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特開2023-86285リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086285
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20230615BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230615BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20230615BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/531
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200695
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菱井 順也
(72)【発明者】
【氏名】泉本 貴昭
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL07
5H029BJ14
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029DJ05
5H029DJ07
5H029HJ04
5H029HJ15
5H043BA19
5H043EA35
(57)【要約】
【課題】繰り返しの充放電による内部抵抗の増加を抑制することができるリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】負極板と、セパレータ120と、正極板と、が積層された積層体が捲回方向Zに捲回されて形成された捲回体20が電極体として構成されるリチウムイオン二次電池において、捲回体20は、捲回されたときの軸方向Xと直交する方向に加圧整形された扁平形状を呈し、軸方向Xにおける一方の端部において、負極基材層101の両面に負極合剤層が設けられず、負極基材層101における厚さ方向Yが振幅方向であり、かつ捲回方向Zが波長方向である波打ち形状を有する負極側集電部103を備え、軸方向Xにおける他方の端部において、正極基材層の両面に正極合剤層が設けられず、正極基材層における厚さ方向Yが振幅方向であり、かつ捲回方向Zが波長方向である波打ち形状を有する正極側集電部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極の基材である負極基材層と、前記負極基材層に設けられた負極合剤層と、を有する負極板と、
正極の基材である正極基材層と、前記正極基材層に設けられた正極合剤層と、を有する正極板と、
前記負極板と前記正極板との間に設けられたセパレータと、を備え、
前記負極板と、前記セパレータと、前記正極板と、が積層された積層体が捲回方向に捲回されて形成された捲回体が電極体として構成されるリチウムイオン二次電池であって、
前記捲回体は、
前記捲回されたときの軸方向と直交する方向に加圧整形された扁平形状を呈し、
前記軸方向における一方の端部において、前記負極基材層の両面に前記負極合剤層が設けられず、前記負極基材層における厚さ方向が振幅方向であり、かつ前記捲回方向が波長方向である波打ち形状を有する負極側集電部を備え、
前記軸方向における他方の端部において、前記正極基材層の両面に前記正極合剤層が設けられず、前記正極基材層における厚さ方向が振幅方向であり、かつ前記捲回方向が波長方向である波打ち形状を有する正極側集電部を備える
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記波打ち形状は、
前記負極合剤層または前記正極合剤層に近いほど、振幅が小さい形状であり、
前記負極合剤層または前記正極合剤層から遠いほど、振幅が大きい形状である
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記負極側集電部、および前記正極側集電部は、前記扁平形状の平面部分におけるそれぞれの上方において、前記リチウムイオン二次電池における外部端子と接続部で接続されており、
前記負極側集電部、および前記正極側集電部は、前記波打ち形状を前記接続部の下端よりも下方に有する
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記負極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記負極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記負極基材層の両方が前記波打ち形状を有することで、前記2つの前記負極基材層間の隙間の位置が、前記負極基材層における厚さ方向に変化し、
前記正極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記正極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記正極基材層の両方が前記波打ち形状を有することで、前記2つの前記正極基材層間の隙間の位置が、前記正極基材層における厚さ方向に変化する
請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記負極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記負極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記負極基材層間の隙間の値が、18μm以下である箇所を有し、
前記正極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記正極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記正極基材層間の隙間の値が、18μm以下である箇所を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
電極板に合剤層が塗工される塗工工程と、
前記合剤層が乾燥される乾燥工程と、
前記電極板の厚さが調整されるプレス工程と、
前記電極板である負極板と、セパレータと、前記電極板である正極板と、が重ねられた後、捲回されて捲回体が形成される捲回工程と、
前記捲回されたときの軸方向と直交する方向に前記捲回体が加圧整形される扁平プレス工程と、
を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記塗工工程において、前記合剤層が塗工された塗工部の幅方向における一端または両端に、前記合剤層が塗工されていない未塗工部が形成され、
前記プレス工程において、前記未塗工部の長手方向における伸び量が、前記塗工部の長手方向における伸び量よりも大きくなるように、前記塗工部への第1圧力の値と、前記未塗工部への第2圧力の値と、が設定される
リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記捲回工程において、前記負極板、および前記正極板に対して、前記未塗工部の長手方向における長さと、前記塗工部の長手方向における長さとが同じになるように、前記捲回体を形成するときの前記負極板、および前記正極板への張力が設定される
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記プレス工程において、前記未塗工部への前記第2圧力の値は、前記塗工部への前記第1圧力の値の1.2倍よりも大きい
