(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086045
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】葉物用装置
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
A23F3/06 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200435
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 立吾
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FB06
4B027FC10
4B027FP25
4B027FP26
(57)【要約】
【課題】上方に吹き上げられた葉物が天井部に張り付いてしまうのを抑制することができる葉物用装置を提供する。
【解決手段】茶葉を上方に吹き上げて落下させることにより当該茶葉を冷却しつつ散茶する葉物用装置において、茶葉を吹き上げ及び落下させる空間Sが内部に形成された本体部1と、本体部1の上部に形成され、当該本体部1内の空間Sに臨んだ天面2aを有する天井部2と、本体部1内に送風可能とされ、当該本体部1内に投入された茶葉を天井部2の天面2aに向かって吹き上げ可能なブロア4とを具備するとともに、天井部2の天面2aは、上方に突出した円弧状の曲面とされたものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉物を上方に吹き上げて落下させる葉物用装置において、
葉物を吹き上げ及び落下させる空間が内部に形成された本体部と、
前記本体部の上部に形成され、当該本体部内の空間に臨んだ天面を有する天井部と、
前記本体部内に投入された葉物を前記天井部の前記天面に向かって吹き上げ可能な吹き上げ部と、
を具備するとともに、前記天井部の前記天面は、上方に突出した円弧状の曲面とされた葉物用装置。
【請求項2】
前記葉物用装置は、茶葉を上方に吹き上げて落下させることにより当該茶葉を冷却しつつ散茶する散茶冷却装置であって、
前記吹き上げ部は、前記本体部内に送風可能とされ、当該本体部内に投入された茶葉を前記天井部の前記天面に向かって吹き上げ可能な送風部とされる請求項1記載の葉物用装置。
【請求項3】
前記天井部の前記天面は、風を透過せず、円弧状の前記曲面に沿って風を流動し得る部材から成る請求項1又は請求項2記載の葉物用装置。
【請求項4】
前記天井部の前記天面は、凹凸形状を有する請求項3記載の葉物用装置。
【請求項5】
前記天井部の前記天面は、風を透過し得るパンチングメタル又は網状部材から成る請求項1記載の葉物用装置。
【請求項6】
前記天井部の前記天面は、一方向に曲率を有する曲面、又は球状の曲面とされた請求項1~5の何れか1つに記載の葉物用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉物を上方に吹き上げて落下させる葉物用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば碾茶を製造するための碾茶炉は、茶葉を搬送しつつ乾燥させるコンベア等の搬送手段を具備しており、当該搬送手段には、散茶乾燥装置によって冷却及び露切りされた蒸葉が供給されるようになっている。散茶乾燥装置は、茶葉を上方に吹き上げて自然落下させることにより当該茶葉を冷却しつつ散茶可能なもので、例えば特許文献1にて開示されているように、茶葉を吹き上げ及び落下させる空間が内部に形成された本体部と、本体部内に投入された茶葉を上方に吹き上げ可能なブロアとを有して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の散茶冷却装置においては、送風部で上方に吹き上げられた茶葉が本体部の最上部に位置する天井部に風圧により張り付いてしまうことがある。このように天井部に張り付いた茶葉は、ブロアからの送風を停止した後も自然落下せず天井部に強く張り付いた状態となることがあり、これを取り除くためには、作業員が天井部まで登って高所で除去作業を行う必要があった。なお、このような不具合は、散茶冷却装置に限らず、葉物を上方に吹き上げて落下させる葉物用装置全般に生じるものである。