(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086147
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 17/00 20060101AFI20230615BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230615BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230615BHJP
【FI】
G06T17/00
G06T7/00 C
G06T7/60 150D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200465
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 義実
(72)【発明者】
【氏名】井上 隼多
(72)【発明者】
【氏名】堀 涼
(72)【発明者】
【氏名】野原 裕太
(72)【発明者】
【氏名】川西 康友
【テーマコード(参考)】
5B080
5L096
【Fターム(参考)】
5B080AA01
5B080CA00
5B080FA00
5B080GA00
5L096AA09
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA08
5L096FA09
5L096FA13
5L096FA23
5L096FA62
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA03
5L096GA51
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】器物を対象として、熟練した技術を要さず、効率的にかつバラツキを抑えて、器物形状図面を自動的に作成する。
【解決手段】器物の形状を少なくとも器物の断面の輪郭線と器物の表面上の稜線とを用いて表す器物形状図面を生成するための情報処理装置は、断面取得部と、微分値取得部と、特定点抽出部と、図面生成部とを備える。断面取得部は、器物の断面の輪郭線を示す断面データを取得する。微分値取得部は、輪郭線上の各点における1階微分値および2階微分値を取得する。特定点抽出部は、1階微分値および2階微分値に基づき、輪郭線上の凹点または凸点である特定点を抽出する。図面生成部は、特定点を通る水平線を稜線として設定し、稜線と輪郭線とに基づき器物形状図面を生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器物の形状を少なくとも前記器物の断面の輪郭線と前記器物の表面上の稜線とを用いて表す器物形状図面を生成するための情報処理装置であって、
前記器物の前記断面の前記輪郭線を示す断面データを取得する断面取得部と、
前記輪郭線上の各点における1階微分値および2階微分値を取得する微分値取得部と、
前記1階微分値および前記2階微分値に基づき、前記輪郭線上の凹点または凸点である特定点を抽出する特定点抽出部と、
前記特定点を通る水平線を前記稜線として設定し、前記稜線と前記輪郭線とに基づき前記器物形状図面を生成する図面生成部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記微分値取得部は、互いに交差する2つの方向について、前記1階微分値および前記2階微分値を取得し、
前記特定点抽出部は、前記2つの方向のそれぞれについての前記1階微分値および前記2階微分値に基づき、前記特定点を抽出する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記特定点抽出部は、少なくとも1つの方向について、前記1階微分値の絶対値が所定の閾値より大きく、かつ、前記2階微分値の絶対値が所定の閾値より小さい点を、前記特定点として抽出する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記2つの方向は、水平方向および鉛直方向であり、
前記特定点抽出部は、鉛直方向についての前記1階微分値の絶対値から、鉛直方向についての前記2階微分値の絶対値と、水平方向についての前記1階微分値の絶対値と、水平方向についての前記2階微分値の絶対値と、を差し引いた凹凸指標値が、所定の閾値より大きい点を、前記特定点として抽出する、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、さらに、
抽出された前記特定点から、前記稜線の設定のために使用する前記特定点を選択する特定点選択部を備える、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記断面取得部は、前記器物の互いに異なる前記断面の前記輪郭線を示す複数の前記断面データを取得し、
前記情報処理装置は、さらに、複数の前記断面データのうちの1つを代表断面データとして選択する代表断面選択部を備え、
前記図面生成部は、前記代表断面データの表す前記断面である代表断面を対象として、前記器物形状図面を生成する、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理装置であって、
前記代表断面選択部は、複数の前記断面データを前記特定点の個数が多い順に第1グループ、第2グループおよび第3グループの3つのグループに分けるグループ化を行ったときの、前記第2グループに属する前記断面データの1つを、前記代表断面データとして選択する、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理装置であって、
前記第2グループは、複数の前記断面データのうち、前記特定点の個数が中央値に一致する前記断面データにより構成されるグループである、
情報処理装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の情報処理装置であって、
前記代表断面選択部は、前記器物の外側の前記輪郭線上の前記特定点と、前記器物の内側の前記輪郭線上の前記特定点とのそれぞれについて、前記グループ化を実行し、外側の前記輪郭線と内側の前記輪郭線との両方について前記第2グループに属する前記断面データの1つを、前記代表断面データとして選択する、
情報処理装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記代表断面選択部は、前記断面の形状を表す形状指標値を用いて複数の前記断面データを複数のクラスタに分類するクラスタリングを行い、最大クラスタに属する前記断面データを対象として前記グループ化を実行する、
