(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086087
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】接着剤組成物ならびに液晶ディスプレイおよびこれを分解する方法
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20230614BHJP
C09J 9/00 20060101ALI20230614BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230614BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J9/00
C09J11/04
G02F1/1335 510
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161048
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】202210012452.6
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】110146005
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】呉明宗
(72)【発明者】
【氏名】張徳宜
(72)【発明者】
【氏名】黄耀正
(72)【発明者】
【氏名】林玉琴
(72)【発明者】
【氏名】余陳正
(72)【発明者】
【氏名】許玉瑩
(72)【発明者】
【氏名】陳雙慧
【テーマコード(参考)】
2H291
4J040
【Fターム(参考)】
2H291FA02Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB02
2H291FB22
2H291FB23
2H291FD34
2H291GA19
2H291GA23
2H291LA40
4J040FA131
4J040HA301
4J040JB07
4J040KA42
4J040NA17
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】接着剤組成物ならびに液晶ディスプレイおよびこれを分解する方法の提供。
【解決手段】接着剤組成物は、ナノ粒子0.1~1重量部と、アクリレート樹脂50~95重量部と、多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマー5~50重量部と、を含み、アクリレート樹脂および多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの総重量が100重量部であり、アクリレート樹脂の重量平均分子量が100000g/mol~1500000g/molである。ナノ粒子は、コアの表面の一部を覆うシェルと、コアの表面にグラフトされたアクリレート基とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子0.1~1重量部と、
アクリレート樹脂50~95重量部と、
多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマー5~50重量部と、を含み、
前記アクリレート樹脂および前記多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの総重量が100重量部である、接着剤組成物であって、
前記アクリレート樹脂の重量平均分子量が100000g/mol~1500000g/molであり、
前記ナノ粒子の各々がコア、シェルおよびアクリレート基を有し、前記コアが酸化ケイ素であり、前記シェルが金、銀、銅、またはこれらの組み合わせであり、前記コアの表面の一部を前記シェルが覆い、前記アクリレート基が前記コアの前記表面にグラフトされ、
該接着剤組成物の近赤外線照射前の接着強度は0.5Kg/in~1.5Kg/inであり、近赤外線照射後の接着強度は0Kg/in~0.3Kg/inである、接着剤組成物。
【請求項2】
前記コアと前記シェルとの重量比が50:100~100:100である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記コアと前記アクリレート基との重量比が60:100~110:100である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリレート樹脂のモノマーが、Tgが-15℃~-70℃である第1のモノマー50wt%~99wt%、およびTgが-15℃より高い第2のモノマー1wt%~50wt%を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記第1のモノマーには、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-プロピルへプチルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、テトラヒドロフラニルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)アクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記第2のモノマーには、ビニルアセテート、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルメタクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-プロピルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレンポリプロピレングリコール)ジアクリレート、ジ(アルキレングリコール)ジアクリレート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(トリメチルプロパン)テトラアクリレート、ジ(ポリペンタエリスリトール)ポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
カラーフィルター基板と上部偏光板との間に第1の接着層を含む上部基板と、
薄膜トランジスタ基板と下部偏光板との間に第2の接着層を含む下部基板と、
前記上部基板の前記カラーフィルター基板と前記下部基板の前記薄膜トランジスタ基板との間の液晶層と、
を含む液晶ディスプレイであって、
前記第1の接着層、前記第2の接着層、または両方が請求項1に記載の前記接着剤組成物を含む、液晶ディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載の前記液晶ディスプレイを準備する工程と、
前記上部基板と前記下部基板とを分離する工程と、
