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特開2023-8614耐衝撃層、その導入方法、およびこれを含む基材
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  • 特開-耐衝撃層、その導入方法、およびこれを含む基材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008614
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】耐衝撃層、その導入方法、およびこれを含む基材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230112BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230112BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230112BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20230112BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B27/20 Z
B32B17/10
C03C17/32 A
C03C23/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112306
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 泰 糾
(72)【発明者】
【氏名】申 東 旭
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH66
4F100EJ65
4F100EJ65A
4F100GB41
4F100JK10
4F100JK10A
4F100YY00A
4G059AA01
4G059AC16
4G059FA22
4G059FA29
4G059FB01
(57)【要約】
【課題】耐衝撃層、前記耐衝撃層を含む基材、および耐衝撃層の導入方法を提供する。
【解決手段】本発明は、シリコーン系重合体と有無機シラン化合物との重合反応により形成されたプライマーを含む耐衝撃層であって、耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、耐衝撃層、耐衝撃層を含む基材、および耐衝撃層の導入方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系重合体と有無機シラン化合物との重合反応により形成されたプライマーを含む耐衝撃層であって、
前記耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、耐衝撃層。
【請求項2】
前記耐衝撃層は、基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、
前記プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、
前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含む方法により基材に導入されることを特徴とする、請求項1に記載の耐衝撃層。
【請求項3】
前記プラズマ処理された耐衝撃層の上部に耐衝撃層を追加的に蒸着するステップ(D)と、
前記ステップ(D)により蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(E)と、をさらに含み、
前記耐衝撃層の全体厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、請求項2に記載の耐衝撃層。
【請求項4】
前記基材は、超薄膜強化ガラス(UTG)であることを特徴とする、請求項2に記載の耐衝撃層。
【請求項5】
前記ステップ(A)、およびステップ(C)のうちの少なくとも1つ以上のステップで使用されるプラズマは、アルゴン、窒素、および酸素からなる群より選択される1種以上の混合ガスプラズマであることを特徴とする、請求項2に記載の耐衝撃層。
【請求項6】
前記ステップ(A)、およびステップ(C)のうちの少なくとも1つ以上のステップで使用されるプラズマは、10-4~10-7Torrに維持される装置で、RFパワー700~800Wの電力を適用することにより形成される混合ガスプラズマであることを特徴とする、請求項2に記載の耐衝撃層。
【請求項7】
前記ステップ(B)は、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、およびALD(Atomic Layer Deposition)からなる群より選択される1つ以上の工程で行われることを特徴とする、請求項2に記載の耐衝撃層。
【請求項8】
前記シリコーン系重合体は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、およびフェニル基からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐衝撃層。
【請求項9】
前記有無機シラン化合物は、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、アルコキシ基、ハロゲン基、メルカプト基、およびスルフィド基からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐衝撃層。
【請求項10】
前記有無機シラン化合物は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ-メトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリジメトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ジ-、トリ-またはテトラアルコキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、クロロトリメチルシラン、卜リクロロエチルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロフェニルシラン、卜リクロロビニルシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐衝撃層。
