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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086154
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
G02B21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200482
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一朗
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA09
2H087LA01
2H087PA07
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA16
2H087PB13
2H087PB14
2H087PB15
2H087PB16
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
(57)【要約】
【課題】長WDと広視野の仕様を満たし、視野周辺まで収差性能が良好に補正された対物レンズを提供する。
【解決手段】対物レンズ1は正の第1レンズ群G1と負の第2レンズ群G2からなる。第1レンズ群G1は最も物体側に物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズを含む。第2レンズ群G2は凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分を含む。対物レンズ1は一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側に3つ以上の接合レンズを含む。対物レンズ1は以下の条件式を満たす。
2.6≦φL1/DL1≦16 ・・・(1)
0.1≦|R212|/f≦3.5 ・・・(2)
但し、φL1は正メニスカスレンズの外径、DL1は正メニスカスレンズの光軸上の厚さ、R212は一対のメニスカスレンズ成分のうちの物体側のメニスカスレンズ成分の最も像側の面の曲率半径、fは対物レンズ1の焦点距離である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズであって、
物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
前記第1レンズ群よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群からなり、
前記第1レンズ群は、最も物体側に、前記物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズである第1レンズを含み、
前記第2レンズ群は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分を含み、
前記対物レンズは、前記一対のメニスカスレンズ成分よりも前記物体側に、3つ以上の接合レンズを含み、
以下の条件式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
2.6≦φL1/DL1≦16 ・・・(1)
0.1≦|R212|/f≦3.5 ・・・(2)
但し、φL1は、前記第1レンズの外径である。DL1は、前記第1レンズの光軸上の厚さである。R212は、前記一対のメニスカスレンズ成分のうちの前記物体側のメニスカスレンズ成分である第1メニスカスレンズ成分の最も前記像側の面の曲率半径である。fは、前記対物レンズの焦点距離である。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズにおいて、
前記第2レンズ群は、1枚の負レンズの両隣に正レンズを配置した、正負正の3枚接合レンズを含む
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の対物レンズにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
0.5≦|R211|/f≦7 ・・・(3)
但し、R211は、前記第1メニスカスレンズ成分の最も前記物体側の面の曲率半径である。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の対物レンズにおいて、
前記一対のメニスカスレンズ成分の各々は、接合レンズである
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の対物レンズにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
18≦νdL≦31 ・・・(4)
但し、νdLは、前記第1メニスカスレンズ成分の最も前記像側の面よりも前記像側に配置された少なくとも1つ以上の正レンズのアッベ数の最小値である。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の対物レンズにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
1.51≦ndH≦1.75 ・・・(5)
但し、ndHは、前記対物レンズに含まれる少なくとも1つ以上の負レンズの屈折率の最大値である。
【請求項7】
60倍以下の対物レンズであって、
物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
前記第1レンズ群よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群からなり、
以下の条件式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
0.065≦d0/L≦0.3 ・・・(6)
NA≧0.75 ・・・(7)
40mm≦L≦75mm ・・・(8)
