IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 采▲ぎょく▼科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086069
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】光学構造体
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/124 20060101AFI20230614BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G02B6/124
G02B6/32
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050834
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】17/547,025
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507296388
【氏名又は名称】采▲ぎょく▼科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】VisEra Technologies Company Limited
【住所又は居所原語表記】No.12,Dusing Rd.1, Hsinchu Science Park,Hsin-Chu City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】謝 馨儀
(72)【発明者】
【氏名】謝 錦全
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA14
2H137BA34
2H137BC02
2H137BC16
2H137BC25
2H137BC27
2H137CD45
2H137FA05
2H147AA02
2H147BC13
2H147BG04
2H147CA08
2H147CA18
2H147EA02A
2H147EA12C
2H147EA13B
2H147EA13C
2H147EA14C
2H147EA15C
2H147EA16B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学構造体に関する。特に、光学構造体は、バイオセンサに適用する。バイオセンサ応用における蛍光標識生体分子の発光効率を改善するために、グレーティング導波路のグレーティング結合効率の問題を解決する必要がある。
【解決手段】光学構造体100は、グレーティングカプラ130及びマイクロレンズ150を含む。グレーティングカプラは、レーザ光160を受光するように構成される。マイクロレンズは、グレーティングカプラの上方にあり、金属シールド170は、マイクロレンズを覆い、レーザ光がグレーティングカプラの有効結合領域Reffに入ることを可能にする開口172を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を受光するように構成されるグレーティングカプラと、
前記グレーティングカプラの上方にあるマイクロレンズと、を含み、金属シールドは、前記マイクロレンズを覆い、前記レーザ光が前記グレーティングカプラの有効結合領域に入ることを可能にする開口を有する、光学構造体。
【請求項2】
前記金属シールドの前記開口は、前記レーザ光の一部を前記マイクロレンズに入らせるように構成され、-50°~50°の範囲にある角度を有し、
前記金属シールドは、前記マイクロレンズと前記グレーティングカプラとの間に配置される、請求項1に記載の光学構造体。
【請求項3】
前記レーザ光は、オフセット角度を有し、前記レーザ光の照射領域は、前記グレーティングカプラの前記有効結合領域より大きく、
前記オフセット角度は、-20°~20°の範囲にある、請求項1~2のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項4】
前記グレーティングカプラに隣接するコア層と、
前記コア層によって覆われ、サファイヤ又はガラスを含み、1.45~2.0の範囲にある屈折率を有する基板と、
前記コア層を覆う上部クラッド層であって、シリコン酸化物又はポリマーを含み、前記コア層の屈折率は、前記上部クラッド層の屈折率より大きい、上部クラッド層と、を更に含み、
前記上部クラッド層は、前記屈折率が1.6未満であり、誘電率が可視光波長で0.00001未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項5】
前記基板と前記コア層との間にある下部クラッド層を更に含み、前記下部クラッド層は、1.6未満の屈折率及び可視光波長で0.00001未満の誘電率を有し、前記基板は、シリコン及びCMOSを含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項6】
前記グレーティングカプラは、前記コア層に埋設され、上方からみて直線状であり、前記マイクロレンズの断面形状は、半円筒状であり、前記コア層は、平面導波路を含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項7】
前記グレーティングカプラは、前記コア層に埋設され、上方からみて湾曲した形状を有し、前記コア層は、複数のチャネル導波路を含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項8】
前記グレーティングカプラは、前記コア層に埋設され、前記基板に面する面と、前記面に隣接する側壁とを有し、前記光学構造体は、前記グレーティングカプラの前記面及び前記側壁に配置される金属反射体を更に含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項9】
前記グレーティングカプラは、前記マイクロレンズに面する前記コア層の面に配置され、前記コア層の一部は、前記グレーティングカプラと前記基板との間にあり、
前記グレーティングカプラの材料は、前記コア層の材料とは異なり、
前記グレーティングカプラは、テーパ状の厚さを有する、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項10】
前記グレーティングカプラは、前記基板に面する前記コア層の面に配置され、前記コア層の一部は、前記マイクロレンズと前記グレーティングカプラとの間にあり、
前記光学構造体は、前記基板に面する前記グレーティングカプラの面に配置される金属反射体を更に含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項11】
前記グレーティングカプラは、段階グレーティング構造であり、前記段階グレーティング構造は、第1の垂直側壁と、第2の垂直側壁と、前記第1の垂直側壁及び前記第2の垂直側壁に隣接する水平面とを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項12】
