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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086203
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 17/00 20060101AFI20230615BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
E05F17/00 Z
E05F1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200555
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴博
(57)【要約】
【課題】 回転方向の負荷に対する牽引装置の強度を向上する。
【解決手段】 枠体10は、戸体の上方側で左右方向へわたる横枠部材11と、牽引方向側で横枠部材11に交差する縦枠部材12とを具備し、牽引装置60は、本体ケース61と、この本体ケース61内に回転自在に収納されるとともに巻き取り回転方向へ付勢された巻取体62と、この巻取体62に一端側を固定するとともに他端側を本体ケース61から外部へ繰り出して前記戸体に固定した紐状部材64とを備え、本体ケース61は、縦枠部材12と横枠部材11の双方に接するように設けられている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周囲に設けられる枠体と、この枠体の内側で左右方向へ移動して前記開口部を開閉する戸体と、前記戸体を開放方向または閉鎖方向へ牽引する牽引装置とを備え、
前記枠体は、前記戸体の上方側で左右方向へわたる横枠部材と、牽引方向側で前記横枠部材に交差する縦枠部材とを具備し、
前記牽引装置は、本体ケースと、この本体ケース内に回転自在に収納されるとともに巻き取り回転方向へ付勢された巻取体と、この巻取体に一端側を固定するとともに他端側を前記本体ケースから外部へ繰り出して前記戸体に固定した紐状部材とを備え、
前記本体ケースは、前記縦枠部材と前記横枠部材の双方に接するように設けられていることを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
前記本体ケースは、前記牽引方向側に対する逆方向側の部分が、止着具によって前記縦枠部材に止着されていることを特徴とする請求項1記載の引戸装置。
【請求項3】
前記横枠部材は、前記戸体の上端部に対向する天部と、前記天部における見込み方向の一端側から下方へ延設されたベース部とを有し、
前記本体ケースは、前記縦枠部材と前記横枠部材の前記ベース部との双方に接するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の引戸装置。
【請求項4】
前記本体ケースは、前記縦枠部材に面接触し、かつ前記横枠部材にも面接触していることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の引戸装置。
【請求項5】
前記戸体には、戸尻側で開閉動作する第一の戸体と、前記第一の戸体の開閉動作に連動するとともに前記第一の戸体に重なる位置と前記第一の戸体よりも閉鎖方向側の位置との間で開閉動作する第二の戸体とが少なくとも有り、
前記紐状部材は、前記第二の戸体の幅方向に対し略平行に引き出されて前記第二の戸体に止着されていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の引戸装置。
【請求項6】
前記牽引装置は、前記戸体を閉鎖方向へ牽引することを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の引戸装置。
【請求項7】
前記本体ケースには、貫通状の牽引力調整孔が設けられ、
前記本体ケースの内部には、前記牽引力調整孔により外部に露出するように牽引力調整部が設けられ、
前記本体ケースの外部には、前記牽引力調整孔の下方側を覆うように、着脱可能なカバー部材が設けられていることを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の引戸装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記本体ケースに対し側方から凹状に嵌り合うように形成されていることを特徴とする請求項7記載の引戸装置。
【請求項9】
前記戸体の上端側に設けられた吊車と、前記吊車を吊るして戸体開閉方向へ転動させるレールとを備え、
前記吊車は、前記戸体の上端側に固定された軸受ブラケットによって回転自在に支持され、
前記紐状部材の前記他端側は、前記軸受ブラケットに固定されていることを特徴とする請求項1~8何れか1項記載の引戸装置。
【請求項10】
前記軸受ブラケットには、前記紐状部材の前記他端側が係止される係止部材が設けられ、
