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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086284
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】マットレス装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/02 20060101AFI20230615BHJP
   A61G 7/047 20060101ALI20230615BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20230615BHJP
   A47C 31/10 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61G7/02
A61G7/047
A47C27/00 E
A47C31/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200691
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】520350111
【氏名又は名称】合同会社ベターデイズラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】大岸 誠治
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AC11
4C040AA11
4C040AA26
4C040CC10
4C040FF01
4C040FF12
4C040FF17
4C040GG01
(57)【要約】
【課題】 被介護者の尿を簡易に処理することができるマットレス装置を提供する。
【解決手段】 マットレス装置は、第1幅及び第1長さに形成された第1マットレス(22)と、第2幅及び第2長さに形成された第2マットレス(23)と、第1マットレスと第2マットレスとの間に配置され第3幅及び第3長さに形成された第3マットレス(24)と、第1マットレスと第2マットレスとの間に配置され第4幅及び第3長さに形成された第4マットレス(25)とを備える。さらにマットレス装置は、第5幅及び第3長さに形成された尿ガイド部(50)と、第1マットレスから第4マットレスをそれぞれ覆う防水機能を有するマットレスカバー(28)と、マットレスカバーで覆われた第1マットレスから第4マットレス並びに第3マットレスと第4マットレスとの間に配置される尿ガイド部を収納する収納シーツ(11,13,15)とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1幅及び第1長さに形成された第1マットレスと、
第2幅及び第2長さに形成された第2マットレスと、
前記第1マットレスと前記第2マットレスとの間に配置され、第3幅及び第3長さに形成された第3マットレスと、
前記第1マットレスと前記第2マットレスとの間に配置され、第4幅及び前記第3長さに形成された第4マットレスと、
第5幅及び前記第3長さに形成された尿ガイド部と、
前記第1マットレス、前記第2マットレス、前記第3マットレス及び前記第4マットレスをそれぞれ覆う、防水機能を有するマットレスカバーと、
前記マットレスカバーで覆われた前記第1マットレス、前記第2マットレス、前記第3マットレス及び前記第4マットレス、並びに前記第3マットレスと前記第4マットレスとの間に配置される前記尿ガイド部を収納する、収納シーツと、
を備えるマットレス装置。
【請求項2】
前記収納シーツが、長手方向の一端から前記第1長さの位置に形成された第1区分け部と、長手方向の他端から前記第2長さの位置に形成された第2区分け部と、を有する請求項1に記載のマットレス装置。
【請求項3】
前記収納シーツが、前記マットレスカバーで覆われた前記第1マットレスを収納する第1収納シーツと、前記マットレスカバーで覆われた前記第2マットレスを収納する第2収納シーツと、前記マットレスカバーで覆われた前記第3マットレス及び前記第4マットレスを収納する第3収納シーツと、を有し、
前記第2収納シーツの一端に、及び前記第3収納シーツの一端に、ベローズが形成されている請求項1に記載のマットレス装置。
【請求項4】
前記第3マットレス及び前記第4マットレスと前記収納シーツとの間に配置される、尿を貯める貯尿器をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマットレス装置。