請求項6または7に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板とセパレータと負極板とが重ねられた後、捲回されて形成された捲回体を備えるリチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された二次電池においては、陰極体と陽極体とが、セパレータを介して積層される。そして二次電池は、その積層された積層体が円筒状に巻回されて形成されているコンデンサ素子を備える。陰極体は負極板の一例であり、陽極体は正極板の一例であり、円筒状に巻回されて形成されているコンデンサ素子は捲回体の一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-56482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池においては、リチウム塩を溶解させた有機溶媒が、電解液として用いられているため、電解液は高いイオン伝導性を示す。充電時には、正極からリチウムイオンが放出され、そのリチウムイオンが電解液を通って負極に至り、負極に吸蔵される。このとき、捲回体は膨張する。放電時には、負極からリチウムイオンが放出され、そのリチウムイオンが電解液を通って正極に至り、正極に吸蔵される。このとき、捲回体は収縮する。
【0005】
大電流を瞬時に充電または放電するハイレート充放電においては、電極間で瞬時に多量のリチウムイオンが吸蔵および放出される必要がある。そのため、充電と放電との繰り返しに伴って、捲回体が大きく膨張と収縮とを繰り返す。充電時には、負極側において、リチウムイオンが負極に吸蔵され、放電時には、正極側において、リチウムイオンが正極に吸蔵されることで、捲回体における負極側および正極側の端部において、電解液のリチウム塩濃度が薄くなる。そして、そのリチウム塩濃度が薄くなった電解液が、捲回体の大きな膨張と収縮とによって、負極側および正極側の端部から捲回体外に押し出される。捲回体においては、その扁平に整形された形状によって、中央部と端部とで電解液の動き易さが異なる傾向がある。そのため、捲回体内における中央部と端部とで、電解液のリチウム塩濃度に差が発生する。これにより、放電時の内部抵抗が増加するため、リチウムイオン二次電池の電池性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するリチウムイオン二次電池は、負極の基材である負極基材層と、前記負極基材層に設けられた負極合剤層と、を有する負極板と、正極の基材である正極基材層と、前記正極基材層に設けられた正極合剤層と、を有する正極板と、前記負極板と前記正極板との間に設けられたセパレータと、を備え、前記負極板と、前記セパレータと、前記正極板と、が積層された積層体が捲回方向に捲回されて形成された捲回体が電極体として構成されるリチウムイオン二次電池であって、前記捲回体は、前記捲回されたときの軸方向と直交する方向に加圧整形された扁平形状を呈し、前記軸方向における一方の端部において、前記負極基材層の両面に前記負極合剤層が設けられず、前記負極基材層における厚さ方向が振幅方向であり、かつ前記捲回方向が波長方向である波打ち形状を有する負極側集電部を備え、前記軸方向における他方の端部において、前記正極基材層の両面に前記正極合剤層が設けられず、前記正極基材層における厚さ方向が振幅方向であり、かつ前記捲回方向が波長方向である波打ち形状を有する正極側集電部を備える。
【0007】
上記構成によれば、波打ち形状の凸部によって、捲回体の軸方向へ電解液が動き難くなることにより、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が、捲回体の外に出ていくことを抑制することができる。これにより、捲回体内におけるリチウム塩濃度ムラが抑制されるため、繰り返しの充放電による内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記波打ち形状は、前記負極合剤層または前記正極合剤層に近いほど、振幅が小さい形状であり、前記負極合剤層または前記正極合剤層から遠いほど、振幅が大きい形状である。
【0009】
上記構成によれば、負極合剤層または正極合剤層に近いほど振幅が小さく、負極合剤層または正極合剤層から遠いほど振幅が大きい波打ち形状は、容易に製造が可能な形状である。容易に製造が可能な波打ち形状の凸部によって、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が捲回体の外に出ていくことを抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記負極側集電部、および前記正極側集電部は、前記扁平形状の平面部分におけるそれぞれの上方において、前記リチウムイオン二次電池における外部端子と接続部で接続されており、前記負極側集電部、および前記正極側集電部は、前記波打ち形状を前記接続部の下端よりも下方に有する。
【0011】
上記構成によれば、リチウムイオン二次電池における外部端子と接続部で接続されていない部分である捲回体の下部から、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が捲回体の外に出ていくことを抑制することができる。
【0012】
上記構成は、前記負極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記負極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記負極基材層の両方が前記波打ち形状を有することで、前記2つの前記負極基材層間の隙間の位置が、前記負極基材層における厚さ方向に変化し、前記正極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記正極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記正極基材層の両方が前記波打ち形状を有することで、前記2つの前記正極基材層間の隙間の位置が、前記正極基材層における厚さ方向に変化する。
【0013】
上記構成によれば、隙間の位置が、負極基材層および正極基材層における厚さ方向に変化することで、隙間を通って電解液が捲回体の軸方向へ動くときの抵抗が大きくなる。そのため、基材層間の隙間から、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が捲回体の外に出ていくことを抑制することができる。
【0014】
上記構成は、前記負極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記負極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記負極基材層間の隙間の値が、18μm以下である箇所を有し、前記正極側集電部における前記扁平形状の平面部分において、前記正極基材層における厚さ方向に隣り合う2つの前記正極基材層間の隙間の値が、18μm以下である箇所を有する。
【0015】
上記構成によれば、基材層間の隙間の値が18μm以下である箇所において、基材層間の隙間から、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が捲回体の外に出ていくことをより抑制することができる。
【0016】
上記課題を解決するリチウムイオン二次電池の製造方法は、電極板に合剤層が塗工される塗工工程と、前記合剤層が乾燥される乾燥工程と、前記電極板の厚さが調整されるプレス工程と、前記電極板である負極板と、セパレータと、前記電極板である正極板と、が重ねられた後、捲回されて捲回体が形成される捲回工程と、前記捲回されたときの軸方向と直交する方向に前記捲回体が加圧整形される扁平プレス工程と、を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記塗工工程において、前記合剤層が塗工された塗工部の幅方向における一端または両端に、前記合剤層が塗工されていない未塗工部が形成され、前記プレス工程において、前記未塗工部の長手方向における伸び量が、前記塗工部の長手方向における伸び量よりも大きくなるように、前記塗工部への第1圧力の値と、前記未塗工部への第2圧力の値と、が設定される。
【0017】
上記製造方法によれば、基材層の集電部において、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が捲回体の外に出ていくことを抑制することができる波打ち形状を有する負極板、および正極板を形成することができる。そして、その波打ち形状を有する負極板、および正極板で捲回体を形成し、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0018】
