(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086305
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物、並びに毛髪及び/又は皮膚の処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20230615BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230615BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230615BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230615BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230615BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230615BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230615BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/06
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/39
A61K8/31
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200727
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】井口 亮
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083CC02
4C083CC31
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】油性成分の分散安定性に優れる水中油型乳化組成物、並びに、油性成分の分散性に優れる水中油型乳化組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理方法の提供。
【解決手段】水中油型乳化組成物は、油性成分と、酸化エチレンの平均付加モル数10以上のテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及び/又は酸化エチレンの平均付加モル数10以上のテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットと、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、酸化エチレンの平均付加モル数10以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、デカオレイン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンセチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上と、が配合されたものであり、毛髪及び/又は皮膚の処理方法は、この水中油型乳化組成物を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分が配合された水中油型乳化組成物。
(A)油性成分
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及び/又は酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、デカオレイン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンセチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上
(D)水
【請求項2】
粘度が500mPa・s以下である請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
分散している前記(A)成分の体積平均粒子径が500nm以下である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の配合量が20質量%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
毛髪及び/又は皮膚に塗布して使用される請求項1~4のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の水中油型乳化組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物、並びに、毛髪及び/又は皮膚の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エステル油、油脂、炭化水素、高級アルコール、シリコーンなどの油性成分が配合された水中油型乳化組成物は、毛髪や皮膚を処理する方法に使用されている。配合された油性成分は水中に乳化分散されており、この分散の安定性を高める技術は、水中油型乳化組成物の品質安定性の観点からも望まれる。
【0003】
特許文献1には、化粧料に汎用される油脂を主な油性成分とし、この油性成分の乳化分散の安定性を優れるものとするべく、HLB値が10~15であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルと、HLB値が3~6であるポリオキシエチレン硬化ひまし油を含有させた水中油型乳化組成物が開示されている(請求項1、段落0006等参照)。この特許文献1の開示のように、油性成分の分散安定性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、油性成分の分散安定性に優れる水中油型乳化組成物の提供を目的とする。また、本発明は、油性成分の分散性に優れる水中油型乳化組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討を行った結果、特定のノニオン界面活性剤を2種以上併用すると、水中油型乳化組成物における油性成分の分散安定性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る水中油型乳化組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分が配合されたものである。
