(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008626
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ペット保険金支払い査定システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20230112BHJP
【FI】
G06Q40/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112332
(22)【出願日】2021-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトへの掲載日 令和3年4月23日 ウェブサイトのアドレス https://deliveru.jp/
(71)【出願人】
【識別番号】521298458
【氏名又は名称】ペット&ファミリー損害保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原島 敦
(72)【発明者】
【氏名】辻井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】植木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伏山 浩人
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏雅
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペット保険金の支払い査定を正確、かつ、迅速に実施可能にするペット保険金支払い査定システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】ペット保険金支払い査定システムにおいて、サーバは、診療明細から診療項目名及び金額を取得する診療明細情報取得部と、査定対象の情報のデータと査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習部と、新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を学習モデルに入力し、判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理部と、を備える。査定処理部は、診療明細情報取得部によって新規査定対象の診療明細から取得した診療項目名及び金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を査定者用画面として出力する。機械学習部は、査定者用画面で修正受付表示が個別修正を受け付けると、修正内容を学習モデルに反映させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット保険金の支払い査定を行うペット保険金支払い査定システムであって、
ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細から、前記診療明細に記載の診療項目名および金額を取得する診療明細情報取得部と、
診療明細に記載の診療項目名を含む査定対象の情報のデータと、前記査定対象について診療項目名毎に支払い対象であるか否かの支払い査定が行われた際の査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習部と、
前記診療明細情報取得部によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を、前記機械学習部で得た学習モデルに入力し、当該診療項目名が支払い対象であるか否かの判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理部と、を備え、
前記査定処理部は、前記診療明細情報取得部によって前記新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名および金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を前記査定者用画面として出力し、
前記機械学習部は、前記査定者用画面で前記修正受付表示が前記個別修正を受け付けると、修正内容を前記学習モデルに反映させる、
ペット保険金支払い査定システム。
【請求項2】
前記診療明細情報取得部は、ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細書を写した画像から、前記診療明細書に記載の診療項目名と金額を読み取る、
請求項1に記載のペット保険金支払い査定システム。
【請求項3】
前記査定処理部は、前記診療明細書を写した画像を更に含む前記査定者用画面を出力する、
請求項2に記載のペット保険金支払い査定システム。
【請求項4】
前記査定処理部は、前記修正内容を前記学習モデルに反映させない非反映操作受付表示を、前記査定者用画面に含ませる、
請求項1から3の何れか一項に記載のペット保険金支払い査定システム。
【請求項5】
ペット保険金の支払い査定を行うペット保険金支払い査定方法であって、
ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細から、前記診療明細に記載の診療項目名および金額を取得する診療明細情報取得工程と、
診療明細に記載の診療項目名を含む査定対象の情報のデータと、前記査定対象について診療項目名毎に支払い対象であるか否かの支払い査定が行われた際の査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習工程と、
前記診療明細情報取得工程によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を、前記機械学習工程で得た学習モデルに入力し、当該診療項目名が支払い対象であるか否かの判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理工程と、を有し、
