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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086095
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】アスファルト混合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/22 20060101AFI20230614BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230614BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20230614BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20230614BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230614BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20230614BHJP
   C08J 9/12 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E01C7/22
C08K3/013
C08K3/20
C08L95/00
C08L71/02
C08K5/06
C08J9/12 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174802
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2021200386
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】安藤 政浩
(72)【発明者】
【氏名】末原 俊史
(72)【発明者】
【氏名】門田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】亀山 修一
(72)【発明者】
【氏名】向後 憲一
【テーマコード(参考)】
2D051
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AE01
2D051AF01
2D051AF17
2D051AG01
2D051AG04
2D051AH02
4F074AA56
4F074BA34
4F074DA59
4J002AG001
4J002CH022
4J002CH052
4J002DD018
4J002DD038
4J002DE026
4J002DE078
4J002DE088
4J002DE188
4J002DE208
4J002DF008
4J002DF028
4J002DG028
4J002DG048
4J002DJ008
4J002DM007
4J002ED028
4J002ED038
4J002EF058
4J002EF088
4J002EH038
4J002EH078
4J002EH158
4J002EV238
4J002EW049
4J002FD017
4J002FD318
4J002FD319
4J002FD322
4J002FD326
4J002FD328
4J002FD329
(57)【要約】
【課題】 フォームドアスファルトを含むアスファルト混合物における気泡の発泡時間を延長する。
【解決手段】 加熱したアスファルトに、水、発泡補助剤を添加して、フォームドアスファルトを調製する工程と、前記フォームドアスファルトと骨材を混合する工程とを有し、前記発泡補助剤が、式(I)で表されるグリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、アスファルト混合物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱したアスファルトに、水、発泡補助剤を添加して、フォームドアスファルトを調製する工程と、前記フォームドアスファルトと骨材を混合する工程とを有し、
前記発泡補助剤が、下記式(I)で表されるグリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、アスファルト混合物の製造方法。
-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)
【請求項2】
前記骨材が再生骨材を含む、請求項1に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
前記発泡補助剤が、前記グリコールエーテル化合物である、請求項1に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項4】
前記発泡補助剤が、アニオン系界面活性剤をさらに含む、請求項3に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項5】
フォームドアスファルト及び骨材を含み、
前記フォームドアスファルトが、下記式(I)で表されるグリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上の発泡補助剤を含む、アスファルト混合物。
-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)
【請求項6】
前記骨材が再生骨材を含む、請求項5に記載のアスファルト混合物。
【請求項7】
前記発泡補助剤が、前記グリコールエーテル化合物である、請求項5に記載のアスファルト混合物。
【請求項8】
前記発泡補助剤が、アニオン系界面活性剤をさらに含む、請求項7に記載のアスファルト混合物。
【請求項9】
さらに脂肪酸化合物を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載のアスファルト混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト混合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装には、砕石や砂等の骨材とバインダとしてのアスファルトを混合した アスファルト混合物が用いられる。