情報処理装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記代表断面選択部は、前記第2グループに属する前記断面データのうち、前記断面の形状を表す形状指標値が分布の中心点に最も近い1つの前記断面データを、前記代表断面データとして選択する、
情報処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記器物は、考古資料であり、
前記器物形状図面は、前記考古資料の実測図である、
情報処理装置。
【請求項13】
器物の形状を少なくとも前記器物の断面の輪郭線と前記器物の表面上の稜線とを用いて表す器物形状図面を生成するための情報処理方法であって、
前記器物の前記断面の前記輪郭線を示す断面データを取得する工程と、
前記輪郭線上の各点における1階微分値および2階微分値を取得する工程と、
前記1階微分値および前記2階微分値に基づき、前記輪郭線上の凹点または凸点である特定点を抽出する工程と、
前記特定点を通る水平線を前記稜線として設定し、前記稜線と前記輪郭線とに基づき前記器物形状図面を生成する工程と、
を備える、情報処理方法。
【請求項14】
器物の形状を少なくとも前記器物の断面の輪郭線と前記器物の表面上の稜線とを用いて表す器物形状図面を生成するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記器物の前記断面の前記輪郭線を示す断面データを取得する処理と、
前記輪郭線上の各点における1階微分値および2階微分値を取得する処理と、
前記1階微分値および前記2階微分値に基づき、前記輪郭線上の凹点または凸点である特定点を抽出する処理と、
前記特定点を通る水平線を前記稜線として設定し、前記稜線と前記輪郭線とに基づき前記器物形状図面を生成する処理と、
を実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、器物の形状を表す図面を生成するための情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
遺跡から発掘された土器等の器物について、実測図の作成が行われている。実測図は、器物の形状および製法をまとめた図面であり、発掘調査報告書に必須の図面である。実測図では、少なくとも器物の断面の輪郭線と器物の表面上の稜線とを用いて、器物の形状が表現される。
【0003】
実測図の作成は、定規等の道具を器物に当てて器物の形状を方眼用紙に写し取る、といった手作業により行われている。また、実測図の作成の際には、器物の適切な位置に稜線を描画する必要がある。そのため、実測図の作成には、熟練した技術が必要である上に、時間と手間がかかり、かつ、作成者により出来映えにバラツキが生じやすい。
【0004】
従来、遺構を対象として、光波測量機器により測量した実測値を用いて実測図を作成するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した実測図を作成するためのシステムは、あくまで遺構を対象としたものであり、器物を対象とした実測図の作成に適用できるものではない。器物の実測図を自動的に作成する技術は知られていない。このように、器物を対象として、熟練した技術を要さず、効率的にかつバラツキを抑えて、実測図を自動的に作成する技術が求められている。
【0007】
なお、このような課題は、遺跡から発掘された考古資料としての器物の実測図の作成に限らず、美術品のような他の種類の器物の形状を表す図面の作成においても共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される情報処理装置は、器物の形状を少なくとも前記器物の断面の輪郭線と前記器物の表面上の稜線とを用いて表す器物形状図面を生成するための情報処理装置であって、断面取得部と、微分値取得部と、特定点抽出部と、図面生成部とを備える。断面取得部は、前記器物の前記断面の前記輪郭線を示す断面データを取得する。微分値取得部は、前記輪郭線上の各点における1階微分値および2階微分値を取得する。特定点抽出部は、前記1階微分値および前記2階微分値に基づき、前記輪郭線上の凹点または凸点である特定点を抽出する。図面生成部は、前記特定点を通る水平線を前記稜線として設定し、前記稜線と前記輪郭線とに基づき前記器物形状図面を生成する。
【0011】
このように、本情報処理装置では、器物の断面の輪郭線上の各点における1階微分値および2階微分値に基づき、輪郭線上の凹点または凸点である特定点を抽出し、特定点を通る水平線を稜線として設定することにより、適切な位置に稜線を描画することができる。そのため、本情報処理装置によれば、器物を対象として、熟練した技術を要さず、効率的にかつバラツキを抑えて、適切な位置に稜線が描画された器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0012】
(2)上記情報処理装置において、前記微分値取得部は、互いに交差する2つの方向について、前記1階微分値および前記2階微分値を取得し、前記特定点抽出部は、前記2つの方向のそれぞれについての前記1階微分値および前記2階微分値に基づき、前記特定点を抽出する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、より適切な位置に稜線が描画された器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0013】
(3)上記情報処理装置において、前記特定点抽出部は、少なくとも1つの方向について、前記1階微分値の絶対値が所定の閾値より大きく、かつ、前記2階微分値の絶対値が所定の閾値より小さい点を、前記特定点として抽出する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、さらに適切な位置に稜線が描画された器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0014】
(4)上記情報処理装置において、前記2つの方向は、水平方向および鉛直方向であり、前記特定点抽出部は、鉛直方向についての前記1階微分値の絶対値から、鉛直方向についての前記2階微分値の絶対値と、水平方向についての前記1階微分値の絶対値と、水平方向についての前記2階微分値の絶対値と、を差し引いた凹凸指標値が、所定の閾値より大きい点を、前記特定点として抽出する構成としてもよい。このように規定された凹凸指標値CVが比較的大きい点は、輪郭線上の凹点または凸点である蓋然性が高い点であるため、本情報処理装置によれば、さらに適切な位置に稜線が描画された器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0015】
