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特開2023-86116疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法、このように製造された充填材、及び、少なくとも1つのこのような充填材を含むポリマーベースの鋳造組成物から製造された成形体
<図1>
  • 特開-疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法、このように製造された充填材、及び、少なくとも1つのこのような充填材を含むポリマーベースの鋳造組成物から製造された成形体 図1
  • 特開-疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法、このように製造された充填材、及び、少なくとも1つのこのような充填材を含むポリマーベースの鋳造組成物から製造された成形体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086116
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法、このように製造された充填材、及び、少なくとも1つのこのような充填材を含むポリマーベースの鋳造組成物から製造された成形体
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20230614BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
C08J3/20 A CEY
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194072
(22)【出願日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】10 2021 132 486.6
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518429207
【氏名又は名称】ショック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Schock GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビタリー・ダツュク
(72)【発明者】
【氏名】アダム・オレンドール
【テーマコード(参考)】
4F070
4J011
【Fターム(参考)】
4F070AA32
4F070AA61
4F070AA66
4F070AC22
4F070AC44
4F070AC96
4F070AE01
4F070AE28
4F070FA04
4F070FA15
4F070FB06
4J011AA05
4J011GA05
4J011GB03
4J011GB07
4J011PA07
4J011PA13
4J011PA57
4J011PA59
4J011PA60
4J011PB06
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】例えば、複合材料の成形体を製造するポリマーベースの鋳造組成物への添加材として使用される、疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法、および当該充填材を使用してなる成形体を提供する。
【解決手段】製造方法は、(a)所定の表面を有する充填材を準備するステップと、(b)前記充填材と少なくとも1つの疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物の溶液とを、充填材表面m当たり0.15×10-2~5.0×10-2gの量において20U/分~200U/分の速度で12分から120分間、混合ユニットにおいて混合するステップと、(c)疎水化及び活性化された無機及び/又は有機充填材を、保管袋、箱、若しくは、ドラム缶に移す、又は、直接、流延材料の中に入れるステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性及び反応性の、無機及び/又は有機の充填材の製造方法であって、
(a)所定の表面を有する充填材を準備するステップと、
(b)前記充填材と、少なくとも1つの疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物の溶液とを、充填材表面1m当たり0.15×10-2~5.0×10-2gの量において20rpm~200rpmの速度で12分から120分間、混合ユニットにおいて混合するステップと、
