(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086269
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】搬送対象物搬送装置および搬送対象物搬送方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
B25J15/06 C
B25J15/06 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200664
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】居村 真人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707FS01
3C707FS04
3C707FS06
3C707FT02
3C707FT06
3C707FT11
3C707FT15
3C707HS13
3C707HS14
3C707HS27
3C707MT05
(57)【要約】
【課題】搬送対象物を安定して保持し、搬送することができる搬送対象物搬送装置と搬送対象物搬送方法を提供する。
【解決手段】複数の第1保持部11と、鉛直方向に移動可能な昇降部20と、昇降部20の下部に固定されている第2保持部12を有しており、第2保持部12の少なくとも一部が複数の第1保持部11の図心11cをつないで形成される図形11sと重なるように配されている搬送対象物搬送装置1と、3個以上の保持部を有しており、少なくとも一の保持部の少なくとも一部が他の複数の保持部の図心11cをつないで形成される図形11sと重なるように配されている搬送対象物搬送装置1を準備するステップS1と、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップS2と、他の複数の保持部が搬送対象物を保持するステップS3と、を有しており、ステップS2はステップS3よりも先に実行される搬送対象物搬送方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する装置であって、
前記搬送対象物を保持する複数の第1保持部と、
鉛直方向に上端と下端を有し、前記鉛直方向に移動可能な昇降部と、
前記昇降部の下部に固定されており、前記搬送対象物を保持する第2保持部と、を有しており、
前記下端側から観察したときに、前記第2保持部の少なくとも一部が、複数の前記第1保持部の図心をつないで形成される図形と重なるように配されている搬送対象物搬送装置。
【請求項2】
前記第2保持部が前記搬送対象物を保持した後で前記第1保持部が前記搬送対象物を保持するように制御する制御部をさらに有している請求項1に記載の搬送対象物搬送装置。
【請求項3】
前記昇降部の下端が最も降下している状態において、前記第2保持部は前記第1保持部よりも下方に位置している請求項1または2に記載の搬送対象物搬送装置。
【請求項4】
前記昇降部の下端が最も上昇している状態において、前記鉛直方向における前記第2保持部の下端の位置と前記鉛直方向における前記第1保持部の下端の位置が同じである請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送対象物搬送装置。
【請求項5】
さらに支持部を有しており、
前記昇降部の上部および前記第1保持部が前記支持部に固定されている請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送対象物搬送装置。
【請求項6】
前記昇降部はアクチュエータである請求項1~5のいずれか一項に記載の搬送対象物搬送装置。
【請求項7】
搬送対象物を搬送する方法であって、
前記搬送対象物を保持する3個以上の保持部を有しており、鉛直方向から観察したときに、少なくとも一の保持部の少なくとも一部が他の複数の保持部の図心をつないで形成される図形と重なるように配されている搬送対象物搬送装置を準備するステップと、
前記少なくとも一の保持部が前記搬送対象物を保持するステップと、
前記他の複数の保持部が前記搬送対象物を保持するステップと、を有しており、
前記少なくとも一の保持部が前記搬送対象物を保持するステップは、前記他の複数の保持部が前記搬送対象物を保持するステップよりも先に実行される搬送対象物搬送方法。
【請求項8】
前記搬送対象物搬送装置が、前記鉛直方向に上端と下端を有し、前記鉛直方向に移動可能な昇降部をさらに有しており、
前記少なくとも一の保持部が前記昇降部の下部に固定されている請求項7に記載の搬送対象物搬送方法。
【請求項9】
前記少なくとも一の保持部が前記搬送対象物を保持するステップの後であって、前記他の複数の保持部が前記搬送対象物を保持するステップの前に、前記昇降部が上昇するステップをさらに有する請求項8に記載の搬送対象物搬送方法。
【請求項10】
