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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086059
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】光束分離光学系および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/55 20230101AFI20230614BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20230614BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20230614BHJP
   H04N 23/741 20230101ALI20230614BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230614BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H04N5/225 400
A61B1/04 530
H04N5/225 800
H04N5/235 500
H04N5/232 290
G02B5/04 B
G02B5/04 A
G02B5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021213374
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】515333271
【氏名又は名称】株式会社三井光機製作所
(72)【発明者】
【氏名】河野 景三
(72)【発明者】
【氏名】三井 辰郎
【テーマコード(参考)】
2H042
4C161
5C122
【Fターム(参考)】
2H042CA07
2H042CA08
2H042CA10
2H042CA14
2H042CA17
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC06
4C161LL01
4C161MM02
4C161NN01
4C161PP06
4C161PP11
4C161SS07
5C122DA11
5C122DA14
5C122DA16
5C122EA20
5C122EA21
5C122EA38
5C122FA18
5C122FB15
5C122FH18
5C122GE11
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】 画像の高ダイナミックレンジを取得するのに適した光束分離プリズム構成およびそれを利用した撮像装置を提供する。
【解決手段】
入射した画像光束を反射膜なしに硝材の内部反射により反射光成分として取得する第一プリズムと、前記第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムであって、前記第一プリズムからの残余光成分を取得する第二プリズムと、前記第一プリズムにより取得した前記反射光成分を光電変換し、第一画像信号を出力する第一撮像素子と、前記第二プリズムにより取得した前記残余光成分を光電変換し、第二画像信号を出力する第二撮像素子と、を備え、前記第一画像信号と前記第二画像信号とを合成処理し、ダイナミックレンジを拡張した画像信号を取得し、併せ画素ずらしによる高解像度またはP/S偏光波の画像信号を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズにより集光された画像光束を入射し、該画像光束を反射膜なしに硝材の内部反射により反射光成分として取得する第一プリズムと、
前記第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムであって、前記第一プリズムからの残余光成分を取得する第二プリズムと、
前記第一プリズムにより取得した前記反射光成分を光電変換し、第一画像信号を出力する第一撮像素子と、
前記第二プリズムにより取得した前記残余光成分を光電変換し、第二画像信号を出力する第二撮像素子と、を備え、
前記第一画像信号と前記第二画像信号とを合成処理し、ダイナミックレンジを拡張した画像信号を取得することを特徴とする光束分離光学系。
【請求項2】
前記反射光成分は、第二プリズム入射面の外面反射成分を追加的に含むことを特徴とする請求項1記載の光束分離光学系。
【請求項3】
前記エアギャップは、エアギャップ内に空気または窒素ガスで構成されていることを特徴とする請求項1記載の光束分離光学系。
【請求項4】
前記第一撮像素子に入射する反射光成分は、前記第二撮像素子に入射する透過光成分より入射光量が少ない可視光成分であり、前記反射光成分を副画像成分とし、前記透過光成分を主画像成分として合成処理されてダイナミックレンジを拡張した画像信号を取得することを特徴とする請求項1記載の光束分離光学系。
【請求項5】
前記第一プリズムの画像光束入射側に赤外光分離プリズムが配置され、
前記赤外光分離プリズムにより出射された赤外光成分を光電変換し、赤外光画像信号を出力する赤外光用撮像素子を備え、
前記赤外光用撮像素子により出力された赤外光画像信号と前記ダイナミックレンジを拡張した画像信号とを取得することを特徴とする請求項5記載の光束分離光学系。
【請求項6】
前記第二プリズムは、複数のプリズムの組み合わせにより構成され、
前記複数のプリズムのそれぞれに対応して設けられ、前記複数のプリズムにより出射された前記残余光成分を光電変換し、画像信号を出力する複数の撮像素子を備え、
前記複数の撮像素子のいずれか一つは他の撮像素子と画素ピッチが半画素ピッチだけずらして前記複数のプリズムに固着されていることを特徴とする請求項1記載の光束分離光学系。
【請求項7】
前記複数のプリズムは、赤色光分離プリズム、青色光分離プリズム、緑色光分離プリズムからなり、
前記赤色用分離プリズムにより取得された赤色光画像を出力する赤色用撮像素子と、前記青色用分離プリズムにより取得された青色光画像を出力する青色用撮像素子と、前記緑色用分離プリズムにより取得された緑色光画像を出力する緑色用撮像素子との組み合わせにより構成され、
前記緑色用撮像素子は、前記赤色用撮像素子および前記青色用撮像素子に対し画素ピッチが半画素ピッチだけずらして対応するプリズムに固着されており、
前記緑色用撮像素子、前記赤色用撮像素子および前記青色用撮像素子の画像信号を用いて輝度信号をサンプリング取得することにより、解像度を向上させた画像信号を取得することを特徴とする請求項6記載の光束分離光学系。