前記グレーティングカプラは、ブレーズドグレーティング構造であり、前記ブレーズドグレーティング構造は、前記ブレーズドグレーティング構造の頂部から前記ブレーズドグレーティング構造の底部へ延びる斜めの側壁を含み、前記ブレーズドグレーティング構造の幅は、前記ブレーズドグレーティング構造の頂部から前記ブレーズドグレーティング構造の底部へ徐々に増加する、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項13】
前記グレーティングカプラは、傾斜グレーティング構造であり、前記傾斜グレーティング構造は、第1の斜めの側壁と、第2の斜めの側壁と、前記第1の斜めの側壁及び前記第2の斜めの側壁に隣接する頂面とを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学構造体に関する。特に、光学構造体は、バイオセンサに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
グレーティング導波路は、バイオセンサ、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)及び電気通信に広く適用されている。バイオセンサの分野において、グレーティング結合効率は、蛍光標識生体分子(fluorescence-labeled biomolecules)の発光効率に影響を及ぼす。幾つかの要因、例えば、外光とグレーティング構造とのアライメント(位置関係、位置合わせ)、グレーティング導波路構造における光学要素の材料特性、及びグレーティングカプラの幾何学的構造は、グレーティング結合効率に影響を及ぼす。
【0003】
導波路コア上のエバネッセント(evanescence)波領域内の蛍光標識生体分子を均一及び局在励起するための、導波路層を伝搬する光は、グレーティングナノ構造を介して、光学構造体に入る外光を結合することにより生成することができる。しかしながら、レーザビームからグレーティング導波路への結合効率が比較的低いと、蛍光タグの低い発光効率を引き起こし、これは、(xyz軸のオフセットと入射角を含む)アライメント要求が厳しく、レーザビームの直径に比べてグレーティングカプラの有効結合幅が比較的小さいためである。したがって、バイオセンサ応用における蛍光標識生体分子の発光効率を改善するために、グレーティング導波路のグレーティング結合効率の問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、光学構造体を提供する。光学構造体は、グレーティング(grating、回折格子)カプラ及びマイクロレンズを含む。グレーティングカプラは、レーザ光を受光するように構成される。マイクロレンズは、グレーティングカプラの上方にあり、金属シールドは、マイクロレンズを覆い、レーザ光がグレーティングカプラの有効結合領域に入る(入射する)ことを可能にする開口を有する。
【0005】
本開示の幾つかの実施形態において、金属シールドの開口は、レーザ光の一部をマイクロレンズに入らせるように構成され、-50°~50°の範囲にある角度を有する。
【0006】
本開示の幾つかの実施形態において、レーザ光は、光学システムの位置ずれ(misalignment)によるオフセット角度を有し、レーザ光の照射領域は、グレーティングカプラの有効結合領域より大きい。
【0007】
本開示の幾つかの実施形態において、オフセット角度は、-20°~20°の範囲にある。
【0008】
本開示の幾つかの実施形態において、金属シールドは、マイクロレンズとグレーティングカプラとの間に配置される。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態において、光学構造体は、コア層、基板及び上部クラッド層を更に含む。コア層は、グレーティングカプラに隣接する。基板は、コア層によって覆われる。上部クラッド層は、コア層を覆う。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態において、基板は、サファイヤ又はガラスを含み、1.45~2.0の範囲にある屈折率を有する。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態において、基板は、シリコン又はCMOSを含む。
【0012】
本開示の幾つかの実施形態において、光学構造体は、基板とコア層との間にある下部クラッド層を更に含み、下部クラッド層は、1.6未満の屈折率及び可視光波長で0.00001未満の誘電率を有する。
【0013】
本開示の幾つかの実施形態において、上部クラッド層は、シリコン酸化物又はポリマーを含み、コア層の屈折率は、上部クラッド層の屈折率より大きい。
【0014】
本開示の幾つかの実施形態において、上部クラッド層は、屈折率が1.6未満であり、誘電率が可視光波長で0.00001未満である。
【0015】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、コア層に埋設される。
【0016】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、上方からみて直線状であり、マイクロレンズの断面形状は、半円筒状であり、コア層は、平面導波路を含む。
【0017】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、上方からみて、湾曲した(curved)形状を有し、コア層は、複数のチャネル導波路を含む。
【0018】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、基板に面する面と、該面に隣接する側壁とを有し、光学構造体は、グレーティングカプラの面及び側壁に配置される金属反射体を更に含む。
【0019】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、マイクロレンズに面するコア層の面に配置され、コア層の一部は、グレーティングカプラと基板との間にあり、グレーティングカプラの材料は、コア層の材料とは異なる。
【0020】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、テーパ状の厚さを有する。
【0021】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、基板に面するコア層の面に配置され、コア層の一部は、マイクロレンズとグレーティングカプラとの間にある。
【0022】
本開示の幾つかの実施形態において、光学構造体は、基板に面するグレーティングカプラの面に配置される金属反射体を更に含む。
【0023】
本開示の幾つかの実施形態において、グレーティングカプラは、段階(step)グレーティング構造、ブレーズドグレーティング構造又は傾斜(slanted)グレーティング構造である。
【0024】
本開示の幾つかの実施形態において、段階グレーティング構造は、第1の垂直側壁と、第2の垂直側壁と、第1の垂直側壁及び第2の垂直側壁に隣接する水平面とを含む。
【0025】
本開示の幾つかの実施形態において、ブレーズドグレーティング構造(blazed grating structure)は、ブレーズドグレーティング構造の頂部からブレーズドグレーティング構造の底部へ延びる斜めの側壁を含み、ブレーズドグレーティング構造の幅は、ブレーズドグレーティング構造の頂部からブレーズドグレーティング構造の底部へ徐々に増加する。
【0026】
本開示の幾つかの実施形態において、傾斜グレーティング構造は、第1の斜めの側壁と、第2の斜めの側壁と、第1の斜めの側壁及び第2の斜めの側壁に隣接する頂面とを含む。