前記上部基板、前記下部基板、または両方に近赤外線を照射して、前記第1の接着層、前記第2の接着層、または両方を脱粘着化(de-adhere)する工程と、
を含む液晶ディスプレイを分解する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、近赤外線照射により脱粘着化され得る接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学接着グルーは、高い接着力と信頼性を備えることが求められるため、永久的な硬化材料となるよう設計されている。しかしながら、接着後、光学接着グルーは分解することができず、接着グルーの剥離時に、接着グルーの残留または偏光板の損傷が生じ得る。
【0003】
よって、高透過率、低いヘイズ度、および脱粘着化性(de-adherable)の特性の要求を満たす、新規な接着層が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0250248号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光学接着剤は、接着後に分解することができず、接着グルーの剥離時に、接着グルーの残留または偏光板の損傷が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1実施形態は、ナノ粒子0.1~1重量部と、アクリレート樹脂50~95重量部と、多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマー5~50重量部と、を含み、アクリレート樹脂および多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの総重量が100重量部である、接着剤組成物であって、アクリレート樹脂の重量平均分子量が100000g/mol~1500000g/molであり、ナノ粒子がコア、シェルおよびアクリレート基を有し、コアが酸化ケイ素であり、シェルが金、銀、銅、またはこれらの組み合わせであり、コアの表面の一部をシェルが覆い、アクリレート基がコア表面にグラフトされている、接着剤組成物を提供する。該接着剤組成物の近赤外線照射前の接着強度は0.5Kg/in~1.5Kg/inであり、近赤外線照射後の接着強度は0Kg/in~0.3Kg/inである。
【0007】
本開示の1実施形態は、カラーフィルター基板と上部偏光板との間に第1の接着層を含む上部基板と、薄膜トランジスタ基板と下部偏光板との間に第2の接着層を含む下部基板と、上部基板のカラーフィルター基板と下部基板の薄膜トランジスタ基板との間の液晶層と、を含む液晶ディスプレイであって、第1の接着層、第2の接着層、または両方が、上述した接着剤組成物を含む、液晶ディスプレイを提供する。
【0008】
本開示の1実施形態は、上述した液晶ディスプレイを準備する工程と、上部基板と下部基板とを分離する工程と、上部基板、下部基板、または両方に近赤外線を照射して、第1の接着層、第2の接着層、または両方を脱粘着化(de-adhere)する工程と、を含む液晶ディスプレイを分解する方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の接着層は、高透過率、低いヘイズ度および脱粘着化性(de-adherable)の特性の要求を満たすことができる。
【0010】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【0011】
添付の図面を参照にしながら、以下の詳細な説明および実施例を読むことにより、本開示をより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の1実施形態における液晶ディスプレイを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の特定の詳細が示される。ただし、これら特定の詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは明らかであろう。また、図を簡潔とするべく、周知の構造および装置は概略的に示されている。
【0014】
本開示の1実施形態は、ナノ粒子0.1~1重量部と、アクリレート樹脂50~95重量部と、多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマー5~50重量部と、を含む接着剤組成物を提供する。アクリレート樹脂と多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーとの総重量は100重量部である。ナノ粒子の量が少なすぎると、近赤外線照射後の接着剤組成物が、ほぼ脱粘着化(de-adhering)効果の無いものとなってしまう。ナノ粒子の量が多すぎると、接着剤組成物の透過率およびヘイズ度が悪い影響を受けてしまう。アクリレート樹脂の量が少なすぎる(あるいは多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの量が多すぎる)と、接着剤組成物の粘着力が不十分となってしまう。アクリレート樹脂の量が多すぎる(あるいは多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの量が少なすぎる)と、近赤外線照射後の接着剤組成物の脱粘着化(de-adhering)効果が不十分となってしまう。
【0015】
いくつかの実施形態において、アクリレート樹脂の重量平均分子量は100000g/mol~1500000g/molである。アクリレート樹脂の重量平均分子量が低すぎると、接着剤組成物の粘着力が悪くなり、容易に脱ガム化(degummed)してしまう。アクリレート樹脂の重量平均分子量が高すぎると、接着剤組成物の粘度が過度に高くなり、光脱粘着化(photo de-adhered)できなくなってしまう。
【0016】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子の各々はコア、シェル、およびアクリレート基をそれぞれ有する。例えば、コアは酸化ケイ素である。コアが別の酸化物、例えば酸化チタンまたは酸化ジルコニウムであると、ナノ粒子は近赤外線領域の光を吸収することができない。いくつかの実施形態において、シェルは金、銀、銅、またはこれらの組み合わせであり、コアの表面の一部をシェルが覆い、アクリレート基がコアの表面にグラフトされる。いくつかの実施形態において、アクリレート基をコア表面にグラフトする方法では、シロキサン基(例えば、Si-OR。ただし、Rはアルキル基である)またはシラノール基(例えば、Si-OH)の少なくとも1つの末端と、アクリレート基の少なくとも1つの末端とを有する化合物を用いることができる。この化合物は、コア表面におけるSi-OH基と反応することができる。