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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086117
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】車両用ドライブライン
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/14 20060101AFI20230614BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20230614BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230614BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20230614BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230614BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20230614BHJP
【FI】
B60L7/14
H02P5/46 H
B60L9/18 P
B60L15/00 Z
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194707
(22)【出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】21213478.7
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・リンドバーグ
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・リドストロム
【テーマコード(参考)】
5H125
5H572
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB01
5H125BA04
5H125BB03
5H125CB02
5H125CC01
5H125EE44
5H125FF01
5H125FF22
5H572AA02
5H572CC04
5H572DD03
5H572EE03
5H572FF05
5H572HB08
5H572HB09
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ17
5H572LL34
5H572MM06
5H572PP01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回生効率のレベルが可変な電気機械を備え、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの関係を変更可能な、車両用ドライブラインを提供する。
【解決手段】車両用ドライブライン12は、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械22、24、26、一組の電気機械22、24、26の各々に接続された冷却システム36及び、制御システム44を備える。制御システム44は、一組の電気機械22、24、26における少なくとも1つの、好ましくは各々の電気機械22、24、26についての現在の状態を示す状態情報及び要求制動トルク情報を受信し、状態情報及び要求制動トルク情報に応じ、電気機械22、24、26によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの目標関係を決定し、決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの目標関係が得られるよう、電気機械22、24、26及び冷却システム36を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)用ドライブライン(12)であって、
回生効率のレベルが可変な一組の電気機械(22,24,26)であって、前記一組の電気機械(22,24,26)は、回生効率のレベルが可変な少なくとも1つの電気機械(22,24,26)を含み、回生中に前記電気機械(22,24,26)によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することができる、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械(22,24,26)と、
前記一組の電気機械(22,24,26)における各電気機械(22,24,26)に接続された冷却システム(36)であって、前記一組の電気機械(22,24,26)における各電気機械(22,24,26)によって生成される熱を除去することができる、冷却システム(36)と、
制御システム(44)であって、前記ドライブライン(12)及び回生効率のレベルが可変な前記一組の電気機械(22,24,26)における少なくとも1つの電気機械、好ましくは、各々の電気機械についての現在の状態を示す状態情報を受信し、
前記電気機械(22,24,26)によって生成される要求制動トルクを示す制動トルク情報を受信し、
前記制動トルク情報及び前記状態情報に応じて、前記電気機械(22,24,26)によって生成される前記電気エネルギーと前記熱エネルギーとの間の目標関係を決定し、
前記要求制動トルク及び前記決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係が得られるように、前記電気機械(22,24,26)を制御し、
前記電気機械(22,24,26)に対する前記決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係に応じて、前記冷却システム(36)を制御する、
ように適合された、制御システム(44)と、
を備える、ドライブライン(12)。
【請求項2】
回生効率のレベルが可変な前記一組の電気機械(22,24,26)は、少なくとも2つの電気機械を含む、請求項1に記載のドライブライン(12)。
【請求項3】
エネルギー貯蔵システム(46)を更に備え、前記一組の電気機械(22,24,26)の各電気機械(22,24,26)は、電気エネルギーが前記電気機械(22,24,26)と前記エネルギー貯蔵システム(46)の少なくとも一部との間で伝達可能となるように、前記エネルギー貯蔵システム(46)の前記少なくとも一部に接続され、現在の状態を示す前記状態情報は、前記一組の電気機械(22,24,26)の各電気機械(22,24,26)に接続された前記エネルギー貯蔵システム(46)の少なくとも一部の充電の現在の状態を示す情報を含む、請求項1又は2に記載のドライブライン(12)。
【請求項4】
前記一組の電気機械(22,24,26)の各電気機械(22,24,26)は、前記エネルギー貯蔵システム(46)の共通の貯蔵器、好ましくは、共通のバッテリパックに接続される、請求項3に記載のドライブライン(12)。
【請求項5】
前記冷却システム(36)は、一組の冷却導管(38,40,42)を備え、少なくとも1つの冷却導管は、前記一組の電気機械(22,24,26)の各電気機械(22,24,26)に延び、前記冷却システム(36)は、前記冷却導管(38,40,42)を通る冷媒の流れ及び/又は温度を制御するように適合される、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項6】
前記冷却システム(36)は、前記冷却導管(38,40,42)内の冷媒の流れの分布を制御するように適合される、請求項5に記載のドライブライン(12)。
【請求項7】