【請求項5】
前記尿ガイド部は、幅方向もしくは長さ方向に傾く傾斜部を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマットレス装置。
【請求項6】
前記マットレス装置は、前記尿ガイド部の下方に、尿を貯める貯尿器を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマットレス装置。
【請求項7】
前記マットレスカバーは、撥水機能を有する第1の層と、
前記第1の層の裏面に設けられる第2の層と、
前記第2の層の裏面に設けられ、防水機能を有する第3の層と、を有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のマットレス装置。
【請求項8】
前記収納シーツが、防水機能を有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のマットレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿を簡易に処理することができるマットレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢や怪我・病気などによって身体的な不自由を抱えた人又は幼児(以下、被介護者という。)は、寝具で寝ている場合、マットレス装置に寝たままの状態で排尿することが多い。このため被介護者におむつ及びおむつカバーを履かせたりしている。しかしおむつ及びおむつカバーから,尿が漏れてしまい、寝具、特に被介護者の下に配置されているマットレス装置に尿が漏れ出ることも多い。このため特許文献1及び特許文献2等のマットレス装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-136926号公報
【特許文献2】国際公開2018/154769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されるマットレス装置は、被介護者の股間部に排泄物受け具を装着するものであるため、被介護者は寝返りなど動きにくく、また装着の手間も必要である問題がある。さらに特許文献2で提案されるマットレス装置は、 被介護者の意思で排尿する場合にマットレスから降りることなく尿を処理できるが、被介護者が痴ほう症であったり意識がなかったりすると、特許文献2で提案されるマットレス装置は利用できない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、被介護者の尿を簡易に処理することができるマットレス装置を提供する。
本実施形態のマットレス装置は、第1幅及び第1長さに形成された第1マットレスと、第2幅及び第2長さに形成された第2マットレスと、第1マットレスと第2マットレスとの間に配置され第3幅及び第3長さに形成された第3マットレスと、第1マットレスと第2マットレスとの間に配置され第4幅及び第3長さに形成された第4マットレスとを備える。さらにマットレス装置は、第5幅及び第3長さに形成された尿ガイド部と、第1マットレス、第2マットレス、第3マットレス及び第4マットレスをそれぞれ覆う、防水機能を有するマットレスカバーと、マットレスカバーで覆われた第1マットレス、第2マットレス、第3マットレス及び第4マットレス、並びに第3マットレスと第4マットレスとの間に配置される尿ガイド部を収納する収納シーツとを備える。
【0006】
またマットレス装置の収納シーツは、長手方向の一端から第1長さの位置に形成された第1区分け部と、長手方向の他端から第2長さの位置に形成された第2区分け部と、を有することが好ましい。
また収納シーツが、マットレスカバーで覆われた第1マットレスを収納する第1収納シーツと、マットレスカバーで覆われた第2マットレスを収納する第2収納シーツと、マットレスカバーで覆われた第3マットレス及び第4マットレスを収納する第3収納シーツとを有し、第2収納シーツの一端に、及び第3収納シーツの一端にベローズが形成されていても良い。
【0007】
また本実施形態のマットレス装置は、第3マットレス及び第4マットレスと収納シーツとの間に配置される、尿を貯める貯尿器をさらに備えてもよい。
また尿ガイド部は、幅方向もしくは長さ方向に傾く傾斜部を含んでもよい。
マットレス装置は、尿ガイド部の下方に、尿を貯める貯尿器を有してもよい。
【0008】
本実施形態のマットレスカバーは、撥水機能を有する第1の層と、第1の層の裏面に設けられる第2の層と、第2の層の裏面に設けられ防水機能を有する第3の層とを有することが好ましい。