(c)疎水化及び活性化された、無機及び/又は有機の充填材を、保管袋、箱、若しくは、ドラム缶に移す、又は、直接、流延材料の中に入れるステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)において、前記無機の充填材は、SiO、Al、TiO、ZrO、Fe、ZnO、Cr、炭素、金属及び金属合金、SiC、SiN、BN、又は、その混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)において、前記有機の充填材は、粉砕した果実の種子及び/又は果実の殻から選択され、オリーブの種子、桃の種子、アプリコットの種子、サクランボの種子、アーモンドの殻、アルガンの殻、クルミの殻、又は、その混合物から選択されることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)において、前記無機及び有機の充填材は、両方の種類の充填材を任意の混合比で組み合わせて使用することが可能であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)において、前記無機及び有機の充填材は、1μm~2000μmの粒径を有することが可能であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)において、前記疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物は、一般式:HC=C(R)C(O)-NH-CH-CH-C(O)-O-Rの植物油ベースのメタクリロイルモノマーから選択され、ここで、Rは、アクリルの場合Hであり、メタクリルの場合CHであり、Rは、集合体においてN-ヒドロキシエチル(メタ)クリルアミドと反応する植物油ベースの油から成る脂肪酸残基であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)において、前記疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物は、成形体のポリマーマトリクスに存在する少なくとも1つのモノマーに溶融されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)において、疎水化及び活性化する反応性化合物用の溶媒として使用されるモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルカプロラクトンアクリレート、ポリカプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロキシフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化4-フェニルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、エトキシ化4-ノニルフェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、エトキシ化4-ラウリルアクリレート、ポリエステルアクリレート、超分岐ポリエステルアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレートといった単官能基アクリルモノマーから選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)において、疎水化及び活性化する反応性化合物用の溶媒として使用されるモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ベヘニルポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルポリエチレングリコールメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、ウレイドメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンホルマールメタクリレート、ラウリルテトラデシルメタクリレートといった単官能基のメタクリルモノマーから選択されることを特徴とすることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)において、疎水化及び活性化する反応性化合物用の溶媒として使用されるモノマーは、1、6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール-A-ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、エステルジアクリレート、アルコキシル化ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、脂肪族ウレタン-トリアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、芳香族のウレタンジアクリレート、芳香族ウレタン-トリアクリレート、芳香族ウレタンヘキサアクリレート、ポリエステルヘキサアクリレート、エポキシ化大豆油ジアクリレートといった多官能基アクリルモノマーから選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)において、疎水化及び活性化する反応性化合物用の溶媒として使用されるモノマーは、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコール-ジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコール-ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートといった多官能基のメタクリルモノマーから選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