回生効率のレベルが可変な前記一組の電気機械(22,24,26)の少なくとも1つの電気機械(22,24,26)は、回生中に前記電気機械(22,24,26)によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの比率が0.1未満、好ましくは、0.05未満、更に好ましくは、0.01未満となるように、制御可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項8】
回生効率のレベルが可変な前記一組の前記電気機械(22,24,26)の少なくとも1つの電気機械(22,24,26)は、インバータ(48)に接続された交流電気機械(22,24,26)であり、前記インバータ(48)は、電流ベクトルを前記電気機械(22,24,26)に与えるように適合され、回生中に前記電気機械(22,24,26)によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、前記インバータ(48)から与えられる前記電流ベクトルを制御することによって制御可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項9】
回生効率のレベルが可変な前記一組の前記電気機械(22,24,26)の少なくとも1つの電気機械(22,24,26)は、エアギャップ(54)を挟んで配置されたロータ(50)及びステータ(52)を備える交流電気機械(22,24,26)であり、前記ステータ(52)は、ステータ本体(56)及びステータ要素(58)を備え、回生中に前記電気機械(22,24,26)によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、前記ステータ本体(56)に対する前記ステータ要素(58)の位置に依存する、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項10】
前記ステータ要素(58)は、第1の細長部分(60)及び第2の細長部分(62)を備える細長部材であり、前記第1の細長部分(60)は、第1の材料から形成され、前記第2の細長部分(62)は、前記第1の材料と異なる第2の材料から形成され、前記第1の細長部分(60)及び第2の細長部分(62)は、互いに取り付けられ、前記ステータ要素(58)の軸に沿って互いに平行に延びている、請求項9に記載のドライブライン(12)。
【請求項11】
前記第1の材料は、第1の透磁率を有し、前記第2の材料は、第2の透磁率を有し、前記第1の透磁率は、前記第2の透磁率よりも大きい、請求項10に記載のドライブライン(12)。
【請求項12】
前記ステータ要素(58)は、前記冷却システム(36)と流体連通する1つ又は複数の冷却通路(66)を備え、好ましくは、前記第2の細長部分(62)が、前記冷却システム(36)と流体連通する1つ又は複数の冷却通路(66)を備える、請求項10又は11に記載のドライブライン(12)。
【請求項13】
前記ステータ本体(56)は、前記ステータ要素(58)の少なくとも一部を収容するためのステータ本体空洞(68)を備え、前記ステータ要素(58)は、該ステータ要素(58)が前記ステータ本体空洞(68)内に少なくとも部分的に収容された時に前記ステータ本体(56)に対して前記ステータ要素(58)の軸を中心として回転可能であり、回生中に前記電気機械(22,24,26)によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、前記ステータ本体(56)に対する前記ステータ要素(58)の回転位置に依存する、請求項10から12のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項14】
前記ステータ本体(56)は、外周(70)及び内周(72)を有し、前記内周(72)は、前記ロータ(50)に対向し、前記ステータ本体空洞(68)は、前記外周(70)に配置される、請求項13に記載のドライブライン(12)。
【請求項15】
前記制御システム(44)は、前記冷却システム(36)の冷却能力情報を決定するように適合され、前記冷却能力情報は、前記冷却システム(36)を用いて前記一組の電気機械(22,24,26)から除去され得る現在の又は予期される熱エネルギーの量を示し、前記制御システム(44)は、前記冷却能力情報に応じて前記一組の電気機械(22,24,26)を制御するように適合される、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項16】
1つ又は複数の地面係合部材(14,16,18,20)、好ましくは、車輪を備え、少なくとも1つの地面係合部材(14,16,18,20)は、前記一組の電気機械(22,24,26)の電気機械(22,24,26)に回転エネルギーが前記地面係合部材と前記電気機械(22,24,26)との間で伝達可能となるように接続されるように適合される、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項17】
少なくとも2つの地面係合部材(14,16,18,20)の各1つは、前記一組の電気機械(22,24,26)の互いに異なる電気機械(22,24,26)に回転エネルギーが前記地面係合部材と前記電気機械(22,24,26)との間で伝達可能となるように接続されるように適合される、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)。
【請求項18】
先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブライン(12)を備える車両(10)であって、好ましくは、大型の車両である、車両(10)。
【請求項19】
車両(10)用ドライブライン(12)を制御するように構成された制御ユニット(500)において行われるコンピュータ実装方法であって、
前記ドライブライン(12)は、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械(22,24,26)を備え、前記一組の電気機械(22,24,26)は、回生効率のレベルが可変な少なくとも1つの電気機械(22,24,26)を含み、回生中に前記電気機械(22,24,26)によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することができ、前記ドライブライン(12)は、前記一組の電気機械(22,24,26)の各電気機械(22,24,26)に接続された冷却システム(36)を更に備え、前記冷却システム(36)は、前記一組の電気機械(22,24,26)の各電気機械(22,24,26)によって生成される熱を除去することができる、方法において、
前記ドライブライン(12)及び回生効率のレベルが可変な前記一組の電気機械(22,24,26)における少なくとも1つの電気機械、好ましくは、各々の電気機械についての現在の状態を示す状態情報を受信するステップ(S1)と、
前記電気機械(22,24,26)によって生成される要求制動トルクを示す制動トルク情報を受信するステップ(S2)と、
前記制動トルク情報及び前記状態情報に応じて、前記電気機械(22,24,26)によって生成される前記電気エネルギーと前記熱エネルギーとの間の目標関係を決定するステップ(S3)と、
前記要求制動トルク及び前記決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係が得られるように、前記電気機械(22,24,26)を制御するステップ(S4)と、
前記電気機械(22,24,26)に対する前記決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係に応じて、前記冷却システム(36)を制御するステップ(S5)と、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項20】