上記製造方法は、前記捲回工程において、前記負極板、および前記正極板に対して、前記未塗工部の長手方向における長さと、前記塗工部の長手方向における長さとが同じになるように、前記捲回体を形成するときの前記負極板、および前記正極板への張力が設定される。
【0019】
上記製造方法によれば、プレス工程後のスリット工程において曲がった負極板、および正極板を、厚さ方向からの平面視において略矩形形状を呈する負極板、および正極板に形成することができる。そして、基材層の集電部において波打ち形状を有する負極板、および正極板で、歪んでいない捲回体を形成し、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0020】
上記製造方法は、前記プレス工程において、前記未塗工部への前記第2圧力の値は、前記塗工部への前記第1圧力の値の1.2倍よりも大きい。
上記構成によれば、基材層の集電部において、リチウム塩濃度が薄くなった電解液が捲回体の外に出ていくことへの抑制効果が大きい負極板、および正極板で、捲回体を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池において、捲回体内におけるリチウム塩濃度ムラを抑制することができるため、繰り返しの充放電による内部抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態におけるリチウムイオン二次電池を示す斜視図である。
図2】捲回体における積層構成を示す模式図である。
図3】捲回体の端部形状を示す模式図である。
図4図3のA部分を示す模式拡大図である。
図5図4に示す5-5線で破断した基材層間の隙間を示す模式断面図である。
図6図4に示す6-6線で破断した基材層の波打ち形状を示す断面図である。
図7図4に示す7-7線で破断した基材層の波打ち形状を示す断面図である。
図8】電極板製造工程を示すフローチャートである。
図9】セル組立工程を示すフローチャートである。
図10】電極板が両面からプレスされる状態を示す模式断面図である。
図11】プレス工程後の電極板を示す模式図である。
図12】スリット工程後の電極板を示す模式図である。
図13】捲回工程のときに張力が掛けられた電極板を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初に、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池11について説明する。
<リチウムイオン二次電池の構成>
図1に示すように、リチウムイオン二次電池11は、セル電池として構成される。セル電池が複数接続されて組み立てられたものが、バッテリーとして使用される。リチウムイオン二次電池11は、開口部を有する直方体状の電池ケース21を備える。
【0024】
電池ケース21は、開口部を封止する蓋体22を備える。リチウムイオン二次電池11においては、電池ケース21に蓋体22が取り付けられることで、密閉された電槽が構成される。電池ケース21、および蓋体22はアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0025】
リチウムイオン二次電池11は、電極体として構成される捲回体20を備える。電池ケース21内には、電解液27とともに、捲回体20が収容される。リチウムイオン二次電池11は、蓋体22に、放電と充電とに用いられる負極外部端子24、および正極外部端子26を備える。なお、図1に示す負極外部端子24、および正極外部端子26の形状は、端子形状の一例である。すなわち、負極外部端子24、および正極外部端子26の形状は、図1に記載の端子形状に限定されない。
【0026】
<捲回体の構成>
図2に示すように、捲回体20は、電極板としての負極板100と、電極板としての正極板110と、負極板100と正極板110との間に設けられたセパレータ120と、を備える。セパレータ120は、電極板同士を絶縁するとともに電解液27を保持する。負極板100と、セパレータ120と、正極板110とは短冊状を呈する。負極板100と、セパレータ120と、正極板110と、が積層された積層体が捲回方向Zに捲回されることで、捲回体20が形成される。より詳しくは、セパレータ120、正極板110、セパレータ120、負極板100、の順に積層された積層体が、捲回方向Zに捲回され、扁平に整形されることで、捲回体20が形成される。捲回方向Zは各層を構成する短冊の長手方向と同じ方向であるため、捲回方向Zを長手方向Zともいう。
【0027】
負極板100は、負極の基材である負極基材層101と、負極基材層101の両面に設けられた負極合剤層102と、を有する。捲回体20は、軸方向Xにおける一方の端部において、負極側集電部103を有する。軸方向Xとは、製造過程の捲回工程において、負極板100が捲回方向Zに捲回されたときの捲回軸の方向である。負極側集電部103は、負極基材層101の両面に負極合剤層102が設けられていない部分である。負極側集電部103は、負極板100の負極合剤層102から電気を取り出す。軸方向Xは各層を構成する短冊の短手方向である幅方向と同じ方向であるため、軸方向Xを幅方向Xともいう。
【0028】
負極基材層101の両面に負極合剤層102が設けられた部分は、製造過程の塗工工程において、負極合剤層102が塗工された部分であるため、塗工部CPという。負極基材層101の両面に負極合剤層102が設けられていない部分は、製造過程の塗工工程において、負極合剤層102が塗工されていない部分であるため、未塗工部UCPという。負極基材層101の両面に負極合剤層102が設けられていない部分である未塗工部UCPは、その両面において負極基材層101が露出している部分である。
【0029】
負極基材層101には、例えば、銅箔が使用される。負極基材層101は、負極合剤層102に電気を流すための厚さ10μm程度の基材である。負極合剤層102には、グラファイトが使用される。グラファイトは、カーボン層が積み重なった結晶構造からなる材料であり、カーボン層同士の間にリチウムを蓄えることができる。
【0030】
正極板110は、正極の基材である正極基材層111と、正極基材層111の両面に設けられた正極合剤層112と、を有する。捲回体20は、軸方向Xにおける他方の端部において、正極側集電部113を有する。正極側集電部113は、正極基材層111の両面に正極合剤層112が設けられていない部分である。正極側集電部113は、正極板110の正極合剤層112から電気を取り出す。
【0031】
正極基材層111の両面に正極合剤層112が設けられた部分は、製造過程の塗工工程において、正極合剤層112が塗工された部分であるため、塗工部CPという。正極基材層111の両面に正極合剤層112が設けられていない部分は、製造過程の塗工工程において、正極合剤層112が塗工されていない部分であるため、未塗工部UCPという。正極基材層111の両面に正極合剤層112が設けられていない部分である未塗工部UCPは、その両面において正極基材層111が露出している部分である。
【0032】
正極基材層111には、例えば、アルミ箔が使用される。正極基材層111は、正極合剤層112に電気を流すための厚さ15μm程度の基材である。正極合剤層112には、活物質と導電材料とが混合されて使用される。活物質は、リチウムを含む金属酸化物であり、充電時にはリチウムイオンを放出し、放電時にはリチウムイオンを吸蔵する。導電材料にはカーボン微粒子が用いられ、導電材料は活物質に接して電気の経路となる。
【0033】
セパレータ120は、樹脂からなる厚さ20μm程度のシートである。セパレータ120は、正極と負極との接触を防ぐとともに、多数の微小な空孔を有することで、空孔内に電解液27を保持することができる。
【0034】
<捲回体の端部形状>
図3に示すように、捲回体20は、積層体が捲回されたときの軸方向Xおよび捲回方向Zと直交する方向である厚さ方向Yに加圧整形された扁平形状を呈する。捲回体20は、扁平形状の平面部分Fを厚さ方向Yにおける両側に有する。