前記査定処理工程では、前記診療明細情報取得工程によって前記新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名および金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を前記査定者用画面として出力し、
前記機械学習工程では、前記査定者用画面で前記修正受付表示が前記個別修正を受け付けると、修正内容を前記学習モデルに反映させる、
ペット保険金支払い査定方法。
【請求項6】
ペット保険金の支払い査定を行うペット保険金支払い査定プログラムであって、
コンピュータに、
ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細から、前記診療明細に記載の診療項目名および金額を取得する診療明細情報取得工程と、
診療明細に記載の診療項目名を含む査定対象の情報のデータと、前記査定対象について診療項目名毎に支払い対象であるか否かの支払い査定が行われた際の査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習工程と、
前記診療明細情報取得工程によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を、前記機械学習工程で得た学習モデルに入力し、当該診療項目名が支払い対象であるか否かの判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理工程と、を実行させ、
前記査定処理工程では、前記診療明細情報取得工程によって前記新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名および金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を前記査定者用画面として出力し、
前記機械学習工程では、前記査定者用画面で前記修正受付表示が前記個別修正を受け付けると、修正内容を前記学習モデルに反映させる、
ペット保険金支払い査定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット保険金の支払い査定に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットを飼う世帯が増加している。これに伴い、ペットの診療費を賄うためのペット保険も急速に普及しつつある(例えば、特許文献1-3を参照)。そして、ペット保険の保険金請求件数も増加の一途を辿っている。
【0003】
ところで、人に対して行われる診療の項目は、基本的に厚生労働省が公示する診療報酬に則っている。このため、患者が医療機関から受け取る診療明細書の記載事項は、各医療機関で概ね統一されている。よって、人の診療に係る保険金支払いの査定作業において行われる診療項目の確認作業は、比較的支障無く行うことが可能であると言える。また、生命保険といった人に対する保険の場合、予め支払金額が定まっている定額給付であるため、この点においても査定作業は容易であると言える。
【0004】
一方、ペットに対して行われる診療の項目は、ペットの種類や医療機関によって多種多様である。このため、ペットの飼育者が医療機関から受け取る診療明細書の記載事項は、ペットの種類や医療機関によって様々である。よって、ペットの診療に係る保険金支払いの査定作業において行われる診療項目の確認作業は、人の診療に係る保険金支払いの査定の場合に比べて困難である。また、診療明細書の記載事項が多種多様であるが故に、査定を自動化することも容易でない。更に、ペットの保険は損害保険であり、実際の治療費に補償割合を乗じて保険金を算出する実損填補であるため、保険金の算出も容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6735228号公報
【特許文献2】特開2006-40158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ペット保険金の支払い査定を正確かつ迅速に実施可能にすることを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、機械学習の学習モデルを使って得た判定結果に対し、判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示を各診療項目名に対応付けた画面を査定者用画面として出力し、査定者用画面で修正受付表示が個別修正を受け付けると、修正内容を学習モデルに反映させることにした。
【0008】
詳細には、本発明は、ペット保険金の支払い査定を行うペット保険金支払い査定システムであって、ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細から、診療明細に記載の診療項目名および金額を取得する診療明細情報取得部と、診療明細に記載の診療項目名を含む査定対象の情報のデータと、査定対象について診療項目名毎に支払い対象であるか否かの支払い査定が行われた際の査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習部と、診療明細情報取得部によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を、機械学習部で得た学習モデルに入力し、当該診療項目名が支払い対象であるか否かの判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理部と、を備え、査定処理部は、診療明細情報取得部に
よって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名および金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を査定者用画面として出力し、機械学習部は、査定者用画面で修正受付表示が個別修正を受け付けると、修正内容を学習モデルに反映させる。