コンピュータプログラム(620)であって、プログラムが制御ユニットのコンピュータ又は処理回路に実装された時に請求項19のステップを実行するためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム(620)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドライブライン、並びに関連する制御ユニット、方法、及びコンピュータ実装方法に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、及び建設機械のような大型の車両(heavy-duty vehicles)に適用可能である。本発明は、トラックに関して説明するが、この特定の車両に限定されず、バス、建設機械のような他の車両に用いられてもよい。
【背景技術】
【0003】
大型の車両を含むが必ずしもこれに限定されない現代の車両は、多くの場合、車両を推進するための電気機械を備えるドライブラインを有する。単なる例にすぎないが、ドライブラインは、以下のもの、すなわち、内燃エンジンを有するハイブリッドドライブライン、バッテリ及び/又は1つ以上の電気機械に接続された燃料電池システムを有する燃料電池ドライブライン、並びに、例えば、バッテリパック及び1つ以上の電気機械を備える電気ドライブラインの1つであるとよい。
【0004】
例えば、推進用動力源として内燃エンジンのみを含むドライブラインと比べて、電気機械を備えるドライブラインは、電気機械が電気エネルギーから運動エネルギーを生成することができることに加えて運動エネルギーから電気エネルギーを生成することができるという利点を伴う。例えば、このドライブラインを有する車両が制動される時、走行中の車両の運動エネルギーの少なくとも一部を電気機械によって電気エネルギーに変換し、このようにして生成された電気エネルギーをバッテリパックのような電気貯蔵媒体に貯蔵することができる。
【0005】
しかしながら、余分に回生された電気エネルギーを貯蔵することができない状況では、例えば、バッテリパックが十分に充電されている状況では、その余分なエネルギーを放散させるための代替的手段が必要である。常用ブレーキを用いることによって、車両を減速させ、ある量の運動エネルギーを放散させることができる。しかしながら、常用ブレーキは、制動を長時間にわたって維持することができない。すなわち、常用ブレーキの補助制動能力は、制限される。また、余分なエネルギーを放散させるために、ブレーキ抵抗器を配置することができる。しかしながら、ブレーキ抵抗器は、コストを高め、貴重な空間を占有し、それにもかかわらず、エネルギー放散能力が概して制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、改良された電動車用ドライブラインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、上記の目的は、請求項1に記載のドライブラインによって達成される。
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、車両用ドライブラインに関する。ドライブラインは、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械を備える。回生効率のレベルが可変な一組の電気機械は、回生効率のレベルが可変な少なくとも1つの電気機械を含む。回生効率のレベルが可変な電気機械は、例えば、電気機械を駆動するように構成されたインバータを制御することによって電気的に、又は電気機械の形状寸法を変化させることによって機械的に、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することができる。ドライブラインは、一組の電気機械における各電気機械に接続された冷却システムを更に備える。冷却システムは、一組の電気機械における各電気機械によって生じる熱を除去することができる。この冷却システムは、電気機械による補助制動を可能にするために、回生効率のレベルが可変な電気機械からの熱を十分に排出するのに十分な冷却能力を有するように構成されるという意味において、重要である。ドライブラインは、制御システムを更に備える。
【0009】
制御システムは、ドライブライン及び回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における少なくとも1つの電気機械、好ましくは、各々の電気機械についての現在の状態を示す状態情報を受信し、
電気機械によって生成される要求制動トルクを示す制動トルク情報を受信し、
制動トルク情報及び状態情報に応じて、電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係を決定し、
要求制動トルク及び決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係が得られるように、電気機械を制御し、
電気機械に対する決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係に応じて、冷却システムを制御する、
ように適合される。
【0010】
本発明の第1の態様のドライブラインは、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における少なくとも1つの電気機械の融通の利く利用、例えば、少なくとも1つの電気機械を用いる車両を制動中の融通の利く利用をもたらす。前述したように電気機械及び冷却システムを制御することによって、電気機械が限られた量の電気エネルギーしかエネルギー貯蔵システムに送ることができない条件においても、例えば、電気機械は、制動トルクを生成するために用いることができる。これは、このような条件下にある電気機械を比較的多量の熱エネルギーを生成するように制御し、この多量の熱エネルギーを冷却システムによって電気機械から排出させることができるからである。したがって、もはや大型の車両の補助制動中に過剰のエネルギーを放散させる過大な寸法のブレーキ抵抗器を用いる必要がない。これは、このブレーキ抵抗器がコストを高め、また車両の貴重な空間を占有する傾向にあるので、有利である。
【0011】
また、他の制動トルクを生成する構成要素、例えば、常用ブレーキを必ずしも先行技術のドライブラインにおけるのと同じように用いる必要がない。これは、例えば、ドライブラインの制動トルクを生成する構成要素の摩耗の低減を意味する。
【0012】
任意選択的に、回収効率レベルが可変な一組の電気機械は、少なくとも2つの電気機械を含む。しかしながら、本明細書において検討される技術は、勿論、単一機械システム、例えば、単一の電気機械が差動装置を介して駆動軸に接続されるシステムにも適用可能である。
【0013】
ドライブラインは、一般的に、エネルギー貯蔵システムを備えるとよい。この場合、一組の電気機械における各電気機械は、電気エネルギーが電気機械とエネルギー貯蔵システムの少なくとも一部との間で伝達可能となるように、エネルギー貯蔵システムの少なくとも一部に接続される。好ましくは、エネルギー貯蔵システムは、電気エネルギーを貯蔵及び供給するように適合される。ドライブラインの現在の状態を示す状態情報は、一組の電気機械における各電気機械に接続されたエネルギー貯蔵システムの少なくとも一部の充電の現在の状態を示す情報を含むとよい。
【0014】
したがって、単なる例にすぎないが、制御システムは、電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係を決定する時に、エネルギー貯蔵システムの少なくとも一部の充電の現在の状態を示す情報を用いることができる。非限定的な例として、もし充電の現在の状態が低いなら、電気機械は、比較的大量の電気エネルギー及び比較的少量の熱エネルギ―を生成するように制御されるとよい。一方、他の非限定的な例として、もし充電の現在の状態が高いなら、電気機械は、比較的少量の電気エネルギー及び比較的大量の熱エネルギーを生成するように制御されるとよい。
