(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086187
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】インバータ制御システム及びインバータ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230615BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20230615BHJP
B66B 1/30 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 M
H02M7/493
B66B1/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200538
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 真希
(72)【発明者】
【氏名】高山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】迫田 友治
【テーマコード(参考)】
3F502
5H770
【Fターム(参考)】
3F502JB18
3F502KA09
3F502KA18
3F502NA14
5H770AA17
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA27
5H770DA30
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770HA06X
5H770HA07Z
5H770LA02Y
5H770LB05
5H770LB09
5H770PA02
5H770PA47
5H770QA21
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】並列接続されたインバータの寿命の均等化や長寿命化が、適切に行えるようにする。
【解決手段】N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータ110~190により、昇降機を駆動するモータ14に電源を供給する構成とした上で、並列接続されたそれぞれのインバータを制御するインバータ制御システムである。そして、昇降機の積載量を検出する負荷検出部301と、負荷検出部が検出した積載量と昇降機の速度に応じて必要な最大負荷電流を算出する最大負荷電流算出部302と、最大負荷電流算出部が算出した最大負荷電流に応じて、N個に並列接続されたインバータ110~190の中で、モータに電源を供給するために作動させるインバータを、N個未満に制限するゲート指令部201とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給して、並列接続されたそれぞれの前記インバータを制御するインバータ制御システムにおいて、
前記昇降機の積載量を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部が検出した積載量と前記昇降機の速度に応じて、必要な最大負荷電流を算出する最大負荷電流算出部と、
前記最大負荷電流算出部が得た最大負荷電流に応じて、N個に並列接続された前記インバータの中で、前記モータに電源を供給するために作動させるインバータを、N個未満に制限するゲート指令部と、を備える
インバータ制御システム。
【請求項2】
前記モータに電源を供給するために作動させる前記インバータを、N個未満に制限する際に、前記最大負荷電流算出部が算出した最大負荷電流が、1個又は複数個の前記インバータを停止して前記モータを駆動可能な電流であるとき、前記ゲート指令部は、算出した最大負荷電流に応じて、1個又は複数個の前記インバータを停止させる
請求項1に記載のインバータ制御システム。
【請求項3】
さらに、並列接続されたそれぞれの前記インバータの駆動時間及び/又は温度ストレスを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶した駆動時間及び/又は温度ストレスに基づいて、並列接続されたそれぞれの前記インバータの寿命を推定する寿命算出部と、を備え、
前記ゲート指令部が1個又は複数個の前記インバータを停止させる際には、前記寿命算出部が算出した寿命が短いものから順に停止させる
請求項2に記載のインバータ制御システム。
【請求項4】
さらに、前記最大負荷電流検出部が検出した最大負荷電流が、N個に並列接続された前記インバータを全て使用した場合の最大負荷電流を超えるとき、前記昇降機を規制する
請求項1に記載のインバータ制御システム。
【請求項5】
N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給する構成とした上で、並列接続されたそれぞれの前記インバータを制御するインバータ制御方法において、
前記昇降機の積載量を検出する負荷検出処理と、
前記負荷検出処理により検出した積載量と前記昇降機の速度に応じて、必要な最大負荷電流を算出する最大負荷電流算出処理と、