【0009】
ここで、ペットとは、人が飼育する動物であり、例えば、犬、猫、鳥、その他各種の動物が挙げられる。また、ペットの診療を行う医療機関とは、ペットの診療が可能な機関であり、例えば、動物専用の動物病院の他にも、動物の治療を生業とする各種の機関が挙げられる。また、ペット保険金とは、ペットの診療に要した費用の全部または一部を補償するために支払われる金銭であり、例えば、銀行口座等へ振り込み可能な現金のみならず、電子マネーや金券といった金銭と実質的に等価なものも挙げられる。
【0010】
上記のペット保険金支払い査定システムであれば、診療の項目が人の保険に比べて多種多様なペット保険においても、機械学習の学習モデルを使った査定により、査定に係る処理時間が大幅に削減され、迅速な査定を実施することができる。また、機械学習の学習モデルを使った査定結果を査定者が査定者用画面の修正受付表示で直ちに修正可能であるため、学習モデルを使った査定の誤りを査定者が修正可能である。更に、修正内容が学習モデルに反映されるので、学習モデルを使った査定の精度を自動的に向上させることが可能である。したがって、ペット保険金の支払い査定を正確かつ迅速に実施することが可能となる。
【0011】
なお、診療明細情報取得部は、ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細書を写した画像から、診療明細書に記載の診療項目名と金額を読み取るものであってもよい。これによれば、診療明細書に記載されている情報が自動的にデータ化されるので、ペット保険金の支払い査定をより正確かつ迅速に実施することが可能となる。
【0012】
また、査定処理部は、診療明細書を写した画像を更に含む査定者用画面を出力するものであってもよい。これによれば、査定者は、診療明細書を容易に確認できるため、間違いや漏れ等の発見が容易である。したがって、ペット保険金の支払い査定をより正確かつ迅速に実施することが可能となる。
【0013】
また、査定処理部は、修正内容を学習モデルに反映させない非反映操作受付表示を、査定者用画面に含ませるものであってもよい。これによれば、修正内容を学習モデルに反映させないことも可能となる。よって、例えば、査定者が経験不足のような場合に、非反映操作受付表示を操作して修正内容を学習モデルに反映させない状態とすることで、経験不足の査定者の知見が学習モデルに反映されることを防止することができる。
【0014】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。本発明は、例えば、ペット保険金の支払い査定を行うペット保険金支払い査定方法であって、ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細から、診療明細に記載の診療項目名および金額を取得する診療明細情報取得工程と、診療明細に記載の診療項目名を含む査定対象の情報のデータと、査定対象について診療項目名毎に支払い対象であるか否かの支払い査定が行われた際の査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習工程と、診療明細情報取得工程によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を、機械学習工程で得た学習モデルに入力し、当該診療項目名が支払い対象であるか否かの判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理工程と、を有し、査定処理工程では、診療明細情報取得工程によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名および金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を査定者用画面として出力し、機械学習工程では、査定者用画面で修正受付表示が個別修正を受け付けると、修正内容を学習モデルに反映させる、ペット保険金支払い査
定方法であってもよい。
【0015】
また、本発明は、プログラムの側面から捉えることもできる。本発明は、例えば、ペット保険金の支払い査定を行うペット保険金支払い査定プログラムであって、コンピュータに、ペットの診療を行う医療機関で発行された診療明細から、診療明細に記載の診療項目名および金額を取得する診療明細情報取得工程と、診療明細に記載の診療項目名を含む査定対象の情報のデータと、査定対象について診療項目名毎に支払い対象であるか否かの支払い査定が行われた際の査定結果とを関連付けて機械学習させる機械学習工程と、診療明細情報取得工程によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名を、機械学習工程で得た学習モデルに入力し、当該診療項目名が支払い対象であるか否かの判定結果を査定者用画面に出力させる査定処理工程と、を実行させ、査定処理工程では、診療明細情報取得工程によって新規査定対象の診療明細から取得された診療項目名および金額と、各診療項目名に対応付けて示される判定結果と、各診療項目名に対応する判定結果の個別修正を受け付ける修正受付表示と、を含む画面を査定者用画面として出力し、機械学習工程では、査定者用画面で修正受付表示が個別修正を受け付けると、修正内容を学習モデルに反映させる、ペット保険金支払い査定プログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ペット保険金の支払い査定を正確かつ迅速に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ペット保険金の支払いに係るシステム全体の概要を示した図である。
【
図2】
図2は、サーバにおいて実現される機能ブロック図の一例である。
【
図3】
図3は、保険の査定に係る全体工程の一例を示した図である。
【
図4】
図4は、受付担当者による受付処理の際に、主に端末で実行される処理のフローチャートを示した図である。
【
図5】
図5は、動物病院で発行される請求書兼明細書の一例を示した図である。