例えば、この化合物は、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryloxypropyltrimethoxysilane)、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン(3-methacryloxypropylmethyldiethoxysilane)、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(3-methacryloxypropyltriethoxysilane)、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-acryloxypropyltrimethoxysilane)、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、コアとシェルとの重量比は50:100~100:100、または50:100~95:100である。シェルの量が少なすぎると、近赤外線照射後の接着剤組成物の脱粘着化効果が不十分となってしまう。シェルの量が多すぎると、コア表面にグラフトされるアクリレート基の量が少なくなりすぎ、ナノ粒子が接着剤組成物中に効率的に分散され得なくなってしまう。いくつかの実施形態において、コアとアクリレート基との重量比は60:100~110:100、または70:100~100:100である。アクリレート基の量が少なすぎると、ナノ粒子が接着剤組成物中に効率的に分散され得なくなってしまう。アクリレート基の量が多すぎると、コアを覆うシェルの量が過度に少なくなり、かつ近赤外線照射後の接着剤組成物の脱粘着化効果が不十分となってしまう。
【0017】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物の近赤外線照射前の接着強度は0.5Kg/in~1.5Kg/inであり、近赤外線照射後の接着強度は0~0.3Kg/inである。接着剤組成物の近赤外線照射前の接着強度が低すぎると、接着剤組成物が所望の層(例えば、ガラス基板と偏光板)を接着できなくなってしまう。接着剤組成物の近赤外線照射後の接着強度が高すぎると、それは接着剤組成物が脱粘着化しない、または脱粘着化が不十分となるということであり、接着剤組成物が、接着された層に残留してしまう。
【0018】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子のサイズは10nm~200nmまたは50nm~200nmである。ナノ粒子が小さすぎると、接着剤組成物の近赤外線照射後の脱粘着化効果が不十分になってしまう。ナノ粒子が大きすぎると、接着剤組成物の透過率およびヘイズ度が悪い影響を受けてしまう。
【0019】
いくつかの実施形態において、アクリレート樹脂のモノマーは、Tgが-15℃~-70℃である第1のモノマー50wt%~99wt%、およびTgが-15℃よりも高い第2のモノマー1wt%~50wt%を含む。第1のモノマーの量が少なすぎる(つまり、第2のモノマーの量が多すぎる)と、接着剤組成物の粘度が増さずに粘度の規格を満たせなくなってしまう。第1のモノマーの量が多すぎる(つまり、第2のモノマーの量が少なすぎる)と、接着剤組成物の粘度が高くなりすぎて、接着剤組成物を容易に脱粘着化させることができなくなる。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1のモノマーには、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-プロピルへプチルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、テトラヒドロフラニルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)アクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、第1のモノマーにはブチルアクリレートおよびエチルヘキシルアクリレートが含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態において、第2のモノマーには、ビニルアセテート、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルメタクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、第2のモノマーには、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびヒドロキシエチルアクリレートが含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態において、多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-プロピルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレンポリプロピレングリコール)ジアクリレート、ジ(アルキレングリコール)ジアクリレート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(トリメチルプロパン)テトラアクリレート、ジ(ポリペンタエリスリトール)ポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物は熱開始剤をさらに含む。例えば、熱開始剤は、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)、ジー(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(di-(2-ethylhexyl)peroxydicarbonate)、ジミリスチルパーオキシジカーボネート(dimyristyl peroxydicarbonate)、ジラウリルパーオキサイド(dilauryl peroxide)、デカノイルパーオキサイド(decanoyl peroxide)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di(2-ethylhexanoylperoxy)hexane)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1,1,3,3-tetramethylbutyl peroxy-2-ethylhexanoate)、tert-ペンチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(tert-pentyl peroxy-2-ethylhexanoate)、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(tert-butyl