前記少なくとも一の保持部が前記搬送対象物を保持するステップの前に、前記昇降部が下降するステップをさらに有する請求項8または9に記載の搬送対象物搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する搬送対象物搬送装置および搬送対象物搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、搬送対象物の形状に関わらず、搬送の機械化が進められている。搬送対象物の形状は様々なものが存在し、その形状に応じた搬送装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、厚さ方向に積層された薄板状ワークをエレベータ機構で下から上に押し上げ、ワークを1個単位で吸着して他の場所に移送する装置であって、一端に盛り上がりのあるようなワークを積層した場合でも、球形ジャーナルを設けたワーク押上プレートを首振り運動させることにより、ワークが吸着部によって吸着される際にワークの上側面が水平となるように構成されているワーク移送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているワーク移送装置においては、搬送対象物の吸着が不十分で、搬送対象物を搬送している時の空気抵抗によって搬送対象物が不安定になりやすいという問題があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定して搬送対象物を保持し、搬送するための機能を有する搬送対象物搬送装置および搬送対象物搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決できた本発明の搬送対象物搬送装置の一実施態様は、搬送対象物を搬送する装置であって、搬送対象物を保持する複数の第1保持部と、鉛直方向に上端と下端を有し、鉛直方向に移動可能な昇降部と、昇降部の下部に固定されており、搬送対象物を保持する第2保持部と、を有しており、下端側から観察したときに、第2保持部の少なくとも一部が、複数の第1保持部の図心をつないで形成される図形と重なるように配されている点に要旨を有する。搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分がその周囲の厚みよりも厚い、袋状の搬送対象物が積層されたような場合は、搬送対象物が傾くことによって積層された搬送対象物の上端部に傾斜が生じることがある。本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置は、鉛直方向に移動可能な昇降部の下部に第2保持部が固定されていることで、第2保持部が搬送対象物を保持する位置やタイミングを調整しやすくすることができる。このため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。また、第1保持部と第2保持部とが上記のように配置されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を保持しやすく、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができる。
【0008】
上記搬送対象物搬送装置は、第2保持部が搬送対象物を保持した後で第1保持部が搬送対象物を保持するように制御する制御部をさらに有していることが好ましい。
【0009】
上記搬送対象物搬送装置は、昇降部の下端が最も降下している状態において、第2保持部は第1保持部よりも下方に位置していることが好ましい。
【0010】
上記搬送対象物搬送装置は、昇降部の下端が最も上昇している状態において、鉛直方向における第2保持部の下端の位置と鉛直方向における第1保持部の下端の位置が同じであることが好ましい。
【0011】
上記搬送対象物搬送装置は、さらに支持部を有しており、昇降部の上部および第1保持部が支持部に固定されていることが好ましい。
【0012】
上記搬送対象物搬送装置が有している昇降部はアクチュエータであることが好ましい。
【0013】
上記課題を解決できた本発明の搬送対象物搬送方法の一実施態様は、搬送対象物を搬送する方法であって、搬送対象物を保持する3個以上の保持部を有しており、鉛直方向から観察したときに、少なくとも一の保持部の少なくとも一部が他の複数の保持部の図心をつないで形成される図形と重なるように配されている搬送対象物搬送装置を準備するステップと、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップと、他の複数の保持部が搬送対象物を保持するステップと、を有しており、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップは、他の複数の保持部が搬送対象物を保持するステップよりも先に実行される点に要旨を有する。搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分がその周囲の厚みよりも厚い、袋状の搬送対象物が積層されたような場合は、搬送対象物が傾くことによって積層された搬送対象物の上端部に傾斜が生じることがある。上記構成を有する搬送対象物搬送方法は、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持した後に他の複数の保持部が搬送対象物を保持するため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。また、保持部が上記のように配置されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができる。
【0014】
上記搬送対象物搬送方法において準備される搬送対象物搬送装置が、鉛直方向に上端と下端を有し、鉛直方向に移動可能な昇降部をさらに有しており、少なくとも一の保持部が昇降部の下部に固定されていることが好ましい。
【0015】
上記搬送対象物搬送方法は、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップの後であって、他の複数の保持部が搬送対象物を保持するステップの前に、昇降部が上昇するステップをさらに有することが好ましい。