【0035】
軸方向Xにおける一方の端部である負極側集電部103には、負極集電体23が溶接される。より詳しくは、負極側集電部103は、扁平形状の平面部分Fにおけるそれぞれの上方において、負極集電体23が溶接される。これにより、負極側集電部103は、リチウムイオン二次電池11における外部端子である負極外部端子24と接続部23aで接続される。なお、上方または上部とは、捲回体20が電池ケース21内に収容されるときに、最後に挿入される部分である。そして、下方または下部とは、捲回体20が電池ケース21内に収容されるときに、最初に挿入される部分である。
【0036】
なお、負極集電体23は説明の都合上、軸方向Xの一部のみが負極側集電部103と重なっているが、本来は、軸方向Xにおいて、負極集電体23の全体が負極側集電部103と重なって溶接されている。
【0037】
軸方向Xにおける他方の端部である図1に示す正極側集電部113には、図1に示す正極集電体25が溶接される。より詳しくは、正極側集電部113は、扁平形状の平面部分Fにおけるそれぞれの上方において、正極集電体25が溶接される。これにより、正極側集電部113は、リチウムイオン二次電池11における外部端子である図1に示す正極外部端子26と接続部25aで接続される。
【0038】
<集電部の波打ち形状>
図4に示すように、捲回体20の一方の端部において、負極側集電部103は、波打ち形状を有する。なお、図3においては、捲回体20における端部の概略形状を示すため、波打ち形状は細めの実線のみで表現されている。負極側集電部103は、負極基材層101における厚さ方向Yが振幅方向であり、かつ捲回方向Zが波長方向である波打ち形状を有する。
【0039】
同様に、捲回体20の他方の端部においても、正極側集電部113が、波打ち形状を有する。正極側集電部113は、正極基材層111における厚さ方向Yが振幅方向であり、かつ捲回方向Zが波長方向である波打ち形状を有する。
【0040】
波打ち形状は、凸部31と凹部32とを有する。より詳しくは、波打ち形状とは、基材層101,111の厚さをほぼ保ちながら、基材層101,111の表面において凸部31と凹部32とを交互に繰り返す形状である。凸部31とは、基材層101,111の表面が山形状の部分であり、凹部32とは、基材層101,111の表面が谷形状の部分である。集電部103,113は箔状であるため、凸部31の裏側が凹部32となる。電解液27が移動する方向に凸部31があると、凸部31に沿って流れを変えるための抵抗が生じるため、電解液27が凸部31のある方向に動き難くなる。
【0041】
図5に示すように、捲回体20は、セパレータ120、負極板100、セパレータ120、正極板110、の順に積層されている。そのため、負極側集電部103において、2つの負極板100間に挟まれる2つのセパレータ120および1つの正極板110の厚さと、2つの負極合剤層102の厚さと、により、隣り合う2つの負極基材層101間に隙間Δが形成される。
【0042】
このような層構成を有する捲回体20の負極側集電部103において、負極基材層101が厚さ方向Yに波打つことにより、負極側集電部103が、波打ち形状を有する。より詳しくは、負極側集電部103における図3に示す扁平形状の平面部分Fにおいて、負極基材層101における厚さ方向Yに隣り合う2つの負極基材層101の両方が波打ち形状を有する。これにより、2つの負極基材層101間の隙間Δの位置が、負極基材層101における厚さ方向Yに変化する。
【0043】
同様に、正極側集電部113においても、2つの正極板110間に挟まれる2つのセパレータ120および1つの負極板100の厚さと、2つの正極合剤層112の厚さと、により、隣り合う2つの正極基材層111間に隙間Δが形成される。
【0044】
このような層構成を有する捲回体20の正極側集電部113において、正極基材層111が厚さ方向Yに波打つことにより、正極側集電部113が、波打ち形状を有する。より詳しくは、正極側集電部113における扁平形状の平面部分Fにおいて、正極基材層111における厚さ方向Yに隣り合う2つの正極基材層111の両方が波打ち形状を有する。これにより、2つの正極基材層111間の隙間Δの位置が、正極基材層111における厚さ方向Yに変化する。
【0045】
なお、図1に示す接続部23aと負極側集電部103とが溶接された部分、および図1に示す接続部25aと正極側集電部113とが溶接された部分は、溶接されるときに、捲回体20の厚さ方向Yにおいて捲回体20の厚さが薄くなる。より詳しくは、溶接された部分においては、溶接によって隣り合う2つの負極基材層101が密着するため、接続部23aにおける隙間Δの値は、ほぼ「ゼロ」になる。また、溶接された部分においては、溶接によって隣り合う2つの正極基材層111が密着するため、接続部25aにおける隙間Δの値は、ほぼ「ゼロ」になる。そのため、負極側集電部103は、波打ち形状を接続部23aの下端23bよりも下方に有してもよい。また、正極側集電部113は、波打ち形状を接続部25aの下端25bよりも下方に有してもよい。
【0046】
図6に示すように、負極側集電部103において、負極合剤層102から遠い部分では、波打ち形状の振幅Amが大きい。同様に、正極側集電部113においても、正極合剤層112から遠い部分では、波打ち形状の振幅Amが大きい。
【0047】
図7に示すように、負極側集電部103において、負極合剤層102に近い部分では、波打ち形状の振幅Amが小さい。同様に、正極側集電部113においても、正極合剤層112に近い部分では、波打ち形状の振幅Amが小さい。
【0048】
つまり、波打ち形状は、負極合剤層102に近いほど、振幅Amが小さい形状であり、負極合剤層102から遠いほど、振幅Amが大きい形状である。また、波打ち形状は、正極合剤層112に近いほど、振幅Amが小さく、正極合剤層112から遠いほど、振幅Amが大きい形状である。換言すれば、波打ち形状は、負極合剤層102または正極合剤層112に近いほど、振幅Amが小さい形状であり、負極合剤層102または正極合剤層112から遠いほど、振幅Amが大きい形状である。
【0049】
本実施形態においては、波打ち形状は、負極合剤層102に近づくにつれて、徐々に振幅Amが小さくなり、負極合剤層102に至るまでに、振幅Amは「ゼロ」になる形状である。また、波打ち形状は、正極合剤層112に近づくにつれて、徐々に振幅Amが小さくなり、正極合剤層112に至るまでに、振幅Amは「ゼロ」になる形状である。
【0050】
負極板100において、負極合剤層102が設けられている部分が、多少の湾曲形状を有してもよい。例えば、波打ち形状は、負極合剤層102に至るまでに、振幅Amが「ゼロ」にならず、負極合剤層102が設けられている部分が、多少の湾曲を有する形状であってもよいし、負極合剤層102に至った後に、振幅Amが「ゼロ」になる形状であってもよい。なお、多少の湾曲とは、集電部103,113における振幅Amよりも小さな振幅を有する湾曲のことをいう。
【0051】
同様に、正極板110においても、正極合剤層112が設けられている部分が、多少の湾曲形状を有してもよい。例えば、波打ち形状は、正極合剤層112に至るまでに、振幅Amが「ゼロ」にならず、正極合剤層112が設けられている部分が、多少の湾曲を有する形状であってもよいし、正極合剤層112に至った後に、振幅Amが「ゼロ」になる形状であってもよい。
【0052】
波打ち形状は、負極合剤層102にある程度近づいた位置までは振幅Amに変化がなく、負極合剤層102にある程度近づいた位置で、振幅Amが急に「ゼロ」になる形状であってもよい。また、波打ち形状は、正極合剤層112にある程度近づいた位置までは振幅Amに変化がなく、正極合剤層112にある程度近づいた位置で、振幅Amが急に「ゼロ」になる形状であってもよい。また、波打ち形状は、負極合剤層102または正極合剤層112に近づくにつれて、振幅Amが増える部分があってもよい。
【0053】
捲回体20における巻き始め部分から巻き終わり部分までの間で、振幅Amは変化してもよい。例えば、捲回体20における巻き始め部分と巻き終わり部分とで、振幅Amが違ってもよいし、巻き始め部分から巻き終わり部分までの間のうち少なくとも一部の区間において、振幅Amの大きな部分と、振幅Amの小さな部分と、が繰り返されてもよい。また、捲回体20における巻き始め部分から巻き終わり部分までの間のうち少なくとも一部の区間において、振幅Amが不規則であってもよい。
