(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086180
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】超電導コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20230615BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20230615BHJP
H10N 60/355 20230101ALI20230615BHJP
【FI】
H01F6/06 500
H01F6/04
H01L39/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200527
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晋士
(72)【発明者】
【氏名】一木 洋太
(72)【発明者】
【氏名】青木 学
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA30
4M114BB04
4M114CC03
4M114DA60
4M114DB02
4M114DB12
4M114DB52
4M114DB55
(57)【要約】
【課題】複数本の超電導線を適切に接続することができる超電導コイル装置を提供する。
【解決手段】超電導線を巻回してコイル状に形成した超電導コイル2と、この超電導コイル用の励磁電源に対して前記超電導コイルと電気的に並列に接続した熱式の永久電流スイッチ(PCS3)とを備える超電導コイル装置10において、永久電流スイッチは、超電導コイル2の径方向の外側に同心円状に配置され、永久電流スイッチは、複数本の超電導線を無誘導巻きしており、複数本の超電導線の少なくとも一方の端部同士が超電導接続された超電導接続部5Aを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線を巻回してコイル状に形成した超電導コイルと、この超電導コイル用の励磁電源に対して前記超電導コイルと電気的に並列に接続した熱式の永久電流スイッチとを備える超電導コイル装置において、
前記永久電流スイッチは、前記超電導コイルの径方向の外側に同心円状に配置され、
前記永久電流スイッチは、複数本の超電導線を無誘導巻きしており、前記複数本の超電導線の少なくとも一方の端部同士が超電導接続された超電導接続部を有する
ことを特徴とする超電導コイル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導コイル装置であって、
前記超電導コイルと前記永久電流スイッチ間には断熱材が配置される
ことを特徴とする超電導コイル装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超電導コイル装置であって、
前記永久電流スイッチに接するように熱伝導体が配置され、
前記熱伝導体は、冷却板に接している
ことを特徴とする超電導コイル装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項の超電導コイル装置を、前記同心円状の中心軸を合わせて複数組み合わせて配置される
ことを特徴とする超電導コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超電導体を用いた超電導線材と永久電流スイッチで構成され、永久電流モード運転を実現する超電導コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導マグネットは、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴イメージング)装置や、NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)装置などで用いられる。このような機器では、高い磁場安定度が要求されるため、超電導マグネットを超電導体のみで閉回路を構成し、電流を通電する永久電流モードで運転される。運転中は直流電源から切り離して永久電流スイッチ(PCS:Persistent Current Switch)で超電導コイル両端を短絡し、実質的な電気抵抗ゼロの閉ループを形成する。この閉ループ中を長期間にわたって電流が減衰することなく流れ続ける状態が永久電流モードである。一般的に、永久電流モードで超電導コイルを励磁することにより、時間的な変動がない磁場を得ることができ、また、電源と接続することなく磁場を得ることができる。このため、MRIやNMRなどの超電導コイルは永久電流モードで使用することが一般的である。
【0003】
このPCSは、高抵抗の金属母材に超電導フィラメントが埋め込まれた超電導線を巻きまわしたもので構成され、超電導から常伝導に転移させるためのヒータが備えられ、電気的に抵抗0(オン状態)と高抵抗(オフ状態)とする機能を持つ。
