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  • 特開-浴槽用手すり 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086153
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】浴槽用手すり
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/12 20060101AFI20230615BHJP
   A61H 33/00 20060101ALN20230615BHJP
【FI】
A47K3/12
A61H33/00 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200481
(22)【出願日】2021-12-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000107066
【氏名又は名称】株式会社リッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰泰
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132DA00
4C094BC25
(57)【要約】
【課題】利用者の浴槽へ入る動作や出る動作に無理を強いることなく利用者に優しい浴槽用手すりを提供する。
【解決手段】本発明に係る浴槽用手すり1は、浴槽の側壁に着脱可能に取り付けられる浴槽用手すり1であって、浴槽の側壁に取り付ける取付部3と、取付部3から上方に延びる支柱5と、支柱5の上端部に設けられて利用者が手でつかむ手すり部7とを備え、
該手すり部7が、2本の棒状体が交差する交差形状からなり、前記2本の棒状体は、取付部3を前記浴槽の側壁に取り付けた状態において、平面視で前記側壁に対して斜めに配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の側壁に着脱可能に取り付けられる浴槽用手すりであって、
浴槽の側壁に取り付ける取付部と、該取付部から上方に延びる支柱と、該支柱の上端部に設けられて利用者が手でつかむ手すり部とを備え、
該手すり部が、2本の棒状体が交差する交差形状からなり、前記2本の棒状体は、前記取付部を前記浴槽の側壁に取り付けた状態において、平面視で前記側壁に対して斜めに配置されることを特徴とする浴槽用手すり。
【請求項2】
前記手すり部は、2本の棒状体が同一平面上となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用手すり。
【請求項3】
前記棒状体の、平面視での浴槽の側壁に対する傾斜角度は、前記側壁に平行な方向を基準として、37°~53°であることを特徴とする請求項又は2に記載の浴槽用手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の縁に着脱自在に取付けられ、主として老人や身障者の入浴を補助するための浴槽用手すりに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽の側壁に着脱可能に取り付けられる浴槽用手すりは、浴槽の側壁に着脱可能に取り付ける取付部と、取付部から上方に延びる支柱と、支柱の上端部に設けられた手すり部とを備えている。
このような浴槽用手すりの先行例としては、例えば特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された浴槽用手すりの手すり部は、取付状態で浴槽の側壁に直交する方向に延びる棒状体で構成されている。
また、特許文献2に開示された浴槽用手すりの手すり部は、矩形リング状をしており、取付状態において、側壁に直交する一対の長辺部と側壁に平行な一対の短辺部から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-140880号公報
【特許文献2】特開2019-209062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のいずれも手すり部も、手すりをつかんで浴槽に出入りする際に身体をねじる動きが生じ、身体を自由に動かすことができない利用者にとって、無理な動きを強いられることになるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、利用者の浴槽へ入る動作や出る動作に無理を強いることなく利用者に優しい浴槽用手すりを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る浴槽用手すりは、浴槽の側壁に着脱可能に取り付けられるものであって、
浴槽の側壁に取り付ける取付部と、該取付部から上方に延びる支柱と、該支柱の上端部に設けられて利用者が手でつかむ手すり部とを備え、