前記最大負荷電流算出処理により出した最大負荷電流に応じて、N個に並列接続された前記インバータの中で、前記モータに電源を供給するために作動させるインバータを、N個未満に制限するゲート指令処理と、を含む
インバータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御システム及びインバータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターなどの昇降機は、動力源として交流モータが使用されている。交流モータの作動状態を制御するためには、インバータで電源の電圧や周波数を変換することが行われている。例えば、ビルに設置されたエレベーターの場合、電力会社から給電される三相交流電源を、インバータで電圧や周波数を変換した上で、巻き上げ機を構成する交流モータに供給している。
三相交流電源の電圧や周波数をインバータで変換する場合、具体的には、三相交流電源をコンバータで直流電源に変換し、変換された直流電源をインバータで所望の電圧や周波数の交流電源とする。ここで、コンバータとインバータは基本的な構成を同じにすることができ、その場合動作方向が逆になっているだけである。以下の説明でインバータと述べた場合、特に区別して説明する場合を除いて、コンバータも含む。
【0003】
エレベーターなどの昇降機の電源制御用としてインバータを使用する場合、必要な電源容量に応じて、並列にインバータを複数段接続して、その複数のインバータで同時に処理を行うようにしている。すなわち、インバータはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの半導体スイッチで構成され、1つの半導体スイッチで通過可能な電流や電圧には制限があるため、複数個の並列接続で必要な電源容量を確保している。例えば、200kW出力のインバータを構成する場合、1つが50kW出力のインバータを4並列にして、200kWを確保している。
【0004】
特許文献1には、電力変換装置としてのインバータの例についての記載がある。特許文献1には、インバータとしてのパワーモジュール内の配線に接続された複数のコンデンサに流れる電流を均一にして、インバータの発熱防止や寿命のばらつきを防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、インバータは使用状態によって発熱し、その発熱状態によっては、寿命を短くしてしまうという問題がある。
従来、多段接続されたインバータにおいて、それぞれのインバータの寿命の均等化や長寿命化が、十分に配慮されているとは言えなかった。
【0007】
特許文献1に記載された技術では、主回路に接続されるコンデンサの配線の工夫で、複数のコンデンサに流れる電流を均一にしているが、コンデンサの対処により行うことができる発熱防止には限りがあるため、より有効な対処が望まれていた。
【0008】
本発明は、並列接続されたインバータの寿命の均等化や長寿命化を適切に行うことが可能なインバータ制御システム及びインバータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給する構成とした上で、並列接続されたそれぞれのインバータを制御するインバータ制御システムにおいて、昇降機の積載量を検出する負荷検出部と、負荷検出部が検出した積載量と昇降機の速度に応じて必要な最大負荷電流を算出する最大負荷電流算出部と、最大負荷電流算出部が算出した最大負荷電流に応じて、N個に並列接続されたインバータの中で、モータに電源を供給するために作動させるインバータを、N個未満に制限するゲート指令部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最大負荷電流に応じて、並列接続された複数のインバータの中で、モータに電源を供給するために作動させるインバータを制限する処理が行われる。したがって、常に全てのインバータを作動させることがないので、結果的にインバータの長寿命化を図ることができる。また、制限するインバータを適切に選択することにより、インバータの寿命の均等化を図ることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムにより制御されるインバータ装置の回路及び昇降機の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すインバータ装置の配置例を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムにより制御されるインバータ装置の1つのユニットの形状を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムの制御処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)のインバータ制御システムを、添付図面を参照して説明する。
本例のインバータ制御システムは、昇降機であるエレベーターの巻き上げ機に電源を供給するインバータ装置用のシステムである。
【0013】
[インバータ装置の構成]
図1は、インバータ装置100の回路構成を示す。また、