【0027】
本開示の態様は、添付図面を参照しながら、以下の詳細な説明から最もよく理解される。様々な特徴は、当業界の標準的技法に従って、原寸大には描かれていないことに注意すべきである。実際、説明を明確にするために、様々な特徴の寸法は、任意に拡大又は縮小されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本開示の幾つかの実施形態による光学構造体の断面図である。
図1B図1Aにおけるグレーティングカプラの拡大図である。
図2】本開示の幾つかの実施形態による光学構造体の断面図である。
図3】本開示の幾つかの実施形態による光学構造体の断面図である。
図4】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図5】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図6】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図7】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図8】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図9A】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図9B図9Aにおけるグレーティングカプラの拡大図である。
図10A】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図10B図10Aにおけるグレーティングカプラの拡大図である。
図11A】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図11B図11Aにおけるグレーティングカプラの拡大図である。
図12】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図13】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図14】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図15】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図16】本開示の代替の実施形態による光学構造体の断面図である。
図17A図16における光学構造体の金属シールドの上面図である。
図17B図16における光学構造体の基板、コア層及びグレーティングカプラの上面図である。
図17C図17BにおけるA-A’線に沿う基板、コア層及びグレーティングカプラの断面図である。
図18A図16における光学構造体の金属シールドの上面図である。
図18B図16における光学構造体の基板、コア層及びグレーティングカプラの上面図である。
図18C図18BにおけるB-B’線に沿う基板、コア層及びグレーティングカプラの断面図である。
図19図16における光学構造体の基板、コア層及びグレーティングカプラの上面図である。
図20図16における光学構造体の基板、コア層及びグレーティングカプラの上面図である。
図21A】C-C’線に沿う図19の断面図、D-D’線に沿う図20の断面図である。
図21B】C-C’線に沿う図19の断面図、D-D’線に沿う図20の断面図である。
図21C】C-C’線に沿う図19の断面図、D-D’線に沿う図20の断面図である。
図21D】C-C’線に沿う図19の断面図、D-D’線に沿う図20の断面図である。
図22A】本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラの様々なグレーティング構造の断面図である。
図22B】本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラの様々なグレーティング構造の断面図である。
図22C】本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラの様々なグレーティング構造の断面図である。
図22D】本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラの様々なグレーティング構造の断面図である。
図22E】本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラの様々なグレーティング構造の断面図である。
図22F】本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラの様々なグレーティング構造の断面図である。
図23A】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図23B】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図24A】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図24B】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図25A】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図25B】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図26A】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
図26B】本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光の入射角強度チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するための、多くの異なる実施形態又は例を提供するものである。以下、本開示を簡略化するために、部品及び配置の特定の例を説明する。もちろん、これらは、例に過ぎず、限定することを意図するものではない。例えば、以下の説明における第2の特徴の上方又は上の第1の特徴の形成(formation of a first feature over or on a second feature)は、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触して形成される実施形態を含んでもよく、また、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触しないように、追加の特徴が第1の特徴と第2の特徴との間に形成され得る実施形態を含んでもよい。更に、本開示は、様々な例において符号及び/又は文字を繰り返してもよい。この繰り返しは、簡略化と明瞭化を目的としており、それ自体では、説明した様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を示すものではない。全ての要素/部品の数は、例示のためのものに過ぎず、本開示を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0030】