【
図6】
図6は、請求情報データベースに格納される請求情報の一例を示した図である。
【
図7】
図7は、査定担当者の査定作業の際に、主に端末で実行される処理のフローチャートを示した図である。
【
図8】
図8は、顧客情報データベースに格納される顧客情報の一例を示した図である。
【
図9】
図9は、支払い情報データベースに格納される支払い情報の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、単なる例示であり、本開示の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0019】
<システム構成>
図1は、ペット保険金の支払いに係るシステム全体の概要を示した図である。ペット保険は、ペットを飼っている利用者1が動物病院2でペットの治療に要した診療費を保険会社3が補償する。利用者1は、保険金を受け取ることができる被保険者であり、利用者1が自らペット保険を契約している場合には契約者でもある。保険会社3のペット保険に加入している利用者1は、動物病院2でペットの治療を受けた場合、動物病院2で費用を支払うことになる。そして、利用者1は、請求書兼明細書6を受け取る。請求書兼明細書6には、動物病院2へ支払った費用の他に、診療項目といった内訳の明細が記されている。
この請求書兼明細書6は、動物病院2が独自に作成するものである。請求書兼明細書6を受け取った利用者1は、保険を使いたい場合、請求書兼明細書6やその他の請求書類を保険会社3へ郵送あるいは電子書面で送付することにより、保険適用の請求を行う。保険会社3では、利用者1から保険適用が請求されると、請求書類の確認や査定を行い、保険金の支払いを行う。
【0020】
保険会社3には、請求書類の確認や査定を行う受付担当者4、査定担当者5が居る。受付担当者4は、主に利用者1から郵送された書類を受け付ける業務を司る。また、査定担当者5は、受付担当者4が受け付けた書類の情報に基づく査定の業務を司る。受付担当者4は、保険会社3の社員であってもよいし、保険会社3から業務委託された代行事業者の社員であってもよい。
【0021】
保険会社3には、ネットワークNを介して相互に通信可能なサーバ10、端末20、端末30が備わっている。サーバ10は、保険会社3が提供する保険の情報を取り扱う基幹システムのサーバである。また、端末20は、受付担当者4が受け付け業務を実施可能なコンピュータであり、書類をスキャンして画像データを取得するスキャナや、画面表示可能なディスプレイ等が備わっている。また、端末30は、査定担当者5が査定作業を実施可能なコンピュータである。サーバ10と端末20と端末30の何れも、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、ストレージ、通信インターフェース、入出力装置等を備
えており、メモリに展開されたコンピュータプログラムを実行することにより、後述する各種機能部を実現する。
【0022】
図2は、サーバ10において実現される機能ブロック図の一例である。サーバ10でコンピュータプログラムが実行されると、
図2に示されるように、情報取得部11や機械学習部12、査定処理部14が実現される。情報取得部11(本願でいう「診療明細情報取得部」の一例である)は、サーバ10のストレージに格納されている顧客情報データベース15や請求情報データベース16から情報を取得し、機械学習部12や査定処理部14へ送る機能を司る。機械学習部12は、情報取得部11から送られた情報に基づき、学習モデル13を生成する機能を司る。査定処理部14は、情報取得部11から送られた情報に基づき、学習モデル13を使ったAI(Artificial Intelligence)査定等の査定処理
を司る。査定結果は、支払い情報データベース17に格納される。顧客情報データベース15、請求情報データベース16及び支払い情報データベース17は、保険会社3が用いる基幹システムを構成するデータベースの一種である。
【0023】
<査定処理の概要>
図3は、保険の査定に係る全体工程の一例を示した図である。
図3では、サーバ10が端末20及び端末30と協働で実現する査定システムにおける処理概要を「実施形態」として示し、査定を人手で行う従来の処理概要を「比較例」として示している。
図3において、紙面上下方向における各工程の長さは、処理に要する経過時間の長さをイメージで表している。
【0024】
図3において紙面左側に示す処理概要を見ると判るように、本実施形態では、まず、利用者1が保険会社3へ送付した請求書類の受付が行われる(S1)。そして、利用者1が保険会社3へ送付した請求書類を受付担当者4が端末20のスキャナで読み込み、請求書類をイメージ化する(S2)。端末20は、請求書類の画像をスキャナで取得すると、OCR(Optical Character Recognition)処理を行い、請求書類に記載されている文字情
報を、AI等を駆使して自動的にデータ化する(S3)。端末20が自動的にデータ化した文字情報のデータには、読み取りエラー等が含まれている可能性があるため、受付担当者4は、端末20を操作し、請求書類の画像と見比べながらデータの補正を行う(S4)。
【0025】
受付担当者4が端末20で請求書類のデータ化を完了し、請求書類の情報が請求情報データベース16に格納された後は、サーバ10においてAIを使った自動の支払査定が行われる(S5)。この支払査定においては、情報取得部11によって取得された顧客情報データベース15と請求情報データベース16の情報に基づき、査定処理部14が学習モデル13を使って査定を行う。AIを使った支払査定の査定結果は、基幹システムの支払い情報データベース17に格納される(S6)。支払い情報データベース17に格納された査定結果のデータは、査定担当者5によって確認や修正がなされる(S7)。そして、保険会社3の社内における処理が完了すると、利用者1に対する支払いが行われ、一連の処理が完了する(S8)。
【0026】
一方、
