(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086247
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】管楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 9/01 20200101AFI20230615BHJP
G10D 9/10 20200101ALI20230615BHJP
G10D 7/026 20200101ALI20230615BHJP
【FI】
G10D9/01
G10D9/10
G10D7/026
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200628
(22)【出願日】2021-12-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】521542074
【氏名又は名称】中川 冬耀
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中川 冬耀
(57)【要約】
【課題】
奏者の技能に関わらず簡単に音程の調整を行うことができる管楽器の提供。
【解決手段】
管楽器であるパンフルートは、一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプ10を一端が揃うように配列している。パイプ10は、隣り合うパイプ10との間の音程が全音となる全音音階で構成され、パイプ10の他端には、音程を調整するための調整部4と、突起部と、が設けられている。調整部4は、上端に設けられた前記パイプを塞ぐ閉塞部61と、下端に設けられ奏者によって操作される操作部74と、突起部と係合可能なスライド溝71と、を有している。閉塞部61は、パイプ10の長手方向に沿ってパイプ10内を、パイプ10が所定の音となる第1の位置と、第1の位置の上方に位置し音程が半音上がる第2の位置と、の間を移動可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプを、前記一端が揃うように配列した管楽器であって、
前記パイプは、隣り合うパイプとの間の音程が全音となる全音音階で構成され、
前記パイプの他端には、音程を調整するための調整部と、係合部と、が設けられ、
前記調整部は、前記パイプを塞ぐ閉塞部と、前記パイプから露出し演奏者によって操作され前記パイプの前記係合部と係合可能な被係合部を有する操作部と、を有し、
前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記パイプの軸方向に沿って前記パイプ内を、前記パイプが所定の音となる第1の位置と、前記第1の位置の上方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音から半音上がる第2の位置と、の間を移動し、
前記被係合部と前記係合部とが係合しているとき前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記被係合部と前記係合部とが係合していないとき前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴とする管楽器。
【請求項2】
前記操作部は、前記被係合部から前記パイプの円周方向にずれた位置であって前記係合部と係合可能な着脱部をさらに有し、
前記着脱部と前記係合部とが係合しているとき前記調整部は前記パイプと分離可能であって、前記着脱部と前記係合部とが係合していないとき前記調整部は前記パイプと分離不能であることを特徴とする請求項1に記載の管楽器。
【請求項3】
前記操作部は中空構造をなし、
前記閉塞部は、上端に前記パイプを塞ぐ底栓と、前記底栓を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記操作部に所定の抵抗を持って挿入されるとともに下端部が前記操作部から露出し、
前記支持部の下端部を前記演奏者が操作することにより、前記支持部が前記操作部の中空空間を前記軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の管楽器。
【請求項4】
パイプは、外管と、前記外管に挿入される内管の二重管構造であって、
前記閉塞部の上端に配置され、前記パイプの内面と摺接し、リング形状であって前記軸方向に所定の長さを有する音色調整部をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管楽器。
【請求項5】
前記操作部は、前記被係合部と円周方向にずれた位置に設けられたサブ被係合部をさらに有し、
前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記軸方向に沿って前記パイプ内を、前記第1の位置と、前記第1の位置の下方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音程から半音下がる第3の位置と、の間を移動し、
前記サブ被係合部と前記係合部とが係合しているとき前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記サブ被係合部と前記係合部とが係合していないとき前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の管楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管楽器に関し、特にパンフルートに関する。
【背景技術】
【0002】
管楽器であるパンフルートは、竹茎等の自然の筒状素材を所定の長さに切断し底栓を装着することによって閉管を形成し、パイプの長さ及び底栓の位置によって音程を変えている。従来から、パンフルートの底栓の形状を変更することにより音程を調節することが知られている(特許文献1)。このパンフルートでは、正しい音程を出すことを目的として、音程が低くずれている場合は底板が上方に位置している底栓を取り付け、音程が高くずれている場合は底板が下方に位置している底栓を取り付ける。このように、底栓を取り換えることによって、正しい音程を出すことができる。また、市販されているパンフルートでは、パイプにスポンジ等の底栓が移動可能に配置されていて、専用器具を利用して底栓の位置を変更することにより音程調整を行うものがある。
