(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086127
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池システムを百パーセントに近い燃料利用率で動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230614BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20230614BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230614BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20230614BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20230614BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20230614BHJP
C01B 3/16 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/2475
H01M8/12 101
H01M8/0662
C01B3/56 Z
C01B3/38
C01B3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196710
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】63/287,753
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェインガートナー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァトサン,ヴィジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ペトルーチャ,マイケル
【テーマコード(参考)】
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB03
4G140FA02
4G140FB02
4G140FB04
4G140FC09
4G140FE01
4G140FE06
5H126BB06
5H126FF10
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA17
5H127BA28
5H127BA34
5H127BA44
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB24
5H127BB27
5H127BB37
5H127BB39
5H127EE12
5H127EE25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池システムを百パーセントに近い燃料利用率で動作させる方法を提供する。
【解決手段】燃料電池システム300は、燃料排気流から水素及び二酸化炭素を分離する少なくとも1つの電気化学ポンプセパレーターを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットボックスと、
前記ホットボックス内に配置される燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックによって出力される燃料排気を受け取る燃料排気導管と、
前記燃料排気から液体を分離する燃料排気セパレーターと、
前記燃料排気を燃料入口導管に流体接続する再循環導管と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料排気の液体含有量を低減する燃料排気凝縮器を更に備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料排気セパレーター及び前記燃料排気凝縮器を流体接続する水導管を通して、前記液体を前記燃料排気凝縮器に戻す、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料排気から不純物を除去する弁を更に備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記再循環導管及び前記燃料入口導管を流体接続する混合器を更に備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
燃料排気導管において、ホットボックス内に配置される燃料電池スタックによって出力される燃料排気を受け取ることと、
燃料排気セパレーターにおいて、前記燃料排気から液体を分離することと、
再循環導管において、前記燃料排気及び燃料入口導管を流体接続することと、
を含む、燃料電池システムを動作させる方法。
【請求項7】
燃料排気凝縮器において、前記燃料排気の液体含有量を低減することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料排気セパレーター及び前記燃料排気凝縮器を流体接続する水導管を通して、前記液体を前記燃料排気凝縮器に戻す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
弁において、前記燃料排気から不純物を除去することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
混合器が、前記再循環導管及び前記燃料入口導管を流体接続する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
ホットボックスと、
前記ホットボックス内に配置される燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックによって出力される燃料排気を受け取る燃料排気導管と、
燃料排気を再循環導管及び処理導管に流体的に分離する燃料排気スプリッターと、
を備え、
前記再循環導管は、前記燃料排気を燃料入口導管に流体接続し、前記処理導管は、ガスセパレーターに流体接続される、燃料電池システム。
【請求項12】
前記ガスセパレーターは、蒸気、二酸化炭素、及び水素と一酸化炭素との混合物の流れを分離する、請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
二酸化炭素がガス貯蔵装置に貯蔵される、請求項12に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
燃料電池スタックと、
アノード復熱交換器と、
アノード排気冷却器熱交換器と、
前記アノード復熱交換器と前記アノード排気冷却器熱交換器との間に位置するスプリッターと、
少なくとも1つの電気化学水素ポンプセパレーターと、
前記スプリッターを前記少なくとも1つの水素ポンプに流体接続するアノード排気冷却器バイパスと、
を備える、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、ガス分離の分野に関し、より詳細には、電気化学的な燃料排気の燃料回収を伴う燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料内に貯蔵されたエネルギーを電気エネルギーへと高効率で変換することができる電気化学的装置である。高温型燃料電池は、固体酸化物型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池を含む。これらの燃料電池は、水素及び/又は炭化水素燃料を使用して動作することができる。固体酸化物型再生燃料電池等の燃料電池のクラスが存在し、これらの燃料電池は、電気エネルギーを入力として使用することで、酸化した燃料を酸化されていない燃料へと再還元することができるように、逆の動作も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1は、燃料電池システムの第1の比較実施形態の燃料電池システムの概略図である。
【
図2】
図2は、燃料電池システムの第2の比較実施形態の燃料電池システムの概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図5C】
図5Cは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図6】
図6は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図7】
図7は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
【
図8】
図8は、本開示の様々な実施形態に係る水性ガスシフト反応器の斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの上面図である。
【
図9B】
図9Bは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの側断面図である。
【
図9C】
図9Cは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システムの斜視図である。
【発明の概要】
【0004】
本開示の様々な実施形態によれば、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、アノードテールガス酸化器(ATO)と、カソードとアノードとの間に配置される電解質をそれぞれ含む第1の電気化学水素ポンプセパレーター及び第2の電気化学水素ポンプセパレーターと、燃料電池スタックの燃料排気出口をスプリッターに流体接続する燃料排気導管と、スプリッターの出口を第1の水素ポンプセパレーターのアノード入口に流体接続する第1の分離導管と、第1の水素ポンプセパレーターのアノード出口を第2のポンプセパレーターのアノード入口に流体接続する第2の分離導管と、第1の電気化学ポンプセパレーターのカソード出口をアノードテールガス酸化器に流体接続するATO入口導管と、第2の電気化学ポンプセパレーターのカソード出口を燃料電池スタックの燃料入口に流体接続する水素導管と、第2の電気化学ポンプセパレーターのアノード出口を二酸化炭素使用又は貯蔵装置に流体接続する副生成物導管とを備える。
【0005】
本開示の様々な実施形態によれば、燃料電池システムは、ホットボックスと、ホットボックス内に配置される燃料電池スタックと、ホットボックス内に配置されるアノードテールガス酸化器(ATO)と、燃料源を燃料電池スタックの入口に流体接続する燃料入口導管と、燃料電池スタックによって発生しホットボックスから出力された燃料排気から水を凝縮するように構成される、ホットボックスの外部に配置される燃料排気凝縮器と、燃料排気凝縮器から受け取った燃料排気から液体の水を除去するように構成される燃料排気セパレーターと、燃料電池スタックの燃料排気出口を燃料排気凝縮器に流体接続する燃料排気導管と、燃料排気セパレーターを燃料入口導管に流体接続する再循環導管と、再循環導管をATOに流体接続するATO入口導管と、再循環導管を通ってATO入口導管に入る燃料排気の流れを選択的に制御するように構成される再循環弁とを備える。
