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特開2023-86188インバータ制御システム及びインバータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086188
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】インバータ制御システム及びインバータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230615BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20230615BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20230615BHJP
   H02P 29/032 20160101ALI20230615BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20230615BHJP
   B66B 1/30 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/493
H02P27/06
H02P29/032
B66B5/02 U
B66B1/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200539
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 真希
(72)【発明者】
【氏名】高山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】迫田 友治
【テーマコード(参考)】
3F304
3F502
5H501
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
3F304CA11
3F502LA18
5H501AA07
5H501CC05
5H501EE08
5H501HA02
5H501HA09
5H501LL52
5H501MM09
5H501MM11
5H505AA03
5H505CC05
5H505HA03
5H505HA10
5H505HB01
5H505HB05
5H505MM13
5H770AA28
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA27
5H770DA30
5H770DA41
5H770JA17W
5H770LA10W
5H770PA02
5H770PA47
5H770QA21
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】並列接続されたインバータの一部が故障した場合でも、昇降機の運転が継続できるようにする。
【解決手段】N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給し、並列接続されたそれぞれのインバータを制御するインバータ制御システムにおいて、並列接続されたN個のインバータを複数群に分けた群単位で、インバータの異常信号を受信するトラブル信号受信部192と、トラブル信号受信部が異常信号を受信した群以外の群のインバータを作動させるゲート指令部191とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給し、並列接続されたそれぞれの前記インバータを制御するインバータ制御システムにおいて、
並列接続されたN個の前記インバータを複数群に分けた群の単位で、前記インバータの異常信号を受信するトラブル信号受信部と、
前記トラブル信号受信部が異常信号を受信した群以外の群の前記インバータを作動させるゲート指令部と、を備える
インバータ制御システム。
【請求項2】
前記ゲート指令部が作動させる群の前記インバータの数に応じて、前記昇降機の乗車制限又は速度制限を行う
請求項1に記載のインバータ制御システム。
【請求項3】
前記トラブル信号受信部は、全ての群の前記インバータから異常信号を受信したとき、前記昇降機を停止させる
請求項2に記載のインバータ制御システム。
【請求項4】
それぞれの群は、2つの前記並列接続されたインバータを備える
請求項1に記載のインバータ制御システム。
【請求項5】
N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給し、並列接続されたそれぞれの前記インバータを制御するインバータ制御方法において、
並列接続されたN個の前記インバータを複数群に分けた群のインバータ単位で、前記インバータの異常信号を受信するトラブル信号受信処理と、
前記トラブル信号受信処理で異常信号を受信した群以外の群の前記インバータを作動させる制御処理と、を含む
インバータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御システム及びインバータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターなどの昇降機は、動力源として交流モータが使用されている。交流モータの作動状態を制御するためには、インバータで電源の電圧や周波数を変換することが行われている。例えば、ビルに設置されたエレベーターの場合、電力会社から給電される三相交流電源を、インバータで電圧や周波数を変換した上で、巻き上げ機を構成する交流モータに供給している。
三相交流電源の電圧や周波数をインバータで変換する場合、具体的には、三相交流電源をコンバータで直流電源に変換し、変換された直流電源をインバータで所望の電圧や周波数の交流電源とする。ここで、コンバータとインバータは基本的な構成を同じにすることができ、その場合動作方向が逆になっているだけである。以下の説明でインバータと述べた場合、特に区別して説明する場合を除いて、コンバータも含む。
【0003】
エレベーターなどの昇降機の電源制御用としてインバータを使用する場合、必要な電源容量に応じて、並列にインバータを複数段接続して、その複数のインバータで同時に処理を行うようにしている。すなわち、インバータはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの半導体スイッチで構成され、1つの半導体スイッチで通過可能な電流や電圧には制限があるため、複数個の並列接続で必要な電源容量を確保している。例えば、200kW出力のインバータを構成する場合、1つが50kW出力のインバータを4並列にして、200kWを確保している。
【0004】
特許文献1には、複数のインバータ装置で構成される場合に、いずれかのインバータ装置で異常を検出した際に、異常を検出したインバータ装置の運転を停止する技術が記載されている。特許文献1に記載された技術では、インバータ装置の異常を、U相、V相、W相ごとに行って、U相異常信号などの相ごとに異常を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-29393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、インバータ装置の異常を、U相、V相、W相ごとに行う構成とした場合、複数ユニットで構成されたインバータ装置の場合には、故障したインバータユニットを特定するのが困難である。例えば、U相の異常を検知した場合、そのU相が複数ユニットのどのユニットの異常であるのかを特定するのは困難であり、適切な異常検出を行っているとは言えなかった。
【0007】
このため、異常を検知したインバータ装置は、故障した半導体スイッチなどが交換されるまで使用できないことになる。例えば、エレベーターを駆動するインバータ装置に異常が発生したとき、該当するインバータ装置の故障が復旧するまで、エレベーターは使用できない状態になってしまう。
【0008】
本発明は、並列接続されたインバータの一部が故障した場合でも、昇降機の運転が継続できるインバータ制御システム及びインバータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、N個(Nは2以上の整数)に並列接続されたインバータにより、昇降機を駆動するモータに電源を供給し、並列接続されたそれぞれのインバータを制御するインバータ制御システムにおいて、並列接続されたN個のインバータを複数群に分けた群単位で、インバータの異常信号を受信するトラブル信号受信部と、トラブル信号受信部が異常信号を受信した群以外の群のインバータを作動させるゲート指令部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、群単位でインバータの異常を検出するので、異常を検出していないインバータについては作動させることができ、一部のインバータに異常が発生した場合でも、昇降機を継続して運転できるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムにより制御されるインバータ装置の回路及び昇降機の概略構成を示す図である。
図2図1に示すインバータ装置の配置例を示す平面図である。
図3】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムにより制御されるインバータ装置の1つのユニットの形状を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムの構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施の形態例によるインバータ制御システムの制御処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)のインバータ制御システムを、添付図面を参照して説明する。
本例のインバータ制御システムは、昇降機であるエレベーターの巻き上げ機に電源を供給するインバータ装置用のシステムである。
【0013】
[インバータ装置の構成]
図1は、インバータ装置100の回路構成を示す。また、図1には、インバータ装置100で電源が供給されるエレベーターの概略構成も記載されている。