【0054】
捲回体20における巻き始め部分から巻き終わり部分までの間で、波長λは変化してもよい。例えば、捲回体20における巻き始め部分と巻き終わり部分とで、波長λが違ってもよいし、巻き始め部分から巻き終わり部分までの間のうち少なくとも一部の区間において、波長λの大きな部分と、波長λの小さな部分と、が繰り返されてもよい。また、捲回体20における巻き始め部分から巻き終わり部分までの間のうち少なくとも一部の区間において、波長λが不規則であってもよい。
【0055】
本実施形態においては、負極合剤層102に近い部分においても、負極合剤層102から遠い部分においても、波長λは同じ長さであるとともに、正極合剤層112に近い部分においても、正極合剤層112から遠い部分においても、波長λは同じ長さである。そして、負極合剤層102に近い部分と、負極合剤層102から遠い部分とで、波打ち形状における波形の位相は同じであり、正極合剤層112に近い部分と、正極合剤層112から遠い部分とで、波打ち形状における波形の位相は同じである。
【0056】
負極合剤層102に近い部分と、負極合剤層102から遠い部分とで、波打ち形状における波形の位相がずれてもよい。また、正極合剤層112に近い部分と、正極合剤層112から遠い部分とで、波打ち形状における波形の位相がずれてもよい。
【0057】
隣り合う2つの負極基材層101の波打ち形状における波形の位相は、同じであってもよいし、本実施形態のように、違ってもよい。また、隣り合う2つの正極基材層111の波打ち形状における波形の位相は、同じであってもよいし、本実施形態のように、違ってもよい。
【0058】
隣り合う2つの負極基材層101の波打ち形状における波形の位相が同じとき、または違っているときに関わらず、その負極基材層101の表面同士のうち少なくとも一部が接触してもよい。また、隣り合う2つの正極基材層111の波打ち形状における波形の位相が同じとき、または違っているときに関わらず、その2つの正極基材層111の表面同士のうち少なくとも一部が接触してもよい。
【0059】
隣り合う2つの負極基材層101の波打ち形状が少しでも異なると、その2つの負極基材層101の隙間Δの値は、場所によって変化する。また、隣り合う2つの正極基材層111の波打ち形状が少しでも異なると、その2つの正極基材層111の隙間Δの値は、場所によって変化する。すなわち、隙間Δの値が大きい場所と、隙間Δの値が小さい場所とが形成される。隙間Δの値が小さい場所においては電解液27が動き難くなる。
【0060】
波打ち形状は、本実施形態のように、基材層101,111の厚さをほぼ保ちながら、基材層101,111の表面において凸部31と凹部32とを交互に繰り返す1つの波を模した形状であってもよい。また、基材層101,111の厚さをほぼ保ちながら、2つ以上の波が重なる合成波を模した形状であってもよい。また、基材層101,111の厚さをほぼ保ちながら、凸部31と凹部32とが不規則に並ぶ凹凸形状であってもよい。
【0061】
次に、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池11の製造方法について説明する。
<電極板製造工程の概要>
図8に示すように、リチウムイオン二次電池11の製造方法においては、最初に、電極板製造工程のフローが行われる。電極板製造工程においては、電極板に合剤層102,112が塗工される塗工工程、合剤層102,112が乾燥される乾燥工程、電極板の厚さが調整されるプレス工程、電極板が切断されるスリット工程が行なわれる。
【0062】
ステップS201において、塗工工程が行われる。活物質、導電材料、バインダーを混ぜて作成されたペーストが、電極板としての負極基材層101、および電極板としての正極基材層111の幅方向Xにおける中央部分の両面に、薄く塗工される。これにより、短冊状の基材層101,111の幅方向Xにおける両端部に、両面に合剤層102,112が設けられていない部分が形成される。換言すれば、塗工工程において、合剤層102,112が塗工された塗工部CPの幅方向Xにおける両端に、合剤層102,112が塗工されていない未塗工部UCPが形成される。
【0063】
負極用のペーストと、正極用のペーストとで、ペーストの構成が異なる。負極用のペーストは、負極基材層101上に塗工されることで、負極合剤層102となる、正極用のペーストは、正極基材層111上に塗工されることで、正極合剤層112となる。塗工されたペーストは、ローラやドクターブレードなどで所定の厚さに整えられる。
【0064】
ステップS202において、乾燥工程が行われる。例えば、赤外線乾燥装置などにより、バインダーの溶剤を揮発させることで、塗工されたペーストが、一定の硬度まで硬化する。
【0065】
ステップS203において、プレス工程が行われる。負極合剤層102を塗工された負極基材層101が、両面からプレスロールによりプレスされながら、長手方向Zの一端から他端に向かって相対移動する。これにより、負極合剤層102の表面が平坦に整形されるとともに、負極合剤層102を塗工された部分の厚さが、所定の厚さに調整される。また、正極合剤層112を塗工された正極基材層111が、両面からプレスロールによりプレスされながら、長手方向Zの一端から他端に向かって相対移動する。これにより、正極合剤層112の表面が平坦に整形されるとともに、正極合剤層112を塗工された部分の厚さが、所定の厚さに調整される。
【0066】
ステップS204において、スリット工程が行われる。負極合剤層102が塗工された負極基材層101が、負極合剤層102の幅方向Xにおける中央位置で長手方向Zに切断される。これにより、電極板としての2つの短冊状の負極板100が完成される。また、正極合剤層112が塗工された正極基材層111が、正極合剤層112の幅方向Xにおける中央位置で長手方向Zに切断される。これにより、電極板としての2つの短冊状の正極板110が完成される。
【0067】
後述する捲回工程において、この工程によって製造された負極板100および正極板110と、短冊状のセパレータ120と、が積層された積層体が、捲回方向Zに捲回され扁平に整形されることで、捲回体20が形成される。
【0068】
なお、スリット工程はなくてもよい。短冊状の基材層101,111の幅方向Xにおける寸法が略半分の寸法とされ、塗工工程において、幅方向Xにおける片側の端部だけが未塗工部UCPとされる。これにより、スリット工程が行われないで、同じ形状の負極板100および正極板110を製造することができる。
【0069】
<セル組立工程の概要>
図9に示すように、リチウムイオン二次電池11の製造方法においては、次に、セル組立工程のフローが行われる。セル組立工程においては、捲回工程、扁平プレス工程、端子溶接工程、ケース挿入工程、封缶溶接工程、セル乾燥工程、注液・封止工程、活性化・検査工程が行なわれる。
【0070】
ステップS301において、捲回工程が行われる。図8に示すフローによって製造された負極板100および正極板110と、短冊状のセパレータ120と、が積層された積層体が、捲回方向Zに捲回されることで捲回体20が形成される。負極板100、正極板110、セパレータ120のそれぞれに対して、長手方向Zに張力Tが掛けられながら捲回されることで、捲回体20が形成される。つまり、電極板である負極板100と、セパレータ120と、電極板である正極板110と、が重ねられた後、捲回されて捲回体20が形成される捲回工程が行われる。
【0071】
ステップS302において、扁平プレス工程が行われる。より詳しくは、捲回工程において積層体が捲回されたときの軸方向Xと直交する方向である厚さ方向Yに捲回体20が加圧整形される扁平プレス工程が行われる。捲回体20が扁平に整形されることで、扁平状の捲回体20が形成される。換言すれば、扁平形状の捲回体20における平面部分Fが、捲回体20の厚さ方向Yにおける両側に形成される。
【0072】