本明細書では、第1、第2などの用語を使用して様々な要素を説明するが、これらの要素は、これらの用語によって限定されないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、実施形態の範囲を逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で使用されるように、用語「及び/又は」は、関連するリストされた項目のうちの1つ又は複数の任意及び全ての組合せを含む。
【0031】
更に、「下」、「下方」、「下部」、「上方」、「上部」等のような空間的に相対的な用語は、1つの要素又は特徴と図示される他の要素(複数の要素)又は特徴(複数の特徴)との関連性を容易に説明するために本明細書で使用されてもよい。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用又は動作における装置の他の向きを包含するものとして意図されている。装置は、他の方向(90°回転するか又は他の向き)に配向されてもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、同様にそれに応じて解釈されてもよい。
【0032】
バイオセンサの分野において、蛍光標識生体分子の発光効率は、グレーティング結合効率による影響を受ける。単波長又は多波長(複数の波長)の外光がバイナリ(2段階)グレーティングカプラ(GC)を介して光学構造体に入る場合、正確な入射角(約+/-1°)で有効結合領域(グレーティングカプラの内縁近くの約10~20μm)に露光された光エネルギーのみが導波路に結合することができる。したがって、通常、光学構造体のグレーティング結合効率は低い。グレーティング結合効率は、例えば、外光とグレーティング構造とのアライメント、レーザ光のビーム直径、グレーティング導波路構造における光学要素(element)の材料特性、グレーティングカプラの幾何学的構造などに起因する。
【0033】
本開示の光学構造体は、大型のコリメートレーザビームを、有効結合領域に露光する集光された集束光に変換するためのマイクロレンズ構造を組み合わせる。本開示は、様々なグレーティング構造を提供する。これらは、例えば、蛍光標識生体分子を励起するために単波長又は多波長をグレーティング導波路に結合する可能性を可能にする、より大きな結合角度公差及び高いグレーティング結合効率の特徴を有する、n段階(n>=3)、ブレーズド又は傾斜グレーティングの構造である。具体的には、単波長のみがグレーティング導波路に結合される場合、励起して蛍光信号を送ることができる蛍光体の種類が少なくなる可能性がある。これに対して、多波長がグレーティング導波路に結合される場合、励起して蛍光信号を送ることができる蛍光体の種類が多くなる可能性がある。しかしながら、本開示は、単波長又は多波長を結合することに限定されない。また、本開示は、光学構造体における、xyz軸及び入射角を含む大きなアライメント公差を提供することにより、バイオ検出のための光学構造体の全体的な結合効率を向上させることができる。
【0034】
図1Aは、本開示の幾つかの実施形態による光学構造体100の断面図である。光学構造体100は、基板110、コア層120及びグレーティングカプラ130を含む。基板110は、コア層120によって覆われる。幾つかの実施形態では、基板110は、透明であり、サファイヤ又はガラスを含む。基板110は、透明である場合、1.45~1.7の範囲にある、例えば1.5又は1.6の屈折率を有する。コア層120は、基板110を覆う。幾つかの実施形態では、コア層120の屈折率は、基板110の屈折率より相対的に高い。幾つかの実施形態では、コア層120は、Nb、Ta、TiO、Si又は他の適切な材料を含む。グレーティングカプラ130は、コア層120に隣接し、レーザ光160を受光するように構成される。例えば、グレーティングカプラ130は、コア層120に埋設される。幾つかの実施形態では、コア層120の厚さは、約0.05~0.5μm、より具体的には、0.08~0.25μmである。幾つかの実施形態では、グレーティングカプラ130の材料は、コア層120の材料と同じである。幾つかの実施形態では、グレーティングカプラ130の材料は、コア層120の材料とは異なる。
【0035】
図1Bを参照されたい。図1Bは、図1Aにおけるグレーティングカプラ130の拡大図を示す。グレーティングカプラ130は、複数の凸部及び複数の凹部を有する。グレーティングカプラ130の凸部は、凸部の頂面132から凹部の底面134までの高さhを有する。グレーティングカプラ130は、隣接する2つの凸部の間にグレーティング周期pを有する。グレーティングカプラ130は、頂面132と、側壁136と、底面134と、側壁138とを含む連続面を有し、連続面は、光学構造体100の基板110から反対の方向(離れる方向)に面する。幾つかの実施形態では、グレーティングカプラ130は、段階グレーティング構造、ブレーズドグレーティング構造又は傾斜グレーティング構造を含む。図1Bに示されるグレーティングカプラ130は、概略図に過ぎず、グレーティングカプラ130の詳細な構造は、以下の図22A図22Fに記載されることを理解されたい。
【0036】
図1Aを再度参照されたい。光学構造体100は、上部クラッド層140、マイクロレンズ150、レーザ光160及び金属シールド170を含む。上部クラッド層140は、コア層120を覆う。具体的には、上部クラッド層140は、コア層120の面及びグレーティングカプラ130の面に沿って延びて覆う。幾つかの実施形態では、上部クラッド層140は、シリコン酸化物又はポリマーを含み、コア層120の屈折率は、上部クラッド層140の屈折率より大きい。幾つかの実施形態では、上部クラッド層140の屈折率は、1.6未満、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5である。幾つかの実施形態では、上部クラッド層140の誘電率は、可視光波長で0.00001未満、例えば、0.000008、0.000005又は0.000003である。マイクロレンズ150は、上部クラッド層140の上方にあり、グレーティングカプラ130に入る単波長又は多波長のレーザ光160の入射角を変更するように構成される。図1Aでは、マイクロレンズ150を指す3つの矢印は、レーザ光160の進行方向を示す。具体的には、レーザ光160がマイクロレンズ150に入る場合、レーザ光160の進行方向が変更される。幾つかの実施形態では、マイクロレンズ150の直径Dは、0.05~50mmの範囲にあり、例えば、0.2、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40又は45mmである。幾つかの実施形態では、マイクロレンズ150の屈折率は、上部クラッド層140の屈折率と同じ又は類似する。レーザ光160は、外光である。幾つかの実施形態では、レーザ光160のレーザビームは、0.1mm~10mmの範囲にある、例えば、0.2、0.5、1、2、4、6又は8mmの直径を有する。金属シールド170は、マイクロレンズ150を覆う。金属シールド170は、レーザ光160の一部をマイクロレンズ150に入らせるように構成される開口172を有する。金属シールド170の開口172は、レーザ光160がグレーティングカプラ130の有効結合領域Reffに入ることを可能にする。言い換えれば、有効ビームEBは、マイクロレンズ150に入る。有効ビームEBの直径は、レーザ光160のレーザビームの直径より小さい。