peroxy-2-ethylhexanoate)、tert-ブチルパーオキシ-ジエチルアセテート(tert-butylperoxy-diethylacetate)、tert-ブチルパーオキシイソブチレート(tert-butyl peroxyisobutyrate)、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(1,1-di(tert-butylperoxy)-3,3,5-trimethylcyclohexane)、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(2,2′-azobis(2-methylbutyronitrile))、または1,1′-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(1,1′-azobis(cyanocyclohexane))のような過酸化物またはジアゾ化合物であってよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物を照射してそれを脱粘着化させる近赤外線照射のエネルギー強度は1500mJ/cm2~2500mJ/cm2であってよい。例えば、近赤外線の波長は800nm~1500nmである。近赤外線のエネルギー強度が低すぎると、接着剤組成物を脱粘着化できなくなる。近赤外線のエネルギー強度が高すぎると、接着剤組成物により接着された物体(例えば、偏光板、カラーフィルター基板、または薄膜トランジスタ基板)が損傷してしまう。なお、近赤外線は、接着剤組成物を脱粘着化する効果を達成するために一定のエネルギー強度を要するという点に留意されたい。例えば、環境光中に近赤外線が存在しているとしても、一般的な低エネルギー強度の近赤外線は、接着剤組成物を脱粘着化せず、接着剤組成物を含む素子にダメージを与えることはない。
【0025】
図1に示されるように、本開示の1実施形態は、上部基板110および下部基板120を含む液晶ディスプレイ100を提供する。上部基板110は、カラーフィルター基板111と上部偏光板115との間に第1の接着層113を含み、下部基板120は、薄膜トランジスタ基板121と下部偏光板125との間に第2の接着層123を含む。液晶ディスプレイ100はまた、上部基板110のカラーフィルター基板111と下部基板120の薄膜トランジスタ基板121との間に液晶層130を含む。いくつかの実施形態において、第1の接着層113、第2の接着層123、または両者は、上述した接着剤組成物を含む。
図1において、カラーフィルター基板111は、ガラス基板117、およびその上に形成されたカラーフィルターCF(ブラックマトリクスBMを含む)を含む。薄膜トランジスタ基板121は、薄膜トランジスタTFTおよびガラス基板127を含む。いくつかの実施形態において、上部基板110と下部基板120とがスペーサーSにより離間されることで、液晶層130の厚さが画定され得る。なお、
図1における液晶ディスプレイ100は、単に説明のためのものに過ぎないという点に留意されたい。偏光板およびガラス基板が本開示の接着剤組成物で接着される場合に、当業者は、あらゆるタイプの液晶ディスプレイを用いて、記載した本開示の効果を達成することができる。
【0026】
本開示の1実施形態は、液晶ディスプレイを分解する方法であって、
図1に示される液晶ディスプレイ100を準備する工程と、上部基板110と下部基板120とを分離する工程と、上部基板110、下部基板120、または両方に近赤外線を照射して、第1の接着層113、第2の接着層123、または両方を脱粘着化する工程と、を含む方法を提供する。これにより、上部偏光板115、下部偏光板125、または両者を、グルー残留という問題なしに、上部基板110、下部基板120、または両者から分離することができる。上に示したように、本開示の接着剤組成物を採用すると、リサイクルまたは再加工時においてNIRを照射することにより接着層を容易に脱粘着化させることができ、液晶ディスプレイ分解の効果を達成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、アクリレート樹脂および多官能基を含むアクリレートまたはアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーは、エポキシ基またはイソシアネート基を有さないため、近赤外線照射後に接着剤組成物が容易に脱粘着化される。
【0028】
以下に、当業者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にしながら例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示される例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。全体を通し、明瞭とするために周知の部分についての記載は省き、類似の参照番号は類似の構成要素に言及するものとする。
【実施例0029】
合成例1
【0030】
ブチルアクリレート55重量部、エチルヘキシルアクリレート23重量部、メチルメタクリレート10重量部、アクリル酸8重量部、ヒドロキシエチルアクリレート4重量部、過酸化ベンゾイル0.3重量部、および酢酸エチル150重量部を混合してから、80℃まで加熱し、250rpmで撹拌して6時間反応させ、アクリレート樹脂を得た。そのアクリレート樹脂は、固形分が約40%、重量平均分子量が500000~800000(Watersより市販されているGPCで分析、1回の使用ごとに標準ポリスチレンで校正)、粘度が6000cps~15000cps(Brookfield粘度計で分析)であった。そのアクリレート樹脂をPET基板に塗布してから、50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルムを得た。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.4Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。
【0031】
合成例2
【0032】
SiO2分散液(Chang Chun Petrochemical Co.,Ltd.,より市販されているnanosol、20wt%、水中に分散、平均径30±6nm)50g、3-(トリメトキシシリル)-プロピルメタクリレート13.5g、および3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.5gを混合し、40℃で4時間反応させてから、室温まで冷却し、48時間撹拌し続けることで、表面にアクリレート基(例えばメタクリレート)およびアミノ基がグラフトされたケイ素コアを形成した。その後、塩化金酸(chloroauric acid)(HAuCl4)を上記溶液に加えてから、その溶液にクエン酸ナトリウムを加え、次いでその溶液にNH2OH・HClを加えて塩化金酸を化学的に還元することで、酸化ケイ素コアの一部を覆う金シェル、例えば、表面にアクリレートがグラフトされたSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子を形成した。そのSiO2コアとAuシェルとの重量比は80:100であり、SiO2コアとグラフトアクリレート基との重量比は95:100であった。その複合粒子はナノスケール化されており、平均径が約150nmであった。その分散液をさらに希釈または濃縮して、所望の濃度1%、5%または10%の分散液を得た。