【請求項11】
基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、
前記プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、
前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含み、
前記蒸着された耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、耐衝撃層の導入方法。
【請求項12】
前記プラズマ処理された耐衝撃層の上部に耐衝撃層を追加的に蒸着するステップ(D)と、
前記ステップ(D)により蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(E)と、をさらに含み、
前記耐衝撃層の全体厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、請求項11に記載の耐衝撃層の導入方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の耐衝撃層を含む基材。
【請求項14】
前記耐衝撃層は、基材の少なくとも1つ以上の面に形成されることを特徴とする、請求項13に記載の耐衝撃層を含む基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃層、その導入方法、およびこれを含む基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ、半導体集積回路などの多くの電子機器は、外部衝撃による電子機器あるいは部品の損傷防止のために衝撃吸収あるいは緩和のための構成を含んでいる。特に、スマートフォン、タブレットPCなどのタッチセンサ機能を有するディスプレイが商用化されるにつれ、ディスプレイなどを外部衝撃やスクラッチ(scratch)などから保護するための保護フィルムなどが広く普及している。
【0003】
また、最近、技術の開発によりディスプレイの薄型化および軽量化への要求が高まるにつれ、このような要求を満たすために、ディスプレイ上に、保護板を用いずに直接衝撃を吸収するためのシートあるいはフィルムを用いた衝撃吸収機能層を提供する技術が開発されており、一般的に用いられる保護フィルムとして、PET(Polyethylene Terephthalate)を含む様々な構造の積層により衝撃を緩和する方式が使用されている。その理由は、様々な光学的用途に用いられるプラスチックのうちPETが比較的加工が容易でかつ価格が安いからである。
【0004】
しかし、PETは、透過率がガラスより低く、表面硬度が3H(鉛筆硬度(Pencil Hardness))程度と比較的低いという欠点があり、実生活で小銭などによって引っ掻かれやすい問題点があった。このような問題を解決するために、韓国登録特許第10-1517681号公報は、アクリル板で形成されるベース層;ハードコート層;衝撃緩和のためのPET層;UV接着層;粘着層を含むディスプレイ保護用液晶保護フィルムを開示しているが、ベース層は0.1mm~0.3mm、ハードコート層は0.01mm~0.02mm、PET層は0.07mm~0.08mmの厚さを有することにより、ディスプレイの小型化、薄型化という要求に合わず、過度に厚い問題点があった。
【0005】
このような問題を解決するために、韓国公開特許第10-2008-0065484号公報は、大きさが1μm以下の微細気泡が衝撃吸収層1mmあたり100個以下に含まれている耐衝撃性衝撃吸収層を開示しているが、厚さが30μm未満の場合には、衝撃吸収層に到達した衝撃が完全に吸収されるには衝撃吸収層の厚さが足りないため、衝撃吸収層の次に位置する層に吸収できなかった衝撃が伝達され、その結果、先行文献のフィルムが保護しようとするディスプレイ装置や窓ガラス、その他の透明基材などが破損する原因になりうることを開示しており、依然として厚さが30μm以上と厚い問題点が存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2008-0065484号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-1517681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題を解決するために、本発明は、コーティング層と基材との間の応力差を減少させることにより、基材の耐衝撃性を強化するための手段として、シリコーン系と有無機シラン化合物との重合反応により形成されたプライマーを含む耐衝撃層を、前記先行技術より薄い厚さである300nm~500nmに塗布することで、薄い厚さでも耐衝撃性を強化するための耐衝撃層、前記耐衝撃層を基材に導入する方法、およびこれを含む基材を提供することを、発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリコーン系重合体と有無機シラン化合物との重合反応により形成されたプライマーを含む耐衝撃層であって、前記耐衝撃層の厚さは300nm~500nmである耐衝撃層に関する。
【0009】
本発明の第1観点において、前記耐衝撃層は、基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、前記プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含む方法により基材に導入されるものであってもよい。
【0010】
本発明の第2観点において、前記プラズマ処理された耐衝撃層の上部に耐衝撃層を追加的に蒸着するステップ(D)と、前記ステップ(D)により蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(E)と、をさらに含み、前記耐衝撃層の全体厚さは300nm~500nmであってもよい。
【0011】
本発明の第3観点において、前記耐衝撃層が塗布される基材は、超薄膜強化ガラス(UTG)であってもよい。
【0012】