【0037】
図2は、本開示の幾つかの実施形態による光学構造体200の断面図である。図2における光学構造体200は、図1Aにおける光学構造体100に比べて下部クラッド層210を更に含む。下部クラッド層210は、基板110とコア層120との間にある。幾つかの実施形態では、下部クラッド層210は、シリコン酸化物又はポリマーを含み、コア層120の屈折率は、下部クラッド層210の屈折率より大きい。幾つかの実施形態では、下部クラッド層210の屈折率は、1.6未満、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5である。幾つかの実施形態では、下部クラッド層210は、可視光波長で0.00001未満、例えば、0.000008、0.000005又は0.000003の誘電率を有する。幾つかの実施形態では、マイクロレンズ150の屈折率は、下部クラッド層210の屈折率と同じ又は類似する。幾つかの実施形態では、基板110は、不透明であり、シリコンウェハ又はCMOS(相補型金属酸化物半導体)を含む。幾つかの実施形態では、基板110は、透明であり、1.45~2.0の範囲にある、例えば1.5、1.6、1.7、1.8又は1.9の屈折率を有する。基板110が不透明又は透明で、1.7より大きい屈折率を有する場合、下部クラッド層210は、基板110とコア層120との間に配置される。
【0038】
図1Aを再度参照されたい。マイクロレンズ150からグレーティングカプラ130までを示す2つの点線は、光領域164を形成する。光領域164は、レーザ光160がグレーティングカプラ130に結合されることを可能にする領域である。それぞれの点線の長さは、レンズ焦点距離Fを有し、2つの点線は、角度θ及び焦点Pを形成する。幾つかの実施形態では、角度θは、0°~50°の範囲にあり、例えば、5、10、20、30又は40°である。図1Aにおける光学構造体100の焦点Pは、グレーティングカプラ130にある。レーザ光160がマイクロレンズ150及び上部クラッド層140を介してグレーティングカプラ130に結合された後、レーザ光160は、コア層120を伝搬することにより、コア層120の上方にある蛍光標識生体分子が発光する。グレーティングカプラ130は、約20μm未満の有効結合領域Reffを有する。有効結合領域Reffは、レーザ光160がコア層120に結合及び伝搬できる領域である。言い換えれば、光領域164が有効結合領域Reffに集束及び露光され、かつ入射角がグレーティングカプラ130の有効結合角度にあると、レーザ光160は、コア層120に結合及び伝搬される。しかしながら、光領域164が有効結合領域Reffの外にあるか又はグレーティングカプラ130の有効結合角度の範囲の外にあると、レーザ光160は、コア層120に結合及び伝搬されない。
【0039】
図3を参照されたい。図3は、本開示の幾つかの実施形態による光学構造体300の断面図である。グレーティングカプラ130は、コア層120に隣接し、光学システムの位置ずれによるオフセット角度を有するレーザ光160aを受光するように構成される。レーザ光160aの照射領域は、グレーティングカプラ130の有効結合領域Reffより大きい。図1Aにおける光学構造体100に比べて、図3における光学構造体300のレーザ光160aの入射角がオフセット角度Δθでオフセットすることにより、新しい光領域164aが形成される。光領域164aは、新しいレンズ焦点距離F’、新しい焦点P’及び新しい角度θ’を形成する。図3における光学構造体300の焦点P’は、グレーティングカプラ130の外にある。図3におけるグレーティングカプラ130の面に露光される光領域164aは、図1Aにおけるグレーティングカプラ130の面に露光される光領域164より大きい。図3におけるレンズ焦点距離F’は、図1Aにおけるレンズ焦点距離Fより大きい。図3における角度θ’は、図1Aにおける角度θより小さい。幾つかの実施形態では、オフセット角度Δθは、±2°、±5°、±10°又は±20°である。マイクロレンズ150は、上部クラッド層140の上方にあり、レーザ光160aがマイクロレンズ150に入る場合、マイクロレンズ150は、グレーティングカプラ130の有効結合領域Reffにレーザ光160aを集束するように構成される。レーザ光160aがオフセットされることにもかかわらず、光領域164aは、グレーティングカプラ130の有効結合領域Reffを覆い、新しい角度θ’は、角度θより小さい。これは、レーザビーム160aのオフセットΔθによる新しい入射角がグレーティングカプラ130の設計された有効結合角度より小さいことを意味する。したがって、レーザ光160aは、依然としてコア層120に結合及び伝搬することができる。本開示の光学構造体は、光学構造体における大きなアライメント公差を提供することにより、バイオ検出のための光学構造体の全体的な結合効率を向上させることができる。以下の光学構造体が説明を明確にするために示されるが、レーザ光160のオフセットもそこに含まれるべきであることに留意されたい。
【0040】
図3は、図1Aにおける基板110を含んでもよく、更に、図2における下部クラッド層210を含んでもよいことを理解されたい。同様に、以下の図4図7及び図12図15は、図1Aにおける基板110を含んでもよく、更に、図2における下部クラッド層210を含んでもよい。
【0041】
図4図5図6及び図7は、本開示の代替の実施形態による光学構造体100a、100b、100c及び100dの断面図である。
【0042】
図1A図4及び図5を同時に参照されたい。光学構造体100a、100bと光学構造体100との間の違いは、開口172のサイズである。図4に示されるように、光学構造体100aの金属シールド170aの開口172aは、光学構造体100の金属シールド170の開口172より大きい。光学構造体100aのより大きい有効ビームEBaは、光学構造体100のより大きい有効ビームEBよりも、大きい。光学構造体100aの光領域164aは、光学構造体100の光領域164より大きく、光領域164aの角度は、-θ~θの範囲にある。光領域164aが有効結合領域Reffに集束及び露光され、かつ入射角がグレーティングカプラ130の有効結合角度にあるため、レーザ光160(図1Aを参照)は、コア層120に結合及び伝搬される。したがって、グレーティング結合効率は向上する。図5に示されるように、光学構造体100bの金属シールド170bの開口172bは、マイクロレンズ150の左側にある。光学構造体100bの光領域164bは、角度-θを形成する。光領域164bが有効結合領域Reffに集束及び露光され、かつ入射角がグレーティングカプラ130の有効結合角度にあるため、レーザ光160は、コア層120に結合及び伝搬される。幾つかの実施形態では、角度θは、グレーティングカプラの有効結合角度に応じて、0~50°の範囲にある。
【0043】
図1A及び図6を参照されたい。光学構造体100cと光学構造体100との間の違いは、金属シールド170の位置である。図6に示されるように、金属シールド170cは、マイクロレンズ150の下にある。言い換えれば、金属シールド170cは、マイクロレンズ150とグレーティングカプラ130との間に配置される。具体的には、金属シールド170cは、マイクロレンズ150と上部クラッド層140との間にある。金属シールド170cは、レーザ光160の一部をグレーティングカプラ130に入らせるように構成される開口172cを有する。光領域164cが有効結合領域Reffに集束及び露光され、かつ入射角がグレーティングカプラ130の有効結合角度にあるため、レーザ光160は、コア層120に結合及び伝搬される。