図3において紙面右側に示す処理概要を見ると判るように、比較例では、上述のS1~S2と同様に請求書類の受付(Sh1)やイメージ化(Sh2)が行われる。しかし、比較例では、請求書類に記載されている文字情報を受付担当者4が全て目視で読み取り、端末20に手動で入力する(Sh3)。そして、入力データが請求情報データベース16に格納される(Sh4)。査定担当者5は、請求情報データベース16に格納された情報を参照し、AIを使わない手動の支払査定を行う(Sh5)。そして、保険会社3の社内における処理が完了すると、利用者1に対する支払いが行われ、一連の処理が完了する(Sh6)。
【0027】
図3において紙面左側に示す実施形態の処理概要と、
図3において紙面右側に示す比較例の処理概要とを見比べると判るように、実施形態は比較例に比べて保険適用の申請に関わる処理時間の大幅な削減が見込まれる。例えば、実施形態においては、比較例において手作業で行われていた書類の情報入力がほぼ自動で行われるので、情報の入力に係る工数を大幅に削減可能である。
【0028】
<処理フロー>
以下、本実施形態の各工程における処理の詳細について説明する。
【0029】
図4は、受付担当者4による受付処理の際に、主に端末20で実行される処理のフローチャートを示した図である。以下、受付処理の際に実行される処理内容について、
図4のフローチャートに沿って説明する。
【0030】
受付担当者4は、請求書類の受付処理を行う場合、まず、請求書類をスキャナにセットする。受付担当者4が請求書類をスキャナにセットし、読み取り開始操作を行うと、端末20は、スキャナを作動させて請求書類のイメージデータを取得する(S101)。スキャナは、原稿を固定した状態で読み取る装置であってもよいし、或いは、原稿送り装置で原稿を動かしながら読み取る装置であってもよい。スキャナは、光源や固体撮像素子を内蔵している。そして、光源から原稿に照射した際の反射光を固体撮像素子上に結像し、当該固体撮像素子からラスター状の画像読取信号を取得する。
【0031】
端末20は、ステップS101でイメージデータを取得した後、OCR処理で文字情報の読み取りを行う(S102)。OCR処理においては、文字の認識精度を向上するために、様々な手法が組み合わせて用いられる。例えば、前処理として、細かいノイズドットを除去する画像処理が用いられることがある。あるいは、予測された候補文字に対して、あらかじめ定義しておいた単語リストと照合して、最も近い文字列を見つける「単語マッチング」という手法が用いられることもある。
【0032】
また、本実施形態で読み取る請求書類には、各動物病院2で独自の様式に則って発行される様々な請求書兼明細書6が含まれる。
図5は、動物病院2で発行される請求書兼明細
書6の一例を示した図である。特定の動物病院2で発行される請求書兼明細書6では、
図5に示すように、左側から順に「診療項目」、「単価」、「数量」、「金額」の順に列が並ぶ表が設けられている。そして、表の上側には合計の精算金額が記載されている。しかし、他の動物病院2で発行される請求書兼明細書6では、単価や数量、金額が異なる順序で並ぶ表が設けられていたり、合計の精算金額が異なる位置に設けられていたりする場合がある。また、ペットの診療は、人の診療のように厚生労働省が定める診療報酬に則った診療項目に沿って行われるようなものではないため、請求書兼明細書6に記載される診療項目の名称も動物病院2によって多種多様である。
【0033】
そこで、本実施形態のOCR処理では、読み取り対象の請求書類について、請求書兼明細書6の発行元や金額などの文字列の領域の特定を行うために、請求書兼明細書6の様式の構造を認識するレイアウト分析において公知の手法の他にAIも活用する。AIの活用は、端末20が単体で実現してもよいし、サーバ10と協働で実現してもよい。OCR処理では、レイアウト解析で抽出した文字領域を抽出し、文字領域内の文字を1文字ずつ分解する文字抽出解析処理を行い、イメージデータが何の文字であるかを認識する認識処理を行う。認識処理では、例えば、文字イメージを一定の大きさに拡大/縮小する正規化処理、文字イメージの特徴(縦、横、斜めの線、各線の長さ、線同士の位置関係などの特徴量)抽出処理、文字イメージの特徴量に合致する文字コードを検索するマッチング処理、マッチング処理で抽出された各文字コード又は/及びその文字列に対する辞書(単語辞書など)を用いた自動訂正処理、の各処理が含まれる。
【0034】
端末20は、ステップS102で文字情報の読み取りを自動的に行った後、受付担当者4による補正を受け付ける(S103)。端末20は、例えば、ステップS101の処理で取得した請求書類の画像と、ステップS102の処理で読み取った文字情報のテキストを同一画面上に表示し、受付担当者4が両者を比較容易にする。そして、端末20は、受付担当者4がキーボードやマウス(ポインティングデバイス)を操作して当該テキストを手動で変更するためのGUI(Graphical User Interface)を提供する。
【0035】
端末20は、ステップS103で補正の受付開始を行った後、受付担当者4による補正が行われた場合には(S104)、端末20のメモリに展開されているデータの更新を行う(S105)。また、端末20は、受付担当者4による補正作業で補正或いは確認が完了した場合、サーバ10にデータを請求情報として送信する(S106)。サーバ10では、端末20から送信された請求情報が請求情報データベース16に格納される。
【0036】
図6は、請求情報データベース16に格納される請求情報の一例を示した図である。ステップS101~S106の処理が行われることにより、請求情報データベース16には、
図6に示すような請求情報のデータが蓄積される。すなわち、ステップS101~S106の処理が行われることにより、利用者1からの保険適用の請求毎に発行される請求番号に各々対応して、請求書類に記載の利用者1の証券番号や診療項目、単価、数量、金額等の情報が蓄積される。