【請求項8】
前記第二プリズムは、更なる緑色光用プリズムを追加的に備え、
前記更なる緑色光用プリズムにより取得された緑色光画像を出力する更なる緑色用撮像素子を追加的に備え、
前記緑色用撮像素子は、前記更なる緑色用撮像素子に対して画素ピッチが半画素ピッチだけずらして対応するプリズムに固着されており、
前記緑色用撮像素子および前記更なる緑色用撮像素子の画像信号を用いて輝度信号をサンプリング取得することにより、解像度を向上させた画像信号を取得することを特徴とする請求項7記載の光束分離光学系。
【請求項9】
前記第二プリズムは、P偏光波およびS偏光波分離プリズムにより構成され、
前記P偏光波分離プリズムに対応し、P偏光波画像信号を出力するP波撮像素子と、
前記S偏光波分離プリズムに対応し、S偏光波画像信号を出力するS波撮像素子と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の光束分離光学系。
【請求項10】
前記請求項1ないし請求項9に記載する光束分離光学系のいずれかを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束分離プリズム、撮像素子等を備えた光束分離光学系およびそれを適用した撮像装置であって、特に画像の高ダイナミックレンジを取得し、併せ高解像度を取得するのに適した光束分離プリズム構成およびそれを利用した画像撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラや静止画カメラなどに使用される固体撮像素子の進歩により多種類の小型化された撮像装置が可能となり、種々の広帯域のマルチスペクトルカメラが種々開発されている。これらのマルチスペクトルカメラは、FAカメラ、監視カメラ、車載カメラ、医療用内視鏡カメラ、皮膚疾患観察カメラなど多種多様な用途に利用されている。
【0003】
このようにマルチスペクトルカメラの利用が多様化するため、種々の利用環境や条件下での使用に対応できる性能特性が求められるようになってきている。監視カメラや車載カメラでは、昼夜を問わず明瞭な画像が必要であり、内視鏡やダーモスコープなどの医療用観察、診断カメラでは高解像度で小型化された装置により明暗部を見分けられる画像が求められている。特に、夜間や低照度の撮像画像に照明などの高輝度発光部がある場合、トンネルの出入り口の画像撮影、内視鏡などでの照明反射部の画像取得などでは照明ライト部分が白飛びしたり、暗部の黒つぶれが生じたりするためダイナミックレンジをより拡大させる必要がある。
【0004】
ダイナミックレンジを拡張するには、低照度(低輝度)画像と高照度(高輝度)画像とを取得し、合成する手法が一般的にとられている。低照度画像および高照度画像を取得するには、複数枚画像のフレーム毎、ライン毎または画素毎に照度または露光量を変えて低照度、高照度の2画像を取得する方法が考えられている。特許文献1では、低露光画像と高露光画像を1フレーム毎に交互に撮影取得し、合成する際の時間的ズレ位置を補正している。また、特許文献2では、取得した画像の画素毎にDMD(Digital Mirror Device)を用いて反射量を変化させ、変化した光量で低輝度および高輝度の画像を取得する技術が開示されている。このような画像フレームや画素毎に低照度画像と高照度画像を取得して合成する技術においては、時間的な解像度や空間解像度が低下するなどの問題を含んでいる。
【0005】
特許文献3では、撮像素子の画素上にマイクロレンズを交互に配置し、入射光をマイクロレンズにより集光し高感度画素とマイクロレンズ非搭載の受光部を低感度画素として画像合成することで低照度画像と高照度画像を確保している。しかし、この構成では撮像素子とマイクロレンズの構成が複雑となるだけでなく、高解像度の多画素には製造上の難しさがある。
【0006】
また、撮像素子の画素数を変えて低輝度画像と高輝度画像を取得したり、ND(Neutral Density)フィルターなどの光透過量を変えて照度の異なる画像を取得したりして、画像合成によりダイナミックレンジを拡張する方法も具体化されている。しかしいずれの方法においてもダイナミックレンジを拡張するために複雑な回路や部品構成を要求されたり、撮像素子の性能や特性を低下させたり、画像処理の過程で解像度やS/N比に影響を与えたりするため、高解像度でノイズの少ない高度な色再現性を求めるには満足すべきものでなく、高解像度で拡張されたダイナミックレンジを確保する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-118513号公報
【特許文献2】特開2003-8987号公報
【特許文献3】特開2005-259750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、主として以下のような画像を取得しうる光束分離光学系および画像処理装置ならびに撮像装置の提供を目的とする。
(1)簡易な光束分離光学系の構成で、ダイナミックレンジを拡張した画像を取得するのに適した光束分離光学系を提供する。
(2)低照度、高照度、夜間、昼間、変化する気象状況など種々の撮像環境においても高ダイナミックレンジおよび高解像度の画像信号を取得し、視認性に優れた画像を取得しうる監視カメラ、車載カメラ、医療用カメラなど広範囲の分野での利用を可能とする光束分離光学系およびそれを適用した撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における光束分離光学系は、レンズにより集光された画像光束を入射し、該画像光束を反射膜なしに硝材の内部反射により反射光成分として取得する第一プリズムと、前記第一プリズムとエアギャップを介して配置された第二プリズムであって、前記第一プリズムからの残余光成分を取得する第二プリズムと、前記第一プリズムにより取得した前記反射光成分を光電変換し、第一画像信号を出力する第一撮像素子と、前記第二プリズムにより取得した前記残余光成分を光電変換し、第二画像信号を出力する第二撮像素子と、を備え、前記第一画像信号と前記第二画像信号とを合成処理し、ダイナミックレンジを拡張した画像信号を取得することを特徴とする。
【0010】
また、本発明における光束分離光学系は、前記反射光成分が、第二プリズム入射面の外面反射成分を追加的に含むように構成することもできる。
【0011】
また、本発明における光束分離光学系は、前記エアギャップが、エアギャップ内に空気または窒素ガスで構成されているように構成することもできる。
