(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086146
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】等方性スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 25/00 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
H01H25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200464
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】396020132
【氏名又は名称】株式会社システック
(72)【発明者】
【氏名】香高 孝之
(72)【発明者】
【氏名】山下 伊智朗
(72)【発明者】
【氏名】本間 博和
【テーマコード(参考)】
5G031
【Fターム(参考)】
5G031AS16H
5G031AS23F
5G031AS23H
5G031AS23Z
5G031KS07
5G031KS10
5G031KS24
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、簡単な構成で、360°面内のいずれの方向からの押圧によるスライドにも同じく動作する等方性スイッチを提供することである。
【解決手段】
本発明の等方性スイッチは、中心を同じにする二つの導電性円環が、所定の距離を有して配置され、導電性円環は、一方は、固定基台に固定した固定導電性円環であり、他方は、固定導電性円環の面に平行に移動可能な可動導電性円環であり、可動導電性円環を、導電性円環の面に平行な押圧で移動することで両導電性円環間の電気的特性がどの方向からの押圧でも等しく変化する構成となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心を同じにする二つの導電性円環が所定の距離を有して配置され、前記導電性円環は、一方は、固定基台に固定した固定導電性円環であり、他方は、前記固定導電性円環の面に平行に移動可能な可動導電性円環であり、前記可動導電性円環を前記固定導電性円環の面に平行な移動をさせ、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環間の電気的特性が、どの方向からの押圧でも等しく変化する構成とし、前記固定導電性円環を支持する下部支持具と、前記可動導電性円環を支持する上部支持具とを有し、前記下部支持具と前記上部支持具は、両者間に拡縮性且つ復元性である拡縮復元部材を備えて互いに嵌り合い、押圧により拡縮し、前記固定導電性円環に対し前記可動導電性円環が移動し、前記押圧がなくなれば、復元するものであることを特徴とする等方性スイッチ。
【請求項2】
前記可動導電性円環を直接的又は間接的に把持する把持体を備え、前記把持体を押圧することで、前記可動導電性円環の前記平行な移動を行わせることを特徴とする請求項1記載の等方性スイッチ。
【請求項3】
前記上部支持具と前記把持体は、別体構成で接続されているか、又は、一体構成で前記上部支持具と前記把持体の機能を兼ねるものであることを特徴とする請求項2記載の等方性スイッチ。
【請求項4】
前記固定導電性円環と前記可動導電性円環は、内径と外径が各々同じで、両者の円環間が所定の距離だけ離れるか、又は、誘電性の薄層である誘電薄層を介することで静電容量を形成し、前記押圧により前記可動導電性円環が移動すれば、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環の重なり量が減ることで前記静電容量が減少することにより、前記静電容量又は前記静電容量の変化量に所定の閾値を用いて電気的に判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の等方性スイッチ。
【請求項5】
前記固定導電性円環と前記可動導電性円環は、径が違うことで、一方に他方が、所定の距離の間隔で内包され、前記可動導電性円環の移動により、同一面を介して両者が接触して導通する接触スイッチになっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の等方性スイッチ。
【請求項6】
前記固定導電性円環と前記可動導電性円環が、各々2個の電気端子を有するコイルであり、一方の前記コイルに交流電流を流し、発生する電磁界を他方の前記コイルで検出することで、前記可動導電性円環の動きによる他方の前記コイルの電磁界強度を検出し、電磁界強度又は前記電磁界強度の変化量に所定の閾値を用いて電気的に判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の等方性スイッチ。
【請求項7】
前記把持体途中に、衝撃緩和性の介在体を入れたことで、前記導電性円環の面の直角な方向からの押圧を緩和するものであることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1つに記載の等方性スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、360°面内のいずれの方向からの押圧による移動にも同じく動作する等方性スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のスイッチを示す図である。5-Aのものは、特許文献1に示されているが、スイッチ操作部材20の押し下げにより可動電極22と電極26.27間の電極間距離が大きくなり静電容量が減少する。電極間距離を変えているもので、等方向性はない。