インバータ装置100は、第1並列インバータ110、第2並列インバータ120、・・・、第N並列インバータ190(Nは2以上の整数)を備える。
【0014】
それぞれの並列インバータ110~190には、2つのインバータユニットが直列に接続されている。例えば、第1並列インバータ110は、2つのインバータユニット111、112が並列接続されている。インバータユニット111は、三相交流電源11を直流に変換するコンバータとして動作するものであり、U相、V相、W相のそれぞれで2つ、合計で6個の半導体スイッチ111-U1,111-U2,111-V1,111-V2,111-W1,111-W2を有する。
また、インバータユニット111には、直流に変換後の電源を平滑化するコンデンサ111-Cが接続されている。
なお、三相交流電源11とインバータユニット111との間には、電源フィルタ部12が接続されている。
【0015】
インバータユニット112は、インバータユニット111で得られた直流を、三相交流電源に変換する動作を行うものであり、U相、V相、W相のそれぞれで2つ、合計で6個の半導体スイッチ112-U1,112-U2,112-V1,112-V2,112-W1,112-W2を有する。インバータユニット112にも、直流側にコンデンサ112-Cが接続されている。
【0016】
第2並列インバータ120~第N並列インバータ190も、同様に、2つのインバータユニット121、122~191、192を備える。例えば、第2並列インバータ120のインバータユニット121は、6個の半導体スイッチ121-U1,121-U2,121-V1,121-V2,121-W1,121-W2を有して、三相交流電源を直流電源に変換する動作を行う。また、第2並列インバータ120のインバータユニット122は、6個の半導体スイッチ122-U1,122-U2,122-V1,122-V2,122-W1,122-W2を有して、直流電源を三相交流電源に変換する動作を行う。
【0017】
さらに、第N並列インバータ190のインバータユニット191は、6個の半導体スイッチ191-U1,191-U2,191-V1,191-V2,191-W1,191-W2を有して、三相交流電源を直流電源に変換する動作を行う。また、インバータユニット192は、6個の半導体スイッチ192-U1,192-U2,192-V1,192-V2,192-W1,192-W2を有して、直流電源を三相交流電源に変換する動作を行う。
【0018】
第2並列インバータ120~第N並列インバータ190の、それぞれ2つのインバータユニット121,122~191,192についても、コンデンサ121-C,122-C~191-C,192-Cが接続されている。
【0019】
それぞれのインバータユニット111,112~191,192に配置された半導体スイッチ(121-U1など)は、IGBTなどの半導体素子で構成され、後述するインバータ制御部200(図4)によりオン・オフが制御される。この場合、各並列インバータ110~190の三相交流電源を得るインバータユニット112~192のオン・オフ制御により、エレベーター駆動用の電圧や周波数に設定される。
【0020】
各並列インバータ110~190のインバータユニット112~192で得られた三相交流電源は、リアクトル13を介して、エレベーターの巻き上げ機としてのモータ(例えば三相同期電動機)14に供給される。
【0021】
ここで、エレベーター側の構成を簡単に説明すると、モータ14の回転に連動して回転する網車15には、主ロープ16が巻き掛けられている。主ロープ16の一端には乗りかご17が接続され、他端には釣合い錘19が接続され、モータ14の回転により乗りかご17が昇降する。乗りかご17には、乗りかご17の積載量を検出する負荷検出部としての荷重センサ18が設置されている。
なお、インバータ装置100は、例えばエレベーターの機械室などに設置されている。
【0022】
[インバータ装置の配置例]
図2は、本例のインバータ装置100の配置例を示す。
図2の例のインバータ装置100は、第1並列インバータ110~第4並列インバータ140の4並列構成とした場合である。
各並列インバータ110~140は、2つのインバータユニットを備えるため、合計で8つのインバータユニット111~141,112~142を有する。
【0023】
ここで、本例のインバータ装置100は、図2に示すように、8つのインバータユニット111~141,112~142を、制御盤109に縦に積み上げた配置にしている。すなわち、図2の例では、上から、インバータユニット111,121,131,141,112,122,132,142の順に配置されている。但し、図2に示すユニットの配置状態は一例であり、その他の配置順としてもよい。
【0024】
それぞれのインバータユニット111,112,121,122,131,132,141,142は、6個の半導体スイッチ(図2では不図示)を備え、ユニットごとに3個の冷却ファンが取り付けられている。