【0012】
また、本発明における光束分離光学系は、前記第一撮像素子に入射する反射光成分が、前記第二撮像素子に入射する透過光成分より入射光量が少ない可視光成分であり、前記反射光成分をサブ画像成分とし、前記透過光成分をメイン画像成分として合成処理されてダイナミックレンジを拡張した可視光画像信号を取得するように構成することもできる。
【0013】
また、本発明における光束分離光学系は、前記第一プリズムの画像光束入射側に赤外光分離プリズムが配置され、前記赤外光分離プリズムにより出射された赤外光成分を光電変換し、赤外光画像信号を出力する赤外光用撮像素子を備え、前記赤外光用撮像素子により出力された赤外光画像信号とダイナミックレンジを拡張した可視光画像信号とを取得するように構成することもできる。
【0014】
また、本発明における光束分離光学系は、前記第二プリズムが、複数のプリズムの組み合わせにより構成され、前記複数のプリズムのそれぞれに対応して設けられ、前記複数のプリズムにより出射された前記残余光成分を光電変換し、画像信号を出力する複数の撮像素子を備え、前記複数の撮像素子のいずれか一つは他の撮像素子と画素ピッチが半画素ピッチだけずらして前記複数のプリズムに固着されているように構成することもできる。
【0015】
また、本発明における光束分離光学系は、前記複数のプリズムが、赤色光分離プリズム、青色光分離プリズム、緑色光分離プリズムからなり、前記赤色用分離プリズムにより取得された赤色光画像を出力する赤色用撮像素子と、前記青色用分離プリズムにより取得された青色光画像を出力する青色用撮像素子と、前記緑色用分離プリズムにより取得された緑色光画像を出力する緑色用撮像素子との組み合わせにより構成され、前記緑色用撮像素子は、前記赤色用撮像素子および前記青色用撮像素子に対し画素ピッチが半画素ピッチだけずらして対応するプリズムに固着されており、前記緑色用撮像素子、前記赤色用撮像素子および前記青色用撮像素子の画像信号を用いて輝度信号をサンプリング取得することにより、解像度を向上させた画像信号を取得するように構成することもできる。
【0016】
また、本発明における光束分離光学系は、前記第二プリズムが、更なる緑色光用プリズムを追加的に備え、前記更なる緑色光用プリズムにより取得された緑色光画像を出力する更なる緑色用撮像素子を追加的に備え、前記緑色用撮像素子は、前記更なる緑色用撮像素子に対して画素ピッチが半画素ピッチだけずらして対応するプリズムに固着されており、
前記緑色用撮像素子および前記更なる緑色用撮像素子の画像信号を用いて輝度信号をサンプリング取得することにより、解像度を向上させた画像信号を取得するように構成することもできる。
【0017】
また、本発明における光束分離光学系は、前記第二プリズムが、P偏光波およびS偏光波分離プリズムにより構成され、前記P偏光波分離プリズムに対応し、P偏光波画像信号を出力するP波撮像素子と、前記S偏光波分離プリズムに対応し、S偏光波画像信号を出力するS波撮像素子とを備えているように構成することもできる。
【0018】
また、上述のいずれかの光束分離光学系を備えた撮像装置として構成することもできる。なお、上記した課題を解決する手段は、可能な限り組合せて使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
主画像成分と副画像成分とをダイナミックレンジ拡張用に異なる照度で取得するのに光束分離プリズムの反射膜(または分離膜)なしに主画像成分を取得することで、主画像は反射膜によるロスやノイズなしに画像取得が可能となる。光束分離プリズム硝材の内面反射により取得した低照度の副画像を取得し、高照度の主画像と合成することで、拡張されたダイナミックレンジの画像の確保を可能とする。また、フィールド毎や画素毎に違う照度の画像を交互に取得するのに比べ光束分離プリズムによりリアルタイムで主画像と副画像を分離し、取得しうるため、時間的ずれがなく、空間解像度減少が少ないカラーまたは白黒(B/W)画像が取得できる。更に、複数枚の主画像撮像素子との間で画素ずらしによる信号取得を併せ行うことでダイナミックレンジを拡張した高解像度の画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による実施例1の光束分離光学系の構成例を示す説明図である。
図2】本発明による撮像素子の照度に対するセンサー出力特性の説明図である。
図3】本発明による実施例2の光束分離光学系の構成例を示す説明図である。
図4】本発明による実施例3の光束分離光学系の構成例を示す説明図である。
図5】本発明による実施例3の光束分離光学系のダイナミックレンジ拡張ブロック回路構成例を示す説明図である。
図6】本発明による実施例3の光束分離光学系において画素ずらし処理によるブロック回路構成例を示す説明図である。
図7】本発明による実施例4の光束分離光学系の構成例を示す説明図である。
図8】本発明による実施例4の光束分離光学系の変形構成例を示す説明図である。
図9】本発明による実施例5の光束分離光学系の構成例を示す説明図である。
図10】本発明による実施例5の光束分離光学系の変形構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る光束分離光学系およびそれらを備えた撮像装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの説明図や図面も本発明の説明用に概略的または模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、実施例で用いているシステム構成、ブロック図、寸法、材質、形状、その相対配置および使用例は特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
本発明では、第一プリズム(副画像用プリズム)とその後段にエアギャップを介して配置された第二プリズム(主画像用プリズム)により構成されている。第一プリズムにおいては、入射光束を分離する反射膜なしにプリズムの内部反射を利用して入射光成分を取得し、撮像素子により副画像光出力を取得する。第二プリズムでは、第一プリズムを透過した残余光成分を取得し、撮像素子により主画像光出力を取得する。第一プリズムにより取得される反射光成分は、波長選択特性を有する反射膜(光学薄膜)を使用せずプリズムとエアギャップとの屈折率の相違を利用した内部反射(内面反射)による反射光成分を取得するため、入射光束の一部(約4%から10%強)が反射成分として反射され、残りの残余光成分である約90%以上が第二プリズムへ透過する。