【0003】
他のパンフルートは、並列配置されたパイプの表面もしくは裏側の適宜な位置に、パイプの音名を表記している(特許文献2)。パンフルートでは、パイプの長さが異なるのみで外観上はどの音を出すにはどの位置のパイプを拭けば良いかが不明である。そこで、パイプに音名を付記することで、演奏中に誤って他の音を出すという事態を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60-65793号公報
【特許文献2】実開昭60-65794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のパンフルートでは、音程を調整するには底栓を入れ替える必要があるため、楽器を置いて専用の器具を用いて底栓の交換作業を行う必要があった。また、熟練した演奏者であれば、パンフルートの角度を変えることで、音程の微調整が可能である。具体的には、側面視においてパンフルートの端部を下げて垂直に近づくような状態でパンフルートを吹くことで音程が上がり、パンフルートの端部を上げて水平に近づくような状態でパンフルートを吹くことで音程が下がる。
【0006】
パンフルートは竹茎等の自然の素材で構成されることが多く、パイプ内で空気を響かせることで音を出しているため、同じように演奏してもコンサートホールの温度や湿度の環境によって音程が変化する。このような事態に対応するために特許文献1に記載されているように底栓することが考えられるが、環境が変わる度に底栓を交換することは、演奏者の作業負担が大きかった。また、底栓がパイプ内を移動可能なパンフルートでは底栓の位置調整に専用の道具が必要となるため、演奏中に音程調整を行うことが難しかった。
【0007】
曲を移調してパンフルートを演奏する場合は、演奏するパイプの位置が変わるため、曲の転調の度にパイプの位置関係を把握しなければならなかった。さらに、パンフルートの角度を変えて音程の微調整を行う場合は、演奏者の技能に左右されるため、常に一定の音で演奏できるパンフルートが求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、演奏者の技能に関わらず簡単に音程の調整を行うことができる管楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第1の発明は、一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプを、前記一端が揃うように配列した管楽器であって、前記パイプは、隣り合うパイプとの間の音程が全音となる全音音階で構成され、前記パイプの他端には、音程を調整するための調整部と、係合部と、が設けられ、前記調整部は、前記パイプを塞ぐ閉塞部と、前記パイプから露出し演奏者によって操作され前記パイプの前記係合部と係合可能な被係合部を有する操作部と、を有し、前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記パイプの軸方向に沿って前記パイプ内を、前記パイプが所定の音となる第1の位置と、前記第1の位置の上方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音から半音上がる第2の位置と、の間を移動し、前記被係合部と前記係合部とが係合しているとき前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記被係合部と前記係合部とが係合していないとき前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴とする管楽器を提供している。
【0010】
第2の発明では、第1の発明に記載された管楽器であって、前記操作部は、前記被係合部から円周方向にずれた位置であって前記係合部と係合可能な着脱部をさらに有し、前記着脱部と前記係合部とが係合しているとき前記調整部は前記パイプと分離可能であって、前記着脱部と前記係合部とが係合していないとき前記調整部は前記パイプと分離不能であることを特徴としている。
【0011】
第3の発明では、第1の発明又は第2の発明に記載された管楽器であって、前記操作部は中空構造をなし、前記閉塞部は、上端に前記パイプを塞ぐ底栓と、前記底栓を支持する支持部と、を有し、前記支持部は、前記操作部に所定の抵抗を持って挿入されるとともに下端部が前記操作部から露出し、前記支持部の下端部を前記演奏者が操作することにより、前記支持部が前記操作部の中空空間を前記軸方向に移動可能であることを特徴としている。
【0012】
第4の発明では、第1の発明から第3の発明のいずれかに記載された管楽器であって、パイプは、外管と、前記外管に挿入される内管の二重管構造であって、前記閉塞部の上端に配置され、前記パイプの内面と摺接し、リング形状であって前記軸方向に所定の長さを有する音色調整部をさらに有することを特徴としている。
【0013】
第5の発明では、第1の発明から第3の発明のいずれかに記載された管楽器であって、前記操作部は、前記被係合部と円周方向にずれた位置に設けられたサブ被係合部をさらに有し、前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記軸方向に沿って前記パイプ内を、前記第1の位置と、前記第1の位置の下方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音程から半音下がる第3の位置と、の間を移動し、前記サブ被係合部と前記係合部とが係合しているとき前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記サブ被係合部と前記係合部とが係合していないとき前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によると、調整部を操作することでパイプの音程を半音上げることができるため、全音階で構成された管楽器であっても所望の楽曲を演奏することができる。通常の管楽器であれば、変調や移調の際は演奏するパイプの位置がずれるため、慣れない演奏者にとってはパイプの位置を覚えるのに時間を要する。本発明の管楽器では、全音階で構成され個別のパイプ毎に半音上げることが可能であるため、演奏を開始するパイプの位置をずらすだけで、変調や移調に対応することができる。また、一般に市販されている管楽器であるパンフルートはメジャースケールの長音階であるため、C調のパンフルートでド#やレ#を発音する場合にはパンフルートを傾ける必要がある。この傾け具合によって若干音程が変わることがあるため、不慣れな演奏者が常に一定の音程で演奏することは難しかった。本発明によると、半音上げるときには調整部を操作して調整部を第1の位置又は第2の位置とすることで、演奏者の技能に関わらず常に一定の音を出すことができる。