図6を見ると判るように、利用者1から保険会社3へ送付される請求書類の請求書兼明細書6に記載されている診療項目や数量、金額は、請求毎に様々である。また、利用者1が利用している保険で適用対象になっているペットの種類も様々である。よって、ペットの保険金支払いの査定作業においては、人の診療に係る保険金支払いの査定の場合と異なり、請求毎に相異なる診療項目名であっても内容が同一のものや、請求毎に同一の診療項目名であっても内容が異なるものについて、ペットの種類等を総合的に勘案した検討が必要となる。そこで、本実施形態では、保険金支払いの査定作業を以下のようにして行う。
【0037】
図7は、査定担当者5の査定作業の際に、主に端末30で実行される処理のフローチャートを示した図である。以下、査定作業の際に実行される処理内容について、
図7のフロ
ーチャートに沿って説明する。
【0038】
サーバ10では、査定担当者5が保険適用の査定作業を行うために端末30を操作している間、或いは、端末30の操作開始前の適当なタイミング(例えば、バッチ処理が実行される深夜帯等)において、AIを使った査定が自動的に行われる。すなわち、サーバ10は、請求情報データベース16に請求情報が新たに格納されたことを検知すると、当該請求情報のデータを請求情報データベース16から取得するデータ受付処理を情報取得部11に実行させる(S201)。また、サーバ10は、当該請求情報に対応する顧客の情報を顧客情報データベース15から取得する処理を情報取得部11に実行させる(S202)。そして、サーバ10は、学習モデル13を使ったAIの査定処理を査定処理部14に実行させる(S203)。査定処理部14による査定処理の結果は、支払い情報データベース17に格納される。
【0039】
査定担当者5は、査定作業を行う場合、端末30を操作し、査定作業用の画面を表示させる。端末30に表示される画面は、端末30にインストールされているコンピュータプログラムが生成する画面であってもよいし、或いは、サーバ10にインストールされているコンピュータプログラムの実行によってサーバ10で生成され、ネットワークN経由で端末30のディスプレイに表示される画面であってもよい。端末30は、当該操作により、ステップS203の処理で支払い情報データベース17に格納された査定結果の情報をディスプレイに表示する(S204)。
【0040】
図8は、顧客情報データベース15に格納される顧客情報の一例を示した図である。顧客情報データベース15には、
図8に示すような顧客情報のデータが格納されている。顧客情報データベース15に格納されている顧客情報は、利用者1が利用するペット保険の契約が保険会社3と取り交わされた際に蓄積される情報である。
図8を見ると判るように、顧客情報としては、例えば、保険契約の証である証券の番号、契約者及び被保険者といった利用者1等の氏名、契約対象のペットの種類や品種、動物名等が含まれている。顧客情報としては、この他にも、利用者1の住所や保険料の支払い口座に関する情報、保険の補償内容に関する情報、その他各種の情報が含まれる。
【0041】
図9は、支払い情報データベース17に格納される支払い情報の一例を示した図である。支払い情報データベース17に格納されている支払い情報は、顧客情報データベース15の顧客情報、請求情報データベース16の請求情報、及びステップS203で得られた査定結果の情報で構成される。すなわち、
図9を見ると判るように、支払い情報データベース17に格納されている支払い情報は、保険適用の請求毎に発行される請求番号に各々対応して、証券番号、診療項目、単価、数量、金額、保険対象であるか否かの情報等で構成される。ステップS203の処理が実行された段階では、支払い情報データベース17に格納されている保険対象であるか否かの情報は、AIを使った一時的な査定結果に過ぎないため、後述の処理によって適宜修正されることになる。
【0042】
顧客情報データベース15にはこのような顧客情報が格納され、支払い情報データベース17にはこのような支払い情報が格納されているため、ステップS204で端末30のディスプレイに表示される査定結果の画面では、例えば、次のような情報が表示される。
【0043】
図10は、査定結果を示す画面の一例である。本ステップS204が実行されると、端末30のディスプレイには、例えば、
図10に示すような画面(本願でいう「査定者用画面」の一例である)が表示される。すなわち、端末30のディスプレイには、証券番号や利用者1の氏名といった顧客情報、ステップS101の処理でイメージデータが取得された請求書兼明細書6の画像、OCR処理で読み取られて適宜補正等が行われた請求情報、AIを使った査定結果である保険対象であるか否かの情報、自動算出された保険金の額等
が表示される。このため、査定担当者5は、保険適用のペットの種類や請求書兼明細書6の画像等の情報も確認しながら、各診療項目が保険適用の対象であるか否かの判断や確認を行い、AIを使った査定結果の妥当性を容易に検証することが可能である。また、保険金額の計算も自動で行われるので、手計算で行う場合に比べて査定担当者5の負担が軽減できる。
【0044】
そして、
図10を見ると判るように、端末30のディスプレイに表示される査定結果の画面には、AIを使った査定結果を修正するための「修正」ボタン(本願でいう「修正受付表示」の一例である)が診療項目毎に用意されている。よって、査定担当者5は、AIを使った査定結果が妥当でないと判断した場合、保険対象であるか否かの査定結果を修正することができる。修正作業は、端末30のキーボードやポインティングデバイスを操作することにより、容易に行うことができる。
【0045】
また、
図10を見ると判るように、査定結果の画面には、「AI学習」という項目名にチェックボックス(本願でいう「非反映操作受付表示」の一例である)が用意されており、査定結果の修正内容を学習モデル13に反映させてAIの自動再学習を行うか否かを査定担当者5が選択可能となっている。このため、サーバ10または端末30は、チェックボックスにチェックが入っているか否か、換言すると、査定担当者5によって行われた修正作業を学習モデルに反映させるか否かの判定を行う(S205)。「AI学習」のチェックボックスにチェックが入っている場合、ステップS205で肯定判定が行われ、査定担当者5による査定結果の修正内容が学習モデル13に反映される(S206)。すなわち、査定担当者5による査定結果の修正内容が、学習モデル13の学習データとして機械学習部12に取り込まれ、学習モデル13の修正に利用される。また、「AI学習」のチェックボックスにチェックが入っていない場合、ステップS205で否定判定が行われ、ステップS206の処理は省略される。例えば、査定担当者5の経験がまだ豊富でないような場合には、「AI学習」のチェックボックスのチェックを外しておくことにより、経験不足の査定担当者5の知見が学習モデルに反映されることを防止することができる。