【0023】
第一プリズムの内部反射光成分による画像は、第二プリズムで取得した画像に対し、入射光束量が少なく、撮像素子の飽和レベルを高く取得できる。この入射光束量の相違を利
て取得画像のダイナミックレンジを拡張する。以下、便宜上、第一プリズムを副画像用プリズム、第二プリズムを主画像用プリズムとも称する。本発明において、主画像および副画像は、可視光画像であるカラー画像または白黒(B/W)画像を想定しているが、特に明示しない限りこれらに限定されるものでない。また、副画像および主画像は、カラー画像であっても白黒画像であっても、またそれらの組み合わせであってもかまわない。
【実施例0024】
図1は、本発明による光束分離光学系(光束分離プリズム)1の実施例1を示す説明図である。レンズ部2から入射した画像光束は、第一プリズムとしての副画像用プリズム3(P1)へ入射し、入射光束の一部は、プリズム3の反射面4により反射し、プリズム3の全反射面5により全反射され、副画像用プリズム3より出射し、その後補正フィルタ6を介して副画像用撮像素子7に入射する。撮像素子7では取得した画像光束を光電変換し、
膜や誘電体多層膜などの反射用光電薄膜は一切施しておらず、プリズム硝材の内面反射に
【0025】
副画像用プリズム3(P1)の後段には、第二プリズムとしての主画像用プリズム8(P2)がエアギャップ9を介して設けられている。主画像用プリズム8(P2)の外面(エアギャップ側入射面)10においても入射光束の反射が生じ、この反射画像も副画像用撮
ズム3(P1)を透過した入射光束成分は主画像用プリズム8(P2)より出射し、補正フィルター11を介して主画像用撮像素子12へ入射する。撮像素子12では取得した画像を光電変換し、主画像信号Vを出力する。
【0026】
このエアギャップ9は、プリズム相互の光路干渉を防止すると共に、副画像用プリズム3(P1)の内部反射光束を効果的に取得するために設けられている。副画像用プリズム3(P1)と主画像用プリズム8(P2)とが密着している場合は、プリズム硝材の屈折率が同じかまたは屈折率の差は僅かなものとなり反射が微小なものとなるが、エアギャップ9を設けることで空気の屈折率(真空中で1.0)とプリズム硝材の屈折率の違いにより反射率が異なってくることを利用して内面反射率を高くしている。通常の屈折率ガラスでは、入射光束に対し約4%強の反射光束を取得し、反射比率を上げる場合は、高屈折率(ハイインデックス)ガラス(屈折率1.67以上)により約10%強の表面反射を取得しうることを確認している。このため反射光束対透過光束の分離比率は、ハイインデックスでない通常ガラス硝材では、略4%:96%、ハイインデックスタイプと称される高屈折率硝材では、略10%:90%が取得できる。
【0027】
このエアギャップ9により副画像用プリズム3に入射した光束成分は、そのプリズム3の反射面4により内面反射した反射成分に加えて、主画像用プリズム8の入射面10(外側)の外面からの外面反射も反射成分として追加されて取得することができる。このエアギャップ9の間隔は、5~30μm程度で良好な結果を得ているが、副画像用プリズム3の内面反射像と主画像用プリズム8(P2)の外面反射像とにより相互干渉(ビート)や二重画像が影響しない程度のエアギャップが望ましい。また、主画像用プリズム8(P2)の入射面10(エアギャップ側)に反射防止膜(ARC)を施すことで、このビートや二重画像を軽減させることができる。このように蒸着やコーティングによる反射膜を形成することなく副画像用プリズム3の内面反射および主画像用プリズム8の入射側外面反射により、光束分離プリズム1に入射した入射光束成分の約4%以上の反射成分を取得し、撮
【0028】
また、このエアギャップ9に窒素ガスを充填することでプリズムガラス表面の酸化を防止するように構成することもできる。この場合、窒素の屈折率は、1.000297であり、大気の屈折率は、1.000293であり、ほぼ同様の屈折率であるため反射率は空気の場合と同様であるとみなすことができる。
【0029】
このような構成により、プリズムの内面反射により得られた反射光成分の画像(副画像
した残余光成分(主画像信号V)は、約90%以上を取得することができる。詳細後述の
の異なる低照度画像と高照度画像により主画像の飽和が生じる部分を副画像により合成補完することでダイナミックレンジを拡大したカラー画像をリアルタイムで時間ズレなく取得することが可能となる。また、取得した主画像は、金属膜やコーティング干渉膜などを有していないためにこれら光学薄膜の影響を受けることなく、光学薄膜により低照度画像を取得する方式に比べ光学薄膜によるノイズやロスが無く、視認性に優れた主画像Vを取得することができる。
【0030】
次に、上述した光束分離光学系を用いたダイナミックレンジの拡張につき説明する。本
取得したものとして説明する。図2は、主画像信号と副画像信号のそれぞれの可視光撮像素子の照度に対する出力センサーレベルを示した説明図である。それぞれの可視光撮像素子は同じ特性を有するものとし、その飽和レベルは一例として300%とする。これは白色光のみを入力することもなく通常ビデオ信号の規格化された信号振幅内におさえるためニー処理を施すため、規定レベル(100%レベル)に対して飽和レベルを数倍(300%)に設定した場合(曲線V主画像特性)を例示している。
【0031】
であり、それぞれの撮像素子に入力される照度も90:10である。そのため撮像素子の性能が同じであり、主画像V信号で設定された撮像素子の飽和レベルが300%とすると、
副画像特性)。つまり主画像出力が飽和レベルに達しても照度の低い副画像出力は主画像の10倍程度の照度までは飽和していないこととなる。
【0032】
補正やガンマ処理により規定レベルである100%に圧縮することで圧縮信号(曲線V+
画像信号と合成処理したりして取得したセンサー画像の飽和(白飛び現象等)が生じないようにセンサーの規定100%レベルに設定する。
【0033】
本発明による光束分離プリズムでは、金属薄膜の蒸着膜やコーティング膜が存在せず、プリズム硝材の内部反射のみにより副画像成分を取得している。つまり、主画像成分は金属薄膜や誘電体多層膜などの反射膜を透過せず主画像取得用プリズムへ入射するため、画像信号取得用反射膜の影響を受けることなく分離膜によるノイズやロスの少ないダイナミックレンジが拡張された画像を取得することが可能となる。当然に、それぞれの画像信号は、同期信号発生手段(図示せず)により画像位相の同期を確保し、タイミングエラーなどを少なくしている。
【実施例0034】