また収納シーツは、防水機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この実施形態のマットレス装置は、被介護者の尿を簡易に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は、本実施形態のマットレス装置10Aを示す斜視図である。(B)は、本実施形態の別のマットレス装置10Bを示す斜視図である。
図2】(A)は、本実施形態の別のマットレス装置10Cを示す斜視図である。(B)は、マットレス装置10Cに使用される第1収納シーツと第2収納シーツとを離して配置した図であり、(C)はマットレス装置10Cに使用される第1収納シーツと第2収納シーツと第3収納シーツとをY軸方向から見て折り曲げて使用した例を示す図である。
図3】実施形態のマットレス20(22,23,24,25)を示す図であり、(A)はマットレス20の平面図であり、(B)は、(A)のB-B断面図であり、(C)及び(D)は、マットレス20の拡大断面図である。
図4】(A)は、図1のマットレス装置10Bからマットレス20と第1尿ガイド部50を取り除いた斜視図である。(B)は、第1尿ガイド部50と貯尿器40とを取り付けた斜視図である。
図5】(A)は、従来のマットレス装置で尿が漏れ出た状態を示す概念図であり、(B)は、本実施形態のマットレス装置10Bで尿が漏れ出た状態を示す概念図である。
図6】(A)は、貯尿器40Aの平面図と側面図である。(B)は、貯尿器40Bの平面図と側面図である。
図7】(A)から(E)は、第1尿ガイド部50Aから第1尿ガイド部50Eの正面図と側面図である。
図8】(A)から(E)は、第1尿ガイド部60Aから第1尿ガイド部60Eの正面図と側面図である。
図9】(A)は、図1のマットレス装置10Aからマットレス20を取り除き、第2尿ガイド部70を取り付けた斜視図である。(B)は、第2尿ガイド部70Aの正面図と側面図である。(B)は、第2尿ガイド部70Bの正面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るマットレス装置について説明する。また、以下の説明では、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、説明に用いる各図は発明を理解できる程度に概略的に示してあり、大きさ、角度又は厚み等が誇張されている箇所もある。
【0012】
<<マットレス装置に関して>>
【0013】
図1(A)、(B)及び図2(A)は、本実施形態に係るマットレス装置10(10A、10B,10C)を示す斜視図である。マットレス装置10は、直方体状であり、被介護者があおむけに寝た姿勢(仰臥位)で頭側が+X軸方向で脚側が-X軸方向になるように使用される。マットレス装置10は、シングル用で長辺方向(X軸方向)の長さL1が例えば210cmで短辺方向(Y軸方向)の幅W1が100cmである。セミダブル、ダブルサイズのように幅W1を大きなサイズにすることもできるし、幼児用もしくは子供用に長さL1及び幅W1を短くしてもよい。またマットレス装置10の厚さD1は、3cmから30cm程度である。マットレス装置10A,10B,10Cは、後述するように区分け部の有無、ベローズの有無でそれぞれ異なる。
【0014】
マットレス装置10は、収納シーツ(11,13,15)と、マットレス20(22,23,24,25)と、尿ガイド部(50,60,70(図9を参照))とを有している。またマットレス装置10は、尿を貯める貯尿器40(図4を参照)さらに有してもよい。
【0015】
<収納シーツに関して>
収納シーツ(11,13,15)は、防水機能を有しているシートで形成されることが好ましい。防水機能を有しているシートは、PVC(ポリ塩化ビニル)系シート、加硫ゴム系シート、非加硫ゴム系シート、エチレン酢酸ビニル樹脂系シート、熱可塑性エラストマー系シートなど及びそれらの複合シートの材料が使用される。また布地に撥水機能・防水機能を付加させたシートであってもよい。実施形態により収納シーツ(11,13,15)は、防水機能を有していなくてもよい。
【0016】
図1(A)及び図9(A)に示される、収納シーツ11は、シーツ底面11aとシーツ底面11aの4辺に設けられたシーツ壁面11bとを含む。底面11aの長さL1は例えば210cmで幅W1が100cmであり、シーツ壁面11bの高さD1は例えば10cmである。
【0017】