【0046】
査定担当者5が査定結果の修正を完了すると、査定担当者5による査定結果の修正内容は、支払い情報データベース17に格納されている支払い情報に反映される。そして、査定担当者5の上長や適宜の部署で確認作業が行われることにより、支払い情報データベース17に格納されている支払い情報が確定される(S207)。保険会社3は、支払い情報が確定すると、利用者1に対する保険金の支払いを行う。利用者1が保険会社3から保険金を受け取ると、一連の処理が完了する。
【0047】
なお、
図10に示す画面において、請求書兼明細書6の画像は査定担当者5が視認しやすい箇所に表示されていれば、受付担当者4が受付処理を行った際に発生した間違いや漏れ等の発見が容易である。しかし、請求書兼明細書6の画像は、
図10の画面で省略されていてもよいし、或いは、呼び出しボタンを押した場合に表示される形態であってもよい。
【0048】
<AIを使った処理の詳細>
以下、AIを使った査定の処理内容について詳述する。
【0049】
ペット保険の支払査定は、基本的に次のような手順となる。すなわち、まず、契約情報や傷病情報、ペットの品種・年齢等を勘案し、請求の支払可否を総合的に判断する。次に、請求書兼明細書6に記載の各診療項目について、それらが支払対象であるか否かに区分する。次に、支払対象の診療項目の治療費の総額を計算し、保険金の支払額等の査定結果を確定する。
【0050】
ところが、上述したように、ペットの種類は多種多様であるため、ペット保険の支払査定を行う際は、判断材料が多い。例えば、同じ傷病でも品種・発症年齢・原因により支払判断が異なる。また、同一の診療項目でもどの傷病の治療かによって判断が異なる。このように、支払査定で考慮すべき情報が多い。また、ペット保険の支払査定を行う際は、診療項目毎に支払可否を判断する必要がある。動物病院2で発行される請求書兼明細書6には、治療費用以外の項目(予防やサプリ等の保険適応外項目)の混入が多いという特色がある。よって、請求書兼明細書6の診療項目を確認し、診療項目毎に有責か免責かを判断する必要がある。また、動物医療は自由診療なので、動物病院2で発行される請求書兼明細書6等の帳票も多種多様である。よって、使用する帳票や診療項目名も多種多様であり、請求書兼明細書6毎に査定に必要な情報の記載場所が異なるので、パターン化が困難である。また、動物病院2毎に消費税の表示形態(外税・内税)が異なっていたり、独自の会員割引等もあったりする場合がある。
【0051】
そこで、本実施形態でAIを使って行う査定では、ペット保険特有の問題である「明細書の形式が多種多様」という問題点を、以下のようにして解決している。
【0052】
すなわち、請求書兼明細書6には、
図5に示したように、文字の他に罫線等が存在する。また、文字についても、明朝体やゴシック体等の各種書体が存在する。明朝体のように線が細い文字の場合、文字を構成するへんとつくりの間に存在する隙間によりへんとつくりがそれぞれ別の文字として認識される場合がある。また、文字の近くに罫線があると、罫線を文字の一部として誤認識する場合がある。また、文字の色と背景色が類似すると、文字の一部が欠けて認識される場合がある。また、帳票内に含まれるレイアウトが少し変わるだけでもOCR結果が変わる場合がある。そこで、上述したステップS102の処理で用いるAIの学習モデルを作成する際、各動物病院2で発行される様々なバリエーションの請求書兼明細書6の画像を学習用のデータとして読み込ませる。各動物病院2の請求書兼明細書6を学習データとして読み込ませる際は、多種多様な請求書兼明細書6を集め、集めた請求書兼明細書6をレイアウトのパターン毎に仕分けてパターン部類を実施する。そして、学習データとして読み込ませ、レイアウトの判定精度や文字認識率の検証を行う。レイアウトの判定に誤りがあれば学習モデルの訂正を行い、学習モデルの改良を試みる。また、文字認識に誤りがあれば文字の訂正を行い、学習モデルの改良を試みる。文字認識精度は、例えば、証券番号や治療金額等の特定の文字(¥マークや英数字)にマーキングを施すことでも向上する。
【0053】
本実施形態では、学習モデルをこのようにして作成したAIをステップS102のOCR処理で併用することにより、多種多様な形式の請求書兼明細書6を自動的に読み取り可能としている。
【0054】
また、本実施形態でAIを使って行う査定では、ペット保険特有の問題である「支払査定で考慮すべき判断材料が多い」という問題点を、以下のようにして解決している。
【0055】
すなわち、上述したステップS203の処理で用いるAIの学習モデルを作成する際、査定者が実際の支払査定で判定に使用している項目を洗い出し、査定に必要な判定材料を抽出する。そして、AIの学習モデルを生成するにあたり、この判定材料を鍵とし、支払査定結果のフィードバックにおいて、査定者とAIの初期判定の結果が異なる場合は、判定材料のどこの項目に差異があったかを上記のステップS206の処理等で自動学習できるようにする。
【0056】
例えば、「肛門腺炎」を治療する目的で「肛門腺処置」が行われたのであれば保険適用の対象となるが、「肛門腺炎」以外の病気を治療する目的で受診した際に「肛門腺処置」が行われたのであれば保険適用の対象外となる。支払査定では、このように、診断名や発
