2】本発明の実施の形態による物流倉庫制御システムにおけるサブシステムの構成とパラメータの概略図である。
図3】本発明の実施の形態による物流倉庫制御システムにおけるパラメータ決定およびサブシステム群への入力の手順を説明した概略図である。
図4】本発明の実施の形態による物流倉庫制御システムにおける注文を表すオーダーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例0011】
本発明に係る物流倉庫制御システムは、複数のサブシステムから構成される物流倉庫の制御を、単一のサブシステムの生産性でなく物流倉庫全体の生産性が向上するように行うことを可能とする好適なものである。以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(1)第1の実施の形態
以下に、本発明に係る物流倉庫制御システムの第一の実施の形態を図面に基づいて説明する。物流倉庫制御システムの構成の概略について図1を用いて説明する。図1に示すように物流倉庫制御システムは、物流システム101、物流倉庫制御システム105、サブシステムA102、サブシステムB103、サブシステムC104を有し、前記物流倉庫制御システム105はオーダー管理部106、制御パラメータ決定部107、を有する。
【0013】
サブシステムA102、サブシステムB103、サブシステムC104は、物流システムのある工程に対応した物流作業を行うための領域と作業主体のまとまりであり、作業主体は、例えばマテリアルハンドリング機器である。サブシステムA102、サブシステムB103、サブシステムC104は、互いに物品を渡す能力を有する。図1に示す構成の概略では、サブシステムA102からサブシステムB103へ、サブシステムB103からサブシステムA102へ、また、サブシステムB103から前記サブシステムC104へ物品が渡される。制御パラメータ決定部107は、オーダー管理部106から、顧客の注文を表すオーダーを少なくとも2つ入力として受け付け、制御パラメータ決定部107はサブシステムA102とサブシステムB103の制御パラメータを決定し、少なくとも2つの前記サブシステムに入力として与える。図1に示す構成の概略では、サブシステムA102およびサブシステムB103に決定したパラメータを入力として与える。
【0014】
前記オーダーについて図4を用いて説明する。前記オーダーは、少なくとも、種々の物品の出荷、入庫、出庫に関する物品と配送先の情報を含む。例えば、オーダー401およびオーダー402は、オーダーのID、物品のIDおよび個数、配送先のIDの組である。オーダーのIDは、物流システム内でユニークなオーダーの識別子である文字列または番号等である。物品のIDは、物品の種類を示す名称または番号等である。配送先のIDは、出荷先の顧客名やID、店舗名、配送される集品所の名称または番号等である。
【0015】
図1に示した物流倉庫制御システムの構成の具体例について図2を用いて説明する。図2に示すように物流倉庫制御システムは、物流システム201、物流倉庫制御システム105、AGV(Automated Guided Vehicle)ピッキングサブシステム203、DPS(Digital Picking System)ピッキングサブシステム204、順建倉庫サブシステム205、梱包サブシステム206、出荷サブシステム207、を有し、物流倉庫制御システム105は、オーダー管理部106、制御パラメータ決定部107、を有する。
【0016】
物品は、AGVピッキングサブシステム203およびDPSピッキングサブシステム204から順建倉庫サブシステム205へ、また、順建倉庫サブシステム205から梱包サブシステム206へ、梱包サブシステム206から出荷サブシステム207へ渡される。AGVピッキングサブシステム203は、ピッキングシステムであって、ピッキングを行う作業主体(ロボット等)へ、AGVが物品を保管する棚を搬送し、搬送された棚から作業主体(ロボット等)が物品をピッキングして仕分けするシステムである。
【0017】
AGVピッキングサブシステム203は、多くの種類の物品を格納することができるという特性を持つ。DPSピッキングサブシステム204は、ピッキングシステムであって、ピッキングを行う作業主体(ロボット等)が、間口にピッキングに関する情報を表示する機能を備えた物品を格納した保管棚からピッキングして仕分けするシステムである。
【0018】
DPSピッキングサブシステム204は、AGVピッキングサブシステム203に比べて保持できる物品の数は少ないが、ピッキングがAGVピッキングサブシステム203よりも早くピッキング作業ができるという特性を持ち、高頻度に出庫される物品のピッキング作業に向いている。
【0019】