図1(B)及び図4(A)に示される、収納シーツ13は、シーツ底面13aとシーツ底面13aの4辺に設けられたシーツ壁面13bとを含み、さらに2つの区分け部13cを含む。収納シーツ13の長さL1が210cmであれば、区分け部13cは、長手方向の一端から長さL2が70cmの位置に、長手方向の他端から長さL3が70cm(L4=70cm)の位置に均等位置に形成されていてもよい。また、区分け部13cは、例えば長さL2が80cmの位置に、長さL3が60cmの位置(L4=70cm)に形成されていてもよい。
【0018】
図2(B)に示される、収納シーツ15は、第1収納シーツ15P、第2収納シーツ15Q及び第3収納シーツ15Rを含む。本実施形態では第2収納シーツ15Qと第3収納シーツ15Rとは構造・寸法・材料等は同一である。第1収納シーツ15P、第2収納シーツ15Q及び第3収納シーツ15Rは、それぞれシーツ底面15aとシーツ底面15aの4辺に設けられたシーツ壁面15bとを含む。そして図2(B)に示されるように、第1収納シーツ15Pのシーツ壁面15bの一辺の外側には、面ファスナーHLが設けられている。第2収納シーツ15Qのシーツ壁面15bの一辺の外側には、ベローズ15Sが設けられている。ベローズ15Sは、山折り又は谷折りの収納を有する蛇腹15SSを含み、蛇腹15SSの一端には面ファスナーHLが設けられている。ベローズ15Sも収納シーツ15と同じ材料または伸縮性ある材料で形成される。面ファスナーの代わりに、線上に並んだ歯が噛み合う線ファスナーであってもよく、スナップボタンなどの点ファスナーであってもよく、紐で縛っても良い。
【0019】
第1収納シーツ15P、第2収納シーツ15Q及び第3収納シーツ15Rは、それぞれ面ファスナーHLで互いに接続される。ベローズ15Sがあるため、図2(C)に示されるように、Y軸方向から観察して、不図示のベッド上もしくは床上で収納シーツ15を2箇所で折り曲げることができる。
【0020】
<マットレスに関して>
図1(A)、(B)及び図2(A)に示されるように、マットレス20は、第1マットレス22、第2マットレス23、第3マットレス24及び第4マットレス25を含む。第1マットレス22は、矩形形状であり、長さL2、幅W1、厚さD1の大きさである。第2マットレス23は、長さL4、幅W1、厚さD1の大きさである。第3マットレス24及び第4マットレス25は、長さL3、幅W2、厚さD1(又はD3)の大きさである。
【0021】
第3マットレス24と第4マットレス25との間には、尿ガイド部(50,60,70)が配置される。尿ガイド部(50,60,70)は幅W5もしくは幅W6を有するため、第3マットレス24又は第4マットレス25の幅W2は、第1マットレス22の幅W1の半分以下の幅になる。第3マットレス24又は第4マットレス25の下(-Z軸方向)には、貯尿器40(図4(B)を参照)が配置されることがあり、貯尿器40が配置される場合には、第3マットレス24又は第4マットレス25の厚さは、貯尿器40の厚さD2(図5を参照)を差し引いた厚さD3である。貯尿器40が配置されない場合には、第3マットレス24又は第4マットレス25の厚さは、厚さD1である。
【0022】
第1マットレス22、第2マットレス23、第3マットレス24及び第4マットレス25は、収納シーツ(11,13,15)内に押し込めて組み入れられる。組み入れられた第1マットレス22、第2マットレス23、第3マットレス24及び第4マットレス25は同じ厚さに、つまり、各マットレスの天面は均一で段差がないようにすることが好ましい。
【0023】
図3(A)に示されるように、マットレス20は、上下のマットレスカバー28で覆われる。図3(A)ではマットレスカバー28の周囲の縁edは熱溶着でマットレスカバー28の端部28eを塞いでいる。
【0024】
図3(B)に示されるように、マットレス20は、マットレスカバー28とその内側にクッション27とを備える。このクッション27は、クッションカバー27cとクッションカバー27c内に詰め込まれたクッション体27iとからなる。このクッション体27iで、マットレス装置10はZ軸方向に盛り上がる形状となる。
【0025】
クッションカバー27cは、例えば、綿、麻、レーヨン、シルク、羊毛、ナイロン、アクリルもしくはポリエステル等のメッシュ素材であり、又はそれら2種類以上を組み合わせた混紡素材でもよい。またクッションカバー27cは不織布に変更可能である。
【0026】
クッション体27iの材料は、例えば、真綿、木綿、ポリエステル綿、アクリル樹脂系綿、羽毛(羽根)又は羊毛等が挙げられるがこれに限られない。例えばクッション体27iは、アクリレート系繊維(吸水発熱体)、ポリウレタンもしくはスプリングコイル、又は熱可塑性樹脂からなるフィラメントを三次元的に融着結合させて得られる結合体などにも適宜変更可能である。