(5)上記情報処理装置において、さらに、抽出された前記特定点から、前記稜線の設定のために使用する前記特定点を選択する特定点選択部を備える構成としてもよい。本情報処理装置によれば、稜線の始点としてより適切な特定点を選択することにより、さらに適切な位置に稜線が描画された器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0016】
(6)上記情報処理装置において、前記断面取得部は、前記器物の互いに異なる前記断面の前記輪郭線を示す複数の前記断面データを取得し、前記情報処理装置は、さらに、複数の前記断面データのうちの1つを代表断面データとして選択する代表断面選択部を備え、前記図面生成部は、前記代表断面データの表す前記断面である代表断面を対象として、前記器物形状図面を生成する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、器物の特徴が適切に表われた代表断面を示す器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0017】
(7)上記情報処理装置において、前記代表断面選択部は、複数の前記断面データを前記特定点の個数が多い順に第1グループ、第2グループおよび第3グループの3つのグループに分けるグループ化を行ったときの、前記第2グループに属する前記断面データの1つを、前記代表断面データとして選択する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、器物の特徴がより適切に表われた代表断面を示す器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0018】
(8)上記情報処理装置において、前記第2グループは、複数の前記断面データのうち、前記特定点の個数が中央値に一致する前記断面データにより構成されるグループである構成としてもよい。本情報処理装置によれば、器物の特徴がさらに適切に表われた代表断面を示す器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0019】
(9)上記情報処理装置において、前記代表断面選択部は、前記器物の外側の前記輪郭線上の前記特定点と、前記器物の内側の前記輪郭線上の前記特定点とのそれぞれについて、前記グループ化を実行し、外側の前記輪郭線と内側の前記輪郭線との両方について前記第2グループに属する前記断面データの1つを、前記代表断面データとして選択する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、器物の特徴がさらに適切に表われた代表断面を示す器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0020】
(10)上記情報処理装置において、前記代表断面選択部は、前記断面の形状を表す形状指標値を用いて複数の前記断面データを複数のクラスタに分類するクラスタリングを行い、最大クラスタに属する前記断面データを対象として前記グループ化を実行する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、器物の特徴がより適切に表われた代表断面を示す器物形状図面を、さらに効率的にかつ自動的に作成することができる。
【0021】
(11)上記情報処理装置において、前記代表断面選択部は、前記第2グループに属する前記断面データのうち、前記断面の形状を表す形状指標値が分布の中心点に最も近い1つの前記断面データを、前記代表断面データとして選択する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、器物の特徴がより適切に表われた代表断面を示す器物形状図面を自動的に作成することができる。
【0022】
(12)上記情報処理装置において、前記器物は、考古資料であり、前記器物形状図面は、前記考古資料の実測図である構成としてもよい。本情報処理装置によれば、考古資料としての器物を対象として、熟練した技術を要さず、効率的にかつバラツキを抑えて、適切な位置に稜線が描画された実測図を自動的に作成することができる。
【0023】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、情報処理装置、情報処理方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態における情報処理装置100の概略構成を示すブロック図
【
図2】考古資料としての器物VEを対象とした実測
図SDの例を示す説明図
【
図4】本実施形態における実測図生成処理の概要を示す説明図
【
図5】本実施形態における実測図生成処理の概要を示す説明図
【
図6】本実施形態における実測図生成処理の概要を示す説明図
【
図8】1階微分値DV1の取得方法の概要を示す説明図
【
図9】2階微分値DV2の取得方法の概要を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.実施形態:
A-1.情報処理装置100の構成:
図1は、本実施形態における情報処理装置100の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の情報処理装置100は、器物形状図面を生成するための装置である。本明細書において、器物形状図面は、少なくとも器物の断面の輪郭線と器物の表面上の稜線とを用いて、器物の形状を表す図面である。本実施形態では、
図2に示すように、遺跡から発掘された考古資料としての器物VE(例えば、土器)を対象として、器物VEの断面CSの輪郭線COと器物VEの表面上の稜線RLとを用いて器物VEの形状表す図面である実測
図SDを生成するために、情報処理装置100を適用する例について説明する。実測
図SDは、器物形状図面の一例である。
【0026】
なお、
図2に示すように、実測
図SDでは、例えば中心線CEより右側の部分(以下、「内側部分」という。)は、断面CSの全体の輪郭線COと、器物VEの内側表面の稜線RLとから構成され、中心線CEより左側の部分(以下、「外側部分」という。)は、器物VEの外縁の線(断面CSにおける外側の輪郭線CO)と、器物VEの外側表面の稜線RLとから構成される。また、考古資料としての器物VEには、
図2の上段に示す容れ物(坏、高坏、椀、皿等)と、
図2の下段に示す蓋と、が存在する。
【0027】
情報処理装置100(