【0044】
図1A及び図7を参照されたい。光学構造体100dと光学構造体100との違いは、上部クラッド層140とエアギャップ710との配置である。図7に示されるように、光学構造体100における上部クラッド層140は、エアギャップ710によって置き換えられる。幾つかの実施形態では、エアギャップ710の厚さは、10μm~10mmの範囲にあり、例えば、0.05mm、0.1mm、0.5mm、1mm又は5mmである。
【0045】
図8図9A図10A及び図11Aは、本開示の代替の実施形態による光学構造体800、800a、800b、800cの断面図である。図1A図8図9A図10A及び図11Aの主な違いは、グレーティングカプラ130の位置であることに留意されたい。図1Aに示されるように、グレーティングカプラ130は、コア層120に埋設される。
【0046】
図8を参照されたい。光学構造体800において、グレーティングカプラ130は、マイクロレンズ150に面するコア層120の面122にあり、コア層120の一部は、グレーティングカプラ130と基板110との間にある。具体的には、グレーティングカプラ130は、マイクロレンズ150より低く、コア層120より高く、かつ上部クラッド層140に埋設される。幾つかの実施形態では、グレーティングカプラ130の材料は、コア層120の材料と同じである。幾つかの実施形態では、グレーティングカプラ130の材料は、コア層120の材料とは異なる。図8におけるグレーティングカプラ130の拡大図は、図1Bを参照してもよい。
【0047】
図9Aを参照されたい。光学構造体800aにおいて、グレーティングカプラ130は、基板110に面するコア層120の面124に配置され、コア層120の一部は、マイクロレンズ150とグレーティングカプラ130との間にある。具体的には、グレーティングカプラ130は、基板110に埋設される。図9Bを参照されたい。図9Bは、図9Aにおけるグレーティングカプラ130の拡大図を示す。グレーティングカプラ130の連続面(頂面132、側壁136、底面134及び側壁138)は、基板110に面する。
【0048】
図10Aを参照されたい。光学構造体800bは、光学構造体800aに比べて金属反射体1010を更に含む。図10Bを参照されたい。図10Bは、図10Aにおけるグレーティングカプラ130の拡大図を示す。金属反射体1010は、基板110に面するグレーティングカプラ130の面(頂面132、側壁136、底面134及び側壁138)に配置される。
【0049】
図11Aを参照されたい。光学構造体800cは、光学構造体100に比べて金属反射体1010を更に含む。具体的には、グレーティングカプラ130及び金属反射体1010は、コア層120に埋設される。図11Bを参照されたい。図11Bは、図11Aにおけるグレーティングカプラ130の拡大図を示す。グレーティングカプラ130は、基板110に面する面(頂面132、側壁136、底面134及び側壁138)と、当該面に隣接する側壁139とを有する。金属反射体1010は、グレーティングカプラ130の面(頂面132、側壁136、底面134及び側壁138)及び側壁139に配置される。
【0050】
図12図13図14及び図15は、本開示の代替の実施形態による光学構造体1200、1200a、1200b、1200cの断面図である。図8図9A図10A及び図11A図12図13図14及び図15との主な違いは、上部クラッド層140とエアギャップ710との配置であることに留意されたい。具体的には、図8図9A図10A及び図11Aにおける上部クラッド層140は、図12図13図14及び図15におけるエアギャップ710によって置き換えられる。同じ又は類似の特徴を示すために本明細書で符号を繰り返し、上記説明は、以下に説明される実施形態にも同様に適用され、その詳細を繰り返して説明しない。
【0051】
図16を参照されたい。図16は、本開示の代替の実施形態による光学構造体1600の断面図である。具体的には、図16における光学構造体1600が図5における光学構造体100bと類似するが、光学構造体1600は、コア層120及びグレーティングカプラ130の下にある基板110を更に含む。
【0052】
図17Aは、図16における光学構造体1600の金属シールド170bの上面図である。図17Bは、図16における光学構造体1600の基板110、コア層120及びグレーティングカプラ130の上面図である。図17Cは、図17BにおけるA-A’線に沿う基板110、コア層120及びグレーティングカプラ130の断面図である。図17Aに示されるように、金属シールド170bは、直線状である。図16に示されるように、マイクロレンズ150の断面形状は、半円筒状である。図17Bに示されるように、コア層120は、平面導波路を含む。
【0053】
図18Aは、図16における光学構造体1600の金属シールド170bの上面図である。図18Bは、図16における光学構造体1600の基板110、コア層120及びグレーティングカプラ130の上面図である。図18Cは、図18BにおけるB-B’線に沿う基板110、コア層120及びグレーティングカプラ130の断面図である。図18Aに示されるように、グレーティングカプラ130は、湾曲した形状を有する。図18Bに示されるように、コア層120は、複数のチャネル導波路を含む。
【0054】
図19及び図20は、図16における光学構造体1600の基板110、コア層120及びグレーティングカプラ130の上面図である。図21A図21B図21C及び図21Dは、C-C’線に沿う図19の断面図である。同様に、図21A図21B図21C及び図21Dはまた、D-D’線に沿う図20の断面図である。
【0055】
図21A及び図21Bにおけるグレーティングカプラ130のそれぞれは、複数の凹部を有する。図21C及び図21Dにおけるグレーティングカプラ130のそれぞれは、複数の凸部を有する。幾つかの実施形態では、グレーティングカプラ130の材料は、コア層120の材料とは異なる。図21A図21B図21C及び図21Dにおいて、レーザ光160は、グレーティングカプラ130に結合されて、コア層120を伝搬する。幾つかの実施形態では、図21A又は図21Cに示されるように、グレーティングカプラ130は、テーパ状の厚さを有する。
【0056】
図22A図22Fを参照されたい。図22A図22Fは、本開示の幾つかの実施形態によるグレーティングカプラ130(図1Bを参照)の様々なグレーティング構造の断面図である。グレーティングカプラ130は、段階グレーティング構造130a、ブレーズドグレーティング構造130b及び傾斜グレーティング構造130c~130fのうちの少なくとも1つを含む。図1Bにおけるグレーティングカプラ130の拡大図を再度参照されたい。グレーティングカプラ130は、グレーティング周期p及び高さhを有する。図22A図22Fにおけるグレーティング構造130a~130fは、図1Bのグレーティングカプラ130において選択的に使用することができる。更に、図22A図22Fにおけるグレーティング構造130a~130fは、レーザ光160又はレーザ光160aの伝搬方向(右側又は左側など)に応じて、鏡面対称構造であり得る。例えば、段階グレーティング構造130aの第1の垂直側壁221は、右側に面してもよく、ブレーズドグレーティング構造130bの斜めの側壁224は、右側に面してもよく、或いは傾斜グレーティング構造130c~130fの第1の斜めの側壁225は、右側に面してもよい。