ステップS303において、端子溶接工程が行われる。捲回体20の端部に集電端子が取り付けられる。より詳しくは、捲回体20の軸方向Xにおける一方の端部に負極集電体23が溶接されるとともに、捲回体20の軸方向Xにおける他方の端部に正極集電体25が溶接されることで、捲回体20が、負極外部端子24、および正極外部端子26と接続される。
【0073】
ステップS304において、ケース挿入工程が行われる。絶縁フィルムを取り付けられた捲回体20が、電池ケース21の中に挿入される。
ステップS305において、封缶溶接工程が行われる。電池ケース21と蓋体22とがレーザー溶接される。
【0074】
ステップS306において、セル乾燥工程が行われる。加熱により捲回体20内の水分が除去される。
ステップS307において、注液・封止工程が行われる。注液口から電池ケース21内に電解液27が注入された後、注液口が封止される。
【0075】
ステップS308において、活性化・検査工程が行われる。コンディショニング、エージング、および検査が行われることで、セル電池が完成する。
<波打ち形状の形成方法>
図10に示すように、ステップS203のプレス工程においては、負極板100が、厚さ方向Yに両面から圧力P1,P2を加えられながら、長手方向Zの一端から他端に向かって相対移動する。塗工部CPにおいては、厚さ方向Yに両側から、第1圧力P1が加えられる。未塗工部UCPにおいては、厚さ方向Yに両側から、第2圧力P2が加えられる。
【0076】
これにより、塗工部CPの厚さが、所定の厚さに調整される。塗工部CPにおいて、第1圧力P1が加えられることで、厚さ方向Yの寸法が短くなるとともに、長手方向Zの寸法が長くなる。すなわち、塗工部CPの厚さが薄くなる代わりに、塗工部CPが長手方向Zに伸びる。より詳しくは、塗工部CPを構成する負極基材層101と負極合剤層102との両方の層において、厚さ方向Yの寸法が短くなるとともに、長手方向Zの寸法が長くなる。
【0077】
未塗工部UCPにおいても、第2圧力P2が加えられることで、厚さ方向Yの寸法が短くなるとともに、長手方向Zの寸法が長くなる。すなわち、未塗工部UCPの厚さが薄くなる代わりに、未塗工部UCPが長手方向Zに伸びる。より詳しくは、未塗工部UCPを構成する層は負極基材層101だけであるため、未塗工部UCPの負極基材層101における厚さ方向Yの寸法が短くなるとともに、長手方向Zの寸法が長くなる。
【0078】
プレス工程において、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなるように、塗工部CPへの第1圧力P1の値と、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値と、が設定される。未塗工部UCPへの第2圧力P2の値は、塗工部CPへの第1圧力P1の値よりも大きく設定される。
【0079】
図11に示すように、プレス工程後の負極板100の状態は、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなるように、変形していない状態である。より詳しくは、負極板100は、未塗工部UCPにおいて、長手方向Zに変形しようとする図11に破線の矢印で示す内部応力を有するものの、幅方向Xにおいて中央部分に位置する塗工部CPが、未塗工部UCPにおける長手方向Zへの変形を抑制する。さらに、プレス工程においては、長手方向Zへ巻回された負極板100が巻き解かれた部分においてプレス工程が行われ、プレス工程が行われた負極板100が再度長手方向Zへ巻回されることでプレス工程が終了される。すなわち、プレス工程において、負極板100の状態が長手方向Zへの巻回状態であることによっても、未塗工部UCPにおける長手方向Zへの変形が抑制される。つまり、プレス工程後の負極板100の状態は、負極板100が略長方形形状を保ったままの状態であり、未塗工部UCPが長手方向Zに変形しようとする内部応力を有する状態である。
【0080】
図12に示すように、ステップS204のスリット工程においては、図11に示す負極板100が、切断線CLで切断されることで、緩やかな弓形を呈する短冊状の図12に示す2つの負極板100となる。換言すれば、負極板100における塗工部CPの中央位置で切断されることで、図12に破線の矢印で示す内部応力が解放されて、未塗工部UCPが長手方向Zにおける伸びることが可能となる。スリット工程後の負極板100においては、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなる。負極板100が、このような形状に変形するように、プレス工程において、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値は、塗工部CPへの第1圧力P1の値よりも大きく設定される。
【0081】
前述のように、短冊状の負極基材層101の幅方向Xにおける寸法が略半分の寸法とされ、塗工工程において、幅方向Xにおける片側の端部だけが未塗工部UCPとされる。これにより、スリット工程が行われないで、スリット工程が行われたときの負極板100と同じ形状の負極板100を製造することができる。この場合は、プレス工程後の負極板100の形状が、図12に示す負極板100の形状となる。
【0082】
図13に示すように、ステップS301の捲回工程においては、厚さ方向Yからの平面視において、負極板100が略矩形形状を呈するように、負極板100の形状が矯正されながら、捲回体20が形成される。より詳しくは、捲回工程において、負極板100に対して、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとが同じになるように、捲回体20を形成するときの負極板100の長手方向Zへの張力Tが設定される。
【0083】
張力Tによって、負極板100の形状は、厚さ方向Yからの平面視において、真っすぐになるように矯正される。塗工部CPの長手方向Zにおける長さは、プレス工程後のスリット工程によって既に伸びているため、塗工部CPの長手方向Zにおける長さが、これ以上伸びる余地は少ない。そのため、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さが縮むことで、負極板100の形状が矯正される。より詳しくは、未塗工部UCPの負極基材層101が縮むわけではなく、未塗工部UCPの負極基材層101が波打ち形状に変形することによって、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとが同じ長さになる。そして、負極合剤層102または正極合剤層112に近いほど、振幅Amが小さく、負極合剤層102または正極合剤層112から遠いほど、振幅Amが大きい形状である波打ち形状が、未塗工部UCPに形成される。
【0084】
このようにして、負極側集電部103において、波打ち形状が形成される。なお、正極側集電部113においても、同様の製造方法によって、同様の波打ち形状が形成される。そして、プレス工程において、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなるように、塗工部CPへの第1圧力P1の値と、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値と、が設定される。そして、捲回工程において、正極板110に対して、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとが同じになるように、捲回体20を形成するときの正極板110への張力Tが設定される。
【0085】
<実施形態の作用>
本実施形態の作用について説明する。
充放電時に、扁平形状の捲回体20が軸方向Xへ膨張収縮することによって、電解液27が捲回体20の軸方向Xに動く力が働く。しかし、負極側集電部103および正極側集電部113が波打ち形状を呈することにより、その波打ち形状の図5に示す凸部31によって、電解液27における図5に実線の矢印で示す軸方向Xへの流れが妨げられる。すなわち、電解液27が捲回体20の軸方向Xに動くときの抵抗が大きくなるため、捲回体20の軸方向Xへ電解液27を動き難くすることができる。
【0086】
