(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086042
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/30 20200101AFI20230614BHJP
D06F 33/57 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/70 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/72 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/54 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/50 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/34 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/37 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/44 20200101ALI20230614BHJP
D06F 33/46 20200101ALI20230614BHJP
【FI】
D06F33/30
D06F33/57
D06F33/70
D06F33/72
D06F33/54
D06F33/50
D06F33/34
D06F33/37
D06F33/44
D06F33/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200431
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】大槻 太郎
(72)【発明者】
【氏名】三▲崎▼ 日奈子
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
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(57)【要約】
【課題】ユーザが優先する性能を考慮した洗濯運転を行え得る洗濯機を提供する。
【解決手段】全自動洗濯機1は、複数の性能、即ち、洗剤節約性能、節水性能、時短性能および傷み低減性能の中から優先する性能を選択する操作を受け付ける操作表示部72と、洗濯運転の際、優先する性能として選択された性能に基づいて、洗濯運転に係る複数のパラメータの値、即ち、洗剤量、水量、水流の強さ、洗い時間、すすぎ時間および脱水時間を設定する制御部101と、を備える。制御部101は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、優先する性能として洗剤節約性能が選択されていないときには、少なくとも洗剤量を増加させ、優先する性能として洗剤節約性能が選択されているときには、洗剤量を増加させずに、少なくとも一つの他のパラメータの値を、洗浄性能が高まるように設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽内で洗濯物を洗濯する洗濯機において、
複数の性能の中から優先する性能を選択する操作を受け付ける操作受付部と、
洗濯運転の際、前記優先する性能として選択された性能に基づいて、前記洗濯運転に係る複数のパラメータの値を設定する制御部と、
を備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記複数の性能には、洗剤節約性能が含まれ、
前記複数のパラメータには、洗剤量が含まれ、
前記制御部は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、
前記優先する性能として前記洗剤節約性能が選択されていないときには、少なくとも前記洗剤量を増加させ、
前記優先する性能として前記洗剤節約性能が選択されているときには、前記洗剤量を増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記洗浄性能が高まるように設定する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗濯機において、
前記複数の性能には、時短性能が含まれ、
前記複数のパラメータには、洗濯物を洗う洗い時間が含まれ、
前記制御部は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、
前記優先する性能として前記時短性能が選択されていないときには、少なくとも前記洗い時間を増加させ、
前記優先する性能として前記時短性能が選択されているときには、前記洗い時間を増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記洗浄性能が高まるように設定する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の洗濯機において、
前記複数の性能には、洗濯物の傷みを低減する傷み低減性能が含まれ、
前記複数のパラメータには、前記洗濯槽内に生じる水流の強さが含まれ、
前記制御部は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、
前記優先する性能として前記傷み低減性能が選択されていないときには、少なくとも前記水流の強さを増加させ、