【0057】
図22Aは、グレーティングカプラ130の段階グレーティング構造130aを示す。幾つかの実施形態では、段階グレーティング構造130aは、n個の段階を有し、nは、3~16の範囲にある。例えば、nは4、6、8、10、12又は14である。具体的には、図22Aは、3段階グレーティング構造を示す。段階グレーティング構造130aは、第1の垂直側壁221、第2の垂直側壁222及び水平面223を含む。水平面223は、第1の垂直側壁221及び第2の垂直側壁222に隣接する。幾つかの実施形態では、段階グレーティング構造130aの頂部幅Wtは80nmであり、段階グレーティング構造130aの底部幅Wbは300nmであり、段階グレーティング構造130aの高さhは400nmであり、段階グレーティング構造130aの第1の垂直側壁221は200nmの高さを有し、段階グレーティング構造130aの第2の垂直側壁222は200nmの高さを有し、段階グレーティング構造130aの水平面223は220nmの幅を有する。
【0058】
図22Bは、グレーティングカプラ130のブレーズドグレーティング構造130bを示す。ブレーズドグレーティング構造130bは、斜めの側壁224を含む。斜めの側壁224は、ブレーズドグレーティング構造130bの頂部からブレーズドグレーティング構造130bの底部へ延び、ブレーズドグレーティング構造130bの幅は、ブレーズドグレーティング構造の頂部からブレーズドグレーティング構造130bの底部へ徐々に増加する。幾つかの実施形態では、ブレーズドグレーティング構造130bの底部幅Wbは400nmであり、ブレーズドグレーティング構造130bの高さhは400nmである。
【0059】
図22C図22Fは、グレーティングカプラ130の傾斜グレーティング構造130c~130fを示す。傾斜グレーティング構造130c~130fのそれぞれは、第1の斜めの側壁225、第2の斜めの側壁226及び頂面227を含む。頂面227は、第1の斜めの側壁225及び第2の斜めの側壁226に隣接する。傾斜グレーティング構造130c~130fの第1の斜めの側壁225のそれぞれは、第1の傾きを有し、傾斜グレーティング構造130c~130fの第2の斜めの側壁226のそれぞれは、第2の傾きを有する。幾つかの実施形態では、第1の傾きは第2の傾きと同じである。幾つかの実施形態では、第1の傾きは第2の傾きより小さい。
【0060】
幾つかの実施形態では、図22Cに示されるように、底部幅Wbは180nmであり、頂部幅Wtは180nmであり、高さhは400nmである。幾つかの実施形態では、図22Dに示されるように、底部幅Wbは228nmであり、頂部幅Wtは136nmであり、高さhは400nmである。幾つかの実施形態では、図22Eに示されるように、底部幅Wbは260nmであり、頂部幅Wtは100nmであり、高さhは400nmである。幾つかの実施形態では、図22Fに示されるように、底部幅Wbは280nmであり、頂部幅Wtは80nmであり、高さhは400nmである。
【0061】
図23A図23B図24A図24B図25A図25B図26A及び図26Bは、本開示の幾つかの実施形態による、異なるグレーティング構造での532nmの波長を有する緑色光GLの入射角強度チャートである。具体的には、段階グレーティング構造130a、ブレーズドグレーティング構造130b及び傾斜グレーティング構造130c~130fは、シミュレーションで使用される。より具体的には、グレーティング周期pは400nmであり、高さhは400nmである(図1Bを参照されたい)。シミュレーション結果は、グレーティングカプラ130の屈折率が異なる場合及び上部クラッド層140の屈折率が異なる場合における、異なるグレーティングカプラ130の強度と緑色光GLの入射角との間の関係を示す。本明細書の「強度」は、グレーティングカプラ130の結合効率を表し、本明細書の「入射角」は、グレーティングカプラ130の面の法線方向に対する角度を表すことを理解されたい。更に、本明細書の「半値全幅(full width at half maximum(FWHM))」は、グレーティングカプラの有効結合角度として理解することができる。厳密結合波解析(Rigorous Coupled Wave Analysis(RCWA))方法が使用される。
【0062】
図23A及び図23Bを参照されたい。図23A及び図23Bのシミュレーション結果では、グレーティングカプラ130の屈折率は1.9であり、上部クラッド層140の屈折率は1である。言い換えれば、上部クラッド層140は、エアギャップ710である(図7を参照)。図23Aにおいて、段階グレーティング構造130a、ブレーズドグレーティング構造130b及び傾斜グレーティング構造130cは、入射角が約20°未満である場合に高い強度を有する。図23Bにおいて、傾斜グレーティング構造130c、傾斜グレーティング構造130d、傾斜グレーティング構造130e及び傾斜グレーティング構造130fは、入射角が約40°未満である場合に高い強度を有する。
【0063】
図24A及び図24Bを参照されたい。図24A及び図24Bのシミュレーション結果では、グレーティングカプラ130の屈折率は2.35であり、上部クラッド層140の屈折率は1である。言い換えれば、上部クラッド層140は、エアギャップ710である(図7を参照)。図24Aにおいて、段階グレーティング構造130a及びブレーズドグレーティング構造130bは、傾斜グレーティング構造130cより高い強度を有する。しかしながら、傾斜グレーティング構造130cは、入射角が約20°未満である場合に依然として高い強度を有する。図24Bにおいて、傾斜グレーティング構造130c、傾斜グレーティング構造130d、傾斜グレーティング構造130e及び傾斜グレーティング構造130fは、入射角が約40°未満である場合に高い強度を有する。傾斜グレーティング構造130fは、傾斜グレーティング構造130cより大きい有効結合角度公差を有する。
【0064】
図25A及び図25Bを参照されたい。図25A及び図25Bのシミュレーション結果では、グレーティングカプラ130の屈折率は1.9であり、上部クラッド層140の屈折率は1.47である。図25Aにおいて、傾斜グレーティング構造130cは、段階グレーティング構造130a及びブレーズドグレーティング構造130bより高い強度を有する。図25Bにおいて、傾斜グレーティング構造130c、傾斜グレーティング構造130d、傾斜グレーティング構造130e及び傾斜グレーティング構造130fは、入射角が増加するにつれて同じ強度を有する。
【0065】
図26A及び図26Bを参照されたい。図26A及び図26Bのシミュレーション結果では、グレーティングカプラ130の屈折率は2.35であり、上部クラッド層140の屈折率は1.47である。図26Aにおいて、傾斜グレーティング構造130cは、入射角が約20°未満である場合に段階グレーティング構造130a及びブレーズドグレーティング構造130bより高い強度を有する。図26Bにおいて、傾斜グレーティング構造130c、傾斜グレーティング構造130d、傾斜グレーティング構造130e及び傾斜グレーティング構造130fは、入射角が約20°未満である場合に高い強度を有する。