図1には、インバータ装置100で電源が供給されるエレベーターの概略構成も記載されている。
インバータ装置100は、第1並列インバータ110、第2並列インバータ120、・・・、第N並列インバータ190(Nは2以上の整数)を備える。
【0014】
それぞれの並列インバータ110~190には、2つのインバータユニットが直列に接続されている。例えば、第1並列インバータ110は、2つのインバータユニット111、112が並列接続されている。インバータユニット111は、三相交流電源11を直流に変換するコンバータとして動作するものであり、U相、V相、W相のそれぞれで2つ、合計で6個の半導体スイッチ111-U1,111-U2,111-V1,111-V2,111-W1,111-W2を有する。
また、インバータユニット111には、直流に変換後の電源を平滑化するコンデンサ111-Cが接続されている。
なお、三相交流電源11とインバータユニット111との間には、電源フィルタ部12が接続されている。
【0015】
インバータユニット112は、インバータユニット111で得られた直流を、三相交流電源に変換する動作を行うものであり、U相、V相、W相のそれぞれで2つ、合計で6個の半導体スイッチ112-U1,112-U2,112-V1,112-V2,112-W1,112-W2を有する。インバータユニット112にも、直流側にコンデンサ112-Cが接続されている。
【0016】
第2並列インバータ120~第N並列インバータ190も、同様に、2つのインバータユニット121、122~191、192を備える。例えば、第2並列インバータ120のインバータユニット121は、6個の半導体スイッチ121-U1,121-U2,121-V1,121-V2,121-W1,121-W2を有して、三相交流電源を直流電源に変換する動作を行う。また、第2並列インバータ120のインバータユニット122は、6個の半導体スイッチ122-U1,122-U2,122-V1,122-V2,122-W1,122-W2を有して、直流電源を三相交流電源に変換する動作を行う。
【0017】
さらに、第N並列インバータ190のインバータユニット191は、6個の半導体スイッチ191-U1,191-U2,191-V1,191-V2,191-W1,191-W2を有して、三相交流電源を直流電源に変換する動作を行う。また、インバータユニット192は、6個の半導体スイッチ192-U1,192-U2,192-V1,192-V2,192-W1,192-W2を有して、直流電源を三相交流電源に変換する動作を行う。
【0018】
第2並列インバータ120~第N並列インバータ190の、それぞれ2つのインバータユニット121,122~191,192についても、コンデンサ121-C,122-C~191-C,192-Cが接続されている。
【0019】
それぞれのインバータユニット111,112~191,192に配置された半導体スイッチ(121-U1など)は、IGBTなどの半導体素子で構成され、後述するインバータ制御部200(
図4)によりオン・オフが制御される。この場合、各並列インバータ110~190の三相交流電源を得るインバータユニット112~192のオン・オフ制御により、エレベーター駆動用の電圧や周波数に設定される。
【0020】
各並列インバータ110~190のインバータユニット112~192で得られた三相交流電源は、リアクトル13を介して、エレベーターの巻き上げ機としてのモータ(例えば三相同期電動機)14に供給される。
【0021】
ここで、エレベーター側の構成を簡単に説明すると、モータ14の回転に連動して回転する網車15には、主ロープ16が巻き掛けられている。主ロープ16の一端には乗りかご17が接続され、他端には釣合い錘19が接続され、モータ14の回転により乗りかご17が昇降する。乗りかご17には、乗りかご17の積載量を検出する負荷検出部としての荷重センサ18が設置されている。
なお、インバータ装置100は、例えばエレベーターの機械室などに設置されている。
【0022】
[インバータ装置の配置例]
図2は、本例のインバータ装置100の配置例を示す。
図2の例のインバータ装置100は、第1並列インバータ110~第4並列インバータ140の4並列構成とした場合である。
各並列インバータ110~140は、2つのインバータユニットを備えるため、合計で8つのインバータユニット111~141,112~142を有する。
【0023】
ここで、本例のインバータ装置100は、
図2に示すように、8つのインバータユニット111~141,112~142を、制御盤109に縦に積み上げた配置にしている。すなわち、
図2の例では、上から、インバータユニット111,121,131,141,112,122,132,142の順に配置されている。但し、
図2に示すユニットの配置状態は一例であり、その他の配置順としてもよい。
【0024】
それぞれのインバータユニット111,112,121,122,131,132,141,142は、6個の半導体スイッチ(
図2では不図示)を備え、ユニットごとに3個の冷却ファンが取り付けられている。