近年、地球温暖化防止のための取り組みとして、アスファルト混合物を製造する際の混合温度、及び舗装を行う際の締固め温度の低減(中温化)が求められる。また、最適混合温度範囲で混合し、最適締固め温度で締固めたときの密度(基準密度)に対して、締固め温度を低くしたときの密度の割合(締固め度)が同等以上であることが求められる。
【0003】
中温化技術の一つに、加熱したアスファルトに水を混合して発泡させたフォームドアスファルトを用いることによって、混合温度及び締固め温度を低下させる技術がある。
フォームドアスファルトを用いたアスファルト混合物においては、フォームドアスファルト中の気泡の寿命が短いとアスファルト混合物の性状が安定しない。そこで、特許文献1では、フォームドアスファルトに消泡剤を含有させて泡を微細化することで、気泡の発泡時間を延長する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6026035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気泡の発泡時間の延長が十分ではない。
本発明は、フォームドアスファルトを含むアスファルト混合物における気泡の発泡時間を延長できるアスファルト混合物、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]加熱したアスファルトに、水、発泡補助剤を添加して、フォームドアスファルトを調製する工程と、前記フォームドアスファルトと骨材を混合する工程とを有し、
前記発泡補助剤が、下記式(I)で表されるグリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である、アスファルト混合物の製造方法。
-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)
[2]前記骨材が再生骨材を含む、[1]のアスファルト混合物の製造方法。
[3]前記発泡補助剤が、前記グリコールエーテル化合物である、[1]に記載のアスファルト混合物の製造方法。
[4]前記発泡補助剤が、アニオン系界面活性剤をさらに含む、[3]に記載のアスファルト混合物の製造方法。
[5]フォームドアスファルト及び骨材を含み、前記フォームドアスファルトが、下記式(I)で表されるグリコールエーテル化合物、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上の発泡補助剤を含む、アスファルト混合物。
-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数
1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)
[6]前記骨材が再生骨材を含む、[5]のアスファルト混合物。
[7]前記発泡補助剤が、前記グリコールエーテル化合物である、[5]に記載のアスファルト混合物。
[8]前記発泡補助剤が、アニオン系界面活性剤をさらに含む、[7]に記載のアスファルト混合物。
[9]さらに脂肪酸化合物を含む、[5]~[8]のいずれか一項に記載のアスファルト混合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアスファルト混合物及びその製造方法によれば、フォームドアスファルトを含むアスファルト混合物における気泡の発泡時間を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るアスファルト混合物の製造装置の例を示す概略構成図である。
図2】実施例の結果を示すグラフである。
図3】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係るアスファルト混合物の製造方法に好適な装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態の装置(以下、本装置ともいう。)は、加熱したアスファルトに、水、及び発泡補助剤を添加し、フォームドアスファルト(発泡したアスファルト)を得て、得られたフォームドアスファルトと、骨材とを混合してアスファルト混合物を製造するための製造装置である。
【0010】
本装置は、アスファルト計量槽10、水と発泡補助剤とを混合する混合部20、アスファルトを発泡させる発泡部30、フォームドアスファルトと骨材を混合するミキサー40を備える。
【0011】
アスファルト計量槽10には加熱したアスファルトが供給される。アスファルト用ポンプ13は、アスファルト計量槽10内のアスファルトを、アスファルト供給管11を介して発泡部30に連続的に供給する。流量計14はアスファルト供給管11を流れるアスファルトの流量を計測する。
【0012】
混合部20には、水と発泡補助剤が所定の割合で供給される。添加用ポンプ23は、水と発泡補助剤を含む添加液を、添加用供給管21を介して発泡部30に連続的に供給する。流量計24は添加用供給管21を流れる添加液の流量を計測する。
【0013】
発泡部30では、水と発泡補助剤を含む添加液が、加熱したアスファルトと混合され、水の気化膨張により発泡し、発泡補助剤を含むフォームドアスファルトが生成される。
生成したフォームドアスファルトは、噴霧ノズル35を介して、ミキサー40内に充填された骨材に噴霧される。ミキサー40内でフォームドアスファルトと骨材が混合され、アスファルト混合物が得られる。
ミキサー40での混合温度は110~185℃が好ましい。
【0014】
本実施形態で用いられるアスファルトとしては、例えばストレートアスファルト、ポリマー改質アスファルト、明色(脱色)アスファルトが挙げられる。
【0015】
本実施形態で用いられる発泡補助剤は、下記式(I)で表されるグリコールエーテル化合物(以下、化合物(I)ともいう。)、脂肪酸化合物、界面活性剤化合物、及び無機化合物からなる群から選ばれる1種以上である。
-O-(AO)n-H・・・・(I)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の付加モル数を表し1~30の数である。)
【0016】