使用される前記油は植物油であることを特徴とする、先行する請求項及び請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記植物油は、ココナッツ油、胚芽油、菜種子油、綿実油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、サフラワー油、ごま油、大豆油、ひまわり油、アーモンド油、ブナの木の実油、ブラジルナッツ油、カシューナッツ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、モンゴンゴ油、ピーカン油、ピスタチオ油、クルミ油、カボチャ種子油、グレープフルーツ種子油、レモン油、オレンジ油、苦瓜油、ひょうたん油、カボチャ油、バターナット種子油、エグシ種子油、西瓜種子油、ルリヂサ種子油、スグリ種子油、ブルーベリー種子油、アサイー油、マツヨイグサ油、亜麻仁油、アマランス油、アプリコット種子油、リンゴ種子油、アルガン油、アボガド油、ババス油、ベン油、Salnusol、カロデンドラムカペンセ油、アルガロバ油、ココアバター、オナモミ油、Kohunol、コリアンダー種子油、デーツ種子油、ディカ油、ぶどう種子油、大麻油、カポック種子油、ケナフ麻種子油、ラレマンティア油、マルラ油、マスタード油、ラムティルハーブ油、ナツメグバター、オーカーシード油、エゴマ種子油、柿種子油、ペキー油、ピリナッツ油、ザクロ種子油、ケシの実油、プラカシー油、プラム種子油、キヌア油、米油、サチャインチ油、サポタ油、パタヤ油、シアバター、タラミラ油、椿油、タイガーナッツ油、タバコ種子油、トマト種子油、小麦胚芽油、キャスター油、カメリナ油、ラディッシュ油(Rattichol)、サリコニア油、キリ油、コパイバ含有樹脂、ジャトロファ油、ホホバ油、ナグケサール油、ポンガミア油、ダンマー油、烏臼油、チョーセンアザミ油、ムルムルバター、バラノス油、ブラッダーポッド油、マカッサル種子油、ゴボウ油、ブリティ油、ククイナッツ油、ニンジン種子油、クフェア油、マンゴ油、トケイソウ油、イヌバラ実油、ゴム種子油、サジー油、タマヌ油、トンカ豆油から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
使用される前記油は、精油であることを特徴とする、先行する請求項及び請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記精油は、ウード油、アジョワン油、セイヨウトウキ根油、アニス油、アサフェティダ油、バジル油、ペルーバルサム、月桂樹油、ベルガモット油、黒胡椒油、ブチュー油、バーチ油、樟脳油、カラマンシー油、キャラウェイ油、カルダモン油、シダーウッド油、カモミール油、ショウブ油、シナモン油、レモン油、レモングラス油、サルビア油、クローブ油、コーヒー油、コリアンダー油、コストマリー油、モッコウ油、コケモモ種子油、クベバ油、クミン油、糸杉油、カレーリーフ油、ダバナ油、ディル油、永久花油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル種子油、ガランガル油、ガルバナム油、ニンニク油、ゼラニウム油、ショウガ油、ヘナ油、ドライフラワー油、西洋わさび油、ジャスミン油、ジュニパー油、ラベンダー油、レモンバーム油、ナンバンサイカチ油、オオヨモギ油、ミルラ油、ニーム油、オレガノ油、甘松油、パセリ油、パチョリ油、エゴマ油、はっか油、松の実油、ローズマリー油、白檀油、ササフラス油、サマーサボリー油、チョウセンゴミシ油、ミンツ油、タイム油から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
使用される前記油は、動物の脂肪及び/又は油から選択され、前記動物の脂肪及び/又は油は、魚の油、イトラン、ニワトリの脂肪、クロコダイル脂肪、クロコダイル油、タラ肝油、エミュー油、豚脂肪、ガチョウ脂肪、アヒル脂肪、サメ肝油から選択可能であることを特徴とする、先行する請求項及び請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)において、前記成形部品のポリマーマトリクスに存在し溶媒として使用される前記モノマーにおける前記疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物の濃度は、1~20重量%、好ましくは3~17.5重量%、具体的には5~15重量%でなければならないことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17の少なくとも1項に記載の方法に従って製造された疎水性及び反応性の無機又は有機充填材。
【請求項19】
請求項18に記載の充填材の、複合材料成形部品を製造するためのポリマーベースの流延材料への添加材として、又は、歯科用充填材複合系の一部としての使用。
【請求項20】
請求項19に記載の流延材料から製造される成形部品。
【請求項21】
キッチンシンクや、流し台、シャワートレイ、バスタブ、WC又はビデの形の衛生設備であることを特徴とする、請求項20に記載の成形部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法に関する。このような充填材は、例えば、複合材料の成形体を製造するポリマーベースの鋳造組成物への添加材として使用される。
【背景技術】
【0002】