【0015】
また、被係合部と係合部とが係合していないときは調整部が第1の位置から第2の位置に移動不能であるため、被係合部と係合部との係合を解除することにより調整部が誤って第1の位置と第2の位置との間を移動することを抑制できる。さらに、パイプの音程を半音上げ下げするための調整部がパイプの開口と反対側の他端に設けられているため、演奏中であっても邪魔にならず音程の調整を行うことができる。
【0016】
第2の発明によると、操作部には係合部と係合可能な着脱部が設けられているため、調整部とパイプとの組み立て及び分解を容易に行うことができメンテナンス性が向上する。また、着脱部が被係合部と円周方向にずれた位置に設けられているため、被係合部と係合部との係合を解除しようとして誤って着脱部と係合部とが係合してしまい、調整部とパイプとが分離してしまうという事態を回避することができる。
【0017】
第3の発明によると、支持部を操作部内で移動させて閉塞部の位置を微調整することにより、温度や湿度等の外部環境による音の変化に対応することができる。また、操作部が中空構造となっていて当該中空空間に支持部が挿入されているため、簡易な構成で管楽器の音程の微調整をすることができる。
【0018】
第4の発明によると、閉塞部の上面に音色調整部が設けられているため、管楽器の音色を調整することができる。また、音色調整部の高さ、肉厚等の形状を変化させることにより、所望の音色を出すことができる。また、パイプが外管と内管の二重管構造であるため、単一管の場合と比較して音色を変化させることができる。
【0019】
第5の発明によると、調整部は第1の位置と第2の位置と第3の位置との間を移動可能であるため、1つのパイプで3つの音を出すことができる。これにより、管楽器の演奏の幅が広がるとともに、より多様な楽曲に対応することができる。また、サブ被係合部と係合部とが係合していないときは調整部が第1の位置から第3の位置に移動不能であるため、調整部が誤って第1の位置と第3の位置との間を移動することを抑制できる。
【0020】
本発明により、演奏者の技能に関わらず簡単に音程の調整を行うことができる管楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの全体図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートのパイプの分解斜視図。
【
図3】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの断面図であって、
図3(a)は固定リングの断面図、
図3(b)はロッド部に吹口を装着した断面図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの操作部であって、
図4(a)は操作部の正面図、
図4(b)は操作部の背面図。
【
図5】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの調整部であって、
図5(a)は調整部が第1の位置にあるときの調整部の正面図、
図5(b)は調整部が第2の位置にあるときの調整部の正面図、
図5(c)は調整部が第2の位置にあって突起部とスライド溝とが係合していないときの調整部の正面図。
【
図6】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの調整部が第2の位置にあるときの図であって、
図6(a)は内管及び調整部の断面図、
図6(b)は操作部と突起部との位置関係を示す図。
【
図7】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの調整部が第2の位置にあり突起部とスライド溝とが係合していないときの図であって、
図7(a)は内管及び調整部の断面図、
図7(b)は操作部と突起部との位置関係を示す図。
【
図8】本発明の第1の実施の形態によるパンフルートの閉塞部と操作部との位置関係を示す図であって、
図8(a)は底栓の位置を微調整する前の図、
図8(b)は底栓の位置を微調整した後の図。
【
図9】本発明の第2の実施の形態によるパンフルートの操作部であって、
図9(a)は操作部の正面図、
図9(b)は操作部の背面図。
【
図10】本発明の第3の実施の形態によるパンフルートの操作部であって、
図10(a)は操作部の正面図、
図10(b)は操作部の背面図。
【
図11】本発明の第3の実施の形態によるパンフルートの突起部と操作部との位置関係を示す図であって、
図11(a)は調整部が第2の位置にあるときの図、
図11(b)は調整部が第1の位置にあるときの図、
図11(c)は調整部が第3の位置にあるときの図。
【
図12】本発明の第4の実施の形態によるパンフルートのパイプの分解斜視図。
【
図13】本発明の第5の実施の形態によるパンフルートのパイプの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の実施の形態による管楽器の一例であるパンフルート1を
図1から
図8に基づき説明する。本発明は、管楽器であればパンフルートに限定されず、パンパイプ、サンポーンヤ、ナイ、Wot等の民族楽器にも適用することができる。図中に示すように、前後上下左右方向を定義する。上下方向は、本発明の軸方向の一例である。
【0023】
パンフルート1は、長さの異なる複数のパイプ10を、吹口2の位置が揃うように並列配置することによって構成される。パイプ10はカーボン製又は金属製であるが、竹、葦、ダンチク、木等の自然の素材であってもよく、樹脂製であってもよい。パイプ10の径は、すべて均一であってもよく低音を出しやすくするために右に行くに従って径が太くなるように構成してもよい。