【0006】
本開示の様々な実施形態によれば、燃料電池システムは、ホットボックスと、ホットボックス内に配置される燃料電池スタックと、ホットボックス内に配置されるアノードテールガス酸化器(ATO)と、燃料源を燃料電池スタックの入口に流体接続する燃料入口導管と、ホットボックスの外部に位置する外部アノード排気冷却器と、燃料電池スタックの燃料排気出口を外部アノード排気冷却器に流体接続する燃料排気導管と、外部アノード排気冷却器を燃料入口導管に流体接続する再循環導管と、再循環導管に流体接続される燃料排気処理導管と、燃料排気処理導管に流体接続され、燃料排気処理導管から受け取った燃料排気を液体の水、二酸化炭素、及び水素の流れに分離するように構成されるガスセパレーターとを備える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載されるように、本開示の様々な態様が、例示の実施形態及び/又は本発明の例示の実施形態が示されている添付図面を参照して説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、図面に示されている又は本明細書に記載される例示の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。開示されている様々な実施形態は、その特定の実施形態に関連して記載される特定の特徴、要素、又はステップを伴うことができることが理解されよう。また、特定の特徴、要素、又はステップは、1つの特定の実施形態に関連して記載されているが、代替の実施形態と交換しても、代替の実施形態と様々な例示されていない組合せ又は順列で組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0008】
また、或る要素又は層が、別の要素若しくは層「の上にある」又は別の要素若しくは層「に接続される」と言及される場合、その要素又は層が、別の要素若しくは層の直接上にあり得るか又は別の要素若しくは層に直接接続され得るか、或いは介在する要素又は層が存在し得ると理解されよう。対照的に、或る要素が、別の要素若しくは層「の直接上にある」又は別の要素若しくは層「に直接接続される」と言及される場合、介在する要素又は層は存在しない。本開示の目的のために、「X、Y及びZの少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、又はX、Y及びZの2つ以上の項目の任意の組合せ(例えば、XYZ、XYY、YZ、ZZ)として解釈され得ることが理解されよう。
【0009】
本明細書において、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までのように範囲が表現され得る。そのような範囲が表現される場合の例として、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までというのが挙げられる。同様に、頭に「約」又は「実質的に」を使用することによって値が近似として表現される場合、特定の値は別の様相を形成することが理解されよう。いくつかの実施形態において、「約X」という値は、+/-1%Xという値を含み得る。範囲のそれぞれの端点は、他方の端点に関連しても、他方の端点とは無関係でも重要であることが更に理解されよう。
【0010】
本明細書において、「燃料排気」という用語は、燃料電池スタックのアノードから出力される排気を指すことができ、スタックに供給される未反応の燃料を含むことができる。「空気排気」という用語は、燃料電池スタックのカソードから出力される及び/又はアノードテールガス酸化器から出力される排気を指すことができる。
【0011】
本発明の第1の比較実施形態及び第2の比較実施形態は、電気化学ポンプセパレーターが固体酸化物型燃料電池(SOFC)システム等の燃料電池システムとともに使用される様子を示している。他の燃料電池システムを使用することもできることに留意すべきである。
【0012】
第1の実施形態のシステムにおいて、燃料電池スタック内に供給される燃料入口流を加湿するために、燃料加湿器が使用される。第2の実施形態のシステムにおいて、燃料加湿器は省くことができる。燃料電池スタックの燃料排気流の一部は、燃料入口流を加湿するために、燃料入口流へと直接再循環させる。燃料電池スタックの燃料排気流の別の部分は、セパレーター内に供給され、次いで、分離された水素は、燃料入口流内に供給される。
【0013】
図1は、米国特許第8,101,307号に記載の燃料電池システム100の概略図である。上記特許文献は、その全体を参照により本明細書に援用する。システム100は、固体酸化物型燃料電池スタック等の燃料電池スタック101(イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等のセラミック電解質、ニッケル-YSZサーメット等のアノード電極、及びランタンストロンチウムマンガナイト等のカソード電極を含むスタックの1つの固体酸化物型燃料電池を示すように概略的に図示されている)を備える。
【0014】
システム100は、燃料排気流から水素を電気化学的に分離する電気化学ポンプセパレーター150も備える。ポンプセパレーター150は、ポリマー電解質を含む任意の好適なプロトン交換膜装置を備えることができる。電解質の各側に位置するアノード電極とカソード電極との間に電位差が印加されると、ポリマー電解質を通して水素が拡散する。ポンプセパレーター150は、高温低水和イオン交換膜セルのスタック等の一酸化炭素耐性電気化学セルのスタックを備えることが好ましい。このタイプのセルは、アノード電極とカソード電極との間に位置する、例えば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)膜等の非フッ素化イオン交換アイオノマー膜を備える。膜は、硫酸又はリン酸等の酸でドープされる。そのようなセルの一例は、米国特許出願公開第2003/0196893号に開示されており、この特許文献は、その全体を参照により本明細書に援用する。これらのセルは、一般的に、100℃超~約200℃の温度範囲で動作する。したがって、システム100内の熱交換器は、燃料排気流を約120℃~約200℃、例えば、約160℃~約190℃の温度に保つことができる。
【0015】
システム100は、燃料電池スタック101の燃料排気出口103をポンプセパレーター150のアノード入口151に流体接続する第1の燃料排気導管153も含む。システム100は、ポンプセパレーター150のカソード出口158を燃料入口導管111に流体接続する生成物導管157も含み、燃料入口導管111は、スタック101の燃料入口105を外部燃料源に流体接続する。システム100は、ポンプセパレーター150のアノード出口152をアノードテールガス酸化器(ATO)140又は大気ベントに流体接続するセパレーター排気導管159も含む。システム100には、動作時、圧縮された燃料排気流がポンプセパレーター150に供給されるように燃料排気を圧縮するコンプレッサーがないことが好ましい。
【0016】
システム100は、燃料入口導管111及びセパレーター排気導管159に作動的に接続される燃料加湿器119を更に備える。動作時、燃料加湿器119は、セパレーター排気導管159に出力されるセパレーター排気に含まれる水蒸気を使用して、燃料入口導管111内の再循環水素を含む燃料を加湿する。燃料加湿器119は、例えば、米国特許第6,106,964号及び米国特許出願第10/368,425号に記載されているように、Nafion(商標)膜加湿器等のポリマー膜加湿器、エンタルピーホイール、又は複数の水吸着床を含むことができる。上記特許文献の双方は、その全体を参照により本明細書に援用する。例えば、1つの好適なタイプの加湿器は、Perma Pure LLC社から入手可能な水蒸気及びエンタルピー移動Nafion(商標)系透水性膜を含む。燃料加湿器119は、水蒸気及びエンタルピーを燃料排気流から燃料入口流に受動的に移動させ、燃料入口流において2~2.5の蒸気対炭素比をもたらす。燃料入口導管111内の燃料の温度は、燃料加湿器119によって約80℃~約90℃に上昇させることができる。
【0017】
システム100は、燃料入口導管111及び燃料排気導管153に作動的に接続される復熱交換器121(例えば、アノード復熱器)も含む。熱交換器121は、燃料排気導管153内の燃料排気から取り出された熱を使用して、燃料入口導管111内の燃料を加熱する。熱交換器121は、流入する燃料の温度の上昇を補助するとともに、燃料排気温度を低減し、燃料排気温度は凝縮器内で更に冷却することができ、燃料加湿器119を損傷させないようになっている。
【0018】
燃料電池が外部燃料改質型セルである場合、システム100は、燃料改質器123を含む。改質器123は、炭化水素燃料入口流を水素及び一酸化炭素を含む燃料流に改質し、その後、この燃料流は、スタック101に供給される。改質器123は、2004年12月2日に出願された米国特許出願第11/002,681号に記載されているように、燃料電池スタック101内で発生する熱により及び/又は任意選択のATO140内で発生する熱により、放射、対流、及び/又は伝導によって加熱することができる。上記特許文献は、その全体を参照により本明細書に援用する。代替的に、外部燃料改質器123は、スタック101が、主としてスタックの燃料電池内で改質が生じる内部改質型のセルを含む場合、省いてもよい。
【0019】
システム100は、スタック101の空気入口107に流体接続される空気入口導管130も備える。任意選択で、システム100は、空気入口導管130に作動的に接続されるとともに、燃料排気導管153内の燃料排気から取り出された熱を使用して、空気入口導管130内の空気を予熱するように構成される、アノード排気冷却器と称する場合もある空気予熱器熱交換器125を備える。所望の場合、この熱交換器125は省いてもよい。
【0020】
システム100は、スタック101の空気排気出口109をATO140に流体接続する空気排気導管132も備える。システム100は、空気入口導管130及び空気排気導管132に作動的に接続される空気熱交換器127を収容することが好ましい。この熱交換器127は、空気排気導管132内の燃料電池スタック空気排気(すなわち、酸化剤又はカソード排気)から取り出された熱を使用して、空気入口導管130内の空気を更に加熱する。予熱器熱交換器125が省かれる場合、空気は、ブロワー又は他の空気取入れ装置によって熱交換器127内に直接供給される。
【0021】
システム100は、任意選択で、生成物導管157及び空気入口導管130に作動的に接続される水素冷却器熱交換器129も備える。熱交換器129は、空気入口導管130を通って流れる空気を使用して、ポンプセパレーター150から出力される分離された水素から熱を取り出す。
【0022】
システム100は、燃料排気導管153に作動的に接続される任意選択の水性ガスシフト(WGS)反応器128を含むこともできる。WGS反応器128は、燃料排気中の水の少なくとも一部を遊離水素(H2)に変換する任意の好適な装置とすることができる。例えば、WGS反応器128は、燃料排気流中の一酸化炭素及び水蒸気の一部又は全てを二酸化炭素及び水素に変換する触媒を含む管又は導管を含むことができる。したがって、WGS反応器128は、燃料排気中の水素の量を増大させる。触媒は、酸化鉄又はクロム促進酸化鉄触媒等の任意の好適な触媒とすることができる。WGS反応器128は、燃料熱交換器121と空気予熱器熱交換器125との間の燃料排気導管153に作動的に接続することができる。