本発明の第4観点において、前記ステップ(A)、およびステップ(C)のうちの少なくとも1つ以上のステップで使用されるプラズマは、アルゴン、窒素、および酸素からなる群より選択される1種以上の混合ガスプラズマであってもよい。
【0013】
本発明の第5観点において、前記ステップ(A)、およびステップ(C)のうちの少なくとも1つ以上のステップで使用されるプラズマは、10-4~10-7Torrに維持される装置で、RFパワー700~800Wの電力を適用することにより形成される混合ガスプラズマであってもよい。
【0014】
本発明の第6観点において、前記ステップ(B)は、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、およびALD(Atomic Layer Deposition)からなる群より選択される1つ以上の工程で行われるものであってもよい。
【0015】
本発明の第7観点において、前記シリコーン系重合体は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、およびフェニル基からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0016】
本発明の第8観点において、前記有無機シラン化合物は、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、アルコキシ基、ハロゲン基、メルカプト基、およびスルフィド基からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0017】
本発明の第9観点において、前記有無機シラン化合物は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ-メトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリジメトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ジ-、トリ-またはテトラアルコキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、クロロトリメチルシラン、卜リクロロエチルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロフェニルシラン、卜リクロロビニルシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0018】
また、本発明は、基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、前記プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含み、前記蒸着された耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、耐衝撃層の導入方法に関する。
【0019】
本発明の第10観点において、前記プラズマ処理された耐衝撃層の上部に耐衝撃層を追加的に蒸着するステップ(D)と、前記ステップ(D)により蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(E)と、をさらに含み、前記耐衝撃層の全体厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、耐衝撃層の導入方法であってもよい。
【0020】
また、本発明は、上述した耐衝撃層を含む基材に関する。
本発明の第11観点において、前記耐衝撃層は、基材の少なくとも1つ以上の面に形成されることを特徴とする、耐衝撃層を含む基材であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の耐衝撃層の導入方法により導入された耐衝撃層は、先行技術の耐衝撃層の厚さが10μm~500μm程度の厚さを有するのに対し、300nm~500nmの厚さを有することにより、相対的に薄い厚さにもかかわらず、基材とコーティング層との間の応力差を減少させる効果により、外部衝撃による表面割れの現象を防止することができる。
【0022】
また、基材あるいは基板の外部表面に直接的に構成できるという点から、基材あるいは基板の下部に位置する先行技術に比べて、基材あるいは基板の耐衝撃性の向上に大きく寄与できる効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態である、耐衝撃層が塗布されたUTGの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、超薄膜強化ガラス(UTG)の表面割れ防止のための耐衝撃層の導入方法、前記導入方法により導入された耐衝撃層、およびこれを含む基材に関する。
【0025】
具体的には、本発明の一実施形態として、シリコーン系重合体と有無機シラン化合物との重合反応により形成されたプライマーを含む耐衝撃層であって、前記耐衝撃層の厚さは300nm~500nmである耐衝撃層に関する。
【0026】
具体的には、本発明の一実施形態として、基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含み、前記蒸着された耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであることを特徴とする、耐衝撃層の導入方法、および前記導入方法により導入された耐衝撃層を含む基材に関する。
【0027】
以下、本発明の利点および特徴、そしてそれを達成するための方法は、添付した図面とともに詳細に後述する実施例を参照すれば明確になるであろう。
【0028】
<耐衝撃層>
本発明の耐衝撃層は、衝撃吸収のためのプライマーを含み、前記プライマーは、シリコーン系重合体と有無機シラン化合物との重合反応により形成されたものであってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態として、前記耐衝撃層は、基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、前記プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含む方法により基材に導入される耐衝撃層であって、耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態として、前記プラズマ処理された耐衝撃層の上部に耐衝撃層を追加的に蒸着するステップ(D)と、前記ステップ(D)により蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(E)と、をさらに含み、前記耐衝撃層の全体厚さは300nm~500nmであってもよい。