図3は、本発明による実施例2の光束分離光学系(光束分離プリズム)20の構成例を示す説明図である。実施例2における光束分離プリズム20では、前述の実施例1の光束分離プリズムの入射光側に赤外光分離プリズムを配置したもので、赤外光撮像素子、副画像用撮像素子、主画像用撮像素子の3板式分離プリズムを構成している。図3において、実施例1、図1とは第一プリズムとしての副画像用プリズム3(P1)および第二プリズムとしての主画像プリズム8(P2)の形状が相違しているが、図1の部材に相当する部材構成には同じ番号を付してある。レンズ部(図示せず)から入射した画像光束は、赤外光分離プリズム21(PIR)へ入射し、赤外光分離プリズム21の反射面22により赤外光成分が分離されて反射され、可視光帯域成分は透過する。反射面22には、赤外光帯域成分を反射し、可視光成分を透過させる波長選択性を有する金属薄膜や誘電体膜などの光学膜が施されている。赤外光反射面22により反射された赤外光成分は、赤外光分離プリズム21の全反射面23により全反射し、赤外光分離プリズム21より出射し、赤外光用補正フィルタ24を介して赤外光用撮像素子25に入射する。赤外光用撮像素子25では取得した赤外光成分を光電変換し、赤外光画像(IR)として出力する。ここで、赤外光用補正フィルタ24は、可視光成分をカットして所望の赤外光帯域(例えば、近赤外光成分のみ等)を取り出す帯域フィルタであり、利用目的に応じて必要な赤外光帯域に制限して取り出すためのフィルタである。
【0035】
赤外光分離プリズム21の後段には、実施例1と同様のプリズム構成がエアギャップ26を介して設けられている。ここでのエアギャップ26は、赤外光用プリズム(PIR)と副画像用プリズム(P1)との光路干渉を防ぐためのギャップである。赤外光分離プリズム21を透過した可視光成分は、実施例1と同様、副画像用プリズム3(P1)へ入射し、プリズム3の反射面4により内面反射し、プリズム3の全反射面5により全反射し、プリズム3より出射し、補正フィルタ6を介して副画像用撮像素子7に入射する。副画像
副画像用プリズム3(P1)の反射面4には波長選択性を有する金属薄膜などの光学薄膜などは一切施しておらず、プリズム硝材とエアギャップとの屈折率の相違を利用してプリ
れら光学薄膜によるロスや影響のない視認性に優れた画像を取得することができる。
【0036】
副画像用プリズム3(P1)の後段には、主画像用プリズム8(P2)がエアギャップ9を介して設けられている。副画像用プリズム3(P1)を透過した可視光成分は主画像用プリズム8(P2)より出射し、補正フィルター11を介して主画像用撮像素子12へ入射する。撮像素子12では取得した可視光像を光電変換し、主画像信号Vを出力する。
【0037】
実施例2においては、ダイナミックレンジが拡張された可視光(カラーまたは白黒)画
画像と高ダイナミックレンジの可視光画像信号が取得し得ることで、マルチスペクトルカメラの利用範囲が格段に広範囲なものとなる。赤外光画像を取得する撮像装置は、監視カメラ、車載カメラ、医療用カメラ、軍事用カメラなどで利用されているが、極端に明暗のコントラストが違う画像の場合、ダイナミックレンジを拡張する必要性が生じる。例えば、逆光などで極端に明るい画像においては白とび現象が生じ、暗い部分では黒つぶれ現象が生じ画像の詳細が撮影できない状況となる。車載カメラや軍事用監視カメラなどでは、これらの白とび現象や黒つぶれ現象は極力回避する必要があり、実施例2による光束分離プリズムを適用することで、このような不具合を解消したダイナミックレンジを拡張した可視光画像と赤外光画像とを合成し、昼夜、逆光時撮影においてより視認性に優れた撮像装置を取得ることが可能となる。
【実施例0038】
図4は、本発明による実施例3の光束分離光学系(光学分離プリズム)30を示す説明図である。実施例3の光束分離プリズム30において、第一プリズムに相当する副画像用プリズム3(P1)は、図1における副画像用プリズムと同様であり、同じ部材構成には同じ番号を付してある。実施例3では、副画像用プリズム3(P1)には、単板式カラー撮像素子7が装着されている。その後段に第二プリズムに相当する主画像プリズムとして赤色分離プリズム32(PR)、青色分離プリズム33(PB)および緑色分離プリズム34(PG)の4板式(4撮像素子)構成となっている。つまり、主画像用プリズムは、実施例1が単板式カラー撮像素子であるのに対し、実施例3では、R、G、Bの3色分離プリズムを組み合わせにより3色の画像信号を取り出している。更に、この実施例3では、3色分離プリズム構成を利用して、画素ずらしによる高解像度の主画像を取得した上でダイナミックレンジを拡張する方式を提示する。
【0039】
入射した画像光束は、副画像用プリズム3(P1)へ入射し、その画像光束の一部は、プリズム3の反射面4により内部反射される。内部反射された光束は副画像用プリズム3の全反射面5により全面反射するようにそれぞれの反射角度で構成されている。全反射面5により全反射された画像光束は、副画像用プリズム3より外部へ出射し、補正フィルタ6を介して単板カラー撮像素子の副画像用プリズム撮像素子7へ入射する。この撮像素子
【0040】
副画像用プリズム3の反射面4には波長選択性を有する光学薄膜は一切施されておらず、プリズム硝材の内部反射により反射光束を取得する。副画像用プリズム3の後段には、主画像用にR、G、B3色分離プリズムが配設されており、副画像用プリズム3を透過した画像光束は赤色分離プリズム32(PR)へ入射する。副画像用プリズム3と赤色分離プリズム32との間にはエアギャップ9が設けられている。
【0041】
このエアギャップ9は、実施例1および実施例2における副画像用プリズムと主画像用プリズムとの間に設けられたエアギャップと同様で、副画像用プリズム3の反射面4には光学薄膜を使用せずこのエアギャップの空気または窒素ガスと副画像用プリズム硝材との屈折率の相違により画像光束の内部反射を取得している。そのため、透過した主画像光束成分は、光学薄膜によるロスや影響が無く、光学特性を改善することができる。また、赤色分離プリズム32(PR)の入射面40(ギャップ側)からの反射成分も副画像用光束として利用することができる。その入射面40(ギャップ側)に反射防止コーティングを施してビートや二重画像を軽減するように構成することもできる。
【0042】