【0023】
システム100は、以下のように動作することができる。燃料が、燃料入口導管111を通して燃料電池スタック101に供給される。燃料は、限定はしないが、メタン、水素及び他のガスとともにメタンを含む天然ガス、プロパン、若しくは他のバイオガス、又は、一酸化炭素等の炭素燃料、メタノール等の酸素化炭素含有ガス、若しくは他の炭素含有ガスと、水蒸気、H2ガス、又はその混合物等の水素含有ガスとの混合物を含む、任意の好適な炭化水素燃料を含むことができる。例えば、上記混合物は、石炭又は天然ガスの改質に由来する合成ガスを含むことができる。
【0024】
燃料流が加湿器119を通過する際に、燃料流が加湿される。加湿された燃料流は、その後、燃料熱交換器121を通過し、そこで、加湿燃料が燃料電池スタック燃料排気によって加熱される。次いで、加熱された加湿燃料は、燃料改質器123内に供給される。燃料改質器123は、外部改質器であることが好ましい。例えば、燃料改質器123は、2004年12月2日に出願された米国特許出願第11/002,681号に記載されている改質器を含むことができる。上記特許文献は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0025】
燃料改質器123は、炭化水素燃料を部分的又は全体的に改質し、炭素含有燃料及び遊離水素含有燃料を形成することが可能な任意の好適な装置とすることができる。例えば、燃料改質器123は、炭化水素ガスを改質して遊離水素及び炭素含有ガスの混合ガスにすることができる任意の好適な装置とすることができる。例えば、燃料改質器123は、触媒で被覆した通路を備えることができ、そこで、天然ガス等の加湿バイオガスが水蒸気メタン改質反応を介して改質され、遊離水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気と、任意選択で残量の未改質のバイオガスを形成する。その後、遊離水素及び一酸化炭素が燃料電池スタック101の燃料(すなわち、アノード)入口105に供給される。したがって、燃料入口導管111における燃料の流れ方向に関して、加湿器119は、熱交換器121の上流に位置し、熱交換器121は、改質器123の上流に位置し、改質器123は、スタック101の上流に位置する。
【0026】
空気入口導管130を通してスタック101に供給される空気又は他の酸素含有ガス(すなわち、酸化剤)は、空気熱交換器127によって、空気排気導管132内のカソード排気を使用して加熱される。所望の場合、空気入口導管130内の空気は、水素冷却器熱交換器129及び/又は空気予熱器熱交換器125を通過し、空気をスタック101内に供給する前に、空気流の温度を更に上昇させることもできる。
【0027】
動作中、スタック101は、供給される燃料及び空気を使用して電気を発生させ、燃料排気及び空気排気を発生させる。燃料排気は、水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等のいくらかの未反応の炭化水素燃料、及び他の反応副生成物及び不純物を含み得る。燃料排気は、スタック101に供給される燃料の約25%を含み得る。
【0028】
燃料排気は、燃料排気出口103から出力され、燃料排気導管153によってポンプセパレーター150に供給される。ポンプセパレーター150は、燃料排気中に含まれる水素(H2)の少なくとも一部を電気化学的に分離する。分離された水素は、カソード出口158から出力され、生成物導管157によって燃料入口導管111に供給され、ここで、水素は、流入する新しい燃料と混合される。水素は、加湿器119の上流の燃料入口導管111に供給されることが好ましい。
【0029】
この燃料排気流は、まず、熱交換器121内に供給され、ここで、温度が好ましくは200℃未満に低下される一方、流入する燃料の温度を上昇させる。WGS反応器128及び空気予熱器熱交換器125が存在する場合、燃料排気は、WGS反応器128を通して供給され、水蒸気の少なくとも一部及び残りの一酸化炭素の大部分を二酸化炭素及び水素に変換する。次いで、燃料排気の温度は、空気入口導管130内の空気に熱を移動させることによって、熱交換器125を通過する間に更に低減される。燃料排気の温度は、例えば、約90℃~110℃に低減することができる。
【0030】
その後、燃料排気は、導管153を介してポンプセパレーター150のアノード入口151に供給される。ポンプセパレーター150は、水素の大部分、例えば、燃料排気流中の水素の約85%を燃料排気から分離するように構成することができる。特に、水素は、ポンプセパレーター150内のセルの電解質を通して拡散する一方で、燃料排気中の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、及び残りの炭化水素ガスが排気導管159によって加湿器119に供給されることを可能にする。
【0031】
燃料加湿器119において、燃料排気中の水蒸気の一部が燃料入口導管111内の燃料に移送され、燃料を加湿する。燃料は、80℃~90℃の露点まで加湿することができる。その後、燃料排気流の残りの部分は、スタック101からの空気(すなわち、カソード)排気とともにATO140内に供給され、そこで、ガスが燃焼して低品質の熱を供給する。ATO140からの熱は、改質器123を加熱するように使用することができるか、システム100の他の部分に供給することができるか、又は建物暖房システム等のシステム100の外部の装置に供給することができる。
【0032】
ポンプセパレーター150によって分離される水素は、カソード出口158から出力され、生成物導管157によって燃料入口導管111に供給され、そこで、流入する燃料と混合される。所望の場合、水素は、燃料入口導管111に供給される前に、熱交換器129内で冷却することができ、そこで、水素流は、空気入口導管130内の空気と熱を交換する。水素の温度は、燃料入口導管111内に供給される前に、熱交換器129内で低下される。したがって、炭化水素燃料は、ポンプセパレーター150を用いてアノード排気ガスから回収された、周囲温度に近い低露点の再循環水素と混合される。
【0033】
したがって、燃料排気の流れ方向に関して、熱交換器121は、反応器128の上流に位置し、反応器128は、熱交換器125の上流に位置し、熱交換器125は、ポンプセパレーター150の上流に位置し、ポンプセパレーター150は、加湿器119及び燃料入口導管111の上流に位置する。
【0034】
図2は、米国特許第8,101,307号に記載されている燃料電池システム200の概略図である。システム200は、システム100と同様であり、複数の構成要素を共通して含む。システム100及び200の双方に共通の構成要素は、
図1及び
図2において同じ符号が付されており、更に説明はしない。
【0035】
システム100及び200の間の相違点の1つは、システム200には、必ずというわけではないが、好ましくは加湿器119がないことである。その代わり、水蒸気を含むスタック燃料排気流の一部は、スタック燃料入口流へと直接再循環される。燃料排気流中の水蒸気は、燃料入口流を加湿するのに十分なものである。
【0036】
システム200は、燃料排気スプリッター201と、再循環導管203と、ブロワー又はコンプレッサー205と、混合器207とを含むことができる。スプリッター201は、コンピューター又はオペレーター制御の多方弁、例えば、三方弁、又は別の流体分割装置とすることができる。スプリッター201は、燃料排気導管153及び再循環導管203に作動的に接続することができる。特に、スプリッター201は、燃料排気導管153内の燃料排気の全て又は一部を再循環導管203に転向するように構成することができる。
【0037】
混合器207は、燃料入口導管111、再循環導管203、及び生成物導管157に作動的に接続することができる。再循環導管203は、スプリッター201を混合器207に流体接続することができる。混合器207は、新しい燃料と、再循環導管203によって供給される燃料排気及び/又は生成物導管157によって供給される水素とを混合するように構成することができる。
【0038】
ブロワー又はコンプレッサー205は、再循環導管203に作動的に接続することができる。ブロワー又はコンプレッサー205は、燃料排気を、再循環導管203を通して混合器207に移動させるように構成することができる。動作時、ブロワー又はコンプレッサー205は、混合器207を介して、所望の量の燃料排気を燃料入口導管111に制御可能に供給する。
【0039】
システム200を動作させる方法は、システム100を動作させる方法と同様である。相違点の1つは、燃料排気がスプリッター201によって少なくとも2つの流れに分離されることである。第1の燃料排気流は、燃料入口流に再循環され、第2の流れは、ポンプセパレーター150内に向けられ、そこで、第2の燃料排気流中に含まれる水素の少なくとも一部が第2の燃料排気流から電気化学的に分離される。その後、第2の燃料排気流から分離された水素は、生成物導管157によって燃料入口導管111内に供給される。例えば、燃料排気の50%~70%、例えば約60%をブロワー又はコンプレッサー205に供給することができ、残りの部分は、ポンプセパレーター150へと供給することができる。
【0040】
燃料排気は、まず、熱交換器121及び125、並びにWGS反応器128を通って流れ、その後、スプリッター201内に供給されることが好ましい。燃料排気は、熱交換器125において約200℃以下、例えば、約120℃~約180℃まで冷却することができ、その後、スプリッター201内に供給され、そこで、2つの流れに分割される。これにより、所望の量の燃料排気流を燃料入口導管111内に制御可能に再循環させるために、低温ブロワー205を使用することが可能になる。なぜなら、そのようなブロワーは、約200℃未満の温度を有するガス流を移動させるように適合され得るためである。
【0041】
ブロワー又はコンプレッサー205は、コンピューター又はオペレーター制御することができ、燃料入口流内に供給される燃料排気流の量を、下記に記載の条件に応じて変動させることができる。いくつかの実施形態において、システム200は、任意選択で、生成物導管157に作動的に接続されるセレクター弁210を備えることができる。セレクター弁210は、補助装置212、例えば、水素貯蔵装置、車両内のPEM燃料電池等の水素使用装置若しくは別の水素使用装置、又は水素貯蔵容器に流体接続することができる。セレクター弁210は、生成物導管157内の選択された量の水素を補助装置212に転向するように構成することができる。例えば、水素の全て又は一部を補助装置212又は混合器207のいずれかに供給してもよく、水素を混合器207及び補助装置212に交互に供給してもよい。
【0042】