【0066】
図23A図26Bが532nmの波長を有する緑色光GLのシミュレーション結果を示すが、異なる波長(例えば、488nm及び633nm)を有する他の光もシミュレートすることができる。シミュレーション結果では、段階グレーティング構造130a、ブレーズドグレーティング構造130b及び傾斜グレーティング構造130c~130fは、良好な結合効率を示し、ある程度大きい有効結合角度公差を有する。
【0067】
本開示の光学構造体は、大型のコリメートレーザビームを、有効結合領域に露光する集光された集束光に変換するためのマイクロレンズ構造を組み合わせる。本開示は、様々なグレーティング構造を提供する。これは、例えば、蛍光標識生体分子を励起するために大きなレーザビームからより多くのエネルギーを結合し、及び/又は多波長をグレーティング導波路に結合する可能性を可能にする、より大きな有効結合角度(半値全幅(FWHM))及び高いグレーティング結合効率の特徴を有する、n段階(n>=3)、ブレーズド又は傾斜グレーティングの構造である。また、本開示は、光学構造体における、xyz軸及び入射角を含む大きなアライメント公差を提供することにより、バイオ検出のための光学構造体の全体的な結合効率を向上させることができる。
【0068】
前述は、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるように、幾つかの実施形態の特徴を概説する。当業者であれば、本明細書で紹介した実施形態の同じ目的及び/又は同じ利点を達成するために、他のプロセス及び構造を設計又は改変するための基礎として本開示を容易に使用できることを理解すべきである。また、当業者は、そのような同等の構造が本開示の精神及び範囲から逸脱しないことと、自身が、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換、及び改変を行うことができることとを理解すべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を受光するように構成されるグレーティングカプラと、
前記グレーティングカプラの上方にあるマイクロレンズと、を含み、金属シールドは、前記マイクロレンズを覆い、前記レーザ光が前記グレーティングカプラの有効結合領域に入ることを可能にする開口を有する、光学構造体。
【請求項2】
前記金属シールドの前記開口は、前記レーザ光の一部を前記マイクロレンズに入らせるように構成され、-50°~50°の範囲にある角度を有し、
前記角度は光領域により定義され、前記光領域は前記レーザ光が前記グレーティングカプラに結合されることを可能にする領域であり、
前記光領域は前記光学構造体の焦点と前記金属シールドの前記開口とにより定義され、前記焦点は前記グレーティングカプラにある、請求項1に記載の光学構造体。
【請求項3】
前記レーザ光は、オフセット角度を有し、光領域は、前記グレーティングカプラの前記有効結合領域を覆い
前記オフセット角度は前記グレーティングカプラの面に垂直な方向と前記レーザ光の入射方向とのなす角度であり、前記光領域は前記レーザ光が前記グレーティングカプラに結合されることを可能にする領域であり、
前記光領域は前記光学構造体の焦点と前記金属シールドの前記開口とにより定義され、前記焦点は前記グレーティングカプラの外にあり、
前記オフセット角度は、-20°~20°の範囲にある、請求項1に記載の光学構造体。
【請求項4】
前記グレーティングカプラに隣接するコア層と、
前記コア層によって覆われ、サファイヤ又はガラスを含み、1.45~2.0の範囲にある屈折率を有する基板と、
前記コア層を覆う上部クラッド層であって、シリコン酸化物又はポリマーを含み、前記コア層の屈折率は、前記上部クラッド層の屈折率より大きい、上部クラッド層と、を更に含み、
前記上部クラッド層は、前記屈折率が1.6未満であり、誘電率が可視光波長で0.00001未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項5】
前記基板と前記コア層との間にある下部クラッド層を更に含み、前記下部クラッド層は、1.6未満の屈折率及び可視光波長で0.00001未満の誘電率を有し、前記基板は、シリコン及びCMOSを含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項6】
前記グレーティングカプラは、前記コア層に埋設され、上方からみて直線状であり、前記マイクロレンズの断面形状は、半円状であり、前記コア層は、平面導波路を含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項7】
前記グレーティングカプラは、前記コア層に埋設され、上方からみて湾曲した形状を有し、前記コア層は、複数のチャネル導波路を含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項8】
前記グレーティングカプラは、前記コア層に埋設され、前記基板に面する面と、前記面に隣接する側壁とを有し、前記光学構造体は、前記グレーティングカプラの前記面及び前記側壁に配置される金属反射体を更に含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項9】
前記グレーティングカプラは、前記マイクロレンズに面する前記コア層の面に配置され、前記コア層の一部は、前記グレーティングカプラと前記基板との間にあり、
前記グレーティングカプラの材料は、前記コア層の材料とは異なり、
前記グレーティングカプラは、テーパ状の厚さを有する、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項10】
前記グレーティングカプラは、前記基板に面する前記コア層の面に配置され、前記コア層の一部は、前記マイクロレンズと前記グレーティングカプラとの間にあり、
前記光学構造体は、前記基板に面する前記グレーティングカプラの面に配置される金属反射体を更に含む、請求項4に記載の光学構造体。
【請求項11】
前記グレーティングカプラは、段階グレーティング構造であり、前記段階グレーティング構造は、第1の垂直側壁と、第2の垂直側壁と、前記第1の垂直側壁及び前記第2の垂直側壁に隣接する水平面とを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項12】
前記グレーティングカプラは、ブレーズドグレーティング構造であり、前記ブレーズドグレーティング構造は、前記ブレーズドグレーティング構造の頂部から前記ブレーズドグレーティング構造の底部へ延びる斜めの側壁を含み、前記ブレーズドグレーティング構造の幅は、前記ブレーズドグレーティング構造の頂部から前記ブレーズドグレーティング構造の底部へ徐々に増加する、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学構造体。
【請求項13】
前記グレーティングカプラは、傾斜グレーティング構造であり、前記傾斜グレーティング構造は、第1の斜めの側壁と、第2の斜めの側壁と、前記第1の斜めの側壁及び前記第2の斜めの側壁に隣接する頂面とを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学構造体。