前記係止部材は、前記軸受ブラケットの戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分に対し、選択的に止着されるように構成されていることを特徴とする請求項9記載の引戸装置。
【請求項11】
前記軸受ブラケットには、前記紐状部材の前記他端側が係止される係止部材が設けられ、
前記係止部材は、前記軸受ブラケットの戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分の両方に設けられていることを特徴とする請求項9記載の引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸体を牽引して開放又は閉鎖するようにした引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、戸尻側で開閉動作する第1扉体と、第1扉体の開閉動作に連動するとともに第1扉体に重なる位置と第1扉体よりも閉鎖方向側の位置との間で開閉動作する第2扉体と、第1扉体及び第2扉体の上端に設けられたブラケット及びローラと、ローラを吊るして開閉方向へ転動させるガイドレールと、ガイドレールに支持された自動移動手段とを具備し、前記自動移動手段により第1扉体の戸先側に固定されたブラケットを閉鎖方向へ引っ張って、第1及び第2扉体を閉鎖動作させるようにした多重引き式引戸装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-60807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、第1及び第2扉体を閉鎖動作する際に、自動移動手段(牽引装置)に比較的大きな回転方向の負荷が加わり、自動移動手段ががたつくおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。

開口部の周囲に設けられる枠体と、この枠体の内側で左右方向へ移動して前記開口部を開閉する戸体と、前記戸体を開放方向または閉鎖方向へ牽引する牽引装置とを備え、前記枠体は、前記戸体の上方側で左右方向へわたる横枠部材と、牽引方向側で前記横枠部材に交差する縦枠部材とを具備し、前記牽引装置は、本体ケースと、この本体ケース内に回転自在に収納されるとともに巻き取り回転方向へ付勢された巻取体と、この巻取体に一端側を固定するとともに他端側を前記本体ケースから外部へ繰り出して前記戸体に固定した紐状部材とを備え、前記本体ケースは、前記縦枠部材と前記横枠部材の双方に接するように設けられていることを特徴とする引戸装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、回転方向の負荷に対する牽引装置の強度を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る引戸装置の一例を示す正面図である。
図2図1の(II)-(II)線に沿う断面図であり、断面を示すハッチングを省略している。
図3】第一の戸体の吊持構造の一例を示す正面図であり、第二の戸体は省略している。
図4】第二の戸体の吊持構造の一例を示す正面図であり、第一の戸体は省略している。
図5】連動機構の一例を示す平面図である。
図6】牽引装置の取付構造の一例を示し、(a)は正面図、(b)は(a)を下方から見上げた図である。
図7】同引戸装置について、横枠カバーとカバー部材を取り外した状態の要部左側面図であり、縦枠部材は省略している。
図8】第2扉体と牽引装置の接続構造の一例を示す正面図であり、(a)は右勝手仕様、(b)左勝手仕様を示す。
図9図8の接続構造に用いる係止部材を示し(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図10】第2扉体と牽引装置の接続構造の他例を示す正面図であり、(a)は右勝手仕様、(b)左勝手仕様を示す。
図11図9の接続構造に用いる係止部材を示し(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図12】第2扉体と牽引装置の接続構造の他例を示す正面図であり、(a)は右勝手仕様、(b)左勝手仕様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、開口部の周囲に設けられる枠体と、この枠体の内側で左右方向へ移動して前記開口部を開閉する戸体と、前記戸体を開放方向または閉鎖方向へ牽引する牽引装置とを備え、前記枠体は、前記戸体の上方側で左右方向へわたる横枠部材と、牽引方向側で前記横枠部材に交差する縦枠部材とを具備し、前記牽引装置は、本体ケースと、この本体ケース内に回転自在に収納されるとともに巻き取り回転方向へ付勢された巻取体と、この巻取体に一端側を固定するとともに他端側を前記本体ケースから外部へ繰り出して前記戸体に固定した紐状部材とを備え、前記本体ケースは、前記縦枠部材と前記横枠部材の双方に接するように設けられている(図1図12参照)。
【0009】
第二の特徴として、前記本体ケースは、前記牽引方向側に対する逆方向側の部分が、止着具によって前記縦枠部材に止着されている(図6参照)。
【0010】