【0004】
また、従来の超電導マグネット装置では、ニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)の超電導線材が使用されており、それらの多くは液体ヘリウムで4.2Kに冷却して使用していた。このような超電導マグネットにおいて、PCSのヒータによる熱が超電導線材に伝導し、超電導体がクエンチする可能性があった。このクエンチを抑制するには、臨界温度の高い超電導材料を用いることで対策できるが、液体ヘリウムのような低温領域では、超電導から常伝導に転移させるために必要な熱量を大きくする必要があり、液体ヘリウムの蒸発などが起こりえる。
【0005】
そのような背景から、金属系の超電導材料であるニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)などに対して、超電導に転移する臨界温度がと比較して高い二ホウ化マグネシウム(MgB2)を用いた永久電流スイッチが期待されている。MgB2はその臨界温度の高さから、液体ヘリウムによる冷却に代わり、超電導マグネットを冷凍機で冷却することが可能となる。さらに、MgB2は、酸化物超電導体を用いた線材と比較すると、線材径が小さいため、線材内部で発生する循環電流が小さく、磁場安定性が高いという特徴を有している。
【0006】
図11に超電導マグネットの構成例の一つを示す。超電導マグネットは、冷却容器1の内部に超電導コイル2とPCS3が配置されており、これらは支持板を介して、冷凍機によって冷却される。超電導コイル2を励磁する際には、室温側に配置される電源からリード線19を介し、電流が供給される。また、超電導コイル2とPCS3は超電導接続部5で接続される。
【0007】
図12A~
図12Cは、PCS3と超電導コイル2の電気回路の一例を示している。超電導コイル2を励磁する際には、PCS3がオフ、すなわち、PCS3が電気抵抗を有した状態で電源20を用いて超電導コイル2を励磁する。PCS3がオフの状態では数Ω~数十Ω程度の電気抵抗が持つように設計される。永久電流運転時には、PCS3をオン、すなわち、PCS3を超電導状態にして超電導コイル2両端を電気抵抗ゼロで短絡した状態にする。超電導コイル2の磁場を落とす際には、PCS3をオフにして、保護抵抗21で超電導コイル2に蓄えられたエネルギーを消費する。PCS3が超電導状態に転移すると、超電導体の電気抵抗がゼロであるため、超電導コイル2とPCS3、で構成される閉回路において、電流の減衰がない永久電流モードを実現することができ、超電導マグネットにおいて高い安定度を有する磁場を得ることができる。このような永久電流モードを実現させるためには、PCS3をオン/オフするためのヒータ加熱の影響で温度が高くなるPCS3の熱を超電導コイル2に伝達させないようにする配置や冷却構造が必要となる。
【0008】
例えば、非特許文献1には、高温超電導体であるMgB2線材と永久電流スイッチで構成される超電導コイル装置の例が記載されている。超電導コイルと永久電流スイッチで構成される要素を複数用意することで、所望の磁場仕様を実現するための構成である。本システムは、固体窒素を冷媒として用いることで超電導線コイルを低温状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jiayin Ling1 et al.:A persistent-mode 0.5T solid-nitrogen-cooled MgB2magnet for MRI, Supercond Sci Technol. 2017 February,30(2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1に記載される構成は、超電導コイルと永久電流スイッチからなる超電導コイル装置を複数接続する構成であるが、超電導コイルの外側に永久電流スイッチが配置され、超電導コイル装置の径方向に大型化するといった課題がある。また、超電導コイルが生成する磁場の方向と、永久電流スイッチが生成する磁場の方向が一致しておらず、例えば、MRIシステムのように高い磁場均一度が必要なシステムに適用するには、その磁場を補正するための機構が複雑になる可能性がある。
【0012】
特許文献1には、永久電流スイッチは、超電導コイルの外側に、超電導コイルと同心状に超電導導体を超電導コイルの外周域全体にわたって巻回してコイル状に形成してなるものとする超電導磁石が提案されている。これにより、非特許文献1の課題は解決できると考えられる。しかし、特許文献1の構成を適用するには、複数本の超電導線をどのように接続して構成するかが重要であるが、特許文献1には、その提示・示唆されておらず、改善する余地がある。
【0013】