但し、d0は、標本面から前記対物レンズの最も物体側の面までの光軸上の距離である。Lは、前記標本面から前記対物レンズの最も前記像側の面までの光軸上の距離である。NAは、前記対物レンズの前記物体側の開口数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハの検査などの産業用途で用いられる対物レンズには、高い分解能を実現するために高い開口数(以降、NAと記す。)が要求される。また、高いスループットを実現するため、広い視野とともに、被験物と対物レンズとの衝突リスクを回避しながら搬送速度を向上させるための長い作動距離(以降、WDと記す。)も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-241009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1には、100倍でNA0.8以上の対物レンズが開示されているが、このような対物レンズは、実視野が小さすぎて十分なスループットを得ることが難しい。また、この対物レンズの構成で広い視野を実現しようとすると、主に像面湾曲を良好に補正することが困難となる。その結果、広い視野の周辺部まで良好な解像度を実現することが難しい。
【0005】
本発明の一側面に係る目的は、長WDと広視野の仕様を満たし、且つ、視野周辺まで収差性能が良好に補正された対物レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る対物レンズは、物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群と、前記第1レンズ群よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群からなる。前記第1レンズ群は、最も物体側に、前記物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズである第1レンズを含む。前記第2レンズ群は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分を含む。前記対物レンズは、前記一対のメニスカスレンズ成分よりも前記物体側に、3つ以上の接合レンズを含む。前記対物レンズは、以下の条件式を満たす。
2.6≦φL1/DL1≦16 ・・・(1)
0.1≦|R212|/f≦3.5 ・・・(2)
但し、φL1は、前記第1レンズの外径である。DL1は、前記第1レンズの光軸上の厚さである。R212は、前記一対のメニスカスレンズ成分のうちの前記物体側のメニスカスレンズ成分である第1メニスカスレンズ成分の最も前記像側の面の曲率半径である。fは、前記対物レンズの焦点距離である。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、長WDと広視野の仕様を満たし、且つ、視野周辺まで収差性能が良好に補正された対物レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係る対物レンズ1の断面図である。
図2】結像レンズ10の断面図である。
図3】対物レンズ1と結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
図4】本発明の実施例2に係る対物レンズ2の断面図である。
図5】対物レンズ2と結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
図6】本発明の実施例3に係る対物レンズ3の断面図である。
図7】対物レンズ3と結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
図8】本発明の実施例4に係る対物レンズ4の断面図である。
図9】対物レンズ4と結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の一実施形態に係る対物レンズについて説明する。本実施形態に係る対物レンズ(以降、単に対物レンズと記す)は、結像レンズと組み合わせて使用される無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。
【0010】
対物レンズは、物点からの発散光を収斂光に変換する正の屈折力を有する第1レンズ群と、第1レンズ群よりも像側に配置された負の屈折力を有する第2レンズ群からなる。第1レンズ群の最も像側のレンズ成分は、物点からの発散光を収斂光に変換し、その収斂光を出射するように作用する最も物体側のレンズ成分である。即ち、収斂光を出射するレンズ面が対物レンズ中に複数存在する場合には、それらのレンズ面のうちの最も物体側のレンズ面が第1レンズ群の最も像側のレンズ面である。第1レンズ群と第2レンズ群の境界は、上記の特徴によって特定することができる。
【0011】
なお、本明細書において、レンズ成分とは、単レンズ、接合レンズを問わず、物点からの光線が通るレンズ面のうち物体側の面と像側の面の2つの面のみが空気と接する一塊のレンズブロックのことをいう。即ち、1つの単レンズは1つのレンズ成分であり、1つの接合レンズも1つのレンズ成分である。一方で、空気を介して並べられた複数の単レンズや複数の接合レンズは1つのレンズ成分とは言わない。
【0012】
第1レンズ群は、物点からの発散光を収斂光に変換して、第2レンズ群に入射させる。第2レンズ群は、第1レンズ群からの収斂光を平行光に変換する。第1レンズ群が物点からの発散光を第1レンズ群で一旦収斂光に変換してから第2レンズ群に入射させることにより、第2レンズ群内部でのマージナル光線高さを第1レンズ群内部でのマージナル光線高さよりも低くすることができる。これにより、負の屈折力を有する第2レンズ群でペッツバール和を効果的に補正することが可能となり、その結果、広視野に亘り像面湾曲を良好に補正することが可能となっている。
【0013】