前記優先する性能として前記傷み低減性能が選択されているときには、前記水流の強さ増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記洗浄性能が高まるように設定する、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の洗濯機において、
前記複数の性能には、節水性能が含まれ、
前記複数のパラメータには、前記洗濯槽内の水量が含まれ、
前記制御部は、すすぎ性能が低下し得る条件が満たされている場合に、
前記優先する性能として前記節水性能が選択されていないときには、少なくとも前記水量を増加させ、
前記優先する性能として前記節水性能が選択されているときには、前記水量を増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記すすぎ性能が高まるように設定する、
ことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使用される水の温度、硬度など、洗濯に関連する環境情報をセンサにより検出して利用したり、運転内容を記憶して次回の運転に反映させたりすることにより、運転内容の最適化を図り、一定レベルの洗浄性能を確保するようにした運転コースが、洗濯機において採用されている。特許文献1には、過去の洗濯運転の内容を記憶する洗濯機の一例が示されている。
【0003】
運転内容を最適化する過程では、洗濯運転に係る複数のパラメータ、たとえば、洗剤量、水流の強さ、洗い時間が、洗浄性能が向上するように、適宜、増やされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄性能を高めるために、あるパラメータが増やされた場合、一方で、そのパラメータが関わる他の性能が低下し得る。たとえば、洗剤量が増加すれば、洗剤を節約する洗剤節約性能が低下し得る。また、水流の強さが増加すれば、洗濯物の傷みを低減する傷み低減性能が低下し得る。さらに、洗い時間が増加すれば、運転時間を短くする時短性能が低下し得る。
【0006】
よって、他の何れかの性能を重要視するユーザにとって、洗浄性能を高めようとする結果、重要視する性能が低下するのでは、有益性が薄れてしまい得る。
【0007】
そこで、本発明は、ユーザが優先する性能を考慮した洗濯運転を行え得る洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様は、洗濯槽内で洗濯物を洗濯する洗濯機に関する。本態様に係る洗濯機は、複数の性能の中から優先する性能を選択する操作を受け付ける操作受付部と、洗濯運転の際、前記優先する性能として選択された性能に基づいて、前記洗濯運転に係る複数のパラメータの値を設定する制御部と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、優先する性能として選択された性能の低下を抑制しつつ、一定レベルの洗浄性能やすすぎ性能を確保することが可能となる。
【0010】
本態様に係る洗濯機において、前記複数の性能には、洗剤節約性能が含まれ、前記複数のパラメータには、洗剤量が含まれるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、前記優先する性能として前記洗剤節約性能が選択されていないときには、少なくとも前記洗剤量を増加させ、前記優先する性能として前記洗剤節約性能が選択されているときには、前記洗剤量を増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記洗浄性能が高まるように設定するような構成とされ得る。
【0011】
上記の構成によれば、ユーザが優先する洗剤節約性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0012】
本態様に係る洗濯機において、前記複数の性能には、時短性能が含まれ、前記複数のパラメータには、洗濯物を洗う洗い時間が含まれるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、前記優先する性能として前記時短性能が選択されていないときには、少なくとも前記洗い時間を増加させ、前記優先する性能として前記時短性能が選択されているときには、前記洗い時間を増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記洗浄性能が高まるように設定するような構成とされ得る。
【0013】
上記の構成によれば、ユーザが優先する時短性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0014】
本態様に係る洗濯機において、前記複数の性能には、洗濯物の傷みを低減する傷み低減性能が含まれ、前記複数のパラメータには、前記洗濯槽内に生じる水流の強さが含まれるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、洗浄性能が低下し得る条件が満たされている場合に、前記優先する性能として前記傷み低減性能が選択されていないときには、少なくとも前記水流の強さを増加させ、前記優先する性能として前記傷み低減性能が選択されているときには、前記水流の強さ増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記洗浄性能が高まるように設定するような構成とされ得る。
【0015】
上記の構成によれば、ユーザが優先する傷み低減性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0016】