縮みや縮み応力は、例えば、成形されたキッチンシンク、流し台、バスタブ、又は、複合系歯科用充填材といったラジカル硬化型の熱硬化性材料に基づく多くの用途でみられる一般的な問題である。このような複合材料は、通常、ラジカル硬化型ポリマー結合剤、開始剤系、及び、シランで処理された無機充填材粒子を含む。このような複合材料を硬化する際に、縮みが観察される。この縮みは、ミクロ割れの原因や材料における強い固有応力の原因になり得る。例えば、成形されたキッチンシンクでは、この縮みにより材料に亀裂伝播が生じ、結果的に水漏れや機械的特性の低減を引き起こし得る。歯科医学的複合材料の場合にも同じ問題、すなわち、応力、マイクロクラック、接着剤の離脱、及び、最終的に患者の痛みが起こり得る。
【0003】
この問題は、複合材料における充填材の含有量が高いことや、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの使用に由来し得る。3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、結晶粒子の表面で固定化され、その比較的短い三重鎖によりわずかな可動性しか有さない。可動性が制限されているため、重合化の間にラジカルが急速に崩壊し、短いポリマー鎖が形成されることになる。このため、高い剛性によりこの系に強い負荷がかかることになる。材料の熱収縮又は熱膨張、及び、機械的衝撃は、充填材-マトリクス-界面におけるミクロ割れの発生源として作用し得る。
【0004】
充填材-マトリクス-界面では、硬い無機表面に多くの反応基が存在するため、自然応力が集中する。石英砂粒子の表面は、通常、1立方ナノメートルの表面に0.8ヒドロキシル基を有している。シラン化プロセスの間に、ほぼ各ヒドロキシル基が個々のシラン分子と反応し、均一な疎水性シラン層を形成し、これによって、反応性メタクリレート基が極めて密集して固定化される超疎水作用が生じる。充填材表面に固定化される二重結合の濃度が高いことにより、結果的に短鎖が重合化されることになり、これによって残留応力の高い領域が発生することになる。この応力は、非反応性シランによるメタクリロイルシランを使用することにより低減可能であるが、充填材とマトリクスとが結合しないため、例えば衝撃強度といった機械的特性が低下してしまうことになる。
【0005】
シランカップリング剤によって処理された無機及び/又は有機のシラン処理充填材を使用する場合、シランの加水分解可能なエステル官能基の加水分解が必要となる。例えば1000kgの3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加水分解すると、387kgのメタノールが製造される。これは、高い蒸気圧の可燃性液体であり、誤って飲み込むと死に至り得る。
【0006】
また充填材のシラン化は、技術的には、60℃以上の温度での熱活性化により行われる。このプロセスに必要なエネルギーは、通常、天然ガス又は対応する炭化水素の燃焼によって得られ、これは、CO排出の原因となりプロセス費用の上昇を招く。通常、シラン化プロセスの後、充填材に所望の疎水性が現れるまでは何日も熟成時間が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の従来技術の技術的及び環境に関連した課題を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材の製造方法を提案する。この方法は、(a)所定の表面を有する充填材を準備するステップと、(b)前記充填材と、少なくとも1つの疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物の溶液とを、充填材表面1m当たり0.15×10-2~5.0×10-2gの量において20rpm~200rpmの速度で12分から120分間、混合ユニットにおいて混合するステップと、(c)疎水化及び活性化された無機及び/又は有機の充填材を、保管袋、箱、若しくは、ドラム缶に移す、又は、直接、鋳造組成物の中に入れるステップと、を含む。
【0009】
処理された充填材を後反応のために7日間保管しなければならないシラン化方法と異なり、本発明は、充填材を処理の直後に使用することを可能にする技術を提案する。また、シラン化反応では少なくとも60℃で少なくとも30分間の加熱が行われるが、本発明に係る方法は、加熱プロセスを必要としない。
【0010】
本発明の疎水化及び活性化された充填材は、マトリクスとの異なる界面を有する。充填材表面の近傍に位置するメタクリロイル基の二重結合は、重合化の間に、充填材表面をカプセル化し、マトリクスとの共重合化のために脂肪酸の側鎖に二重結合を有する。これは、応力の少ない充填材-マトリクス-界面の形成を導く。これによって局所的な応力や成形体全体の応力が低減される。
【0011】
疎水化及び活性化する天然ベースの反応性物質の量は、特定の充填材表面に依存しており、したがってg/mで表される。ここで、使用されるメタクリロイルモノマーの量は、アミン基と充填材のヒドロキシル基とによりメタクリロイルモノマーの単分子層が好ましく形成されるように選択される。つまり、その量は充填材表面上のヒドロキシル基の厚みに依存する。例えば、石英砂の場合、nm当たり0.8-OH-基及び0.2m/gが想定可能であり、これに基づいてメタクリロイルモノマーの必要な量が決定され得る。
【0012】
同様に、混合ユニット、例えばドラムフープミキサーにおける混合時間も充填材の組成物に応じて変動する。より大きな直径の粒子は、油ベースのモノマーを充填材表面上に均一に分散させるためにより短い時間しか必要としない。細粒、結晶、又は、果実の種子粉末の場合、混合時間はより長い。