赤色分離プリズム32(PR)へ入射した入射光の残余成分の光束は、プリズム32の分離反射面41により赤色光帯域成分が分離反射され、それ以外の帯域成分は透過し、次段以降のプリズムへ入射する。赤色分離プリズム32の分離反射面41には赤色光成分を反射させ、それ以外の帯域成分を透過させる波長選択特性を有する金属薄膜の蒸着コーティングや誘電体多層膜のコーティングにより形成されている。分離反射膜41により反射された赤色光成分は、赤色用プリズムの内側全反射面40により全面反射するよう構成されている。全反射面40(内側)により全面反射された赤色光成分は、赤色分離プリズム32より外部へ出射し、補正フィルタ42を介して赤色用撮像素子43へ入射する。この撮像素子43は、入射した赤色光成分を電気信号に変換し、赤色光画像信号(R)を出力する。なお、補正フィルタ42は、赤色光帯域を選択的に取り出す特性を有するフィルタである。
【0043】
赤色分離プリズム32(PR)を透過した透過光成分は、赤色帯域以外の波長帯域成分(主として青色帯域成分および緑色帯域成分)であり、赤色分離プリズム32の後段に配置された青色分離プリズム33(PB)へ入射する。プリズム33に入射した光束は、青色光分離反射面44にて青色光成分が反射され、それ以外の帯域(主として緑色光成分)を透過させる。青色光分離反射面44は、青色光帯域を選択的に反射する光学薄膜により形成されている。青色光分離反射面44において青色成分の波長帯域が反射光として反射され、それ以外の緑色成分は透過し、次段の緑色用プリズム34(PG)へ入射する。ここで、赤色分離プリズム32(PR)と青色分離プリズム33(PB)との間にはエアギャップ45が設けられおり、それぞれのプリズム光路の相互干渉を防止するように構成されている。
【0044】
青色分離プリズム33(PB)の分離反射面44により反射された青色光成分は、青色分離プリズム33の内側反射面46により全反射するようにプリズム形状が構成されており、全反射面46で全反射された青色成分光は補正フィルタ47を介して、青色用撮像素子48へ入射する。撮像素子48は、入射した青色成分光を電気信号に変換し、青色光画像信号(B)を出力する。なお、補正フィルタ47は、青色光帯域を選択的に取り出す特性を有するフィルタである。
【0045】
青色分離プリズム33(PB)を透過した可視光帯域は、主として緑色帯域の波長帯域成分であり、青色分離プリズム33の後段に密着して配置された緑色用プリズム34(PG)へ入射する。この緑色光成分は緑色用プリズム34を透過して出射し、緑色用補正フィルタ49を介して、緑色用撮像素子50へ入射する。撮像素子50は、入射した緑色光成分を電気信号に変換し、緑色光画像信号(G)を出力する。なお、この緑色用補正フィルタ49は、緑色光帯域を選択的に取り出す特性を有するフィルタである。
【0046】
このようなプリズム構成において、副画像用プリズム3(P1)の内部反射により副画
(PB)、緑色用プリズム34(PG)によりR、G、Bそれぞれ可視光成分が主画像用として出力される。
【0047】
本実施例3では第二プリズムに相当する主画像用プリズムにおいて、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の順に可視光成分を分離、取得しているが、それぞれの可視光成分の取得順はいずれの順番でも構わない。ここで重要な点は、主画像用プリズムを構成するR、G、Bから成る可視光プリズム組み合わせの前段において第一プリズムに相当する副画像用プリズム3(P1)の反射面4が光学薄膜による反射膜なしに、プリズム内部反射光成
への入射光束が反射膜のロスや影響を少なくして主画像成分の取得が可能となる。
【0048】
り、R、G、Bの主画像成分は、残りの残余光束成分として取得されるため、この入射光束量の相違を利用してダイナミックレンジを拡張したカラー画像を取得する。図5は、本実施例3でのダイナミックレンジを拡張する回路の一例を示すブロック説明図である。光束分離光学系30により取得された、赤色画像出力R、青色画像出力B、緑色画像出力Gは、それぞれの出力に対するダイナミックレンジ(DR)拡張処理手段51に供給される。
【0049】
手段51に供給される。DR拡張処理手段51内では、R、G、B出力信号とデモザイク
び55において合成処理とそれに伴うその他の処理が行われる。それぞれの画像合成処理手段53、54、55で合成処理された出力信号は、画像信号処理手段56へ供給される。この画像処理手段56は、それぞれの撮像素子により得られた画像信号を、低雑音化、ゲイン補正、ディテール、ガンマなどの一連の画像処理を施して出力する画像信号処理プロセッサである。
【0050】
R、B、Gのそれぞれの画像処理手段56の出力は、マトリックス回路57へ供給され、輝度信号(Y)および色差信号から成るコンポーネント信号を出力する。この色差信号は利用目的に応じて(U、V)、(Pb、Pr)、(Cb、Cr)などの信号を出力する。ここではマトリックス回路56による、色差信号を生成しているが、コンポーネント信号は、R、G、Bの画像出力であっても輝度信号と色差信号による(Y/U/V)、(Y/PB/PR)、(Y/Pb/Pr)、(Y/Cb/Cr)などいずれであっても良い。
【0051】
本実施例3においては、上述のようにして取得した主画像信号および副画像信号によるダイナミックレンジ拡張に加えて、画素ずらしによる高解像度画像を取得するように構成している。本発明の光束分離光学系30において、緑色用プリズム34(PG)に取り付けられた緑色光用撮像素子50は、他の赤色分離プリズム32(PR)の赤色用撮像素子43および青色分離プリズム34(PB)の青色用撮像素子48に対し半画素ピッチ分だけずらして配置されている。
【0052】
図6は、このような光束分離光学系30構成の画素ずらし処理を行うブロック説明図である。R、G、Bそれぞれの撮像素子により取り出されたR、G、B画像信号は、画素ずらし処理手段60へ供給される。それぞれの撮像素子により取り出された画像信号は同期信号発生手段(図示せず)により画像位相の同期が確保されている。画素ずらし処理手段60においては、緑色光画像出力Gと他のR、B画像出力信号とを用いて輝度信号(Y)のサンプリングを行う。これにより、取り出された輝度信号(Y)サンプルは、画素ずらし効果により2倍の解像度を確保した3原色(R、G、B)信号を取得することができる。解像度が倍増されたそれぞれの3原色信号はダイナミックレンジ拡張手段51で上述の通り副画像信号と合成され、ダイナミックレンジを拡張して、画像処理手段56へ供給される。
【0053】
つまり、撮像素子として2K撮像素子をそれぞれ使用した場合、解像度4Kに相当する画像信号を取得することができる。この様に画素ずらし処理により解像度を上げて取得した画像信号を用いてダイナミックレンジ拡張処理手段51によりダイナミックレンジを拡張する。このダイナミックレンジ拡張処理手段は、図5におけるDR拡張処理手段51と