【0024】
パイプ10は、
図2に示すように、吹口2と、管状のロッド部3と、音程を調整するための調整部4と、から構成される。パイプ10は、隣り合うパイプの間の音程が全音となる全音階で構成される。演奏者は、調整部4を操作することにより半音階上げる、又は下げることができる。パンフルート1のパイプ10は、ロッド部3の長さが異なるのみで他の構造は略同一のため、以下1つのパイプ10を例示して説明する。
【0025】
吹口2は略薄円環形状であって、ロッド部3に対して着脱可能に設けられている。吹口2は、パンフルート1を吹く際に口を付けるリップ部21を有している。リップ部21は、円環の一部を滑らかに窪ませることにより形成される。吹口2の上下方向の高さを変化させることにより、パンフルート1の音色を変えることができる。
【0026】
ロッド部3はカーボン製であって円筒形状をなし、外管31と、外管31に挿入される内管32と、から構成される二重管構造となっている。外管31の内径は内管32の外径よりも僅かに大きく、外管31は内管32よりも長い。外管31と内管32とは互いの摩擦で固定されており、指で内管32を外管31から取り出すことができる程度の抵抗がある。ロッド部3の下端には、突起部33を備えた固定リング34が設けられている。突起部33は操作部7と係合可能であって、
図3(a)に示すように、径方向内方に突出している。突起部33は、所定の部材を円形リングに溶接することにより形成される。突起部33は、本発明の係合部の一例である。
図3(b)に示すように、固定リング34は略薄円環形状をなし、外管31の内径と略同一の外径を有し、外管31に勘合することにより固定される。固定リング34の内径は、内管32の内径と略同一であり、内管32と固定リング34とは、内面において、段差なく接続される。固定リング34を外管31に固定した状態では、固定リング34と外管31の下端面とは面一になる。
【0027】
外管31の上端は内管32の上端よりも上方に位置することにより僅かに段差が設けられ、当該段差に吹口2が勘合することでロッド部3に固定される。吹口2はロッド部3に対して、逆さまにしても落下しないが手で着脱できる程度の強度で固定されている。
【0028】
調整部4は主に金属製であって、調整リング5と、閉塞部6と、操作部7と、を有している。調整リング5は略薄円環形状をなし、閉塞部6の上面に着脱可能に固定される。調整リング5は、本発明の音色調整部の一例である。調整リング5の高さ、肉厚等の形状を変えることで、パイプ10の音色を変化させることができる。具体的には、調整リング5を設けることで音の透明度が変化する。調整部4のロッド部3に対する相対的な上下方向の位置関係を、第1の位置、第2の位置として定義する。第1の位置は、
図5(a)に示す調整部4の位置であって、調整部4がロッド部3に対して最も下方に位置している。第2の位置は、
図5(b)、
図6及び
図7に示す位置であって、調整部4がロッド部3に対して第1の位置よりも上方にある。
【0029】
閉塞部6は、内管32の内径と略同一の外径を有する底栓61と、底栓61を支える支持部62と、を有している。底栓61は、発泡性樹脂やスポンジ等の柔軟性を有する素材で構成されており、内管32内を上下方向に移動可能である。支持部62は略円柱形状であって底栓61よりも小さい外径を有し、上端が底栓61に固定される。
図5に示すように、支持部62の上下方向の長さは操作部7よりも長いため、支持部62の下端が操作部7の下端から露出する。底栓61の外径は、調整リング5の外径と略同一である。
【0030】
操作部7は略円筒形状であって内部に中空空間を有し、
図4に示すように、スライド溝71と、固定溝72と、着脱溝73と、が形成され、把持部74を備えている。スライド溝71、固定溝72及び着脱溝73は、突起部33と係合することにより底栓61(調整部4)の位置決めを行う。操作部7は、内管32の内径よりも僅かに小さい外径を有している。スライド溝71は、
図4(a)に示すように、正面視において固定溝72の略中央から上方に延びる。固定溝72は、操作部7の下部に円周方向全周に亘って形成される。着脱溝73は、
図4(b)に示すように、背面視において固定溝72の略中央から下端に至るように形成される。スライド溝71、固定溝72、着脱溝73の深さは突起部33の突出量よりも僅かに深く、幅は突起部33よりも僅かに広い。スライド溝71は本発明の被係合部の一例であって、着脱溝73は本発明の着脱部の一例である。
【0031】
把持部74は、操作部7の下部に位置し、背面に着脱溝73が形成されている。把持部74は、パイプ10の音程を半音上げる、又は下げるといった操作をする際に演奏者によって把持される。操作部7には支持部62が挿入されるが、操作部7の内面と支持部62とは所定の抵抗があるため、支持部62を回転させながら挿入する。換言すると、閉塞部6と操作部7とは、指が触れた程度では閉塞部6が動かない程度に勘合している。
【0032】
次に、パイプ10の組み立て方法について、
図2から
図4を参照して説明する。外管31の下端に、突起部33が正面となるように固定リング34を挿入し固定する。内管32を下端が固定リング34に当接するまで外管31に押し込み、調整リング5を底栓61の上面に固定する。支持部62を操作部7に挿入して、底栓61の操作部7からの突出量を調整することで、底栓61の位置決めを行う。閉塞部6が固定された操作部7を、内管32の上の開口から挿入する。このとき、底栓61と内管32の内面とは僅かに抵抗があるため、専用の器具を用いて挿入する。
【0033】
操作部7の下端面が突起部33と当接したとき、支持部62の下端部を把持して操作部7を回転させ、着脱溝73と突起部33との円周方向における位置を合わせる。これにより、調整部4を内管32に対してさらに下方に移動させることが可能となる。突起部33が固定溝72に到達するまで調整部4を下方に移動させる。突起部33が固定溝72に到達した後、把持部74を把持して円周方向に回転させることで突起部33が固定溝72内を移動し、内管32と操作部7とが係合する。把持部74を着脱溝73が背面に位置するまで回転させ、