ブロワー又はコンプレッサー205及び任意選択のセレクター弁210は、以下の条件のうちの1つ以上に基づいてガスの流れを制御可能に変動させるように、コンピューター又はオペレーターによって動作させることができる。i)システム100の検出又は観察された条件(すなわち、燃料入口流中の水素の量の変化を必要とするシステム動作条件における変化)、ii)燃料入口流中の水素の一時的な調整を必要とする、コンピューターに提供された事前の計算又はオペレーターに既知の条件、iii)スタックによって発生した電気の使用者による電気需要の変化、水素の価格と比較した電気又は炭化水素燃料の価格の変化等、スタック101の動作パラメーターの所望の将来の変化、現在起こっている変化、又は最近の過去の変化、及び/又は、iv)水素使用装置等の水素使用者による水素の需要の変化、電気の価格と比較した水素又は炭化水素燃料の価格の変化等。
【0043】
燃料排気(すなわち、テール)ガスから分離された水素の少なくとも一部を燃料入口導管111内に再循環させることにより、燃料電池システムの高効率動作が得られることが示されている。さらに、全体的な燃料使用率が増大する。パスごとの燃料利用率が約75%(すなわち、スタックを通る各パスの間に燃料の約75%が利用される)である場合、第1の実施形態及び第2の実施形態の方法では、電気効率(すなわち、AC電気効率)は、約50%~約60%、例えば、約54%~約60%の範囲とすることができる。パスごとの利用率が約75%である場合、約94%~約95%の有効な燃料利用率が得られ、燃料排気ガス水素の約85%が、セパレーター150によって燃料電池スタックに戻るように再循環される。パスごとの燃料利用率を75%超、例えば、約76%~80%に増大させることにより、更に高い効率を得ることができる。定常状態において、第1の実施形態及び第2の実施形態の方法は、燃料電池への供給ガスを生成するために水蒸気メタン改質が使用される場合、蒸気を発生させる必要性を排除する。燃料排気流は、スタックへの燃料入口流を2~2.5の蒸気対炭素比で加湿するのに十分な水蒸気を含む。燃料の純利用率が増大すること、及び蒸気を発生させるのに熱を必要としなくなることにより、全体的な電気効率が増大する。それに対して、水素を再循環しない場合、約75%~80%というスタック内の燃料利用率に対して、AC電気効率は約45%である。
【0044】
図3は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システム300を示す概略図である。
図3における要素で、
図1及び
図2に関して上述したものと同じ符号を有するものは、
図3に関して再度説明はしない。システム300は、燃料電池スタック(例えば、SOFCスタック)101、ATO140、燃料熱交換器121、空気予熱器熱交換器125、及び空気熱交換器127を含むホットボックス302と、空気入口ブロワー304と、アノード再循環ブロワー330と、燃料排気導管312に作動的に接続することができるスプリッター332とを備えることができる。システム300は、第1の水素ポンプセパレーター350A及び第2の水素ポンプセパレーター350Bを備えることもできる。いくつかの実施形態において、システム300は、再循環導管314(すなわち、アノード排気再循環導管)に作動的に接続することができるベンチュリ装置334を備えることができる。いくつかの実施形態において、システム300は、混合器336を備えることもできる。
【0045】
システム300は、
図1のシステム100及び
図2のシステム200に関して上述したように、燃料改質器123、導管(例えば、130、132)等の追加のシステム構成要素を備えることができる。
【0046】
ポンプセパレーター350A、350Bは、上述した電気化学水素ポンプセパレーター150等の任意の好適なタイプの電気化学水素セパレーターとすることができる。例えば、ポンプセパレーター350A、350Bは、アノード354とカソード356との間に配置されるプロトン伝導体電解質352をそれぞれ備えることができる。燃料電池燃料排気流等の水素含有ガス流がアノードに供給され、そこで、水素は、アノードの触媒材料によって、プロトン及び電子へと分離される。電子は、印加電圧によってカソードへと駆動され、プロトンをカソードへと駆動し、純水素ガスを発生させる。
【0047】
例えば、好適な電解質材料は、プロトン交換膜(PEM)又はポリマー電解質膜等の任意の好適なプロトン伝導体、例えば、Nafion(商標)という商標名で販売されている、化学式:C7HF13O5S.C2F4を有するスルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー共重合体、上述の実施形態に記載のリン酸膜(ポリリン酸及びポリベンゾイミダゾールポリマーを含むPBI系リン酸膜を含む)を含み、プロトン伝導性酸化物は、LaPO4等のリン酸塩、固体酸(リン酸二水素セシウム、CsH2PO4等)、及び、ペロブスカイト型セレート、ニオブ酸塩、リン酸塩、没食子酸塩、又はジルコン酸塩等の或る特定のペロブスカイト(ABO3)材料、例えば、BaCeYO(BCO)、BaZrYO(BZO)、LaSrPO、BaCaNbO(BCN)、LaCaNbO、又はLaBaGaO(LBGO)を含む。これらは、Chem. Soc. Rev., 2010, 39, 4370-4387に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0048】
ブロワー330は、任意の好適な流体(例えば、ガス)ブロワー、ポンプ、コンプレッサー等とすることができる。スプリッター332は、例えば、コンピューター若しくはオペレーター制御の多方弁、例えば四方弁、又は他の任意の好適な流体分割装置、例えば、流体導管における開口部又はスリットを含む受動式スプリッターとすることができる。
【0049】
燃料入口導管310は、スタック101を炭化水素燃料源、例えば、天然ガス源、プロパン源等(例えば、天然ガスライン又はプロパンタンク)に流体接続するように構成することができる。燃料入口導管310は、CPOx反応器、燃料熱交換器121、改質器123等の他のシステム構成要素に流体接続することもできる。燃料排気導管312は、スタック101のアノード排気出口をスプリッター332に流体接続するように構成することができる。再循環導管314は、混合器336を通してスプリッター332の出口を燃料電池スタック101の入口に流体接続するように構成することができる。第1の分離導管316は、スプリッター332の出口を第1のポンプセパレーター350Aの入口に流体接続するように構成することができる。混合器336及びベンチュリ装置334は、再循環導管314に作動的に接続することができる。
【0050】
ATO入口導管320は、第1のポンプセパレーター350Aのカソード出口をATO140の入口に流体接続するように構成することができる。第2の分離導管322は、第1のセパレーター350Aのアノード出口を第2のポンプセパレーター350Bの入口に流体接続するように構成することができる。副生成物導管324は、第2のポンプセパレーター350Bのアノード出口を任意選択のCO2貯蔵システム又は装置340に流体接続することができる。水素導管326は、第2のポンプセパレーター350Bのカソード出口を混合器336の入口に流体接続することができる。排気導管328は、ATOの出口に流体接続することができる。任意選択の始動導管329は、スプリッター332をATO入口導管320に接続することができる。スプリッター332が四方弁である場合、システム300の始動モード中、燃料排気導管312と始動導管329との間で弁が開放され、導管312、329、及び320を通してATO140に燃料が供給される。システム300の定常状態モード中、水素ポンプセパレーター350AがATO入口導管320を通してATO140に燃料を供給するので、燃料排気導管312と始動導管329との間で弁が閉鎖される。
【0051】
ベンチュリ装置334は、通流する流体の速度を変化させるように構成することができる。ベンチュリ装置334は、再循環導管314内のアノード再循環流の流量を測定するために使用することができる。水素導管326内の水素ポンプセパレーター350Bからの水素の流量は、水素ポンプセパレーター350Bに印加される電流から計算することができる。水素ポンプにおける水輸送を特徴付けることができる場合、流れ326からの総流量を計算することができる。したがって、混合器336に供給される水素及びアノード再循環流の流量は、上述したように求めることができる。混合器336は、2つの流体流を組み合わせて単一の流体流にするように構成される任意の好適な装置とすることができる。1つの実施形態において、混合器336は、ホットボックス302の外部でブロワー330の下流に位置し、水素導管326からの水素流と再循環導管314からの燃料再循環流とを混合することができる。
【0052】
システム300は、燃料排気導管312に作動的に接続される任意選択のWGS反応器128を備えることができる。WGS反応器128は、燃料排気中のCO及びH2OをCO2及びH2に変換するように構成することができる。WGS反応器128は、燃料熱交換器121とスプリッター332との間に配置することができる。いくつかの実施形態において、WGS反応器128は、ホットボックス302の内部、第1のポンプセパレーター350A内の本来の位置、又はアノード排気導管におけるスタック101と第1のポンプセパレーター350Aとの間の任意の場所に位置することができる。1つの実施形態において、高温水性ガスシフト触媒は、ホットボックス302内の燃料熱交換器121内に位置することができ、中温又は低温水性ガスシフト触媒は、再循環導管316内に位置することができる。したがって、この実施形態において、WGS反応器128の第1の部分は、燃料熱交換器121に統合され、WGS反応器128の第2の部分は、再循環導管316に統合される。
【0053】
動作時、スタック101から出力される燃料排気は、ブロワー330によって燃料排気導管312を通して圧送し、スプリッター332に供給することができる。スプリッター332は、燃料排気の第1の部分(例えば、第1の燃料排気流)を再循環導管314に能動的又は受動的に供給するとともに、燃料排気の第2の部分(例えば、第2の燃料排気流)を第1の分離導管316に選択的に供給するように構成することができる。
【0054】
再循環導管314は、スプリッター332から出力される第1の燃料排気流を、混合器336を通して燃料電池スタック101に供給するように構成することができる。ベンチュリ装置334は、再循環導管314内の第1の燃料排気流の流量を増大させるように動作することができる。
【0055】
第1の分離導管316は、スプリッター332から受け取った第2の排気流を第1のポンプセパレーター350Aの入口に供給するように構成することができる。第1のポンプセパレーター350Aは、燃料排気から水素ガスを優先的に分離することができる。したがって、ポンプセパレーター350Aは、ATO入口導管320を介して水素(例えば、ATO燃料流)をATO140に出力することができる。第1のポンプセパレーター350Aは、定電流モードで動作することができる。これは、ATO140への水素の流れを制御するのに役立ち得る。スタック101のカソード排気は、ATO140に供給することもできる。ATO燃料が水素から構成されるため、ATO排気(すなわち、酸化されたアノード排気及びカソード排気)は、完全に又は実質的にCO2を含まないものとなる(例えば、カソード排気を含む空気中に存在するCO2を除く)。