【0013】
本発明によれば、疎水化及び活性化された表面を有する無機及び/又は有機の充填材が準備される。この無機の充填材は、SiO、Al、TiO、ZrO、Fe、ZnO、Cr、炭素、金属及び金属合金、SiC、SiN、BN、又は、その混合物から選択されることが可能である。
【0014】
有機の充填材は、粉砕した果実の種子及び/又は果実の殻から選択され、オリーブの種子、桃の種子、アプリコットの種子、サクランボの種子、アーモンドの殻、アルガンの殻、クルミの殻、又は、これらの混合物から選択されることが可能である。
【0015】
無機及び有機の充填材は、両方の種類の充填材を組み合わせて使用することが可能である。混合比は、任意で選択され得る。
【0016】
無機及び/又は有機の充填材の疎水性及び活性化された表面は、無機及び/又は有機の充填材の表面に、(メタ)クリル基とエステル結合したバイオベースの脂肪酸基を含む少なくとも1つのバイオベースの(メタ)クリル酸モノマーを固定することによって形成されている。
【0017】
前記ステップ(a)において使用される無機及び有機の充填材は、1μm~2000μmの粒径を有していてもよい。本発明は、少なくとも1つのバイオベースの反応性化合物で表面処理を行うことを含む、無機及び/又は有機の充填材を疎水化及び活性化するという概念に基づいている。
【0018】
無機及び/又は有機の充填材の疎水性及び活性化された表面は、(メタ)クリル基とエステル結合した基からなるバイオベースの脂肪酸基を含む少なくとも1つのバイオベースの(メタ)クリル酸モノマーを固定化することによって得られる。バイオベースの(メタ)クリル酸モノマーは、成形体のポリマーマトリクスに含まれるモノマーに溶融される。バイオベースの(メタ)クリル酸モノマーの濃度は、1~20重量%、好ましくは3~17.5重量%、より好ましくは5~15重量%である。
【0019】
ここで、ステップ(b)において使用される疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物は、一般式:HC=C(R)C(O)-NH-CH-CH-C(O)-O-Rの植物油ベースのメタクリロイルモノマーから選択され、ここで、Rは、アクリルの場合Hであり、メタクリルの場合CHであり、Rは、集合体においてN-ヒドロキシエチル(メタ)クリルアミドと反応する植物油ベースの油から成る脂肪酸残基であってもよい。
【0020】
さらに、ステップ(b)において使用される疎水化及び活性化するバイオベースの反応性化合物は、成形体のポリマーマトリクスに存在する少なくとも1つのモノマーに溶融されてもよい。
【0021】
溶媒として、アクリル酸モノマーの形の単官能基モノマーを使用してもよい。これは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルカプロラクトンアクリレート、ポリカプロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロキシフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化4-フェニルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、エトキシ化4-ノニルフェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、エトキシ化4-ラウリルアクリレート、ポリエステルアクリレート、超分岐ポリエステルアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレートから選択されたものであってもよい。
【0022】
さらに、メタクリレートの形の単官能基モノマーを使用することも可能である。これは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ベヘニル-ポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルポリエチレングリコールメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、ウレイドメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンホルマールメタクリレート、ラウリルテトラデシルメタクリレートから選択されたものであってもよい。
【0023】
また、溶媒として、多官能基アクリル酸の形の多官能基モノマーを使用することも可能である。これは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール-A-ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、エステルジアクリレート、アルコキシル化ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ジペンタエリトリトール-ペンタアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、脂肪族ウレタン-トリアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、芳香族ウレタンジアクリレート、芳香族ウレタン-トリアクリレート、芳香族ウレタンヘキサアクリレート、ポリエステルヘキサアクリレート、エポキシ化大豆油ジアクリレートから選択されたものであってもよい。