【0015】
また、ドライブラインの現在の状態を示す状態情報は、エネルギー貯蔵システムの現在の電力能力、すなわち、任意の時点においてどれほどの電力を受電しかつ貯蔵することができるかを示す情報も含むとよい。
【0016】
任意選択的に、一組の電気機械における各電気機械は、エネルギー貯蔵システムの共通の貯蔵器、好ましくは、共通のバッテリパックに接続される。
【0017】
任意選択的に、冷却システムは、一組の冷却導管を備え、少なくとも1つの冷却導管は、一組の電気機械における各電気機械に延びている。冷却システムは、冷却導管を通る冷媒の流れ及び/又は温度を制御するように適合される。
【0018】
任意選択的に、冷却システムは、冷却導管内の冷媒の流れの分布を制御するように適合される。
【0019】
任意選択的に、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における少なくとも1つの電気機械は、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの比率が0.1未満、好ましくは、0.05未満、更に好ましくは、0.01未満となるように、制御可能である。これによって、少なくとも1つの電気機械は、少量の電気エネルギーを生成するように制御可能である。このような能力は、例えば、電気機械に接続されたエネルギー貯蔵システムの部分が高い充電状態にある時に有用である。
【0020】
任意選択的に、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における少なくとも1つの電気機械は、インバータに接続された交流電気機械である。インバータは、電流ベクトルを電気機械に与えるように適合され、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、インバータから与えられる電流ベクトルを制御することによって制御可能である。インバータを用いる回生効率の制御は、可変の回生効率をコスト効率の高い方法によって得ることができることを意味する。
【0021】
任意選択的に、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における少なくとも1つの電気機械は、エアギャップを挟んで配置されたロータ及びステータを備える交流電気機械である。ステータは、ステータ本体及びステータ要素を備える。回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、ステータ本体に対するステータ要素の位置に依存する。ステータ本体に対してステータ要素の位置を変化させることにより、電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することは、回生効率のレベルを融通の利く方法によって制御することができることを意味する。
【0022】
ここで、電気機械によって生じるトルクは、電気機械の電流ベクトルとステータとロータとの間に形成されたエアギャップにおける磁束との間の外積の関数であることに留意されたい。したがって、エアギャップの磁束を変更することによって、生成されるトルクを調整することが可能である。磁束についてのこの調整は、電気機械の形状寸法を機械的に変更することによって達成することができ、これによって、電気機械の電力損失を操作することができる。
【0023】
任意選択的に、ステータ要素は、第1の細長部分及び第2の細長部分を備える細長部材であり、第1の細長部分は、第1の材料から形成され、第2の細長部分は、第1の材料と異なる第2の材料から形成される。第1及び第2の細長部分は、互いに取り付けられ、ステータ要素軸に沿って互いに平行に延びている。
【0024】
任意選択的に、第1の材料は、第1の透磁率を有し、第2の材料は、第2の透磁率を有する。第1の透磁率は、第2の透磁率よりも大きい。
【0025】
任意選択的に、ステータ要素は、冷却システムと流体連通する1つ又は複数の冷却通路を備える。好ましくは、第2の細長部分が、冷却システムと流体連通する1つ又は複数の冷却通路を備える。
【0026】
任意選択的に、ステータ本体は、ステータ要素の少なくとも一部を収容するためのステータ本体空洞を備え、ステータ要素は、ステータ要素がステータ本体空洞内に少なくとも部分的に収容された時にステータ本体に対してステータ要素軸を中心として回転することができる。回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、ステータ本体に対するステータ要素の回転位置に依存する。
【0027】
任意選択的に、ステータ本体は、外周及び内周を有し、内周は、ロータに対向している。ステータ本体空洞は、外周に配置される。
【0028】
任意選択的に、制御システムは、冷却システムの冷却能力情報を決定するように適合され、冷却能力情報は、冷却システムを用いて一組の電気機械から除去され得る現在の又は予期される熱エネルギーの量を示す。制御システムは、冷却能力情報に応じて一組の電気機械を制御するように適合される。
【0029】
任意選択的に、ドライブラインは、1つ又は複数の地面係合部材、好ましくは、車輪を更に備える。少なくとも1つの地面係合部材は、一組の電気機械の電気機械に対して、回転エネルギーが地面係合部材と電気機械との間で伝達可能となるように接続されるように適合される。
【0030】
任意選択的に、少なくとも2つの地面係合部材の各1つは、一組の電気機械の互いに異なる電気機械に対して、回転エネルギーが地面係合部材と電気機械との間で伝達可能となるように接続されるように適合される。
【0031】
本発明の第2の態様は、先行する請求項のいずれか1項に記載のドライブラインを備える車両であって、好ましくは、大型の車両である、車両に関する。
【0032】
本発明の第3の態様は、車両用ドライブラインを制御するように構成された制御ユニットにおいて行われるコンピュータ実装方法に関する。ドライブラインは、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械を備える。回生効率のレベルが可変な一組の電気機械は、回生効率のレベルが可変な少なくとも1つの電気機械を含む。回生効率のレベルが可変な電気機械は、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することができる。ドライブラインは、一組の電気機械における各電気機械に接続された冷却システムを更に備え、冷却システムは、一組の電気機械における各電気機械によって生成される熱を除去することができる。
【0033】
本方法は、
ドライブライン及び回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における少なくとも1つの電気機械、好ましくは、1つごとの電気機械の現在の状態を示す状態情報を受信することと、
電気機械によって生成される要求制動トルクを示す制動トルク情報を受信することと、
制動トルク情報及び状態情報に応じて、電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係を決定することと、
要求制動トルク及び決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係が得られるように、電気機械を制御することと、
電気機械に対する決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係に応じて、冷却システムを制御することと、
を含む。
【0034】