(A)油性成分
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及び/又は酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット
(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、デカオレイン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンセチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上
(D)水
【0008】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、粘度が500mPa・s以下のものであると良い。500mPa・s以下の低粘度に設定することで、当該組成物が毛髪や皮膚に馴染み易くなる。また、粘度を低くすることに伴う(A)成分の分散性低下は、(B)成分及び(C)成分の配合により抑えられる。
【0009】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、分散している前記(A)成分の体積平均粒子径が500nm以下のものであると良い。この体積平均粒子径は、(B)成分及び(C)成分の配合により実現可能なものであり、(A)成分の分散安定性に好適である。
【0010】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、前記(A)成分の配合量が20質量%以下のものであると良い。20質量%以下の配合量であると、(A)成分の分散安定性に好適である。
【0011】
本発明に係る水中油型乳化組成物は、油性成分が分散した公知の水中油型乳化組成物と同様、毛髪及び/又は皮膚に塗布して使用されるものであると良い。
【0012】
また、本発明に係る毛髪及び/又は皮膚の処理方法は、毛髪及び/又は皮膚に塗布して使用される本発明に係る水中油型乳化組成物を使用するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る水中油型乳化組成物によれば、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及び/又は酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットと共に、特定のノニオン界面活性剤が配合されているので、油性成分の分散安定性に優れる。
【0014】
また、本発明に係る毛髪及び/又は皮膚の処理方法によれば、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及び/又は酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットと共に、特定のノニオン界面活性剤が配合された水中油型乳化組成物を使用するので、油性成分の分散安定性に優れる組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る組成物は、(A)成分である油性成分と、後述する特定のノニオン界面活性剤である(B)成分及び(C)成分と、(D)成分である水とが配合された水中油型乳化組成物である。当該組成物には、公知の毛髪用組成物又は皮膚用組成物に配合されている成分を、任意成分として配合しても良い。
【0016】
((A)成分)
本実施形態の組成物には、水中油型乳化組成物を実現するために、(B)成分及び(C)成分とで水中に分散させる(A)成分として油性成分が配合される。
【0017】
(A)成分は、本実施形態において、炭化水素、ロウ、エステル油、油脂、高級アルコール、及びシリコーンから選ばれた一種又は二種以上である。(A)成分は、公知の油性成分から選択されると良い。
【0018】
炭化水素を(A)成分として配合する場合、公知の炭化水素から選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状の炭化水素及び/又は25℃で固体の炭化水素を(A)成分として配合できる。この炭化水素としては、例えば、水添ポリイソブテン、イソドデカン、(C13-15)アルカン、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
【0019】
ロウは、天然物を起源とするエステルとして分類され、一般的には、脂肪酸と水に不溶性の高級一価アルコール又は二価アルコールとのエステルが該当する。ロウを(A)成分として配合する場合、公知のロウから選ばれた一種又は二種以上を配合できる。このロウとしては、例えば、ミツロウ、モクロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、カルナウバロウが挙げられる。
【0020】
エステル油は、合成により得られたエステルとして分類されるものである。エステル油を(A)成分として配合する場合、公知のエステル油から選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状のエステル油及び/又は25℃で固体のエステル油を(A)成分として配合できる。このエステル油としては、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、ステアリン酸コレステリル、イソノナン酸イソトリデシル、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキルが挙げられる。
【0021】