例えば、インバータユニット111には、冷却ファン111-F1,111-F2,111-F3が取り付けられている。同様に、インバータユニット121~141,112~142についても、各ユニットの符号の末尾に「F1,F2,F3」を付与して示す冷却ファンが取り付けられている。なお、各インバータユニット111~142の左右の端には、取手101が取り付けられている。
【0025】
そして、コンバータとして動作する4つのインバータユニット111,121,131,141は、端子部102の3つの端子102U,102V,102Wと並列に接続されている。この端子部102の3つの端子102U,102V,102Wは、図1に示す三相交流電源11側に接続される。
【0026】
また、インバータとして動作する4つのインバータユニット112,122,132,142は、端子部103の3つの端子103U,103V,103Wと並列に接続されている。この端子部103の3つの端子103U,103V,103Wは、図1に示すモータ14側に接続される。
なお、各並列インバータ110~140は、出力可能な最大電流を同じ値に設定してある。
【0027】
[インバータユニットの構成]
図3は、1つのインバータユニット111の構成を示す斜視図である。
他のインバータユニット112~142も、インバータユニット111と同様の構成になっている。
インバータユニット111は、ヒートシンクを兼ねたフレーム107の前面側に、3つの冷却ファン111-F1,111-F2,111-F3が取り付けられている。そして、インバータユニット111は、6個の半導体スイッチ111-U1,111-U2,111-V1,111-V2,111-W1,111-W2を有している。本例においては、2in1タイプのIGBTモジュールを用いた場合のインバータユニットの構成であるが、1in1や6in1といったタイプのものを用いても構わない。また、インバータユニット111には、コンデンサ111-Cなどが配置されている。フレーム107の前面側の左右の端部には、取手101が取り付けられている。
【0028】
そして、フレーム107の上部の前面側には、三相交流側の端子104-U,104-V,104-Wが配置され、フレーム107の上部の後面側には、直流側の端子105-P,105-Nが配置されている。
コンバータとして作動するインバータユニット111の場合、三相交流側の端子104-U,104-V,104-Wは、三相交流電源11(図1)に接続される。なお、インバータとして作動するインバータユニット121の場合には、三相交流側の端子104-U,104-V,104-Wは、モータ14側に接続される。
直流側の端子105-P,105-Nは、同じ並列インバータ110のインバータユニット112の直流側の端子(不図示)に接続される。
【0029】
[インバータ装置の制御構成]
図4は、本例のインバータ制御システムに用いられるインバータ装置100と、インバータ制御部200の構成を示す。図4の例のインバータ装置100は、6つの並列インバータ110~160を備えた構成としている。6つの並列インバータ110~160は、3つの群に分けられる。
【0030】
すなわち、第1並列インバータ110と第2並列インバータ120を、第1群インバータ100aとする。また、第3並列インバータ130と第4並列インバータ140を、第2群インバータ100bとする。さらに、第5並列インバータ150と第6並列インバータ160を、第2群インバータ100cとする。
【0031】
これらの各並列インバータ110~160に配置された半導体スイッチは、インバータ制御装置190のゲート指令部191からの指令によって、オン・オフされる。
この場合、各並列インバータ110~160は、それぞれ個別にスイッチ119~169を介してゲート指令が供給される構成とし、個々の並列インバータ110~160ごとに、動作を停止する制御ができるようになっている。
【0032】
また、本例のインバータ制御システムは、トラブル信号受信部192と、トラブル対処部193とを備える。
トラブル信号受信部192は、インバータ110~160の異常信号を受信するトラブル信号受信処理を行う。
ここで、トラブル信号受信部192は、各群で個別に異常信号を受信する。すなわち、トラブル信号受信部192は、第1群インバータ100aで異常が発生したときの異常信号と、第2群インバータ100bで異常が発生したときの異常信号と、第3群インバータ100cで異常が発生したときの異常信号とを個別に受信する。
【0033】
トラブル信号受信部192が受信する異常信号には、各並列インバータ110~160の半導体スイッチが作動しないことを示す異常信号、各並列インバータ110~160の電流や電圧の異常を示す異常信号、及び各並列インバータ110~160の温度の異常を示す異常信号などが含まれる。
【0034】
トラブル対処部193は、どの群の並列インバータ110~160に異常があるのかを判定して、判定した異常が発生した群の情報を、ゲート指令部191に供給する。
トラブル対処部193からの異常が発生した群の情報を受信したゲート指令部191は、該当する群の並列インバータを制御するラインのスイッチをオフ状態と、残りの群の並列インバータのみを作動させる制御処理を行う。例えば、第1群インバータから異常信号を受信したときには、スイッチ119,129をオフとし、第2群の並列インバータ130,140と、第3群の並列インバータ150,160のみを作動させる。