【0056】
ATOの水素需要がスタック101の水素出力よりも少なくなり得るため、第1のポンプセパレーター350Aは、第2の燃料排気流から水素の一部のみを除去するように構成することができる。したがって、第2の燃料排気流の残りの部分は、水素を含むことができ、第1のポンプセパレーター350Aのアノード出口から出力し、第2の分離導管322によって、第2のポンプセパレーター350Bの入口に供給することができる。ホットボックス内の熱平衡を維持するためにATO燃料が必要とされない場合(例えば、システム300の寿命の後期)、再循環導管316は、第1の水素ポンプセパレーター350Aを迂回するように構成することができるか、又は、第1の水素ポンプセパレーター350に電流を印加することなく、第1の水素ポンプセパレーターを通過することができ、したがって、ATO入口導管320内の水素の流量をゼロにする。この実施形態において、
図7を参照して後述するように、外部燃料をATO140に代わりに供給してもよい。
【0057】
第2のポンプセパレーター350Bは、第2の燃料排気流から水素を分離し、それにより、水素流と、主として気体の水及び二酸化炭素から構成される副生成物流とを発生させるように構成することができる。
【0058】
1つの態様において、第1のポンプセパレーター350Aは、ATO140への燃料の流れを制御するように定電流モードで動作することができ、第2のポンプセパレーター350Bは、定電圧モードで動作し、水素をアノード再循環流の一部としてスタック101に戻して再循環させることができる。第1のポンプ350A及び第2のポンプ350Bは、性能及び動作条件に応じて、高温膜(例えば、約160℃)又は低温膜(例えば、約80℃)の化学的性質又はそれら2つの組合せに基づくことができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、システム300は、任意選択で、二酸化炭素処理装置338及び二酸化炭素貯蔵装置340を備えることができ、二酸化炭素処理装置338及び二酸化炭素貯蔵装置340は、第2のポンプセパレーター350Bのアノード出口に流体接続される副生成物導管324に作動的に接続することができる。処理装置338は、第2のポンプセパレーター350Bから受け取った二酸化炭素流を圧縮及び/又は冷却するように動作することができる。任意選択の二酸化炭素処理装置338は、二酸化炭素副生成物流から水を除去するように構成される凝縮器及び/又は乾燥器とすることができる。貯蔵装置340に供給される生成物二酸化炭素流は、蒸気、液体、固体、又は超臨界二酸化炭素の形態とすることができる。
【0060】
残りの精製された又は純粋なCO2は、貯蔵装置340内に貯蔵/隔離するか、又は化学プロセス、飲料の炭酸ガス充填等に使用することができる。いくつかの実施形態において、貯蔵装置340は、CO2をドライアイスに変換して貯蔵するように構成される深冷貯蔵装置とすることができる。
【0061】
水素流は、水素導管326によって第2のポンプセパレーター350Bのカソード出口から混合器336に出力することができる。水素は、混合器336内で、再循環導管314によって供給される第1の燃料排気流と混合し、アノード再循環流を形成することができる。水素導管326内の水素流の一部又は全てを、再循環導管314内に再循環させるのではなく、水素生成物として取り出すこともできる。この実施形態において、混合器336は省いてもよい。取り出された水素生成物は、圧縮、乾燥、及び貯蔵することができる。
【0062】
アノード再循環流は、混合器336から燃料電池スタック101又は燃料入口導管310に供給することができ、そこで、燃料源から供給される流入する燃料と混合することができ、その後、スタック101に戻して再循環させる。いくつかの実施形態において、第1の燃料排気流の流量は、スタック101に供給される燃料のO:C比(酸素炭素比)が、ホットボックス内のいずれの温度においてもコーキングを抑制するのに十分な酸素含有量をもたらすように制御することができる。
【0063】
水素流は、無水ベースで少なくとも95%のH2、例えば、約95%~約100%のH2を含むことができる。換言すれば、第1のポンプセパレーター350A及び第2のポンプセパレーター350Bの双方をタンデムで使用することにより、システムは、スタック101によって発生した燃料排気から高度に精製された水素ガスを生成することができる。したがって、システム300は、2つのポンプセパレーター350A、350Bを使用して、95%を超える二酸化炭素(CO2)、例えば、燃料電池スタック101のアノード排気から出力されたCO2の95%~100%を除去するように構成することができる。
【0064】
加えて、ATO140にはH2が燃料として供給されるため、ATO排気(すなわち、酸化されたアノード排気及びカソード排気)は、完全に又は実質的にCO2を含まないことができる(例えば、カソード排気を含む空気中に存在するCO2を除く)。
【0065】
ポンプセパレーター350A、350B等の水素ポンプセパレーター内では、一酸化炭素(CO)の蓄積及び/又は水の詰まりが発生する場合があり、それにより、分離効率が低減するおそれがある。したがって、いくつかの実施形態において、任意の好適な周波数で、ポンプセパレーター350A、350Bに接続されるDC/DC電源からの電圧リップルを使用して、COの蓄積及び/又は水の詰まりを検出するために、ACインピーダンス(例えば、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許第9,461,320号に記載されている)を使用することができる。例えば、1Hzの周波数は、液体の水の溢れを検出することができ、1kHzの周波数は、COの蓄積を検出するのに使用することができる。1つのセパレーターからのリップルは、他のセパレーターからのリップルを相殺することができ、又は、リップルは、統合された燃料電池システムにおける他のリップルによって相殺される。ACインピーダンス信号を使用して、COが検出されると、ポンピング電位を増大させる又はポンプセパレーター350A、350Bのアノード又はカソードをパージする等、問題を解決するためのシステム応答を発動することができる。例えば、水の詰まりが検出されると、このパージは、セパレーターに対する入口圧力を増大させる又は出口圧力を減少させる、又はセパレーターの動作温度を上昇させることを含むことができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、ポンプセパレーター350A、350Bは、アノード354のガス拡散層の一部として炭素マイクロレイヤーを含むことができる。しかしながら、セパレーター動作中、炭素マイクロレイヤーが酸化され得ることが突き止められた。したがって、いくつかの実施形態において、アノード354は、流入する燃料流に面するテフロン(ポリテトラフルオロエチレン、登録商標)を結合させた第1の電極と、プロトン交換膜であり得る電解質352に面するアイオノマーを結合させた電極である第2の電極とを含む二層電極構造を含むことができる。
【0067】
電気化学式ポンプにおいて、電極構造の炭素支持体は、電解質を劣化させる過酸化物の発生につながり得る。1つの実施形態において、Pt又はPt-Ru等の高表面積の触媒を、ポンプセパレーター350A、350Bにおいて炭素支持体のない電極として使用することができる。別の実施形態において、酸化チタン又は酸化イリジウム等の導電性又は半導電性の金属酸化物触媒を、過酸化物の発生を低減するために、ポンプセパレーター350A、350における電極として使用することができる。
【0068】
また、100ppmを超えるCOレベルでは、ポンプセパレーターの性能及び信頼性に影響を与える場合があることが突き止められた。したがって、限定はしないが、Cu/ZnO/Al2O3触媒を含むWGS触媒を、ポンプセパレーター350A、350Bのアノードガス拡散層及び/又はアノードフローフィールドプレートの一部として含むことができる。
【0069】
いくつかの例において、統合されたWGS触媒は、低温で動作するポンプセパレーターのCO被毒を十分に軽減しない場合がある。したがって、いくつかの実施形態において、COを内部で酸化して二酸化炭素を形成するために、エアブリード導管をポンプセパレーター350A、350B内に組み込むことができる。この構成では、Au/FeOx-TiO2等の選択酸化触媒を、ポンプセパレーター350A、350Bのアノードマニホールド、アノードプレート、及び/又はアノードガス拡散層の一部として含むことができる。
【0070】
様々な実施形態において、
図4、
図5A、
図6、及び
図7に示されているように、水素のみを燃料として使用する燃料電池スタックにおける燃料利用率は、定常状態中、アノード排気からATOへの燃料の流れを排除し(例えば、
図3に示されているATO入口導管を排除又は閉鎖し)、アノード排気におけるH
2/H
2O混合物から水を凝縮し、凝縮されなかったH
2を燃料電池スタック101に供給される燃料入口流へと戻すことによって、95%超、例えば100%近く、例えば、96%~99.9%まで増大させることができる。例えば、
図1及び
図2に示されているセパレーター排気導管159又は
図3に示されているATO入口導管320は、システム始動中のみ使用し、その後、システムが700℃を超える動作温度に達すると、システムの定常状態動作中は弁によって閉鎖することができる。
【0071】
全体的な燃料利用率は、スタック101のアノード排気からATO140への流路を遮断することによって(例えば、それぞれの導管159を排除又は閉鎖することによって)、本質的に100%まで増大させることができる。全てのスタックアノード排気は、ホットボックスを出て、そこで、水が凝縮されて除去される(周囲温度にも左右され得るが、熱交換器内の水の露点、例えば、40℃~80℃まで下がる)。ここで、パスごとの燃料利用率には自由度があり、パスごとに50%~約70%に容易になり得る。
【0072】
水素燃料はコーキングを防止するために水を必要としないため、燃料中の水は、再循環H2中の残留水からのもののみとなる。これは、12%以下に制限することができ、混合されたH2の湿度を4%~6%まで低くすることが可能である。この低湿度/高H2濃度において、電流におけるセル電圧ははるかに高くなる。システム効率は、約55%~60%LHVとなり得る。
【0073】
水素でスタックを稼働させるには、天然ガス燃料供給システム(例えば、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許第9,287,572号及び同第9,190,673号に記載されているシステム等)に使用される多くの構成要素、すなわち、脱硫タンク及び触媒、脱硫タンクを変更するために使用される弁、CPOx反応器及びCPOx空気ブロワー、蒸気発生器、水の凍結を防止するヒーター、及び他の多様な水システム構成要素を含む水関連構成要素、並びに部分改質器及びその触媒を保持する内筒を必要としないため、システムコストも低減することができる。さらに、燃料利用率の正確な制御がもはや必要とされないため、質量流量制御弁を比例ソレノイド弁に置き換えることができる。加えて、システムは、ATO触媒のサイズを低減し、カソード復熱交換器127の熱シールドのサイズを低減するか又は熱シールドを省くことができ、ATO140とアノード復熱交換器121との間の断熱材を排除することができる。パワーエレクトロニクスが乾燥水素の開回路電圧に耐えることができない場合、水をシステムに供給し、パワーエレクトロニクス機器への接触器を閉鎖することができる。