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、上方に吹き上げられた葉物が天井部に張り付いてしまうのを抑制することができる葉物用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、葉物を上方に吹き上げて落下させる葉物用装置において、葉物を吹き上げ及び落下させる空間が内部に形成された本体部と、前記本体部の上部に形成され、当該本体部内の空間に臨んだ天面を有する天井部と、前記本体部内に投入された葉物を前記天井部の前記天面に向かって吹き上げ可能な吹き上げ部とを具備するとともに、前記天井部の前記天面は、上方に突出した円弧状の曲面とされたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の葉物用装置において、前記葉物用装置は、茶葉を上方に吹き上げて落下させることにより当該茶葉を冷却しつつ散茶する散茶冷却装置であって、前記吹き上げ部は、前記本体部内に送風可能とされ、当該本体部内に投入された茶葉を前記天井部の前記天面に向かって吹き上げ可能な送風部とされるものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の葉物用装置において、前記天井部の前記天面は、風を透過せず、円弧状の前記曲面に沿って風を流動し得る部材から成るものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の葉物用装置において、前記天井部の前記天面は、凹凸形状を有するものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の葉物用装置において、前記天井部の前記天面は、風を透過し得るパンチングメタル又は網状部材から成るものである。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載の葉物用装置において、前記天井部の前記天面は、一方向に曲率を有する曲面、又は球状の曲面とされたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、葉物を吹き上げ及び落下させる空間が内部に形成された本体部と、本体部の上部に形成され、当該本体部内の空間に臨んだ天面を有する天井部と、本体部内に投入された葉物を天井部の天面に向かって吹き上げ可能な吹き上げ部とを具備するとともに、天井部の天面は、上方に突出した円弧状の曲面とされたので、上方に吹き上げられた葉物が天井部に張り付いてしまうのを抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、葉物用装置は、茶葉を上方に吹き上げて落下させることにより当該茶葉を冷却しつつ散茶する散茶冷却装置であって、吹き上げ部は、本体部内に送風可能とされ、当該本体部内に投入された茶葉を天井部の天面に向かって吹き上げ可能な送風部とされるので、上方に吹き上げられた茶葉が天井部に張り付いてしまうのを抑制することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、天井部の前記天面は、風を透過せず、円弧状の曲面に沿って風を流動し得る部材から成るので、天面において風の勢いを低下させることなく上方に吹き上げられた葉物を下方に向かって滑らかに方向転換させることができ、葉物が天井部に張り付いてしまうのをより確実に抑制することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、天井部の天面は、凹凸形状を有するので、天面と葉物との接触面積を低下させることができ、葉物が天井部に張り付いてしまうのをより一層確実に抑制することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、天井部の天面は、風を透過し得るパンチングメタル又は網状部材から成るので、天井部の天面に沿って流動する過程で風が外部に抜けて天面に対する葉物の張り付き力を低減させることができ、葉物が天井部に張り付いてしまうのをより一層確実に抑制することができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、天井部の天面は、一方向に曲率を有する曲面、又は球状の曲面とされたので、本体部の形状や送風状態等に応じて天井部の天面を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る散茶冷却装置及び適用される乾燥装置を示す全体図
【
図4】同散茶冷却装置における天井部を示す側面図、正面図及び底面図
【
図6】他の実施形態に係る天井部における天面を示す模式図
【
図7】他の実施形態に係る天井部における天面を示す模式図
【
図8】他の実施形態に係る天井部を示す側面図及び底面図
【
図10】本発明の他の実施形態に係る葉物用装置(葉物を粉砕する装置)を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る葉物用装置は、碾茶の製造ラインに設置された散茶冷却装置に適用されたもので、