【0031】
前記ステップ(A)~ステップ(E)は、後述する<耐衝撃層の導入方法>に記載された各ステップにおけるものと同一であってもよい。
【0032】
シリコーン系重合体
本発明のシリコーン系重合体は、衝撃を吸収する機能を有するものであれば特に限定されず、1つまたは複数の実施形態において、多様な分子量を有し、線状または環状の分枝鎖または架橋構造を有する任意のシリコーン重合体またはオリゴマーを含み、適宜官能化されたシラン類の重合反応および/または重縮合反応により得られる。一例として、ケイ素原子が酸素原子によって一緒に連結された主要繰り返し単位(シロキサン結合≡Si-O-Si≡)で必須として構成されるものを含み、場合によっては、置換された炭化水素ラジカルが炭素原子を介して前述したケイ素原子に直接連結されているものを含むが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明において、前記シリコーン系重合体は、1つまたは複数の実施形態において、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、およびフェニル基から選択される1つ以上の官能基を有する変性シリコーン重合体、またはその組み合わせなどであってもよく、好ましくは、メチルトリメトキシシランの重合体であってもよい。
【0034】
有無機シラン化合物
本発明の有無機シラン化合物は、硬度および表面スクラッチ強化の役割を果たすものであれば特に限定されず、シリコンと水素の化合物であるシランを含む化合物であって、一例として、メチルシラン(SiH)、エチルシラン(Si)、および一部高級シリコン水素化合物を含めた多様な化合物を含む。
【0035】
本発明において、前記有無機シラン化合物は、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、アルコキシ基、ハロゲン基、メルカプト基、スルフィド基からなる群より選択される1つ以上の機能性基を含み、より詳しくは、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ-メトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリジメトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ジ-、トリ-またはテトラアルコキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、クロロトリメチルシラン、卜リクロロエチルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロフェニルシラン、卜リクロロビニルシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくは、アミノプロピルトリエトキシシラン、またはこれを含む組み合わせであってもよい。
【0036】
添加剤
また、本発明の耐衝撃層に含まれるプライマーは、添加剤をさらに含むことができ、具体的には、架橋剤、触媒などのような追加の製剤が添加剤としてさらに含まれてもよい。
【0037】
本発明において、前記耐衝撃層は300~600nmの厚さに形成され、300nm~500nmに形成されることがより好ましい。本発明の耐衝撃層が300nmの厚さ以下に形成される場合、基材の衝撃を保護する効果を提供することができず、600nmの厚さ以上に形成される場合、一般的に厚さが増加するほど衝撃を保護する効果が増加するのとは異なり、むしろ衝撃を保護する効果が低下するので、好ましくない。
【0038】
<耐衝撃層の導入方法>
本発明の耐衝撃層の導入方法は、基材の表面をプラズマ処理するステップ(A)と、前記プラズマ処理された基材の上部に耐衝撃層を蒸着するステップ(B)と、前記蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(C)と、を含み、前記蒸着された耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであってもよい。
【0039】
また、本発明の耐衝撃層の蒸着回数は、単数または複数でも構わず、1つまたは複数の実施形態において、前記プラズマ処理された耐衝撃層の上部に耐衝撃層を追加的に蒸着するステップ(D)と、前記ステップ(D)により蒸着された耐衝撃層をプラズマ処理するステップ(E)と、をさらに含み、前記耐衝撃層の全体厚さは300nm~500nmであってもよい。
【0040】
本発明の前記ステップ(A)は、後のステップで耐衝撃層が塗布される基材の表面改質およびCleaningの目的のために行われるものであってもよいし、1つまたは複数の実施形態において、100秒~500秒間処理されるものであってもよい。
【0041】
本発明の前記ステップ(B)において、蒸着される耐衝撃層の厚さは300nm~500nmであってもよいし、複数の蒸着により耐衝撃層を蒸着する場合、具体的には、ステップ(D)の耐衝撃層をさらに蒸着する場合には、耐衝撃層の全体厚さが300nm~500nmであってもよいし、この時、前記耐衝撃層それぞれの厚さは適宜選択可能であり、好ましくは、50nm~250nmから選択されるものであってもよい。
【0042】
本発明の前記ステップ(C)は、粗度向上、ヘイズ(Haze)改善、および表面クリーニング(Cleaning)の目的で行われるものであってもよいが、ステップ(D)の耐衝撃層を追加的に蒸着する場合には、耐衝撃層間の密着力強化の目的で行われるものであってもよい。
【0043】
本発明の前記ステップ(E)は、粗度向上、ヘイズ(Haze)改善、および表面クリーニング(Cleaning)の目的で行われるものであってもよい。
【0044】
前記ステップ(C)およびステップ(E)は、それぞれ10秒~50秒、好ましくは、10秒~30秒間行われるものであってもよい。
【0045】