図1)は、例えばパーソナルコンピュータやサーバ、タブレット型端末、スマートフォン等のコンピュータにより構成されている。情報処理装置100は、制御部110と、記憶部130と、表示部152と、操作入力部156と、インターフェース部158とを備える。これらの各部は、バス190を介して互いに通信可能に接続されている。
【0028】
情報処理装置100の表示部152は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにより構成され、各種の画像や情報を表示する。また、操作入力部156は、例えばキーボードやマウス、ボタン、マイク、トラックパッドにより構成され、管理者の操作や指示を受け付ける。なお、表示部152が、タッチパネルを備えることにより、操作入力部156として機能するとしてもよい。また、インターフェース部158は、例えばLANインターフェースやUSBインターフェース等により構成され、有線または無線により他の装置との通信を行う。なお、情報処理装置100がスピーカを備えてもよい。
【0029】
情報処理装置100の記憶部130は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。例えば、記憶部130には、後述する実測図生成処理を実行するためのコンピュータプログラムである図面生成プログラムCPが格納されている。図面生成プログラムCPは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に格納された状態で提供され、あるいは、インターフェース部158を介して外部装置(ネットワーク上のサーバや他の端末装置)から取得可能な状態で提供され、情報処理装置100上で動作可能な状態で記憶部130に格納される。
【0030】
また、情報処理装置100の記憶部130には、予め、または、後述する実測図生成処理中に、3DスキャンデータSCDと、断面データCSDと、形状指標値SVと、実測図データSDDとが格納される。これらの内容については、後述の実測図生成処理の説明に合わせて説明する。
【0031】
情報処理装置100の制御部110は、例えばCPU等により構成され、記憶部130から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、情報処理装置100の動作を制御する。例えば、制御部110は、記憶部130から図面生成プログラムCPを読み出して実行することにより、後述の実測図生成処理を実行するための図面生成部120として機能する。図面生成部120は、断面取得部121と、形状指標値算出部123と、微分値取得部124と、特定点抽出部125と、特定点選択部126と、代表断面選択部127とを含む。これら各部の機能については、後述の実測図生成処理の説明に合わせて説明する。
【0032】
A-2.実測図生成処理:
次に、本実施形態の情報処理装置100により実行される実測図生成処理について説明する。
図3は、実測図生成処理を示すフローチャートである。また、
図4から
図6は、本実施形態における実測図生成処理の概要を示す説明図である。
【0033】
実測図生成処理は、
図2を参照して上述したように、遺跡から発掘された考古資料としての器物VEを対象として、器物VEの断面CSの輪郭線COと器物VEの表面上の稜線RLとを用いて器物VEの形状を表す実測
図SDを生成する処理である。
図4のA欄には、実測図生成処理の対象の器物VEが例示されている。
【0034】
実測
図SDの生成の際には、器物VEの特徴が適切に表われるような断面CS(後述する代表断面CSr)を設定したり、適切な位置に稜線RLを描画したりする必要がある。そのため、実測図生成処理では、代表断面CSrを設定する処理と、代表断面CSrに稜線RLを描画する処理と、を含む種々の処理が実行され、その結果、実測
図SDが自動的に生成される。実測図生成処理は、例えば、管理者が情報処理装置100の操作入力部156を介して処理開始の指示を入力したことに応じて開始される。
【0035】
はじめに、情報処理装置100の図面生成部120(
図1)が、器物VEの3DスキャンデータSCDを取得する(S110)。3DスキャンデータSCDは、3Dスキャナを用いて器物VEの3Dスキャンを行うことにより生成される3Dデータ(メッシュデータ)である。器物VEの3DスキャンデータSCDは、例えば、インターフェース部158を介して外部装置から取得される。取得された3DスキャンデータSCDは、記憶部130に格納される。なお、情報処理装置100が3Dスキャン機能を有する場合には、情報処理装置100が該機能を用いて器物VEの3DスキャンデータSCDを取得してもよい。
【0036】
次に、器物VEの特徴が適切に表われるような代表断面CSrを設定する処理(S120~S196)が実行される。まず、情報処理装置100の断面取得部121(
図1)が、3DスキャンデータSCDに基づき、器物VEについての互いに異なる断面CSの形状を表す複数の断面データCSDを取得する(S120)。より詳細には、
図4のA欄に示すように、断面取得部121は、器物VEの仮想中心軸(鉛直軸)Ovを特定すると共に、仮想中心軸Ovを始点として放射状に延びる複数の仮想鉛直面VPを設定し、各仮想鉛直面VP上の器物VEの断面CSの形状を表す複数の断面データCSDを取得する。取得された断面データCSDは、記憶部130に格納される。なお、仮想中心軸Ovの設定は、任意の方法により実行可能であるが、例えば、器物VEを鉛直方向に投影した図形の重心を通る鉛直線を仮想中心軸Ovとして設定することができる。仮想中心軸Ovは、実測
図SDにおける中心線CE(
図2)に相当する。また、複数の仮想鉛直面VPは、例えば一定のピッチ(回転角)で設定される。本実施形態では、仮想鉛直面VPを設定する個数、すなわち、取得する断面データCSDの個数は、1000個である。
図4のB欄には、取得された複数の断面データCSDの例が示されている。
【0037】
次に、断面取得部121は、各断面データCSDにより表される断面CSの輪郭線COを抽出する(S130)。より詳細には、断面取得部121は、各断面データCSDを2値化し、2値化された断面データCSDを対象として公知の輪郭抽出のための画像処理を実行することにより、断面CSの輪郭線COを抽出する。
図4のB欄には、各断面データCSDにより表される断面CSについて抽出された輪郭線COの例が示されている。以下、断面CSの輪郭線COを示すデータも、断面データCSDという。
【0038】
次に、情報処理装置100の形状指標値算出部123が、各断面CSの輪郭線COに基づき、形状指標値SVを算出する(S140)。形状指標値SVは、断面CSの形状を表す指標値である。
【0039】