油脂は、脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするものである。油脂を(A)成分として配合する場合、公知の油脂から選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状の油脂及び/又は25℃で固体の油脂を(A)成分として配合できる。この油脂としては、例えば、アーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂、シア脂油、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、ババス油、ピーナッツ油、ヒマワリ種子油、ローズヒップ油が挙げられる。
【0022】
高級アルコールは、炭素数12以上の一価アルコールである。高級アルコールを(A)成分として配合する場合、公知の高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状の高級アルコール及び/又は25℃で固体の高級アルコールを(A)成分として配合できる。この高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールが挙げられる。
【0023】
シリコーンを(A)成分として配合する場合、公知のシリコーンから選ばれた一種又は二種以上を配合できる。このシリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン(メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等)、メチルフェニルシリコーン、環状シリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)長鎖アルキル変性シリコーン、ジメチコノールが挙げられる。
【0024】
本実施形態の組成物における(A)成分の配合量は、1質量%以上20質量%以下が良く、2質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上8質量%以下が更に好ましい。配合量が1質量%以上であると、毛髪や皮膚への(A)成分による感触付与に好適であり、配合量が20質量%以下であると、本実施形態の組成物の粘度を低く設定した場合であっても(A)成分の分散性低下を抑制に好適である。
【0025】
また、本実施形態の組成物において、(B)成分及び(C)成分の総配合量に対する(A)成分の配合量の比(a/(b+c))は、(A)成分の分散安定性をより向上させるには、8以下が良く、6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。なお、a/(b+c)の下限は、特に限定されないが、例えば0.3である。
【0026】
((B)成分)
本実施形態の組成物には、(A)成分の分散安定性を高めるため、(C)成分と共に(B)成分である酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、又は、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及び酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるテトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットが配合される(以下において、「ポリオキシエチレン」を「POE」と称することがある。)。
【0027】
上記(B)成分であるテトラオレイン酸POEソルビットは、オレイン酸と酸化エチレンを付加重合したソルビトールとのテトラエステルであり、例えば、テトラオレイン酸POEソルビット(30E.O.)、テトラオレイン酸POEソルビット(40E.O.)、テトラオレイン酸POEソルビット(60E.O.)が挙げられる(「E.O.」の前の数値は、酸化エチレンの平均付加モルを表す。以下、同じ。)。このテトラオレイン酸POEソルビットにおける酸化エチレンの平均付加モル数は、10以上であり、20以上が良く、30以上が好ましくい。その平均付加モル数の上限は、例えば60である。
【0028】
上記(B)成分であるテトライソステアリン酸POEソルビットは、イソステアリン酸と酸化エチレンを付加重合したソルビトールとのテトラエステルであり、例えば、テトライソステアリン酸POEソルビット(20E.O.)、テトライソステアリン酸POEソルビット(30E.O.)、テトライソステアリン酸POEソルビット(40E.O.)、テトライソステアリン酸POEソルビット(50E.O.)が挙げられる。このテトライソステアリン酸POEソルビットにおける酸化エチレンの平均付加モル数は、10以上であり、20以上が良く、30以上が好ましくい。その平均付加モル数の上限は、例えば60である。
【0029】
(B)成分の本実施形態の組成物における配合量は、0.5質量%以上10質量%以下が良く、1.0質量%以上5質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4質量%以下がより好ましい。0.5質量%以上であると、(A)成分の分散安定性に好適であり、10質量%以下であると、本実施形態の組成物を塗布した毛髪、皮膚のべたつき抑制に好適である。
【0030】
((C)成分)
本実施形態の組成物には、(A)成分の分散安定性を高めるため、(B)成分と共に(C)成分であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル(以下において、「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン」を「POE・POP」と称することがある。)、POEフィトステロール、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上であるPOE硬化ヒマシ油、デカオレイン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸POEグリセリル、POEセチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上が配合される。本実施形態の組成物における(C)成分の配合量は、0.3質量%以上7質量%以下が良く、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、1.0質量%以上3質量%以下がより好ましい。0.3質量%以上であると、(A)成分の分散安定性に好適であり、10質量%以下であると、本実施形態の組成物を塗布した毛髪、皮膚のべたつき抑制に好適である。