【0016】
上記搬送対象物搬送方法は、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップの前に、昇降部が下降するステップをさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の搬送対象物搬送装置は、鉛直方向に移動可能な昇降部の下部に第2保持部が固定されていることで、第2保持部が搬送対象物を保持する位置やタイミングを調整しやすくすることができため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。また、第1保持部と第2保持部とが上記のように配置されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を保持しやすく、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができる。
【0018】
本発明の搬送対象物搬送方法は、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持した後に他の複数の保持部が搬送対象物を保持するため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。また、保持部が上記のように配置されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置であって、昇降部の下端が最も降下している状態を示す断面図を表す。
【
図2】
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置の底面図を表す。
【
図3】
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置であって、昇降部の下端が最も上昇している状態を示す断面図を表す。
【
図4】本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置の変形例であって、昇降部の下端が最も降下している状態を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図5】
図4に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置の底面図を表す。
【
図6】
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置に備えられている支持部の下端部の変形例を表す。
【
図7】
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置に備えられている昇降部の変形例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0021】
本発明の搬送対象物搬送装置の一実施態様は、搬送対象物を搬送する装置であって、搬送対象物を保持する複数の第1保持部と、鉛直方向に上端と下端を有し、鉛直方向に移動可能な昇降部と、昇降部の下部に固定されており、搬送対象物を保持する第2保持部と、を有しており、昇降部の下端側から観察したときに、第2保持部の少なくとも一部が、複数の第1保持部の図心をつないで形成される図形と重なるように配されている点に要旨を有する。本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置は、鉛直方向に移動可能な昇降部の下部に第2保持部が固定されていることで、第2保持部が搬送対象物を保持する位置やタイミングを調整しやすくすることができるため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。また、第1保持部と第2保持部とが上記のように配置されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を保持しやすく、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができる。
【0022】
まず、
図1~
図7を参照して、搬送対象物搬送装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置であって、昇降部の下端が最も降下している状態を示す断面図を表す。
図2は、
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置の底面図を表す。
図3は、
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置であって、昇降部の下端が最も上昇している状態を示す断面図を表す。
図4は、本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置の変形例であって、昇降部の下端が最も降下している状態を示す側面図(一部断面図)を表しており、昇降部と第2保持部については断面を表し、その他は側面を表している。
図5は、
図4に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置の底面図を表す。
図6は、
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置に備えられている支持部の下端部の変形例を表す。
図7は、