症日、診療項目名、治療日、動物病院名、契約内容、ペットの個体情報、告知内容等の情報が必要となる。「診断名」は、例えば、免責疾患に該当しないかの確認に有効である。また、「発症日」は、例えば、待機期間内の発症、保険開始期前の発症、保険期間外の発症等に該当しないかの判定に有効である。また、「診療項目名」は、例えば、支払対象であるか否かの判定に有効である。また、「治療日」は、例えば、契約期間内の治療であるか、既往症に該当しないか等の判定で有効である。また、「動物病院名」は、例えば、動物病院固有の支払対象外項目等の判定に有効である。また、保険の種類や特約、契約期間等の「契約情報」は、例えば、保険種類の特定、補償内容、特約の有無、既往症・待機期間内発症等の判定に有効である。また、「個体情報」は、例えば、品種固有の疾患や発症年齢による支払判断に有効である。また、特定疾病や告知傷病等の「告知内容」は、例えば、請求内容が不担保疾病や既往症の治療費に該当しないかの判定に有効である。
【0057】
そこで、ステップS203の処理で用いるAIの学習モデルの生成においては、保険契約の約款や過去の支払実績の査定結果、提携している動物病院から得られる診療項目等の情報に基づき、基本となる判定ルールをプログラムで設定する。そして、過去の支払事例を実際に読み込ませてAI査定を実施し、査定結果のフィードバックを行うことにより、学習モデルを生成する。過去の支払事例を読み込ませる際は、査定結果のみならず、査定担当者が作成したメモの情報等も読み込ませる。そして、生成した学習モデルを使った査定の結果を検証し、誤回答した事例について同条件の別の支払事例を再学習させ、学習モデルの修正を試みる。また、特別な診療項目については、AIではなくプログラムの設定も適宜併用する。
【0058】
また、本実施形態では、AIを使った査定処理における保険金の支払額の算定において、動物病院2毎に消費税の表示形態(外税・内税)が異なっていたり、独自の会員割引等もあったりする場合であっても適切な支払額を算定可能とするために、請求書兼明細書6の情報を以下のように処理している。すなわち、各診療項目の費用の小計や治療費合計を比較して消費税率や割引率を算出する。そして、割引きについては、割引の目印となるような記載(例えば、〇印や★印等)が存在する場合に割引が存在すると認識し、割引きを考慮した計算が行われるようにプログラムやAIの学習データを設定する。本実施形態では、このように、プログラムとAIの両面で精度を上げる工夫を実施している。
【0059】
本実施形態では、このようにAIの学習モデルとプログラム設定を併用することにより、ステップS203における査定処理において、ペット保険特有の問題である「支払査定で考慮すべき判断材料が多い」ことへの対応を可能にしている。
【0060】
<効果>
本実施形態によれば、診療の項目が人の保険に比べて多種多様なペット保険においても、AIを使った査定により、査定に係る処理時間が大幅に削減され、迅速な査定を実施することができる。また、本実施形態では、AIの査定結果を査定担当者5が直ちに修正可能なGUIを用いているので、AI査定を1次審査のツールとすることができる。すなわち、本実施形態によれば、査定の最終判断は査定担当者5が実施する前提のGUIとなっているため、AIの査定の誤りを査定担当者5が修正できる。また、本実施形態によれば、AIの査定の誤りを査定担当者5が修正することにより、AIの学習モデルの改良も同時に行われるので、本実施形態を使い続けることにより、AI査定の精度を自動的に向上させることが可能である。
【0061】
また、採用した人材に実務知識を習得させて査定担当者5とするためには、相応の費用や期間を要する。しかし、本実施形態によれば、査定に係る処理時間の大幅な削減が可能であるため、査定担当者5の要員数が確保できない場合や、査定担当者5の育成が容易でない場合にも好適である。
【0062】
また、査定担当者5が優秀な者であったとしても、人が行う作業には個人差や間違いがつきものである。しかし、本実施形態によれば、AI査定の結果を1次審査の情報として査定担当者5に提供する形態を採っているため、各査定担当者5の個人差や間違いを可及的に抑制し、正確な査定を実施することができる。
【0063】
また、書類を手作業でデータ入力する場合には困難であった診療項目の情報について、本実施形態であればデータとして自動的に取り込むことが可能であるため、データを分析することにより、保険の適用申請に係る傾向の変化等を把握し、様々な利用者1が求める新たな保険の開発に寄与することが可能となる。
【0064】
<変形例>
なお、上記実施形態では、請求書兼明細書6を受付担当者4がOCR等で自動的に読み取ってデータ化する形態であったが、請求書兼明細書6の情報は、例えば、受付担当者4が目視で読み取って端末20に手動で入力する形態であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、受付担当者4と査定担当者5に分かれて作業を行っていたが、受付担当者4と査定担当者5がそれぞれ行う作業は、同一人物が行ってもよいし、或いは、3人以上で分担してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、請求書兼明細書6等が紙の書類であったが、請求書兼明細書6は、動物病院2から保険会社3へ直接的に送られる電子データ、或いは、動物病院2から利用者1経由で保険会社3へ間接的に送られる電子データであってもよい。
【0067】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0068】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク(ブルーレイは登録商標)、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。
【符号の説明】
【0069】
N・・ネットワーク
1・・利用者
2・・動物病院
3・・保険会社
4・・受付担当者
5・・査定担当者
6・・請求書兼明細書
10・・サーバ
11・・情報取得部
12・・機械学習部
13・・学習モデル
14・・査定処理部
15・・顧客情報データベース
16・・請求情報データベース
17・・支払い情報データベース
20・・端末
30・・端末