図5(b)に示す位置とする。この状態で把持部74を下方に引き下げることにより、調整部4がパイプ10の原音である第1の位置となる。ロッド部3の上端に吹口2を取り付け、原音となるように支持部62を操作部7に対して上下方向に摺動させて底栓61の微調整を行う。
【0034】
次に、パイプ10の半音階の調整方法について
図5から
図8を参照して説明する。
図1に示す状態では、すべてのパイプ10の調整部4が第1の位置にあるため本来の音である原音となる。
図5(a)に示すように、調整部4が第1の位置にあるときは、突起部33がスライド溝71と係合していて、スライド溝71の上端に当接している。調整部4は、底栓61と内管32の内面との抵抗及び操作部7の自重により第1の位置に仮固定される。
【0035】
演奏者は、パイプ10の音程を半音上げたい場合、例えば、ドをド#としたい場合には、把持部74を把持して閉塞部6及び操作部7を上方に押し上げる。
図5(b)及び
図6に示すように、突起部33が固定溝72に到達したとき、調整部4は第2の位置となり、パイプ10の音階が半音上がる。
【0036】
調整部4を第2の位置に固定したい場合は、
図5(c)及び
図7に示すように、把持部74を内管32に対して円周方向に回転させる。これにより、
図7(b)に示すように、突起部33とスライド溝71との係合が解除されるとともに、突起部33が固定溝72を円周方向に移動し調整部4の内管32に対する上下方向の移動が規制される。演奏者が調整部4を第2の位置から再び第1の位置に戻すときは、
図6(b)に示すように、突起部33とスライド溝71との円周方向の位置を一致させ、把持部74を把持して下方に引き下げる。これにより、再び
図5(a)に示すように、調整部4が第1の位置となる。
【0037】
次に、
図8を参照して、閉塞部6の位置を微調整する方法について説明する。パイプ10の音程は温度、湿度等の外部環境によって若干の変動があるため、特定のパイプ10から一定の音程を出すためには微調整が必要となる。音程の微調整は、底栓61の上下方向の位置を調整することにより行う。
【0038】
支持部62は、操作部7の円筒内部に所定の抵抗をもって挿入されている。演奏者がパイプ10の音程を僅かに下げたい場合は、支持部62の下端を回転させながら引っ張ることにより、底栓61の位置を
図8(a)に示す状態から、
図8(b)に示す状態とする。これにより、一点鎖線で示すように、底栓61が操作部7に僅かに近接し、内管32内の底栓61の位置が下方に移動するため、パイプ10の音程が僅かに下がる。
【0039】
本実施の形態では、
図1に示すようにパイプ10の本数は18本であり、全音音階であるため1オクターブが6音となる。パイプ10の本数は6の倍数であることが望ましいが、これに限定されず任意の本数を設定することができる。また、パンフルート1の音階は、ド、レ、ミ、ファ#、ソ#、ラ#の6音の全音音階だが、半音上がったド#、レ#、ファ、ソ、ラ、シの6音であってもよい。
【0040】
このような構成によると、調整部4を操作することでパイプ10の音程を半音上げることができるため、全音階で構成されたパンフルート1であっても所望の楽曲を演奏することができる。通常のパンフルートであれば、変調や移調の際は演奏するパイプの位置がずれるため、慣れない演奏者にとってはパイプの位置を覚えるのに時間を要する。本発明のパンフルート1では、全音階で構成され個別のパイプ10毎に半音上げることが可能であるため、演奏を開始するパイプ10の位置をずらすだけで、変調や移調に対応することができる。また、一般に市販されているパンフルートはメジャースケールの長音階であるため、ド#やレ#を発音する場合にはパンフルートを傾ける必要がある。この傾け具合によって若干音程が変わることがあるため、不慣れな演奏者が常に一定の音程で演奏することは難しかった。本発明によると、半音上げるときには調整部4を操作して調整部4を第1の位置又は第2の位置とすることで、演奏者の技能に関わらず常に一定の音を出すことができる。
【0041】
また、スライド溝71と突起部33とが係合していないときは調整部4が第1の位置から第2の位置に移動不能であるため、スライド溝71と突起部33との係合を解除することにより調整部4が誤って第1の位置と第2の位置との間を移動することを抑制できる。さらに、パイプ10の音程を半音上げ下げするための調整部4がパイプ10の開口と反対側の下端に設けられているため、演奏中であっても邪魔にならず音程の調整を行うことができる。
【0042】
このような構成によると、操作部7には突起部33と係合可能な着脱溝73が形成されているため、調整部4とパイプ10との組み立て及び分解を容易に行うことができメンテナンス性が向上する。また、着脱溝73がスライド溝71と円周方向にずれた位置に設けられているため、スライド溝71と突起部33との係合を解除しようとして誤って着脱溝73と突起部33とが係合してしまい、調整部4とパイプ10とが分離してしまうという事態を回避することができる。
【0043】
このような構成によると、支持部62を操作部7内で移動させて閉塞部6の位置を微調整することにより、温度や湿度等の外部環境による音の変化に対応することができる。また、操作部7が中空構造となっていて当該中空空間に支持部62が挿入されているため、簡易な構成でパンフルートの音程の微調整をすることができる。
【0044】
このような構成によると、閉塞部6の上面に調整リング5が設けられているため、パンフルートの音色を調整することができる。また、調整リング5の高さ、肉厚等の形状を変化させることにより、所望の音色を出すことができる。また、パイプ10が外管31と内管32の二重管構造であるため、単一管の場合と比較して音色を変化させることができる。
【0045】
次に本発明の第2の実施の形態について、
図9を参照して説明する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0046】
第2の実施の形態のパンフルートは、
図9(b)に示すように、操作部107の背面に着脱溝173が形成されている。着脱溝173は、操作部107の背面の略中央に固定溝72から上方に延び操作部107の上端に至るように形成される。
【0047】
