(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086197
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】動物用装着具
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A01K13/00 J
A01K13/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200548
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大木 達彦
(57)【要約】
【課題】動物の健康増進を図ることのできる動物用装着具を提供する。
【解決手段】動物用装着具1は、動物に着用させる装着具において、炭素材料を主材料とした炭素部20を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物に着用させる装着具において、
炭素材料を主材料とした炭素部を備えたことを特徴とする動物用装着具。
【請求項2】
請求項1において、
磁石部をさらに有してなることを特徴とする動物用装着具。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記炭素部は、結晶化された黒鉛を含んでなることを特徴とする動物用装着具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記炭素部は炭素材料を含んでなる成形体を備えたことを特徴とする動物用装着具。
【請求項5】
請求項4において、
前記成形体は、樹脂材料に黒鉛を含有させて形成されていることを特徴とする動物用装着具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記炭素部は活性炭を備えたことを特徴とする動物用装着具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
消臭分解酵素が内蔵されていることを特徴とする動物用装着具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
個体識別用のマイクロチップが内蔵されていることを特徴とする動物用装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、首輪やスカーフ、ネックレス、衣服など、動物に着用させる動物用装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来には、動物の健康増進を図った動物用装着具として磁石を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。磁石は血流を良くし、肩こりを効果的に改善するものとして知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人に関しては、血流を良くしたり体を温めたりする健康増進方法として、遠赤外線を放射する炭素材料を用いたものが実施されているが、動物用装着具としては従来には提案も実施もなされていない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、動物の健康増進を図ることのできる動物用装着具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の動物用装着具は、動物に着用させる装着具において、炭素材料を主材料とした炭素部を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の動物用装着具は上述した構成とされているため、動物の健康増進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る動物用装着具の説明図である。(a)は動物用装着具(首輪)の模式部分裏面図、(b)は動物用装着具(首輪)の模式拡大部分縦断面図、(c)は動物用装着具(ペット服)の模式拡大部分縦断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る動物用装着具の説明図である。(a)は動物用装着具(首輪)の模式部分裏面図、(b)は動物用装着具(首輪)の模式拡大部分縦断面図、(c)は動物用装着具(ペット服)の模式拡大部分縦断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る動物用装着具の説明図である。(a)は動物用装着具(首輪)の模式部分裏面図、(b)は動物用装着具(首輪)の模式拡大部分縦断面図、(c)は(b)の符号23を付した部位の第1例拡大図、(c)は同第2例拡大図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る動物用装着具の説明図である。(a)は動物用装着具(バンド)の模式部分正面図、(b)は動物用装着具の元材料であるシートの模式拡大部分縦断面図、(c)はシートと、そのシートより得た糸材料の模式斜視図である。