【0027】
本実施形態では、製造のしやすさからマットレスカバー28内部にクッション27(クッションカバー27cとクッション体27i)が入る構成である。しかし、クッションカバー27cを無くし、マットレスカバー28内部にポリウレタン又は三次元的な結合体などのクッション体27iを直接入れる構成であってもよい。
【0028】
図3(C)は、マットレスカバー28の周囲の縁edの拡大断面図である。理解を助けるため、図3(C)では各部材が分離されて描かれている。マットレスカバー28の端部28eから水などが入り込まないように、まずインナーリボン29siをクッション27の側面、つまり周囲に巻き付けられる。そして熱溶着等でインナーリボン29siがクッション27の側面に接着される。上側のマットレスカバー28の端28e及び下側のマットレスカバー28の縁28eは、クッション27の側面に折り畳まれ、熱溶着等でインナーリボン29siに接着される。次にアウターリボン29soをマットレスカバー28の縁28eを覆うように巻き付ける。そして熱溶着等でアウターリボン29soが側面のマットレスカバー28に接着される。熱溶着材は例えばEVA(エチレンビニルアセテート共重合体)のシームテープを使用してもよい。リボン29(インナーリボン29si及びインナーリボン29si)は、マットレスカバー28と同じ生地が好ましい。
【0029】
図3(D)は、マットレスカバー28の生地を拡大した拡大断面図である。
マットレスカバー28は、外側から撥水層28p、外生地層28q及び防水加工層28rからなる。マットレスカバー28の外生地層28qは、生きたダニが通過せず、またダニ等の死骸が細かくなったアレルゲンが通過しない高密度織物又は高密度不織布で形成されることが好ましい。例えば高密度織物は50デニールの糸を経緯1インチ間に380本程度(縦220本×横160本程度)織り込んだ生地で、織目の隙間が極めて小さい繊維である。例えば外生地層28qは、撥水加工(撥水層28p)及び防水加工(防水加工層28r)した後、孔径1μmから5μmの第1通風孔を有しており、このマットレスカバー28の第1通風孔の孔径は、空気を通すことができるが水滴等は通さない大きさである。外生地層28qの高密度織物又は高密度不織布の素材は、綿、麻、レーヨン、羊毛、アクリル、ナイロンもしくはポリエステル等の素材又はそれら2以上を組み合わせた混紡素材からなる。マットレスカバー28が高密度織物又は高密度不織布で形成されているので、マットレス20内部にアレルゲン等が入り込むことがない。
【0030】
マットレスカバー28の撥水層28pは、外生地層28qの外側面にPFOA(パーフルオロオクタン酸)フリーの短鎖フッ素(炭素数6以下、通称C6,C4等)の加工剤を塗布して形成されている。これら撥水の加工剤は、帝人フロンティア、小松セーレン、東洋紡STC等の企業から提供されている。本実施形態のマットレスカバー28は、JIS L 1092-2009 7.2にて4級(表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの)又は5級(表面に湿潤及び水滴の付着がないもの)の撥水機能を有していることが好ましい。
【0031】
マットレスカバー28の防水層28rは、外生地層28qの内側面にフッ素剤又は非フッ素剤を直接漬け込み、フッ素剤が外生地層28qの内側及び繊維に行き渡った後、ある程度乾燥させた状態で、特殊溶剤を噴霧して形成されている。特殊溶剤を噴霧することで、マットレスカバー28は1μmから5μmの孔径を有することになる。マットレスカバー28の防水層28r(撥水層28pが形成されていない状態)は、耐水圧300~500mm以上有していることが好ましい。なお、耐水圧500mmとは、防水層28rを有するマットレスカバー28の上に単位面積当たり500mmの高さまで水を乗せても下に水が漏れ出ないことを意味する。本実施形態のマットレスカバー28は、撥水層28pの撥水機能と防水層28rの防水機能とが相まって、耐水圧500~800mm以上になる。つまり、被介護者が尿漏れしたとしても、尿がマットレスカバー28を通過することはない。
【0032】
撥水層28p及び防水加工層28rを有するマットレスカバー28は、1μmから5μmの孔径を有しているため、JIS L 1096(フラジール形通気性試験)にて、200から10(cc/cm2・s)の通気度を有している。さらには50から20(cc/cm2・s)通気度を有していることが好ましい。使用者の就寝中に出る汗等の蒸気、又は空気中の湿気がマットレスカバー28の内部に入っても、マットレス20を家庭用乾燥機等で乾燥させることで、蒸気又は湿気がマットレスカバー28の外側に出る。なお、マットレスカバー28の縁28eを覆うリボン29も同じ生地であることが好ましい。