【0033】
比較例1
【0034】
合成例1におけるアクリレート樹脂80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(polydipentaerythritol hexaacrylate)20g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が92%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.45%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.2Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は1.2Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。つまり脱粘着化の効果はないということである。
【0035】
実施例1-1
【0036】
合成例1におけるアクリレート樹脂80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20g、合成例2におけるアクリレート基にグラフトされた表面を有するSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子の分散液(複合粒子1%含有)0.5g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が90%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.5%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.2Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。その脱粘着化したドライフィルムの接着力は0.2Kg/inであった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、実施例1-1における接着剤組成物は十分な接着力を有し、かつ高エネルギーの近赤外線照射の後、その接着力は劇的に低下した(つまり、近赤外線により脱粘着化することができた)。
【0037】
実施例1-2
【0038】
合成例1におけるアクリレート樹脂80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20g、合成例2におけるアクリレート基にグラフトされた表面を有するSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子の分散液(複合粒子5%含有)0.5g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が92%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.41%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.2Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。その脱粘着化したドライフィルムの接着力は0.05Kg/inであった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、実施例1-2における接着剤組成物は十分な接着力を有し、かつ高エネルギーの近赤外線照射の後、その接着力は劇的に低下した(つまり、近赤外線により脱粘着化することができた)。
【0039】
実施例1-3
【0040】
合成例1におけるアクリレート樹脂80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20g、合成例2におけるアクリレート基にグラフトされた表面を有するSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子の分散液(複合粒子10%含有)0.5g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が91%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.48%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(0.9Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。その脱粘着化したドライフィルムの接着力は0.05Kg/inであった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、実施例1-3における接着剤組成物は十分な接着力を有し、かつ高エネルギーの近赤外線照射の後、その接着力は劇的に低下した(つまり、近赤外線により脱粘着化することができた)。
【0041】
比較例2
【0042】
合成樹脂HT-6501 BS(J.C.silicone Co.,Ltd.より市販されている)80gをブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が92%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.45%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(2.9Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は2.9Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、比較例2における接着剤組成物は十分な接着力を有していたが、高エネルギーの近赤外線照射の後もその接着力は同じであった(つまり、近赤外線により脱粘着化できなかった)。
【0043】
比較例3-1
【0044】