【
図5】本発明の第5実施形態に係る動物用装着具(ネックレス)の正面図である。
【
図6】第1~第4実施形態に係る動物用装着具に用いられる活性炭の模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面をもとに説明する。
【0010】
以下に説明する動物用装着具1はいずれも、動物に着用させる装着具であって、炭素材料を主材料とした炭素部20を備えている。また、これらの実施形態のものはいずれも磁石部30をさらに備えているが、磁石部30を有しないものであってもよい。
【0011】
また、いずれの動物用装着具1も、炭素材料として黒鉛(グラファイト)を用いているがこれには限らない。
以下、実施形態ごとに詳細に説明する。
【0012】
第1実施形態に係る動物用装着具1は、炭素部20として黒鉛シート21が用いてあり、犬や猫などのペットの首輪や、ペット服などに適用されるものである。首輪については、
図1(a)に模式部分裏面図を示し、
図1(b)に模式拡大部分縦断面図を示した。ペット服については、裏面図は割愛し、
図1(c)に模式拡大部分縦断面図を示した。
【0013】
図1(a)(b)に示すように、首輪には複数の磁石部30が適所に内蔵され、さらにマイクロチップ32が内蔵されている。磁石部30は円盤状の永久磁石体よりなる。マイクロチップ32は、ペットの個体識別用の種々の情報を登録可能としたICチップとされる。マイクロチップ32に記憶する情報としては、ペットの飼い主の情報や、予防接種情報、血統情報などが挙げられる。
【0014】
首輪は、
図1(b)に示すように、表面側より基材11、黒鉛シート21、被覆材12の3層の層構造をなしている。中間層の黒鉛シート21が炭素部20を構成する。裏面側の被覆材12は、動物に装着した際に皮膚や体毛に接触する面とされる。これら3層構造の各層間は、粘着剤(不図示)を用いて固着されている。
【0015】
表面側の層である基材11の裏面には複数の円形凹部11aが形成され、その円形凹部11aに永久磁石体が嵌め入れられている。また、基材11の裏面には方形凹部11bが形成され、そこにマイクロチップ32が嵌め入れられている。黒鉛シート21は、永久磁石体やマイクロチップ32を覆うように基材11に貼着され、さらにその上に被覆材12が貼着されている。基材11としては皮革などの厚くて丈夫な材料を用いることが望ましく、被覆材12としては通気性のある不織布などを用いることが望ましい。
【0016】
被覆材12は黒鉛シート20の保護のために設けることが望ましい。また、黒鉛シート20に代えて色移りする炭素シートを用いる場合には、色移り防止用に炭素シートの上に被覆材12を配設することが望ましい。
【0017】
黒鉛シート21は、膨張黒鉛を圧延してなる可撓性シートとされ、厚さが25~100μmのものが好適に用いられるが、特にこれには限らない。400℃以上の熱圧延にて作製されることが望ましい。
【0018】
黒鉛シート21は結晶構造を有し、試験によれば、面方向の熱伝導率は、厚さにもよるが、200~500W/(m・k)程度の数値が得られている。
【0019】
また、動物用装着具1をペット服として用いる場合は、基材11を布材、例えば合成繊維や天然繊維などのシート材で構成すればよく、永久磁石体やマイクロチップ32は、基材11、黒鉛シート21間に挟み込み粘着剤13で固定するか、縫い込んで固定すればよい。
【0020】
このような動物用装着具1によれば、炭素部20を有しているため、炭素材料の熱伝導性の高さおよび遠赤外線の放射性の高さにより、これを身に着ける動物の健康の増進を図ることができる。炭素部20がもたらす遠赤外線効果のメカニズムについて簡単に説明する。
【0021】