第1レンズ群は、最も物体側に、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズ(以降、第1レンズともいう。)を含む。高NA長WDの対物レンズを実現するためには、対物レンズへ入射する前の光の発散によって対物レンズへ入射時点におけるマージナル光線高が必然的に大きくなる。このため、最も物体側に正の屈折力を有するレンズを配置して光線束の発散を抑える必要がある。このとき、最も物体側に配置された正の屈折力を有するレンズが物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであれば、主に球面収差とコマ収差を小さく抑える効果が得られる。後述する実施例で示すような特に長いWDを有する対物レンズの場合には、入射時点におけるマージナル光線高は非常に高いため、上述したようなレンズを配置しなければ、光学系全体での良好な収差補正が困難となる。従って、対物レンズの最も物体側には、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズが配置される。
【0014】
第2レンズ群は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分を含む。収斂光が入射する第2レンズ群内に、外側に凸面を内側に凹面を向けたガウス群である一対のメニスカスレンズ成分が含まれることで、向かい合った凹面においてマージナル光線高さを小さくすることができる。その結果、負の屈折力を有する凹面でペッツバール和を効果的に補正することが可能となり、像面湾曲を十分に小さくすることが可能となる。
【0015】
対物レンズは、上述した一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側に、3つ以上の接合レンズを含む。光学特性の異なるレンズを接合した接合レンズを3つ以上含むことで、色収差を十分に補正することができる。特に、低分散の正レンズと高分散の負レンズからなる接合レンズは、一般的に色消し作用と呼ばれる軸上色収差を補正する効果を有する。色消し作用をもつ接合レンズを、マージナル光線高さが大きい領域である一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側の領域に3つ以上配置することによって、良好な軸上色収差補正作用が得られる。
【0016】
また、対物レンズは、以下の条件式(1)及び条件式(2)を満たすように構成されている。
2.6≦φL1/DL1≦16 ・・・(1)
0.1≦|R212|/f≦3.5 ・・・(2)
但し、φL1は、第1レンズの外径である。DL1は、第1レンズの光軸上の厚さである。R212は、一対のメニスカスレンズ成分のうちの物体側のメニスカスレンズ成分(以降、第1メニスカスレンズ成分ともいう)の最も像側の面の曲率半径である。fは、対物レンズの焦点距離である。なお、第1レンズの外径は、通常、第1レンズの像側の面の有効径(直径)に対して0.5mm程度大きい量である。
【0017】
条件式(1)は、長いWDの対物レンズにおいて、主に球面収差とコマ収差を良好に補正するための条件式である。長いWDの影響で大きなマージナル光線高さで入射する発散光は、第1レンズの物体側の凹面では、その発散を大幅に抑えることはできないが、条件式(1)を満たすことで、主に球面収差とコマ収差を良好に補正することができる。
【0018】
φL1/DL1が下限値(2.6)を下回ると、第1レンズの厚さが大きくなりすぎるため、第1レンズ内部でマージナル光線高さが過剰に大きくなってしまう。そのため、第1レンズの像側の面及びそれ以降の光学系に入射するマージナル光線高さが大きくなりすぎ、球面収差やコマ収差の発生量を小さく抑えるのが困難になる。その結果、光学系全体での良好な収差補正が困難になる。一方で、φL1/DL1が上限値(16)を上回ると、第1レンズの外径に対して厚さが薄くなりすぎるため、第1レンズの剛性を確保することが困難となる。その結果、面形状の製造誤差が大きくなってしまうため、所望の収差補正が困難になる。
【0019】
条件式(2)は、主に像面湾曲を良好に補正するための条件式である。条件式(2)を満たすことで、像側に凹面を向けた第1メニスカスレンズ成分でペッツバール和を適度に補正することができるため、光学系全体で良好に像面湾曲を補正することができる。
【0020】
|R212|/fが上限値(3.5)を上回ると、第1メニスカスレンズの凹面の曲率半径が大きくなりすぎるため、十分にペッツバール和を補正することができず、光学系全体で像面湾曲を良好に補正することが困難となる。特に、WDが長い光学系では、入射時点でのマージナル光線高さが必然的に大きくなるため、光学系に含まれる第1レンズ群など物体に比較的近い領域の部分では、光線高を上げる方向に作用する強い凹面を配置しにくく、ペッツバール和の補正が難しい。このため、長WDを有し且つ広視野に亘って十分な収差補正を実現するためには、第1メニスカスレンズで十分なペッツバール和の補正が必要である。一方で、|R212|/fが下限値(0.1)を下回ると、第1メニスカスレンズでペッツバール和を過剰に補正してしまう。このため、光学系全体での像面湾曲の良好な補正が困難となる。
【0021】
以上のように構成された対物レンズによれば、長WDと広視野の仕様を満たし、且つ、視野周辺まで良好に収差を補正することができる。
【0022】
なお、対物レンズは、条件式(1)の代わりに下記の条件式(1-1)又は条件式(1-2)を満たすように構成されてもよい。また、対物レンズは、条件式(2)の代わりに下記の条件式(2-1)又は条件式(2-2)を満たすように構成されてもよい。
3.3≦φL1/DL1≦12 ・・・(1-1)
3.8≦φL1/DL1≦8 ・・・(1-2)
0.2≦|R212|/f≦1.7 ・・・(2-1)
0.3≦|R212|/f≦1.2 ・・・(2-2)
【0023】
以下、対物レンズの望ましい構成について説明する。