本態様に係る洗濯機において、前記複数の性能には、節水性能が含まれ、前記複数のパラメータには、前記洗濯槽内の水量が含まれるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、すすぎ性能が低下し得る条件が満たされている場合に、前記優先する性能として前記節水性能が選択されていないときには、少なくとも前記水量を増加させ、前記優先する性能として前記節水性能が選択されているときには、前記水量を増加させずに、少なくとも一つの他の前記パラメータの値を、前記すすぎ性能が高まるように設定するような構成とされ得る。
【0017】
上記の構成によれば、ユーザが優先する節水性能の低下を抑制しつつ、すすぎ性能の低下を抑制できる。
【0018】
なお、たとえば、洗浄性能が低下し得る条件として、使用する水の硬度が規定硬度よりも高いこと、使用する水の温度が規定温度よりも低いことが挙げられる。また、たとえば、すすぎ性能が低下し得る条件として、洗濯物に洗剤が多く含まれる結果、洗濯槽内の水の中の洗剤濃度が規定濃度より高くなることが挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザが優先する性能を考慮した洗濯運転を行え得る洗濯機を提供できる。
【0020】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の側面断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る、給水ユニットの構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る、優先する性能を設定するために制御部により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る、性能選択画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る、負荷量検出工程において制御部により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る、水硬度・水温測定工程において制御部により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る、洗剤濃度測定工程において制御部により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の洗濯機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
【0024】
全自動洗濯機1は、外郭を構成する筐体10を備える。筐体10は、上下の面が開放された方形筒状の胴体部11と、胴体部11の上面を覆う上面板12と、胴体部11を支持する脚台13とを含む。上面板12には、洗濯物の投入口14が形成される。投入口14は、開閉自在な上蓋15により覆われる。上面板12の前部には、内部に制御ユニット16が配置される。制御ユニット16は、洗濯運転を制御する。
【0025】
筐体10内には、上面が開口する外槽20が、防振装置を有する4本の吊棒21により弾性的に吊り下げ支持される。外槽20内には、洗濯脱水槽22が配置される。洗濯脱水槽22は、上面が開口し、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する。洗濯脱水槽22の内周面には、全周に亘って多数の脱水孔22aが形成される。洗濯脱水槽22の上部には、バランスリング23が設けられる。洗濯脱水槽22の底部には、パルセータ24が配置される。パルセータ24の表面には、放射状に複数の羽根24aが設けられる。なお、外槽20および洗濯脱水槽22は、本発明の洗濯槽を構成する。
【0026】
外槽20の外底部には、洗濯脱水槽22およびパルセータ24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配置される。駆動ユニット30は、駆動モータ31と、伝達機構部32とを含む。伝達機構部32は、クラッチ機構32aを有し、当該クラッチ機構32aによる切替操作により、洗い工程およびすすぎ工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24のみに伝達してパルセータ24のみを回転させ、脱水工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24および洗濯脱水槽22に伝達してパルセータ24および洗濯脱水槽22を一体的に回転させる。
【0027】
外槽20の外底部には、排水口部20aが形成される。排水口部20aには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、洗濯脱水槽22および外槽20に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0028】
上面板12の後部には、外槽20および洗濯脱水槽22内に水道水を供給するための給水ユニット50が配置される。
【0029】
図2は、給水ユニット50の構成を示す概略図である。
【0030】
給水ユニット50は、給水バルブ51を有する。給水バルブ51は、いわゆる2連バルブであり、電磁バルブであるメインバルブ52とサブバルブ53とを有する。給水バルブ51の入水口51aは、図示しない給水ホースを介して水道栓に接続される。メインバルブ52の出口には、メイン給水路54が接続される。メイン給水路54は、洗濯脱水槽22の上部に位置する注水ボックス55に接続される。注水ボックス55の底面には、注水口55aが形成される。