負極側集電部103において、波打ち形状は、負極合剤層102に近づくにつれて振幅Amが小さくなり、負極合剤層102から遠ざかるにつれて振幅Amが大きくなる波打ち形状である。このような波打ち形状により、負極基材層101の中央部分の形状は平らのままで、捲回体20の端部方向へ電解液27を動き難くすることができる。また、正極側集電部113において、波打ち形状は、正極合剤層112に近づくにつれて振幅Amが小さくなり、負極合剤層102から遠ざかるにつれて振幅Amが大きくなる波打ち形状である。このような波打ち形状により、正極基材層111の中央部分の形状は平らのままで、捲回体20の端部方向へ電解液27を動き難くすることができる。
【0087】
負極合剤層102または正極合剤層112に近いほど振幅Amが小さく、負極合剤層102または正極合剤層112から遠いほど振幅Amが大きい波打ち形状は、前述の製造方法によって、容易に形成することができる。
【0088】
負極側集電部103は中央付近において、負極外部端子24と接続部23aで接続されることで、捲回体20の上方における隙間Δの値は、ほぼ「ゼロ」になる。正極側集電部113は、中央付近において、正極外部端子26と接続部25aで接続されることで、捲回体20の上方における隙間Δの値は、ほぼ「ゼロ」になる。そのため、捲回体20の端部における電解液27の出入りは、捲回体20の下部で生じる。負極側集電部103は、波打ち形状を接続部23aの下端23bよりも下方に有するため、負極側集電部103における捲回体20の下部で生じる電解液27の出入りを少なくすることができる。また、正極側集電部113は、波打ち形状を接続部25aの下端25bよりも下方に有するため、正極側集電部113における捲回体20の下部で生じる電解液27の出入りを少なくすることができる。
【0089】
捲回体20の軸方向Xへの膨張収縮によって、電解液27には、隙間Δの中を軸方向Xに動かす力が働く。また、負極側集電部103における負極基材層101間の隙間Δ、および正極側集電部113における正極基材層111間の隙間Δにおいて、隙間Δの位置が、電解液27が動く方向である軸方向Xと直交する厚さ方向Yに変化する。これにより、基材層101,111間の隙間Δを通って電解液27が軸方向Xへ動くときの抵抗が大きくなるため、電解液27を軸方向Xへ動き難くすることができる。
【0090】
負極板100、および正極板110の波打ち形状によって、隙間Δの値が大きい場所と、隙間Δの値が小さい場所とが形成される。隙間Δの値が小さい場所においては、基材層101,111間の隙間Δを通って電解液27が軸方向Xに動くときの抵抗が大きくなるため、軸方向Xへ電解液27を動き難くすることができる。
【0091】
上述したリチウムイオン二次電池11の製造方法における波打ち形状の形成方法によって、負極基材層101の負極側集電部103において、波打ち形状を有する負極板100を作ることができる。また、上述したリチウムイオン二次電池11の製造方法における波打ち形状の形成方法によって、正極基材層111の正極側集電部113において、波打ち形状を有する正極板110を作ることができる。
【0092】
プレス工程において、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなるように、塗工部CPへの第1圧力P1の値と、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値と、が設定される。そのため、プレス工程後のスリット工程では、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さが短くなり、塗工部CPの長手方向Zにおける長さが長くなる。しかし、その後の捲回工程において、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとが同じになるように、捲回体20を形成するときの負極板100、および正極板110への張力Tが設定される。そのため、プレス工程後のスリット工程において曲がった負極板100、および正極板110を、厚さ方向Yからの平面視において略矩形形状を呈する形状にすることができる。すなわち、捲回工程において、負極板100、および正極板110を、厚さ方向Yからの平面視において、真っすぐにすることができる。
【0093】
<実施形態による作用の確認結果>
本実施形態のリチウムイオン二次電池11によれば、ハイレート充放電時における内部抵抗の推移において、以下の結果が得られた。隙間Δの面積率を50%少なくしたときに、繰り返し充放電におけるリチウムイオン二次電池11における内部抵抗の変化率が1.7%低減された。なお、内部抵抗の変化率が低減されることにより、電池性能の低下を抑制することができる。
【0094】
本実施形態のリチウムイオン二次電池11の製造方法によれば、波打ち形状の形成方法において、以下の結果が得られた。未塗工部UCPへの第2圧力P2の値が、塗工部CPへの第1圧力P1の値の1.2倍よりも大きく設定されたとき、プレス工程後のスリット工程において、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなった。そして、その後の捲回工程において、張力Tの値を調整することによって、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとを、同じにすることができた。隙間Δにおいては、波打ち形状がないときと比べて、隙間Δの値が75%以上少ない部分が形成された。なお、ハイレート充放電時における内部抵抗の変化率は隙間Δの値に略反比例するため、本実施形態において、繰り返し充放電における内部抵抗の変化率が略2.55%低減される波打ち形状を形成することができた。波打ち形状の形成が行われないときの隙間Δの大きさが73μmであるのに対して、本実施形態において、隙間Δの値が75%以上少ない部分における実際の隙間Δの値は、18μm以下であった。
【0095】
要約すれば、本実施形態のリチウムイオン二次電池11の製造方法のプレス工程においては、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値は、塗工部CPへの第1圧力P1の値の1.2倍よりも大きい。そして、本実施形態のリチウムイオン二次電池11は、負極側集電部103における扁平形状の平面部分Fにおいて、負極基材層101における厚さ方向Yに隣り合う2つの負極基材層101間の隙間Δの値が、18μm以下である箇所を有する。そして、本実施形態のリチウムイオン二次電池11は、正極側集電部113における扁平形状の平面部分Fにおいて、正極基材層111における厚さ方向Yに隣り合う2つの正極基材層111間の隙間Δの値が、18μm以下である箇所を有する。
【0096】
<実施形態の効果>
本実施形態の効果について説明する。
(1)軸方向Xにおける一方の端部において、負極基材層101の両面に負極合剤層102が設けられず、負極基材層101における厚さ方向Yが振幅Am方向であり、かつ捲回方向Zが波長λ方向である波打ち形状を有する負極側集電部103を備える。そして、軸方向Xにおける他方の端部において、正極基材層111の両面に正極合剤層112が設けられず、正極基材層111における厚さ方向Yが振幅Am方向であり、かつ捲回方向Zが波長λ方向である波打ち形状を有する正極側集電部113を備える。そのため、波打ち形状の凸部31によって、捲回体20の軸方向Xへ電解液27が動き難くなることにより、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことを抑制することができる。これにより、捲回体20内におけるリチウム塩濃度ムラが抑制されるため、繰り返しの充放電による内部抵抗の増加を抑制することができる。
【0097】
(2)波打ち形状は、負極合剤層102または正極合剤層112に近いほど、振幅Amが小さい形状であり、負極合剤層102または正極合剤層112から遠いほど、振幅Amが大きい形状である。負極合剤層102または正極合剤層112に近いほど振幅Amが小さく、負極合剤層102または正極合剤層112から遠いほど振幅Amが大きい波打ち形状は、容易に製造が可能な形状である。そのため、容易に製造が可能な波打ち形状の凸部31によって、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことを抑制することができる。