式(I)において、Rは炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数2~6のアルキル基である。
AOはオキシエチレン基であることが好ましい。
nは2~20であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
一般式(I)で表されるグリコールエーテル化合物としては、(ポリ)エチレングリコールメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールエチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールプロピルエーテル、(ポリ)エチレングリコールブチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールヘキシルエーテル、(ポリ)エチレングリコールオクチルエーテル等が挙げられる。
【0017】
発泡補助剤として、グリコールエーテル化合物を用いる場合、アスファルト100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、又は1.5質量部以上であってもよく、10質量部以下、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、又は1.0質量部以下であってもよい。グリコールエーテル化合物は、アスファルト100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、0.3質量部以上7.0質量部以下、又は0.5質量部以上5.0質量部以下であってもよい。
【0018】
発泡補助剤として、グリコールエーテル化合物を用いる場合、さらにアニオン系界面活性剤を組み合わせて使用することで、得られるアスファルト混合物の締固め度をさらに向上できることがわかった。そのようなアニオン系界面活性剤としては、上記の効果が得られるのであれば特に限定されないが、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤等を挙げることができ、特にリン酸エステル系界面活性剤を用いることができる。
【0019】
リン酸エステル系界面活性剤としては、下記一般式(III)で表される化合物を挙げることができる:
【化1】
【0020】
一般式(III)中、Rは、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、飽和でも不飽和でもよい。
n個のAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、
nはAOの平均付加モル数を示す0~20の数であり、AOの付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよく、
はNa、K、NH4又はHであり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0021】
一般式(III)中のRは炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、n-オクチル、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基等の直鎖状のアルキル基、n-オレイル基、パルミトレイル基等の直鎖状のアルケニル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、t-オクチル基、イソオクチル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、ネオドデシル基、イソトリデシル基、sec-トリデシル基、tert-トリデシル基、ネオトリデシル基、イソテトラデシル基、sec-テトラデシル基、tert-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、イソペンタデシル基、sec-ペンタデシル基、tert-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、イソヘキサデシル基、sec-ヘキサデシル基、tert-ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、sec-ヘプタデシル基、tert-ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、イソオクタデシル(イソステアリル)基、sec-オクタデシル基、tert-オクタデシル基、ネオオクタデシル基等の分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0022】
一般式(III)中のRの炭素数は8~18であってよく、10~14が好ましく、12がより好ましい。
一般式(III)において複数あるRは、互いに同一であっても、異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0023】
一般式(III)においてAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。Aは、炭素数、2~4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エチレン基、n-プロピレン基、プロピレン基(-CH-CH(CH)-)、n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基(-CH-CH-CH(CH)-)、2-メチルプロピレン基(-CH-CH(CH)-CH-)、ジメチルエチレン基(-CH-C(CH-)、エチルエチレン基(-CH-CH(CHCH)-)等が挙げられる。また、Aにおいて、(AO)の主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。すなわち、Aは、エチレン基、プロピレン基及びエチルエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましい。AOの平均付加モル数を示すnは、0~20であり、1~3が好ましく、2がより好ましい。一般式(III)において、AOは互いに同一であっても、異なっていてもよく、AOの付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよいが、互いに同一でありホモ形式であることが好ましい。AOとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基(-O-CH-CH(CH)-)、オキシエチレン基とオキシプロピレン基(-O-CH-CH(CH)-)との組み合わせが好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0024】