【0031】
上記(C)成分であるPOE・POPデシルテトラデシルエーテルは、デシルテトラデカノールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加重合したものであり、例えば、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(12E.O.)(6P.O.)、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(20E.O.)(6P.O.)、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(30E.O.)(6P.O.)、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(24E.O.)(13P.O.)、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(10E.O.)(20P.O.)が挙げられる(「E.O.」の前の数値は、酸化エチレンの平均付加モルを表し、「P.O.」の前の数値は、酸化プロピレンの平均付加モルを表す。以下、同じ。)。このPOE・POPデシルテトラデシルエーテルにおいて、酸化エチレンの平均付加モル数は、10以上が良く、酸化エチレンの平均付加モル数の上限は、例えば30であり、酸化プロピレンの平均付加モル数は、5以上が良く、酸化プロピレンの平均付加モル数の上限は、例えば20である。
【0032】
上記(C)成分であるPOEフィトステロールは、植物から得られるステロールのポリエチレングリコールエーテルであり、例えば、POEフィトステロール(5E.O.)、POEフィトステロール(10E.O.)、POEフィトステロール(20E.O.)、POEフィトステロール(30E.O.)が挙げられる。このPOEフィトステロールにおいて、酸化エチレンの平均付加モル数は、5以上が良く、その平均付加モル数の上限は、例えば30である。
【0033】
上記(C)成分であるPOE硬化ヒマシ油は、水添ヒマシ油のポリエチレングリコールエーテルであって、酸化エチレンの平均付加モル数が10以上である。このPOE硬化ヒマシ油としては、例えば、POE硬化ヒマシ油(10E.O.)、POE硬化ヒマシ油(20E.O.)、POE硬化ヒマシ油(30E.O.)、POE硬化ヒマシ油(40E.O.)、
POE硬化ヒマシ油(50E.O.)、POE硬化ヒマシ油(60E.O.)、POE硬化ヒマシ油(80E.O.)が挙げられる。当該POE硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数の上限は、例えば80である。
【0034】
上記(C)成分であるデカオレイン酸ポリグリセリルは、オレイン酸とポリグリセリンのデカエステルであり、例えば、デカオレイン酸ポリグリセリル-10が挙げられる。このデカオレイン酸ポリグリセリルにおけるグリセリンの平均付加モル数は、例えば、5以上20以下である。
【0035】
上記(C)成分であるトリイソステアリン酸POEグリセリルは、イソステアリン酸とポリオキシエチレングリセリンとのトリエステルであり、例えば、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(10E.O.)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(15E.O.)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(30E.O.)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(40E.O.)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(50E.O.)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(60E.O.)が挙げられる。このトリイソステアリン酸POEグリセリルにおいて、酸化エチレンの平均付加モル数は、10以上が良く、その酸化エチレンの平均付加モル数の上限は、例えば30である。
【0036】
上記(C)成分であるPOEセチルエーテルは、セタノールのポリエチレングリコールエーテルであり、例えば、POEセチルエーテル(10E.O.)、POEセチルエーテル(15E.O.)、POEセチルエーテル(20E.O.)、POEセチルエーテル(23E.O.)、POEセチルエーテル(25E.O.)、POEセチルエーテル(30E.O.)、POEセチルエーテル(40E.O.)が挙げられる。このPOEセチルエーテルにおいて、酸化エチレンの平均付加モル数は、10以上が良く、その酸化エチレンの平均付加モル数の上限は、例えば40である。
【0037】
本実施形態の組成物には、(C)成分の中でも、POE・POPデシルテトラデシルエーテル、POEフィトステロール、又は、POE・POPデシルテトラデシルエーテル及びPOEフィトステロールが配合されていると好適である。この配合によれば、25~30度の常温を超える温度に本実施形態の組成物を放置した場合であっても、(A)成分の分散安定性に優れる。POE・POPデシルテトラデシルエーテル及び/又はPOEフィトステロールを配合する場合、その配合する総量は、本実施形態の組成物において、0.3質量%以上7質量%以下が良く、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、1.0質量%以上3質量%以下がより好ましい。0.3質量%以上であると、(A)成分の分散安定性に好適であり、10質量%以下であると、本実施形態の組成物を塗布した毛髪、皮膚のべたつき抑制に好適である。
【0038】
((D)成分)
本実施形態の組成物には、水中油型乳化組成物を実現するために(D)成分である水が配合される。本実施形態の組成物における(D)成分の配合量は、当該組成物の粘度を低く抑えたい場合には、60質量%以上が良く、75質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
【0039】
(任意成分)
本実施形態の組成物には、上記の通りの任意成分を配合しても良い。この任意成分は、例えば、カチオン界面活性剤、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤である。
