IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特開-作業車両 図1
  • 特開-作業車両 図2
  • 特開-作業車両 図3
  • 特開-作業車両 図4
  • 特開-作業車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086018
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/22 20060101AFI20230614BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230614BHJP
   B60L 58/33 20190101ALI20230614BHJP
【FI】
B60L7/22 G
E02F9/00 C
B60L58/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200388
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 佑太
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AB01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BE00
5H125CB03
5H125CD06
5H125EE27
5H125FF26
(57)【要約】
【課題】回生電力を消費することができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、電気モータと、走行体と、作動油タンクと、油圧ポンプと、アキュムレータとを備える。油圧ポンプは、走行体の制動によって生じる電気モータの回生電力で駆動し、作動油タンク内の作動油を圧送する。アキュムレータは、油圧ポンプから圧送される作動油の圧力を蓄積する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、
前記電気モータによって駆動される走行体と、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記走行体の制動によって生じる前記電気モータの回生電力で駆動し、前記作動油タンク内の作動油を圧送する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから圧送される作動油の圧力を蓄積するアキュムレータと
を備える作業車両。
【請求項2】
前記アキュムレータと前記油圧ポンプとを接続する第一流路と、
前記第一流路の中間部と前記作動油タンクとを接続する第二流路と、
前記第二流路に設けられ、前記電気モータが前記回生電力を出力し、かつ前記油圧ポンプが駆動している間、開状態に制御される電磁弁と、
前記電磁弁の下流に設けられた絞りと、
を備える請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記電気モータの回生電力で駆動し、前記絞りの下流において前記作動油を冷却する冷却装置
を備える請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
バッテリと、
前記電気モータの回生電力で前記バッテリを充電する充電装置と
を備え、
前記油圧ポンプは、前記バッテリの充電率が所定値以上になったときに駆動する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記電気モータに電力を供給する燃料電池と、
前記電気モータの回生電力で駆動し、前記燃料電池を冷却する冷却装置と
を備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
露天掘りの鉱山では、運搬車両を積載状態で長時間連続降坂することがある。このような場合に、降坂速度を一定に保つために、降坂の間、ブレーキを作動させ続ける必要が生じる。特許文献1には、制動によって生じた回生電力を、抵抗器(リターダグリッド)によって熱エネルギーに変換する電気駆動式ダンプトラックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-054117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回生電力をリターダグリッドによって熱に変換することで制動力を発揮させるためには、降坂で生じる大きなエネルギーを消費可能な大きなリターダグリッドが必要となる。大型ダンプトラックに搭載されるリターダグリッドは、プラットフォーム上に設置される。プラットフォームは、車体のうち前輪の上方に設けられた平板部分である。しかしながら、プラットフォームに、リターダグリッド以外の構造物を設置する場合、リターダグリッドを小型化することが好ましい。例えば、燃料電池により駆動する運搬車両のプラットフォームに水素タンクを設置するためには、プラットフォームにおけるリターダグリッドが占める割合を減らすことが好ましい。リターダグリッドの小型化のためには、リターダグリッドに消費させる電力を低減する必要がある。
【0005】