動物の皮膚に炭素材料が触れたり近づいたりすると、動物の体が遠赤外線を吸収して加温される。すなわち、これら炭素材料と動物の体との間で同じ波長の遠赤外線を放射し合い、炭素材料は動物の体温を維持する一方で体の中では水分子が激しく衝突して、この振動が運動エネルギーとなって、熱に変換され、熱が動物の体に伝えられ、体が加温される。
【0022】
その結果、遠赤外線が皮下組織や血管などに作用して血流が改善される。本発明者らによれば、人体の場合では、抹消、中枢の血流に15%の上昇効果があることが確認されている。また、これらの炭素材料は、α波を発生して、動物の体を癒して疲労を軽減し、健康増進に寄与すると考えられる。
【0023】
炭素材料は熱伝導性が高いため、動物の体を、寒い時季には早く温めることができ、暑い時季には早く冷やすことができる。また、炭素材料は導電性があるため、ペット服と体毛との摩擦により発生する静電気を逃がすこともできる。
【0024】
さらに、本動物用装着具1は磁石部30も備えているため、磁気による血流促進などの健康増進を図ることができる。つまり、遠赤外線と磁気の両方により、ペットなどの動物の血流促進を図ることができる。特に、本実施形態の動物用装着具1は炭素部20が黒鉛シート21で構成されているため、黒鉛シート21の面全体が被覆材12を介して皮膚に対面するため、遠赤外線の放射性が高められる。
【0025】
また、本実施形態の動物用装着具1は個体識別用のマイクロチップ32が本体10に内蔵されているため、ペットの迷子対策グッズとしても利用することができる。マイクロチップ32を動物の体内に埋め込まなくてもよいため、異物による負担をなくすこともできる。
【0026】
このような動物用装着具1としては、
図1に示すように首輪やペット服に適用すればよく、また脚や胴に巻きつけるようなバンドに適用してもよい。
【0027】
犬などの動物は独特の臭いを発するが、動物用装着具1に消臭材料を付加して、臭いを低減化するようにしてもよい。具体的には例えば、さらなる炭素部20として、基材11、黒鉛シート21間や、黒鉛シート21、被覆材12間に活性炭を挟み込むように配すればよい。
【0028】
例えば、
図6に示すような略真球形状の球状微粒子活性炭25を用いることができる。球状微粒子活性炭25として、粒径が150μm~600μmの多数の球状微粒子が好適に用いられる。この球状微粒子活性炭25としては、一般的な活性炭と同様、消臭効果を有したものを用いることが望ましい。これらの球状微粒子活性炭25は層間で粘着剤などにより保持されればよい。
【0029】
また、
図6の拡大断面図に示すように、球状微粒子活性炭25の内部には、球体表面に開口する複数の孔部25aが形成されている。これら孔部25aは、球内部に向かって形成される複数のマクロ孔25aaを有しており、各マクロ孔25aaには、そのマクロ孔25aaを幹としてここから枝分かれするように複数のミクロ孔25abが形成されている。ミクロ孔25abの孔径寸法は、マクロ孔25aaよりも小さい。このような構成の孔部25aが複数設けてあることにより、球状微粒子活性炭25は超多孔質となる。
【0030】
球状微粒子活性炭25としては、炭素純度が90%以上のものを用いればよく、望ましくは99.9%以上のものを用いればよい。また、球径が150μm~600μmのものを用いることが望ましく、大きさにばらつきがないように180μm~500μmのものを用いることがさらに望ましい。
【0031】
また、細孔容積が0.9cm3/g~2.0cm3/g、細孔ピーク直径が0.5nm~2.0nmのものを用いればよい。ここで、細孔容積とは、球状微粒子活性炭25内に形成された全てのマクロ孔25aaおよびミクロ孔25abの孔内の容積の和であり、また、細孔ピーク直径とは、孔部25aにおける球状微粒子活性炭25表面の開口径のうち最大のものを指す。
【0032】
本実施形態では、球状微粒子活性炭25は、炭化させたフェノール樹脂から構成されており、比表面積が1,000m2/g以上とされている。ここで、比表面積とは、球状微粒子活性炭25の球表面の面積、およびすべての孔部25aのマクロ孔25aaおよびミクロ孔25abを構成する面の面積の合計である。
【0033】
球状微粒子活性炭25は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0034】
まず、原料となるフェノール樹脂などを粉砕し、粉砕片を加工して複数の球体を得る。この球体を高温下(例えば700~800℃程度)で炭化させた後、その処理物を高温下(例えば900~1000℃程度)で水蒸気と反応させる(水蒸気賦活)。この水蒸気賦活により多孔質の構造が形成される(この場合、比表面積が1,000~2,000m2/g程度になる)。その後、精製し不純物を取り除き、ふるい分けを行い、所望の粒径であって、所望の孔径を有した多数の孔部16aが形成された球状微粒子活性炭25が得られる。