本発明の第4の態様は、コンピュータプログラムであって、プログラムが制御ユニットのコンピュータ又は処理回路に実装された時に本発明の第3の態様のステップを実行するためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラムに関する。
【0035】
本発明の更なる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0036】
以下、添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】車両の一実施形態を示す図である。
図2】ドライブラインの一実施形態を概略的に示す図である。
図3】エネルギー貯蔵システム、インバータ、及び電気機械を備えるアセンブリを概略的に示す図である。
図4】電気機械の実装例を概略的に示す図である。
図5】電気機械の一部の実装例を概略的に示す図である。
図6】電気機械の一部の実装例を概略的に示す図である。
図7】制御ユニットを概略的に示す図である。
図8】例示的なコンピュータプログラム製品を示す図である。
図9】方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態のより詳細な説明が以下に続く。
【0039】
以下、図1に示されるトラックのようなトラック10の形態の車両に対して本発明を説明する。トラック10は、本発明によるドライブラインを備えることができる車両の一例とみなされるべきである。
【0040】
しかしながら、本発明は、種々の形式の複数の車両に実施されてもよい。単なる例にすぎないが、本発明は、どのような形式の大型の車両、例えば、トラック、トラクタ、バス、ホイールローダのような作業機、又はどのような他の形式の建設機械に実施されてもよい。また、本発明は、自走式の運搬車両又は1つ以上の駆動軸を有する電気トレーラーに実施されてもよい。本明細書に開示される技術は、補助制動能力、すなわち、長期にわたって大量の運動エネルギーを発生させる能力をもたらす。したがって、これらの技術は、大きな積荷を運ぶように構成された大型の車両に最も有利に適用される。
【0041】
図1の車両10は、車両10を推進するためのドライブライン12を備える。図1のドライブラインは、一組の地面係合部材14,16を備える。図1において、地面係合部材は、車輪として例示されるが、ドライブライン12の他の実施形態では、地面係合部材は、クローラー(図示せず)等として実施されてもよい。
【0042】
図2は、本発明の第1の態様によるドライブライン12の一実施形態を示す図である。単なる例にすぎないが、ドライブライン12は、図1の車両10のような車両に対して用いられるとよい。図2は、ドライブライン12の概略上面図なので、4つの車輪として例示される地面係合部材14,16,18,20が、図2に示されている。
【0043】
ドライブライン12は、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械22,24,26を備えている。本明細書に用いられる「可変の回生効率のレベル」という用語は、電気機械が回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することができることを意味する。「回生(regeneration)」という用語は、回転エネルギーのような運動エネルギーが電気機械、例えば、電気機械のロータに供給され、この運動エネルギーが電気機械によって電気エネルギー及び/又は熱エネルギーに変換されることを意味する。
【0044】
ドライブライン12は、図2において参照符号14,16,18,20によって示される1つ又は複数の地面係合部材、好ましくは、車輪を備えるとよい。少なくとも1つの地面係合部材は、一組の電気機械22,24,26の電気機械に対して、回転エネルギーが地面係合部材と電気機械との間で伝達されるように接続されるように適合される。更に、少なくとも2つの地面係合部材の各々は、一組の電気機械の互いに異なる電気機械に対して、回転エネルギーが地面係合装置と電気機械との間で伝達されるように接続されるように適合されるとよい。
【0045】
ドライブライン12の図2の実施形態は、3つの電気機械22,24,26を備え、第1の電気機械22は、第1のシャフト部28を介して第1の地面係合部材14に機械的に接続され、第2の電気機械24は、第2のシャフト部30を介して第2の地面係合部材18に機械的に接続されている。図2の実施形態では、第1のシャフト部28及び第2のシャフト部30は、接続用の第3のシャフト部32を介して互いに剛性的に接続されている。しかしながら、第1のシャフト部28及び第2のシャフト部30は、互いに剛性的に接続されない個別のシャフトであってもよいことも考えられる。したがって、単なる例にすぎないが、第1の電気機械22及び第2の電気機械24は、各々、ハブモータであってもよい。
【0046】
更に、図2の実施形態は、トランスミッション機構34を介して第3の車輪16及び第4の車輪20の各々に機械的に接続された第3の電気機械26を備える。非限定的な例として、トランスミッション機構34は、差動ギアから構成されるとよい。
【0047】
前述したように、図2の実施形態では、電気機械22,24,26の各々が、可変の回生効率のレベルに関連付けられるとよい。しかしながら、可変の回生効率のレベルに関連付けられる単一の電気機械を備えるドライブラインの実施形態も考えられる。非限定的な例として、このような単一の電気機械は、ドライブラインの単一の電気機械、すなわち、車両を推進するための単一の電気機械を構成するとよく、この場合、一組の電気機械は、単一の電気機械しか含まないように構成される。しかしながら、ドライブラインは、複数の電気機械を備えるが、これらの電気機械の1つのみが可変の回生効率のレベルに関連付けられることも考えられる。
【0048】
単一の電気機械を有する上記の例と同様、可変の回生効率のレベルに関連付けられた一組の電気機械と、可変の回生効率のレベルに必ずしも関連付けられていない1つ又は複数の追加の電気機械とを備える、ドライブラインの実施形態も考えられる。
【0049】
更に、図2に示されるように、ドライブライン12は、一組の電気機械における各電気機械22,24,26に対して、各電気機械22,24,26によって生じる熱を除去するように接続された冷却システム36を更に備える。
【0050】
単なる例にすぎないが、図2に示されるように、冷却システム36は、一組の冷却導管38,40,42を備えるとよく、少なくとも1つの冷却導管は、一組の電気機械における各電気機械まで延びている。図2の例では、第1の冷却導管は、第1の電気機械22を冷却システム36に接続し、第2の冷却導管40は、第2の電気機械24を冷却システム36に接続し、第3の冷却導管42は、第3の電気機械26を冷却システム36に接続している。
【0051】
非限定的な例として、冷却システム36は、冷却導管内を流れるように適合された冷媒から熱を除去するように適合された熱交換機(図示せず)を備えるとよい。また、冷却システム36は、冷却導管内を流れるように適合された冷媒から熱を除去するように適合されたヒートポンプを備えてもよい。一般的に、冷却システム36は、冷却導管38,40,42を通る冷媒の流れを制御するように適合されるとよい。非限定的な例として、冷却システム36は、冷却導管38,40,42内の冷媒の流れの分布を制御するように適合されるとよい。
【0052】
非限定的な例として、冷却システム36は、約300kWを超える冷却容量、好ましくは、400kWを超える冷却容量、更に好ましくは、500kWを超える冷却容量を有するとよい。
【0053】
ドライブラインは、制御システム44を更に備える。制御システム44は、ドライブライン12及び回生効率のレベルが可変な一組の電気機械における電気機械22,24,26の少なくとも1つ、好ましくは、1つごとの現在の状態を示す状態情報を受信し、
電気機械22,24,26によって生成される要求制動トルクを示す制動トルク情報を受信し、