該手すり部が、2本の棒状体が交差する交差形状からなり、前記2本の棒状体は、前記取付部を前記浴槽の側壁に取り付けた状態において、平面視で前記側壁に対して斜めに配置されることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記手すり部は、2本の棒状体が同一平面上となるように設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記棒状体の、平面視での浴槽の側壁に対する傾斜角度は、前記側壁に平行な方向を基準として、37°~53°であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る浴槽用手すりは、浴槽の側壁に取り付ける取付部と、該取付部から上方に延びる支柱と、該支柱の上端部に設けられて利用者が手でつかむ手すり部とを備え、
該手すり部が、2本の棒状体が交差する交差形状からなり、前記2本の棒状体は、前記取付部を前記浴槽の側壁に取り付けた状態において、平面視で前記側壁に対して斜めに配置されることにより、利用者が浴槽に入る際に手首への負担が軽減され、また身体の捻じれが生ずることがなく、身体の動きが自由でない利用者にとって優しい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る浴槽用手すりの斜視図である(その1)。
図2】本発明の実施の形態に係る浴槽用手すりの斜視図である(その2)。
図3】本発明の実施の形態に係る浴槽用手すりの平面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る浴槽用手すりの使用方法の説明図である。
図5】従来例の浴槽用手すりの使用方法の説明図である。
図6】浴槽用手すりを掴んだときの肘の状態を説明する説明図であり、(a)が発明例、(A)が従来例である。
図7】浴槽用手すりを掴んだときの手首の状態を説明する説明図であり、(a)が発明例、(A)が従来例である。
図8】手首の曲がり方向の説明図である。
図9】浴槽に入るときの身体の向きを説明する説明図であり、(a)が発明例、(A)が従来例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係る浴槽用手すり1は、図1図3に示すように、浴槽の側壁に取り付ける取付部3と、取付部3から上方に延びる支柱5と、支柱5の上端部に設けられて利用者が手でつかむ手すり部7とを備えている。
なお、図3における(外)(内)は、浴槽用手すり1を浴槽の側壁に取り付けた状態において、浴槽の外側に配置される側を(外)と表記し、浴槽の内側に配置される側を(内)と表記している。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0013】
<取付部>
取付部3は、浴槽用手すり1を浴槽の側壁に取り付けるためのものであり、対向する側板9を有する略コ字状の取付部本体11と、取付部本体11内の一方の側板9側に配置された挟持板13と、挟持板13を一方の側板9と他方の側板9との間で移動させるためのハンドル15と、を備えている。
ハンドル15を回転させることで、挟持板13が取付部本体11の側板9間で移動して、浴槽の側壁への締め付け力を調整できる。
【0014】
<支柱>
支柱5は、下端側が所定の間隔を離して取付部本体11に固定された一対の棒状体からなり、上端部に手すり部7が設けられている。
支柱5には、固定ねじ17を付けるための高さ調整孔19が複数(本例では5個)設けられており、支柱5の取付部本体11への取付位置を適宜変更しすることで、手すりの高さを調整できる。
【0015】
支柱5は、下端から高さ調整孔19が設けられている高さまでが鉛直方向に真っ直ぐで、そこから外側に幅を広げるように屈曲し、その後鉛直方向に延出している。
支柱5の形状をこのようにすることで、取付部3の大きさが大きくなり過ぎないようにすると共に、手すりの大きさを所望の大きさにすることができる。
【0016】
<手すり部>
手すり部7は、図3に示すように、2本の棒状体が交差する交差形状からなり、2本の棒状体は、取付部3を浴槽の側壁に取り付けた状態において、平面視で側壁に対して斜めに配置されるように構成されている。
本実施の形態における棒状体の、平面視での浴槽の側壁に対する傾斜角度θは、側壁に平行な方向を基準として、50°に設定されている。
なお、傾斜角度θの好ましい範囲には、37°~53°である。この範囲が、利用者にとって、浴槽に入る動作との関係で身体に捻じれが生じにくい範囲となる。なお、最も好ましくは、θ=45°である。
【0017】
また、手すり部7における交差部から支柱5側に延出して手でつかむことができる部分の長さb(図3参照)は、大人の手のひらの大きさを考慮して、80mm~120mmに設定するのが好ましい。
なお、図3のb寸法が支柱5側の端部まで到達していないのは、図1を見ればわかるように、支柱5がある側の手すり部7は支柱5の部分を掴むことができないからである。
【0018】
本実施の形態の手すり部7は、交差形状をなす2本の棒状体が同一平面上となるように設けられているが、本発明はこれに限定されず、例えば2本の棒状体が上下に重なるように配置されるものも含む。
もっとも、本実施の形態の構成にすることで、浴槽への出入りの際に手すり部7を持ち変える動作を円滑にすることができる。
手すり部7の材質は、例えばエラストマーであり、滑るのを防止できるようになっている。
【0019】
上記のように構成された本実施の形態の浴槽用手すり1の使用方法を図4図9に基づいて説明する。使用方法の説明に先立って、各図について簡単に説明する。