【0035】
また、球状微粒子活性炭25に代えて、ペットボトルの再利用による活性炭を用いる場合には、その活性炭は、ペットボトルをフレーク状にして炭化させた後、賦活することで得ることができる。この場合も、比表面積が1,000~2,000m2/gのものが得られる。
【0036】
なお、上記の賦活としては、水蒸気賦活に限られず、二酸化炭素や空気などを用いて行なってもよい。また、KOH(水酸化カリウム)などを用いたアルカリ賦活を行なってもよい。また、球状微粒子活性炭25の原料としては、フェノール樹脂に限られず、ヤシ殻炭や石灰などとしてもよい。ペットボトルを原材料とした場合には、2,500~3,600m2/gのものが得られる。
【0037】
球状微粒子活性炭25としては、例えば、B’s Wiper(登録商標)や、特許第4266711号公報および特許第4308740号公報に開示された製法で製造されたものを好適に使用することができる。
【0038】
また、球状微粒子活性炭25としては、強い圧力や衝撃が加えられても割れて粉々にならず、色素などが皮膚などに付着するおそれがないものを利用することが望ましい。さらにpH値が7前後(中性)のものとすることが望ましい。
【0039】
また、
図6に示すように、球状微粒子活性炭25には機能性物質として消臭分解酵素26が収蔵されている。消臭分解酵素26としては、臭い成分を活性酸素で酸化して別の物質に変化させてその臭い成分を分解する作用を有する人工酵素を用いればよい。
【0040】
このような消臭分解酵素26として、DEORASE(登録商標)がある。このDEORASE(登録商標)は、アルカリ条件での中心金属の脱離による消臭効果の低下が見られず、生体内の酵素に似たサイクル反応をもたらすため、他の化学反応を用いた消臭剤と比べて、格段に消臭効果が持続する。また、一般的に、上記サイクル反応の反応性は、吸湿による水分により低下することが知られているが、DEORASE(登録商標)では、逆に吸湿により反応性が向上することがわかっている。
【0041】
なお、消臭分解酵素26としては、これ以外に、例えば、人工酵素である鉄系フタロシアニンなどを用いたものを採用してもよい。
【0042】
また、球状微粒子活性炭25には、他の機能性物質として抗菌剤27が収蔵されている。抗菌剤27としては、無機系の抗菌剤27を用いることができ、抗菌作用を有する金属や金属イオンを無機系担体に担持させて構成したものを用いればよい。このような無機系の抗菌剤27としては、例えば、粉体である銀系の無機抗菌剤(例えば、ノバロン(登録商標))を用いてもよい。無機系の抗菌剤27は、溶液に溶解又は分散させて、球状微粒子活性炭25の孔部25a内に含侵させるようにしてもよい。これにより、球状微粒子活性炭25を含む動物用装着具1を、雑菌が繁殖しにくいなどの抗菌効果を有するものにすることができ、動物用装着具2の劣化を遅らすことができる。
【0043】
動物用装着具1の裏面に動物の皮膚や体毛が接触した場合、皮膚の汗や皮脂などが動物用装着具1の内部に吸い取られて、皮膚表面に存在する雑菌によってこれらが分解され、いわゆる分解臭である悪臭が生じるが、上記のような抗菌剤27を球状微粒子活性炭25内に含ませれば、雑菌がこれにより死ぬので、雑菌による汗や皮脂などの分解が抑えられ、悪臭の発生が抑制される。
【0044】
これら機能性物質は、
図6に示すように、球状微粒子活性炭25の孔部25a内に収蔵されている。図例では、機能性物質が孔部25aのマクロ孔25aa内に収蔵されている例を示しているが、ミクロ孔25ab内に収蔵されていてもよい。球状微粒子活性炭25は複数の孔部25aを有した超多孔質であるので、多数の機能性物質を孔部25a内に効率よく含ませることができる。なお、球状微粒子活性炭25に機能性物質として芳香剤を含ませてもよい。
【0045】
このように、動物用装着具1の本体10は球状微粒子活性炭25と、そこに収蔵された消臭分解酵素26とを含んでいるため、動物の臭いを低減化することができる。なお、活性炭、消臭分解酵素26の一方だけを含ませるようにしてもよい。消臭分解酵素26を例えば、被覆材12の内部や層間などに配するようにしてもよい。
【0046】
ついで、第2実施形態に係る動物用装着具1について、
図2を参照しながら説明する。
【0047】