本発明は、複数本の超電導線を適切に接続することができる超電導コイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明の超電導コイル装置は、超電導線を巻回してコイル状に形成した超電導コイルと、この超電導コイル用の励磁電源に対して前記超電導コイルと電気的に並列に接続した熱式の永久電流スイッチとを備える超電導コイル装置において、前記永久電流スイッチは、前記超電導コイルの径方向の外側に同心円状に配置され、前記永久電流スイッチは、複数本の超電導線を無誘導巻きしており、前記複数本の超電導線の少なくとも一方の端部同士が超電導接続された超電導接続部を有することを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数本の超電導線を適切に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る高温超電導体で構成される超電導コイルと永久電流スイッチの配置を示す図である。
【
図2】高温超電導体で構成される超電導コイルと永久電流スイッチの配置を示す図であり、超電導コイルと永久電流スイッチの高さ方向の中心高さが異なる構成を示す図である。
【
図3】PCSコイルボビンにPCS線を巻線している様子を示した図である。
【
図4A】PCSコイルボビンにPCS線を巻線し終えた後の構成を示したPCSの側面図である。
【
図4B】PCSの熱処理前の一態様を示す概略図である。
【
図5A】超電導接続部であるPCSの折り返し部に用いる超電導接続容器の構造を示す平面図である。
【
図6】PCSの折り返し部を構成するための超電導接続容器に、一部の金属シースを切削し、MgB
2フィラメントを露出させたPCS線を挿入した際の接続容器の断面図である。
【
図7】PCSの折り返し部を構成するための超電導接続容器に、MgB
2粉末を充填した際の接続容器の断面図である。
【
図8】PCSの降り返し部を構成するための超電導接続容器のMgB
2粉末を、加圧治具を用いて加圧した際の接続容器の断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る高温超電導体で構成される超電導コイルと永久電流スイッチと、その冷却構造を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係る高温超電導体で構成される超電導コイルと永久電流スイッチからなる超電導コイル装置を複数並べた構成を示す図である。
【
図11】従来の超電導コイルと永久電流スイッチの例を示す図である。
【
図12A】従来の超電導コイルと永久電流スイッチの電気回路図の例を示す図であり、超電導コイル励磁時の場合である。
【
図12B】従来の超電導コイルと永久電流スイッチの電気回路図の例を示す図であり、永久電流運転時の場合である。
【
図12C】従来の超電導コイルと永久電流スイッチの電気回路図の例を示す図であり、超電導コイル消磁時の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照して本発明の超電導コイル装置について詳細に説明する。
<<第1実施形態>>
図1は、第1実施形態に係る高温超電導体で構成される超電導コイル2と永久電流スイッチ(PCS3)の配置を示す図である。超電導コイル装置10は、冷却容器1内に、超電導コイル2、PCS3およびヒータ4で構成され、超電導コイル2により磁場が生成される。超電導コイル装置10は、超電導コイル2の外側にPCS3が配置される構成である。さらに、超電導コイル2とPCS3が同心円状に配置されることから、各部品が生成する磁場が同一方向となり、高い磁場安定性が必要となるNMRシステムやMRIシステムなどに対して、磁場安定度の確保のための機構を簡易化できる。
【0018】
また、PCS3は、複数本の超電導線(PCS線22(
図3参照))を無誘導巻きしており、複数本の超電導線(PCS線22)の少なくとも一方の端部同士が超電導接続された超電導接続部5Aを有する。超電導コイル2とPCS3の接続には、2個所の超電導接続部5Bを有する。
【0019】
PCS3は、PCSコイルボビン24(
図3参照)にPCS線22(
図3参照)を巻きまわす際、各層毎にヒータ線が挿入されるようにし、PCS線とヒータ線を交互に配置することで、小さな熱量でPCS線を常伝導転移させる。このとき、ヒータ線はシート状のものなど所望の熱量を投入できる発熱体であれば、その構造は線に限る必要はない。
【0020】
また、超電導コイル2は、例えば、NbTiのような低温超電導体であった場合、ヒータによる熱が超電導コイルに伝達し、超電導コイルがクエンチする可能性が高くなるため、超電導コイル2とPCS3の距離を大きくする必要があり、超電導コイル装置が大型化する。このため、超電導コイル2はMgB2線のような高温超電導体であることが望ましい。なお、上述した超電導線材として、MgB2線を例に説明するが、イットリウム系やビスマス系などその他の超電導材料で構成された超電導線材を用いて構成することも考えられる。