【0035】
また、トラブル対処部193は、異常が発生した群以外で、正常運転ができる並列インバータの数を判断する。そして、トラブル対処部193は、その判断からモータ14(図1)に供給できる最大電流を判断し、判断した最大電流から、エレベーターの積載量,速度の制限を、不図示のエレベーター制御部に指示する。
【0036】
なお、図4では、トラブル信号受信部192とトラブル対処部193を、インバータ制御装置190の外部に用意したが、インバータ制御装置190内にトラブル信号受信部192とトラブル対処部193を設けるようにしてもよい。
【0037】
[インバータ制御装置による制御処理]
図5は、トラブル信号受信部192が異常信号を受信した場合の処理例を示すフローチャートである。
まず、トラブル信号受信部192は、異常信号を受信したか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11で異常信号を受信しない場合(ステップS11のNo)、ゲート指令部191は、全ての群の並列インバータ110~160を作動させる。
【0038】
そして、ステップS11でトラブル信号受信部192が異常信号を受信した場合(ステップS11のYes)、トラブル対処部193は、第1群のインバータ100aの異常信号であるか否かを判断する(ステップS12)。
ステップS12で、第1群のインバータ100aの異常信号でない場合(ステップS12のNo)、トラブル対処部193は、第2群のインバータ100bの異常信号であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0039】
ステップS13で、第2群のインバータ100bの異常信号でない場合(ステップS13のNo)、ステップS11で検出された異常信号は、第3群のインバータ100cの異常信号であると判断する。そして、ゲート指令部191は、スイッチ159,169をオフとして、第3群のインバータ100c(並列インバータ150,160)を停止させる(ステップS14)。
【0040】
そして、不図示のエレベーター制御装置では、トラブル対処部193からの指示で、停止した第3群のインバータ100cを除く、2つの群のインバータ100a,100bで供給される電源で、エレベーターの運転を継続させる(ステップS15)。このとき、モータ14に供給される電流が制限されるので、エレベーター制御部は、乗りかご17の積載率を通常時の100%から制限した乗車制限処理や、走行速度の制限処理を行う。
【0041】
また、ステップS12で、第1群のインバータ100aの異常信号である場合(ステップS12のYes)、トラブル対処部193は、さらに、第2群のインバータ100bについても、異常信号があるか否かを判断する(ステップS16)。
ステップS16で、第2群のインバータ100bは異常信号を出力していない場合(ステップS16のNo)、トラブル対処部193は、第3群のインバータ100cについても、異常信号を出力しているか否かを判断する(ステップS17)。
【0042】
ステップS17で、第3群のインバータ100cが異常信号を出力していない場合(ステップS17のNo)、トラブル対処部193は、第1群のインバータ100aのみが異常と判断する。このとき、ゲート指令部191は、第1群のインバータ100aを停止させ、第1群のインバータ100aによる電力供給を停止させる(ステップS18)。
つまり、ステップS18では、第2群と第3群のインバータ100b,100cでモータ14への電力供給が行われる。
【0043】
そして、ステップS15に移って、エレベーター制御装置は、第2群と第3群のインバータ100b,100cで供給される電源で、乗車制限又は速度制限を行った上で、エレベーターの運転を継続させる。
【0044】
ステップS17で、第3群のインバータ100cについても異常信号を出力している場合(ステップS17のYes)、トラブル対処部193は、第1群のインバータ100aと第3群のインバータ100cが異常と判断する。このとき、ゲート指令部191は、第1群のインバータ100aと第3群のインバータ100cとを停止させ、第1群のインバータ100a及び第3群のインバータ100cによる電力供給を停止させる(ステップS19)。
そして、ステップS15に移って、エレベーター制御装置は、第2群のインバータ100bだけで供給される電源で、乗車制限又は速度制限を行った上で、エレベーターの運転を継続させる。
【0045】
また、ステップS16で、第2群のインバータ100bは異常信号を出力している場合(ステップS16のYes)、第3群のインバータ100cについても、異常信号を出力しているか否かを判断する(ステップS20)。
【0046】
ステップS20で、第3群のインバータ100cが異常信号を出力している場合(ステップS20のYes)、全ての群のインバータ100a~100cが異常信号を出力しているので、ゲート指令部191は、全ての群のインバータ100a~100cによる電力供給を停止、エレベーターを停止させる(ステップS21)。