本開示の目的は、回生電力を消費することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、作業車両は、電気モータと、前記電気モータによって駆動される走行体と、作動油を貯留する作動油タンクと、前記走行体の制動によって生じる前記電気モータの回生電力で駆動し、前記作動油タンク内の作動油を圧送する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから圧送される作動油の圧力を蓄積するアキュムレータとを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、作業車両は回生電力を消費することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
図2】第一の実施形態に係る運搬車両が備える油圧システムの構成を示す概略ブロック図である。
図3】第一の実施形態に係る運搬車両が備える電動システムの構成を示す概略ブロック図である。
図4】第一の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図5】第一の実施形態に係る制御装置によるリターダ制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第一の実施形態〉
《運搬車両10の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
第一の実施形態に係る運搬車両10は、鉱山等で採掘した砕石物等を運搬するリジッドフレーム式のダンプトラックである。運搬車両10は、水素ガスを燃料とする燃料電池41によって駆動する。運搬車両10は、作業車両の一例である。
図1は、第一の実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、ダンプボディ11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0010】
ダンプボディ11は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ダンプボディ11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ダンプボディ11が下降している姿勢をいう。
【0011】
ダンプ動作とは、ダンプボディ11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ11の前端部を上昇させて、ダンプボディ11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0012】
下げ動作とは、ダンプボディ11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ11の前端部を下降させることを含む。
【0013】
排土作業を実施する場合、ダンプボディ11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ダンプボディ11は、積載姿勢に調整される。
【0014】
車体12は、図示しない車体フレームを含む。車体12は、車体フレームに設けられたヒンジピンを介してダンプボディ11を回転可能に支持する。車体12は、走行装置13に支持される。車体フレームのうち走行装置13の前輪の上部に、プラットフォーム121が設けられる。プラットフォーム121は、車体フレームの上面を構成する平板である。プラットフォーム121の上には、運転室122、コントロールキャビネット123、およびリターダグリッド46が設けられる。また、車体フレーム上には、燃料電池41が設けられる。車体12の前面のうち、燃料電池41の前方部分には開口部が設けられており、開口部にグリル124が設けられている。グリル124と燃料電池41との間には、燃料電池41を冷却するためのファン125が設けられる。ファン125は、グリル124を介して外気を車体フレーム内部に引き込むことで、燃料電池41を冷却する。
【0015】
コントロールキャビネット123は、電力の変換を行う。具体的には、コントロールキャビネット123は、燃料電池41と各種モータとリターダグリッド46との間の電力制御を行う。
リターダグリッド46は、走行装置13の制動によって発生する回生電力を吸収するための抵抗器である。リターダグリッド46は、回生電力を熱エネルギーに変換する。
【0016】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。
【0017】
《油圧システム20の構成》
図2は、第一の実施形態に係る運搬車両10が備える油圧システム20の構成を示す概略ブロック図である。
運搬車両10の油圧システム20は、図2に示すように、作動油タンク21、油圧ポンプ22、アキュムレータ23、コントロールバルブ25、ステアリングシリンダ26、作業機シリンダ27を備える。
【0018】
油圧ポンプ22の吐出口は、第一流路P1を介してアキュムレータ23に接続される。第一流路P1には、第一逆止弁28が設けられる。第一逆止弁28は、油圧ポンプ22からアキュムレータ23への作動油の流れを許容し、アキュムレータ23から油圧ポンプ22へ向かう作動油の流れをせき止める。これにより、油圧ポンプ22が出力する作動油の圧力はアキュムレータ23に蓄積される。
【0019】