第三の特徴として、前記横枠部材は、前記戸体の上端部に対向する天部と、前記天部における見込み方向の一端側から下方へ延設されたベース部とを有し、前記本体ケースは、前記縦枠部材と前記横枠部材の前記ベース部との双方に接するように設けられている(図6参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記本体ケースは、前記縦枠部材に面接触し、かつ前記横枠部材にも面接触している(図6参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記戸体には、戸尻側で開閉動作する第一の戸体と、前記第一の戸体の開閉動作に連動するとともに前記第一の戸体に重なる位置と前記第一の戸体よりも閉鎖方向側の位置との間で開閉動作する第二の戸体とが少なくとも有り、前記紐状部材は、前記第二の戸体の幅方向に対し略平行に引き出されて前記第二の戸体に止着されている(図1図4図8図10及び図12参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記牽引装置は、前記戸体を閉鎖方向へ牽引する(図4図6図8図10及び図12参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記本体ケースには、貫通状の牽引力調整孔が設けられ、
前記本体ケースの内部には、前記牽引力調整孔により外部に露出するように牽引力調整部が設けられ、前記本体ケースの外部には、前記牽引力調整孔の下方側を覆うように、着脱可能なカバー部材が設けられている(図7参照)。
【0015】
第八の特徴として、前記カバー部材は、前記本体ケースに対し側方から凹状に嵌り合うように形成されている(図7参照)。
【0016】
第九の特徴として、前記戸体の上端側に設けられた吊車と、前記吊車を吊るして戸体開閉方向へ転動させるレールとを備え、前記吊車は、前記戸体の上端側に固定された軸受ブラケットによって回転自在に支持され、前記紐状部材の前記他端側は、前記軸受ブラケットに固定されている(図4図8図10及び図12参照)。
【0017】
第十の特徴として、前記軸受ブラケットには、前記紐状部材の前記他端側が係止される係止部材が設けられ、前記係止部材は、前記軸受ブラケットの戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分に対し、選択的に止着されるように構成されている(図4図8図10参照)。
【0018】
第十一の特徴として、前記軸受ブラケットには、前記紐状部材の前記他端側が係止される係止部材が設けられ、前記係止部材は、前記軸受ブラケットの戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分の両方に設けられている(図12参照)。
【0019】
なお、後述する実施態様では、以下の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
すなわち、この発明の一つは、戸体を牽引装置により開放方向または閉鎖方向へ牽引するようにし引戸装置において、前記牽引装置は、本体ケースと、この本体ケース内に回転自在に収納されるとともに巻き取り回転方向へ付勢された巻取体と、この巻取体に一端側を固定するとともに他端側を前記本体ケースから外部へ繰り出して前記戸体に固定した紐状部材とを備え、前記本体ケースには、貫通状の牽引力調整孔が設けられ、前記本体ケースの内部には、前記牽引力調整孔により外部に露出するように牽引力調整部が設けられ、前記本体ケースの外部には、前記牽引力調整孔の下方側を覆うように、着脱可能なカバー部材が設けられている(図7参照)。
この発明によれば、牽引力調整孔から流出する潤滑油等の液体が下方へ垂れ落ちるのをカバー部材により防ぐことができる。
【0020】
また、他の発明としては、左右方向へ移動して開口部を開閉する戸体と、前記戸体の上端側に設けられた吊車と、前記吊車を吊るして左右方向へ転動させるレールと、前記戸体を開放方向または閉鎖方向へ牽引する牽引装置とを備え、前記牽引装置は、巻き取り回転方向へ付勢された巻取体と、この巻取体に一端側を固定するとともに他端側を前記戸体に固定した紐状部材とを備え、前記吊車は、前記戸体の上端側に固定された軸受ブラケットによって回転自在に支持され、前記紐状部材の前記他端側は、前記軸受ブラケットに固定されている。
この発明によれば、比較的頑強な軸受ブラケットに紐状部材を止着して軸受ブラケットと共に戸体を牽引するようにしているため、戸体等に紐状部材を止着するための構造を設けなくてもよい(図4図8図10及び図12参照)。
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、「見込み方向」とは、枠体の厚みの方向(図2の左右方向)を意味し、本実施態様では、「戸厚方向」と同じ方向である。
また、「見付け方向」とは、見込み方向に直交する枠体の横幅方向(図1の左右方向)を意味し、本実施態様では、戸体により開閉される開口部の横幅方向、及び戸体の幅方向と同じ方向である。
【0021】