より詳細には、形状指標値算出部123は、各断面CSの輪郭線COに対して楕円フーリエ変換を行う。楕円フーリエ変換は、輪郭線を定量的に記述するための処理であり、輪郭線を周期関数として捉え、その関数のフーリエ変換を行い、その係数を用いて輪郭線を記述するものである。具体的には、形状指標値算出部123は、以下の式(1)および式(2)を用いて断面CSの輪郭線COに対して楕円フーリエ変換を行うことにより、4つの記述子a
n、b
n、c
n、d
nを求める。楕円フーリエ変換の次数nは適宜設定されるが、本実施形態では、次数nが128に設定される。そのため、各断面CSについて4×128次元の変数が求められる。
【数1】
【数2】
【0040】
次に、形状指標値算出部123は、各断面CSについての4×128次元の変数を対象として主成分分析による次元削減を行うことにより、所定数の次元(本実施形態では20次元)のデータである形状指標値SVを算出する。このように算出された形状指標値SVは、断面CSの形状を表す指標値となる。算出された形状指標値SVは、記憶部130に格納される。
【0041】
次に、情報処理装置100の代表断面選択部127(
図1)が、形状指標値SVを用いて複数の断面データCSDのクラスタリングを行い、最大クラスタCLxを特定する(S150)。複数の断面データCSDのクラスタリングは、任意の公知のクラスタリング手法を用いて実行可能であるが、本実施形態では、密度準拠クラスタリングアルゴリズムであるDBSCANが用いられる。代表断面選択部127は、クラスタリング結果に基づき、最も多数の断面データCSDが属するクラスタCLを、最大クラスタCLxとして特定する。最大クラスタCLxに属する断面データCSDの表す断面CSは、器物VEにおける典型的な断面CSであると言え、代表断面CSrの候補となる。
図4のC欄には、断面データCSDのクラスタリングにより特定された最大クラスタCLxの例が示されている。
【0042】
次に、情報処理装置100の特定点抽出部125(
図1)が、最大クラスタCLxに属する各断面データCSDを対象として、断面CSの輪郭線CO上の特定点SPを抽出するための特定点抽出処理を実行する(S160)。ここで、特定点SPは、断面CSの輪郭線CO上の凹点または凸点であり、稜線RLの始点の候補である。
【0043】
図7は、特定点抽出処理を示すフローチャートである。はじめに、特定点抽出部125は、各断面データCSDにより表される断面CSについて、外側輪郭線COoおよび内側輪郭線COiを特定する(S310)。より詳細には、特定点抽出部125は、断面CSの輪郭線COのうち、仮想中心軸Ov(
図4のA欄)上における容器外部側の点を始点とし、外周に沿って器物VEの外縁まで至る線を、外側輪郭線COoとして特定し、仮想中心軸Ov上における容器内部側の点を始点とし、内周に沿って器物VEの外縁まで至る線を、内側輪郭線COiとして特定する。
図5のD欄には、ある断面CSにおいて特定された外側輪郭線COoおよび内側輪郭線COiの一部が示されている。特定点抽出処理におけるこれ以降の処理は、外側輪郭線COoおよび内側輪郭線COiのそれぞれに対して個別に実行される。
【0044】
次に、情報処理装置100の微分値取得部124(
図1)が、断面CSの輪郭線CO(外側輪郭線COoおよび内側輪郭線COi)上の各点Pにおける1階微分値DV1および2階微分値DV2を取得する(S320)。
図8は、1階微分値DV1の取得方法の概要を示す説明図であり、
図9は、2階微分値DV2の取得方法の概要を示す説明図である。微分値取得部124は、輪郭線CO上の各点P(各画素)について、x方向(水平方向)に1画素ずれたときのy方向(鉛直方向)のずれ量を1階微分値DV1として取得し、x方向に1画素ずれたときのy方向のずれ量のずれ量を2階微分値DV2として取得する。
図8および
図9に示すように、1階微分値DV1は、輪郭線CO上の各点Pにおける輪郭線COの接線TLの傾きに相当し、2階微分値DV2は、輪郭線CO上の各点Pにおける該傾きの変化率(1階微分値DV1を示す曲線COdの接線TLの傾き)に相当する。
【0045】
本実施形態では、1階微分値DV1および2階微分値DV2が、x方向およびy方向のそれぞれについて取得される。
図8および
図9には、x方向についての1階微分値DV1および2階微分値DV2の取得方法が示されているが、y方向については、x軸とy軸とのの関係を反転させたときの輪郭線COを対象として、同様に、1階微分値DV1および2階微分値DV2が取得される。以下、x方向についての1階微分値DV1および2階微分値DV2を、それぞれ、x方向1階微分値DV1xおよびx方向2階微分値DV2xといい、y方向についての1階微分値DV1および2階微分値DV2を、それぞれ、y方向1階微分値DV1yおよびy方向2階微分値DV2yという。
【0046】
次に、特定点抽出部125は、輪郭線CO上の各点Pにおける凹凸指標値CVを算出する(S330)。凹凸指標値CVは、輪郭線CO上の各点Pにおける凹の程度または凸の程度の高さを示す指標値である。本実施形態では、凹凸指標値CVは、以下の式(3)を用いて算出される。すなわち、凹凸指標値CVは、y方向1階微分値DV1yの絶対値|DV1y|から、y方向2階微分値DV2yの絶対値|DV2y|と、x方向1階微分値DV1xの絶対値|DV1x|と、x方向2階微分値DV2xの絶対値|DV2x|と、を差し引いた値である。すなわち、凹凸指標値CVは、y方向1階微分値DV1yの絶対値の大きさ、および、y方向2階微分値DV2yの絶対値の小ささを表す指標値であると言える。
【数3】
【0047】
次に、特定点抽出部125は、凹凸指標値CVが所定の閾値Thを超える(すなわち、CV>Thの関係を満たす)点Pを、特定点候補SPpとして抽出する(S340)。上述したように、凹凸指標値CVは、y方向1階微分値DV1yの絶対値の大きさ、および、y方向2階微分値DV2yの絶対値の小ささを表す指標値であるため、抽出された特定点候補SPpは、y方向1階微分値DV1yの絶対値が比較的大きく、かつ、y方向2階微分値DV2yの絶対値が比較的小さい点Pである。y方向1階微分値DV1yの絶対値が比較的大きく、かつ、y方向2階微分値DV2yの絶対値が比較的小さい点Pは、輪郭線CO上において、鉛直方向の変化量に対する水平方向の変化量の割合が比較的大きく、かつ、該変化量の変化率が比較的小さい点であり、輪郭線CO上の凹点または凸点である蓋然性が高い点であると言える。なお、本実施形態では、特定点抽出部125は、凹凸指標値CVを0以上、1以下の範囲に標準化し、標準化後の凹凸指標値CVを予め設定された閾値Th(0<Th<1)と比較することにより、特定点候補SPpの抽出を実行する。
【0048】
次に、情報処理装置100の特定点選択部126(