図1に示す本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置に備えられている昇降部の変形例を表す。
図1、
図3、
図4、
図6、
図7において紙面上側が鉛直方向の上方に相当し、紙面下側が鉛直方向の下方に相当する。
図2、
図5は、紙面手前側が鉛直方向の下方に相当し、紙面奥側が鉛直方向の上方に相当する。本図面においては、水平方向をx、鉛直方向をyで示している。水平方向xは鉛直方向yに垂直な方向であるが、本図面では紙面左右方向の垂直方向xのみを矢印で示している。以下では、搬送対象物搬送装置1を単に装置1と称することがある。
【0023】
本明細書内において、各部材の上部とは各部材のうちの鉛直方向の上方側半分を指し、各部材の下部とは各部材のうちの鉛直方向の下方側半分を指す。
【0024】
装置1は、搬送対象物を搬送する装置である。搬送対象物の形状は特に限定されるものではないが、例えば、袋状、立方体や直方体などの箱状のものなどがあげられる。搬送対象物の重さについても特に限定されるものではない。搬送対象物のより具体的な例としては、例えば、ハンドドライヤーや電子レンジなどの家電製品が段ボールで形成された箱で包装された家電製品包装体や、シリンジやカテーテルなどの医療用具が袋で包装された医療用具包装体などがあげられる。
【0025】
装置1は第1保持部11を有している。第1保持部11は、搬送対象物を保持する部分であって、装置1に複数備えられている。
【0026】
第1保持部11の形状は、特に限定されないが、例えば、多角柱状、円錐状、円錐台状、多角錐台状や板状など、種々の形状にすることができる。
図1、
図2、
図4、
図5に示すように円柱状であってもよい。
【0027】
第1保持部11を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、シリコン樹脂などの合成樹脂、天然樹脂、ゴム、金属、磁石等があげられる。
【0028】
第1保持部11は、搬送対象物を保持することができる構成であればよい。例えば、第1保持部11が外部のエアを吸引する孔を有しており、その吸引力によって搬送対象物を吸着して搬送対象物を保持するものであってもよい。吸引力によって搬送対象物を吸着する場合は、搬送対象物の吸着性向上の観点から、第1保持部11は可撓性を有する材料で構成されていることが好ましく、例えば、シリコン樹脂やゴム等で構成されていることが好ましい。
【0029】
搬送対象物に押し付けることで吸着する機能を有している吸盤を、第1保持部11として使用することもできる。この場合、第1保持部11の形状は円錐状や円錐台状であって、その下端部に窪みが形成されていることが好ましい。下端部を搬送対象物に押し付けて窪みの内部からエアを押し出し、真空に近い状態にして、圧力の差を利用して搬送対象物を吸着することができる。
【0030】
第1保持部11は、その下端部にエアを吹き出す孔を有しており、そのエアを搬送対象物に吹き付けることで気流を発生させ、非接触で搬送対象物を保持するものであってもよい。
【0031】
図示しないが、第1保持部の下端部の向く方向を変更するため、第1保持部の上部や上端部に蛇腹構造を有していてもよい。これにより、搬送対象物の形状に合わせて第1保持部の下端部の向きを変えることができるため、搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0032】
第1保持部11は、電磁石や永久磁石のように、磁力によって搬送対象物を吸着して保持するものであってもよい。第1保持部11として電磁石や永久磁石を用いる場合は、
図6に示すように、後述する支持部30は、支持部30の下部若しくは下端部に、加わる荷重を受け、所定の軸を中心に回転するように構成されている軸受33を有していることが好ましい。これにより、搬送対象物の形状に合わせて第1保持部11の下端部の向きを変えることができるため、搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0033】
装置1は、後述する昇降部20の下部に固定されており、搬送対象物を保持する第2保持部12を有している。第2保持部12は昇降部20の下端部に固定されていることが好ましく、第2保持部12は昇降部20の下端22に固定されていることがより好ましい。第2保持部12は装置1に1つのみ備えられていてもよいし、複数備えられていてもよい。第2保持部12の形状、第2保持部12を構成する材料、第2保持部12の具体的な構成例については第1保持部11についての説明を参照することができる。
【0034】
第2保持部12として電磁石や永久磁石を用いる場合は、
図7に示すように、昇降部20は、昇降部20の下部若しくは下端部に、加わる荷重を受け、所定の軸を中心に回転するように構成されている軸受23を有していることが好ましい。これにより、搬送対象物の形状に合わせて第2保持部12の下端部の向きを変えることができるため、搬送対象物を保持しやすくなり、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送しやすくすることができる。
【0035】
装置1は、鉛直方向yに上端21と下端22を有し、鉛直方向yに移動可能な昇降部20を有している。
図1および
図3に示すように、昇降部20は、その下端22の位置が鉛直方向yに移動可能であることが好ましい。
【0036】