【0024】
さらに、バイオベースのメタクリレートの形の多官能基のバイオモノマーを使用してもよい。これは、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートから選択されたものであってもよい。
【0025】
植物油の形の脂肪酸を使用してもよい。これは、ココナッツ油、胚芽油、菜種子油、綿実油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、サフラワー油、ごま油、大豆油、ひまわり油、アーモンド油、ブナの木の実油、ブラジルナッツ油、カシューナッツ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、モンゴンゴ油、ピーカン油、ピスタチオ油、クルミ油、カボチャ種子油、グレープフルーツ種子油、レモン油、オレンジ油、苦瓜油、ひょうたん油、カボチャ油、バターナット種子油、エグシ種子油、西瓜種子油、ルリヂサ種子油、スグリ種子油、ブルーベリー種子油、アサイー油、マツヨイグサ油、亜麻仁油、アマランス油、アプリコット種子油、リンゴ種子油、アルガン油、アボガド油、ババス油、ベン油、Salnusol、カロデンドラムカペンセ油、アルガロバ油、ココアバター、オナモミ油、Kohunol、コリアンダー種子油、デーツ種子油、ディカ油、ぶどう種子油、大麻油、カポック種子油、ケナフ麻種子油、ラレマンティア油、マルラ油、マスタード油、ラムティルハーブ油、ナツメグバター、オーカーシード油、エゴマ種子油、柿種子油、ペキー油、ピリナッツ油、ザクロ種子油、ケシの実油、プラカシー油、プラム種子油、キヌア油、米油、サチャインチ油、サポタ油、パタヤ油、シアバター、タラミラ油、椿油、タイガーナッツ油、タバコ種子油、トマト種子油、小麦胚芽油、キャスター油、カメリナ油、ラディッシュ油(Rattichol)、サリコニア油、キリ油、コパイバ含有樹脂、ジャトロファ油、ホホバ油、ナグケサール油、ポンガミア油、ダンマー油、烏臼油、チョーセンアザミ油、ムルムルバター、バラノス油、ブラッダーポッド油、マカッサル種子油、ゴボウ油、ブリティ油、ククイナッツ油、ニンジン種子油、クフェア油、マンゴ油、トケイソウ油、イヌバラ実油、ゴム種子油、サジー油、タマヌ油、トンカ豆油から選択されたものであってもよい。
【0026】
さらに、精油の形の脂肪酸を使用するものであってもよい。これは、ウード油、アジョワン油、セイヨウトウキ根油、アニス油、アサフェティダ油、バジル油、ペルーバルサム、月桂樹油、ベルガモット油、黒胡椒油、ブチュー油、バーチ油、樟脳油、カラマンシー油、キャラウェイ油、カルダモン油、シダーウッド油、カモミール油、ショウブ油、シナモン油、レモン油、レモングラス油、サルビア油、クローブ油、コーヒー油、コリアンダー油、コストマリー油、モッコウ油、コケモモ種子油、クベバ油、クミン油、糸杉油、カレーリーフ油、ダバナ油、ディル油、永久花油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル種子油、ガランガル油、ガルバナム油、ニンニク油、ゼラニウム油、ショウガ油、ヘナ油、ドライフラワー油、西洋わさび油、ジャスミン油、ジュニパー油、ラベンダー油、レモンバーム油、ナンバンサイカチ油、オオヨモギ油、ミルラ油、ニーム油、オレガノ油、甘松油、パセリ油、パチョリ油、エゴマ油、はっか油、松の実油、ローズマリー油、白檀油、ササフラス油、サマーサボリー油、チョウセンゴミシ油、ミンツ油、タイム油から選択されたものであってもよい。
【0027】
さらに、動物の脂肪及び/又は油の形の脂肪酸を使用してもよい。これは、魚の油、イトラン、ニワトリの脂肪、クロコダイル脂肪、クロコダイル油、タラ肝油、エミュー油、豚脂肪、ガチョウ脂肪、アヒル脂肪、サメ肝油から選択されたものであってもよい。
【0028】
本発明によれば、このように製造された、溶媒と脂肪酸基で官能化されたアクリルアミドとから成る溶液は、回転式粉体混合装置において、硬い充填材の表面に沈着される。反応性(メタ)アクリルモノマーにおけるメタクリル基は、エステル化してポリマーマトリックスとなり、無機及び/又は有機の充填材粒子の表面に固定化される(図2を参照)。この図では、充填材カプセル化及びポリマー接着剤への結合のプロセスが概略的に図示されている。
【0029】
無機及び/又は有機の充填材粒子の表面は、例えば結晶表面上に、ヒドロキシル基などの官能基が存在するため、機能的である。この官能性ヒドロキシル基は、本発明の生物由来の脂肪酸モノマー分子を固定化するための中心として使用される。脂肪酸-アクリルアミド-分子は、充填材表面上に化学吸着し、表面から外側に向けられた有機鎖を有する反応性(メタ)アクリル酸層を形成する。アクリルモノマーにより変性された結晶粒子、例えば、オリーブ油ベースの結晶表面上に堆積した水滴は、圧縮されて成形体となった充填材粒子の表面上に、240秒以上残留する。同じ作用が、別の油ベースの(メタ)アクリル酸の使用時にも実現される。(メタ)アクリルアミドと結合された二重結合は、充填材表面の近傍に位置する。このような形態が、重合化の間に充填材表面に均一な有機層を形成することを可能にする。他方、充填材表面から遠隔の不飽和脂肪酸の二重結合は、マトリクスモノマーとの共重合化プロセスに参加する。このようにマトリクスと充填材との間の結合に寸法的な特異性があることで、衝撃強度及び耐熱衝撃性が向上し、架橋度の影響が小さくなるため、成形体の脆弱性が低減する。