【0074】
また、効果的なシステム効率は、外部の熱需要(熱電併給(CHP))との熱統合のためにカソード排気及び/又はアノード排気を使用することによって高めることができる。
【0075】
図4は、水素燃料を利用し、95%を超える(例えば、100%に近い)燃料利用率で動作する燃料電池システム400の概略図である。このシステムは、システム100、200、及び300に含まれるものと同様の構成要素を含むことができる。したがって、前述の構成要素は、同じ参照符号で識別され、それらの構成要素との相違点のみを詳細に論じる。
【0076】
図4を参照すると、システム400は、ホットボックス302と、1つ以上の燃料電池スタック(例えば、SOFCスタック)101と、燃料熱交換器121(例えば、アノード復熱器)と、任意選択の空気予熱器熱交換器125(例えば、アノード排気冷却器)と、ATO140と、空気熱交換器(例えば、カソード復熱器)127と、空気ブロワー404と、燃料制御弁411と、バイパス弁413と、ブリード弁417と、再循環弁419とを備えることができる。
【0077】
システム400は、外部H2源からスタック101にH2を供給するように構成される燃料入口導管410と、スタック101から出力される燃料排気を受け取るように構成される燃料排気導管412と、空気ブロワー404からスタック101に空気を供給するように構成される空気入口導管430と、スタック101から出力される空気排気をATO140に供給するように構成される空気排気導管432とを備えることもできる。システム400は、ATO140をカソード復熱器127に流体接続するATO排気導管424を備えることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、任意選択の外部燃料改質器423は、燃料入口導管410に作動的に接続し、燃料入口導管410に供給される水素ガスを発生させるように構成することができる。燃料改質器423は、外部燃料源から受け取った炭化水素燃料(例えば、天然ガス)を使用して水素を発生させるように構成することができる。代替的に、水素貯蔵容器又は別の水素源からの純粋な水素を燃料として使用してもよい。リフォーメートは、純粋な生成物としての水素を他種から分離するように処理することができる(図示せず)。
【0079】
燃料熱交換器121は、燃料入口導管410及び燃料排気導管412に作動的に接続することができ、燃料排気導管412内の燃料排気から燃料入口導管410内のH2燃料に熱を移動させるように構成することができる。燃料熱交換器121から出力される冷却された燃料排気は、アノード排気冷却器125に供給することができる。アノード排気冷却器125は、燃料排気から空気入口導管430内の空気に熱を移動させるように構成することができる。いくつかの実施形態において、熱電併給を供給するために燃料排気が使用される場合等には、アノード排気冷却器125を省くことができる。
【0080】
バイパス導管415は、排気導管412をATO140に流体接続することができる。バイパス導管415は、燃料熱交換器121とアノード排気冷却器125との間で排気導管412に接続することができる。バイパス弁413は、燃料排気導管412に作動的に接続することができる。バイパス弁413は、バイパス導管415を介して燃料排気の少なくとも一部をATO140に選択的に転向するように構成される自動又は手動制御弁とすることができる。バイパス弁413は、ATOに直接供給を行い、
図4に示されているようにホットボックス302の内部、又はホットボックス302の外部に位置することができる。
【0081】
燃料排気は、ホットボックス302内のアノード排気冷却器125から、燃料排気導管412を介して外部燃料排気凝縮器460に出力することができる。燃料排気凝縮器460は、燃料排気中の水蒸気を凝縮する及び/又はアノード再循環ブロワー434を熱損傷から保護するのに十分な温度まで燃料排気を冷却するように構成される、空冷又は水増強式空冷凝縮器及び/又は熱交換器とすることができる。例えば、燃料排気凝縮器460は、燃料排気凝縮器460が約50℃及び約1atmで動作する場合、燃料排気の含水量を約12%以下に低減するように構成することができる。いくつかの実施形態において、燃料排気凝縮器460は、外部冷却塔を通して再循環される水を使用して冷却することができる。いくつかの実施形態において、燃料排気凝縮器460の一部は、熱電併給システムの一部として利用することができる。例えば、燃料排気凝縮器460によって加熱された水は、外部温水源又は施設熱源として利用することができる。
【0082】
システム400は、燃料排気凝縮器460を燃料入口導管410に流体接続する再循環導管414を備えることができる。例えば、再循環導管414及び燃料入口導管410は、燃料改質器423又は別の水素源から受け取った水素燃料と燃料排気とを混合するように構成される混合器422に流体接続することができる。燃料排気セパレーター462(例えば、乾燥器又はノックアウトポット)、ブリード弁417、再循環弁419、及びアノード再循環ブロワー434は、再循環導管414に作動的に接続することができる。
【0083】
燃料排気流は、再循環導管414を介して燃料排気凝縮器460からセパレーター462に出力することができる。セパレーター462は、燃料排気から液体の水を分離するように構成することができる。いくつかの実施形態において、液体の水は、セパレーター462を燃料排気凝縮器460及び/又は冷却塔等の外部水冷却システムに流体接続する水導管464を介して、任意選択で、燃料排気凝縮器460に戻すことができる。燃料排気凝縮器460は、再循環導管414内の流れの露点を更に押し下げるために、冷却ステージ又は固体水吸着種を含むこともできる。
【0084】
ATO入口導管420は、再循環弁419をATO140に流体接続することができる。ブリード導管416は、再循環導管414をATO入口導管420に流体接続することができる。ブリード弁417は、ブリード導管416及び再循環導管414に作動的に接続することができる。
【0085】
ブリード弁417は、燃料排気から不純物をパージするように構成される自動又は手動制御弁とすることができる。いくつかの実施形態において、ブリード弁417は、スタック101に流体接続することができ、アノード圧力とカソード圧力とを等しくするために、スタック101の燃料電池に背圧を提供するように構成することができる。
【0086】
再循環弁419は、混合器422を介して燃料排気の全て又は一部をATO入口導管420又は燃料入口導管410に選択的に向けるように構成される手動又は自動制御の三方弁とすることができる。例えば、再循環弁419は、システム400の始動中、燃料排気をATO140に向けるように構成することができるが、システム400の定常状態動作中(例えば、システム400が700℃を超える定常状態動作温度に達した後)、燃料排気の全て又は実質的に全てを燃料入口導管410に向けることができる。燃料排気は、燃料制御弁411の上流の燃料入口導管410に戻すことができ、燃料制御弁411は、燃料入口導管410を通る燃料の流れを制御するように構成することができる。いくつかの実施形態において、燃料制御弁は、従来の質量流量制御弁ではなく比例ソレノイド弁とすることができる。なぜなら、質量流量制御弁によって提供される正確な流量制御は、水素ガスを燃料として使用して動作するシステムにおいて高い燃料利用率を達成するために必要でない場合があるためである。
【0087】
空気ブロワー404、アノード排気冷却器125、及びカソード復熱器127は、空気入口導管430に作動的に接続することができる。カソード復熱器127は、ATO排気導管424に作動的に接続することもできる。空気ブロワー404は、空気入口導管430を通してスタック101に空気又は酸化剤ガスを圧送するように構成することができる。空気入口導管430内の空気流は、アノード排気冷却器125から出力される燃料排気によって加熱することができ、ATO140から出力されるATO排気(例えば、燃焼排気)を使用して更に加熱することができる。空気入口流は、ATO140が動作していない場合(例えば、システム400の定常状態動作中)、カソード排気導管432を介して、スタック101からATO140に出力されるカソード排気を使用して、カソード復熱器127において加熱することもできる。カソード及び/又はATO排気は、カソード復熱器127から大気に通気することができ、又は、ATO排気導管424に流体接続される任意選択の外部の熱電併給(CHP)熱交換器436に供給することができる。
【0088】
上述したように、ATO140への燃料の流れは、始動中には供給されるが、定常状態中には供給しなくてもよい。燃料排気凝縮器460は、セル内で生成される水から再循環させるH2を容易に分離させることができる。アノード再循環ブロワー434は、燃料排気流から水を除去することによって、過熱する可能性が低くなる。いくつかの実施形態において、セパレーター462からの水は、CHP熱交換器436に供給することもできる。他の実施形態において、セパレーター462からの水は、燃料改質器423に供給することができ、燃料改質器423は、WGS反応器とすることができる。いくつかの実施形態において、セパレーター462は省くことができ、水は、燃料排気凝縮器460から直接出力することができる。1つの実施形態において、セパレーターは、蒸気流から離脱する液体の水のための空間を提供するノックアウトポットである。
【0089】
また、様々な実施形態がCO2隔離の方法(複数の場合もある)を提供する。天然ガスをオンサイトの改質器に供給し、水素燃料を発生させることができるとともに、CO2を改質プロセスから隔離することができる。同様の構成は、天然ガス燃料で稼働するシステムにも使用することができる。天然ガスの場合、水素燃料による実施形態の空冷凝縮器は、アノード排気を3つの別個の流れへと分離するように設計される分離を行うことが可能である深冷式、膜ベース、PSA、TSA、又は他の任意の既存の商業的プロセスと置き換えることができる。3つの別個の流れは、オフサイトのCO2使用又は隔離のための出荷可能な液体又はドライアイスとしての(又はシリンダー又はパイプラインにおいて輸送される高圧ガス/超臨界ガスとしての)CO2、液体の水生成物、H2及びCOのガス状混合物を含む。混合物の大部分は、各ホットボックスに導入される場合、天然ガス供給物と混合される(MFC弁後)燃料として、又は現場レベルで、現場レベルの天然ガスと混合される(MFC弁前)燃料として再循環させることができ、混合物の小部分は、ホットボックスの熱平衡を維持するために、ATOに直接供給することができる(必要な場合、これは、システムの寿命の後期にはゼロに下げてもよい)。
【0090】