【0031】
給水ユニット50には、洗濯脱水槽22内に洗剤を自動投入するための自動投入機構60が含まれる。
【0032】
自動投入機構60は、洗剤タンク61と、供給パイプ62と、三方バルブ63と、サブ給水路64と、洗剤供給路65と、供給ポンプ66とを備える。給水バルブ51のサブバルブ53も、自動投入機構60に含まれる。
【0033】
洗剤タンク61には、液体洗剤が原液の状態で貯留される。供給パイプ62は、洗剤タンク61の液体洗剤を三方バルブ63の一方の入口へと導く。
【0034】
サブ給水路64は、サブバルブ53の出口と三方バルブ63の他方の入口とに接続される。
【0035】
三方バルブ63の出口に洗剤供給路65が接続される。洗剤供給路65は、注水ボックス55に接続される。
【0036】
三方バルブ63は、供給パイプ62を洗剤供給路65に連通させる状態と、サブ給水路64を洗剤供給路65に連通させる状態との間で切り替えることができる。
【0037】
供給ポンプ66は、洗剤供給路65に配置される。供給ポンプ66は、たとえば、ピストン式ポンプとすることができる。
【0038】
図3は、全自動洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0039】
全自動洗濯機1は、上述した構成に加え、電源ボタン71と、操作表示部72と、水硬度センサ81と、水温センサ82と、水位センサ83とを備える。また、制御ユニット16は、制御部101、記憶部102、モータ駆動部103、クラッチ駆動部104、給水駆動部105、切替駆動部106、ポンプ駆動部107および排水駆動部108を含む。
【0040】
電源ボタン71は、全自動洗濯機1に対して電源の投入および遮断を行うためのボタンである。
【0041】
操作表示部72は、たとえば、タッチパネルであり、各種の画面を表示して画面に対する操作を受け付ける。たとえば、操作表示部72には、洗濯運転に係る複数の運転コースの中から任意の運転コースを選択し、開始するための操作画面が表示される。また、操作表示部72には、後述する性能選択画面が表示され、当該画面上において、予め定められた複数の性能の中から優先する性能を選択する操作が受け付けられる。操作表示部72は、本発明の操作受付部に相当する。
【0042】
水硬度センサ81は、一対の電極を含む導電率センサであり、外槽20内の底部に設置され、外槽20内に溜められた水、即ち、洗濯運転に使用される水の硬度に応じた導電率を検出する。検出された導電率に対応する検出信号が、制御部101に出力される。水硬度センサ81は、給水ユニット50のメイン給水路54に設置され、メイン給水路54を流れる水の導電率、即ち硬度を検出するようにしてもよい。
【0043】
水硬度センサ81は、後述するように、すすぎ工程では、外槽20内に溜められた水に含まれる洗剤の濃度を検出する洗剤濃度センサとして機能する。洗剤濃度に応じて、検出される水の導電率が変化する。洗い工程の前における、洗剤が含まれていない状態で検出された水の導電率、即ち水の硬度に応じた導電率と、すすぎ工程における、洗剤が含まれた状態で検出された水の導電率、即ち水の硬度と洗剤濃度とに応じた導電率との差分値を求めることにより、洗剤濃度を検出できる。
【0044】
水温センサ82は、サーミスタであり、外槽20内の底部に設置され、外槽20内に溜められた水、即ち、洗濯運転に使用される水の温度を検出する。検出された水温に対応する検出信号が、制御部101に出力される。水温センサ82は、給水ユニット50のメイン給水路54に設置され、メイン給水路54を流れる水の温度を検出するようにしてもよい。
【0045】
なお、水の硬度や水温は、洗濯に関連する環境情報であり、水硬度センサ81や水温センサ82は、環境情報を検出するためのセンサである。
【0046】
水位センサ83は、洗濯脱水槽22内、即ち外槽20内の水位を検出し、検出した水位に応じた検出信号を制御部101に出力する。
【0047】
モータ駆動部103は、制御部101から出力された制御信号に従って、駆動モータ31を駆動する。モータ駆動部103は、駆動モータ31の回転数を検出する回転センサ、インバータ回路等を含み、制御部101により設定された回転数で駆動モータ31が回転するよう、駆動電力を調整する。
【0048】
クラッチ駆動部104は、制御部101から出力された制御信号に従って、伝達機構部32のクラッチ機構32aを駆動する。給水駆動部105は、制御部101からの制御信号に従って、給水バルブ51を駆動する。切替駆動部106は、制御部101からの制御信号に従って、三方バルブ63を駆動する。ポンプ駆動部107は、制御部101からの制御信号に従って、供給ポンプ66を駆動する。排水駆動部108は、制御部101からの制御信号に従って、排水バルブ40を駆動する。
【0049】
記憶部102は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部102には、各種運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部102には、洗濯運転に用いられる各種の運転条件、即ち洗濯運転に係るパラメータが記憶される。
【0050】
制御部101は、CPU等を含み、記憶部102に記憶されたプログラムに従い、モータ駆動部103、クラッチ駆動部104、給水駆動部105、切替駆動部106、ポンプ駆動部107、排水駆動部108等を制御する。
【0051】