図1に示すように、乾燥装置6(碾茶炉)に茶葉を搬送するための搬送手段5に取り付けられ、その搬送手段5の搬送体Dに対して茶葉(蒸し葉)を落下(自然落下)させることで冷却しつつ略均等な状態に散茶させ得るものである。すなわち、前工程で処理された蒸熱直後の蒸し葉は高温であり、その茶葉を高温の状態で乾燥装置6に搬送すると余熱で変質してしまうことから、散茶冷却装置により、蒸し葉を上方に吹き上げることにより、冷却及び乾燥を行って余熱による変質を抑制するのである。
【0020】
乾燥装置6は、蒸機による蒸し工程を経て酵素が失活された蒸葉を搬送しつつ乾燥させて碾茶を得るもので、茶葉を載置して搬送可能な搬送体Dを具備している。かかる搬送体Dは、搬送手段5及び乾燥装置6に亘って懸架された無端状部材から成り、茶葉を搬送方向に搬送可能とされている。すなわち、搬送手段5において搬送体Dに対して積層状態で供給された茶葉は、乾燥装置6に搬送された後、乾燥装置6の内部を搬送される過程で乾燥されるのである。なお、図中符号Fは、搬送手段5及び乾燥装置6における茶葉の搬送部を支持する台部を示している。
【0021】
本実施形態に係る散茶冷却装置は、搬送手段5の搬送体Dに対して茶葉を落下(自然落下)させた後、乾燥装置6に供給して乾燥させ得るもので、
図1~3に示すように、搬送手段5の所定位置から上方に向かって延びる本体部1(散茶枠)と、本体部1の最上部に形成された天井部2と、本体部1の側面の所定位置に形成された投入部3と、ブロア4(吹き上げ部)(送風部)と、接続部材Hを介してブロア4と接続される接続部Tとを具備して構成されている。
【0022】
本体部1は、通気性を有した網状部材により周囲と画成して茶葉の吹き上げ及び搬送帯D上への落下を可能とする空間Sが内部に形成されたもので、正面側の所定位置に投入部3及び接続部Tが取り付けられている。具体的には、本体部1は、
図2、3に示すように、搬送手段5の搬送体Dより上方に延設されるとともに、側面が網状部材で周囲と画成されるとともに、底部が搬送体Dに対して開口されている。
【0023】
投入部3は、本体部1における内部の空間Sに茶葉を投入するホッパ状の部材から成り、本体部1における接続部Tより上部の位置に取り付けられている。すなわち、投入部3から投入された茶葉は、本体部1の内部に至り、ブロア4からの送風により上方に吹き上げられるよう構成されている。なお、投入部3は、本実施形態の如くホッパ状の部材に限定されず、茶葉を本体部1に投入し得る開口であってもよい。
【0024】
本発明の吹き上げ部としてのブロア4(送風手段)は、本体部1内に送風することにより投入部3から投入された茶葉を天井部2の天面2aに向かって吹き上げ可能なもので、
図1、2に示すように、本体部1の下方に位置に固定されている。かかるブロア4は、外部から空気を吸い込む吸込み口及び該吸込み口で吸い込んだ空気を吹き出す吹出し口がそれぞれ形成されており、吹出し口には、ホース等の接続部材Hが接続されている。
【0025】
接続部Tは、
図2に示すように、本体部1に形成された投入部3より下部に形成され、接続部材Hを介してブロア4と接続されるものである。本実施形態に係る接続部Tは、投入部3から投入された茶葉を受ける受け面を有するとともに、その受け面で受けた茶葉をブロア4からの送風にて上方に向かって吹き上げることが可能とされている。
【0026】
ここで、本実施形態に係る散茶冷却装置の天井部2は、本体部1の最上部に取り付けられた鉄やステンレス等から成る部材から成り、天面2aが本体部1の空間Sに臨んだ状態とされてブロア4からの送風を受け得るようになっている。かかる天井部2の天面2aは、
図4、5に示すように、上方に突出した(上方に凸の)円弧状の曲面(R形状)とされており、本体部1の空間Sにおいて上方に向かう風を円弧状に沿って流動させ、下方に向かって滑らかに方向転換させるようになっている。
【0027】
これにより、投入部3から投入された茶葉(蒸し葉)は、ブロア4からの送風により上方に吹き上げられ、天井部2の天面2aに至り、その天面2aの円弧状に沿って移動しつつ滑らかに下方に方向転換して落下することとなるので、吹き上げられた茶葉が天面2aに張り付いてしまうのを抑制することができる。なお、本実施形態に係る天面2aは、茶葉の進行方向(送風方向)に対して円弧状の曲面とされているが、当該進行方向(送風方向)に直交する方向に円弧状の曲面としてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、天面2aが滑らかな曲面とされているが、
図6、7に示すように、天面2aを構成する曲面に凹凸形状を付与するようにしてもよい。なお、
図6においては、天面2aにエンボスaが形成されたもの、