本動物用装着具1は、炭素部20として平面視方形状の黒鉛が用いてあり、犬や猫などのペットの首輪や、ペット服などに適用されるものである。首輪については、
図2(a)に模式部分裏面図を示し、
図2(b)に模式拡大部分縦断面図を示した。ペット服については、裏面図は割愛し、
図2(c)に模式拡大部分縦断面図を示した。
【0048】
図2(a)(b)に示すように、首輪には複数の炭素部20と複数の磁石部30とが長手方向に沿って交互に内蔵され、さらにマイクロチップ32が内蔵されている。炭素部20は方形状の黒鉛の成形体22よりなり、磁石部30は円盤状の永久磁石体よりなる。マイクロチップ32は、ペットの個体識別用の種々の情報を登録可能としたICチップである。
【0049】
首輪は、
図2(b)に示すように、表面側より基材11、被覆材12の2層の層構造をなしている。裏面側の被覆材12は、動物に装着した際に皮膚や体毛に接触する面とされる。各層間は粘着剤を用いて固着されている。
【0050】
表面側の層である基材11の裏面には複数の方形凹部11cと複数の円形凹部11aとが形成され、方形凹部11cに成形体22が嵌め入れられ、円形凹部11aに永久磁石体が嵌め入れられている。また、基材11の裏面には方形凹部11bが形成され、そこにマイクロチップ32が嵌め入れられている。炭素部20や磁石部30の上には被覆材12が貼着されている。基材11としては皮革などの厚くて丈夫な材料を用いることが望ましく、被覆材12としては通気性のある不織布などを用いることが望ましい。
【0051】
成形体22は、炭素純度が90%以上、かつ2000℃以上の熱処理により結晶化された炭素材料(黒鉛)で形成されている。例えば、つぎのように製造することができる。
【0052】
炭化物の炭素粉に、フェノール系接着剤、ピッチまたはタールなどのバインダを5重量%程度加えて固め、所定の塊に加圧成形する。そして、加圧成形した物を酸素が欠乏した状態で加熱し、2000~3000℃程度で焼成する。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し結晶化(黒鉛化、定型炭素化)する。例えば人造黒鉛が挙げられる。
【0053】
なお、フェノール成分、ピッチまたはタールは昇温途中の約1200℃程度で揮発している。その後、加熱を止め、温度を下げ、成形体22の形状に削り出し加工する。この成形体22は、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)の炭素の材料となっている。また、かさ密度(かさ比重)は。1.77Mg/m3以上である。
【0054】
また、動物用装着具1をペット服として用いる場合は、基材11を布材、例えば合成繊維や天然繊維などのシートで構成すればよく、永久磁石体やマイクロチップ32、成形体22は、基材11、被覆材12間に挟み込み粘着剤13で固定するか、縫い込んで固定すればよい。
【0055】
このような動物用装着具1によれば、炭素部20を有しているため、炭素材料の熱伝導性の高さおよび遠赤外線の放射性の高さにより、これを身に着ける動物の健康の増進を図ることができる。炭素部20がもたらす遠赤外線効果のメカニズムについては、説明を割愛する。
【0056】
さらに、本動物用装着具1は磁石部30も備えているため、磁気による血流促進などの健康増進を図ることができる。つまり、遠赤外線と磁気の両方により、ペットなどの動物の血流促進を図ることができる。
【0057】
このような動物用装着具1としては、
図2に示すように首輪やペット服に適用すればよく、また脚や胴に巻きつけるようなバンドに適用してもよい。
【0058】
なお、球状微粒子活性炭25などの活性炭(他の炭素部)や、消臭分解酵素26などの機能性物質については、
図1のものと同様、動物用装着具1の本体10に内蔵させることができる。
【0059】
つぎに、第3実施形態に係る動物用装着具1について、
図3を参照しながら説明する。
【0060】
本動物用装着具1は、炭素部20と磁石部30とが合体されており、犬や猫などのペットの首輪や、ペット服などに適用されるものである。首輪については、
図3(a)に模式部分裏面図を示し、
図3(b)に模式拡大部分縦断面図を示した。ペット服については、説明図を割愛した。
図3(c)(d)は、
図3(b)に示されている、炭素部20と磁石部30との合体部23(図中のクロスハッチングで示した部位)の2例を示す拡大図である。
【0061】