【0030】
当該方法に加えて、本発明はさらに、本発明に係る方法によって製造された疎水性及び反応性の無機及び/又は有機の充填材に関する。
【0031】
本発明に係る無機及び有機の充填材は、好ましくは、少なくとも1つのバイオベースの(メタ)アクリル酸モノマーで処理された表面を備え、この表面は、(メタ)アクリル酸基にエステル化された基を有する生物学的に誘導された脂肪酸基を含む。本明細書に開示された少なくとも1つのバイオベースの(メタ)アクリル酸モノマーで処理された表面を備える無機及び/又は有機の充填材を含む複合材料は、成形体の硬化の間に応力を低減することが可能である。本明細書に開示された硬化成形体は、低減された応力を有することが可能であるので、重合化された複合材料の機械的特性は満足できる程度に改善される。
【0032】
本発明はさらに、このような充填材の、ポリマーベースの鋳造組成物への添加材としての使用に関する。このような鋳造組成物は、例えばキッチンシンク、シャワートレイ等の鋳造及び硬化された成形体の製造に役立つ。
【0033】
最後に、本発明は、このような鋳造組成物を使用して製造された、例えばキッチンシンクやシャワートレイといった、例えばキッチン設備又は衛生設備の形の硬化された成形体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明のさらなる利点及び詳細を、以下に記載する実施形態に基づき、かつ、図面を参照することにより説明する。
図1】未処理の石英粉末(下)、並びに、疎水性及び活性化された石英粉末の比較スペクトルを示す図である。
図2】充填材カプセル化及びポリマー接着剤への接着の工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の疎水性及び活性化された表面を含む無機及び/又は有機の充填材、本発明の鋳造組成物、及び、本発明の成形方法を詳細に説明するために、実験例を紹介する。
【0036】
実施例
無機及び/又は有機の充填材の疎水化及び活性化
使用される成分
a)無機及び/又は有機の充填材
石英砂(粒径0.06~0.3mm、製造業者:Dorfner GmbH社)、石英粉末(1~50μm、Dorfner GmbH社)、クリストバライト粉末(0.1~10μm、Quartzwerke GmbH社)、オリーブの種子粉末(1.0~100μm、BioPowder Ltd社)、オリーブの種子粒子(600~800μm、BioPowder Ltd社)、桃の種子粒子(300~600μm、BioPowder Ltd社)
b)バイオベースのモノマー
イソボルニルメタクリレート(IBOMA、Evonik Performance Materials GmbH社)、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート(PEG-200-DMA、Arkema社)
c)植物油ベースのメタクリロイルモノマー
オリーブ油ベースのモノマー(OBM、ノースダコタ州立大学)、大豆油ベースのモノマー(SBM、ノースダコタ州立大学)
【0037】
疎水化剤及び活性化剤を製造するための組成物は、植物油ベースのメタクリロイルモノマー(OBM及び/又はSBM、ノースダコタ州立大学)をバイオベースのモノマー(IBOMA、Evonik Performance Materials GmbH社)及び/又はPEG-200-DMA(Arkema)の中に溶融することによって製造される。この反応混合物を35°Cで40分間、黄色い透明な溶液が得られるまで、超音波処理(Bandelin Super RK 1028 H 超音波浴)した。この疎水化剤及び活性化剤の比較のために、表1にまとめる組成物を製造した。記載の数値は、重量パーセントで表されている。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の全ての試料を、無機及び/又は有機の充填材の処理のための疎水化剤及び活性化剤として、充填材粒子の比表面積(石英砂の場合0.221m/g;石英粉末の場合1.5m/g;クリストバライト粉末の場合3.5m/g;オリーブの種子粉末の場合2.6m/g;オリーブの種子粒子の場合0.32m/g、及び、桃の種子粒子の場合0.27m/g)に応じて異なる割合で使用した。記載の数値は、グラム当たりの充填材の比表面積を示す。
【0040】
試料1~5の植物油ベースのメタクリロイルモノマーの透明な溶液を使用して、無機及び/又は有機の充填材の表面を、疎水化及び活性化した。対応する量の溶液を、石英砂(粒度0.06~0.3mm、Dorfner GmbH社)、石英粉末(1~50μm、Dorfner GmbH社)、クリストバライト粉末(0.1~10μm、Quartzwerke GmbH社)、オリーブの種子粉末(1.0~100μm、BioPowder Ltd社)、オリーブの種子粒子(600~800μm、BioPowder Ltd社)、桃の種子粒子(300~600μm、BioPowder Ltd社)といった充填材に添加して、混合シリンダに投入した。このシリンダを閉じて、充填材粒子を疎水化剤及び活性化剤で均一に湿らせるために回転シリンダに設置した。このようにして製造した混合物を、2時間、30rpmの回転速度で攪拌した。続いて、こうして疎水化された充填材を容器から取り出して、さらに鋳造組成物の製造に使用するために移送した。図1は、石英粉末(得られる石英粉末(下図)等)のIRスペクトルと、オリーブ油ベースのメタクリロイルモノマーで処理された石英粉末のIRスペクトルとを示す図である。約1650cm-1における強いピークが、マトリクスモノマーと共重合されることが可能な反応性二重結合の存在を明確に証明している。