第2レンズ群は、1枚の負レンズの両隣に正レンズを配置した、正負正の3枚接合レンズを含むことが望ましい。3枚接合レンズからなる色消しレンズ成分を有することで、対物レンズ内のスペースを有効に使いながら効果的に軸上色収差の補正を行うことが可能となる。また、色消し作用を持つレンズ成分が十分な効果を発揮するために、マージナル光線高さが大きい領域に配置されることが望ましいが、そのような領域では必然的にレンズ径が大きくなってしまう。上記の通り、3枚接合レンズからなる色消しのレンズ成分を用いることで、レンズ径が大きくなってもレンズ成分の剛性を強く保つことができる。
【0024】
一対のメニスカスレンズ成分の各々は、接合レンズであることが望ましい。上述したとおり、一対のメニスカスレンズ成分は主にペッツバール和を小さく抑えて像面湾曲を補正する働きがあるが、これらを接合レンズにすることで、像面湾曲に加えて色収差を補正する作用を持たせることができる。このため、主に軸上色収差を良好に補正することが可能となる。
【0025】
また、対物レンズは、以下の条件式(3)から条件式(5)の少なくとも1つを満たすことが望ましい。
0.5≦|R211|/f≦7 ・・・(3)
18≦νdL≦31 ・・・(4)
1.51≦ndH≦1.75 ・・・(5)
但し、R211は、第1メニスカスレンズ成分の最も物体側の面の曲率半径である。νdLは、第1メニスカスレンズ成分の最も像側の面よりも像側に配置された少なくとも1つ以上の正レンズのアッベ数の最小値である。ndHは、対物レンズに含まれる少なくとも1つ以上の負レンズの屈折率の最大値である。
【0026】
条件式(3)は、主に像面湾曲をさらに良好に補正するための条件式である。上述したとおり、物体側に凸面を向けた第1メニスカスレンズ成分は、ペッツバール和の補正作用があるが、十分な補正作用を得るためには、第1メニスカスレンズ成分の像側の凹面におけるマージナル光線高さを十分に小さくすることが望ましい。
【0027】
|R211|/fが上限値(7)を上回らないことで、第1メニスカスレンズ成分の物体側の凸面の曲率半径が大きくなりすぎることを避けることができる。これにより、その凸面で入射光を収斂させて、像側の凹面におけるマージナル光線高さを十分に小さく抑えることができるため、良好に像面湾曲を補正することができる。また、|R211|/fが下限値(0.5)を下回らないことで、第1メニスカスレンズ成分の物体側の凸面の曲率半径が小さくなりすぎることを避けることができる。これにより、その凸面でのコマ収差等の諸収差の発生が大きくなりすぎることを回避して、良好な収差補正が可能になる。
【0028】
条件式(4)は、主に軸上色収差とともに倍率色収差を良好に補正するための条件式である。対物レンズの軸外光の主光線は、対物レンズ内で光軸と交差するため、その交点の物体側の領域と像側の領域では、軸外主光線高さの符号が逆転する。このような構成では、上述した交点よりも像側の領域に配置された正レンズに高分散の硝材を用いることで、物体側の領域で発生した倍率色収差を効果的に補正することが可能となる。
【0029】
νdLが上限値(31)を上回らないことで、上述した作用により、対物レンズの倍率色収差を良好に補正することが可能となる。また、νdLが下限値(18)を下回らないことで、軸上色収差の発生量が大きくなりすぎることを回避して、対物レンズ全体で軸上色収差を良好に補正することが可能となる。
【0030】
条件式(5)は、球面収差などの波面収差を良好に補正するための条件式である。レンズに負の屈折力を持たせるためには、少なくとも一方の面を凹面にする必要があり、一般的にレンズの周辺よりも中心の厚さが薄くなる。このようなレンズ形状は、製造時に面形状誤差を発生させやすい。
【0031】
ndHが上限値(1.75)を上回らないことで、負レンズの屈折率が大きくなりすぎず、レンズの面形状誤差が波面収差に与える影響を小さく抑えることができる。このため、球面収差などの波面収差を良好に補正することができる。また、一般的に、低い屈折率の硝材は低分散を有する傾向がある。このため、ndHが下限値(1.51)を下回らないことで、負レンズの分散が小さくなりすぎず、色収差を良好に補正することが可能となる。
【0032】
なお、対物レンズは、条件式(3)の代わりに下記の条件式(3-1)又は条件式(3-2)を満たすように構成されてもよい。また、対物レンズは、条件式(4)の代わりに下記の条件式(4-1)又は条件式(4-2)を満たすように構成されてもよい。また、対物レンズは、条件式(5)の代わりに下記の条件式(5-1)又は条件式(5-2)を満たすように構成されてもよい。
0.8≦|R211|/f≦4 ・・・(3-1)
1.2≦|R211|/f≦2.5 ・・・(3-2)
20≦νdL≦30 ・・・(4-1)
24≦νdL≦29 ・・・(4-2)
1.55≦ndH≦1.71 ・・・(5-1)
1.61≦ndH≦1.66 ・・・(5-2)
【0033】
上述した構成の対物レンズは、中倍率を、より具体的には、60倍以下の倍率を有している。即ち、この対物レンズの焦点距離をfとし、この対物レンズと組み合わせて使用される結像レンズの焦点距離をftとすると、ft/f≦60の関係を有する。
【0034】
また、上述した構成の対物レンズは、コンパクトな構成でありながら、高いNAと長WDを実現している。より具体的には、以下の条件式を満たしている。
0.065≦d0/L≦0.3 ・・・(6)
NA≧0.75 ・・・(7)
40mm≦L≦75mm ・・・(8)
但し、d0は、標本面から対物レンズの最も物体側の面までの光軸上の距離である。Lは、標本面から対物レンズの最も像側の面までの光軸上の距離である。NAは、対物レンズの物体側の開口数である。即ち、d0はWDにほぼ等しく、LはWDと対物レンズの全長(より厳密には後述する第1レンズ群から第2レンズ群までの光学系の全長)の和にほぼ等しい。
【0035】
特に、条件式(6)を満たすことで、長いWDとコンパクトな構成を両立している。d0/Lが下限値を下回ると、WDが短すぎるか若しくは対物レンズが大型化してしまう。一方で、d0/Lが上限値を上回ると、レンズの枚数と形状の制限が大きくなりすぎるため、収差の補正が困難になる。
【0036】