一般式(III)においてMはNa、K、NH4又はHであり、Naが好ましい。一般式(III)において複数あるMは、互いに同一であっても、異なってもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0025】
ポリオキシアルキレン基(R-O-(AO)-)の付加モル数を示すmは0~3であり、1~2が好ましい。
【0026】
グリコールエーテル化合物とアニオン系界面活性剤が組み合わせて用いられる場合、グリコールエーテル化合物の使用量は、上記のとおりであり、アニオン系界面活性剤の使用量は、グリコールエーテル化合物100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、又は1.5質量部以上であってもよく、10質量部以下、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、又は2.0質量部以下であってもよい。アニオン系界面活性剤は、グリコールエーテル化合物100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、0.3質量部以上7.0質量部以下、又は0.5質量部以上5.0質量部以下であってもよい。
【0027】
脂肪酸化合物としては、下記式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)ともいう。)が好ましい。
11-COO-(AO)m-R12・・・・(II)
(式中、R11は置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、R12は水素原子又はメチル基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、mはオキシアルキレン基の付加モル数を表し0又は1~30の数である。)
式(II)において、R11の炭素数は6~24が好ましく、8~20がより好ましく、10~18がさらに好ましく、12~16が特に好ましい。
式(II)において、mは0又は1~25が好ましく、0又は1~20がより好ましく、0又は1~15がさらに好ましい。
式(II)において、AOはオキシエチレン基が好ましい。
【0028】
化合物(II)としては、脂肪酸:R11COOH、脂肪酸メチルエステル:R11COOCH、脂肪酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル:R11COO(CHCHO)CH、(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステル:R11COO(CHCHH等が例示できる。
具体的な例としては、パルミチン酸、パルミチン酸メチルエステル、パルミチン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンパルミチン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、ステアリン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンステアリン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、オレイン酸、オレイン酸メチルエステル、オレイン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンオレイン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノール酸、リノール酸メチルエステル、リノール酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノール酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノレン酸、リノレン酸メチルエステル、リノレン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノレン酸エステル(平均付加モル数:1~15)等が挙げられる。
【0029】
界面活性剤化合物は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活剤が例示できる。非イオン性界面活剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルまたはポリオキシアルキレンアルキレートが好ましい。また、グリコールエーテル化合物と組み合わせて用いられる上述のアニオン系界面活性剤も好適に用いることができる。
【0030】
無機化合物は、炭酸水素ナトリウム、フルオロスルホン酸、硫化ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸、ヨウ化アンモニウム、水酸化マグネシウム、フッ化カリウム、シアン酸カリウム、硫酸亜鉛、酸化カルシウム、過マンガン酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、臭化水素酸、臭化アルミニウム、炭化ケイ素が例示できる。
【0031】
発泡補助剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡補助剤の添加量は、アスファルトの100質量部に対して、0.1~10.0質量部が好ましく、0.5~1.0質量部がより好ましい。発泡補助剤の添加量は、アスファルト100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、又は1.5質量部以上であってもよく、10質量部以下、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、又は1.0質量部以下であってもよい。