任意の好適な深冷プラント技術を使用することができる。代替的に、深冷分離は、単段又は多段水素ポンプ(例えば、上述したPEM又はPBI型)によって置き換えることができる。水素ポンプの使用は、少量のCO及びH2を潜在的に伴うCO2及びH2Oのガス状混合物を生成し、その後、輸送又は使用のために液体CO2生成物を生成する更なる処理が続く。
【0091】
図5Aは、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システム500の概略図であり、
図5Bは、
図5Aの可能なガスセパレーターの構成要素の概略図である。システム500は、システム400と同様である。したがって、システム400との相違点のみを詳細に論じる。図示されていないが、システム500は、
図1~
図3のシステムにおいて示されている構成要素等の追加の構成要素を備えることができる。システム500は、水素又は炭化水素燃料で動作することができる。
【0092】
図5Aを参照すると、システム500は、ホットボックス302内に配置される内部燃料改質器123を備えることができる。システム500は、ベンチュリ装置334と、アノード再循環ブロワー434と、ガスセパレーター570と、燃料排気スプリッター558とを備えることもできる。
【0093】
スプリッター558は、燃料排気導管412、再循環導管414、及び燃料排気処理導管516に流体接続することができる。スプリッター558は、再循環導管414及び処理導管516を通る燃料排気の流れを選択的に制御するように構成される手動又は自動制御の三方弁とすることができる。代替的に、スプリッター558は、受動式スプリッターであってもよい。
【0094】
アノード再循環ブロワー434、ベンチュリ装置334、及び燃料排気スプリッター558は、再循環導管414に作動的に接続することができる。システムは、ホットボックス302内に配置されるアノード排気冷却器125に加えて又はそれに代えて、任意選択で、外部アノード排気冷却器560を備えることができる。例えば、外部アノード排気冷却器560は、外部空気、水、及び/又はCHPのための別の冷却流体を使用して燃料排気を冷却するように構成される熱交換器及び/又は凝縮器とすることができる。外部アノード排気冷却器560が凝縮器を含むか又は凝縮器である場合、燃料排気から水を除去することができる。アノード再循環ブロワー434は、再循環導管414及びベンチュリ装置334を通して燃料入口導管410に燃料排気を圧送するように構成することができる。
【0095】
ガスセパレーター570は、燃料排気を水、二酸化炭素、及び水素と一酸化炭素との混合物の別個の流れに分離するように構成することができる。水素と二酸化炭素との混合物は、システムへの天然ガス供給物が窒素及び/又はアルゴンを含む場合、少量の窒素及び/又はアルゴンを含む場合もある。ガスセパレーター570は、深冷セパレーター、圧力スイング吸着セパレーター、膜セパレーター、アミンスクラビングセパレーター、セレクソールセパレーター、又はそれらの任意の組合せ等の任意の好適なタイプのガスセパレーターを含むことができる。水流は、アノード排気冷却器560の冷却水として利用するのに十分に純粋であり得る。多くのホットボックス302に対して1つのガスセパレーター570のみがあっても、各ホットボックス302に対して1つのガスセパレーター570があってもよい。
【0096】
図5Bを参照すると、ガスセパレーター570は、熱交換器572と、主コンプレッサー574と、水セパレーター576と、CO
2凝縮器578と、蒸留カラム580とを備えることができる。熱交換器572は、燃料排気の温度を低減するように構成することができる。
【0097】
主コンプレッサー574は、冷却された燃料排気を圧縮し、それにより、第2の水流を発生させるように構成することができる。その後、燃料排気は、燃料排気から残留水を除去するように構成される水セパレーター576又は乾燥器に供給することができる。水セパレーター576は、例えば、温度スイング吸着法又は別の好適な方法を介して水を吸着する再生可能な吸水剤を備えることができる。
【0098】
次いで、乾燥した燃料排気をCO2凝縮器578に供給することができ、CO2凝縮器578は、燃料排気を、液体CO2を発生させるのに十分な温度まで冷却するように構成することができる。例えば、凝縮器578は、燃料排気を約-20℃~約-30℃の範囲の温度まで冷却するように構成することができる。
【0099】
その後、液体CO2及び残りのCO2ガスを含む燃料排気は、蒸留カラム580に供給することができる。蒸留カラム580は、複数の段、凝縮器、及び/又はリボイラーを含むことができる。いくつかの実施形態において、蒸留カラムは、燃料排気を約-50℃~約-90℃の範囲の温度に冷やすように構成することができる。蒸留カラム580は、水素流及び液体CO2流を出力するように構成することができる。これらの流れは、残量(例えば、約5%以下)のCO、CO2、及びN2を含むこともできる。蒸留カラムからの蒸気は、カラムへの供給物中のH2、CO、N2の本質的に全てを含むことができる。蒸気中のCO2は、蒸留カラムの凝縮器における温度及び圧力に左右され、CO2は5%~50%の範囲とすることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、二酸化炭素流は、ドライアイスとして貯蔵することができる。様々な実施形態において、水をCHP熱交換器436に供給することができる。水素及び一酸化炭素は、
図6に関してより詳細に記載されるように、スタック101及び/又はATO140に供給することができる。別の実施形態において、水素及び一酸化炭素は、水セパレーター576に供給されて、水セパレーター内の吸着材料に吸着された水を除去するストリッピングガスとして使用することができる。その後、水素及び一酸化炭素流を含む水は、水が動作を妨げないので、スタック101及び/又はATO140に供給することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、DC電力を必要とするガスセパレーター570の構成要素には、スタック101から出力されるDC電力によって直接給電することができる。
【0102】
水を気化させるのに追加の熱を供給することができ、及び/又は追加の外部燃料をATOに供給することができる。いくつかの実施形態において、WGS反応器128は、燃料排気導管412に作動的に接続することができる。
【0103】
システムは、SOFCスタック101の燃料排気と熱的に統合され得る燃料改質器123を備えることができる。改質及び/又は水性ガスシフト反応のための水は、ガスセパレーター570からの凝縮された水から供給することができる。
【0104】
図5Cは、
図5A及び
図5Bに示されている燃料電池システム500の代替的な実施形態の概略図である。この代替的な実施形態において、燃料排気処理導管516は、アノード排気冷却器125の上流のスプリッター413に流体接続される。したがって、燃料排気の一部が、アノード排気冷却器125に達することなく、スプリッター413からガスセパレーター570に直接供給される。この代替的な実施形態において、スプリッター558は省いてもよく、燃料排気の残りの部分は、アノード排気冷却器125から外部冷却器560に直接供給される。
【0105】
図6は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システム600の概略図である。システム600は、システム500と同様である。したがって、システム500との相違点のみを詳細に論じる。図示されていないが、システム600は、
図1~
図4のシステムにおいて示されている構成要素等の追加の構成要素を備えることができる。
【0106】
図6を参照すると、システム600は、水素再循環導管602と、ATO入口導管604と、スプリッター610とを備えることができる。再循環導管602は、セパレーター570を燃料入口導管410及び/又は混合器422に流体接続するように構成することができる。スプリッター610は、再循環導管602に作動的に接続することができる。ATO入口導管604は、スプリッター610の出口をATO140に流体接続することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、システム600は、ATO140及び導管415、432、及び/又は604に流体接続されるATO混合器650を備えることができる。ATO混合器650は、導管432からの空気排気と、導管415からの燃料排気及び/又は導管604からの水素と一酸化炭素との混合物とを混合するように構成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、バイパス導管415及びバイパス弁413は省くことができる。
【0108】
水素流は、ガスセパレーター570から出力導管602に出力することができる。水素流は、いくつかの実施形態において、少量の一酸化炭素を含む場合がある。スプリッター610は、水素流の少なくとも一部を再循環導管602からATO入口導管604に選択的に転向するように構成される手動又は自動制御の三方弁又は受動式スプリッターとすることができる。したがって、スプリッター610は、ATO140及び燃料入口導管410への水素の流れを選択的又は非選択的に制御するように構成することができる。例えば、スプリッター610は、システム600の定常状態動作中、ATO混合器650を介して、ホットボックス動作温度を維持するのに十分な量の混合ガスをATO140に転向するように構成することができる。フルパワーでは、熱安定性のためにATOに燃料を送る必要はない。燃料は、天然ガス中の窒素による窒素ガスの蓄積を防止するために、導管604を介してATOに送られる。システム始動中、燃料排気は、導管415を介してATO140に供給することができる。代替的に、導管415は省いてもよく、ATO入口導管420は、
図4に示されているように、再循環弁419を介して再循環導管414をATO140に流体接続することができる。ATO入口導管420及び再循環弁419は、ブロワー434の上流又は下流であるが、ベンチュリ装置334の上流で、再循環導管414に接続することができる。
【0109】
さらに、残りの水素及び一酸化炭素再循環流は、再循環導管602及び混合器422を通して燃料入口導管410内に供給され、燃料入口流(例えば、天然ガス等)と混合される。1つの実施形態において、再循環導管602を通して混合器422に供給される水素及び一酸化炭素再循環流は、混合器に供給される燃料入口流よりも高圧とすることができる。水素及び一酸化炭素再循環流が燃料入口流よりも高圧で供給されるため、水素及び一酸化炭素再循環流は、まずスタック101内で使用され、必要な燃料の総量を満たすように燃料入口流が混入される。燃料入口流の流量、並びに水素及び一酸化炭素再循環流の流量及び組成を測定することによって、システム600の現場に対する混入された燃料流の全体的な組成が計算され、制御のためにシステム600の各パワーモジュールに受け渡される。上述したように、各ガスセパレーター570に対して1つ以上のホットボックス302があってもよい。
【0110】