以下、上述した対物レンズの実施例について具体的に説明する。
[実施例1]
図1は、本実施例に係る対物レンズ1の断面図である。対物レンズ1は、顕微鏡対物レンズであって、物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、第1レンズ群G1よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群G2からなる。
【0037】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、接合レンズCL1と、接合レンズCL2からなる。
【0038】
接合レンズCL1は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL3と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL4からなる。接合レンズCL2は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるL5と、両凸レンズであるレンズL6からなる。
【0039】
第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL3と、接合レンズCL4と、接合レンズCL5からなる。接合レンズCL4と接合レンズCL5は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分である。対物レンズ1は、一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側に、3つの接合レンズ(接合レンズCL1、接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。
【0040】
接合レンズCL3は、3枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL7と、両凹レンズであるレンズL8と、両凸レンズであるレンズL9からなる。即ち、接合レンズCL3は、1枚の負レンズ(レンズL8)の両隣に正レンズ(レンズL7、レンズL9)を配置した、正負正の3枚接合レンズである。
【0041】
接合レンズCL4は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL10と、両凹レンズであるレンズL11からなる。接合レンズCL5は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凹レンズであるレンズL12と、両凸レンズであるレンズL13からなる。
【0042】
対物レンズ1の各種データは、以下のとおりである。なお、βは、対物レンズ1を結像レンズ10と組み合わせたときの倍率である。NAobは、対物レンズ1の物体側の開口数である。f、f1、f2は、それぞれ対物レンズの焦点距離、第1レンズ群G1の焦点距離、第2レンズ群G2の焦点距離である。その他のパラメータは上述したとおりである。
NAob=0.77、β=50、f=3.6mm、f1=8.461mm、f2=-17.921mm、L=48.7mm、d0=4.04mm、φL1=9.44mm、DL1=2.262mm、R211=6.0569mm、R212=2.8444mm、νdL=28.43、ndH=1.65412
【0043】
対物レンズ1のレンズデータは、以下のとおりである。なお、レンズデータ中のINFは無限大(∞)を示している。
対物レンズ1
s r d nd νd
1 INF 4.040
2 -9.4060 2.262 1.88300 40.76
3 -5.4648 0.200
4 -27.1526 2.125 1.56907 71.30
5 -10.2529 0.150
6 44.3339 5.641 1.43875 94.66
7 -7.7306 1.550 1.61340 44.27
8 -20.8088 0.200
9 39.7597 2.398 1.65412 39.68
10 14.1869 5.904 1.43875 94.66
11 -12.1348 0.250
12 22.5186 4.207 1.43875 94.66
13 -10.2578 1.010 1.61340 44.27
14 6.4582 5.189 1.43875 94.66
15 -65.9501 0.200
16 6.0569 5.033 1.56907 71.30
17 -26.5773 2.570 1.65412 39.68
18 2.8444 2.437
19 -4.4665 1.210 1.48749 70.23
20 7.1260 2.122 1.78880 28.43
21 -13.6986 110.000
【0044】
ここで、sは面番号を、rは曲率半径(mm)を、dは面間隔(mm)を、ndはd線に対する屈折率を、νdはアッベ数を示す。これらの記号は、以降の実施例でも同様である。なお、面番号s1が示す面は、標本面である。面番号s2,s21が示す面は、それぞれ対物レンズ1の最も物体側のレンズ面、最も像側のレンズ面である。また、例えば、面間隔d1は、面番号s1が示す面から面番号s2が示す面までの光軸上の距離を示している。なお、面間隔d21は、面番号s21が示す面から結像レンズまでの光軸上の距離(110mm)を示している。
【0045】
対物レンズ1は、以下で示されるように、条件式(1)から(8)を満たしている。
(1)φL1/DL1=4.173
(2)|R212|/f=0.790
(3)|R211|/f=1.682
(4)νdL=28.430 (レンズL13)
(5)ndH=1.654 (レンズL5、レンズL11)
(6)d0/L=0.083
(7)NA=0.77
(8)L=48.7mm
【0046】