発泡補助剤の添加量が上記範囲の下限値以上であると十分な添加効果が得られやすい。 上限値以下であると十分な効果が得られやすい。
【0032】
本実施形態において、加熱したアスファルトに添加する水の添加量は、アスファルトの100質量部に対して、発泡補助剤と水の合計量が1.0~10.0質量部であることが好ましく、2.0~4,0質量部であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態で用いられる骨材としては、例えば、砕石、スラグ、砂、アスファルトコンクリート再生骨材(以下、再生骨材という。)など、一般的に舗装に用いられるものが挙げられる。再生骨材は、アスファルト舗装の表層と基層に施工されたアスファルト混合物の廃材を破砕して得られる。
【0034】
一般的に、フォームドアスファルトを含むアスファルト混合物において、再生骨材の配合率が高いと締固め度が低下しやすいが、本発明を適用することで、かかる締固め度の低下を抑制することができる。したがって、本発明を適用することによる効果が大きい点では、骨材が再生骨材を含むことが好ましい。
骨材が再生骨材を含む場合、骨材とフィラーの合計質量に対して、再生骨材の割合の上 限は、締固め度確保の点から80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
再生骨材に含まれるアスファルト(以下、旧アスファルトという。)の含有量は、再生骨材の全質量に対して2.5質量%以上であることが好ましい。旧アスファルトの針入度(単位:1/10mm)は1以上100未満であることが好ましい。旧アスファルトの軟化点は10~100℃であることが好ましい。
ここで、旧アスファルトの含有量は、舗装調査・試験法便覧G028「アスファルト 抽出試験方法」で測定される含有量であり、旧アスファルトの針入度は、舗装調査・試験法便覧 A041「針入度試験方法」で測定される針入度である。また、旧アスファルトの軟化点はA042「軟化点試験」で測定される軟化温度である。
【0036】
骨材が再生骨材を含む場合、再生用添加剤を用いてもよい。再生用添加剤は、旧アスファルトの柔軟性等の性状を回復させる効果を有する添加剤である。公知の再生用添加剤を使用できる。例えば飽和分、芳香族分、レジン分を含む石油潤滑油系の再生用添加剤が挙げられる。再生用添加剤の市販品の例としては、RDEX(ENEOS社製品名)、RJ-1(三徳アスリード社製品名)、RJ-T(竹中産業社製品名)等が挙げられる。
再生用添加剤の添加量は再生骨材の全質量に対して0.1質量%以上であることが好ま しい。
再生用添加剤は、常温または加温した再生骨材に噴霧する方法で添加することが好ましい。再生用添加剤を再生骨材に添加した後、3日以上養生して旧アスファルト内部に再生用添加剤を浸透させることが好ましい。
【0037】
ミキサー40でフォームドアスファルトと骨材を混合する際に、さらにフィラーを混合してもよい。フィラーとしては、石粉、消石灰、セメント、回収ダスト、フライアッシュなどが挙げられる。
【0038】
骨材とフィラーの合計100質量部に対して、フォームドアスファルトの配合量は0.1~10.0質量部が好ましく、1.0~7.0質量部がより好ましい。
【0039】
ミキサー40でフォームドアスファルトと骨材を混合する際に、さらに他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば施工性改善剤が挙げられる。
他の添加剤を配合する場合、添加骨材とフィラーの合計100質量部に対して、他の添加剤の合計質量は0.01~2.00質量部が好ましく、0.05~0.30質量部がより好ましい。
【0040】
このようにして得られるアスファルト混合物は、フォームドアスファルト及び骨材を含む。さらにフィラーを含んでもよい。さらに他の添加剤を含んでもよい。
フォームドアスファルトは発泡補助剤を含む。フォームドアスファルト中には、水が気化膨張した気泡が存在する。
【0041】
本実施形態のアスファルト混合物は、アスファルト混合物を敷きならして締固めるアスファルト舗装方法に用いられる。
例えば、施工基面上に、アスファルトフィニッシャ等を用いてアスファルト混合物を敷きならし、ローラ等を用いて締固めて舗装体を得ることができる。
締固め温度は60~180℃が好ましい。前記締固め温度における締固め度は90%以上が好ましく、96%以上がより好ましい。
【実施例0042】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」である。
【0043】
以下の原料を用いた。
アスファルト80/100:ストレートアスファルト80/100。
化合物(I)(発泡補助剤)の水溶液(1):日本乳化剤社製品名ワークファインW、グリコールエーテル化合物。
界面活性剤(1):日本乳化剤社製リン酸エステル系界面活性剤
再生骨材:旧アスファルト量 5.26(質量%)、針入度 20(1/10mm)、軟化点66.8℃。
再生用添加剤:飽和分 82.9質量%、芳香族分 13.1質量%、レジン分 3.3質量%、アスファルテン 0.0質量%。
【0044】
(例1~4:フォームドアスファルトの調製)
室温下で、160℃のアスファルト(ストレートアスファルト80/100)100質量部に対して、表1に示す配合の添加液を2質量部添加してフォームドアスファルトを得た。
添加液として、例1では水のみを用い、例2では界面活性剤(1)と水の混合液を用いた。
例3では、化合物(I)(発泡補助剤、グリコールエーテル化合物)の含有量が25質量%となるように、上記水溶液(1)(ワークファインW)を水で希釈した希釈溶液を添加液とした。
例4では、化合物(I)(発泡補助剤)の含有量が50質量%となるように、上記水溶液(1)(ワークファインW)を水で希釈した希釈溶液を添加液とした。
【0045】
例1~4において、20リットルのアルミ製容器にフォームドアスファルトを噴出し、容器上端からの下がりを測定することで容積を測定し、発泡倍率を求めた。試験数3として平均値を求めた。
水を添加してから30分後、60分後、120分後の発泡倍率を測定した。結果を図2に示す。