上述の通り、昇降部20の下部には第2保持部12が固定されている。鉛直方向yに移動可能な昇降部20の下部に第2保持部12が固定されていることで、第2保持部12が搬送対象物を保持する位置やタイミングを調整しやすくすることができる。このため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0037】
装置1が有している昇降部20としてアクチュエータを用いることができる。アクチュエータは、入力されたエネルギーを直線運動や揺動運動のようなさまざまな物理運動に変換することが可能な装置である。
【0038】
アクチュエータは、例えば、モータと、モータによって鉛直方向yに移動する機構で構成されることが可能である。モータとしては、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、油圧モータ、空気圧モータ、同期モータ、ステッピングモータなどがあげられる。
【0039】
アクチュエータは、空気圧によってシリンダ内のピストンを鉛直方向yに移動させる空気圧シリンダ、油圧によってシリンダ内のピストンを鉛直方向yに移動させる油圧シリンダ、水圧によってシリンダ内のピストンを鉛直方向yに移動させる水圧シリンダであってもよい。
【0040】
図示しないが、昇降部は、ロープや鎖などのひも状の部材を含むものであっても構わない。例えば、ひも状の部材の上部もしくは上端部にモータを設け、当該ひも状の部材の下部もしくは下端部に第2保持部12として磁石を固定する。ひも状の部材をモータの回転によって巻き取るなどすることによって、第2保持部12を鉛直方向yに移動させることができる。
【0041】
図1、
図2、
図4、
図5では、昇降部20が1つのみ設けられ、1つの昇降部20に第2保持部12が1つのみ固定されている例を示したが、昇降部および第2保持部の数はこれに限定されるものではない。図示しないが、例えば、1つの昇降部に2つ以上の第2保持部が固定されていてもよい。また、搬送対象物搬送装置が、2つ以上の第2保持部と、第2保持部と同じ数の昇降部を有しており、それぞれの第2保持部がそれぞれの昇降部に固定されていてもよい。
【0042】
図示しないが、第2保持部がエアの吸引によって搬送対象物を吸着するもので、第2保持部がエアを吸引するための孔を有しているような場合は、当該エアが通過するための流路が昇降部に形成されていてもよい。
【0043】
図1、
図2、
図4、
図5に示すように、装置1は、昇降部20の下端22側から観察したときに、第2保持部12の少なくとも一部が、複数の第1保持部11の図心11cをつないで形成される図形11sと重なるように配されている。図形11sは、
図2、
図5に示すように、複数の第1保持部11の図心11c同士をつないだ線分によって形成される図形である。
【0044】
図1、
図2では、第1保持部11が2つ、第2保持部12が1つ設けられている例を示している。
図2に示すように、この例では、2つの第1保持部11の図心11c同士を結んだ線分が上述の図形11sに相当し、第2保持部12の一部が図形11sと重なるように配されている。
【0045】
図4、
図5では、第1保持部11が3つ、第2保持部12が1つ設けられている例を示している。
図5に示すように、この例では、3つの第1保持部11の図心11c同士を結んで形成された三角形が上述の図形11sに相当し、第2保持部12の少なくとも一部が図形11sと重なるように配されている。
図5に示すように、第2保持部12の全体が図形11sと重なるように配されていてもよい。図示しないが、第2保持部の一部のみが3つの第1保持部の図心同士を結んで形成された図形と重なるように配されていてもよい。
【0046】
上記では、第1保持部が2つの例と3つの例を示したが、第1保持部の数はこれに限定されることはなく、搬送対象物の大きさや重量に合わせて適宜設定することができる。なお、複数の第1保持部の図心をつないで図形を形成する際に、複数パターンの図形を形成し得るような場合には、形成され得る全ての図形が上述した複数の第1保持部の図心をつないで形成される図形に該当する。
【0047】
上述のように、昇降部20の下端22側から観察したときに、第2保持部12の少なくとも一部が、複数の第1保持部11の図心11cをつないで形成される図形11sと重なるように配されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を保持しやすく、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができる。
【0048】
装置1は、第2保持部12が搬送対象物を保持した後で第1保持部11が搬送対象物を保持するように制御する制御部をさらに有していることが好ましい。上記のように、第2保持部12が搬送対象物を保持した後に第1保持部11が搬送対象物を保持することにより、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0049】
第1保持部11と第2保持部12がそれぞれエアを吸引するための孔を有しているような場合は、まず、第2保持部12のみが吸引を開始し、第1保持部11が吸引を開始しないように制御することによって、第2保持部12のみに搬送対象物を保持させることができる。その後、第2保持部12には吸引を継続させ、第1保持部11が吸引を開始するように制御することによって、第1保持部11に搬送対象物を保持させることができる。
【0050】
第1保持部11と第2保持部12が電磁石であるような場合は、まず、第2保持部12のみに磁力を発生させ、第1保持部11には磁力を発生させないように制御することによって、第2保持部12のみに搬送対象物を保持させることができる。その後、第2保持部12には磁力の発生を継続させ、第1保持部11が磁力を発生するように制御することによって第1保持部11に搬送対象物を保持させることができる。