【0047】
また、ステップS20で、第3群のインバータ100cが異常信号を出力していない場合(ステップS20のNo)、トラブル対処部193は、第1群のインバータ100aと第2群のインバータ100bが異常であると判断する。このとき、ゲート指令部191は、第1群のインバータ100aと第2群のインバータ100bを停止させる(ステップS22)。
【0048】
そして、ステップS15に移って、エレベーター制御装置は、第3群のインバータ100cだけで供給される電源で、乗車制限又は速度制限を行った上で、エレベーターの運転を継続させる。
【0049】
また、ステップS13で、第2群のインバータ100bの異常信号である場合(ステップS13のYes)、さらに、トラブル対処部193は、第3群のインバータ100cについても、異常信号を出力しているか否かを判断する(ステップS23)。
【0050】
ステップS23で、第3群のインバータ100cが異常信号を出力している場合(ステップS23のYes)、トラブル対処部193は、第2群のインバータ100bと第3群のインバータ100cが異常であると判断する。このとき、ゲート指令部191は、第2群のインバータ100bと第3群のインバータ100cを停止させる(ステップS24)。
そして、ステップS15に移って、エレベーター制御装置は、第1群のインバータ100aだけで供給される電源で、乗車制限又は速度制限を行った上で、エレベーターの運転を継続させる。
【0051】
ステップS23で、第3群のインバータ100cが異常信号を出力していない場合(ステップS23のNo)、トラブル対処部193は、第2群のインバータ100bのみが異常と判断する。このとき、ゲート指令部191は、第2群のインバータ100bを停止させる(ステップS25)。
そして、ステップS15に移って、エレベーター制御装置は、第1群のインバータ100aと第3群のインバータ100cで供給される電源で、乗車制限又は速度制限を行った上で、エレベーターの運転を継続させる。
【0052】
[インバータ制御装置による制御を行うことの効果]
本例のインバータ制御装置190が、図5に示す制御処理を行うことで、インバータ装置100の一部の群が故障した場合でも、残りの群のインバータでモータ14への電源供給が継続する。したがって、一部のインバータが故障しても、エレベーターは運転を継続できる。
但し、一部のインバータが故障したとき、残りの正常な群の数によって、モータ14に供給される電源の最大電流が制限されるため、乗りかご17の乗車制限や速度制限が行われるが、エレベーターによるサービスは継続できる効果を有する。
【0053】
また、図4に示したように、複数の並列インバータで、異常信号を検出する群を構成したことで、異常信号を検出するセンサの数を、並列インバータの数よりも少なくすることができ、簡単な構成で異常信号を検出できるようになる。
また、一部の郡のインバータが故障した際に、乗りかご17の乗車制限や速度制限を行うことで、作動中の群のインバータが過負荷になることがなく、過負荷運転の継続でインバータの寿命を短くすることがない。
【0054】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
例えば、図5のフローチャートでは、6個の並列インバータ110~160を備えた場合の処理を説明したが、本発明は、N個(Nは2以上の整数)の並列インバータを備えた場合に、同様の処理で作動させるインバータを選択する処理に適用が可能である。
また、図2に示す各インバータユニット111~142の配置についても一例であり、その他の構成でもよい。
【0055】
また、上述した実施の形態例では、エレベーターのモータに電源を供給するインバータ装置の制御に適用したが、エレベーター以外の昇降機のモータに適用してもよい。例えば、エスカレーターなどの昇降機のモータに電源を供給するインバータ装置の制御に適用してもよい。
【0056】
また、図4に示す制御装置の構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0057】
11…三相交流電源、12…電源フィルタ部、13…リアクトル、14…モータ、15…網車、16…主ロープ、18…荷重センサ、19…釣合い錘、100…インバータ装置、101…取手、102,103…端子部、102U,102V,102W…端子、103…端子部、103U…端子、104-U,104-V,104-W,105-P,105-N…端子、107…フレーム、109…制御盤、110~190…並列インバータ、111,112,121,122,131,132,141,142…インバータユニット
111-C,112-U1…コンデンサ、111-F1,111-F2,111-F3…冷却ファン、111-U1,111-U2,111-V1,111-V2,111-W1,111-W2…半導体スイッチ、190…インバータ制御装置、191…ゲート指令部、192…トラブル信号受信部、193…トラブル対処部
図1
図2
図3
図4
図5