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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086306
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
F16K11/07 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200730
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】福島 亮
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA17
3H067BB08
3H067CC60
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD33
3H067EA15
3H067EA17
3H067EC08
3H067FF17
3H067GG15
3H067GG22
(57)【要約】
【課題】供給ポートからアクチュエータに導かれる作動流体の流量を増加させる。
【解決手段】弁装置100は、供給通路195,196,197と、供給側ランド部171と、を有するメインスプール170と、導出通路123を有するバルブブロック10と、を備え、供給通路195は、メインスプール170が中立位置から軸方向における一方のストローク端に向けて移動する過程で供給ポート121aと導出通路123とを連通し、供給通路196は、メインスプール170が中立位置から軸方向における他方のストローク端に向けて移動する過程で供給ポート121bと導出通路123とを連通し、供給通路197は、メインスプール170が一方のストローク端に向けて移動する過程で供給ポート121bと導出通路123とを連通し、メインスプール170が他方のストローク端に向けて移動する過程で供給ポート121aと導出通路123とを連通する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧ポンプからアクチュエータへ供給される作動流体の流れを制御する弁装置であって、
軸方向に移動可能なスプールと、
前記スプールを摺動自在に収容するバルブボディと、を備え、
前記バルブボディは、
前記流体圧ポンプから吐出される作動流体がそれぞれ供給される第一及び第二供給ポートと、
前記アクチュエータに連通する第一及び第二アクチュエータ通路と、
タンクに連通する排出通路と、
前記第一及び第二供給ポートからの作動流体を前記第一及び第二アクチュエータ通路に導く導出通路と、を有し、
前記スプールは、
前記スプールの移動に伴い前記第一供給ポートからの作動流体を前記導出通路に導くとともに通過する作動流体の流れに抵抗を付与する第一供給通路と、
前記スプールの移動に伴い前記第二供給ポートからの作動流体を前記導出通路に導くとともに通過する作動流体の流れに抵抗を付与する第二供給通路と、
前記第一供給ポートと前記導出通路、及び前記第二供給ポートと前記導出通路とをそれぞれ連通可能であり通過する作動流体に抵抗を付与する第三供給通路と、
前記第一、第二、及び第三供給通路と、前記導出通路と、の連通を遮断可能なランド部と、を有し、
前記ランド部は、前記スプールが中立位置にある状態では、前記第一供給ポートと前記導出通路、及び前記第二供給ポートと前記導出通路との連通を遮断し、
前記第一供給通路は、前記スプールが前記中立位置から軸方向における一方のストローク端に向けて移動する過程で前記第一供給ポートと前記導出通路とを連通し、
前記第二供給通路は、前記スプールが前記中立位置から軸方向における他方のストローク端に向けて移動する過程で前記第二供給ポートと前記導出通路とを連通し、
前記第三供給通路は、前記スプールが前記一方のストローク端に向けて移動する過程で前記第二供給ポートと前記導出通路とを連通し、前記スプールが前記他方のストローク端に向けて移動する過程で前記第一供給ポートと前記導出通路とを連通することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置であって、
前記バルブボディには、前記スプールを摺動自在に収容する収容孔が設けられ、
前記収容孔には、前記第一供給ポート、前記第二供給ポート、及び前記導出通路がそれぞれ開口するとともに、前記導出通路の開口が、前記軸方向において前記第一供給ポートの開口と前記第二供給ポートの開口との間に設けられ、
前記スプールが前記一方のストローク端に向けて移動する過程と、前記スプールが前記他方のストローク端に向けて移動する過程と、の両方で、前記収容孔の内部を通じて前記第一供給ポートの前記開口から前記導出通路の前記開口に向かって作動流体が導かれるとともに、前記収容孔の内部を通じて前記第二供給ポートの前記開口から前記導出通路の前記開口に向かって作動流体が導かれることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弁装置であって、
前記第三供給通路は、前記ランド部の外周面に開口し、前記第一供給ポートと前記導出通路、及び前記第二供給ポートと前記導出通路とをそれぞれ連通可能な連通ノッチを有することを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バルブ本体と、バルブ本体に摺動自在に組み込んだスプールと、ポンプに接続した一対の供給ポートと、一対の供給ポート間に形成されスプールの移動位置に応じていずれかの供給ポートに連通する導入ポートと、アクチュエータに連通するアクチュエータポートと、導入ポートに導かれた流体が供給されるとともにスプールの移動位置に応じてアクチュエータポートに連通するブリッジ通路と、を備える多連形切換弁が開示されている。スプールのほぼ中央には第1環状溝が設けられ、第1環状溝の両側にはノッチが形成される。