全自動洗濯機1では、各種運転コースの洗濯運転を行うことができる。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。すすぎ工程は、中間脱水工程を挟んで2回行われることが多い。
【0052】
洗い工程およびすすぎ工程では、洗濯脱水槽22内に水が溜められた状態で、パルセータ24が右方向および左方向に回転する。パルセータ24の回転により洗濯脱水槽22内に水流が発生する。洗い工程では、発生した水流と水に含まれる洗剤とにより洗濯物が洗われる。すすぎ工程では、発生した水流により洗濯物がすすがれる。なお、パルセータ24の回転数が高いほど、また、オン時間が長いほど、発生する水流が強くなる。
【0053】
すすぎ工程として、溜めすすぎ工程または注水すすぎ工程が行われ得る。洗い工程および溜めすすぎ工程では、洗濯脱水槽22内の洗濯物の負荷量に応じて設定された水量の水が外槽20内に溜められる。注水すすぎ工程では、当該工程が終了するまで外槽20内への給水が継続され、外槽20の上部に設けられた溢水口から水が排出される。
【0054】
中間脱水工程および最終脱水工程では、洗濯脱水槽22およびパルセータ24が一体となって高速回転する。洗濯脱水槽22に発生する遠心力の作用により、洗濯物が脱水される。
【0055】
洗い工程での給水時には、自動投入機構60により、洗濯脱水槽22内に液体洗剤が自動投入される。この際、まず、三方バルブ63が、供給パイプ62を洗剤供給路65に連通させる状態に切り替えられる。供給ポンプ66が作動すると、ポンプ作用によって、
図2の破線矢印に示すように、洗剤タンク61内の液体洗剤が洗剤供給路65に排出される。供給ポンプ66は、予め決められた時間だけ動作し、これにより、予め決められた量の液体洗剤が洗剤供給路65に溜まる。
【0056】
次に、三方バルブ63が、サブ給水路64を洗剤供給路65に連通させる状態に切り替えられ、メインバルブ52とサブバルブ53とが開かれる。水道栓からの水がメイン給水路54を流れて注水ボックス55の注水口55aから洗濯脱水槽22内に放出される。同時に、
図2の実線矢印に示すように、水道栓からの水が、サブ給水路64、三方バルブ63を通って洗剤供給路65へと流れ、液体洗剤を押し流す。水に押し流された液体洗剤は、
図2の一点鎖線矢印に示すように、水とともに洗剤供給路65を流れ、注水口55aから洗濯脱水槽22内へ投入される。洗濯脱水槽22内の水位が、設定された水量に対応する設定水位に到達すると、メインバルブ52とサブバルブ53が閉じられて、給水が終了する。
【0057】
さて、本実施の形態の全自動洗濯機1では、洗い工程の前に、負荷量検出工程と、水硬度・水温測定工程とが実行される。また、溜めすすぎ工程の給水が完了した段階において、洗剤濃度測定工程が実行される。
【0058】
負荷量検出工程では、洗濯脱水槽22内の洗濯物の負荷量が検出され、検出された負荷量に応じて、洗濯運転に係る複数のパラメータの値が設定される。水硬度・水温測定工程では、洗濯運転に使用される水の硬度と水温とが測定され、当該測定の結果に基づいて、負荷量検出工程において値が設定されたパラメータの一部について、その値が変更、即ち再設定される。洗剤濃度測定工程では、溜めすすぎ工程で外槽20内に溜められた水に含まれる洗剤の濃度が測定され、当該測定の結果に基づいて、負荷量検出工程において値が設定されたパラメータの一部について、その値が再設定される。
【0059】
本実施の形態では、上記パラメータに、洗い工程で洗濯脱水槽22内に投入される液体洗剤の洗剤量A、洗い工程およびすすぎ工程で外槽20内に溜められる水の水量W、洗い工程およびすすぎ工程で洗濯脱水槽22内に発生する水流の強さX、洗い工程で洗濯物が洗われる洗い時間T、すすぎ工程で洗濯物がすすがれるすすぎ時間TR、脱水工程で洗濯物が脱水される脱水時間TDが含まれる。
【0060】
これら複数のパラメータの値は、一定レベルの洗浄性能およびすすぎ性能が確保されるように設定される。ここで、洗浄性能やすすぎ性能を高めるために、あるパラメータの値が増加した場合、一方で、そのパラメータが関わる他の性能が低下し得る。たとえば、洗剤量Aが増加すれば、洗剤を節約する洗剤節約性能が低下し得る。また、水流の強さXが増加すれば、洗濯物の傷みを低減する傷み低減性能が低下し得る。さらに、洗い時間Tが増加すれば、運転時間を短くする時短性能が低下し得る。さらに、水量Wが増加すれば、使用水量を節約する節水性能が低下し得る。
【0061】
よって、他の何れかの性能を重要視するユーザにとって、洗浄性能やすすぎ性能を高めようとする結果、重要視する性能が低下するのでは、有益性が薄れてしまい得る。
【0062】
そこで、本実施の形態では、ユーザが、洗浄性能およびすすぎ性能以外の優先する性能を、その候補となる複数の性能の中から選択できる。本実施の形態では、候補となる4つの性能、即ち、洗剤節約性能、節水性能、時短性能および傷み低減性能の中から、優先する性能を選択できる。そして、洗濯運転の際には、負荷量検出工程、水硬度・水温測定工程および洗剤濃度測定工程において、優先する性能として選択された性能に基づいて、複数のパラメータの値が調整され、設定される。
【0063】
以下、この機能について、詳細に説明する。
【0064】
図4は、優先する性能を設定するために制御部101により実行される制御処理を示すフローチャートである。
図5は、性能選択画面200の一例を示す図である。
【0065】
ユーザは、洗濯運転を行う前に、優先する性能の設定を行う。操作表示部72に表示された操作画面上において、ユーザにより所定の操作が行われると、
図4の制御処理が開始される。
【0066】
図4を参照して、制御部101は、操作表示部72に性能選択画面200を表示させる(S101)。