【0051】
第1保持部11の下端112の鉛直方向yにおける位置は、搬送対象物の形状に合わせて適宜設定することができる。装置1が有している第1保持部11の下端112の位置は全て同じ位置であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
第2保持部12の下端122の鉛直方向yにおける位置は、搬送対象物の形状に合わせて適宜設定することができる。装置1が有している第1保持部11の下端112の位置と第2保持部12の下端122の位置は同じ位置であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
図1に示すように、装置1は、昇降部20の下端22が最も降下している状態において、第2保持部12は第1保持部11よりも下方に位置していることが好ましい。装置1は、昇降部20の下端22が最も降下している状態において、第2保持部12の下端122が第1保持部11の下端112よりも下方に位置していてもよいが、第2保持部12全体が第1保持部11の下端112よりも下方に位置していることがより好ましい。上記のような構成とすることによって、第2保持部12が搬送対象物を保持する位置やタイミングを調整しやすくすることができる。このため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0054】
搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分とその周囲の部分に厚みの差がないような場合、
図3に示すように、装置1は、昇降部20の下端22が最も上昇している状態において、鉛直方向yにおける第2保持部12の下端122の位置と鉛直方向yにおける第1保持部11の下端112の位置が同じであることが好ましい。上記のような構成とすることによって、搬送対象物を保持しやすく、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送しやすくすることができる。
【0055】
なお、図示しないが、搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分がその周囲の厚みよりも厚いような場合は、昇降部20の下端22が最も上昇している状態において、鉛直方向yにおける第2保持部12の下端122の位置は鉛直方向yにおける第1保持部11の下端112の位置よりも上方に位置していてもよい。これにより、搬送対象物を保持しやすく、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送しやすくすることができる。
【0056】
装置1は、さらに支持部30を有していることが好ましい。支持部30は、装置1に設けられる部材が固定される部分である。
【0057】
支持部30の形状は、特に限定されないが、例えば、
図1、
図2、
図4、
図5に示すように、第1保持部11の数だけ下方側に分岐している形状にすることができる。
【0058】
図示しないが、第1保持部と第2保持部がエアの吸引によって搬送対象物を吸着するもので、第1保持部と第2保持部がそれぞれエアを吸引するための孔を有しているような場合は、当該エアが通過するための流路が支持部に形成されていてもよい。
【0059】
支持部30を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、合成樹脂、天然樹脂、ゴム、金属、磁石等があげられる。
【0060】
昇降部20の上部が支持部30に固定されていることが好ましく、昇降部20の上端部が支持部30に固定されていることがより好ましく、昇降部20の上端21が支持部30に固定されていることがさらに好ましい。
【0061】
第1保持部11が支持部30に固定されていることが好ましく、第1保持部11の上端部が支持部30に固定されていることがより好ましく、第1保持部11の上端111が支持部30に固定されていることがさらに好ましい。なお、第2保持部12は支持部30には固定されない。
【0062】
図示しないが、支持部の上部若しくは上端部は、搬送対象物を搬送するための搬送ロボットに接続されていることが好ましい。
【0063】
ここまで、本発明の実施の形態に係る搬送対象物搬送装置について説明した。次に、
図1~
図7を参照しながら本発明の搬送対象物搬送方法について説明する。
【0064】
本発明の搬送対象物搬送方法の一実施態様は、搬送対象物を搬送する方法であって、搬送対象物を保持する3個以上の保持部10を有しており、鉛直方向yから観察したときに、少なくとも一の保持部の少なくとも一部が他の複数の保持部の図心11cをつないで形成される図形11sと重なるように配されている搬送対象物搬送装置1を準備するステップS1と、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップS2、他の複数の保持部が搬送対象物を保持するステップS3と、を有しており、少なくとも一の保持部が搬送対象物を保持するステップS2は、他の複数の保持部が搬送対象物を保持するステップS3よりも先に実行される点に要旨を有する。
【0065】
ステップS1では、例えば、
図1、
図2、
図4、
図5に示すような装置1を準備する。
図1、
図2、
図4、
図5に示されている装置1の場合は、第2保持部12が少なくとも一の保持部10に相当し、第1保持部11が他の複数の保持部10に相当する。