図2は、対物レンズ1と組み合わせて使用される結像レンズ10の断面図である。結像レンズ10は、無限遠補正型の対物レンズと組み合わせて物体の拡大像を形成する顕微鏡結像レンズである。結像レンズ10は、両凸レンズであるレンズTL1と、両凸レンズの像側に配置された物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズTL2と、からなる接合レンズCTL1である。結像レンズ10は、対物レンズ1の最も像側のレンズ面(面番号s21)から結像レンズ10の最も物体側のレンズ面(面番号s1)までの光軸上の距離が110mmになるように、配置されている。なお、結像レンズ10の焦点距離は180mmである。
【0047】
結像レンズ10のレンズデータは、以下のとおりである。
結像レンズ10
s r d nd νd
1 193.123 5.5 1.48749 70.23
2 -61.238 4.6 1.72047 34.71
3 -105.391
【0048】
図3は、対物レンズ1と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ1と結像レンズ10が光学像を形成する像面における収差を示している。図3(a)は球面収差図である。図3(b)は正弦条件違反量を示した図である。図3(c)は非点収差図である。図3(d)は像高比7割(像高9.27mm)でのコマ収差図である。なお、図中の“M”はメリディオナル成分、“S”はサジタル成分を示している。図3に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。
【0049】
[実施例2]
図4は、本実施例に係る対物レンズ2の断面図である。対物レンズ2は、顕微鏡対物レンズであって、物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、第1レンズ群G1よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群G2からなる。
【0050】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、接合レンズCL1と、接合レンズCL2からなる。
【0051】
接合レンズCL1は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL3と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL4からなる。接合レンズCL2は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるL5と、両凸レンズであるレンズL6からなる。
【0052】
第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL3と、接合レンズCL4と、接合レンズCL5からなる。接合レンズCL4と接合レンズCL5は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分である。対物レンズ2は、一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側に、3つの接合レンズ(接合レンズCL1、接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。
【0053】
接合レンズCL3は、3枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL7と、両凹レンズであるレンズL8と、両凸レンズであるレンズL9からなる。即ち、接合レンズCL3は、1枚の負レンズ(レンズL8)の両隣に正レンズ(レンズL7、レンズL9)を配置した、正負正の3枚接合レンズである。
【0054】
接合レンズCL4は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL10と、両凹レンズであるレンズL11からなる。接合レンズCL5は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凹レンズであるレンズL12と、両凸レンズであるレンズL13からなる。
【0055】
対物レンズ2の各種データは、以下のとおりである。
NAob=0.8、β=50、f=3.6mm、f1=8.529mm、f2=-17.839mm、L=48.699mm、d0=4.04mm、φL1=9.9mm、DL1=2.306mm、R211=6.0577mm、R212=2.8933mm、νdL=28.43、ndH=1.65412
【0056】
対物レンズ2のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ2
s r d nd νd
1 INF 4.040
2 -9.4059 2.306 1.88300 40.76
3 -5.5903 0.200
4 -28.3283 2.230 1.56907 71.30
5 -10.0330 0.150
6 39.2527 5.456 1.43875 94.66
7 -7.8854 1.587 1.61340 44.27
8 -21.2762 0.200
9 42.9739 2.616 1.65412 39.68
10 14.1151 6.128 1.43875 94.66
11 -12.1339 0.250
12 20.2765 4.284 1.43875 94.66
13 -10.3822 0.692 1.61340 44.27
14 6.2850 5.015 1.43875 94.66
15 -93.6689 0.200
16 6.0577 4.804 1.56907 71.30
17 -105.9012 2.570 1.65412 39.68
18 2.8933 2.585
19 -4.5205 1.191 1.48749 70.23
20 7.2372 2.194 1.78880 28.43
21 -14.3850 110.000
【0057】
対物レンズ2は、以下で示されるように、条件式(1)から(8)を満たしている。
(1)φL1/DL1=4.293
(2)|R212|/f=0.804
(3)|R211|/f=1.683