図5に示すように、性能選択画面200には、優先する性能として、それぞれ、洗剤節約性能、節水性能、傷み低減性能および時短性能を選択するための洗剤節約ボタン201、節水ボタン202、傷み低減ボタン203および時短ボタン204が含まれる。また、性能選択画面200には、優先なしを設定するための優先なしボタン205と、選択を確定する確定ボタン206とが含まれる。
【0067】
制御部101は、洗剤節約ボタン201、節水ボタン202、傷み低減ボタン203、時短ボタン204および優先なしボタン205の何れかが選択されて押された後(S102:YES)、確定ボタン206が押されると(S103:YES)、洗剤節約性能、節水性能、傷み低減性能および時短性能うち、何れの性能が選択されたのかを判定する(S104~S107)。
【0068】
洗剤節約性能が選択された場合(S104:YES)、制御部101は、洗剤節約性能を優先する性能に設定する(S108)。節水性能が選択された場合(S105:YES)、制御部101は、節水性能を優先する性能に設定する(S109)。傷み低減性能が選択された場合(S106:YES)、制御部101は、傷み低減性能を優先する性能に設定する(S110)。時短性能が選択された場合(S107:YES)、制御部101は、時短性能を優先する性能に設定する(S111)。
【0069】
一方、何れの性能も選択されていない場合、即ち、優先なしの選択がなされた場合(S107:NO)、制御部101は、優先なしの設定を行う(S112)。
【0070】
このようにして、ユーザは、性能選択画面200上での操作により、優先する性能を選択し、設定することができる。
【0071】
図6は、負荷量検出工程において制御部101により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【0072】
図6を参照して、制御部101は、洗濯物の負荷量検出を行う(S201)。負荷量検出では、たとえば、洗濯物の投入後に洗濯脱水槽22内に水がない状態でパルセータ24が回転し、駆動モータ31の駆動電流や駆動モータ31が停止するまでの惰性回転量に基づいて負荷量が決定される。
【0073】
次に、制御部101は、決定した負荷量に基づいて、複数のパラメータの値、即ち、洗剤量A、水量W、水流の強さX、洗い時間T、すすぎ時間TRおよび脱水時間TDを設定する(S202)。この際、制御部101は、記憶部102に設けられた、負荷量の大きさと各パラメータの値とが関係付けられたテーブルを参照する。
【0074】
次に、制御部101は、傷み低減性能が優先する性能に設定されているか否かを判定する(S203)。傷み低減性能が優先する性能に設定されている場合(S203:YES)、制御部101は、水流の強さXを水流調整基準レベルxだけ減少させて、新たな水流の強さXに設定する(S204)。また、制御部101は、水量Wを水量調整基準レベルwだけ増加させて、新たな水量Wに設定する(S205)。さらに、制御部101は、洗い時間Tを洗い時間調整基準値tだけ増加させて、新たな洗い時間Tに設定する(S206)。
【0075】
なお、水流調整基準レベルx、水量調整基準レベルw、洗い時間調整基準値tは、予め設定されて記憶部102に記憶される。また、水硬度・水温測定工程で利用される洗剤量調整基準値a、洗剤濃度測定工程で利用されるすすぎ時間調整基準値trおよび脱水時間調整基準値tdも、予め設定されて記憶部102に記憶される。
【0076】
傷み低減性能が優先する性能に設定されている場合、洗い工程およびすすぎ工程での水流が弱くなるので、洗濯物の傷みが抑制される。一方で、水量Wが多くなり、洗い時間Tが長くなるので、水流が弱くなることに伴う洗浄性能およびすすぎ性能の低下が抑制される。
【0077】
図7は、水硬度・水温測定工程において制御部101により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【0078】
図7を参照して、制御部101は、水硬度センサ81により、洗濯に使用される水の硬度を測定する(S301)。この際、制御部101は、水硬度と水温を測定するために、給水ユニット50により外槽20内に少し給水を行う。外槽20の底部に、水硬度と水温が検出可能な位置まで水が溜められる。
【0079】
制御部101は、測定した水硬度が規定硬度WHより高いか否かを判定する(S302)。洗濯に使用される水が硬水であり、硬度が高い場合は、洗剤の泡たちが悪くなり、洗浄性能が低下し得る。よって、水硬度が規定硬度WHより高い場合に、洗浄性能が低下し得る条件が満たされていると見做すことができる。
【0080】
測定した水硬度が規定硬度WHより高い場合(S302:YES)、制御部101は、洗剤節約性能が優先する性能に設定されているか否かを判定する(S303)。洗剤節約性能が優先する性能に設定されていない場合(S303:NO)、制御部101は、洗剤量Aを洗剤量調整基準値aだけ増加させて、新たな洗剤量Aに設定する(S304)。一方、洗剤節約性能が優先する性能に設定されている場合(S303:YES)、制御部101は、洗い時間Tを洗い時間調整基準値tだけ増加させて、新たな洗い時間Tに設定する(S305)。
【0081】
使用される水の硬度が高い場合に、洗剤の節約が優先されていなければ、洗剤量Aが増やされるので、洗い工程での洗浄性能の低下を抑制できる。さらに、使用される水の硬度が高い場合に、洗剤の節約が優先されていれば、洗剤量Aが増やされず、代わりに洗い時間Tが増やされるので、洗剤節約性能の低下を抑制しつつ、洗剤量Aの増加よりも効果は小さくなるものの、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0082】