引戸装置1は、開口部A(図3参照)及び戸袋部Bの周囲に設けられる枠体10と、この枠体10の内側で左右方向へ移動して開口部Aを開閉する第一の戸体21及び第二の戸体22と、これら戸体の上端側に設けられた複数の吊車31と、これら吊車31を吊るして左右方向へ転動させる第一及び第二のレール41,42と、第一の戸体21と第二の戸体22を連動して開閉動作させる連動機構50と、第二の戸体22を閉鎖方向へ牽引する牽引装置60とを備え、多重式引戸装置を構成している。
【0022】
開口部Aは、当該引戸装置1の設置対象である躯体(例えば建築物等)の壁部W(図2参照)に形成された矩形状の貫通孔である。
戸袋部Bは、開口部Aの横方向に並ぶようにして、壁部Wの一方の面に沿って確保された空間である。
【0023】
枠体10は、第一の戸体21及び第二の戸体22の上方側で、開口部A及び戸袋部Bの上端部に沿って左右方向へわたる横枠部材11と、牽引装置60による牽引方向側(図1の左方向)にて横枠部材11に略直交するように不動部位(例えば壁部W)に固定された一方の縦枠部材12と、反牽引方向側で横枠部材11に略直交するように不動部位に固定された縦枠部材13とを具備し、正面視逆凹枠状に形成される(図1参照)。
なお、この枠体10の下方側の面(言い換えれば、第一の戸体21及び第二の戸体22の下端に対向する面)は、床面や地面であってもよし、左右の縦枠部材12,13間にわたる下枠部材または沓摺等であってもよい。
【0024】
横枠部材11は、第一の戸体21及び第二の戸体22の上端部に対向する天部11aと、天部11aにおける見込み方向の一端側から下方へ延設されたベース部11bとを有する縦断面逆略L字状に形成される(図2及び図7参照)。
この横枠部材11には、ベース部11bとの間に、第一の戸体21及び第二の戸体22を置くようにして、横枠カバー14が着脱可能に装着される。
横枠部材11及び横枠カバー14は、左右方向にわたって第一の戸体21及び第二の戸体22の上端部を覆うように構成され、無目と呼称される場合もある。
【0025】
天部11aは、左右の縦枠部材12,13間にわたって略水平状に延設され、所定の厚みを有する矩形板状に形成される。この天部11aと、左右の縦枠部材12,13とは略直交している。
【0026】
ベース部11bは、鉛直板状に形成され、天部11aに沿って横幅方向へ延設される。このベース部11bは、ねじやボルト、リベット等の止着具(図示せず)により、壁部Wに止着固定される。
図示例の横枠部材11は、金属材料の引き抜き成形や押し出し成形等により、天部11a及びベース部11bを一体に形成している(図2及び図7参照)。
【0027】
横枠カバー14は、天部11aの上面に重なり合う上板部14aと、この上板部14aから下方へ垂れさがって吊車31等を覆い隠す垂下板部14bとを有する縦断面逆L字状の部材であり(図2及び図7参照)、横枠部材11の左右方向の略全長にわたる長尺状に形成される。
この横枠カバー14は、例えば、ねじやボルト等の止着具により天部11aに対し着脱可能に止着される。
【0028】
なお、図3及び図7に示す符号11cは、開口部Aの閉鎖方向寄りにおいて、ベース部11bと第二の戸体22の間の隙間を狭める下カバーである。この下カバー11cは、ベース部11bに対し着脱可能に止着される一片部と、この一片部から枠体厚さ方向へ突出する他片部とを枠体幅方向へ延設したアングル状の部材である。前記他片部の突出量は、工具Tに干渉しないように適宜に設定される(図7参照)。
【0029】
また、図3中、符号11dは、第一の戸体21の移動速度を閉鎖動作の途中で抑制する速度抑制装置(例えばダンパ装置等)である。
また、図4中、符号11eは、全開した際の第二の戸体22の戸尻寄りの吊車31を、離脱可能に係合保持する係脱部材である。
【0030】
第一の戸体21は、開口部Aにおける戸袋部B寄りの部分を覆う位置と、戸袋部B内に収納された位置との間で直線的に開閉動作する(図3参照)。
この第一の戸体21は、所定の厚みを有する矩形板状の部材であり、厚さ方向に並ぶ二枚の板材、これら板材を内側から支持する骨材、及び芯材等によって構成される(図2参照)。
この第一の戸体21の上端部には、戸幅方向に間隔を置いて、後述する複数の吊車31が支持される。
【0031】
また、第一の戸体21の下端部には、戸幅方向へわたって下方を開口した凹溝21aが設けられる。この凹溝21aには、上下方向の軸を中心にして回転するように振止ローラ32が遊嵌される。
この振止ローラ32は、不動部位である壁部Wに固定されたブラケット及び軸部材等により回転自在に支持され、第一の戸体21の下端側が戸厚方向へ振れるのを阻む。
【0032】
第二の戸体22は、連動機構50によって第一の戸体21の開閉動作に連動するようにして、戸袋部B内で第一の戸体21に重なる位置と、第一の戸体21よりも閉鎖方向側で開口部Aを覆う位置との間で開閉動作する(図4参照)。
この第二の戸体22の開閉経路は、第一の戸体21の開閉経路に対し、見込み方向へずれている(図2参照)。すなわち、図1によれば、第二の戸体22は、第一の戸体21の手前側に位置する。
【0033】
この第二の戸体22は、所定の厚みを有する矩形板状の部材であり、厚さ方向に並ぶ二枚の板材、これら板材を内側から支持する骨材、芯材等によって構成される(図2参照)。