制動トルク情報及び状態情報に応じて、電気機械22,24,26によって生成される電気エネルギ―と熱エネルギーとの間の目標関係を決定し、
要求制動トルク及び決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係が得られるように、電気機械22,24,26を制御し、
電気機械に対する決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係に応じて冷却システム36を制御するように適合される。
【0054】
単なる例にすぎないが、制動トルク情報は、例えば、車両のブレーキペダル又はスロットルペダルに接続されるセンサ(図示せず)から受信されるとよい。更に、制動トルク情報は、ドライブライン12の他の制御ユニット(図示せず)によって決定され、かつその制御ユニットから送信されてもよい。
【0055】
本明細書において、電気機械を制御することは、電気機械の操作が制御されることを意味する。例えば、電気機械を制御することは、モータ軸、すなわち、ドライブライン12の1つ又は複数の地面係合部材に接続された軸に対して電気機械によって加えられる瞬間的なトルクを、制御されるべき目標トルク値に設定することによって制御されることを意味する。また、電気機械を制御することは、軸速度が目標軸速度を電気機械によって維持するように構成することによって制御されることも意味する。
【0056】
本明細書において、冷却システムを制御することは、そのシステムの冷却効果、すなわち、単位時間当たりに電気機械から輸送される熱エネルギーの量を制御することを意味する。冷却システムを制御することは、冷却導管を通る冷却流体の流れを制御することを意味する場合もある。すなわち、大きい流れは、通常、小さい流れと比較して冷却効果が増大する。また、冷却システムを制御することは、冷却導管内を流れる冷媒の温度を、例えば、熱交換機(図示せず)に接続される弁を操作することによって、又は熱交換機に接続して配置されたファン(図示せず)を制御することによって、又は単位時間当たりに冷媒からより多くのエネルギーを引き出すヒートポンプ(図示せず)を操作することによって制御することを意味する場合もある。
【0057】
更に、電気機械22,24,26によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係を前述したように制動トルク情報及び状態情報に応じて決定する特徴は、どれほどの電気エネルギーがドライブラインによって貯蔵又は使用され得るか、例えば、以下に述べるようにどれほどの電気エネルギーがエネルギー貯蔵システムに貯蔵され得るか、及び/又はどれほどの電気エネルギーが1つ以上の電気エネルギー消費材によって消費され得るかを含むとよい。単なる例にすぎないが、電気消費材は、ドライブライン12の一部を形成するものであってもよいし、又はドライブライン12から分離しているがドライブライン12を含む車両10の一部を形成する構成要素であってもよい。
【0058】
熱エネルギーを生成せずに貯蔵又は消費目的の電気エネルギーを生成することが望ましいので、制御システム44は、電気機械22,24,26によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係を決定するように適合されるとよい。この目標関係に関して、最大の電気エネルギーは、貯蔵及び/又は消費能力によって決められる制限を考慮して生成され、電気機械22,24,26によって生成される残りのエネルギー部分は、熱エネルギーである。
【0059】
ドライブライン12の現在の状態を示す前述の状態情報は、ドライブライン又はドライブラインを含む車両に関連付けられた1つ以上の異なる条件に関連するものであってもよい。
【0060】
単なる例にすぎないが、図2に示されるように、ドライブライン12は、エネルギー貯蔵システム46を備えてもよく、一組の電気機械における各電気機械22,24,26は、電気エネルギーが電気機械とエネルギー貯蔵システムの少なくとも一部との間で伝達可能となるように、エネルギー貯蔵システムの少なくとも一部に接続される。したがって、エネルギー貯蔵システム46は、好ましくは、電気エネルギーを貯蔵かつ供給するように適合される。
【0061】
図2の例では、電気機械22,24,26の各々は、エネルギー貯蔵システム46の共通の貯蔵器、好ましくは、共通のバッテリバックに接続されている。実際、図2の実施形態では、エネルギー貯蔵システム46は、前述の共通貯蔵器によって構成される。
【0062】
エネルギー貯蔵システム46の実装例に拘わらず、ドライブラインの現在の状態を示す状態情報は、一組の電気機械における各電気機械に接続されたエネルギー貯蔵システム46の少なくとも一部の充電の現在の状態を示す情報を含むとよい。非限定的な例として、状態情報は、エネルギー貯蔵システム46を構成する共通の貯蔵器の充電の現在の状態を示す情報を含むとよい。
【0063】
ドライブラインの現在の状態を示す状態情報は、一組の電気機械における各電気機械に接続されたエネルギー貯蔵システム46の少なくとも一部の電力伝達能力を示す情報を更に含むとよい。エネルギー貯蔵装置、例えば、バッテリ又はスーパー・コンデンサは、常にその装置に充放電可能な最大電力に関連付けられている。この能力は、通常、温度が降下すると低下し、他の理由によっても変動する。したがって、状態情報は、有利には、現在の電力能力を示す情報を含むとよい。この能力は、例えば、1つ又は複数のパラメータ、例えば、温度、バッテリセルの寿命等によって検索される所定のルックアップテーブルから得られるとよい。
【0064】
単なる例にすぎないが、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械の少なくとも1つの電気機械は、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの比率が0.1未満、好ましくは、0.05未満、更に好ましくは、0.01未満であるように、制御することができる。したがって、少なくとも1つの電気機械は、例えば、電気機械に接続されたエネルギー貯蔵システムの部分が高充電の状態にある時に有用なわずかな電気エネルギーを生成するように制御することができる。また、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械の少なくとも1つの電気機械は、負のトルクをモータ軸に加えながら又はどのようなトルクもモータ軸に加えずに動力を引き出すように電気的に制御されてもよい。この特徴は、例えば、長期にわたる補助制動を必要とする長い坂道を下る駆動等において準備中のバッテリを放電することが望ましい時に、有用である。
【0065】
したがって、少なくともいくつかの電気機械は、回生中に電気エネルギーを消費することもできることに留意されたい。このような条件下では、電気機械によって生成される電気エネルギーは、負であり、その結果、上記の比率も負である。
【0066】
非限定的な例として、制御システム44は、冷却システム36の冷却能力情報を決定するように適合されるとよい。例えば、冷却能力情報は、冷却システム36を用いて一組の電気機械22,24,26から除去され得る現在の又は予期される熱エネルギー量を示すものであるとよい。非限定的な例として、冷却能力情報は、以下の因子、すなわち、ドライブライン12の周囲温度、ドライブラインを含む車両10の速度、及び冷媒が冷却導管42内を流れることができる最大速度の1つ又は複数に基づいて決定されるとよい。更に、制御システム44は、冷却能力情報に応じて一組の電気機械22,24,26を制御するように適合されるとよい。他の非限定的な例によれば、冷却システム36の冷却能力は、車両の運転中に測定可能であり、冷却システム36の冷却能力情報は、予め測定されたデータに基づいて決定されるとよい。このように、冷却能力情報を特定の車両に対して標準化することができ、これによって、時間が経つにつれて更に正確なものとなるように適合させることができる。