図1)が、抽出された特定点候補SPpの中から特定点SPを選択する(S350)。特定点選択部126は、例えば、以下のルールの少なくとも1つに従って特定点候補SPpの削除(絞り込み)を行い、削除されずに残った特定点候補SPpを特定点SPとして選択する。
(1)ルール1:特定点候補SPp同士の距離(例えば直線距離)が所定の閾値以下である場合、一方の特定点候補SPp(例えば、器物VEの外縁に近い側の特定点候補SPp)を削除する。
(2)ルール2:特定点候補SPpから器物VEの外縁までの距離(例えば直線距離)が所定の閾値以下である場合、該特定点候補SPpを削除する。
(3)ルール3:特定点候補SPpから器物VEの仮想中心軸Ov(中心線CE)に向けて水平線を引いたときに、該水平線が仮想中心軸Ovに至る前に輪郭線COに交差する場合、該特定点候補SPpを削除する。
【0049】
以上の各工程を行うことにより、特定点抽出処理(
図3のS160)が完了する。特定点抽出処理により、外側輪郭線COoおよび内側輪郭線COiのそれぞれについて、凹点または凸点である蓋然性が高い点である特定点SPが抽出される。以下、外側輪郭線COoにおいて抽出された特定点SPを外側特定点SPoといい、内側輪郭線COiにおいて抽出された特定点SPを内側特定点SPiという。
図5のD欄には、ある断面CSの輪郭線CO(外側輪郭線COoおよび内側輪郭線COi)から抽出された特定点SP(外側特定点SPoおよび内側特定点SPi)の例が示されている。
【0050】
次に、代表断面選択部127は、複数の断面データCSDの中から、外側特定点SPoの個数が複数の断面データCSD全体の中央値に一致し、かつ、内側特定点SPiの個数が全体の中央値に一致する断面データCSDを抽出する(
図3のS170)。すなわち、代表断面選択部127は、外側特定点SPoの個数も内側特定点SPiの個数も器物VEにおいて典型的な個数であるような断面データCSDを抽出する。この処理は、複数の断面データCSDを特定点SPの個数が多い順に第1グループ、第2グループおよび第3グループの3つのグループに分けるグループ化を行ったときの、第2グループに属する断面データCSDを抽出する処理に該当する。
【0051】
代表断面選択部127は、S170において抽出された断面データCSDの個数Nに応じて、処理を分岐する(S180)。具体的には、抽出された断面データCSDの個数Nが1個(N=1)である場合、代表断面選択部127は、抽出された唯一の断面データCSDを代表断面データCSDrとして選択する(S192)。また、抽出された断面データCSDの個数Nが2個以上(N≧2)である場合、代表断面選択部127は、抽出された複数の断面データCSDの中から、形状指標値SVが分布の中心に最も近い1つの断面データCSDを代表断面データCSDrとして選択する(S194)。この処理は、例えばmedoid(クラスタ内の点であって、その点以外のクラスタ内の点との非類似度の総和が最小になる点)を特定することにより実行される。また、抽出された断面データCSDの個数Nが0個(N=0)である場合、代表断面選択部127は、最大クラスタCLxに属するすべての断面データCSDの中から、S194と同様に、形状指標値SVが分布の中心に最も近い1つの断面データCSDを代表断面データCSDrとして選択する(S196)。以上のようにして選択された代表断面データCSDrの表す代表断面CSrは、断面全体の形状が器物VEにおいて典型的であり、かつ、特定点SPの個数も器物VEにおいて典型的であるものであり、器物VEの特徴が適切に表われた断面であると言える。
図5のE欄には、選択された代表断面データCSDrの例が示されている。
【0052】
次に、情報処理装置100の図面生成部120(
図1)が、代表断面データCSDrを用いて、稜線RL等を描画することにより、実測
図SDを生成する(S200)。より詳細には、
図5のE欄およびF欄に示すように、図面生成部120は、外側輪郭線COo上における最も下方の点である底点BPを特定し、外側輪郭線COoにおける底点BPから仮想中心軸Ov(中心線CE)までの部分を水平線(実線)に変換する。このとき、変換される部分に特定点SPが存在する場合、該特定点SPを削除する。なお、
図6のG欄に示すように、対象の器物VEが上述した「容れ物」ではなく「蓋」である場合には、この処理は実行されない。
【0053】
また、
図6のH欄に示すように、対象の器物VEがいわゆる出腹形状であり、外側輪郭線COo上の底点BPが脚部LP以外の箇所に存在する場合には、例えば以下のようにして準底点BP1を特定し、底点BPに代えて準底点BP1を用いて同様の処理を実行する。
(1)外側輪郭線COoと内側輪郭線COiとの中間線CCLを特定する。
(2)中間線CCL上における最も下方の点を中間底点CBP1として特定する。
(3)中間底点CBP1を通り外側輪郭線COoと内側輪郭線COiとを結ぶ直線L1と、外側輪郭線COoと、の交点を準底点BP1として特定する。
【0054】
次に、図面生成部120は、特定点SPを通る稜線RLを描画する。より詳細には、
図5のF欄に示すように、図面生成部120は、外側輪郭線COoにおける特定点SP(外側特定点SPo)から中心線CEまで、水平の鎖線である稜線RLを描画する。これにより、外側輪郭線COoと稜線RLとにより構成される実測
図SDの外側部分(中心線CEより左側の部分)が生成される。また、図面生成部120は、内側輪郭線COiにおける特定点SP(内側特定点SPi)から中心線CEまで、水平の鎖線である稜線RLを描画する。これにより、断面CSの輪郭線COと稜線RLとにより構成される実測
図SDの内側部分(中心線CEより右側の部分)が生成される。なお、特定点SP自身は実際の実測
図SDには描画されない。また、
図6のG欄に示すように、器物VEが「蓋」である場合において、特定点SPが外側輪郭線COoにおける最も外縁側(水平方向外側)の点と一致するときには、該特定点SPから描画する稜線RL(RLx)を実線とする。
【0055】
次に、図面生成部120は、生成された実測
図SDの外側部分および内側部分を結合した後、中心線CE、最下部の底線BL、最上部の頂線HLおよびスケールSCを描画することにより、実測
図SDを完成させる。完成した実測
図SDを表す実測図データSDDは、記憶部130に格納される。また、図面生成部120は、実測
図SDを表示部152に表示させたり、インターフェース部158を介して印刷装置に印刷させたりしてもよい。
【0056】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の情報処理装置100は、器物VEの形状を少なくとも器物VEの断面CSの輪郭線COと器物VEの表面上の稜線RLとを用いて表す器物形状図面(実測