この第二の戸体22の両面には、それぞれ、戸先側に位置するように手掛け部22bが設けられる。
【0034】
この第二の戸体22の上端部と下端部には、上記第一の戸体21と同様に、複数の吊車31や、凹溝22aが設けられる。そして、第二の戸体22の下端側の凹溝22aには、上下方向の軸を中心にして回転するように振止ローラ33が遊嵌される(図2参照)。
この振止ローラ33は、第一の戸体21に固定されたブラケット及び軸部材等により回転自在に支持され、第二の戸体22の下端側が戸厚方向へ振れるのを阻む。
【0035】
吊車31は、軸受ブラケット34によって回転自在に支持される。
軸受ブラケット34は、開閉方向に並ぶ複数の吊車31を、それぞれ軸方向の両側から回転自在に支持するように構成される(図2参照)。
この軸受ブラケット34の下半部側は、後述する係止部材36が止着可能に形成され、図示例によれば、凹状の縦断面を開閉方向へ連続した形状を呈する。
【0036】
吊車31及び軸受ブラケット34は、一体的な吊車ユニット30を構成している。
なお、図示例の吊車ユニット30は、単一の軸受ブラケット34に対し二つの吊車31を設けているが、他例としては、単一の軸受ブラケット34に対し単一の吊車31を設けた態様や、単一の軸受ブラケット34に対し三以上の吊車31を設けた態様とすることが可能である。
【0037】
上記構成の吊車ユニット30は、第一の戸体21の上端部に、幅方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)装着され、同様にして第二の戸体22の上端部にも複数装着される。
そして、各吊車ユニット30は、複数の吊車31を第一のレール41又は第二のレール42上で転動させる。
【0038】
各吊車ユニット30を第一の戸体21又は第二の戸体22に接続する手段は、図示例によれば、軸受ブラケット34を、第二の戸体22の戸厚方向の略中心に位置するボルト状の接続部材35により第一の戸体21又は第二の戸体22に接続している。
なお、この接続手段の他例としては、軸受ブラケット34を、直接、第一の戸体21又は第二の戸体22に固定した態様や、図示例以外の接続部材を用いたい態様とすることが可能である。
【0039】
上述した複数の吊車ユニット30のうち、第二の戸体22の戸先側に装着される吊車ユニット30には、紐状部材64の先端側を止着するための係止部材36が設けられる。
係止部材36は、軸受ブラケット34の戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分に対し、選択的に止着されるように構成されている。
【0040】
詳細に説明すれば、図8及び図9に一例を示す係止部材36は、軸受ブラケット34に着脱可能に装着される基部36aと、この基部36aから下方へ突出する係合部36bとを一体的に有する。
【0041】
基部36aは、垂直状の一片部と水平状の他片部とを有するアングル状の部材であり、図8によれば、軸受ブラケット34における下半部側であって手前側の角部分に嵌め合わせられる。
この基部36aの前記一片部には、戸幅方向の一端側と他端側に切欠部36a1,36a1が設けられる(図9参照)。各切欠部36a1は、軸受ブラケット34に螺合する止着具37(例えば、ねじやボルト等)の軸部分を挿通可能に形成される。
【0042】
図8(a)に示すように、当該引戸装置1を右側が開放方向となるように構成した場合(以降、右勝手と称する)には、第二の戸体22の吊車ユニット30における左寄りで、左側の切欠部36a1を用いて、係止部材36が止着具37により軸受ブラケット34に止着される。
【0043】
また、図8(b)に示すように、当該引戸装置1を左側が開放方向となるように構成した場合(以降、左勝手と称する)には、第二の戸体22の吊車ユニット30における右寄りで、右側の切欠部36a1を用いて、係止部材36が止着具37により軸受ブラケット34に止着される。
【0044】
係合部36bは、頭部と軸部を有する部材(例えば、ねじやボルト、リベット等)であり、その頭部を下方へ向けて軸部が基部36aの水平状の前記他片部に止着される。
この係合部36bは、係止部材36が軸受ブラケット34に止着された状態で、第二の戸体22の戸厚方向の略中心部又は中心部の近傍に位置する。
この係合部36bの軸部には、紐状部材64の先端側の係止環部64a(図6参照)が掛けられる。
【0045】
また、第一及び第二のレール41,42は、天部11aの下面に、戸体開閉方向(図1によれば左右方向)へわたって固定される。
第一のレール41は、第一の戸体21を開閉方向へ導くレールであり、第一の戸体21の上端に対向するようにして横枠部材11の横幅方向へ延設されている。
第二のレール42は、第二の戸体22を開閉方向へ導くレールであり、第二の戸体22の上端に対向するようにして横枠部材11の横幅方向へ延設されている。
【0046】
第一のレール41は、断面略逆凹状の部材である(図2参照)。第一のレール41の下端側には、戸厚方向の両側から内向きに突出して吊車31を転動可能に吊るすように、縁部41a,41aが設けられる。