【0033】
本実施形態のマットレス20は、上述した機能及び構造を有するため、介護者はマットレス20を家庭で水洗いしたり乾燥させたりすることができる。より具体的には、介護者は、収納シーツ(11,13,15)からマットレス20を取り出し、マットレス20にシャワーをかけて撥水層28pの表面についた尿などを水洗いして、その後マットレス20を振れば撥水層28pから水滴が飛び、簡易に乾かすことができる。また、タオルなどで水滴を拭うことでも乾燥時間の短縮を図ることが可能となる。長期使用により撥水層28pの機能が落ちても防水加工層28rがあるため、シャワーなどの水滴がクッション27にまで到達することもない。第3マットレス24及び第4マットレス25が例えば70cm×50cm×10cmでコンパクトに折り畳むことができれば、コインランドリーもしくは家庭の乾燥機に入れることができ、撥水機能の回復を図ることができる。
【0034】
なお、図1から図2に示された第1マットレス22及び第2マットレス23は、第3マットレス24及び第4マットレス25のほぼ2倍の大きさである。しかしながら、第1マットレス22及び第2マットレス23は、半分に分割して、第3マットレス24又は第4マットレス25と同様な大きさにしても良い。また、図1から図2に示された第1マットレス22及び第2マットレス23には、尿ガイド部(50,60,70)が配置されていないが、尿ガイド部(50,60,70)が、配置されてもよい。このような場合には、マットレス20(第1マットレス22から第4マットレス25)が基本的にほぼ同じ大きさになり、マットレス20の製造コストを下げることができる。
【0035】
<貯尿器に関して>
図4(A)は、マットレス装置10Bからマットレス20等を取り除いた、収納シーツ13の斜視図である。図4(B)は、その収納シーツ13の2つの区分け部13cで区分けされた中央の底面13aに貯尿器40と第1尿ガイド部50とを取り付けた斜視図である。被介護者が尿漏れした際に、貯尿器40は尿を貯める機能を有する。また第1尿ガイド部50は被介護者から漏れた尿を貯尿器40までガイドする機能を有する。図4(A)及び(B)では、収納シーツ13を用いた例を示しているが、図1(A)で示された収納シーツ11もしくは図2(A)で示された収納シーツ15にも適用できる。
【0036】
貯尿器40は、枠板42と枠板に形成された凹み部43とを含む。図5を使用して、被介護者から漏れた尿が貯尿器40の凹み部43に貯まる仕組みを簡単に説明する。
【0037】
図5(A)は、従来のマットレス装置2で被介護者から尿Uが漏れ出た状態を示す概念断面図である。従来のマットレス装置2にあおむけに寝た姿勢の被介護者の体重により、特に被介護者の臀部HBの付近ではマットレス装置2が凹んでいる。この状態で、介護者が尿Uを漏らすと、臀部HBの周囲、特に下側に尿Uが貯まったり、その貯まった尿Uが従来のマットレス装置2に染み込んでいったりする。介護者はマットレス装置2の洗濯などが必要となる。
【0038】
図5(B)は、本実施形態のマットレス装置10Bで尿が漏れ出た状態を示す概念断面図である。あおむけに寝た姿勢の被介護者の体重により、被介護者の臀部HBの付近で第3マットレス24及び第4マットレス25が凹んでいる。この状態で、介護者が尿Uを漏らすと、臀部HBの周囲から、第3マットレス24と第1尿ガイド部50との隙間、または第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間、または第1尿ガイド部50のガイド溝・穴などを介して、尿Uが貯尿器40に流れていき、尿Uが凹み部43に貯まる。第3マットレス24及び第4マットレス25は、上述したように防水機能を有しているマットレスカバー28に覆われているので、尿Uが第3マットレス24及び第4マットレス25に染み込むことはない。貯尿器40の凹み部43が底を有する場合には凹み部に尿Uが貯められ、凹み部43が底を有さない孔である場合には、収納シーツ13を底にして尿Uが貯められる。貯尿器40の凹み部43が底を有する場合には、収納シーツ(11,13,15)は、防水機能を有していなくてもよい。
【0039】
図6(A1)は貯尿器40Aの平面図であり、(A2)はその側面図である。図6(B1)は別の貯尿器40Bの平面図であり、(B2)はその側面図である。貯尿器40A及び貯尿器40Bは、いずれも発泡ポリプロピレン(EPP)、シリコンフォーム、ゴムシート、硬質(もしくは半硬質)ウレタンフォーム、又はスチレンフォーム等の材料から形成される。尿Uを貯めるため、液体を透過させない材料が好ましい。また被介護者の寝心地をよくするため、貯尿器40の硬さやクッション性は、第3マットレス24もしくは第4マットレス25の硬さやクッション性と近似する材料が好ましい。