【0067】
電気機械のための可変の回生効率のレベルは、複数の異なる方法によって得ることができる。以下、その網羅的ではない一連の例について説明する。
【0068】
第1の非限定的な例として、図3を参照すると、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械の少なくとも1つの電気機械、例えば、図2における第1の電気機械22が図3の例に用いられるが、この第1の電気機械22は、インバータ48に接続された交流(AC)電気機械である。更に、インバータ48は、図3ではバッテリとして概略的に示されるエネルギー貯蔵システム46に接続される。
【0069】
図3に示される実装例では、電気機械22は、三相電気機械であり、その結果として、インバータ48は、エネルギー貯蔵システム46からの直流(DC)電力を三相交流電力に変換するように又はその逆に変換するように適合される。一般的に、インバータ48は、制御信号に従って、例えば、パルス幅変調を用いて開閉可能な一組のスイッチ(図示せず)を備え、これによって、電気機械22に送られる三相の交流電力を変化させることができる。換言すれば、インバータは、電流ベクトルを電気機械22に与えることができる。図3の例は、三相交流電気機械22を示すが、インバータ48及び電気機械22は、他の数の相に適用されてもよいことに留意されたい。
【0070】
インバータ48及び電気機械22の実装例と無関係に、インバータ48は、電流ベクトルを電気機械に与えるように適合されるとよい。したがって、回生中に電気機械22によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、インバータ48から与えられる電流ベクトルを制御することによって制御することができる。
【0071】
電流ベクトルの制御によって電気機械の効率を制御する原理は、例えば、英国特許第2477229B号明細書及び米国特許出願公開第2017/0282751A1号明細書において既に検討されているので、ここでは、更に詳細に検討しない。
【0072】
インバータから与えられる電流ベクトルによって電気機械の回生効率のレベルを制御するのに代わって又は加えて、回生効率のレベルは、電気機械の要素それ自体を変更することによって制御されてもよい。
【0073】
単なる例にすぎないが、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械の少なくとも1つの電気機械は、エアギャップを挟んで配置されたロータ及びステータを備える交流電気機械であって、ステータは、ステータ本体及びステータ要素を備える、交流電気機械であるとよい。更に、本発明の第3の態様は、このような交流電気機械それ自体に関することにも留意されたい。
【0074】
この目的を達成するために、電気機械22の一部を示す図4を参照されたい。図4の電気機械は、前述の回生効率のレベルが可変な一組の電気機械の一部をなすものである。図4から明らかなように、ここに示される電気機械22は、ロータ50及びステータ52を備える交流電気モータである。単なる例にすぎないが、ロータは、1つ又は複数の永久磁石(図示せず)を備える。したがって、図4の電気機械は、同期モータである。しかしながら、1つ又は複数の電磁石(図示せず)を有するステータを備える電気機械の実施形態も考えられる。また、非同期モータ、例えば、誘導モータである電気機械の実装例も考えられる。誘導モータでは、ロータは、電流がステータによって生じる磁場によって誘導されるロータ巻線(図示せず)を備える。
【0075】
電気機械22の実装例に関係なく、ロータ50とステータ52との間にはエアギャップが形成される。更に、図4に示されるように、ステータ52は、ステータ本体56及びステータ要素58を備える。回生中の電気機械22によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係は、ステータ本体56に対するステータ要素58の相対的な位置に依存する。
【0076】
単なる例にすぎないが、図5に示されるように、ステータ要素58は、第1の細長部分60及び第2の細長部分62を備える細長部分であるとよい。第1の細長部分60は、第1の材料から形成され、第2の細長部分62は、第1の材料と異なる第2の材料から形成される。第1の細長部分60及び第2の細長部分62は、互いに取り付けられ、ステータ要素軸64に沿って互いに平行に延びている。
【0077】
非限定的な例として、第1の材料は、第1の透磁率を有し、第2の材料は、第2の透磁率を有し、第1の磁気透磁率は、第2の磁気透磁率よりも大きい。
【0078】
非限定的な例として、第1の材料は、例えば、軟磁気複合材又は磁性積層鋼のような高透磁率を有する材料とすることができる。
【0079】
更に、他の非限定的な例として、第2の材料は、銅又はアルミニウムのような低透磁率材料であるとよい。一般的に、第2の材料は、任意の適切な導電材料とすることができる。
【0080】
透磁率は、印加された磁場に応じて材料が示す磁化の大きさである。透磁率は、通常、ギリシア文字μによって表される。透磁率の逆数は、磁気抵抗である。国際単位系では、透磁率は、ヘンリー毎メートル(H/m)又はニュートン毎平方メートル(N/A)によって表される。磁気定数又は自由空間の透磁率としても知られる透磁率定数μは、古典的な真空管内において磁場を形成する時の磁気誘導と磁化力との間の比例定数である。密接に関連する材料特性として、磁化率が挙げられる。磁化率は、印加された磁場に依存する材料の磁化の程度を示す無次元の比例因子である。
【0081】
更に、図5に示されるように、ステータ要素58は、(図4に示されていない)冷却システムと流体連通する1つ又は複数の冷却通路66を備えるとよい。好ましくは、図5に例示されるように、第2の細長部分62が、冷却システムと流体連通する1つ又は複数の冷却通路を備えるとよい。
【0082】
図5の実装例では、ステータ要素58は、ステータ要素軸64と面直交する円断面を有する円筒状である。更に、第1及び第2の細長部分60,62の各々は、ステータ要素軸64と面直交する半円の断面形状を有する。しかしながら、ステータ要素58の実装例は、他の断面形状のステータ要素58を有してもよいし、又は第1及び第2の細長部分60,62の少なくとも1つが他の断面形状を有してもよいことも考えられる。
【0083】
更に、図4に示されるように、ステータ本体56は、ステータ要素58の少なくとも一部を収容するためのステータ本体空洞68を備えるとよい。更に、図4において矢印によって示されるように、ステータ要素58は、ステータ本体空洞68内に少なくとも部分的に収容された時に、ステータ本体56に対してスタータ要素軸64を中心として回転可能である。
【0084】
第1の細長部分60が第1の材料から形成され、第2の細長部分62が第1の材料と異なる第2の材料から形成されるという事実から、ステータ本体56に対するステータ要素58の種々の回転位置によって、前述のエアギャップ54において種々の特性の磁束が生じる。種々の特性の磁束は、回生中に電気機械によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の種々の関係をもたらす。したがって、電気機械の望ましい回生効率のレベルは、ステータ要素58をステータ本体56に対してある特定の位置に配置することによって得られる。この目的を達成するために、電気機械22は、アクチュエータ74を備えるとよい。アクチュエータ74は、ステータ本体56に対するステータ要素58の所望の位置が得られるように、ステータ要素58をステータ本体56に対して動かすように、例えば、回転させるように適合される。単なる例にすぎないが、ロータ50は、ロータの回転軸を中心として回転するように適合され、ステータ要素58は、ロータの回転軸と平行のステータ要素の回転軸を中心として回転するように適合されるとよい。