第一の戸体21側の吊車ユニット30は、第一のレール41に対し長手方向の一端側から内部に挿入され、吊車31の軸方向の両端部を内向の縁部41a,41aに掛けるようにして、縁部41a,41a上を転動する。
【0047】
同様に、第二のレール42も、内向きの縁部42a,42aを有する。
第二の戸体22側の吊車ユニット30は、第二のレール42に対し長手方向の一端側から内部に挿入され、吊車31の軸方向の両端部を内向の縁部42a,42aに掛けて、縁部42a,42a上を転動する。
【0048】
連動機構50は、第二の戸体22の低速の開閉動作に、第二の戸体22の高速の開閉動作を連動させる機構である。
この連動機構50は、図5に示すように、第一の戸体21の上端に、開閉方向に間隔を置いて設けられた二つの滑車状部材51,52と、これら滑車状部材51,52に掛け回された紐状部材53と、紐状部材53の一部分を不動部位に固定する固定部54と、紐状部材53の他の部分を第二の戸体22の上端に固定するとともに紐状部材53の長さを調節する張力調整部55とを具備している。
【0049】
滑車状部材51,52の各々は、外周面に、紐状部材53を嵌め合わせるための凹溝を環状に形成した円板状の部材であり、その中心部が、第一の戸体21の上端部に対し回転自在に軸支される。
一方の滑車状部材51は、第一の戸体21の戸先寄りに配設され、他方の滑車状部材52は、第一の戸体21の戸尻寄りに配設される。
【0050】
紐状部材53は、長尺な可撓性の部材であり、例えば、可撓性を有するワイヤーや、その他の紐状の部材、帯状の部材等を用いることが可能である。
この紐状部材53は、滑車状部材51,52の両方に掛け回される。
【0051】
固定部54は、紐状部材53における壁部W側の部分を、紐状部材53の長手方向へ移動しないように、不動部位である壁部Wに止着している。
図示例の固定部54は、ゴム等の弾性材料から形成される。この固定部54は、第一の戸体21及び第二の戸体22の開閉動作に伴い、紐状部材53に瞬時に過大な張力が作用した場合に、この張力を、弾性変形することにより緩和する。
【0052】
張力調整部55は、戸厚方向において壁部W側に対する反対側で、紐状部材53の長手方向の途中の切断箇所に介在される。
この張力調整部55は、第二の戸体22の上端部に上下方向の軸を中心にして回転するように支持される回動部材55aと、この回動部材55aの回動角度を調節する調節ねじ55bとを備える。
回動部材55aの一端側には、紐状部材53の前記切断箇所の一端部が止着され、同回動部材55aの他端側には、紐状部材53の前記切断箇所の他端部が止着される。
【0053】
上記構成の連動機構50によれば、滑車状部材51,52がそれぞれ動滑車として作用するため、第二の戸体22が開閉方向の何れか一方へ移動すると、この移動速度の半分の速度で、第一の戸体21が同方向へ移動する。
また、張力調整部55によれば、調節ねじ55bの締め付け加減により、回動部材55aの回動角度が変化するため、紐状部材53の張力を適宜に調節することができる。
なお、これら連動機構50及び張力調整部55には、特許文献1に開示されるものを適用可能である。
【0054】
また、牽引装置60は、本体ケース61と、この本体ケース61内に、巻き取り回転方向へ付勢された巻取体62と、この巻取体62に一端側を固定するとともに他端側を本体ケース61から外部へ繰り出して第二の戸体22の閉鎖方向側の軸受ブラケット34に固定した紐状部材64と、本体ケース61の下面から外部に露出した牽引力調整部65とを備える。
【0055】
牽引装置60は、巻取軸方向の全長Z(最大寸法)が巻取径方向の全長X,Y(最大寸法)の何れよりも小さく構成される(図6参照)。なお、全長Xは、牽引装置60における見込み方向の全長である。また、全長Yは、同牽引装置60における横幅方向の全長である。
この牽引装置60は、巻取軸方向を上下方向に沿わせて、第二の戸体22と天部11aの間(図示例によれば第二の戸体22と第一及び第二のレール41,42の間)の高さに位置し、本体ケース61を、縦枠部材12と横枠部材11のベース部11bとの双方に接している。
【0056】
本体ケース61は、巻取体62及び牽引力調整部65等を内在する本体部61aと、この本体部61aから、牽引方向側に対する逆方向側(図6の例示によれば、右方向側)へ突出する取付片61bとを一体に有する。
この本体ケース61は、縦枠部材12と横枠部材11のベース部11bとの双方に押し付けられ、取付片61bが、横幅方向に並ぶ複数(図示例によれば二つ)の止着具61c(例えば、ねじやボルト、リベット等)によりベース部11bに止着されている。
すなわち、本体ケース61は、縦枠部材12とベース部11b間の角部分に嵌め合わせられ、縦枠部材12から離れた位置で、止着具61cによりベース部11bに止着される。
【0057】
なお、この本体ケース61は、牽引方向側(図6の例示によれば、左方向側)の部分等、取付片61b以外の部分は、縦枠部材12と横枠部材11の何れにも止着されていない。
【0058】