【0040】
(剤型)
本実施形態の組成物の剤型は、水中油型乳化組成物である限り特に限定されないが、例えば液状である。液状の剤型であったとしても、(A)成分の分散安定性に優れる。なお、本実施形態の組成物が液状である場合、使用する際には霧状にして毛髪又は皮膚に塗布しても良い。
【0041】
液状剤型の水中油型乳化組成物の一般的性質として、低粘度であるほど、油性成分の分散安定性が低下するが、本実施形態の組成物は、(A)成分の分散性を(B)成分及び(C)成分で高めているので、優れた分散性を実現できる。そして、本実施形態の組成物の粘度は、500mPa・s以下でも良く、100mPa・s以下でも良く、30mPa・s以下でも良く、10mPa・s以下でも良い。ここで粘度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製レオメーター「Thermo Scientific HAAKE MARS 40」を用いて、定常フローカーブモードにて、せん断速度(dγ/dt)50s-1、コーンプレートセンサー(直径35mm、傾斜角2°)、温度25℃の条件で、η(mPa・s)の値を採用したものである。
【0042】
また、本実施形態の組成物は、水中油型乳化組成物であるので、(A)成分が分散したものとなっている。この分散している(A)成分の体積平均粒子径は、(B)成分及び(C)成分の配合により微小となっており、(A)成分の分散安定性を高めるには、500nm以下が良く、300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい(体積平均粒子径の下限は、例えば30nm)。ここで、体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値であり、例えば太陽電子社製の測定装置「ELSZ-2000ZS」を用いて測定できる。なお、(A)成分の体積平均粒子径を小さくするには、(B)成分と(C)成分の配合量を増加させる方法などが挙げられる。
【0043】
(pH)
本実施形態の組成物のpHは、特に限定されないが、例えば3.0以上7.5以下である。
【0044】
(用途)
本実施形態の組成物は、例えば毛髪、皮膚、又は、毛髪及び皮膚に塗布して使用される。ここでの使用において、(A)成分の分散安定性が(B)成分及び(C)成分の配合により高まっており、当該組成物を保管した後の(A)成分の粒子径変化が抑制されているから、当該組成物の感触などの品質が安定なものとなる。
【実施例0045】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0046】
実施例の液状水中油型乳化組成物及び比較例の水中油型乳化組成物を製造し、粘度及び体積平均粒子径の測定、並びに、安定性の確認を行った。
【0047】
(水中油型乳化組成物)
テトラオレイン酸POEソルビット(30E.O.)、テトラオレイン酸POEソルビット(6E.O.)、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(30E.O.)(6P.O.)、POE・POPデシルテトラデシルエーテル(20E.O.)(6P.O.)、POEフィトステロール(10E.O.)、POE硬化ヒマシ油(30E.O.)、デカオレイン酸ポリグリセリル-10、POEセチルエーテル(10E.O.)、POEラウリルエーテル(5E.O.)、イソノナン酸2-エチルヘキシル、スクワラン、アンズ核油、パルミチン酸2-エチルヘキシル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、フェノキシエタノール、イソペンチルジオール、香料、及び水を使用し、実施例の液状水中油型乳化組成物及び比較例の水中油型乳化組成物を製造した。使用した成分及びその配合量は、下記表1-1、1-2、2の通りとした。下記表中、「残余」とは製造した組成物の全量を100質量%にする量を意味する。
【0048】
なお、実施例及び比較例の水中油型乳化組成物の製造は、60℃程度のイソペンチルジオール及び水以外の成分の混合液に、60℃程度のイソペンチルジオール及び水の混合液を、撹拌しながら添加し、常温にまで冷却することで行った。
【0049】
(粘度)
実施例及び比較例の水中油型乳化組成物の粘度を測定した。この測定では、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製レオメーター「Thermo Scientific HAAKE MARS 40」を用いて、定常フローカーブモードにて、せん断速度(dγ/dt)50s-1、コーンプレートセンサー(直径35mm、傾斜角2°)、温度25℃の条件で、η(mPa・s)の値を採用した。
【0050】
(体積平均粒子径)
実施例及び比較例の水中油型乳化組成物に分散する体積平均粒子径について、太陽電子社製の測定装置「ELSZ-2000ZS」を使用し、動的光散乱法により測定した。
【0051】
(安定性)
実施例及び比較例の水中油型乳化組成物について、25℃で15日間放置、及び50℃で15日間放置し、変化の有無、油相と水相の分離の有無を目視確認することで、油性成分である(A)成分の分散安定性を評価した。この放置するに際しては、透明PET樹脂製ボトル容器(直径:40mm、高さ:114mm)に水中油型乳化組成物を収容した。
【0052】
下表1-1、1-2、2に、実施例及び比較例の水中油型乳化組成物を製造する際に使用した成分、成分の配合量と共に、粘度及び体積平均粒子径の測定結果、安定性の評価結果を示す。
【0053】
【0054】
【0055】
上記表1-1、1-2における25℃で行った安定性の結果について、(B)成分及び(C)成分を配合した実施例1a~1gでは変化が無かった一方で、(B)成分及び/又は(C)成分を配合しなかった比較例1a~1iでは分離が認められた。また、(C)成分として、POE・POPデシルテトラデシルエーテル又はPOEフィトステロールを配合した実施例1a~1dでは、50℃で行った安定性の結果についても変化が無く、より優れた安定性が確認された。
【0056】
【0057】
上記表2の25℃、50℃の安定性の結果において、(A)成分の種類に関わらず、変化が無い結果であったことを確認できる。