【0003】
特許文献1に記載の多連形切換弁は、スプールが中立位置にある状態では導入ポートと供給ポートとの連通が遮断される。スプールが右方向に移動すると、一方の供給ポートが第1環状溝及びノッチを介して導入ポートに連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-8386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の多連形切換弁では、一方の供給ポートから導入ポートに流れ込む作動流体の流量は、ノッチの開口面積によって制御される。しかしながら、ノッチはスプールの外周面に設けられ、スプールの外径によってノッチの開口面積の上限が決まるため、特許文献1に記載の多連形切換弁では、ノッチの開口面積を大きくしようとしても上限がある。よって、特許文献1に記載の多連形切換弁では、供給ポートから導入ポートを通じてアクチュエータに導かれる作動流体の流量を増加させることは難しい。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、弁装置において供給ポートからアクチュエータに導かれる作動流体の流量を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体圧ポンプからアクチュエータへ供給される作動流体の流れを制御する弁装置であって、軸方向に移動可能なスプールと、スプールを摺動自在に収容するバルブボディと、を備え、バルブボディは、流体圧ポンプから吐出される作動流体がそれぞれ供給される第一及び第二供給ポートと、アクチュエータに連通する第一及び第二アクチュエータ通路と、タンクに連通する排出通路と、第一及び第二供給ポートからの作動流体を第一及び第二アクチュエータ通路に導く導出通路と、を有し、スプールは、スプールの移動に伴い第一供給ポートからの作動流体を導出通路に導くとともに通過する作動流体の流れに抵抗を付与する第一供給通路と、スプールの移動に伴い第二供給ポートからの作動流体を導出通路に導くとともに通過する作動流体の流れに抵抗を付与する第二供給通路と、第一供給ポートと導出通路、及び第二供給ポートと導出通路とをそれぞれ連通可能であり通過する作動流体に抵抗を付与する第三供給通路と、第一、第二、及び第三供給通路と、導出通路と、の連通を遮断可能なランド部と、を有し、ランド部は、スプールが中立位置にある状態では、第一供給ポートと導出通路、及び第二供給ポートと導出通路との連通を遮断し、第一供給通路は、スプールが中立位置から軸方向における一方のストローク端に向けて移動する過程で第一供給ポートと導出通路とを連通し、第二供給通路は、スプールが中立位置から軸方向における他方のストローク端に向けて移動する過程で第二供給ポートと導出通路とを連通し、第三供給通路は、スプールが一方のストローク端に向けて移動する過程で第二供給ポートと導出通路とを連通し、スプールが他方のストローク端に向けて移動する過程で第一供給ポートと導出通路とを連通することを特徴とする。
【0008】
この発明では、スプールが、一方のストローク端において第二供給ポートと導出通路とを連通し、他方のストローク端において第一供給ポートと導出通路とを連通する第三供給通路を有する。これにより、スプールが両方のストローク端のどちらに移動しても、第一及び第二供給ポートのいずれか一方からではなく両方から導出通路に作動流体が導かれる。そのため、供給ポートからアクチュエータに導かれる作動流体の流量が増加される。
【0009】
本発明は、バルブボディには、スプールを摺動自在に収容する収容孔が設けられ、収容孔には、第一供給ポート、第二供給ポート、及び導出通路がそれぞれ開口するとともに、導出通路の開口が、軸方向において第一供給ポートの開口と第二供給ポートの開口との間に設けられ、スプールが一方のストローク端に向けて移動する過程と、スプールが他方のストローク端に向けて移動する過程と、の両方で、収容孔の内部を通じて第一供給ポートの開口から導出通路の開口に向かって作動流体が導かれるとともに、収容孔の内部を通じて第二供給ポートの開口から導出通路の開口に向かって作動流体が導かれることを特徴とする。
【0010】
この発明では、第一供給ポートから導出通路に作動流体が導かれる際に生じる流体力と、第二供給ポートから導出通路に作動流体が導かれる際に生じる流体力とを互いに打ち消すことができる。
【0011】
本発明は、第三供給通路は、ランド部の外周面に開口し、第一供給ポートと導出通路、及び第二供給ポートと導出通路とをそれぞれ連通可能な連通ノッチを有することを特徴とする。
【0012】
この発明では、第三供給通路の連通ノッチ、第一供給通路、及び第二供給通路により、第一及び第二供給ポートの両方と導出通路とを連通することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁装置において供給ポートからアクチュエータに導かれる作動流体の流量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る弁装置を示す断面図であり、メインスプールが中立位置にある状態を示す。