図7においては、天面2aに格子状の溝bが形成されたものを示している。このように、天井部2の天面2aに凹凸形状を形成するようにすれば、天面2aと茶葉との接触面積を低下させることができ、茶葉が天井部2に張り付いてしまうのをより一層確実に抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る天井部2の天面2aは、風を透過せず、円弧状の曲面に沿って風を流動し得る部材(鉄やステンレス等の金属製部材をプレス加工したもの、或いは樹脂材を成形したもの等)から成る。これにより、天面2aにおいて風の勢いを低下させることなく上方に吹き上げられた茶葉を下方に向かって滑らかに方向転換させることができ、茶葉が天井部2aに張り付いてしまうのをより確実に抑制することができる。
【0030】
一方、本実施形態に係る天井部2の天面2aに代えて、風を透過し得るパンチングメタル又は網状部材から成る天井部2の天面2aとしてもよい。この場合、天井部2の天面2aに沿って流動する過程で風が外部に抜けて天面2aに対する茶葉の張り付き力を低減させることができ、茶葉が天井部2に張り付いてしまうのをより一層確実に抑制することができる。
【0031】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図8、9に示すように、天井部2を半球状の部材から成るものとし、天面2aが上方に突出した球状の曲面とするようにしてもよい。この場合、ブロア4からの送風の向きや位置に関わらず、上方に吹き上げられた茶葉を曲面に沿って滑らかに下方に方向転換させることができ、天井部2に張り付いてしまうのを抑制することができる。このように、天井部2の天面2aは、上記実施形態の如く一方向に曲率を有する曲面、又は球状の曲面とすることができ、本体部1の形状や送風状態等に応じて天井部2の天面2aを選択することができる。
【0032】
なお、ブロア4に代えて他の形態の送風手段としてもよく、搬送体Dの幅方向に対して複数の送風手段を配設するようにしてもよい。また、本実施形態に係る本体部1は、網状部材が固定されたフレームにて構成されているが、フレームにより網が吊り下げられたもの、工場等の建物の天井から網が吊り下げられたものであってもよく、本体部1が複数台連結して設置されたものであってもよい。さらに、本実施形態においては、碾茶の製造ラインに設置された乾燥装置6(碾茶炉)に茶葉を搬送するものに適用されているが、他の乾燥装置に適用してもよく、碾茶に代えて他の茶葉を上方に吹き上げて落下させるものであってもよい。
【0033】
また、本発明は、散茶冷却装置に限定されず、例えば茶葉等の葉物を粉砕して茶粉を製造する葉物用装置にも適用することができる。この場合、例えば
図10に示すように、葉物(葉類)を吹き上げ及び落下させる空間Sが内部に形成された本体部1と、本体部1の上部に形成され、当該本体部1内の空間Sに臨んだ天面2aを有する天井部2と、本体部1内に投入された葉物を天井部2の天面2aに向かって吹き上げ可能な吹き上げ部7とを具備するとともに、天井部2の天面2aは、上方に突出した円弧状の曲面とされたものとすることができる。
【0034】
具体的には、本実施形態に係る葉物用装置は、葉物を粉砕して微細な形状とするものであり、吹き上げ部7は、モータMの駆動により回転する駆動軸Maに取り付けられた粉砕用刃から成る。かかる吹き上げ部7は、水平刃及び垂直刃を有して構成された粉砕用刃から成り、モータMが駆動して回転すると、本体部1に投入された葉物が微細に粉砕されつつ上方に吹き上げられるようになっている。なお、
図10中符号hは、モータMの配線を示している。
【0035】
本実施形態においては、上記実施形態と同様、天井部2の天面2aは、上方に突出した円弧状の曲面とされているので、上方に吹き上げられた葉物は、天面2aの円弧状の曲面に沿って移動しつつ滑らかに下方に方向転換して落下することとなり、吹き上げられた葉物が天面2aに張り付いてしまって微細化を阻害してしまうのを抑制することができる。葉物が水分を多く含んだ状態で粘性がある場合は、その抑制効果が特に大きい。したがって、本実施形態によれば、上記実施形態と同様、吹き上げられた葉物が天面2aに張り付いてしまうのを抑制することができる。なお、適用される葉物は、茶葉の他、大麦や桑など他の葉物としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
葉物を上方に吹き上げて落下させる葉物用装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 本体部
2 天井部
2a 天面
3 投入部
4 ブロア(送風部)(吹き上げ部)
5 搬送手段
6 乾燥装置
7 吹き上げ部
D 搬送体
S 空間
T 接続部
F 台部
H 接続部材
a エンボス(凹部)
b 溝