【0098】
(3)負極側集電部103、および正極側集電部113は、扁平形状の平面部分Fにおけるそれぞれの上方において、リチウムイオン二次電池11における外部端子24,26と接続部23a,25aで接続されている。そして、負極側集電部103、および正極側集電部113は、波打ち形状を接続部23a,25aの下端23b,25bよりも下方に有する。そのため、リチウムイオン二次電池11における外部端子24,26と接続部23a,25aで接続されていない部分である捲回体20の下部から、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことを抑制することができる。
【0099】
(4)負極側集電部103における扁平形状の平面部分Fにおいて、負極基材層101における厚さ方向Yに隣り合う2つの負極基材層101の両方が波打ち形状を有する。これにより、2つの負極基材層101間の隙間Δの位置が、負極基材層101における厚さ方向Yに変化する。そして、正極側集電部113における扁平形状の平面部分Fにおいて、正極基材層111における厚さ方向Yに隣り合う2つの正極基材層111の両方が波打ち形状を有する。これにより、2つの正極基材層111間の隙間Δの位置が、正極基材層111における厚さ方向Yに変化する。隙間Δの位置が、負極基材層101および正極基材層111における厚さ方向Yに変化することで、隙間Δを通って電解液27が捲回体20の軸方向Xへ動くときの抵抗が大きくなる。そのため、基材層101,111間の隙間Δから、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことを抑制することができる。
【0100】
(5)負極側集電部103における扁平形状の平面部分Fにおいて、負極基材層101における厚さ方向Yに隣り合う2つの負極基材層101間の隙間Δの値が、18μm以下である箇所を有する。そして、正極側集電部113における扁平形状の平面部分Fにおいて、正極基材層111における厚さ方向Yに隣り合う2つの正極基材層111間の隙間Δの値が、18μm以下である箇所を有する。そのため、基材層101,111間の隙間Δの値が18μm以下である箇所において、基材層101,111間の隙間Δから、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことをより抑制することができる。
【0101】
(6)塗工工程において、合剤層102、112が塗工された塗工部CPの幅方向Xにおける一端または両端に、合剤層102、112が塗工されていない未塗工部UCPが形成される。そして、プレス工程において、未塗工部UCPの長手方向Zにおける伸び量が、塗工部CPの長手方向Zにおける伸び量よりも大きくなるように、塗工部CPへの第1圧力P1の値と、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値と、が設定される。これにより、基材層101,111の集電部103,113において、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことを抑制することができる波打ち形状を有する負極板100、および正極板110を形成することができる。そして、その波打ち形状を有する負極板100、および正極板110で、捲回体20を形成し、リチウムイオン二次電池11を製造することができる。
【0102】
(7)捲回工程において、負極板100、および正極板110に対して、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとが同じになる。そのように、捲回体20を形成するときの負極板100、および正極板110への張力Tが設定される。そのため、プレス工程後のスリット工程において曲がった負極板100、および正極板110を、厚さ方向Yからの平面視において略矩形形状を呈する負極板100、および正極板110に形成することができる。そして、基材層101,111の集電部103,113において波打ち形状を有する負極板100、および正極板110で、歪んでいない捲回体20を形成し、リチウムイオン二次電池11を製造することができる。
【0103】
(8)プレス工程において、未塗工部UCPへの第2圧力P2の値は、塗工部CPへの第1圧力P1の値の1.2倍よりも大きい。そのため、基材層101,111の集電部103,113において、リチウム塩濃度が薄くなった電解液27が捲回体20の外に出ていくことへの抑制効果が大きい負極板100、および正極板110で、捲回体20を形成することができる。
【0104】
<本実施形態の変更例>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0105】
・本実施形態においては、負極合剤層102は負極基材層101の両面に設けられているが、負極合剤層102は負極基材層101の片面にだけ設けられてもよい。同様に、本実施形態においては、正極合剤層112は正極基材層111の両面に設けられているが、正極合剤層112は正極基材層111の片面にだけ設けられてもよい。
【0106】
・波打ち形状は、本実施形態に記載した製造方法によって形成された波打ち形状に限らない。例えば、凹型のプレス型と凸型のプレス型とで、厚さ方向Yにおける両面から、集電部103,113における複数箇所をプレスすることで、集電部103,113に波打ち形状が形成されてもよい。複数のプレス箇所は幅方向Xまたは長手方向Zに整列していなくてもよく、不規則な配置であってもよい。集電部103,113が、電解液27の軸方向Xへの流れが妨げられる形状の凸部31を有していればよい。また、例えば、集電部103,113が、両面から波面状の成形面を有する一対の成形ローラによりプレスされながら、長手方向Zの一端から他端に向かって相対移動することで、集電部103,113に波打ち形状が形成されてもよい。
【0107】
・捲回体20の扁平形状の平面部分Fにおいて、集電部103,113の幅方向Xにおける端辺には凸部31がなかったとしても、その端辺と合剤層102、112との間に、電解液27の軸方向Xへの流れが妨げられる形状の凸部31があればよい。集電部103,113が、電解液27の軸方向Xへの流れが妨げられる形状の凸部31を有していればよい。
【0108】
・捲回工程の前に、厚さ方向Yからの平面視において、負極板100が略矩形形状を呈するように、負極板100の長手方向Zに張力Tが掛けられることによって、負極板100の形状を矯正する矯正工程が行われてもよい。そして、その矯正工程の後に、捲回工程が行われてもよい。より詳しくは、矯正工程において、負極板100に対して、未塗工部UCPの長手方向Zにおける長さと、塗工部CPの長手方向Zにおける長さとが同じになるように、負極板100への張力Tが設定される。なお、正極板110においても、同様の矯正工程が行われてもよい。
【0109】
・捲回工程において、塗工部CP側の張力が、未塗工部UCP側の張力よりも強くされることで、負極板100の形状が、厚さ方向Yからの平面視において、真っすぐになるように矯正されてもよい。なお、正極板110においても、同様の方法で、正極板110の形状が、厚さ方向Yからの平面視において、真っすぐになるように矯正されてもよい。
【符号の説明】
【0110】
11…リチウムイオン二次電池
20…捲回体
21…電池ケース
22…蓋体
23…負極集電体
23a…接続部
23b…下端
24…負極外部端子
25…正極集電体
25a…接続部
25b…下端
26…正極外部端子
27…電解液
31…凸部
32…凹部
100…負極板
101…負極基材層
102…負極合剤層
103…負極側集電部
110…正極板
111…正極基材層
112…正極合剤層
113…正極側集電部
120…セパレータ
Δ…隙間
λ…波長
Am…振幅
CL…切断線
CP…塗工部
F…平面部分
P1…第1圧力
P2…第2圧力
T…張力
UCP…未塗工部
X…軸方向
Y…厚さ方向
Z…捲回方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13