図3(a)(b)に示すように、首輪には複数の合体部23が長手方向に沿って複数箇所に形成され、さらにマイクロチップ32が内蔵されている。合体部23は円盤状とされる。マイクロチップ32は、ペットの個体識別用の種々の情報を登録可能としたICチップである。
【0062】
首輪は、
図3(b)に示すように、表面側より基材11、被覆材12の2層の層構造をなしている。裏面側の被覆材12は、動物に装着した際に皮膚や体毛に接触する面とされる。各層間は粘着剤を用いて固着されている。
【0063】
表面側の層である基材11の裏面には複数の円形凹部11aが形成され、円形凹部11aに合体部23が嵌め入れられている。また、基材11の裏面には方形凹部11bが形成され、そこにマイクロチップ32が嵌め入れられている。合体部23の上には被覆材12が貼着されている。基材11としては皮革などの厚くて丈夫な材料を用いることが望ましく、被覆材12としては通気性のある不織布などを用いることが望ましい。
【0064】
合体部23は、中央に円形凹部22aを有した炭素部20と、その円形凹部22a内に配された磁石部30とよりなる。この合体部23としては、例えば
図3(c)(d)の2例が挙げられる。これらは、炭素部20の素材が相異なる。
【0065】
図3(c)に示した炭素部20は、円形凹部22aを有した成形体22Aとされ、
図2に示した成形体22と同じ素材が用いられ、
図2に示した成形体22と同様の方法で成形される。例えば、炭素純度が90%以上、かつ2000℃以上の熱処理により結晶化された炭素材料(黒鉛)を用いて、円形凹部22aを有した円盤状の成形体22Aに形成すればよい。そして、その円形凹部22aに永久磁石体を嵌め入れて合体部23とすればよい。その合体部23が基材11の円形凹部11aに嵌め入れられる。
【0066】
図3(d)に示した炭素部20は、円形凹部22aを有した成形体22Bとされ、その成形体22Bは、樹脂材料に3~5μmの黒鉛粒子を含有させた樹脂組成物により形成されている。黒鉛粒子としては、3~5μm前後に粉砕され微細化された人造黒鉛、鱗状黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。これらはいずれも、炭素純度が90%以上のものを用いることが望ましい。
【0067】
樹脂材料としては熱可塑性樹脂が好適に用いられ、ポリプロピレン、シリコーン、ポリスチレン、ポリアミド、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリールスルホン、ポリアリールケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイドスルフォン、ポリアリレート、液晶ポリエステル、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、樹脂材料として熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0068】
このような樹脂材料に上述の黒鉛粒子を5~50重量%含有させ、ペレット状にする。そして、熱を加えて溶けた原材料である樹脂組成物を金型に供給して射出成形して成形体22Bが成形できる。
【0069】
このとき用いられる黒鉛粒子は、粒度が微細であればあるほどよく、また樹脂材料に対して黒鉛粒子を多く含ませられれば、効果の向上が期待できる。しかし結晶化した炭素材料の原料によっては、微細に粉砕しにくいものもある。また混入させる樹脂材料によっては黒鉛粒子とうまく混ざらないものもあり、ひとくちに黒鉛粒子といっても射出成形するには、様々な問題がある。例えばアセチレンブラックは、微細な粒子にしやすく高い導電性が有しているが、樹脂材料と混ざりにくい。
【0070】
発明者らは種々試験を行った結果、炭素材料は高温焼成による結晶化が導電性を高めるために必須であり、上述の樹脂材料と混ぜて射出成形を行うには、3~5μm前後に粉砕して用いることが最適であることを見出した。上述の黒鉛粒子を3μmより小さく均一に粉砕することはむずかしく、黒鉛粒子が5μmより大きくなると樹脂材料と混ざりにくい傾向となる。また樹脂材に対して含有される黒鉛粒子が50重量%より多くなると射出成形がうまくいかない傾向となる。なお、射出成形がしやすさ、および成形後の形状保持力を考慮すれば、黒鉛粒子は5~20重量%の含有率とすることが望ましい。
【0071】
このように黒鉛粒子を配合させた樹脂組成物による成形体22Bは、黒鉛粒子の炭素材料だけで成形した成形体22、22A(
図1、