本体部61aは、巻取軸方向の全長が水平方向の寸法よりも大きい矩形箱状であって、縦枠部材12に面接触し、かつ横枠部材11のベース部11bにも面接触するように、平坦状の面を有する。
この本体部61aの下部には、上下方向へ貫通した牽引力調整孔61a1が設けられ、この牽引力調整孔61a1の周囲面に、牽引力調整部65の操作方向を示す案内表示61a2(図示例によれば、円弧状の矢印とその両端側の「強」「弱」の文字)が設けられる。
また、本体部61aの反牽引方向(図6によれば右寄り)の側部には、紐状部材64を引き出すための貫通孔(図示せず)が設けられる。
【0059】
取付片61bは、本体部61aのベース部11b側の面を、反牽引方向へ延設するようにして板状に突出している(図6参照)。
この取付片61bは、横枠カバー14が外された状態で、手前側へ露出する。このため、工具(例えばドライバー等)を係合しての交換作業等が容易である。
この取付片61bには、止着具61cを挿通するための貫通孔が複数設けられる。
【0060】
また、巻取体62は、本体ケース61内にて軸方向を上下方向へ向けて双方向へ回転するように支持される略円柱状の部材(リールや、ボビン等と呼称される部材を含む)であり、ゼンマイばね等の付勢部材(図示せず)により巻き取り方向へ付勢されている。
【0061】
紐状部材64は、ワイヤー等の長尺な可撓性の部材であり、その一端側が、巻取体62の外周部に止着される。
【0062】
紐状部材64は、前記一端側に対する他端側が引き出されて、第二の戸体22の閉鎖方向側の軸受ブラケット34に、係止部材36を介して止着される(図8参照)。引き出された紐状部材64は、第二の戸体22の幅方向に対し略平行であって、かつ第二の戸体22の戸厚方向の略中心に位置する。
この紐状部材64の他端側には、係止部材36に係止するための環状の係止環部64aと、係止環部64aが本体ケース61内に引き込まれるのを阻むストッパー部材64bが設けられる(図6参照)。
【0063】
牽引力調整部65は、牽引力調整孔61a1を介して外部に露出する部分が回転操作されることで、巻取体62を巻き取り方向へ付勢している付勢部材(図示せず)の付勢力を調整するように構成される。
【0064】
本体ケース61の外部には、牽引力調整孔61a1の下方側を覆うように、カバー部材63が着脱可能に取り付けられる。
カバー部材63は、着脱時に不意に脱落することのないように、本体ケース61の本体部61aに対し側方から嵌り合う凹状に形成されている(図7参照)。
【0065】
詳細に説明すれば、このカバー部材63は、牽引力調整孔61a1を覆う平板状の被覆板部63aと、この被覆板部63aの反牽引方向側の端部から立ち上がった側片部63bと、側片部63bの上端から牽引方向側へ突出して本体部61a上面に重ね合わせられる上片部63cとを有する(図7参照)。
上片部63cは、見込み方向の長さが被覆板部63aよりも短い。
被覆板部63aは、牽引力調整孔61a1及び案内表示61a2を覆い隠す大きさに形成される。
そして、このカバー部材63は、側片部63bに挿通される止着具63d(例えば、ねじやボルト等)によって本体ケース61の本体部61aに対し着脱可能に止着される。
【0066】
上記構成の引戸装置1によれば、軸方向寸法の小さい牽引装置60を、その軸方向を上下に向けて配設したため、横枠部材11等により構成される無目部分の高さ寸法を比較的小さくすることができる。
【0067】
さらに、牽引装置60の本体ケース61を縦枠部材12と横枠部材11の双方に接するように固定したため、回転方向の負荷に対する牽引装置60の強度を向上することができ、牽引装置60ががたついたり変形したりするのを防ぐことができる。
【0068】
また、牽引装置60は、牽引方向側に対する逆方向側の取付片61bが、縦枠部材12から離れた位置でベース部11bに止着される(図6参照)。このため、その止着作業の際に縦枠部材12が邪魔になるようなことを防ぎ、牽引装置60を正面側から容易に止着することができる。
【0069】
また、第一の戸体21を牽引することなく、第二の戸体22を牽引装置60により牽引するようにした。このため、第一の戸体21を牽引する態様と比較し、牽引力を小さくすることができ、動作性が良好である。
【0070】
また、牽引装置60にカバー部材63を設けたため、万が一、牽引力調整孔61a1から潤滑油等の液体が漏れ出たとしても、この液体がたれ落ちるのを防ぐことができる。
また、カバー部材63によって牽引力調整孔61a1及び案内表示61a2が隠されるため、いたずら等により牽引力調整部65が操作されてしまうのを防ぐことができる。
【0071】
メンテナンス等で牽引装置60の牽引力を調整する際には、カバー部材63を取り外して、露出した牽引力調整部65を、ドライバー等を工具Tにより回せばよい。
【0072】
また、牽引装置60から引き出される紐状部材64を比較的頑強な軸受ブラケット34に止着したため、第二の戸体22自体に牽引のために補強された部分を設けなくてもよい。
【0073】
また、牽引装置60の紐状部材64を係止するための係止部材36は、当該引戸装置1を右勝手に構成した場合(図8(a)参照)と、当該引戸装置1を左勝手に構成した場合(図8(b)参照)とに応じて、容易に付け替えることができる。