5-Bのものは、特許文献2に示されているが、上下の側面で固定電極15と可動電極13が向き合っていて、上下方向の押し下げにより、両電極の向き合った面積が変わり静電容量が変わることを利用している。等方向性はない。
5-Cのものは、特許文献3に示されているが、ケース4内で摺動機構6を摺動させると金属可動接触素子9がケース4の底面にある固定端子51に接触する。等方向性はない。
5-Dのものは、特許文献4に示されているが、押し入力に対して水平にスライドする入力部があり、その移動により、垂直方向にある固定電極と可動電極の距離が変わる仕組みを有している。即ち、水平にスライドすると、可動電極が垂直方向で固定電極に近づき、静電容量が大きくなる。水平のスライドから可動電極を垂直方向で接近させる仕掛けは複雑で安定な動作を維持するのは難しいと思われる。
図6は、従来のスイッチの他の例を示す図である。
6-Aのものは、特許文献5に示されているが、上側電極21と分割された下側電極が向き合い、静電容量素子を形成している。両者の間に移動体基部5b又は移動体5が介在物としてあり、この介在物が操作体3の横移動により、上側電極21と下側電極の間に入る又は抜けるようになっている。下側電極は分割されているので、複数の静電容量があることになり、介在物の移動により、一方の静電容量が増えれば、反対側の静電容量は減ることになり、下側電極は分割数が多ければ、各静電容量の値からどの方向からどれだけ操作体3の横移動があったかを求めることができる。構成が、複雑なだけに、スイッチというより、横移動のアナログ量を測定する素子になっている。
それ以外に、他の例と違う点は、静電容量を構成する電極が両者とも固定電極になり、その代り、移動する介在物を用いたことである。
6-Bのものは、特許文献6に示されているが、下ケース2に複数の固定電極3aから3dがあり、上ケース1も固定電極として、両者の静電容量を、両者間に位置する可動電極6をスライドさせる構造になっているので、6-Aの介在物が可動電極6に対応していて、全体構成が、6-Aと全く同じである。構成が、複雑なだけに、スイッチというより、横移動のアナログ量を測定する素子になっていることは同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-173068
【特許文献2】特開2021-140901
【特許文献3】特開2006-209975
【特許文献4】特開2008-146417
【特許文献5】特開2016-207397
【特許文献6】特開2003-84916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の課題は、簡単な構成で、360°面内のいずれの方向からの押圧による移動にも同じく動作する等方性スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下請求項に沿い記述する。
請求項1記載の発明は、等方性スイッチであって、
中心を同じにする二つの導電性円環が所定の距離を有して配置され、前記導電性円環は、一方は、固定基台に固定した固定導電性円環であり、他方は、前記固定導電性円環の面に平行に移動可能な可動導電性円環であり、前記可動導電性円環を前記固定導電性円環の面に平行な移動をさせ、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環間の電気的特性が、どの方向からの押圧でも等しく変化する構成とし、前記固定導電性円環を支持する下部支持具と、前記可動導電性円環を支持する上部支持具とを有し、前記下部支持具と前記上部支持具は、両者間に拡縮性且つ復元性である拡縮復元部材を備えて互いに嵌り合い、押圧により拡縮し、前記固定導電性円環に対し前記可動導電性円環が移動し、前記押圧がなくなれば、復元するものであることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の等方性スイッチにおいて、
前記可動導電性円環を直接的又は間接的に把持する把持体を備え、前記把持体を押圧することで、前記可動導電性円環の前記平行な移動を行わせることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の等方性スイッチにおいて、
前記上部支持具と前記把持体は、別体構成で接続されているか、又は、一体構成で前記上部支持具と前記把持体の機能を兼ねるものであることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の等方性スイッチにおいて、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環は、内径と外径が各々同じで、両者の円環間が所定の距離だけ離れるか、又は、誘電性の薄層である誘電薄層を介することで静電容量を形成し、前記押圧により前記可動導電性円環が移動すれば、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環の重なり量が減ることで前記静電容量が減少することにより、前記静電容量又は前記静電容量の変化量に所定の閾値を用いて電気的に判定することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の等方性スイッチにおいて、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環は、径が違うことで、一方に他方が、所定の距離の間隔で内包され、前記可動導電性円環の移動により、同一面を介して両者が接触して導通する接触スイッチになっていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の等方性スイッチにおいて、前記固定導電性円環と前記可動導電性円環が、各々2個の電気端子を有するコイルであり、一方の前記コイルに交流電流を流し、発生する電磁界を他方の前記コイルで検出することで、前記可動導電性円環の動きによる他方の前記コイルの電磁界強度を検出し、電磁界強度又は前記電磁界強度の変化量に所定の閾値を用いて電気的に判定することを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項2から請求項6のいずれか1つに記載の等方性スイッチにおいて、前記把持体途中に、衝撃緩和性の介在体を入れたことで、前記導電性円環の面の直角な方向からの押圧を緩和するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の様に構成されているので、本発明による等方性スイッチでは、360°面内のいずれの方向からの押圧による移動にも同じく動作する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明にかかる等方性スイッチの一実施態様を示す図である。
【
図2】本発明にかかる等方性スイッチの他の実施態様を示す図である。
【
図3】本発明にかかる等方性スイッチの他の実施態様を示す図である。
【
図4】本発明にかかる等方性スイッチの実施態様の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる等方性スイッチ100は、中心を同じにする二つの導電性円環110が、所定の距離を有して配置され、導電性円環110は、一方は、固定基台120に固定した固定導電性円環110Aであり、他方は、固定導電性円環110Aの面に平行に移動可能な可動導電性円環110Bであり、可動導電性円環110Bを直接的又は間接的に把持する把持体130を押圧することで、可動導電性円環110Bを固定導電性円環110Aの面に平行な移動をさせ、固定導電性円環110Aと可動導電性円環110B間の電気的特性が、どの方向からの押圧でも等しく変化する構成とし、
更に、固定導電性円環110Aを支持する下部支持具140Aと、可動導電性円環110Bを支持し、把持体130に接続した上部支持具140Bとを有し、下部支持具140Aと上部支持具140Bは、両者間にバネ、クッション等の拡縮性且つ復元性である拡縮復元部材150を備えて互いに嵌り合い、押圧により拡縮し、固定導電性円環110Aに対し可動導電性円環110Bが移動し、押圧がなくなれば、復元するものである。
尚、上部支持具140Bと把持体130は、別体構成であっても、一体構成で両者の機能を兼ねるものであってもよい。
図1は、本発明にかかる等方性スイッチの一実施態様を示す図である。
1-Aは斜視図、1-Bは断面図を示す。
この例は、固定導電性円環110Aと可動導電性円環110Bは、内径と外径が各々同じで、両者の円環間が所定の距離だけ離れるか、又は、誘電性の薄層である誘電薄層160を介することで静電容量を形成し、可動導電性円環110Bが移動すれば、固定導電性円環110Aと可動導電性円環110Bの重なり量が減るので、静電容量が減少することを利用して両者間の静電容量の変化を検出するものである。静電容量又はその変化量に所定の閾値を用いて電気的に判定し、スイッチとして動作させる。
【0015】
図2は、本発明にかかる等方性スイッチの他の実施態様を示す図である。
図1との違いを述べる。固定導電性円環110Aと可動導電性円環110Bは、径が違い、一方に他方が、所定の距離の間隔で内包され、可動導電性円環110Bの移動により、同一面を介して両者が接触して導通する接触スイッチになっている。そのため、固定導電性円環110Aと可動導電性円環110Bは、同一面の表裏にあり離間する距離はなく、誘電性の薄層160の様な介在物もない。
【0016】
図3は、本発明にかかる等方性スイッチの他の実施態様を示す図である。
図1及び
図2との違いを述べる。固定導電性円環110Aと可動導電性円環110Bには、
図1及び
図2の場合は、各々、1個の電気端子が描かれていた。これは、前者が静電容量、後者が、電気端子の接触を検出するものだからである。これらに対して、
図3では、固定導電性円環110Aと可動導電性円環110Bが、各々2個の電気端子310A、310Bを有して描かれている。これは、コイルを意味している。一方のコイルに交流電流を流し、それにより発生する電磁界を他方のコイルで検出する。可動導電性円環110Bが動けば、他方のコイルに鎖交する電磁力線の量が変化し検出される電磁界強度が変わるので、電磁界強度又はその変化量に所定の閾値を用いて電気的に判定し、スイッチとして動作させる。
【0017】
図4は、本発明にかかる等方性スイッチの実施態様の変更例を示す図である。
図1から
図3の等方性スイッチに共通して、把持体130の途中に、衝撃緩和性の介在体410を入れた例であり、導電性円環110の面の直角な方向(図で、上方向)からの意図しない押圧を緩和するものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように本発明にかかる等方性スイッチは、簡単な構成で、360°面内のいずれの方向からの押圧によるスライドにも同じく動作するので、産業上利用して極めて好都合である。
【0019】
100 等方性スイッチ
110 導電性円環
110A 固定導電性円環
110B 可動導電性円環
120 固定基台
130 把持体
140A 下部支持具
140B 上部支持具
150 拡縮復元部材
160 誘電薄層
310A、310B 電気端子
410 介在体