図SD)を生成するための装置であり、断面取得部121と、微分値取得部124と、特定点抽出部125と、図面生成部120とを備える。断面取得部121は、器物VEの断面CSの輪郭線COを示す断面データCSDを取得する。微分値取得部124は、輪郭線CO上の各点における1階微分値DV1および2階微分値DV2を取得する。特定点抽出部125は、1階微分値DV1および2階微分値DV2に基づき、輪郭線CO上の凹点または凸点である特定点SPを抽出する。図面生成部120は、特定点SPを通る水平線を稜線RLとして設定し、稜線RLと輪郭線COとに基づき器物形状図面である実測
図SDを生成する。
【0057】
このように、本実施形態の情報処理装置100では、器物VEの断面CSの輪郭線CO上の各点における1階微分値DV1および2階微分値DV2に基づき、輪郭線CO上の凹点または凸点である特定点SPを抽出し、特定点SPを通る水平線を稜線RLとして設定することにより、適切な位置に稜線RLを描画することができる。そのため、本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEを対象として、熟練した技術を要さず、効率的にかつバラツキを抑えて、適切な位置に稜線RLが描画された実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0058】
また、本実施形態の情報処理装置100では、微分値取得部124は、互いに交差する2つの方向について1階微分値DV1および2階微分値DV2を取得し、特定点抽出部125は、2つの方向のそれぞれについての1階微分値DV1および2階微分値DV2に基づき特定点SPを抽出する。そのため、本実施形態の情報処理装置100によれば、より適切な位置に稜線RLが描画された実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0059】
また、本実施形態の情報処理装置100では、2つの方向は、水平方向(x方向)および鉛直方向(y方向)であり、特定点抽出部125は、y方向についての1階微分値DV1の絶対値|DV1y|から、y方向についての2階微分値DV2の絶対値|DV2y|と、x方向についての1階微分値DV1の絶対値|DV1x|と、x方向についての2階微分値DV2の絶対値|DV2x|と、を差し引いた凹凸指標値CVが、所定の閾値Thより大きい点を特定点SPとして抽出する。このように規定された凹凸指標値CVが比較的大きい点は、輪郭線CO上の凹点または凸点である蓋然性が高い点であるため、本実施形態の情報処理装置100によれば、さらに適切な位置に稜線RLが描画された実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0060】
また、本実施形態の情報処理装置100は、さらに、抽出された特定点SP(特定点候補SPp)から、稜線RLの設定のために使用する特定点SPを選択する特定点選択部126を備える。本実施形態の情報処理装置100によれば、稜線RLの始点としてより適切な特定点SPを選択することにより、さらに適切な位置に稜線RLが描画された実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0061】
また、本実施形態の情報処理装置100では、断面取得部121は、器物VEの互いに異なる断面CSの輪郭線COを示す複数の断面データCSDを取得し、情報処理装置100は、さらに、複数の断面データCSDのうちの1つを代表断面データCSDrとして選択する代表断面選択部127を備え、図面生成部120は、代表断面データCSDrの表す断面CSである代表断面CSrを対象として実測
図SDを生成する。本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEの特徴が適切に表われた代表断面CSrを示す実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0062】
また、本実施形態の情報処理装置100では、代表断面選択部127は、複数の断面データCSDを特定点SPの個数が多い順に第1グループ、第2グループおよび第3グループの3つのグループに分けるグループ化を行ったときの、第2グループに属する断面データCSDの1つを、代表断面データCSDrとして選択する。本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEの特徴がより適切に表われた代表断面CSrを示す実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0063】
また、本実施形態の情報処理装置100では、第2グループは、複数の断面データCSDのうち、特定点SPの個数が中央値に一致する断面データCSDにより構成されるグループである。本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEの特徴がさらに適切に表われた代表断面CSrを示す実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0064】
また、本実施形態の情報処理装置100では、代表断面選択部127は、器物VEの外側の輪郭線CO上の特定点SP(外側特定点SPo)と、器物VEの内側の輪郭線CO上の特定点SP(内側特定点SPi)とのそれぞれについてグループ化を実行し、外側の輪郭線COと内側の輪郭線COとの両方について第2グループに属する断面データCSDの1つを、代表断面データCSDrとして選択する。本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEの特徴がさらに適切に表われた代表断面CSrを示す実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0065】
また、本実施形態の情報処理装置100では、代表断面選択部127は、断面CSの形状を表す形状指標値SVを用いて複数の断面データCSDを複数のクラスタに分類するクラスタリングを行い、最大クラスタCLxに属する断面データCSDを対象としてグループ化を実行する。本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEの特徴がさらに適切に表われた代表断面CSrを示す実測
図SDを、さらに効率的にかつ自動的に作成することができる。
【0066】