(4)νdL=28.430 (レンズL13)
(5)ndH=1.654 (レンズL5、レンズL11)
(6)d0/L=0.083
(7)NA=0.80
(8)L=48.699mm
【0058】
図5は、対物レンズ2と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ2と結像レンズ10が光学像を形成する像面における収差を示している。図5(a)は球面収差図である。図5(b)は正弦条件違反量を示した図である。図5(c)は非点収差図である。図5(d)は像高比7割(像高9.27mm)でのコマ収差図である。図5に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。
【0059】
[実施例3]
図6は、本実施例に係る対物レンズ3の断面図である。対物レンズ3は、顕微鏡対物レンズであって、物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、第1レンズ群G1よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群G2からなる。
【0060】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、接合レンズCL1と、接合レンズCL2からなる。
【0061】
接合レンズCL1は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL3と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL4からなる。接合レンズCL2は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるL5と、両凸レンズであるレンズL6からなる。
【0062】
第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL3と、接合レンズCL4と、接合レンズCL5からなる。接合レンズCL4と接合レンズCL5は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分である。対物レンズ3は、一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側に、3つの接合レンズ(接合レンズCL1、接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。
【0063】
接合レンズCL3は、3枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL7と、両凹レンズであるレンズL8と、両凸レンズであるレンズL9からなる。即ち、接合レンズCL3は、1枚の負レンズ(レンズL8)の両隣に正レンズ(レンズL7、レンズL9)を配置した、正負正の3枚接合レンズである。
【0064】
接合レンズCL4は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL10と、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL11からなる。接合レンズCL5は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凹レンズであるレンズL12と、両凸レンズであるレンズL13からなる。
【0065】
対物レンズ3の各種データは、以下のとおりである。
NAob=0.82、β=50、f=3.6mm、f1=8.643mm、f2=-17.573mm、L=49.299mm、d0=3.733mm、φL1=9.76mm、DL1=2.306mm、R211=6.337mm、R212=3.0206mm、νdL=29.84、ndH=1.65412
【0066】
対物レンズ3のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ3
s r d nd νd
1 INF 3.733
2 -8.2556 2.306 1.88300 40.76
3 -5.5117 0.200
4 -23.7453 2.143 1.56907 71.30
5 -8.7229 0.150
6 38.6247 6.006 1.43875 94.66
7 -7.8819 2.525 1.61340 44.27
8 -17.7012 0.200
9 52.3455 1.560 1.65412 39.68
10 15.0020 6.140 1.43875 94.66
11 -12.6408 0.250
12 18.8709 4.205 1.43875 94.66
13 -10.6324 0.500 1.61340 44.27
14 6.4238 4.954 1.43875 94.66
15 -117.9018 0.200
16 6.3370 4.768 1.56907 71.30
17 9.8501 2.570 1.65412 39.68
18 3.0206 2.522
19 -4.7575 2.814 1.48749 70.23
20 8.9801 1.552 1.80000 29.84
21 -21.1397 110.000
【0067】
対物レンズ3は、以下で示されるように、条件式(1)から(8)を満たしている。
(1)φL1/DL1=4.232
(2)|R212|/f=0.839
(3)|R211|/f=1.760
(4)νdL=29.840 (レンズL13)
(5)ndH=1.654 (レンズL5、レンズL11)
(6)d0/L=0.076
(7)NA=0.82
(8)L=49.299mm
【0068】
図7は、対物レンズ3と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ3と結像レンズ10が光学像を形成する像面における収差を示している。図7(a)は球面収差図である。図7(b)は正弦条件違反量を示した図である。図7(c)は非点収差図である。図7(d)は像高比7割(像高9.27mm)でのコマ収差図である。図7に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。