次に、第2の実施の形態のパイプ10の組み立て方法について説明する。第1の実施の形態と同一の手順については、説明を省略する。支持部62を操作部107に挿入し位置決めした後、内管32の下方から閉塞部6が固定された操作部107を挿入する。底栓61は弾性体であるため、突起部33が存在していても内管32に挿入することができる。
【0048】
操作部107の上端面が突起部33と当接すると、操作部107を回転させて着脱溝173の位置と突起部33とを係合させる。これにより、操作部107を内管32に対してさらに上方に移動させることが可能となる。突起部33が固定溝72に到達するまで操作部107を上方に移動させる。突起部33が固定溝72に到達した後、把持部74を把持して円周方向に回転させることで突起部33が固定溝72内を移動して内管32と操作部107とが係合する。
【0049】
このような構成によると、パイプ10の下方から調整部4の着脱作業を行えるとともに、調整部4を押し込むための専用の器具等が不要であるため、パンフルートのメンテナンス性を向上させることができる。
【0050】
次に、本発明の第3の実施の形態について、
図10及び
図11を参照して説明する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0051】
操作部207の突起部33に対する相対的な上下方向の位置関係を、第1の位置、第2の位置、及び第3の位置として定義する。第1の位置及び第2の位置は、第1の実施の形態と同様である。第3の位置は、
図11(c)に示す位置であって、操作部207が突起部33に対して第1の位置よりも下方にある。
【0052】
第3の実施の形態のパンフルートは、
図10(a)に示すように、操作部207の正面に第1スライド溝271、第2スライド溝272、第3スライド溝273が形成されている。第1スライド溝271は、固定溝72の正面視における左右方向の略中央から上方に延びるように形成される。第2スライド溝272は第1スライド溝271の上端から円周方向に沿って形成される。第3スライド溝273は、第2スライド溝272の端部から上方に延びるように形成される。つまり、第2スライド溝272は、第1スライド溝271の上端と第3スライド溝273の下端とを繋いでいる。
【0053】
操作部207を用いたパンフルートでは、1つのパイプ10で3つの音を出すことができる。
図11(a)に示すように、突起部33が固定溝72と係合しているとき、換言すると調整部4が第2の位置にあるときは、パイプ10は予め設定された原音から半音上がった音となる。演奏者は、把持部74を把持して調整部4を下に引くことにより、突起部33が第1スライド溝271内を移動する。
図11(b)に示すように、突起部33が第1スライド溝271の上端と当接しているとき、換言すると調整部4が第1の位置にあるときは、パイプ10は原音となる。
【0054】
演奏者が原音から半音下げたい場合には、突起部33が第2スライド溝272を移動するように把持部74を回転させる。突起部33が第3スライド溝273に当接して把持部74が回転できなくなると、把持部74をさらに引き下げる。
図11(c)に示すように、突起部33が第3スライド溝273の上端に当接しているとき、換言すると調整部4が第3の位置にあるときは、パイプ10の音は原音から半音下がる。第3スライド溝273は、本発明のサブ被係合部の一例である。
【0055】
このような構成によると、調整部4は第1の位置と第2の位置と第3の位置との間を移動可能であるため、1つのパイプで3つの音を出すことができる。詳細には、第1の位置で原音、第2の位置で原音から半音上がった音、第3の位置で原音から半音下がった音を出すことができる。これにより、パンフルートの演奏の幅が広がるとともに、より多様な楽曲に対応することができる。また、第3スライド溝273と突起部33とが係合していないときは調整部4が第1の位置から第3の位置に移動不能であるため、調整部4が誤って第1の位置と第3の位置との間を移動することを抑制できる。さらに、パンフルートの音階がド、レ、ミ、ファ#、ソ#、ラ#の6音の全音音階だが、同一のパンフルートを半音上がったド#、レ#、ファ、ソ、ラ、シとしても利用することができる。具体的には、第1の位置と第2の位置との間を移動させることによりド、レ、ミ、ファ#、ソ#、ラ#の6音の全音音階のパンフルートとして利用し、第1の位置と第3の位置との間を移動させることによりド#、レ#、ファ、ソ、ラ、シとして利用することができる。
【0056】
次に、本発明の第4の実施の形態について、
図12を参照して説明する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0057】
第4の実施の形態のパンフルート301は、操作部307の外周面に、第1壁部375と、第1壁部375と略同一形状の第2壁部376と、が設けられている。第1壁部375はリングを半分に割った形状をなし、操作部307の外周面に沿うように設けられている。第2壁部334は、第1壁部333を180°回転させた位置であって第1壁部375の上部に位置している。
【0058】
操作部307は、固定リング34の内径よりも小さい外径を有しているため挿入可能であるが、突起部33と第1壁部375又は第2壁部376とが当接することにより、操作部307の上方への移動が規制される。換言すると、第1壁部375及び第2壁部376が突起部33と当接することにより、操作部307が第1の位置又は第2の位置に位置決めされる。
【0059】
次に、パイプ310の半音階の調整方法を説明する。調整部4が第1の位置にあるときは、固定リング34が第2壁部376に当接している。操作部307は、位置決めしたら、底栓61と内管332の内面との抵抗により第1の位置に仮固定される。
【0060】
演奏者は、パイプ310の音程を半音上げたい場合、例えば、ドの音階をド#としたい場合には、把持部74を把持して操作部307を上方に押し上げながら回転させると、突起部33と第2壁部376とが離間して操作部307が上方に移動可能となる。突起部33と第1壁部375とが当接したとき、調整部4は第2の位置となりパイプ310の音階が半音上がる。このとき、操作部307は、底栓61と内管332の内面との抵抗により第2の位置に仮固定される。
【0061】
演奏者が調整部4を第2の位置から再び第1の位置に戻すときは、把持部74を把持して円周方向に所定量回転させ、操作部307を下方に引き下げることで突起部33と第2壁部376とを再び当接させる。これにより、再び調整部4が第1の位置となる。