本実施例において、AGVピッキングサブシステム203と、DPSピッキングサブシステム204が有する物品は種類が異なる。AGVピッキングサブシステム203とDPSピッキングサブシステム204で仕分けを終えた物品は、順建倉庫サブシステム205に渡され格納される。順建倉庫サブシステム205は、格納された物品のうち、複数のオーダーが属する所定のグループに属する物品がそろったら、例えば、1つの出荷箱に入れるべき物品がそろったら、後に作業する梱包サブシステム206へ物品を渡す。梱包サブシステム206では、物品を出荷可能な状態に梱包し、後に作業する出荷サブシステム207へ梱包した物品を渡す。梱包サブシステム206内には作業ステーションが複数あり、梱包サブシステム206内部にあるコンベアが、各ステーションに流す箱の量を決定している。作業ステーションには、汎用性の高い汎用性作業主体が作業を担うものと、ピッキングロボットおよび封函機からなる特化型作業主体が作業を担うものがある。特化型作業主体の作業ステーションに送ることのできる箱は限られており、箱の中の物品によっては汎用性作業主体の作業ステーションに送る必要がある。汎用性作業主体の作業ステーションは、すべての物品を扱うことができる。すなわち、汎用性作業主体の作業ステーションに多くの箱を送ったあと、汎用性作業主体でしか扱うことのできない箱が流れてきた際、その箱は汎用性作業主体の作業ステーションがあくまでコンベア上にまつこととなる。一方、汎用性作業主体が作業を行わない時間が長くなると梱包サブシステム206の性能は下がってしまう。コンベア上で箱がまってしまわないよう、かつ、汎用性作業主体が手待ちにならないよう、適度に汎用性作業主体の作業ステーションに箱を送ることが重要となる。出荷サブシステム207では、出荷可能な状態の物品を一時的に保持する、出荷先に対応するバッファに保持し、出荷が可能な状態になったら、例えば、出荷用のトラックが到着したら、物品を出荷する。
【0020】
前記物流倉庫制御システムの動作の流れについて、図3を用いて説明する。先ず、制御パラメータ決定部107が、オーダー管理部106から、少なくとも2つ以上のオーダーを入力として受け付ける(手順301)。次に、制御パラメータ決定部107が、受け付けたオーダーを用いてサブシステム群の制御パラメータを決定する(手順302)。図2に示す例においては、AGVピッキングサブシステム203のオーダーの同時処理範囲パラメータ、また、順建倉庫サブシステム205の出庫条件パラメータ、および梱包サブシステム206のコンベア動作パターンパラメータがそれぞれ決定されるパラメータにあたる。次に、制御パラメータ決定部107は、決定したパラメータをサブシステム群に入力として与える(手順303)。図2に示す例においては、AGVピッキングサブシステム203と順建倉庫サブシステム205と梱包サブシステム206がサブシステム群である。
【0021】
AGVピッキングサブシステムの生産性を上げるためには、同一の物品のIDを有するオーダーを同時にピッキングすることで、棚の搬送回数を減らすことが重要である。最も近い切り離し時刻のオーダーだけでなく、複数個先の切り離し時刻に出荷されるオーダーもまとめて処理することで、同一の物品のIDの商品をまとめてピッキングすることが有効である。前記同時処理範囲パラメータは、いくつ先の切り離し時刻に出荷される物品のオーダーまで同時に処理するかを表す値である。
【0022】
順建工程の生産性を上げるためには、通常のピッキングシステムの生産性の指標に基づき単位時間あたりにより多くの物品をピッキングするだけでなく、2つのピッキングシステム、即ちAGVピッキングサブシステム203とDPSピッキングサブシステム204において同一の出荷先のオーダーを同期して処理することにより、順建倉庫内部で物品が滞留する時間を低減することが重要である。
【0023】
また、順建倉庫は、ある程度荷合わせの終わった物品をまとめて出庫することで、梱包サブシステム以降の手待ち低減をすることが重要である。そこで、適切な出庫開始の条件、即ちある出荷先の物品が何割そろったら出庫を開始するかを設定することが重要である。前記出庫条件パラメータは、ある出荷先の物品が何割順建倉庫内にそろったら出庫を開始するかを表す値である。
【0024】
前述したように、複数個先の切り離し時刻に出荷されるオーダーをまとめて処理すると、順建倉庫においてある出荷先の物品が揃うのが遅れてしまい、順建倉庫から出庫できない物品がたまってしまうことがある。しかし、順建倉庫からの出庫の条件を適切に設定することで、順建倉庫以降の工程の手待ち時間を低減することができる。すなわち、適切に前記同時処理範囲パラメータを設定することでAGVピッキングサブシステム203の生産性を向上させ、かつ、適切に前記出庫条件パラメータを設定することで順建倉庫サブシステム205から、物品が揃うのが遅れる影響を受けない程度に早く出庫を開始することで、物流システムの生産性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、梱包サブシステム206では、順建倉庫サブシステム205から出庫される箱を、コンベアが、汎用性作業主体の作業ステーションに優先的に送る制御パターン、自動化されたステーションに優先的に送る制御パターン、また、ランダムにステーションを選択する制御パターンをとることができる。前記コンベア動作パターンパラメータは、前記制御パターンのうちどの制御パターンをとるかを示す値である。
【0026】
そこで、本発明を用いることで、何個先の切り離し時刻のオーダーまで同時に処理するかというパラメータ(整数値であり、1~最大で同時に処理可能な切り離し時刻の個数の値をとる)と、最も早い切り離し時刻で出荷する出荷箱のうち何割がそろったら順建倉庫から出庫を開始するかを示すパラメータ(0~100[%])を合わせて設定することができ、物流倉庫の性能が向上する。
【0027】