【0021】
さらに、超電導コイル2はワインドアンドリアクトと言われる、線材を熱処理前に巻線することで、PCS3と超電導接続される構成である。これにより、従来の熱処理後に巻線する超電導コイルに対して、PCSとの超電導接続が容易になる。
【0022】
本構成のように、超電導コイル2の外側にPCS3が配置される構成となることで、永久電流運転機能を有する超電導コイル装置を小型化できる。さらに、超電導コイル2とPCS3が同心円状に配置されることから、各部品が生成する磁場が同一方向となり、高い磁場安定性が必要となるNMRシステムやMRIシステムなどに対して、磁場安定度の確保のための機構を簡易化できる。
【0023】
なお、
図1に示す実施形態では高さ方向に対して、超電導コイル2とPCS3の中心部が同じ高さである図を用いて説明したが、
図2に示すように、永久電流スイッチ中心位置12と超電導コイル中心位置11が同じ高さでなくても同様の効果が得られる。
【0024】
次に、超電導線の接続方法について、
図3から
図8を用いて説明する。超電導接続箇所は、
図1に示した超電導接続部5Aおよび超電導接続部5Bがある。ここでは、超電導接続部5Aを例に説明する。
【0025】
図3は、PCSコイルボビン24にPCSを構成する超電導線材(以下、PCS線22)を巻回している様子である。
図3中、PCS線ドラム23近傍の矢印はPCS線22の送出方向を示しており、PCSコイルボビン24近傍の矢印はPCS線22巻取方向を示している。
【0026】
第1実施形態におけるPCSの巻線作業は、2つのPCS線ドラム23からPCS線22を同時に供給し、PCSコイルボビン24に巻き返す。PCSコイルボビン24にPCS線22を巻回す際に、各層毎にヒータ線が挿入されるようにヒータ線を巻回し、PCS線22とヒータ線が各層毎に配置されるようにする。PCS線22とヒータ線を交互に配置することで、小さな熱量でPCS線22を常電導転移させることができる。
【0027】
図4Aは、PCSコイルボビン24にPCS線22を巻線し終えた後の構成を示したPCS3の側面図である。PCSコイルボビン24に2本のPCS線22を巻回したため、PCS線端部25が2か所形成される。第1実施形態におけるPCS3では、このうち一方のPCS線端部25を超電導接続することにより、無誘導巻きを実現する。
【0028】
図4Bは、PCS3の熱処理前の一態様を示す概略図である。
図4Bは、第1実施形態に係るPCS3の熱処理前、つまり、完成前の一態様を示す概略図である。
図4Bに示すように、熱処理前のPCS3は、超電導接続部5Aを鍔部(つば部)に固定せずに取り扱うことができるが、熱処理後のPCS3は、超電導接続部5Aが鍔部に固定される。熱処理を行う前に超電導接続部5Aを鍔部に固定し、熱処理を行ってPCS3を完成させる。
【0029】
図5Aは、超電導接続部5Aに用いる接続容器30の構造を示したものである。
図5Bは、
図5AのA-A’断面図である。
図5Cは、
図5AのB-B’断面図である。接続容器30は、MgB
2粉体充填容器31と加圧治具32から構成されている。MgB
2粉体充填容器31には、PCS線22(
図4A参照)をMgB2粉体充填容器31内に導入するための線材挿入部34と、接続容器30をPCSコイルボビン24(
図4A参照)に固定するための接続容器固定部35、さらに、MgB
2粉体を充填するためのMgB
2粉体充填部33が設けられている。
【0030】
図6から
図8および
図4Bを参照して、PCS3の無誘導巻きの折り返し部となる超電導接続部5Aを形成するプロセスの一例について、順を追って説明する。
図6は、PCSの折り返し部を構成するための超電導接続容器に、一部の金属シースを切削し、MgB
2フィラメントを露出させたPCS線を挿入した際の接続容器の断面図である。
図6に示すように、先ず、MgB
2超電導フィラメント36を含むPCS線22の表面の金属シース27を切削し、MgB
2超電導フィラメント36を露出させる。MgB
2フィラメント26を露出させたPCS線22をMgB
2粉体充填容器31に設けた線材挿入部34から挿入し、MgB
2超電導フィラメント36の露出部が、MgB
2粉体充填部33に位置するように配置する。
【0031】
図7は、PCSの折り返し部を構成するための超電導接続容器に、MgB
2粉末を充填した際の接続容器の断面図である。
図8は、PCSの降り返し部を構成するための超電導接続容器のMgB
2粉末を、加圧治具を用いて加圧した際の接続容器の断面図である。
【0032】
図7に示すようにMgB2粉末38をMgB
2粉体充填容器31のMgB
2粉体充填部33に充填する。MgB2粉末38を充填した後、