油圧システム20は、第一流路P1のうちアキュムレータ23と第一逆止弁28との中間部と、作動油タンク21とを接続する第二流路P2を備える。第二流路P2には、第一流路P1側から順に、2ポート電磁弁29、絞り30、第二逆止弁31、オイルクーラ32が設けられる。2ポート電磁弁29は、第一流路P1を導通および遮断を切り替え可能に構成される。なお、2ポート電磁弁29は、回生電力が発生し、かつ油圧ポンプ22が稼働しているときに、第一流路P1を導通させる。絞り30は、第一流路P1を流れる作動油の流量を制限し、圧力損失を発生させる。絞り30を通過する作動油は、圧力損失によって温度が上昇する。第二逆止弁31は、第一流路P1から作動油タンク21への作動油の流れを許容し、作動油タンク21から第一流路P1へ向かう作動油の流れをせき止める。オイルクーラ32は、冷媒との熱交換により第二流路P2を流れる作動油を冷却する。オイルクーラ32の冷媒は、ラジエータ35によって冷却される。ラジエータ35は、図1に示すグリル124とファン125の間に設けられる。つまり、第一の実施形態に係るファン125は、燃料電池41を冷却する冷却装置であり、作動油を冷却する冷却装置でもある。
【0020】
油圧システム20は、第一流路P1のうち油圧ポンプ22と第一逆止弁28との中間部と、第二流路P2のうちオイルクーラ32と第二逆止弁31との中間部とを接続する第三流路P3を備える。第三流路P3には、リリーフ弁33と流量計34とが設けられる。リリーフ弁33は、第一流路P1の圧力が所定のリリーフ圧を超えたときに開く。これにより、アキュムレータ23の圧力はリリーフ圧以下に保たれる。またリリーフ弁33は、第一流路P1の圧力が所定の圧を下回ったときに閉じる。これにより、アキュムレータ23の圧力は所定圧以上に保たれる。流量計34は、第三流路P3に流れる作動油の流量を計測する。
【0021】
コントロールバルブ25は、第一流路P1のうちアキュムレータ23と第一逆止弁28との中間部に接続される。
【0022】
コントロールバルブ25は、オペレータによる図示しない操作装置の操作に応じて、ステアリングシリンダ26および作業機シリンダ27に供給する作動油の流量を調整する。
ステアリングシリンダ26は、走行装置13の前輪の角度を変化させることで、走行装置13の走行方向を制御する。コントロールバルブ25の第一ポートは、第一流路P1のうちアキュムレータ23と第一逆止弁28との中間部に接続される。第一ポートには、油圧ポンプ22およびアキュムレータ23のうち圧力の高い方から作動油が供給される。コントロールバルブ25の第二ポートは、作動油タンク21に接続される。作動油タンク21へは、ステアリングシリンダ26および作業機シリンダ27からの戻りの作動油が、第二ポートを介して供給される。コントロールバルブ25の第三ポートと第四ポートは、ステアリングシリンダ26に接続される。コントロールバルブ25の第五ポートと第六ポートは、作業機シリンダ27に接続される。
作業機シリンダ27は、ヘッドがダンプボディ11に取り付けられ、ロッドが車体12に取り付けられる。作業機シリンダ27が伸縮することで、車体12に対するダンプボディ11の姿勢が変化する。つまり、作業機シリンダ27を駆動させることで、ダンプボディ11のダンプ動作および下げ動作を実現することができる。
【0023】
《電動システム40の構成》
図3は、第一の実施形態に係る運搬車両10が備える電動システム40の構成を示す概略ブロック図である。電動システム40は、燃料電池41、バッテリ42、ポンプモータ43、ファンモータ44、走行モータ45、リターダグリッド46、第一DCDCコンバータ47、第二DCDCコンバータ48、第三DCDCコンバータ49、第四DCDCコンバータ50、インバータ51、制御装置60を備える。第一DCDCコンバータ47、第二DCDCコンバータ48、第三DCDCコンバータ49、第四DCDCコンバータ50、インバータ51および制御装置60は、コントロールキャビネット123内に設けられる。
【0024】
燃料電池41は、図示しない水素タンクから供給される水素ガスと、外気に含まれる酸素とを反応させ、電力を発生させる。第一DCDCコンバータ47は、燃料電池41が生成した直流電力を母線Bに供給する。
第二DCDCコンバータ48は、バッテリ42に充電された電力を母線Bに供給する。また第二DCDCコンバータ48は、母線Bに流れる直流電力の電圧を調整してバッテリ42に供給することで、バッテリ42を充電させる。つまり、第二DCDCコンバータ48は、充電装置の一例である。バッテリ42は、バッテリ42の状態を監視する図示しないBMU(Battery Management Unit)を備える。BMUは、バッテリ42の充電率を計測し、制御装置60に計測データを出力する。
ポンプモータ43は、図2に示す油圧ポンプ22を駆動させる。第三DCDCコンバータ49は、母線Bに流れる直流電力の電圧を調整してポンプモータ43に供給する。
ファンモータ44は、図1に示すファン125を駆動させる。第四DCDCコンバータ50は、母線Bに流れる直流電力の電圧を調整してファンモータ44に供給する。
走行モータ45は、走行装置13を駆動させる三相交流電気モータである。インバータ51は、母線Bに流れる直流電力を三相交流電力に変換して走行モータ45に供給する。また、インバータ51は、走行装置13の制動によって走行モータ45に発生する回生電力を直流電力に変換して、母線Bに供給する。走行モータ45には電圧計52が設けられる。電圧計52は、走行モータ45に係る電圧を計測する。電圧計52は、計測データを制御装置60に送信する。
【0025】
制御装置60は、流量計34、バッテリ42のBMUおよび電圧計52から受信した計測データに基づいて、第一DCDCコンバータ47、第二DCDCコンバータ48、第三DCDCコンバータ49、第四DCDCコンバータ50およびインバータ51、ならびに図2に示す2ポート電磁弁29を制御する。
【0026】
《制御装置60の構成》