制御パラメータ決定部107は、実施の形態の1つとして、入力として与えられたオーダーを基に、物流システム201のシミュレータを用いて、前記同時処理範囲パラメータと、出庫条件パラメータのある組み合わせを入力した際の物流システム201の生産性を計算し、最も生産性の高くなると期待される前記パラメータの組み合わせを設定する制御パラメータとして選ぶ。制御パラメータの組み合わせのパターンは制御パラメータの数に対して指数関数的に多くなり、計算コストがかかりすぎるため、全ての組み合わせをシミュレータを用いて評価することはできない。そこで、評価する組み合わせを効果的に探索する方法の一例として、物流システムの過去の実績や、上流の工程の生産性の向上がない限り下流の工程の生産性の向上もないという一般的な性質を考慮して、一部のパラメータを、有用と期待されるいくつかの組み合わせに指定しておき、指定されていないパラメータをランダムに変えてシミュレータで評価することで、物流システム全体の生産性が高くなるパラメータの組み合わせを算出するという方法が挙げられる。
【0028】
上述してきたように、開示の物流倉庫制御システムは、物流システムに与えられる複数のオーダーを管理するオーダー管理部と、前記物流システムに含まれる複数の物流作業工程をそれぞれ担う複数のサブシステムについて、各サブシステムの動作に関するパラメータを前記複数のオーダーに基づいて決定するパラメータ決定部とを備え、前記パラメータ決定部は、決定したパラメータを前記サブシステムに入力し、当該パラメータが適用された状態で前記複数のオーダーを処理させることを特徴とする。
このように、物流倉庫制御システムがサブシステムを複数有する物流システムにおいて、2つ以上のサブシステムのパラメータの組み合わせを決定することにより、物流システムの生産性が向上する。
具体的には、物流倉庫制御システムが、サブシステム群のパラメータを決定する際に、所与の顧客からの注文を表すオーダーを基に、複数のサブシステムのパラメータの好適な組み合わせを決定し、サブシステムに入力として与える。これにより、単一のサブシステムの生産性を向上させるだけでなく、物流システム全体の生産性を向上させることができる。
【0029】
また、開示のシステムによれば、前記パラメータ決定部は、前記複数のサブシステムのパラメータの組み合わせについて前記物流システム全体の生産性を評価し、前記複数のサブシステムの各々に適用するパラメータを決定することを特徴とする。
このとき、前記パラメータ決定部は、前記物流システムにおける上流側のサブシステムを優先して前記パラメータを決定してもよいし、使用された実績のあるパラメータを優先して前記パラメータの組合せの探索範囲を削減してもよい。
かかる動作により、物流システム全体の生産性の向上を簡易な処理で実現できる。
【0030】
また、開示のシステムによれば、前記複数のサブシステムに、ピッキングシステム、順建倉庫、コンベアのうち少なくともいずれか1つを含む。
前記サブシステムのうち少なくとも1つにピッキングシステムを含むことで、物流倉庫の出庫工程の端緒となるピッキングの動作を他のシステムに合わせて調整することが可能となり、物流システムの生産性が向上する。
また、前記サブシステムのうち少なくとも1つが順建倉庫であることで、順建倉庫以降の工程への影響を適切に調整することが可能となり、物流システムの生産性が向上する。
また、前記サブシステムのうち少なくとも1つがコンベアを含むことにより、サブシステム内の作業の割り振りを適切に調整することが可能となり、物流システムの生産性が向上する。
【0031】
また、前記パラメータは、前記サブシステムにおけるマテリアルハンドリングの動作のトリガーとなる閾値を含む。これにより、順建倉庫サブシステム205の動作を適切に設定することで、物流システムの生産性が向上する。
【0032】
また、前記パラメータは、前記サブシステムの制御パターンを特定する識別情報を含む。これにより、サブシステムの動作を適切に調整することが可能になり、物流システムの生産性が向上する。
【0033】
また、前記パラメータ決定部が、前記パラメータに応じた前記物流システムの性能を出力する機能を有することで、操作者に性能を確認させて上でパラメータを確定させることができる。
【0034】
また、前記パラメータ決定部は、シミュレーションに基づくパラメータ空間の探索によって前記パラメータの組み合わせを決定することができる。シミュレータを用いて物流システムの生産性を計算することで、制御パラメータを適切に決定する上で必要な情報を準備することが可能となる。これは、シミュレータでなく、例えば物流システムの生産性を計算する機能を有する近似式やニューラルネットワークでもよい。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、実施の形態ではピッキングを基点とする物流システムを例示したが、順建倉庫を基点とするシステムに本発明を適用することも可能である。
また、作業主体の一部は作業者であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
101:物流システム、102~104:サブシステム、105:物流倉庫制御システム、106:オーダー管理部、107:制御パラメータ決定部、203:AGVピッキングサブシステム、204:DPSピッキングサブシステム、205:順建倉庫サブシステム、206:梱包サブシステム、207:出荷サブシステム
図1
図2
図3
図4