【0062】
次に、本発明の第5の実施の形態のパンフルート401について、
図13を参照して説明する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0063】
パンフルート401のロッド部403は単一管構造であって、下端部に固定リング34が固定される。パイプ410の操作部407は、上部に底栓61が一体的に設けられている。換言すると、第1の実施の形態のパンフルート1から微調整機構を取り除いている。これにより、動作機構が簡素化されるため、部品点数を削減し製品のコストダウンを図ることができる。また、パイプ410を組み立てる際の工程も簡単になる。
【0064】
本発明によるパンフルートは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0065】
上述の実施の形態によるパンフルートでは、固定リング34と外管31とを別体としたが、これに限定されない。固定リング34と外管31とを一体的に構成してもよく、内管32と固定リング34とを一体的に構成してもよい。
【0066】
第3の実施の形態によるパンフルート301は、支持部62の位置調整により調整部4の微調整を行ったがこれに限定されない。例えば、第1壁部375及び第2壁部376を上下方向に移動可能に構成し、これらを僅かに動かすことによって音程を微調整してもよい。
【0067】
第3の実施の形態によるパンフルート301は、操作部307に第1壁部375及び第2壁部376を設けたが、これに限定されない。例えば、内管32の内部に第1壁部及び第2壁部を設け、突起部を操作部に設けてもよい。
【0068】
第4の実施の形態によるパンフルート401は、単一管構造であったが、他の実施の形態のパンフルートも単一管構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1、301、401 パンフルート
2 吹口
3 ロッド部
4 調整部
5 調整リング
6 閉塞部
7、107、207、307、407 操作部
10 パイプ
31 外管
32 内管
33 突起部
34 固定リング
61 底栓
62 支持部
71 スライド溝
72 固定溝
73、173 着脱溝
74 操作部
271 第1スライド溝
272 第2スライド溝
273 第3スライド溝
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプを、前記一端が揃うように配列した管楽器であって、
前記パイプは、隣り合うパイプとの間の音程が全音となる全音音階で構成され、
前記パイプの他端には、音程を調整するための調整部と、前記パイプの径方向内方に突出した係合部と、が設けられ、
前記調整部は、前記パイプを塞ぐ閉塞部と、前記パイプから露出し演奏者によって操作され前記パイプの前記係合部と係合可能なスライド溝である被係合部を有する操作部と、を有し、
前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記パイプの軸方向に沿って前記パイプ内を、前記パイプが所定の音となる第1の位置と、前記第1の位置の上方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音から半音上がる第2の位置と、の間を移動し、
前記被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合しているとき前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合せず、前記パイプの他端と前記調整部とが離間しておらず、且つ前記軸方向において前記被係合部の前記スライド溝と前記係合部とが一致していないとき、前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴とする管楽器。
【請求項2】
前記操作部は、前記被係合部から前記パイプの円周方向にずれた位置であって前記係合部と係合可能な溝である着脱部をさらに有し、
前記着脱部の前記溝に前記係合部が係合しているとき前記調整部は前記パイプと分離可能であって、前記着脱部の前記溝に前記係合部が係合していないとき前記調整部は前記パイプと分離不能であることを特徴とする請求項1に記載の管楽器。
【請求項3】
前記操作部は中空構造をなし、
前記閉塞部は、上端に前記パイプを塞ぐ底栓と、前記底栓を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記操作部に所定の抵抗を持って挿入されるとともに下端部が前記操作部から露出し、
前記支持部の下端部を前記演奏者が操作することにより、前記支持部が前記操作部の中空空間を前記軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の管楽器。
【請求項4】
パイプは、外管と、前記外管に挿入される内管の二重管構造であって、
前記閉塞部の上端に配置され、前記パイプの内面と摺接し、リング形状であって前記軸方向に所定の長さを有する音色調整部をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管楽器。
【請求項5】
前記操作部は、前記被係合部と円周方向にずれた位置に設けられたスライド溝であるサブ被係合部をさらに有し、
前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記軸方向に沿って前記パイプ内を、前記第1の位置と、前記第1の位置の下方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音程から半音下がる第3の位置と、の間を移動し、
前記サブ被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合しているとき前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記サブ被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合せず、前記パイプの他端と前記調整部とが離間しておらず、且つ前記軸方向において前記サブ被係合部の前記スライド溝と前記係合部とが一致していないとき、前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の管楽器。