また、本実施形態の情報処理装置100では、代表断面選択部127は、第2グループに属する断面データCSDのうち、断面CSの形状を表す形状指標値SVが分布の中心点に最も近い1つの断面データCSDを、代表断面データCSDrとして選択する。本実施形態の情報処理装置100によれば、器物VEの特徴がより適切に表われた代表断面CSrを示す実測
図SDを自動的に作成することができる。
【0067】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
上記実施形態における情報処理装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されている構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、反対に、ソフトウェアによって実現されている構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0069】
上記実施形態における実測図生成処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、形状指標値SVとして20次元の変数が用いられているが、形状指標値SVの次元数(すなわち、楕円フーリエ変換の次数や主成分分析による次元削減数)は任意に変更可能である。また、次元数削減手法として、主成分分析以外の手法(例えば、SVDやt-SNE)が用いられてもよい。また、形状指標値SVの算出の際に、楕円フーリエ変換に代えて、他の輪郭線記述処理が採用されてもよい。また、クラスタリング処理(S150)が省略されてもよい。また、クラスタリング処理が複数回実行されてもよい。また、各データや情報がインターフェース部158を介して接続された外部記憶装置に格納されてもよい。
【0070】
上記実施形態では、特定点候補SPpの抽出に用いられる凹凸指標値CVとして、上述した式(3)により定義される指標値が用いられているが、凹凸指標値CVの算出方法は、1階微分値DV1および2階微分値DV2に基づいて算出する限りにおいて任意に変更可能である。例えば、凹凸指標値CVを、y方向1階微分値DV1yの絶対値|DV1y|とx方向1階微分値DV1xの絶対値|DV1x|との和から、y方向2階微分値DV2yの絶対値|DV2y|と、x方向2階微分値DV2xの絶対値|DV2x|と、を差し引いた値であるとしてもよい。あるいは、凹凸指標値CVを、y方向の微分値のみを用いて、例えばy方向1階微分値DV1yの絶対値|DV1y|からy方向2階微分値DV2yの絶対値|DV2y|を差し引いた値としてもよい。反対に、凹凸指標値CVを、x方向の微分値のみを用いて、例えばx方向1階微分値DV1xの絶対値|DV1x|からx方向2階微分値DV2xの絶対値|DV2x|を差し引いた値としてもよい。また、凹凸指標値CVを、x方向および/またはy方向の1階微分値DV1および2階微分値DV2の積や商、対数等を取ることにより算出してもよい。また、互いに直交する2つの方向に限らず、互いに交差する2つの方向についての1階微分値DV1および2階微分値DV2を用いて凹凸指標値CVを算出してもよい。
【0071】
また、1階微分値DV1に関する指標値と、2階微分値DV2に関する指標値と、を個別に算出し、それぞれを、個別に設定された閾値と比較して特定点候補SPpを抽出してもよい。例えば、y方向1階微分値DV1yの絶対値|DV1y|が閾値より大きく、かつ、y方向2階微分値DV2yの絶対値|DV2y|が他の閾値より小さい点Pを特定点候補SPpとして抽出してもよい。あるいは、y方向1階微分値DV1yの絶対値|DV1y|とx方向1階微分値DV1xの絶対値|DV1x|との和が閾値より大きく、かつ、y方向2階微分値DV2yの絶対値|DV2y|とx方向2階微分値DV2xの絶対値|DV2x|との和が他の閾値より小さい点Pを特定点候補SPpとして抽出してもよい。
【0072】
上記実施形態における特定点候補SPpからの特定点SPの選択方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、特定点候補SPpの削除(絞り込み)のための上述した3つのルール(ルール1~3)のうちの1つが削除されてもよいし、他のルールが追加されてもよい。
【0073】
上記実施形態では、複数の断面データCSDの中から、外側特定点SPoの個数が全体の中央値に一致し、かつ、内側特定点SPiの個数が全体の中央値に一致する断面データCSDを、代表断面データCSDrの候補として抽出しているが、この抽出方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、複数の断面データCSDの中から、外側特定点SPoの個数が全体の中央値にある程度近く(例えば中央値との差が中央値の10%以内であり)、かつ、内側特定点SPiの個数が全体の中央値にある程度近い(同)断面データCSDを、代表断面データCSDrの候補として抽出してもよい。あるいは、複数の断面データCSDの中から、外側特定点SPoの個数が全体の平均値に一致し、かつ、内側特定点SPiの個数が全体の平均値に一致する断面データCSDを、代表断面データCSDrの候補として抽出してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、考古資料としての器物VEについての実測
図SDを生成するために情報処理装置100を適用する例について説明したが、本明細書に開示される技術は、考古資料としての器物VEに限らず、美術品のような他の種類の器物を含む器物一般について、器物の断面の輪郭線と器物の表面上の稜線とを用いて器物の形状を表す器物形状図面を生成する場合に同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
100:情報処理装置 110:制御部 120:図面生成部 121:断面取得部 123:形状指標値算出部 124:微分値取得部 125:特定点抽出部 126:特定点選択部 127:代表断面選択部 130:記憶部 152:表示部 156:操作入力部 158:インターフェース部 190:バス BL:底線 BP1:準底点 BP:底点 CCL:中間線 CE:中心線 CL:クラスタ CLx:最大クラスタ CO:輪郭線 COd:曲線 COi:内側輪郭線 COo:外側輪郭線 CP:図面生成プログラム CS:断面 CSD:断面データ CSDr:代表断面データ CSr:代表断面 CV:凹凸指標値 DV1:1階微分値 DV2:2階微分値 HL:頂線 LP:脚部 Ov:仮想中心軸 RL:稜線 SCD:3Dスキャンデータ SDD:実測図データ SP:特定点 SPi:内側特定点 SPo:外側特定点 SPp:特定点候補 SV:形状指標値 TL:接線 VE:器物 VP:仮想鉛直面