図8に示すように加圧治具32を用いてMgB2粉末38を、プレス機(図示せず)などを用いて圧力を加えて押し固める。加圧時あるいは加圧後に、PCS線22と線材挿入部34との間の間隙を封止材39で封止する。PCSコイルボビン24に巻回されたPCS線22の一方のPCS線端部に折り返し部の超電導接続部5Aが設けられた状態となる。
【0033】
その後、超電導接続部5Aを熱処理することで、2本のPCS線22の周辺にMgB2焼結体が形成され、PCS線22内のMgB2超電導フィラメント36がMgB2焼結体によって接続される。
【0034】
本実施形態で説明したPCS3は、複数本の超電導線材を超電導接続した超電導接続部5Aで無誘導巻きを実現している。本実施形態ではこのようにして超電導線材の折り返し部を構成するので、一度、PCS線ドラムに超電導線材を巻き直す必要がなくなる。また、独立した複数本の超電導線材をPCSコイルボビン24に巻回するので、作業性が向上する。さらに、無誘導巻きの折り返し部で超電導線材を曲げる必要がないため、曲げ半径の影響を受けて超電導線材の超電導特性が劣化するということがない。また、無誘導巻きの折り返し部で超電導線材を曲げる必要がないため、超電導線材の曲げ応力による超電導特性の劣化を防ぐことができる。
以上、超電導接続部5Aについて説明したが、超電導接続部5Bについても適用することができる(
図5Aから
図5C、
図6から
図8参照)。
【0035】
<<第2実施形態>>
図9は、第2実施形態に係る高温超電導体で構成される超電導コイル2と永久電流スイッチ(PCS3)と、その冷却構造を示す図である。
図9に示す第2実施形態は、
図1と比較して、超電導コイル装置10の冷却容器1内に、断熱材9、金属7、冷却板8が追加され、超電導コイル2とPCS3間には断熱材9が配置されている。PCS3に接するように熱伝導体である金属7が配置され、熱伝導体は、冷却板8に接している。
【0036】
超電導コイル2に高温超電導体を用いた場合でも、ヒータ4による熱でクエンチする可能性があるため、本構成では、ヒータ4によって発生した熱を超電導コイル2に流さないよう、金属7を用いて、伝導冷却により冷却板8へ放熱し、断熱材9を用いて超電導コイルの温度上昇を抑制する構成である。断熱材9は例えば、発砲スチレンなどであるが、断熱機能を有する材料であれば同様の効果が得られる。また、金属7は熱的に良導体である銅などが候補として挙げられるが、熱伝導性が高い材料であれば同様の効果が得られる。なお、
図9では、超電導コイル2とPCS3との超電導接続部5B(
図1参照)を記載していないが、超電導コイル2とPCS3は超電導接続5Bで接続される。
【0037】
<<第3実施形態>>
図10は、第3実施形態に係る高温超電導体で構成される超電導コイル2と永久電流スイッチ(PCS3)からなる超電導コイル装置10を複数並べた構成を示す図である。
図10に示す第3実施形態は、超電導コイル装置10が超電導コイル2の中心軸15を合わせて複数組み合わせられた構成を示すものである。複数の超電導コイル装置10は、半田接続部13にて接続され、冷却容器1内に配置される。本構成のように、超電導コイル装置10を複数組み合わせることで、超電導磁石に求められる磁場仕様を確保することが可能である。さらに、超電導コイル装置10の一部に不具合があった場合でも、超電導コイル全てを交換する必要がなく、不具合のあった一部の超電導コイル装置の変換だけで済む。
【0038】
なお、第3実施形態で示す超電導コイル装置は、超電導コイル装置10を複数組み合わせたものであるが、超電導コイル装置10を異なる仕様として組み合わせてもよい。また、2つの超電導コイル装置10で構成しているが、複数の組み合わせてもよい。この組み合わせは、超電導磁石の仕様によって決まり、その仕様に合わせた組み合わせや個数で決定される。従来の超電導マグネットは、製品仕様によって、磁場が異なるため、超電導磁石の構成や超電導磁石の支持構造などが変わる。その結果、製品ごとに設計をする必要があり、製造期間の長期化および高コスト化を招く可能性があった。しかし、本実施形態に示すように、様々な仕様を持つ超電導磁石を、異なる磁場仕様を持つ超電導コイル装置を組み合わせて構成することで、製造や開発にかかる期間を短縮できることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 冷却容器
2 超電導コイル
3 PCS(永久電流スイッチ)
4 ヒータ
5,5A,5B 超電導接続部
6 支持板
7 金属(熱伝導体)
8 冷却板
9 断熱材
10 超電導コイル装置
11 超電導コイル中心位置
12 永久電流スイッチ中心位置
13 半田接続部
14 超電導コイル装置複合体
19 リード線
20 電源
21 保護抵抗
22 PCS線(超電導線)
23 PCS線ドラム
24 PCSコイルボビン
25 PCS線端部
30 接続容器
31 MgB2粉体充填容器
32 加圧治具
33 MgB2粉体充填部
34 線材挿入部
35 接続容器固定部
36 MgB2超電導フィラメント
38 MgB2粉末
39 封止材