信号とR、G、B主画像信号とにより合成処理される。
【0054】
蒸着膜やコーティング膜などの光学薄膜を使用していないため、光学膜によるロスやノイズなしに視認性にすぐれた可視光画像であって、ダイナミックレンジが拡張された可視光画像を取得しうると共に、画素ずらしによる解像度を向上させた可視光画像を取得することができる。
【0055】
この実施例3においては、第二プリズムとして主画像を3原色(R、G、B)分離プリズムにより取得しているが、追加的に緑色分離プリズムを設けて4色(R、G1、G2、B)を取得し、G1の画素とG2画素とを半画素ピッチ分だけ画素ずらしして配置し、輝度信号をサンプリングして取り出すことにより2倍の解像度の画像信号(デュアルグリーン画素ずらしと言われている画像信号)を取得することができる。また、第二プリズムとしての主画像用プリズムとしては、例示した、3板(R、G、B)方式、4板(R、G1、G2、B)方式に限らず、特定の主画像撮像素子を他の主画像撮像素子と画素ずらし配置して画素ずらしによる解像度を上げることができるような複数の主画像用プリズム、複数撮像素子方式であれば何板の撮像素子を用いた方式であっても構わない。
【実施例0056】
図7は、実施例4の3板式撮像素子を用いた光束分離光学系70を示す説明図である。光束分離光学系70は、図1における光束分離光学系1の第二プリズムに相当する主画像用プリズムにおいてP/S分離プリズムを用いて可視光のP偏光波像およびS偏光波像を取得するもので、図1の光束分離光学系1と同じ部材構成には同じ番号を付している。図7において、レンズ部(図示せず)により集光された画像光束は、第一プリズムに相当する副画像用プリズム3(P1)へ入射する。そのプリズム3へ入射した画像光束は、図1
Vを出力する。図1と同様、このプリズム3の反射面4には光束反射用の光学薄膜を使用せず、プリズム3とエアギャップ9との反射率の相違を利用して反射光束を取得している。そのため、透過した主画像光束成分は、光学薄膜のロスや影響なしに取得することができ
3(P1)の内部反射のみにより取得されたものであり、入射光束の一部がプリズム内で反射され、残余光束は、透過して後段の主画像用プリズムへ入射する。
【0057】
副画像用プリズム3を透過した画像光束は、副画像用プリズム3(P1)の後段にエアギャップ9を挟んで配置された主画像用プリズムに入射する。この主画像プリズムは、主画像のS偏光波像を取得するS波用プリズム71(PS)とP偏光波像を取得するP波用プリズム76(PP)により構成されたP/S分離プリズムである。このP/S分離プリズムは、偏光ビームスプリッタ(PBS;Polarizing Beam Splitter)として一体化されたもので構成することができる。S波用プリズム71(PS)へ入射した光束は、P/S分離膜72により主画像のS偏光波成分とP偏光波成分とに分離され、S偏光波成分が反射され、P偏光波成分は透過する。P/S分離膜72により反射されたS偏光波成分は、プリズム71の全反射面73により全反射され、補正フィルタ74を介して主画像S波用撮像素子75へ入射する。撮像素子75は、入射光束を光電変換して主画像S波画像信号(V/S)を出力する。
【0058】
P/S分離膜72を透過した光束(主として主画像P波成分)は、P波用プリズム76(PP)より出射して、P偏光波用補正フィルタ77を介して主画像P波用撮像素子78へ入射する。撮像素子78は、入射光束を光電変換して主画像P波画像信号(V/P)を出力する。ここで上述の補正フィルタ74(S偏光波用)および77(P偏光波用)は、それぞれの偏光波を透過させるS波偏光フィルタおよびP波偏光フィルタであり、必要に
信号V/Sおよび主画像P波信号V/Pを取得する。ここで、分離膜72によるP/S偏光波分離は、一般的には均等分離を基準とするが、S偏光波画像とP偏光波画像とは、利用目的により分離割合を変更することもできる。
【0059】
よる入射光束の一部であり、主画像信号V/SおよびV/Pは、入射光量に対し大部分の透過した残余成分の光束量を取得できる。この画像光束量の相違を利用して前述と同様な方法により主画像S波信号V/SおよびP波信号V/Pのそれぞれと副画像信号とで合成
【0060】
図8は、本発明による図7の光束分離光学系の変形構成例(光束分離光学系80)を示す説明図であり、P/S分離プリズムとして変形偏光ビームスプリッタ71’および76’を適用したものである。図7と同じ部材構成には同じ番号が付してある。その偏光ビーム
光ビームスプリッタのP/S分離膜72’は、入射光軸に対し45°の反射・分離面で構成されており、このP/S分離膜72’でS偏光波成分は反射され補正フィルタ74を介してS偏光波用撮像素子75へ入射し、S偏光波画像成分(V/S)を出力する。一方、分離膜72’を透過したP偏光波成分は、補正フィルタ77を介してP偏光波用撮像素子78へ入射し、P偏光波画像成分(V/P)を出力する。ここで、取得したS偏光波画像成分は、P/S分離膜72’で一度反射した光束画像を取得しているため、他の出力画像とは裏画像(反対画像)として取得される。そのため取得したS波画像出力V/Sは、画像反転回路89により反転させ、他の画像と同じ表画像として使用する。
【0061】
この実施例4における光束分離光学系70および80は、S波画像およびP波画像の特徴を利用する種々の場面で適用することができる。例えば、交通監視において車のフロントガラスの光反射により車内のドライバー確認が困難な場合、表面反射を抑制可能なP波画像を高ダイナミックレンジの画像で取得し、より視認性の高い画像で確認することができる。実施に当たっては、取得したダイナミックレジを拡張したS波画像およびP波画像を切り替えたり、また、取得したS波画像とP波画像とを合成処理してより高感度とした合成画像とを比較、分析して使用することもできる。特に、高輝度ライトが映り込むようなガラス、水面反射などを伴う場面の画像分析などにおいては、効果的に適用することができる。
【実施例0062】
図9は、4板式撮像素子を用いた光束分離光学系90を示す説明図である。図9においては、図7の3板式撮像素子の画像光束の入射側に赤外光分離プリズム21(PIR)を
外光画像信号(IR)を取得している。この光束分離光学系90は、図3における光束分離光学系20の第二プリズムに相当する主画像用プリズムに代えてP/S分離プリズム(PBS)を用い可視光のS偏光波像およびP偏光波像を取得するものであり、図3の光束分離光学系20と同じ部材構成には同じ番号を付している。
【0063】