図4は、第一の実施形態に係る制御装置60の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置60は、プロセッサ61、メインメモリ62、ストレージ63、インタフェース64を備えるコンピュータである。
プロセッサ61は、プログラムをストレージ63から読み出してメインメモリ62に展開し、当該プログラムに従って処理を実行する。プロセッサ61の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0027】
プログラムは、制御装置60に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、制御装置60は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ61によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0028】
ストレージ63の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ63は、バスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース64または通信回線を介して制御装置60に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によって制御装置60に配信される場合、配信を受けた制御装置60が当該プログラムをメインメモリ62に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ63は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0029】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ63に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0030】
《制御装置によるリターダ制御》
図5は、制御装置60によるリターダ制御を示すフローチャートである。制御装置60は、一定周期ごとに図5に示すリターダ制御を実行する。
まず、制御装置60は、電圧計52から受信した計測データに基づいて、走行モータ45に回生電力が発生しているか否かを判定する(ステップS1)。制御装置60は、例えば電圧値の符号により、回生電力の有無を判定する。回生電力が発生していない場合(ステップS1:NO)、制御装置60はリターダ制御を終了する。
【0031】
他方、回生電力が発生している場合(ステップS1:YES)、制御装置60は、バッテリ42のBMUから受信した計測データに基づいて、バッテリ42の充電率が上限値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。バッテリ42の充電率が上限値未満である場合(ステップS2:NO)、制御装置60は、第二DCDCコンバータ48にバッテリ42の充電指示を出力する(ステップS3)。これにより、制御装置60は、回生電力をバッテリ42に吸収させ、リターダグリッド46で消費する電力を低減することができる。したがって、バッテリ42の充電率が上限値未満である場合、制御装置60は、リターダ制御を終了する。
【0032】
他方、バッテリ42の充電率が上限値以上である場合(ステップS2:YES)、制御装置60は、第三DCDCコンバータ49に、ポンプモータ43の駆動指示を出力する(ステップS4)。これにより、ポンプモータ43が油圧ポンプ22を駆動させる。
【0033】
次に、制御装置60は、流量計34の計測データに基づいて、第三流路P3に作動油が流れているか否かを判定する(ステップS5)。第三流路P3に作動油が流れていない場合(ステップS5:NO)、油圧ポンプ22によってアキュムレータ23に作動油の圧力が蓄積されていることが分かる。この場合、ポンプモータ43は、アキュムレータ23への蓄圧によって生じる負荷によって、回生電力を吸収することができる。したがって、第三流路P3に作動油が流れていない場合(ステップS5:NO)、制御装置60は、リターダ制御を終了する。
【0034】
他方、第三流路P3に作動油が流れている場合(ステップS5:YES)、アキュムレータ23の圧力がリリーフ弁33のリリーフ圧を超え、アキュムレータ23にこれ以上の圧力の蓄積ができないことが分かる。第三流路P3に作動油が流れている場合(ステップS5:YES)、制御装置60は、2ポート電磁弁29を励磁させ(ステップS6)、第二流路P2への作動油の流通を開始させる。また制御装置60は、第四DCDCコンバータ50に、ファンモータ44の駆動指示を出力する(ステップS7)。これにより、ポンプモータ43は、絞り30によって生じる負荷によって、回生電力を吸収することができる。また、ファンモータ44も、回生電力を吸収することができる。また、ファン125の回転によりラジエータ35を介してオイルクーラ32の冷媒が冷却されることで、絞り30によって温度が上がった作動油を冷却することができる。
【0035】
《作用・効果》
このように、第一の実施形態に係る運搬車両10の制御装置60は、走行装置13の制動によって生じる走行モータ45の回生電力によって油圧ポンプ22を稼働させ、アキュムレータ23に作動油の圧力を蓄積させる。これにより、運搬車両10は、油圧ポンプ22によるアキュムレータ23の蓄圧によって回生電力を回収することができる。アキュムレータ23に蓄積された油圧エネルギーは、コントロールバルブ25を介してステアリングシリンダ26や作業機シリンダ27の駆動に用いることができる。