【0046】
図2の結果に示されるように、例1~4のいずれにおいても、発泡倍率は時間の経過にともなって低下する傾向が見られるが、水と化合物(I)(発泡補助剤)を添加した例3、4は、水のみを添加した例1、又は水と界面活性剤を添加した例2に比べて、発泡倍率が高く、120分後に残存する気泡が多かった。すなわち、気泡の持続性(気泡の寿命)が向上し、発泡時間が延長された。
また、水と界面活性剤を添加した例2は、水のみを添加した例1に比べて、発泡倍率が高く、120分後に残存する気泡が多かった。なお、例2において界面活性剤(1)(日本乳化剤社製リン酸エステル系界面活性剤)に代えて、食器用洗剤としても使用される市販のアニオン系界面活性剤を用いた例も検討した所、例2とほぼ同じ結果となった。
【0047】
【表1】
【0048】
(参考例1~3:標準品の製造)
表2に示す配合で原料を混合して密粒度アスファルト混合物を調製した。アスファルト(ストレートアスファルト80/100)、及び再生用添加剤の添加量は、針入度(25℃)が70(単位:1/10mm)となるように調整した。混合温度は160℃(最適混合温度)とした。
得られたアスファルト混合物について、マーシャル供試体を作製し、密度を測定した。締固め温度は140℃(最適締固め温度)、突き固め回数は50回とした。試験個数は3個とし平均値を求めた。
【0049】
【表2】
【0050】
(例5~7)
表3に示すように、参考例1において、混合温度を130℃、締固め温度を110℃に変更した。
アスファルトとして、例5ではストレートアスファルト80/100を用いた。
例6では、例1で調製したフォームドアスファルトF1(発泡補助剤を含まない)を用いた。
例7では、例3で調製したフォームドアスファルトF3(添加液における発泡補助剤の濃度25%)を用いた。
そのほかは参考例1と同様にしてマーシャル供試体を作製し、密度を測定した。
参考例1の密度(基準密度)に対する、各例の密度を百分率で表した締固め度(単位:%)を求めた。結果を図3に示す。
【0051】
(例8~10)
表3に示すように、参考例2において、混合温度を130℃、締固め温度を110℃に変更した。
アスファルトとして、例8ではストレートアスファルト80/100を用いた。
例9では、例1で調製したフォームドアスファルトF1を用いた。
例10では、例3で調製したフォームドアスファルトF3を用いた。
そのほかは参考例2と同様にしてマーシャル供試体を作製し、密度を測定した。
参考例2の密度(基準密度)に対する、各例の密度を百分率で表した締固め度(単位:%)を求めた。結果を図3に示す。
【0052】
(例11~13)
表3に示すように、参考例3において、混合温度を130℃、締固め温度を110℃に変更した。
アスファルトとして、例11ではストレートアスファルト80/100を用いた。
例12では、例1で調製したフォームドアスファルトF1を用いた。
例13では、例3で調製したフォームドアスファルトF3を用いた。
そのほかは参考例3と同様にしてマーシャル供試体を作製し、密度を測定した。
参考例3の密度(基準密度)に対する、各例の密度を百分率で表した締固め度(単位:%)を求めた。結果を図3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
図3の結果に示されるように、発泡補助剤を含むフォームドアスファルトを用いた例7、10、13は、非発泡のストレートアスファルトを用いた例5、例8、例11、及び発泡補助剤を含まないフォームドアスファルトを用いた例6、例9、例12に比べて、締固め度が向上した。
【0055】
(例14~19)
以下の表4に示す配合で原料を混合して密粒度アスファルト混合物を調製した。例15では、発泡補助剤として、化合物(I)のみを用いた。例17では、発泡補助剤として、化合物(I)及び無機化合物である重曹を用いた。例18では、発泡補助剤として、化合物(I)とリン酸エステル系界面活性剤1(上記一般式(III)において、R=12、n=2、A=エチレン基、m=1~2、M=Naである界面活性剤)とを併用した。例19では、発泡補助剤として、化合物(I)とリン酸エステル系界面活性剤2(上記一般式(III)において、R=8、n=2、A=エチレン基、m=1~2、M=Naである界面活性剤)とを併用した。例18及び例19の発泡補助剤中の界面活性剤の量は、0.5質量%であった。混合温度は160℃(最適混合温度)とした。
【0056】
上記の例1~例4と同様にして、発泡性の試験を行った。発泡の継続時間を評価し、泡が続いている場合には「○」とし、泡がなくなっている場合を「×」とした。また、泡の小さい例から順に目視で5段階評価をした。
【0057】
締固め度は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB001(マーシャル安定度試験方法)に記載の方法によって供試体を製造した後、B008-1(「密粒度アスファルト混合物等の密度試験方法」)に記載の方法によって密度を測定し、その結果から、例18の製造直後の密度(基準密度)に対する、各例の密度を百分率で表して求めた。ここで、締固め温度は115℃(最適締固め温度)、突き固め回数は50回とした。試験個数は3個とし平均値を求めた。
【0058】
マーシャル安定度試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB001(マーシャル安定度試験方法)に記載の方法によって行った。
【0059】
低温カンタブロ試験は、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB010(カンタブロ試験方法)に記載の方法によって、-20℃で行った。
【0060】
【表4】
【0061】
発泡補助剤を用いた例では、締固め度の向上を確認できた。特に例18及び例19では、発泡の持続効果も高く、締固め度も非常に高い結果となった。安定度及び低温カンタブロ損失率についても発泡補助剤を用いた例で向上することが分かった。
【符号の説明】
【0062】
10 アスファルト計量槽
11 アスファルト供給管
13 アスファルト用ポンプ
14、24 流量計
20 混合部
21 添加用供給管
23 添加用ポンプ
30 発泡部
35 噴霧ノズル
40 ミキサー
図1
図2
図3