図9において、レンズ部(図示せず)により集光された画像光束は、まず赤外光分離プリズム21(PIR)へ入射する。入射した画像光束は、赤外光分離プリズム21の反射面22により赤外光成分が分離されて反射される。反射面22には、赤外光帯域成分を反射し、可視光成分を透過させる波長選択性を有する金属薄膜や誘電体膜などの光学薄膜が施されている。赤外光反射面22により反射された赤外光成分は、赤外光分離プリズム21の全反射面23により全反射し、赤外光分離プリズム21より出射し、補正フィルタ24を介して赤外光用撮像素子25に入射する。赤外光用撮像素子25では取得した赤外光像成分を光電変換し、赤外光画像(IR)として出力する。補正フィルタ24は、可視光成分をカットして所望の赤外光帯域(例えば、近赤外光成分のみ等)を取り出す帯域フィルタであり、利用目的に応じて必要な赤外光帯域に制限して取り出すためのフィルタである。
【0064】
赤外光分離プリズム21を透過した可視光成分は、エアギャップ26を挟んで配置された第一プリズムに相当する副画像用プリズム3(P1)へ入射する。副画像用プリズム3へ入射した画像光束は、プリズム内の反射面4により反射され、全反射面5により全反射されてプリズム4から出射し、補正フィルタ6を介して副画像用撮像素子7へ入射する。
ズム内の反射面4には分離反射用の光学薄膜を施すこと無く、プリズムの内部反射のみにより反射光束が取得されている。そのため、入射光束の一部が反射され透過した多くの残余光束(主画像用光束)は、光学薄膜の影響なしに透過して、エアギャップ9を挟んで後段の主画像用プリズムへ入射する。
【0065】
主画像用プリズムは、偏光ビームスプリッタ(PBS)であり主画像のS偏光波像を取得するS波用プリズム81(PS)およびP偏光波像を取得するP波用プリズム86(PP)により構成されている。S波用プリズム81(PS)へ入射した光束は、P/S分離膜82により主画像のS偏光波成分とP偏光波成分とに分離され、S偏光波成分が反射され、P偏光波成分は透過する。P/S分離膜82により反射されたS偏光波成分は、プリズム81の全反射面83により全反射され、S偏光波用補正フィルタ84を介して主画像S波用撮像素子85へ入射する。撮像素子85は、入射光束を光電変換して主画像S波画像信号(V/S)を出力する。
【0066】
P/S分離膜82を透過した光束(主として主画像P波成分)は、P波用プリズム86より出射して、P偏光波用補正フィルタ87を介して主画像P波用撮像素子88へ入射する。撮像素子88は、入射光束を光電変換して主画像P波画像信号(V/P)を出力する。ここで上述の補正フィルタ84(S偏光波用)および87(P偏光波用)は、それぞれの偏光波を透過させるS波偏光フィルタおよびP波偏光フィルタであり、必要に応じて配置
および主画像P波信号V/Pを取得し、これらの信号を前述の様に合成処理してダイナミ
V+V/P)を取得する。
【0067】
図10は、本発明による図9の変形構成例としての光束分離光学系100を示す説明図であり、P/S分離プリズムとして変形偏光ビームスプリッタ81’および86’を適用したものである。図10において、図9と同じ部材構成には同じ番号が付してある。その
である。偏光ビームスプリッタのP/S分離膜72’は、入射光軸に対し45°の反射・分離面で構成されており、このP/S分離膜82’でS偏光波成分は反射され補正フィルタ84を介してS偏光波用撮像素子85へ入射し、S偏光波画像成分(V/S)を出力する。一方、分離面82’を透過したP偏光波成分は、補正フィルタ87を介してP偏光波用撮像素子88へ入射し、P偏光波画像成分(V/P)を出力する。ここで、取得したS偏光波画像成分は、分離面82’で一度反射した光束画像を取得しているため、裏画像(反対画像)として取得される。そのため取得したS波画像出力V/Sは、画像反転回路89により反転させ、他の画像と同じ表画像として使用する。
【0068】
この実施例5の光束分離光学系90および100では、ダイナミックレンジを拡張した
画像信号(IR)を取得している。このような光束分離プリズム80を組み込んだ撮像装置の利用例としては、医療用として内視鏡やダーモスコープ(ダーモスコピー)などの皮膚観察カメラが挙げられる。皮膚疾患などの観察、分析においては皮膚表面の状態観察と共に、皮下状態も観察することでより詳細で正確な診断が可能となる。そのために赤外光画像により皮下状態を観察したり、表面が液状の皮膚疾患などをライトで照射して高ダイナミックレンジのS偏光波画像とP偏光波画像とを取得して比較、観察、評価することで皮膚の病変状態を確認したりすることができる。
【0069】
以上、副画像信号を反射膜なしにプリズム内部反射により取得し、主画像信号と合成処理しダイナミックレンジ拡張に用いると共に、主画像信号画素ずらし手法を適用して画像解像度を増加させたり、P/S偏光波画像を取得するような構成について説明したが、取得する画像信号の帯域や撮像素子やプリズムの枚数に限定されることなく、2板、3板、5板、6板などの複数センサー構成においても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明による光束分離光学系を用いて高ダイナミックレンジおよび高解像度の視認性に優れた画像を取得可能であり、赤外光画像やP/S偏光波画像と組み合わせてFAカメラ、監視カメラ、観察カメラ、車載カメラ、気象カメラ、航空機カメラ、内視鏡カメラなど利用範囲が広範なものとなり、業務用、民生用、工業用、医療用、軍事用など多岐にわたる産業上の利用可能性が広がる。
【符号の説明】
【0071】
1.光束分離光学系、2.レンズ部、3.副画像用プリズム(P1)、4.P1反射面、5.P1全反射面、6.P1用補正フィルタ、7.副画像用撮像素子、8.主画像用プリズム(P2)、9.エアギャップ、10.P2入射面(外側)・P2全反射面(内側)、11.P2用補正フィルタ、12.主画像用撮像素子、21.赤外光分離プリズム(PIR)、22.PIR反射面(分離面)、23.PIR全反射面、24.PIR用補正フィルタ、25.赤外光用撮像素子、26.エアギャップ、32.赤色分離プリズム(PR)、33.青色分離プリズム(PB)、34.緑色用プリズム(PG)、51.ダイナミックレンジ(DR)拡張処理手段、52.デモザイク処理手段、56.画像処理手段、57.マトリックス回路、60.画素ずらし処理手段、71.S波用プリズム(PS)、72.P/S分離膜、75.S波用撮像素子、76.P波用プリズム(PP)、78.P波用撮像素子、82.P/S分離膜、89.画像反転回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10