【0074】
<他の実施態様>
図10図11に示す実施態様は、上記引戸装置1について、係止部材36を係止部材38に置換したものである。
係止部材38は、軸受ブラケット34の戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分に対し、選択的に止着されるように構成されている。
詳細に説明すれば、図10及び図11に示す係止部材38は、軸受ブラケット34に着脱可能に装着される基部38aと、この基部38aから下方へ突出する係合部38bとを一体的に有する。
【0075】
基部38aは、垂直状の一片部と水平状の他片部とを有するアングル状の部材であり、軸受ブラケット34の下半部側の角部分に重ね合わせるようにして嵌め合わせられる。
この基部38aの前記一片部には、戸幅方向の一端側と他端側に切欠部38a1が設けられる。
この切欠部38a1は、横方向の幅が広い幅広部38a11と、この幅広部38a11よりも幅が狭く上方を開口した幅狭部38a12とから構成される(図11参照)。
幅広部38a11は、その幅方向の一端側と他端側に止着具37の軸部を寄せて挿通可能なように形成される。
幅狭部38a12は、止着具37の軸部に対し径方向から嵌り合うように、止着具37の軸部よりも若干大きい幅寸法を有する。
係合部38bは、上述した係合部36bと同じ部材である。
【0076】
図10(a)に示すように、当該引戸装置1を右勝手に構成した場合には、第二の戸体22の吊車ユニット30における左寄りにて幅広部38a11の右寄り部分に止着具37が挿通され、この止着具37が軸受ブラケット34に螺合される。
また、図10(b)に示すように、当該引戸装置1を左勝手に構成した場合には、第二の戸体22の吊車ユニット30における右寄りにて幅広部38a11の左寄り部分に止着具37が挿通され、この止着具37が軸受ブラケット34に螺合される。
【0077】
よって、図10図11に示す実施態様においても、当該引戸装置1の左右勝手に応じて、係止部材38を容易に付け替えることができる。
【0078】
また、図12に示す実施態様は、上記引戸装置1について、係止部材36を二つの係止部材39に置換したものである。
係止部材39は、軸受ブラケット34の戸体閉鎖側部分と戸体開放側部分の両方に設けられている。
各係止部材39は、軸部と頭部を有する略軸状の部材(例えば、ねじやボルト、リベット等)であり、その頭部を下方へ向けて軸部を軸受ブラケット34に止着固定している。
前記軸部には、筒状スペーサ39aが装着され、この筒状スペーサ39aに、紐状部材64先端の係止環部64aが係止される。なお、筒状スペーサ39aを省いて、紐状部材64を前記軸部に直接係止することも可能である。
【0079】
図12(a)に示すように、当該引戸装置1を右勝手に構成した場合には、第二の戸体22の吊車ユニット30における左側の係止部材39に、紐状部材64が止着される。
また、図12(b)に示すように、当該引戸装置1を左勝手に構成した場合には、第二の戸体22の吊車ユニット30における右側の係止部材39に、紐状部材64が止着される。
このように、図12に示す実施態様によれば、引戸装置1の左右勝手が異なる場合でも、容易に対応することができる。
【0080】
なお、上記実施態様によれば、戸体を上記牽引装置により牽引して閉鎖動作するようにしたが、他例としては、戸体を上記牽引装置により牽引して閉鎖動作する構成にすることも可能である。
【0081】
また、上記実施態様によれば、二つの戸体を連動して開閉動作する多重引き式引戸装置を構成したが、他例としては、三以上の戸体を連動して開閉動作する多重引き式引戸装置を構成したり、単数の戸体を開閉動作する引戸装置を構成したりすることも可能である。
【0082】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい具体例として、第二の戸体22を牽引装置60により牽引して閉鎖動作する構成としたが、他例としては、第一の戸体21を牽引装置60により牽引して閉鎖動作する構成とすることも可能である。
【0083】
また、上記実施態様によれば、好ましい一例として、戸体を吊車により吊るして開閉動作する吊り式引戸装置を構成したが、他例としては、戸体の下端の戸車を下枠上のレールに転動させて、戸体を開閉動作する引戸装置に対し、上述した構成の少なくとも一部を適用することも可能である。
【0084】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:引戸装置
10:枠体
11:横枠部材
11a:天部
11b:ベース部
12:縦枠部材
21:第一の戸体
22:第二の戸体
36,38,39:係止部材
60:牽引装置
61:本体ケース
61a:本体部
61a1:牽引力調整孔
61b:取付片
62:巻取体
63:カバー部材
64:紐状部材
65:牽引力調整部
A:開口部
B:戸袋部
W:壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12