図3(c)参照)よりも炭素材料の含有量が少ない。しかし、発明者らの試験によれば、これらの成形体22、22A、22Bの熱伝導率はほとんど変わらないことが判明している。また、成形体22Bは型成形で形成できるので、製造が容易である。
【0072】
このように、炭素材料を樹脂材料に混ぜて形成した成形体22Bであっても熱伝導性は高いため、動物用装着具1が動物の皮膚に触れたり近づいたりすると、
図1のものと同程度に動物の体が遠赤外線を吸収して加温される。よって、本実施形態に係る動物用装着具1も、健康増進に十分に寄与する。
【0073】
以上のように、
図3(c)(d)のいずれの(炭素部20と磁石部30の)合体部23を用いても、遠赤外線が放射され、動物の健康増進に寄与することとなる。
【0074】
また、
図3(d)の方法で炭素部20を形成すれば、炭素材料だけで加圧成形で形成した
図3(c)の成形体22Aよりも破損や摩耗はしにくくなり、炭素部20は長持ちする。また、この成形体22Bは上述のように型成形が可能であるため、削り出し加工にて成形するものにくらべ製造が容易となり得、その結果、製造コストの低減化を図ることができる。
【0075】
また、
図3では首輪の例を図示したが、ペット服にも適用が可能である。その場合には、
図1(c)などと同様、基材として合成繊維や天然繊維などの柔軟なシート材を用いればよく、合体部23を基材11と被覆材12との間にサンドイッチ状に配すればよい。
【0076】
なお、球状微粒子活性炭25などの活性炭(他の炭素部)や、消臭分解酵素26などの機能性物質については、
図1のものと同様、動物用装着具1の本体10に内蔵させることができる。
【0077】
ついで、第4実施形態に係る動物用装着具1について、
図4を参照しながら説明する。
【0078】
本動物用装着具1は、
図4(a)に示すように組みひも状とされ、組みひも自体が炭素部20とされる。なお、磁石部30およびマイクロチップ32は、組みひもの内部に配設されている。
【0079】
この組みひもは糸材料40Aをもとに形成されたものである。糸材料40Aは、表面用合成樹脂フィルム41と、炭素材料を含有した炭素入り樹脂接着層42と、基材シート43とをすくなくとも有してなる面状材40を、
図4(c)のように裁断して形成したものである。
【0080】
図例の基材シート43は、基材用合成樹脂フィルム43aと、和紙シート43bとを有した2層とされている。
【0081】
面状材40は、基材シート43の2層のうちの基材用合成樹脂フィルム43aの表面に、炭素材料を含有した炭素入り樹脂剤42をローラ等で塗布し、その上に表面用合成樹脂フィルム41を貼り合わせて形成することができる。
【0082】
そして、このように形成した面状材40を裁断して帯状の糸材料40Aを形成することができる。裁断幅寸法を0.1mm~5mm程度として、面状材40を短冊状に裁断することが望ましいが、これには限らない。糸材料40Aとしては、幅寸法が小さい糸状や繊維状のものであってもよいし、さらに幅広のものであってもよい。
【0083】
面状材40の構成材料である、表面用合成樹脂フィルム41および基材用合成樹脂フィルム43aは、ポリエステルフィルムやナイロンフィルムが挙げられる。また、表面用合成樹脂フィルム41と基材用合成樹脂フィルム43aとを同一素材にしてもよいし、相異なる素材にしてもよい。また、それぞれの厚みは6~9μmとすすることが望ましいが、これには限らない。
【0084】
また、基材用合成樹脂フィルム43aは、和紙シート43bと炭素入り樹脂接着層42との間に配されるため、その色は直接表面に表出しないが、淡色系の和紙シート43bを通して色が透け出ないように、透明、半透明または淡色のものが好適に用いてもよい。
【0085】
炭素入り樹脂接着層42を形成する接着剤の主剤とされる樹脂剤としては、カルボキシルメチルセルロース(CMC)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エナメル油性塗料、ラッカー塗料などが挙げられるが、これらには限らない。なお、ラッカー塗料は混入させる炭素材料を分散させやすく、主剤として望ましい。
【0086】
主剤に含有させる炭素材料としては、3~10μmの黒鉛粒子(黒鉛粉末)を用いることが望ましく、例えば結晶性の高い5~10μmの鱗片状黒鉛を用いることが望ましい。これに代えて、土状黒鉛、人造黒鉛を用いることもできる。また、粒子径が小さく導電性の高いアセチレンブラック(粒子径が1ミクロン以下)やケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックを他の炭素材料としてさらに付加し、それを黒鉛粒子間の隙間に配して、導電性を高めるようにしてもよい。鱗片状黒鉛より結晶性は劣るが鱗状黒鉛を用いてもよい。