【0069】
[実施例4]
図8は、本実施例に係る対物レンズ4の断面図である。対物レンズ4は、顕微鏡対物レンズであって、物点からの発散光を収斂光に変換する、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、第1レンズ群G1よりも像側に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群G2からなる。
【0070】
第1レンズ群G1は、物体側から順に配置された、物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、接合レンズCL1と、接合レンズCL2からなる。
【0071】
接合レンズCL1は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL3と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL4からなる。接合レンズCL2は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるL5と、両凸レンズであるレンズL6からなる。
【0072】
第2レンズ群G2は、物体側から順に配置された、接合レンズCL3と、接合レンズCL4と、接合レンズCL5と、両凸レンズであるレンズL14からなる。接合レンズCL4と接合レンズCL5は、凹面を互いに向かい合わせた一対のメニスカスレンズ成分である。対物レンズ4は、一対のメニスカスレンズ成分よりも物体側に、3つの接合レンズ(接合レンズCL1、接合レンズCL2、接合レンズCL3)を含んでいる。
【0073】
接合レンズCL3は、3枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凸レンズであるレンズL7と、両凹レンズであるレンズL8と、両凸レンズであるレンズL9からなる。即ち、接合レンズCL3は、1枚の負レンズ(レンズL8)の両隣に正レンズ(レンズL7、レンズL9)を配置した、正負正の3枚接合レンズである。
【0074】
接合レンズCL4は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL10と、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL11からなる。接合レンズCL5は、2枚接合レンズであり、物体側から順に配置された、両凹レンズであるレンズL12と、両凸レンズであるレンズL13からなる。
【0075】
対物レンズ4の各種データは、以下のとおりである。
NAob=0.8、β=50、f=3.6mm、f1=8.824mm、f2=-17.901mm、L=53.001mm、d0=3.905mm、φL1=9.74mm、DL1=2.359mm、R211=6.1484mm、R212=3.0222mm、νdL=25.42、ndH=1.673
【0076】
対物レンズ4のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ4
s r d nd νd
1 INF 3.906
2 -8.3496 2.359 1.88300 40.76
3 -5.5048 0.200
4 -30.7266 2.031 1.56907 71.30
5 -9.4401 0.150
6 37.1063 5.361 1.43875 94.66
7 -8.0669 1.659 1.61340 44.27
8 -19.4171 2.208
9 49.6209 2.651 1.67300 38.26
10 14.6608 5.647 1.43875 94.66
11 -12.3950 0.250
12 16.9791 4.017 1.43875 94.66
13 -11.4067 1.000 1.61340 44.27
14 6.0053 4.506 1.43875 94.66
15 -241.4394 0.200
16 6.1484 4.711 1.56907 71.30
17 31.8644 2.570 1.65412 39.68
18 3.0222 2.290
19 -4.1357 1.000 1.48749 70.23
20 10.8194 0.941 1.76182 26.52
21 -39.7297 4.548
22 33.3089 0.796 1.80518 25.42
23 -73.8152 110.000
【0077】
対物レンズ4は、以下で示されるように、条件式(1)から(8)を満たしている。
(1)φL1/DL1=4.129
(2)|R212|/f=0.840
(3)|R211|/f=1.708
(4)νdL=25.420 (レンズL14)
(5)ndH=1.673 (レンズL5)
(6)d0/L=0.074
(7)NA=0.80
(8)L=53.001mm
【0078】
図9は、対物レンズ4と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ4と結像レンズ10が光学像を形成する像面における収差を示している。図9(a)は球面収差図である。図9(b)は正弦条件違反量を示した図である。図9(c)は非点収差図である。図9(d)は像高比7割(像高9.27mm)でのコマ収差図である。図9に示されるように、本実施例では、広い視野に渡って収差が良好に補正されている。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3、4 ・・・対物レンズ
10 ・・・結像レンズ
G1 ・・・第1レンズ群
G2 ・・・第2レンズ群
L1~L14、TL1~TL2 ・・・レンズ
CL1~CL5、CTL1 ・・・接合レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9