【請求項6】
一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプを、前記一端が揃うように配列した管楽器であって、
前記パイプは、隣り合うパイプとの間の音程が全音となる全音音階で構成され、
前記パイプの他端には、音程を調整するための調整部と、前記パイプの径方向内方に突出した係合部と、が設けられ、
前記調整部は、前記パイプを塞ぐ閉塞部と、前記パイプから露出し演奏者によって操作され前記パイプの前記係合部と当接可能であって前記係合部と前記パイプの軸方向において当接することにより移動が規制される第1壁部と、前記第1壁部から前記軸方向に離間した第2壁部と、を有する操作部と、を有し、
前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記パイプの前記軸方向に沿って前記パイプ内を、前記パイプが所定の音となる第1の位置と、前記第1の位置の上方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音から半音上がる第2の位置と、の間を移動し、
前記係合部が前記第1壁部に当接しているとき前記調整部は前記第2の位置に位置決めされ、前記係合部が前記第2壁部に当接しているとき前記第1の位置に位置決めされることを特徴とする管楽器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するために第1の発明は、一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプを、前記一端が揃うように配列した管楽器であって、前記パイプは、隣り合うパイプとの間の音程が全音となる全音音階で構成され、前記パイプの他端には、音程を調整するための調整部と、前記パイプの径方向内方に突出した係合部と、が設けられ、前記調整部は、前記パイプを塞ぐ閉塞部と、前記パイプから露出し演奏者によって操作され前記パイプの前記係合部と係合可能なスライド溝である被係合部を有する操作部と、を有し、前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記パイプの軸方向に沿って前記パイプ内を、前記パイプが所定の音となる第1の位置と、前記第1の位置の上方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音から半音上がる第2の位置と、の間を移動し、前記被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合しているとき前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合せず、前記パイプの他端と前記調整部とが離間しておらず、且つ前記軸方向において前記被係合部の前記スライド溝と前記係合部とが一致していないとき、前記調整部は前記第2の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴とする管楽器を提供している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
第2の発明では、第1の発明に記載された管楽器であって、前記操作部は、前記被係合部から円周方向にずれた位置であって前記係合部と係合可能な溝である着脱部をさらに有し、前記着脱部の前記溝に前記係合部が係合しているとき前記調整部は前記パイプと分離可能であって、前記着脱部の前記溝に前記係合部が係合していないとき前記調整部は前記パイプと分離不能であることを特徴としている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
第5の発明では、第1の発明から第3の発明のいずれかに記載された管楽器であって、前記操作部は、前記被係合部と円周方向にずれた位置に設けられたスライド溝であるサブ被係合部をさらに有し、前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記軸方向に沿って前記パイプ内を、前記第1の位置と、前記第1の位置の下方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音程から半音下がる第3の位置と、の間を移動し、前記サブ被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合しているとき前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動可能であって、前記サブ被係合部の前記スライド溝に前記係合部が係合せず、前記パイプの他端と前記調整部とが離間しておらず、且つ前記軸方向において前記サブ被係合部の前記スライド溝と前記係合部とが一致していないとき、前記調整部は前記第3の位置から前記第1の位置に移動不能であることを特徴としている。
さらに、第6の発明は、一端が開口し他端が閉塞した長さの異なる複数のパイプを、前記一端が揃うように配列した管楽器であって、前記パイプは、隣り合うパイプとの間の音程が全音となる全音音階で構成され、前記パイプの他端には、音程を調整するための調整部と、前記パイプの径方向内方に突出した係合部と、が設けられ、前記調整部は、前記パイプを塞ぐ閉塞部と、前記パイプから露出し演奏者によって操作され前記パイプの前記係合部と前記パイプの軸方向において当接可能であって前記係合部と当接することにより移動が規制される第1壁部と、前記第1壁部から前記軸方向に離間した第2壁部と、を有する操作部と、を有し、前記調整部は、前記操作部を操作することによって、前記パイプの軸方向に沿って前記パイプ内を、前記パイプが所定の音となる第1の位置と、前記第1の位置の上方に位置し前記パイプの音程が前記第1の位置の音から半音上がる第2の位置と、の間を移動し、前記係合部が前記第1壁部に当接しているとき前記調整部は前記第2の位置に位置決めされ、前記係合部が前記第2壁部に当接しているとき前記第1の位置に位置決めされることを特徴とする管楽器を提供している。