【0040】
貯尿器40Aは、長さL3、幅W1及び厚さD2の枠板42からなり、枠板42に形成された矩形形状の2つの凹み部43を有する。凹み部43は、貫通孔又は不貫通孔(底が有り)のいずれでもよい。貯尿器40Bは、長さL3、幅W1及び厚さD2の枠板42からなり、枠板42に形成されたタル形状の1つの凹み部46を有する。凹み部46は、貫通孔又は不貫通孔(底が有り)のいずれでもよい。このように凹み部43もしくは凹み部46の形状又は個数はこれらに限られるものではなく、被介護者が漏らす尿を貯めることができる大きさにすればよい。なお、枠板42は、収納シーツ13の2つの区分け部13c間にちょうど入る大きさに形成されているが、より短い長さと短い幅であってもよい。
【0041】
<第1尿ガイド部に関して その1>
図7及び図8は、第1尿ガイド部50又は第1尿ガイド部60の例示を示した図である。第1尿ガイド部50又は第1尿ガイド部60は清掃作業の観点から液体を透過させない材料が好ましいが、液体を透過させる通液性の材料でも良い。例えば、第1尿ガイド部50又は第1尿ガイド部60は、発泡ポリプロピレン(EPP)、シリコンフォーム、ゴムシート、軟質、半硬質もしくは硬質ウレタンフォーム、又はスチレンフォーム等の材料から形成される。また被介護者の寝心地をよくするため、第1尿ガイド部50又は第1尿ガイド部60の硬さやクッション性は、第3マットレス24もしくは第4マットレス25の硬さやクッション性と近似する材料が好ましい。
【0042】
図7(A1)から(E1)は第1尿ガイド部50の平面図であり、(A2)から(E2)はそれらの側面図である。第1尿ガイド部50Aから第1尿ガイド部50Eは、幅W5が1cmから6cmぐらいの薄板で形成され、それらの高さD3は、第3マットレス24又は第4マットレス25の厚さD3と同じである。第1尿ガイド部50Aは、天面51がすべて平坦であり、上述したように、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間から、または第1尿ガイド部50が通液性の材料であれば、尿Uが貯尿器40に流れていく。第1尿ガイド部50Aの天面51が平坦であるため、被介護者の寝心地も悪くなることはない。
【0043】
第1尿ガイド部50Bは、4つの傾斜部52と2つの平坦な天面53を含む。傾斜部52があることで、漏れた尿が、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間に流れやすくなる。
第1尿ガイド部50Cは、2つの傾斜部55と1つの平坦な天面54を含む。傾斜部55があることで、漏れた尿が、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間に流れやすくなる。
【0044】
第1尿ガイド部50Dは、2つの傾斜部57と1つの平坦な天面56を含む。第1尿ガイド部50Cの傾斜部55とは天地逆の傾きの傾斜部57があることで、漏れた尿が、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間に流れやすくなる。
第1尿ガイド部50Eは、3つの半円状部58と4つの平坦な天面59を含む。半円状部58があることで、漏れた尿が、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間に流れやすくなる。第1尿ガイド部50Bから第1尿ガイド部50Eにおいて、傾斜部の傾斜角度は1度から5度程度の緩やかな角度であってよい。
【0045】
図8(A1)から(E1)は第1尿ガイド部60の平面図であり、(A2)から(E2)はそれらの側面図である。第1尿ガイド部60Aから第1尿ガイド部60Eは、幅W6が4cmから20cmぐらいの厚板で形成され、それらの高さD3は、第3マットレス24又は第4マットレス25の厚さD3と同じである。第1尿ガイド部60Aは、切妻屋根形状61を有しており、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間から尿Uが貯尿器40に流れていく。
【0046】