例えば、インバータユニット111には、冷却ファン111-F1,111-F2,111-F3が取り付けられている。同様に、インバータユニット121~141,112~142についても、各ユニットの符号の末尾に「F1,F2,F3」を付与して示す冷却ファンが取り付けられている。なお、各インバータユニット111~142の左右の端には、取手101が取り付けられている。
【0025】
そして、コンバータとして動作する4つのインバータユニット111,121,131,141は、端子部102の3つの端子102U,102V,102Wと並列に接続されている。この端子部102の3つの端子102U,102V,102Wは、
図1に示す三相交流電源11側に接続される。
【0026】
また、インバータとして動作する4つのインバータユニット112,122,132,142は、端子部103の3つの端子103U,103V,103Wと並列に接続されている。この端子部103の3つの端子103U,103V,103Wは、
図1に示すモータ14側に接続される。
なお、各並列インバータ110~140は、出力可能な最大電流を同じ値に設定してある。
【0027】
[インバータユニットの構成]
図3は、1つのインバータユニット111の構成を示す斜視図である。
他のインバータユニット112~142も、インバータユニット111と同様の構成になっている。
インバータユニット111は、ヒートシンクを兼ねたフレーム107の前面側に、3つの冷却ファン111-F1,111-F2,111-F3が取り付けられている。そして、インバータユニット111は、6個の半導体スイッチ111-U1,111-U2,111-V1,111-V2,111-W1,111-W2を有している。本例においては、2in1タイプのIGBTモジュールを用いた場合のインバータユニットの構成であるが、1in1や6in1といったタイプのものを用いても構わない。また、インバータユニット111には、コンデンサ111-Cなどが配置されている。フレーム107の前面側の左右の端部には、取手101が取り付けられている。
【0028】
そして、フレーム107の上部の前面側には、三相交流側の端子104-U,104-V,104-Wが配置され、フレーム107の上部の後面側には、直流側の端子105-P,105-Nが配置されている。
コンバータとして作動するインバータユニット111の場合、三相交流側の端子104-U,104-V,104-Wは、三相交流電源11(
図1)に接続される。なお、インバータとして作動するインバータユニット121の場合には、三相交流側の端子104-U,104-V,104-Wは、モータ14側に接続される。
直流側の端子105-P,105-Nは、同じ並列インバータ110のインバータユニット112の直流側の端子(不図示)に接続される。
【0029】
[インバータ制御部とエレベーター制御部の構成]
図4は、本例のインバータ装置100を制御するインバータ制御部200と、エレベーター制御部300の構成を示す。ここでは、
図4に示すように、インバータ装置100は4つの並列インバータ110~140を備えた構成とする。
【0030】
インバータ装置100の各半導体スイッチ111-U1,111-V1,・・・は、インバータ制御部200のゲート指令部201による制御でオン・オフする。ゲート指令部201は、エレベーター制御部300から供給される乗りかご17の積載量や速度指令等に基づいて、対応したモータ14の駆動用の電圧や周波数に変換するように、各半導体スイッチ111-U1,111-V1,・・・のオン・オフにより三相交流電源11を制御する。
【0031】
ここで、本例の場合、ゲート指令部201は、荷重センサ18が検出した乗りかご17の積載量に応じた最大負荷電流に基づいて、4つの並列インバータ110~140の中の作動させるインバータを選択する処理を行う。作動させるインバータを選択する処理の詳細は、
図5で後述する。
【0032】
また、インバータ制御部200は、インバータ駆動時間/温度ストレス記憶部202を備える。インバータ駆動時間/温度ストレス記憶部202は、4つの並列インバータ110~140のそれぞれについて、作動させた駆動時間と、それぞれの温度ストレスの状態を記憶する。温度ストレスは、4つの並列インバータ110~140の作動状態から算出するか、あるいは、各並列インバータ110~140に配置した不図示の温度センサにより取得する。
【0033】
さらに、インバータ制御部200は、寿命算出部203を備える。寿命算出部203は、インバータ駆動時間/温度ストレス記憶部202に記憶されたインバータ駆動時間と温度ストレスに基づいて、各並列インバータ110~140の寿命を個別に算出する。なお、寿命算出部203が寿命を算出する場合には、インバータ駆動時間と温度ストレスの双方を参照するのが好ましいが、いずれか一方を参照するだけでもよい。
【0034】
寿命算出部203が算出した各並列インバータ110~140の寿命の情報は、ゲート指令部201に供給される。
ゲート指令部201は、作動させる並列インバータ110~140を選択する際に、各並列インバータ110~140の寿命の情報に基づいて、作動するインバータを選定する。
【0035】
エレベーター制御部300は、負荷検出部301と最大負荷電流算出部302とを備える。