なお、洗剤節約性能が優先する性能に設定されている場合に、制御部101は、洗い時間Tの増加に加えて、あるいは代えて、水流の強さXを水流調整基準レベルxだけ増加させて、新たな水流の強さXに設定するようにしてもよい。
【0083】
次に、制御部101は、水温センサ82により、洗濯に使用される水の温度を測定する(S306)。そして、制御部101は、測定した水温が規定温度WTより低いか否かを判定する(S307)。
【0084】
洗濯に使用される水の温度が低い場合は、皮脂汚れや油汚れが溶け出しにくく、また、洗剤の効果が発揮されにくいため、洗浄性能が低下し得る。よって、水温が規定温度WTより低い場合に、洗浄性能が低下し得る条件が満たされていると見做すことができる。
【0085】
測定した水温が規定温度WTより低い場合(S307:YES)、制御部101は、洗剤節約性能、時短性能および傷み低減性能の何れかの性能が優先する性能に設定されているか否かを判定する(S308~S310)。何れの性能も優先する性能に設定されていない場合(S308:NO→S309:NO→S310:NO)、制御部101は、洗剤量Aを洗剤量調整基準値aだけ増加させて、新たな洗剤量Aに設定する(S311)。また、制御部101は、洗い時間Tを洗い時間調整基準値tだけ増加させて、新たな洗い時間Tに設定する(S312)。さらに、制御部101は、水流の強さXを水流調整基準レベルxだけ増加させて、新たな水流の強さXに設定する(S313)。これにより、洗い工程において、水温が低いことによる洗浄性能の低下を抑制できる。
【0086】
一方、洗剤節約性能が優先する性能に設定されている場合(S308:YES)、制御部101は、洗い時間Tを洗い時間調整基準値tの2倍だけ増加させて、新たな洗い時間Tに設定する(S314)。また、制御部101は、水流の強さXを水流調整基準レベルxだけ増加させて、新たな水流の強さXに設定する(S315)。制御部101は、洗剤量Aは増加させない。これにより、洗剤節約性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0087】
一方、時短性能が優先する性能に設定されている場合(S309:YES)、制御部101は、洗剤量Aを洗剤量調整基準値aだけ増加させて、新たな洗剤量Aに設定する(S316)。また、制御部101は、水流の強さXを水流調整基準レベルxだけ増加させて、新たな水流の強さXに設定する(S317)。制御部101は、洗い時間Tは増加させない。これにより、時短性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0088】
一方、傷み低減性能が優先する性能に設定されている場合(S310:YES)、制御部101は、洗剤量Aを洗剤量調整基準値aだけ増加させて、新たな洗剤量Aに設定する(S318)。また、制御部101は、洗い時間Tを洗い時間調整基準値tの2倍だけ増加させて、新たな洗い時間Tに設定する(S319)。制御部101は、水流の強さXは増加させない。これにより、傷み低減性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0089】
なお、洗い時間Tの増加は、洗剤量Aの増加や水流の強さXの増加に比べて、洗浄性能の向上に寄与しにくいと考えられる。このため、本実施の形態では、洗剤節約性能が優先する性能に設定されている場合および傷み低減性能が優先する性能に設定されている場合、何れの性能も優先する性能に設定されていない場合に比べて洗浄性能の低下が大きくならないように、洗い時間Tを洗い時間調整基準値tの2倍だけ増加させている。
【0090】
時短性能が優先する性能に設定されている場合に、何れの性能も優先する性能に設定されていない場合と洗浄性能が同等となるように、洗剤量Aが洗剤量調整基準値aよりも多く増やされてもよいし、水流の強さXが水流調整基準レベルxよりも多く増やされてもよい。
【0091】
図8は、洗剤濃度測定工程において制御部101により実行される制御処理を示すフローチャートである。
【0092】
溜めすすぎ工程において、負荷検出工程で設定された水量Wの水が、洗濯脱水槽22内、即ち外槽20内に溜められて、給水が完了すると、洗剤濃度測定工程が開始される。なお、洗剤濃度が測定しやすくなるよう、パルセータ24の動作によりすすぎがしばらくの間行われた後に、洗剤濃度測定工程が開始されてもよい。
【0093】
制御部101は、水硬度センサ81を洗剤濃度センサとして機能させ、外槽20内の水に含まれた洗剤の濃度を測定する(S401)。そして、制御部101は、測定した洗剤濃度が規定濃度WCより高いか否かを判定する(S402)。
【0094】
給水が完了した段階で、洗濯物に含まれた洗剤が、ある程度、外槽20内に溜められた水に混ざり込む。このため、洗濯物に洗剤が多く含まれている場合は、外槽20内の洗剤濃度が高くなる。洗濯物に多くの洗剤が含まれている場合は、洗濯物に洗剤が残りやすくなるため、すすぎ性能が低下し得る。よって、洗剤濃度が規定濃度WCより高い場合に、すすぎ性能が低下し得る条件が満たされていると見做すことができる。
【0095】