【0036】
また、第一の実施形態に係る運搬車両10は、走行モータ45が回生電力を出力し、かつ油圧ポンプ22が駆動しているときに、開状態に制御される2ポート電磁弁29と、2ポート電磁弁29の下流に設けられた絞り30とを備える。これにより、アキュムレータ23への圧力の充填が終わっても、絞り30における作動油の圧力損失によって回生電力を熱エネルギーに変換することができる。また、回生電力が発生していない場合や、バッテリ42によって回生電力が回収されている場合に、2ポート電磁弁29を閉じることで、アキュムレータ23に蓄積された圧力が無用に消費されることを防ぐことができる。なお、他の実施形態に係る運搬車両10は、第二流路P2を備えないものであってもよい。
【0037】
また、第一の実施形態に係る運搬車両10は、走行モータ45の回生電力で駆動し、絞り30の下流において作動油を冷却するオイルクーラ32を備える。これにより、運搬車両10は、回生電力をオイルクーラ32の駆動によって回収し、さらに圧力損失によって上昇した作動油の温度を低下させることができる。なお、他の実施形態に係る運搬車両10は、オイルクーラ32を備えないものであってもよい。また、第一の実施形態に係るオイルクーラ32は、ファン125およびラジエータ35によって冷却された冷媒によって作動油を冷却するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るオイルクーラ32は、冷媒の圧縮および膨張によって冷媒の熱を移動させる冷凍機であってもよい。この場合、冷凍機に含まれる圧縮機は回生電力によって駆動される。
【0038】
また、第一の実施形態に係る運搬車両10は、回生電力でバッテリ42を充電する第二DCDCコンバータ48を備え、制御装置60がバッテリ42の充電率が上限値以上になったときに油圧ポンプ22を駆動させる。これにより、運搬車両10は、バッテリ42の充電とアキュムレータ23の蓄圧の二段階で回生電力を吸収することができる。
【0039】
また、第一の実施形態に係る運搬車両10のファン125は、走行モータ45の回生電力で駆動し、燃料電池41を冷却する。これにより、ファン125の回転によって回生電力を吸収することができる。なお、第一の実施形態に係る制御装置60は、バッテリ42の充電率が上限値以上であり、かつアキュムレータ23の圧力がリリーフ圧以上である場合にファン125を回転させるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置60は、走行モータ45が回生電力を発生させた場合に、バッテリ42の充電率およびアキュムレータ23の圧力によらず、ファンモータ44を駆動させてもよい。
【0040】
上述したように、第一の実施形態に係る運搬車両10は、リターダグリッド46に消費させる回生電力を低減することができる。運搬車両10の走行ルートが予め分かる場合、リターダグリッド46の大きさを、バッテリ42、アキュムレータ23、絞り30、オイルクーラ32およびファン125によって吸収可能な電力量に基づいて設計することができる。これにより、リターダグリッド46を小型化することができ、プラットフォーム121に他の構造物の設置スペースを確保することができる。プラットフォーム121に設ける他の構造物の例としては、燃料電池41に供給する水素ガスが充填された水素タンクなどが挙げられる。
【0041】
なお、油圧ポンプ22およびアキュムレータ23は、電動の運搬車両10に広く搭載される構成であるため、既存の運搬車両10を改造することで、容易に第一の実施形態に係る運搬車両10を製造することができる。
【0042】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る制御装置60は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置60の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置60として機能するものであってもよい。
【0043】
上述した実施形態では、作業機械の例として運搬車両10について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械は、油圧ショベル、ホイールローダ、モータグレーダなどの他の作業機械であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…運搬車両 11…ダンプボディ 12…車体 121…プラットフォーム 122…運転室 123…コントロールキャビネット 124…グリル 125…ファン 13…走行装置 20…油圧システム 21…作動油タンク 22…油圧ポンプ 23…アキュムレータ 25…コントロールバルブ 26…ステアリングシリンダ 27…作業機シリンダ 28…第一逆止弁 29…2ポート電磁弁 30…絞り 31…第二逆止弁 32…オイルクーラ 33…リリーフ弁 34…流量計 35…ラジエータ 40…電動システム 41…燃料電池 42…バッテリ 43…ポンプモータ 44…ファンモータ 45…走行モータ 46…リターダグリッド 47…第一DCDCコンバータ 48…第二DCDCコンバータ 49…第三DCDCコンバータ 50…第四DCDCコンバータ 51…インバータ 52…電圧計 60…制御装置 61…プロセッサ 62…メインメモリ 63…ストレージ 64…インタフェース B…母線 P1…第一流路 P2…第二流路 P3…第三流路
図1
図2
図3
図4
図5