図7は、本開示の様々な実施形態に係る燃料電池システム700の概略図である。システム700は、システム600と同様である。したがって、システム600との相違点のみを詳細に論じる。図示されていないが、システム600は、
図6に示されている燃料処理構成要素、及び
図1~
図5に示されているシステム構成要素等の追加の構成要素を備えることができる。
【0111】
図7を参照すると、システム700は、アノード復熱器121と任意選択のアノード排気冷却器125との間に、燃料排気導管412に作動的に接続されるWGS反応器128を備えることができる。WGS反応器128とアノード排気冷却器125との組合せは、隔離のために
図5A、
図5B、及び
図6に示されているガスセパレーター570によって抽出可能なCO
2の量を増大させるように動作することができる。システム700は、燃料熱交換器121とスタック101との間に、燃料入口導管に作動的に接続される燃料改質器123を備えることもできる。
【0112】
システム700は、外部燃料源からATO混合器650に燃料を供給するように構成されるATO入口導管702を備えることもできる。システム700は、バイオガスを使用した動作を容易にするように構成される構成要素を更に備えることができる。特に、システムは、バイオガス入口導管704及びバイオガス予熱器熱交換器706を備えることができる。バイオガス入口導管704は、バイオガス源を混合器422に流体接続することができる。バイオガス予熱器熱交換器706は、ATO排気導管424内のATO排気を使用して、入口導管704内のバイオガスを加熱するように構成することができる。
【0113】
システム700は、スタック排気熱交換器708を備えることもできる。スタック排気熱交換器708は、ATO排気導管424内のATO排気を使用して空気入口導管430内の空気を予熱するように構成することができる。したがって、スタック排気熱交換器708は、カソード復熱器127に入る際に空気入口流温度が上昇するように、空気入口流を加熱することができる。したがって、カソード復熱器内の空気入口流を加熱するのに必要なATO排気からの熱が少なくなり、それにより、カソード復熱器127から熱交換器708に供給されるATO排気の温度が上昇する。したがって、バイオガスは、バイオガス予熱器熱交換器706内のより高温のATO排気によって、より高い温度まで加熱することができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、スプリッター413及び導管414は、ATO140が導管702を介して外部燃料源から燃料を受け取るので、システム700から省くことができる。
【0115】
図8は、本開示の様々な実施形態に係るホットボックス内に位置することができるWGS128の斜視図を示している。この実施形態において、水性ガスシフト反応器は、アノード復熱器(すなわち、燃料熱交換器)121内に位置する水性ガスシフト触媒コーティングを備える。例えば、触媒は、熱交換器121の1つ以上の温度ゾーンのフィン/波形をコーティングすることができる。例えば、WGS反応器128の触媒は、熱交換器121のフィン/波形の上部にコーティングすることができる。付加的又は代替的に、水性ガスシフト触媒を含む追加の構成要素が、スタンドアローンのサブアセンブリとして熱交換器121の下流に位置することができる。このアセンブリは、ATO140と同様に、触媒をコーティングしたフィンセクションから構成される環を備えることができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、外部燃料排気凝縮器460及び/又は外部アノード排気冷却器560が空冷凝縮器又は熱交換器を含む場合、システムハウジングから空気を供給することができる。換言すれば、ホットボックス及び/又は電力調整システム(例えば、DC/ACインバーター等のシステム出力電子機器)を収容するキャビネット(複数の場合もある)は、ブロワー又はファンによって周囲空気がキャビネット(複数の場合もある)を通って循環される、空冷キャビネットを含むことができる。この循環キャビネット空気は、外部燃料排気凝縮器460及び/又は外部アノード排気冷却器560を通過する燃料排気を冷却するように使用することができる。循環キャビネット空気は、カソード排気及びATO排気から分離されて保たれる。その後、燃料排気によって加熱される循環キャビネット空気は、建物暖房システム等のCHPシステムに供給することができる。
【0117】
システム400~700は、パワーモジュールあたりの電力がより多い、効率がより高い、及び潜在的に資本コストがより低いという、非限定的な利点をもたらす。
【0118】
後述する追加の実施形態は、(例えば、
図3に関して)上述したような1つ以上の水素ポンプ(350A、350B)による水素及び/又は二酸化炭素回収を伴う燃料電池システム、又は、CO
2及びH
2OからCO+H
2を分離するための凝集されたアノード排気を有する天然ガスに基づく燃料電池システム等、上述したシステムのうちの任意のものとともに使用することができる。
【0119】
1つの追加の実施形態において、天然ガスで動作する燃料電池システムでは、スプリッター(例えば、上述したスプリッター332)は、アノード復熱器121とアノード排気冷却器125との間で、アノード排気の一部をホットボックス302の外に向けるように、ホットボックス302内に位置する。
図9A~
図9Cは、ホットボックス302を示しており、ここで、アノード排気が、アノード復熱器121とアノード排気冷却器125との間で、少なくとも1つの水素ポンプ(350A及び/又は350B)へのアノード排気冷却器バイパスを介してホットボックスから出る。
【0120】
アノード排気スプリッターは、アノード排気の一部をアノード復熱器121とアノード排気冷却器125との間でホットボックス302の外部に向ける。この流れは、400℃~450℃等の高温でホットボックスを出る。これにより、アノード再循環に必要な流れのみがアノード排気冷却器を通ることから、アノード排気冷却器は影響を受けずに済む。これにより、冷却される(加熱ではなく)アノード排気がより低い温度(例えば、180℃~250℃)で水性ガスシフト反応器を通り、COを有意に低減させるとともに、H2及びCO2濃度を増大させることも可能になる。CO濃度の低減は、水素ポンプ(350A、350B)動作に対して有益である。さらに、CO2の回収率が増大し得る。
【0121】
別の追加の実施形態において、水素燃料で動作する燃料電池システムでは、水素がアノード再循環として各パワーモジュール(例えば、各ホットボックス)に戻されるか、又は現場への水素供給を伴う現場レベルで混合されるように戻される。上述したように、凝縮器後のアノード排気流から再循環される水素は、ホットボックスに戻される。代替的に、水素は、現場レベル(例えば、発電システム全体の現場)又は同じ入力/出力モジュールに接続されるパワーモジュールの組のレベル(例えば、ホットボックス)に戻すこともできる。再循環水素が任意の供給水素流と混合される場合、再循環水素は、適切な送達圧力、例えば15psigに圧縮すべきである。しかしながら、水素がホットボックスレベルに戻される場合、圧力は、アノード再循環に必要なレベル(0psig~2psig)に増大させればよい。アノード再循環ブロワー330における水の凝縮に伴う問題を回避するために、凝縮器後の水素を適度に(例えば、20℃~30℃だけ)再加熱することが望ましい場合がある。アノード再循環ブロワー330は、現場レベル、同じ入力/出力モジュールに接続されるパワーモジュールの組のレベル、又はホットボックスレベルとすることができる。
【0122】
システムが100%に近い燃料利用率で動作し、コーキングを回避するために所望の含水量を維持する必要がないことから、各ホットボックスレベルへのアノード再循環の正確な調量は必要ない。様々なホットボックスへの水素分配は、適度な配管絞り(例えば、オリフィス)の導入によって間接的に制御するか、又は制御可能な部材(例えば、比例ソレノイド弁)によって直接制御することができる。
【0123】
別の追加の実施形態において、天然ガス燃料で動作する燃料電池システムは、CO2を凝縮して分離する深冷技法を使用することができる。回収されたCO+H2は、CO2深冷分離の前に水を除去するために、吸着式乾燥器のストリッピングガスとして使用することができる。
【0124】
CO2凝縮による深冷式ガス分離システムでは、深冷熱交換器の管壁上の水の凍結を回避すべきである。水の凍結は、以下によって回避することができる。
(a)ガス流を0℃よりも僅かに高い温度(例えば、0℃~3℃)に冷却し、液体の水を可能な限り多く凝縮して除去する。
(b)低湿度の残留ガスを複数の吸着床のうちの1つに通過させ、実質的に全ての水を除去する。
(c)複数の吸着床のうちの1つ又は複数を一度に再生し、水を追い出す。典型的に、これは、加熱されたガスを吸着床に通過させ、水を追い出すことによって行われる。
(d)再生されたCO+H2は、ステップ(c)のためのガスとして使用することができる。そのために、ガスを吸着床(複数の場合もある)に導入して再生する前に加熱する必要があり得る。この加熱は、高温アノード排気の熱がガス分離領域の処理領域に流入することによって直接行うことができるか、又は間接的に行うことができる。
【0125】
代替的に、上記ステップ(b)において、ガスは、液体ベースの吸着剤/ストリッパー(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコールのオリゴマー)によって乾燥することができる。ストリッパーに必要な熱は、ステップ(d)において論じたように供給することができる。
【0126】
CO2は、圧縮、乾燥、及び深冷分離し、液体CO2を生成物としてもたらす一方で、CO2、CO、及びH2の流れを戻すことができる。ガスの戻り流は、システム内のホットボックスの全てに向かう必要はない。ホットボックスのうちの一部に戻ればよい。所望の場合、ガス貯蔵容器を戻りラインのバッファーとして追加して使用することができる。
【0127】
本明細書に記載の燃料電池システムは、所望に応じて、他の実施形態及び形態を有することができる。所望の場合、例えば、2002年11月20日に出願された米国特許出願第10/300,021号、2003年4月9日に出願された米国仮特許出願第60/461,190号、及び2003年5月29日に出願された米国特許出願第10/446,704号に記載されているような他の構成要素を追加してもよい。上記特許文献の全ては、その全体を参照により本明細書に援用する。さらに、任意の実施形態に記載されている及び/又は本件における任意の図に示されている任意のシステム要素又は方法ステップを、上述した他の好適な実施形態のシステム及び/又は方法において、その使用が明示的に記載されていなくても使用することができる。
【0128】
本発明の上述の記載は、例示及び説明の目的で提示されている。上述の記載は、網羅的であること又は本発明を開示されている正確な形態に限定することは意図せず、変更及び変形が、上記教示に照らして可能であるか又は本発明の実施から得ることができる。この記載は、本発明の原理及びその実用的な用途を説明するために選択されたものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることが意図される。
【外国語明細書】