負荷検出部301は、荷重センサ18の検出データから、乗りかご17の積載量を検出する。すなわち、負荷検出部301は、乗りかご17の負荷検出処理を行う。
最大負荷電流算出部302は、乗りかご17の昇降速度と、負荷検出部301が検出した積載量(積載率)とに応じて、最大負荷電流を算出する。つまり、最大負荷電流算出部302は、最大負荷電流算出処理を行う。算出した最大負荷電流の情報は、インバータ制御部200に供給される。
【0036】
[インバータ制御部による制御処理]
図5は、インバータ制御部200がインバータ装置100をオン・オフ制御する際に、作動させる並列インバータ110~140を選択する処理を示すフローチャートである。
なお、
図5のフローチャートに示すINV1は、4個の並列インバータ110~140の中で、寿命算出部203が算出した1番目に余寿命が短い並列インバータである。
同様に、INV2,INV3,INV4は、それぞれ4個の並列インバータ110~140の中で、寿命算出部203が算出した2番目、3番目、4番目に余寿命が短い並列インバータである。また、I_loadは、最大負荷電流算出部302で算出された最大負荷電流であり、I_maxは、1単位の各並列インバータ110~140が出力可能な最大電流である。
【0037】
まず、インバータ制御部200のゲート指令部201は、最大負荷電流算出部302から伝送された必要な最大負荷電流I_loadと、並列インバータ110~140の中の1個のインバータが出力可能な最大電流I_maxとを比較する。具体的には、ゲート指令部201は、[出力可能最大電流I_max<必要な最大負荷電流I_load/4]の条件を満たすか否か判断する(ステップS11)。
【0038】
ステップS11で、必要な最大負荷電流I_loadを4分の1にした1個分の電流が、1個の並列インバータが出力可能な最大電流I_maxを超えるとき(ステップS11のYes)、インバータ制御部200は、過電流を検出する(ステップS12)。この過電流を検出したときには、インバータ制御部200は、エレベーター制御部300に過電流と通知する。
【0039】
過電流を受信したエレベーター制御部300は、乗りかご17内の乗客に対して、定員超過で降車を促すアナウンスを実行し、過電流状態が解消されるまで、乗りかご17の駆動を規制する(ステップS13)。乗りかご17の駆動を規制した後、ゲート指令部201はステップS11の判断に戻る。
なお、ステップS13では、インバータ制御部200はインバータ装置100の駆動を停止する処理のみを行い、降車を促すアナウンスの処理は、エレベーター制御部300側で積載量(積載率)を検出することにより、独立して行うようにしてもよい。
【0040】
そして、ステップS11で、必要な最大負荷電流I_loadを4分の1にした1個分の電流が、1個の並列インバータが出力可能な最大電流I_maxを超えていない場合(ステップS11のNo)、ゲート指令部201はステップS14の処理を行う。すなわち、ゲート指令部201は、出力可能最大電流I_maxが、[必要な最大負荷電流I_load/4≦出力可能最大電流I_max<必要な最大負荷電流I_load/3]の条件を満たすか否かを判断する(ステップS14)。
【0041】
ステップS14で、出力可能最大電流I_maxが、最大負荷電流I_loadを4分の1にした1個分の負荷電流以下で、最大負荷電流I_loadを3分の1にした1個分の負荷電流を超えるとき(ステップS14のYes)、ゲート指令部201はステップS15の処理を行う。すなわち、ゲート指令部201は、4個の並列インバータ110,120,130,140を全て作動するように選択して、4個の並列インバータ110,120,130,140をオン・オフ制御して、モータ14に駆動用電源を供給する(ステップS15)。このステップS15の制御により、モータ14が停止するまでの駆動処理が行われる。
【0042】
また、ステップS14で、出力可能最大電流I_maxが、最大負荷電流I_loadを3分の1にした1個分の負荷電流を超えないとき(ステップS14のNo)、ゲート指令部201はステップS16の判断を行う。すなわち、ゲート指令部201は、出力可能最大電流I_maxが、[必要な最大負荷電流I_load/3≦出力可能最大電流I_max<必要な最大負荷電流I_load/2]の条件を満たすか否かを判断する(ステップS16)。
【0043】
ステップS16で、出力可能最大電流I_maxが、最大負荷電流I_loadを3分の1にした1個分の負荷電流以下で、最大負荷電流I_loadを2分の1にした1個分の負荷電流を超えるとき(ステップS16のYes)、ゲート指令部201はステップS17の処理を行う。すなわち、ゲート指令部201は、4個の並列インバータ110,120,130,140の内の3個の並列インバータINV2,INV3,INV4をオン・オフ制御して、モータ14に駆動用電源を供給する(ステップS17)。並列インバータINV2,INV3,INV4は、駆動時間と温度ストレスから余寿命が2番目、3番目、4番目に短い3つの並列インバータである。このステップS17の制御により、モータ14が停止するまでの駆動処理が行われる。
【0044】