本発明の前記ステップ(A)、ステップ(C)、およびステップ(E)のうちの少なくとも1つ以上のプラズマ処理ステップで使用されるプラズマは、アルゴン、窒素、および酸素からなる群より選択される1種以上の混合ガスプラズマであってもよい。
【0046】
本発明の前記ステップ(A)、ステップ(C)、およびステップ(E)のうちの少なくとも1つ以上のプラズマ処理ステップで使用されるプラズマは、常温で、10-4~10-7Torrに維持される装置で、RFパワー700~800Wの電力を適用することにより形成される混合ガスプラズマであってもよい。
【0047】
本発明の前記ステップ(B)、およびステップ(D)のうちの少なくとも1つ以上の耐衝撃層を蒸着するステップは、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、およびALD(Atomic Layer Deposition)からなる群より選択される1つ以上の工程で行われるものであってもよい。
【0048】
<耐衝撃層を含む基材>
本発明の耐衝撃層を含む基材は、上述した耐衝撃層を、基材の少なくとも1つ以上の面、より具体的には、上部および/または下部に含む基材を含む。上述した耐衝撃層に関する記載がすべて同一に適用される。前記基材は、上述した耐衝撃層を含むことにより、外部衝撃による表面割れの現象などが防止可能であり、特に、耐衝撃層の厚さが相対的に薄い厚さにもかかわらず、基材とコーティング層との間の応力差を減少させる効果により、外部衝撃から基材を保護することができる。
【0049】
本発明の耐衝撃層の基材として使用可能な物質には、特に限定されるものではないが、超薄膜強化ガラス(UTG)の保護用に使用されるものが好ましい。
【0050】
以下、具体的に本発明の実施例を記載する。しかし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたり同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0051】
また、本明細書で使われた用語は実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は、文章で特に言及しない限り、複数形も含む。明細書で使われる含む(comprises)および/または含む(comprising)は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子以外の1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない意味で使う。
【実施例0052】
以下、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。
<製造例>
まず、超薄膜強化ガラス(UTG)に対する蒸着処理機の設定(Setting)数値を6回~10回に設定した後、10mm×70mmの大きさの超薄膜強化ガラス(UTG)を用意し、これを常温、10-5Torr下、プラズマ処理をして、有機汚染物の洗浄および表面改質に使用した。
【0053】
プラズマ処理は、10-5Torr下、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとをそれぞれ25sccm、30sccmの混合ガスとして使用し、RF Power700~800Wの印加電力でプラズマ形成を誘導して、15mm/secの速度で300秒間往復処理した。
【0054】
以後、耐衝撃層を蒸着するために、CVD(Chemical Vapor Deposition)を利用し、25~80℃の温度で、10-5Torrの圧力下、化学反応のための媒体としてはOを使用し、流量は100~1000sccmとした。
【0055】
前記耐衝撃層を蒸着した後、前記プラズマ処理と同一の条件で、10~30秒間プラズマ処理して、耐衝撃層間の密着力を強化し、以後、前記耐衝撃層と同様の方法で耐衝撃層を追加的に蒸着し、前記と同様に10~30秒間プラズマ処理して、耐衝撃層を含む基材を作製した。
【0056】
<実施例および比較例>
前記製造例により耐衝撃層を含む基材を作製し、下記表1に記載の耐衝撃層の厚さで、実施例の耐衝撃層と比較例の耐衝撃層とを作製した。
【0057】
下記表1に示す耐衝撃層の厚さは、耐衝撃層の全体厚さの合計を意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
<実験例>
下記の方法で前記表1の耐衝撃層の厚さに応じた基材の破壊半径、ペンドロップ(Pendrop)を評価して、下記表2に示した。
【0060】
(1)破壊半径
前記実施例および比較例に相当する耐衝撃層を含む基材を10mm×70mmのSizeで用意し、基準速度は20mm/minに設定し、破壊半径は1mm~30mm(1R以下)に設定する。この時、超薄膜強化ガラス(UTG Glass)が破壊される位置での半径を測定して、下記表2に示した。
【0061】
(2)ペンドロップ
前記表1のような実施例と比較例の基材に対してペンドロップ試験を行った。ペンドロップ試験は、ペンチップの直径が1.0mm、重さが3.6gのBig Pen Round Stic Mediumペンを落下の高さを異ならせて基材上に自由落下させて行った。
【0062】
前記表2は、ペンドロップを行った時、基材がペンドロップによって破損の起こる限界高さを測定して、下記表2に示した。限界高さが大きいほど基材が外部衝撃によく耐えられることを表す。
【0063】
【表2】
【0064】
前記方法による評価を示した表2を参照すれば、本発明の耐衝撃層の導入方法により、300nm~500nmで導入された耐衝撃層を含む実施例1~3と、当該範囲を外れる比較例1~6とを比較すれば、ペンドロップ試験の結果を通して、実施例1~3が、比較例1~6より増加した耐衝撃性を示していることが分かり、特に、耐衝撃層を含まない比較例1および適正な厚さ未満の耐衝撃層を含む比較例2~3の場合に比べて、耐衝撃性がはるかに向上したことを確認することができる。
【0065】
また、耐衝撃層の厚さが本願発明の適正な厚さを超える比較例4~6の場合にも、耐衝撃性が低下することを確認可能で、当該数値範囲で最も向上した耐衝撃性を示していることを確認することができ、さらに、比較例4~6は、過度に厚い耐衝撃層を含んでいて、破壊半径の面から、実施例1~3に比べて不良な効果を示していることを確認することができる。
図1