【0066】
ステップS2では、少なくとも一の保持部10が搬送対象物を保持する。
図1、
図2、
図4、
図5に示されている装置1の場合は、第2保持部12が搬送対象物を保持する。
【0067】
ステップS3では、ステップ2で搬送対象物を保持した保持部10とは異なる他の複数の保持部10が搬送対象物を保持する。
図1、
図2、
図4、
図5に示されている装置1の場合は、第1保持部11が搬送対象物を保持する。
【0068】
上記ステップS1~S3を有する搬送対象物搬送方法は、少なくとも一の保持部10が搬送対象物を保持した後に他の複数の保持部10が搬送対象物を保持するため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。また、保持部10が上記のように配置されていることにより、重量のバランスをとりやすくすることができるため、搬送対象物を搬送している時に空気抵抗が発生しても安定して搬送対象物を搬送することができる。
【0069】
上記搬送対象物搬送方法において準備される搬送対象物搬送装置1が、鉛直方向yに上端21と下端22を有し、鉛直方向yに移動可能な昇降部20をさらに有しており、少なくとも一の保持部10が昇降部20の下部に固定されていることが好ましく、昇降部20の下端部に固定されていることがより好ましく、昇降部20の下端21に固定されていることがさらに好ましい。
図1、
図2、
図4、
図5に示す搬送対象物搬送装置1の場合、第2保持部12が昇降部20の下部に固定されている少なくとも一の保持部10に相当する。鉛直方向yに移動可能な昇降部20の下部に少なくとも一の保持部10が固定されていることで、少なくとも一の保持部10が搬送対象物を保持する位置やタイミングを調整しやすくすることができる。このため、搬送対象物に上述したような傾斜があったとしても搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0070】
上記搬送対象物搬送方法は、少なくとも一の保持部10が搬送対象物を保持するステップS2の後であって、他の複数の保持部10が搬送対象物を保持するステップS3の前に、昇降部20が上昇するステップS4をさらに有することが好ましい。
【0071】
搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分がその周囲の厚みよりも厚いような場合は、ステップS4では、昇降部が上昇することにより、少なくとも一の保持部の下端が他の複数の保持部の下端よりも上方に位置することが好ましい。少なくとも一の保持部の下端が他の複数の保持部の下端よりも上方に位置することにより、搬送対象物の外径に沿って第1保持部の下端が当接しやすくすることができる。このため、搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0072】
搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分とその周囲の部分に厚みの差がないような場合は、ステップS4では、
図3に示すように、昇降部20が上昇することにより、少なくとも一の保持部10の下端が他の複数の保持部10の下端と同じ位置になることが好ましい。例えば、
図1に示すように、昇降部20の下端22が最も降下している状態で少なくとも一の保持部10に相当する第2保持部12が搬送対象物を保持し、その後に、昇降部20が上昇することによって、他の複数の保持部10に相当する第1保持部11の下端111と搬送対象物とが当接しやすくなる。これにより、他の複数の保持部10が搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0073】
上記搬送対象物搬送方法は、搬送対象物搬送装置1を準備するステップS1の後であって、少なくとも一の保持部10が搬送対象物を保持するステップS2の前に、昇降部20が下降するステップS5をさらに有することが好ましい。
【0074】
搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分がその周囲の厚みよりも厚いような場合は、ステップS5では、
図1および
図4に示すように、昇降部20が下降することにより、少なくとも一の保持部10に相当する第2保持部12の下端122が他の複数の保持部10に相当する第1保持部11の下端112よりも下方に位置することが好ましい。少なくとも一の保持部10の下端が他の複数の保持部10の下端よりも下方に位置することにより、少なくとも一の保持部10のみが搬送対象物を保持しやすくすることができる。このため、上述したような傾斜がある搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【0075】
搬送対象物を側面から観察したときに、平面視における搬送対象物の中央部分とその周囲の部分に厚みの差がないような場合であっても、ステップS5を有していることで、少なくとも一の保持部10のみによって搬送対象物を保持しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:搬送対象物搬送装置
10:保持部
11:第1保持部
11c:図心
11s:図心をつないで形成される図形
111:第1保持部の上端
112:第1保持部の下端
12:第2保持部
121:第2保持部の上端
122:第2保持部の下端
20:昇降部
21:昇降部の上端
22:昇降部の下端
23:軸受
30:支持部
33:軸受