【0087】
炭素材料としては、上記のものには限らず、カーボンナノチューブ(単層、多層)や、グラフェン、カーボン・ナノファイバーを用いることもできる。
【0088】
以上のようにして糸材料40Aを形成することができ、その糸材料40Aや、その糸材料40Aをもとに形成した撚糸(不図示)をもととして、
図4(a)に示すような組みひもを形成すればよい。
【0089】
このような組みひもによれば、全長にわたり炭素材料が含まれているため、この組みひもで首輪やバンド、ペット服を形成し動物に装着すれば、
図1~
図3に示した動物用装着具1と同様の健康増進効果が得られる。
【0090】
なお、球状微粒子活性炭25などの活性炭(他の炭素部)や、消臭分解酵素26などの機能性物質については、
図1のものと同様、動物用装着具1の組みひも本体に内蔵させることができる。
【0091】
つぎに、第5実施形態に係る動物用装着具1について、
図5を参照しながら説明する。
【0092】
本動物用装着具1は、複数の珠35を数珠繋ぎに形成したバンドであり、それらの珠35には、炭素部20を構成する珠35と、磁石部30を構成する珠35(クロスハッチングで示したもの)とが含まれている。これらの珠35のいずれかにマイクロチップ32(
図1参照)を内蔵させてもよい。
【0093】
炭素部20の珠35は、
図2、
図3(c)と同様の方法で成形加工された、黒鉛の成形体、または、
図3(d)と同様の黒鉛粒子を含有させた樹脂組成物より形成された黒鉛入り樹脂成形体で構成すればよい。もちろん、黒鉛の成形体と黒鉛入り樹脂成形体とが混在してもよい。また、炭素部20の内部にはマイクロチップ32が埋め込まれている。磁石部30の珠35としては永久磁石体が用いられている。
【0094】
このバンドは、珠35の数を種々異ならせて、動物用ネックレスや胴バンド、脚バンドとして利用することができ、
図1~
図4のものと同様の効果が奏せられる。また、珠35の数を調整することで猫用から大型犬用まで様々なサイズに形成することができる。
【0095】
以上に示した複数の実施形態では、磁石部30として永久磁石体を用いたものを例示したが、磁性粉粒体を用いたものであってもよい。また、樹脂材料、炭素材料のほかに、磁石材料としての磁性粉粒体を含ませて一体の炭素・磁石部を形成し、その炭素・磁石部を
図3に示した合体部23に代えて配すればよい。炭素・磁石部を用いれば、
図5の珠35として、炭素部20、磁石部30を区別することなく用いることもできる。
【0096】
このような動物用装着具1によれば、炭素部20、磁石部30が樹脂材料で成形体として一体化されているため、
図3のものの製造工程や製造後において、炭素部20と磁石部30とが分離するおそれがなく、取り扱いがしやすい。また、永久磁石体の炭素部20への嵌め入れ作業も発生せず、製造工程が簡易化できる。
【0097】
また、
図1~
図3の実施形態のものでは炭素部20を本体10に内蔵させているが、
図4、
図5の炭素部20のように、外部に露出させたものであってもよい。
【0098】
被覆材12を設けずに炭素部20が露出したものでは、動物用装着具1が動物の体毛との摩擦により静電気が発生した場合に、炭素部20は導電性があるため、電気を通して電気を溜めることがなく、外部への放出がしやすくなる。
【0099】
また、マイクロチップ32は、上記実施形態のものにかかわらず、種々の配設態様が可能とされる。例えば
図5の例のように、炭素部20や磁石部30と一体にして内蔵させてもよい。
図3(c)(d)の合体部23にさらにマイクロチップ32を埋め込んでもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 動物用装着具
10 本体
11 基材
11a 円形凹部
11b 方形凹部
11c 方形凹部
12 被覆材
13 粘着剤
20 炭素部
21 黒鉛シート
22 成形体
22A 成形体
22B 成形体
22a 円形凹部
23 合体部
25 球状微粒子活性炭
25a 孔部
25aa マクロ孔
25ab ミクロ孔
26 消臭分解酵素
27 抗菌剤
30 磁石部
32 マイクロチップ
35 珠
40 面状材
40A 糸材料
41 表面用合成樹脂フィルム
42 炭素入り樹脂接着層
43 基材シート
43a 基材用合成樹脂フィルム
43b 和紙シート