測定した洗剤濃度が規定濃度WCより高い場合(S402:YES)、制御部101は、節水性能が優先する性能に設定されているか否かを判定する(S403)。節水性能が優先する性能に設定されていない場合(S403:NO)、制御部101は、水量Wを水量調整基準レベルwだけ増加させて、新たな水量Wに設定する(S404)。一方、節水性能が優先する性能に設定されている場合(S403:YES)、制御部101は、すすぎ時間TRをすすぎ時間調整基準値trだけ増加させて、新たなすすぎ時間TRに設定する(S405)。また、制御部101は、脱水時間TDを脱水時間調整基準値tdだけ増加させて、新たな脱水時間TDに設定する(S406)。
【0096】
洗濯物に洗剤が多く含まれている場合に、節水が優先されていなければ、水量Wが増やされるので、溜めすすぎ工程でのすすぎ性能の低下を抑制できる。さらに、洗濯物に洗剤が多く含まれている場合に、節水が優先されていれば、水量Wが増やされず、代わりに、すすぎ時間TRと、次の中間脱水工程での脱水時間TDとが増やされるので、節水性能の低下を抑制しつつ、すすぎ性能の低下を抑制できる。
【0097】
なお、節水性能が優先する性能に設定されている場合に、制御部101は、すすぎ時間TRおよび脱水時間TDうち、何れかのみを増加させるようにしてもよい。
【0098】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、複数の性能、即ち、洗剤節約性能、節水性能、時短性能および傷み低減性能の中から、優先する性能を選択できる。そして、洗濯運転の際には、負荷量検出工程、水硬度・水温測定工程および洗剤濃度測定工程において、優先する性能として選択された性能に基づいて、複数のパラメータの値、即ち、洗剤量A、水量W、水流の強さX、洗い時間T、すすぎ時間TRおよび脱水時間TDが設定される。これにより、優先する性能として選択された性能の低下を抑制しつつ、一定レベルの洗浄性能やすすぎ性能を確保することが可能となる。
【0099】
さらに、本実施の形態によれば、使用される水の硬度が高い場合に、洗剤節約性能が優先する性能に設定されていれば、洗剤量Aが増やされず、洗い時間Tが増やされる。また、使用される水の温度が低い場合に、洗剤節約性能が優先する性能に設定されていれば、洗剤量Aが増やされず、洗い時間Tおよび水流の強さXが増やされる。これにより、ユーザが優先する洗剤節約性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0100】
さらに、本実施の形態によれば、使用される水の温度が低い場合に、時短性能が優先する性能に設定されていれば、洗い時間Tが増やされず、洗剤量Aおよび水流の強さXが増やされる。これにより、ユーザが優先する時短性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0101】
さらに、本実施の形態によれば、使用される水の温度が低い場合に、傷み低減性能が優先する性能に設定されていれば、水流の強さXが増やされず、洗剤量Aおよび洗い時間Tが増やされる。これにより、ユーザが優先する傷み低減性能の低下を抑制しつつ、洗浄性能の低下を抑制できる。
【0102】
さらに、本実施の形態によれば、洗濯物に洗剤が多く含まれている場合に、節水性能が優先する性能に設定されていれば、水量Wが増やされず、すすぎ時間TRおよび脱水時間TDが増やされる。これにより、ユーザが優先する節水性能の低下を抑制しつつ、すすぎ性能の低下を抑制できる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0104】
たとえば、上記実施の形態では、複数の性能の中から優先する性能を選択する操作が、操作表示部72により受け付けられる。しかしながら、上記の選択操作が、ハードキーである複数の操作ボタンを備える操作部により受け付けられてもよい。あるいは、上記の選択操作が、スマートフォン等の携帯端末装置により受け付けられ、全自動洗濯機1に送信されるようにしてもよい。この場合、全自動洗濯機1に、通信機能が備えられる。
【0105】
さらに、上記実施の形態では、複数の性能の中から1つの性能を、優先する性能として選択することができる。しかしながら、複数の性能が、優先する性能として選択できてもよい。この構成においても、洗浄性能やすすぎ性能が低下し得る条件が満たされている場合に、優先する機能として選択された複数の性能の低下に寄与しないパラメータの値が増やされる。
【0106】
さらに、上記実施の形態では、水硬度センサ81が、洗剤濃度センサとして機能するが、洗剤濃度センサが、別途、備えられてもよい。
【0107】
さらに、洗濯運転に係るパラメータは、上記実施の形態において挙げられたパラメータに限られない。
【0108】
さらに、上記実施の形態において、自動投入機構60は、洗剤と柔軟剤とを自動投入可能な構成とされてもよい。この場合、液体の柔軟剤を収容する柔軟剤タンクが設けられる。柔軟剤タンクは、供給パイプと三方バルブとを介して、サブ給水路64に繋がる。すすぎ工程の際、洗剤タンク61からの洗剤の供給と同様な動作により、柔軟剤タンク内の柔軟剤が洗濯脱水槽22内へ供給される。
【0109】
さらに、給水ユニット50および自動投入機構60の構成は、上記実施の形態に限られない。給水ユニット50は、洗濯脱水槽22に給水が行えれば、如何なる構成であってもよいし、自動投入機構60は、洗濯脱水槽22に洗剤を供給できれば、如何なる構成であってもよい。
【0110】
さらに、本発明は、全自動洗濯機1以外の洗濯機、たとえば、ドラム式洗濯機、乾燥機能を有する全自動洗濯乾燥機やドラム式洗濯乾燥機にも適用できる。
【0111】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 全自動洗濯機(洗濯機)
20 外槽(洗濯槽)
22 洗濯脱水槽(洗濯槽)
72 操作表示部(操作受付部)
101 制御部