第1尿ガイド部60Bは、切妻屋根形状61を有するとともに両側の側面には内側に凹んだ傾斜部62とその傾斜部62の端に内側に凹んだ垂直部63を有している。ガイド溝となる傾斜部62及び垂直部63があることで、漏れた尿が隙間に流れやすくなる。第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第1尿ガイド部50との隙間が小さく隙間では尿が流れにくい場合であっても、ガイド溝である傾斜部62及び垂直部63を介して、尿が下に流れる。
【0047】
第1尿ガイド部60Cは、切妻屋根形状61を有するとともに両側の側面には内側に凹んだ溝部64を含む。溝部64があることで、漏れた尿が下に流れやすくなる。
第1尿ガイド部60Dは、R(アール)屋根形状65を有するとともに側面が下に行けば行くほど外側に幅広くなる斜面66を含む。斜面66には傾斜部62が設けられてもよいし、傾斜部62が設けられなくてもよい。漏れた尿が、ガイド溝である斜面66及び傾斜部62を介して、尿が下に流れる。
第1尿ガイド部60Eは、幅方向の中央が凹んだ斜面67を有し、その斜面67の幅方向の中央に、ガイド垂直孔68及びガイド水平孔69を有している。図6(E1)に示されるように、ガイド垂直孔68及びガイド水平孔69は三カ所設けられているがこれに限るものではない。
【0048】
本実施形態では第1尿ガイド部50及び第1尿ガイド部60の種々の態様が示されたが、これらをそれぞれ組み合わせた形状であっても良い。例えば、図7(C)で示された第1尿ガイド部50Cに、図8(C)で示された溝部64を設けても良いし、図8(A)で示された第1尿ガイド部60Aに、図7(C)で示された2つの傾斜部55を設けても良い。
【0049】
<第2尿ガイド部に関して>
図9は、第2尿ガイド部70の例示を示した図である。第2尿ガイド部70は尿を貯める観点から液体を透過させない材料が好ましい。例えば、尿ガイド部70は、発泡ポリプロピレン(EPP)、シリコンフォーム、ゴムシート、半硬質もしくは硬質ウレタンフォーム、又はスチレンフォーム等の材料から形成される。また被介護者の寝心地をよくするため、尿ガイド部70の硬さやクッション性は、第3マットレス24もしくは第4マットレス25の硬さやクッション性と近似する材料が好ましい。
【0050】
図9(A)は、マットレス装置10Aからマットレス20を取り除いた、収納シーツ11の斜視図であり、その収納シーツ11の中央付近の底面11aに第2尿ガイド部70を取り付けた斜視図である。第2尿ガイド部70は、尿の流れをガイドする機能とともに尿を貯める機能を有する。このため、第1尿ガイド部50及び第1尿ガイド部60とは異なり、貯尿器40が無くてもよい。図9(A)では、収納シーツ11を用いた例を示しているが、図1(B)で示された収納シーツ13もしくは図2(A)で示された収納シーツ15にも適用できる。尿ガイド部70は、容器蓋71と容器蓋71に嵌め込まれる容器部79とを含む。介護者は、容器蓋71を取り外して、貯尿空間に貯められた尿を廃棄することができる。なお容器蓋71と容器部79とが一体化されてもよく、その場合には貯尿空間に通じる排尿口を設けても良い。
【0051】
第2尿ガイド部70A及び第2尿ガイド部70Bは、幅W6が4cmから15cmぐらいの厚板で形成され、それらの高さD1は、貯尿器40が配置されない場合の第3マットレス24又は第4マットレス25の厚さD1と同じである。第2尿ガイド部70Aの容器蓋71は、幅方向の中央が凹むように向かい合った2つの斜面72を有し、その2つの斜面72の中央に、ガイド垂直孔73を有している。またガイド垂直孔73は貯尿空間74につながっている。このため、漏れた尿は斜面72及びガイド垂直孔73を介して貯尿空間74に貯まる。なお、第3マットレス24もしくは第4マットレス25と第2尿ガイド部70との隙間から尿Uが漏れた場合には、収納シーツ11の底面11aに貯まる。
【0052】
第2尿ガイド部70Bの容器蓋71は、長さ方向の中央が凹むように向き合った2つの斜面75を有し、その斜面75の中央に、ガイド孔77を有している。またガイド孔77は貯尿空間74につながっている。このため、漏れた尿は斜面75及びガイド孔77を介して貯尿空間74に貯まる。
【符号の説明】
【0053】
10(10A,10B,10C) … マットレス装置
11,13,15 … 収納シーツ
20(22,23,24,25) … マットレス
27 … クッション
27c … クッションカバー、 27i … クッション体
28 … マットレスカバー
28P … 撥水層、 28q … 外生地層、 28r … 防水加工層
29 … リボン
50,60,70 … 尿ガイド部
52,55,57,62 … 傾斜部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9