図4は、浴槽用手すり1を浴槽の側壁に取り付け、利用者が浴槽に入る動作を再現した図であり、(1-a)、(1-b)から順に動作が進行し、(6-a)、(6-b)で完了する。また、アルファベッドの「a」は手すり部7の拡大図であり、「b」は数字が同じ拡大図の状態における利用者の身体全体を含む図である。
【0020】
図5は、従来例として矩形環状の手すり部21を有する浴槽用手すりの動作説明図である。
図6は、手すり部7、21を持つ際の腕の状態を説明する図であり、図6(a)が発明例、図6(A)が従来例である。
図7は、手すり部7、21を持った際の手首の状態を説明する図であり、図7(a)は発明例で、図7(A)は従来例である。
図8は、手首の曲がる方向の呼び名を説明する図である。
図9は、浴槽に入る際に手すり部7、21を持った状態の姿勢を説明する図であり、図9(a)が発明例、図9(A)が従来例である。
【0021】
利用者が浴槽に入る際には、図4(1-a)に示すように、2本の棒状体のうちの1本を両手でつかむ。このとき、図4(1-b)及び図6(a)に示すように、肘が外向きに曲がるため、図7(a)に示すように、手首が真っ直ぐな状態又は掌屈側(図8参照)に曲がった状態で持つことが可能となり、手首への負担が少ない。特に、リュウマチ等の疾患がある利用者には手首への負担が少ないことが大きなメリットとなる。
【0022】
これに対して、従来例の場合には、図5(1-A)に示すように、浴槽の側壁に平行な部分を両手でつかむことになるが、このとき、図5(1-B)及び図6(A)に示すように、肘が内向きに曲がるため、図7(b)に示すように、手首は背屈側(図7参照)に曲がり、手首への負担が大きい。
【0023】
また、発明例では、図4(1-b)及び図9(a)に示すように、利用者の両肩と足幅方向が自然に平行になり、身体の捻じれが少なく、椎間板への負担が少ない。また、浴槽の側壁を跨ぐ動作も小さくなるため、股関節への負担も小さい。
身体への負担を考えると、屈んだ姿勢では真っ直ぐに立った姿勢よりも約1.5倍の負担が腰椎にかかると言われている。そのため、さらに捻じれが生ずると、負担はさらに大きくなるが、発明例では身体の捻じれを極力防止する構造であるため、腰椎に優しいと言える。
【0024】
これに対して、従来例では、図5(1-B)及び図9(A)に示すように、利用者の両肩の方向が浴槽の側壁に直角で、足幅方向が斜めであるため、身体に捻じれが生ずることになる。
身体の捻じれを少なくするために、図9(A)に示すように、浴槽の側壁に近く立つことになる。この場合、浴槽の側壁と身体の距離が近いため、一度洗い場側に重心移動させて跨ぎ動作をする必要があり、腰椎に負担がかかりやすくなる。
この点、発明例のように手すり部7が交差形状であれば、図9(a)に示すように、手すり部7を掴んだ際に身体が捻じれることなく浴槽の側壁との距離が適度な距離になるので、跨ぎ動作時に重心移動が少なく腰椎への負担も少ない。
【0025】
このように、発明例では、浴槽用手すり1を使って浴槽に入る際の手すり部7をつかむ動作において、手首や身体に負担がないというメリットがある。
【0026】
動作説明を続けると、次に、図4(2-a)(2-b)に示すように、浴槽の側壁を跨いで右脚を浴槽内に入れる。この状態で、一瞬、身体に捻じれが生ずるが、図4(3-a)(3-b)に示すように、手すり部7における浴槽外側方向の部分を握っていた左手を自身の身体に近い手すり部7に持ち変えることで、身体の捻じれが解消される。
前述したように、手すり部7における2本の棒状体が同一平面上となるように設けられているので、持ち変えの動作を円滑にすることができる。
【0027】
さらに、図4(4-a)(4-b)に示すように、手すり部7を握っている右手を身体から遠い手すり部7に持ち変える。このとき、一瞬、身体に捻じれが生ずるが、この状態で、図4(5-a)(5-b)に示すように、浴槽の側壁を左脚で跨いで浴槽内に入れることで、図4(6-a)(6-b)身体の捻じれが解消した状態で動作が完了する。
【0028】
このように、発明例では、浴槽へ入る過程で、手すり部7の持ち変えをすることで、身体への負担を極力抑えた自然な動きをすることができる。
【0029】
これに対して、従来例では、図5(1-A)(1-B)~図5(4-A)(4-B)に示すように、手すり部21の持ち変えをすることなく、一連の動作をすることになり、手首への負担と身体の捻じれが入る前と入った後に生ずることになる。
また、図5(3-A)(3-B)に示すように、左脚を上げたときに、浴槽側の手すり部21を握っている手の手首に負担がかかりやすいという問題がある。
【0030】
以上のように、本実施の形態の浴槽用手すり1によれば、利用者が浴槽に入る際に手首への負担が軽減され、また身体の捻じれが生ずることがなく、身体の動きが自由でない利用者にとって優しい。浴槽から出る際の動作は、入る際の動作の逆となるので、利用者への利便性は入る際と同様である。
【符号の説明】
【0031】
1 浴槽用手すり
3 取付部
5 支柱
7 手すり部
9 側板
11 取付部本体
13 挟持板
15 ハンドル
17 固定ねじ
19 高さ調整孔
21 手すり部(従来例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9