また、ステップS16で、出力可能最大電流I_maxが、最大負荷電流I_loadを2分の1にした1個分の負荷電流を超えないとき(ステップS16のNo)、ゲート指令部201はステップS18の判断を行う。すなわち、ゲート指令部201は、出力可能最大電流I_maxが、[必要な最大負荷電流I_load/2≦出力可能最大電流I_max<必要な最大負荷電流I_load]の条件を満たすか否かを判断する(ステップS18)。
【0045】
ステップS18で、出力可能最大電流I_maxが、最大負荷電流I_loadを2分の1にした1個分の負荷電流以下で、最大負荷電流I_loadを超えるとき(ステップS18のYes)、ゲート指令部201はステップS19の処理を行う。すなわち、ゲート指令部201は、4個の並列インバータ110,120,130,140の内の2個の並列インバータINV3,INV4をオン・オフ制御して、モータ14に駆動用電源を供給する(ステップS17)。
並列インバータINV3,INV4は、駆動時間と温度ストレスから余寿命が3番目、4番目に短い2つの並列インバータである。このステップS19の制御により、モータ14が停止するまでの駆動処理が行われる。
【0046】
さらに、ステップS18で、出力可能最大電流I_maxが、1個分の負荷電流以下であるとき(ステップS18のNo)、ゲート指令部201はステップS20の処理を行う。すなわち、ゲート指令部201は、4個の並列インバータ110,120,130,140の内の1個の並列インバータINV4をオン・オフ制御して、モータ14に駆動用電源を供給する(ステップS20)。並列インバータINV4は、駆動時間と温度ストレスから余寿命が4番目に短い(すなわち余寿命が最も長い)並列インバータである。このステップS20の制御により、モータ14が停止するまでの駆動処理が行われる。
【0047】
[インバータ制御部による制御を行うことの効果]
本例のインバータ制御部200が、
図5に示す制御処理を行うことで、インバータ装置100は、駆動時の積載量や速度に応じた最大負荷電流に基づいて、並列接続されたインバータの中で、モータに電源を供給するために作動させるインバータを制限する処理が行われる。
【0048】
例えば、最も積載量が少ない状況では、1個の並列インバータINV4だけが作動する。このため、残りの3個の並列インバータINV1~INV3は停止し、それだけインバータの長寿命化を図ることができる。そして、積載量が増えて最大負荷電流が増えることで、停止するインバータの数が少なくなり、最も積載量が多い状況では、全ての並列インバータINV1~INV4を使った駆動が行われる。
【0049】
また、作動を停止させるインバータは、そのときの各並列インバータの駆動時間と温度ストレスから余寿命が短いものを優先して選ぶため、インバータの寿命の均等化を図ることができる。
さらに、温度ストレスが少ないインバータを優先的に選ぶことで、変換効率が高いインバータを選ぶことになり、インバータ装置100による駆動用電源の変換効率の向上を図ることができる。
【0050】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
例えば、
図5のフローチャートでは、4個の並列インバータ110~140を備えた場合の処理を説明したが、本発明は、N個(Nは2以上の整数)の並列インバータを備えた場合に、同様の処理で作動させるインバータを選択する処理に適用が可能である。
また、
図2に示す各インバータユニット111~142の配置についても一例であり、その他の構成でもよい。
【0051】
また、上述した実施の形態例では、エレベーターのモータに電源を供給するインバータ装置の制御に適用したが、エレベーター以外の昇降機のモータに適用してもよい。例えば、エスカレーターなどの昇降機のモータに電源を供給するインバータ装置の制御に適用してもよい。また、昇降機以外でも、負荷の変動が大きいモータに電源を供給するインバータ装置の制御に適用した場合に、インバータ装置の長寿命化を図れる効果がある。
【0052】
また、
図4に示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0053】
11…三相交流電源、12…電源フィルタ部、13…リアクトル、14…モータ、15…網車、16…主ロープ、18…荷重センサ、19…釣合い錘、100…インバータ装置、101…取手、102,103…端子部、102U,102V,102W…端子、103…端子部、103U…端子、104-U,104-V,104-W,105-P,105-N…端子、107…フレーム、109…制御盤、110~190…並列インバータ、111,112,121,122,131,132,141,142…インバータユニット
111-C,112-U1…コンデンサ、111-F1,111-F2,111-F3…冷却ファン、111-U1,111-U2,111-V1,111-V2,111-W1,111-W2…半導体スイッチ、200…インバータ制御部、201…ゲート指令部、202…インバータ駆動時間/温度ストレス記憶部、203…寿命算出部、300…エレベーター制御部、301…負荷検出部、302…最大負荷電流算出部