【0041】
表2には、表1の油ベースのモノマーにより疎水化及び活性化された充填材混合物がまとめられている。記載の数値は、重量パーセントで表されている。
【0042】
【表2】
【0043】
鋳造組成物を製造し、その後各形状において硬化させるために、これらの充填材混合物(試料1~5)を使用した。
【0044】
典型的な調製は、次のように記載することができる。
23.7kgの再生PMMA(XP-95、KFG、ドイツ)を、56.3kgの再生メチルメタクリレート(r-MMA、Monomeros des Valles、スペイン)、15kgのイソボルニルメタクリレート、Visiomer Terra IBOMA(Evonik Performance Materials、ドイツ)、及び、5kgのバイオベースのメチルメタクリレート(BCH-Bruehl、ドイツ)から成る混合物の中で、透明な溶液になるまで溶融した。0.1kgのバイオベースのステアリン酸(Musim Mas、シンガポール)をモノマーのPMMA溶液に添加した。ステアリン酸が完全に溶融した後、4.0kgのSarbio 6201、ポリエチレングリコール(200)-ジメタクリレート(Arkema、フランス)をPMMA溶液に加えた。試料1~5から成る210kgの充填材系を、この混合物中に分散させた。
【0045】
この溶液を、使用して、対応する疎水性の充填材混合物を分散させ、その後、Perkadox 16及びLaurox S (Nouryon、オランダ)が1:2の割合で混合された混合物から成る開始剤系(モノマー量から計算して2重量%)を添加することによって、試料1~5を製造した。
【0046】
開始剤系を添加し15分間の脱気をした後、この鋳造組成物を閉鎖された型に射出し、硬化させるために30分間100℃で加熱した後、冷却させることによって、製造された成形体を型から取り出した。
【0047】
並行して、同じ鋳造組成物であるが、本発明に従って処理された充填材の代わりに未処理の充填材が同一の濃度で含有された鋳造組成物を使用して、比較成形体を製造し、本発明に従って処理された充填材による成形体の特性を、未処理の充填材による同一の成形体の特性と比較できるようにした。
【0048】
本発明に係る試料1~5の成形体の機械的特性及び熱的特性と、同一の濃度の未処理の充填材を使用して製造された比較成形体(1a~5a)の機械的特性及び熱的特性を比較した。
【0049】
【表3】
【0050】
衝撃強度測定のために、成形体から、80×6mmのサイズのサンプルを12個切り出した。測定は、振り子衝撃試験機(ZwickRoell HIT P 装置)を用いて行った。
【0051】
耐スクラッチ性の測定のために、1つのサンプル(100×100mm)を切り出し、DIN EN 13310に従って試験し(Erichsen 213 スクラッチ装置)、スクラッチの前後のトポグラフィーを測定した(Mitutoyo Surftest SJ 500 P 粗度測定器)。
【0052】
テーバー摩耗試験のために、1つのサンプル(100×100mm)を切り出し、摩耗試験をElcometer 1720を用いて行った。
【0053】
乾熱安定度は、試験方法DIN EN 13310に基づいている。これは、試験片を180℃の温度で20分間試験対象成形体の中心に設置して、シンク構造物に目に見える変化が残されていないことを求めるものである。
【0054】
耐熱衝撃性の試験方法は、試験成形体(キッチンシンク)を1000サイクルの間冷水/熱湯で処理する試験方法DIN 13310に基づいている。これは、90秒間熱湯(T=90℃)をシンクの中に流し、30秒休止段階の後、再び90秒間冷水(T=15℃)をシンクの中に流すものである。このサイクルは、30秒間のリラクゼーションタイムを取った後に終了する。
【0055】
測定結果が示すように、本発明に係る成形体のほぼ全てが、比較成形体に対して改善された特性を有している。
【0056】
したがって、衝撃強度は、比較成形体と比べて10%程度明らかに改善されている。
【0057】
同じことがテーバー摩耗についても当てはまる。
【0058】
本発明に係る成形体は全て、耐スクラッチ性、乾熱安定度、及び、耐熱衝撃性に関する試験要件も満たしている。
【0059】
図1は、オリーブ油ベースのメタクリロイルモノマーによる処理の前後の石英粉末のIRスペクトルを示す図である。処理済み充填材のスペクトルでは、モノマーの二重結合がはっきりと認識できる。この二重結合はマトリクスモノマーと重合され、負荷の小さい、充填材とマトリクスとの間の界面及び成形体全体を形成する。1650cm-1での強いピークは、マトリクスにグラフト化することにより共重合され得る天然油ベースのモノマーの反応性二重結合が存在することを明確に証明するものである。
【0060】
図2は、オリーブ油ベースのメタクリロイルポリマーで処理された石英砂表面の概略図である。ここで、砂表面上にカプセル化層を形成するメタクリロイル部分の二重結合、及び、マトリクスモノマーと共重合された不安定な鎖の二重結合が認識できる。長いCH-CH-脂肪酸鎖が、機械的応力及び熱的応力への柔軟な反応を可能にする。分子のメタクリロイル部分のアミノ基が、充填材表面との強い結合を実現する。
図1
図2
【外国語明細書】