【0085】
図4に示されるように、ステータ本体は、外周70及び内周72を有し、内周72は、ロータ50に対向している。したがって、エアギャップ54は、ロータ50と内周72との間に形成される。好ましくは、図4に示されるように、ステータ本体空洞68は、外周70に配置される。
【0086】
図4図5は、ステータ要素58がステータ本体56に対してステータ要素軸64を中心として回転することができる電気機械の実装例を示すが、回生中に電気機械22によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を制御するために、ステータ要素58が他の方法によってステータ本体56に対して動かされてもよいことも考えらえる。
【0087】
この目的を達成するために、ステータ要素軸64に対して横断方向に分割されるステータ要素58の実装例を示す図6を参照されたい。横断方向に分割されることによって、第1の細長部分60は、ステータ要素の一端側を形成し、第2の細長部分62は、ステータ要素の他端側を形成する。この構成によって、ステータに対するステータ要素58の軸方向位置がステータ52の磁気特性に影響を与え、これによって、回生中に電気機械22によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係に影響を与えることになる。
【0088】
換言すれば、ステータ要素58は、ステータ52の磁気特性を変更するために、軸方向において、すなわち、ステータ要素軸64に沿って前後に摺動するように適合されるとよい。図4の実装例に関して、ステータ要素軸64に沿ったステータ本体56に対するステータ要素58の前後方向の移動は、アクチュエータ74、例えば、ステータ要素58に接続されたリニアアクチュエータによって行われるとよい。更に、図5のステータ要素58の実装例と同様に、図6のステータ要素58の実装例は、冷却通路66も備えるとよい。ここで、図6のステータ要素58が第2の細長部分62内に閉回路を形成する冷却通路66を備えることに留意されたい。
【0089】
図4図6を参照して前述した実装例は、1つのステータ要素58のみを備えるが、勿論、電気機械22の実装例は、複数のステータ要素58であって、各々がステータ本体56に対して可動である、複数のステータ要素58を備えてもよい。非限定的な例として、このような各ステータ要素58は、ステータ本体56に対して個別に可動であるとよい。他の非限定的な例として、複数のステータ要素58は、ステータ本体56に対して共に可動可能であってもよい。
【0090】
図7は、冷却システム及びドライブラインを制御するための前述の方法及び技術の少なくともいくつかを支援する制御ユニットの構成要素を多数の機能単位に関して概略的に示す。(例えば、記憶媒体520の形態にある)コンピュータプログラム製品に記憶されたソフトウエア指令を実行することができる適切な中央処理ユニットCPU、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサDSP等の1つ又は複数の任意の組合せを用いる処理回路510が設けられる。更に、処理回路510は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC又はフィールドプログラマブルゲートアレイFPGAとして設けられてもよい。
【0091】
特に、処理回路510は、制御ユニット500に一組の操作又はステップ、例えば、前述の方法を実行させるように構成される。
【0092】
例えば、記憶媒体520は、一組の操作を記憶するとよく、処理回路510は、制御ユニット500に一組の操作を制御させるために、記憶媒体520から一組の操作を取得するように構成されるとよい。一組の操作は、一組の実行可能な指令として提供されるとよい。したがって、処理回路510は、これによって、本明細書に開示される方法を実行するように構成される。
【0093】
また、記憶媒体520は、永続記憶装置を含んでもよい。永続記憶装置は、例えば、磁気メモリ、光学メモリ、半導体メモリ、又は遠隔メモリの任意の1つ又は組合せとすることができる。
【0094】
制御ユニット500は、少なくとも1つの外部装置と通信するためのインターフェイス530を更に備えるとよい。したがって、インターフェイス530は、アナログ要素及びデジタル要素と有線又は無線通信のための適切な数のポートとを備える1つ又は複数の送信機及び受信機を備えるとよい。
【0095】
処理回路510は、例えば、データ及び制御信号をインターフェイス530及び記憶媒体520に送信することによって、データ及びレポートをインターフェイス530から受信することによって、及びデータ及び指令を記憶媒体520から取得することによって、制御ユニット500の一般的な操作を制御する。制御ノードの他の構成要素並びに関連する機能性は、本明細書に記載される概念を不明瞭にさせないために省略する。
【0096】
図8は、コンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体610であって、コンピュータプログラムは、コンピュータに実装された時に本明細書に記載される方法を実行するためのプログラムコード手段620を含む、コンピュータ可読媒体610を示す。コンピュータ可読媒体及びコード手段は、一緒になって、コンピュータプログラム製品600を構成するとよい。
【0097】
最後に、図9は、車両10用ドライブライン12を制御するように構成された制御ユニット500、例えば、図7の制御ユニット500において行われるコンピュータ実装方法のためのフローチャートを示す。ドライブライン12は、回生効率のレベルが可変な一組の電気機械22,24,26を備える。回生効率のレベルが可変な一組の電気機械22,24,26は、回生効率のレベルが可変な少なくとも1つの電気機械22,24,26を備える。回生効率のレベルが可変な電気機械22,24,26は、回生中に電気機械22,24,26によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の関係を変更することができる。ドライブライン12は、一組の電気機械22,24,26における各電気機械22,24,26に接続された冷却システム36を更に備え、冷却システム36は、一組の電気機械22,24,26における各電気機械22,24,26によって生成される熱を除去することができる。
【0098】
この方法は、ドライブライン12及び回生効率のレベルが可変な一組の電気機械22,24,26における少なくとも1つの電気機械、好ましくは、各々の電気機械についての現在の状態を示す状態情報を受信するステップS1と、
電気機械22,24,26によって生成される要求制動トルクを示す制動トルク情報を受信するステップS2と、
制動トルク情報及び状態情報に応じて、電気機械22,24,26によって生成される電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係を決定するステップS3と、
要求制動トルク及び決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係が得られるように、電気機械22,24,26を制御するステップS4と、
電気機械22,24,26に対する決定された電気エネルギーと熱エネルギーとの間の目標関係に応じて、冷却システム36を制御するステップS5と、を含む。
【0099】
本発明は、前述の実施形態及び図面に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、多くの変更及び修正が添付の請求項の範囲内においてなされ得ることを認識するだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】