合成樹脂77688(Eternal Materials Co.,Ltd.より市販されている)80gをブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が92%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.45%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.5Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は1.5Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、比較例3-1における接着剤組成物は十分な接着力を有していたが、高エネルギーの近赤外線照射の後もその接着力は同じであった(つまり、近赤外線により脱粘着化できなかった)。
【0045】
比較例3-2
【0046】
合成樹脂77688(Eternal Materials Co.,Ltd.より市販されている)80g、および多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が92%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.43%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.3Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は1.3Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、比較例3-2における接着剤組成物は十分な接着力を有していたが、高エネルギーの近赤外線照射の後もその接着力は同じであった(つまり、近赤外線により脱粘着化できなかった)。
【0047】
比較例3-3
【0048】
合成樹脂77688(Eternal Materials Co.,Ltd.より市販されている)80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20g、アクリレート基にグラフトされた表面を有するSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子の分散液(複合粒子1%含有)0.5g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が92%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.6%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.2Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は1.2Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、比較例3-3における接着剤組成物は十分な接着力を有していたが、高エネルギーの近赤外線照射の後もその接着力は同じであった(つまり、近赤外線により脱粘着化できなかった)。上記に示されるように、全ての合成樹脂が、コア-シェル複合粒子および多官能基を含むアクリレートのモノマーと組み合わせることにより近赤外線の照射によって脱粘着化される接着剤組成物を形成できるというわけではない。
【0049】
比較例3-4
【0050】
合成樹脂77688(Eternal Materials Co.,Ltd.より市販されている)80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20g、アクリレート基にグラフトされた表面を有するSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子の分散液(複合粒子5%含有)0.5g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム、つまり接着剤組成物を得た。そのドライフィルムは、透過率が91%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が0.8%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.1Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は1.1Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、比較例3-4における接着剤組成物は十分な接着力を有していたが、高エネルギーの近赤外線照射の後もその接着力は同じであった(つまり、近赤外線により脱粘着化できなかった)。上記に示されるように、全ての合成樹脂が、コア-シェル複合粒子および多官能基を含むアクリレートのモノマーと組み合わせることにより近赤外線の照射によって脱粘着化される接着剤組成物を形成できるというわけではない。
【0051】
比較例3-5
【0052】
合成樹脂77688(Eternal Materials Co.,Ltd.より市販されている)80g、多官能基を含むアクリレートとしてのポリジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20g、アクリレート基にグラフトされた表面を有するSiO2/Auコア-シェル構造の複合粒子の分散液(複合粒子10%含有)0.5g、および熱開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gを24時間均一に撹拌してから、ブレードコーティングにより偏光板に塗布し、次いで50℃のオーブンに5分入れて乾燥させることにより、厚さ20μm~25μmのドライフィルム(例えば、接着剤組成物)を得た。そのドライフィルムは、透過率が89%(UV-VIS分光光度計で測定)、ヘイズ度が1.6%(ヘイズメーターで測定)であった。そのドライフィルムをステンレス鋼板(10cm×10cm)に貼り付けて、その接着力を測定した(1.0Kg/in、JIS規格ZO237に従って測定)。ドライフィルムを脱粘着化させるべく、その偏光板に、波長800nm~1500nm、出力2kW、および強度2000mJ/cm2の近赤外線を照射した。照射されたドライフィルムの接着力は1.0Kg/であった(JIS規格ZO237に従って測定)。このように、比較例3-5における接着剤組成物は十分な接着力を有していたが、高エネルギーの近赤外線照射の後もその接着力は同じであった(つまり、近赤外線により脱粘着化できなかった)。上記に示されるように、全ての合成樹脂が、コア-シェル複合粒子および多官能基を含むアクリレートのモノマーと組み合わせることにより近赤外線の照射によって脱粘着化される接着剤組成物を形成できるというわけではない。
【0053】
開示された方法および材料に様々な変更や変化を加え得るということは、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示として認められるということが意図されており、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。