図2】本発明の実施形態に係る弁装置を示す断面図であり、メインスプールが前進位置に移動した状態を示す。
図3】本発明の実施形態に係る弁装置を示す断面図であり、メインスプールが後退位置に移動した状態を示す。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る弁装置のメインスプールの供給側ランド部を拡大して示す拡大断面図であり、メインスプールが中立位置にある状態を示す。
図5】本発明の実施形態の変形例に係る弁装置のメインスプールの供給側ランド部を拡大して示す拡大断面図であり、図4に対応して示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る弁装置について説明する。弁装置は、走行装置を備えた建設機械、農業機械、産業機械等の作業機械に搭載される。以下では、作業機械としてのクローラ式の油圧ショベルに搭載される弁装置を一例に説明する。油圧ショベルのアクチュエータの駆動には、作動流体として作動油を用いる例について説明するが、作動流体には作動水等の他の流体を用いてもよい。
【0016】
図示しないが、油圧ショベルは、走行部と、走行部の上部に旋回可能に設けられる旋回部と、旋回部に設けられる掘削部と、を備える。走行部は、クローラを有する。クローラが、後述するアクチュエータとしての走行モータ111によって駆動されることにより、油圧ショベルが走行する。掘削部は、旋回部に回動可能に取り付けられるブームと、ブームに回動可能に取り付けられるアームと、アームに回動可能に取り付けられるバケットと、を備える。
【0017】
油圧ショベルは、エンジン(不図示)と、エンジンにより駆動され作動油を吐出する流体圧ポンプとしてのポンプ110と、ポンプ110から吐出される作動油から、走行部、旋回部、掘削部等を駆動するためのアクチュエータへ供給される作動油の流れを制御する弁装置100と、弁装置100から作動油が還流するタンク119と、を備える。本実施形態では、油圧ショベルは、複数の弁装置100と、複数のアクチュエータと、を備え、各弁装置100により各アクチュエータの動作を制御する。
【0018】
図1~3を参照して、弁装置100について詳しく説明する。本実施形態では、アクチュエータとして、走行部駆動用の油圧モータである走行モータ111の動作を制御する弁装置100を例にして説明する。図1~3は弁装置100を示す断面図であり、図1は、メインスプール170が中立位置にある状態を示す。図2は、メインスプール170が前進位置(中立位置から図1~3における左側)に移動した状態を示す。図3は、メインスプール170が後退位置(中立位置から図1~3における右側)に移動した状態を示す。なお、図2,3では、ポンプ110、走行モータ111、タンク119、及び後述する第1パイロット圧室135a、第2パイロット圧室135b等の記載を省略している。
【0019】
図1に示すように、弁装置100は、軸方向に移動可能なスプールとしてのメインスプール170と、メインスプール170の軸方向に直交する方向に移動するコンペンセータスプール180と、メインスプール170及びコンペンセータスプール180を摺動自在に収容するバルブボディとしてのバルブブロック10と、を備える。
【0020】
メインスプール170は、走行操作指令に基づいて軸方向に移動する。走行操作指令は、走行操作レバー(不図示)の操作量に応じてパイロット圧出力部(不図示)から後述の第1パイロット圧室135aまたは第2パイロット圧室135bに出力されるパイロット圧に相当する。
【0021】
バルブブロック10には、メインスプール170を摺動自在に収容する収容孔としてのメイン収容孔150と、コンペンセータスプール180を摺動自在に収容するサブ収容孔160と、が設けられる。バルブブロック10及びメインスプール170の構造は、略左右対称形状である。
【0022】
また、弁装置100は、メインスプール170の駆動を制御する第1パイロット圧室135a及び第2パイロット圧室135bと、第1パイロット圧室135aに設けられメインスプール170をその軸方向に沿って付勢するセンタリングスプリング137と、メインスプール170の後述する他方のストローク端の位置を規定する位置規定部138と、を備える。
【0023】
メインスプール170は、第1パイロット圧室135a及び第2パイロット圧室135bがタンク119に接続され、第1パイロット圧室135a及び第2パイロット圧室135bにパイロット圧が作用していない場合、センタリングスプリング137の付勢力によって中立位置に保持される。第1パイロット圧室135aにパイロット圧が作用すると、メインスプール170は中立位置から図1における左側に移動して前進位置に切り換えられる。メインスプール170が前進位置に切り換えられると、油圧ショベルが前進するように走行モータ111に作動油が供給される。第2パイロット圧室135bにパイロット圧が作用すると、メインスプール170は中立位置から図1における右側に移動して後退位置に切り換えられる。メインスプール170が後退位置に切り換えられると、油圧ショベルが後退するように走行モータ111に作動油が供給される。
【0024】
バルブブロック10は、ポンプ110から吐出される作動油がそれぞれ供給される第一及び第二供給ポート121a,121bと、走行モータ111に連通する第一及び第二アクチュエータ通路125a,125bと、タンク119に連通する排出通路129と、第一及び第二供給ポート121a,121bからの作動油を第一及び第二アクチュエータ通路125a,125bに導く導出通路123と、を有する。第一及び第二供給ポート121a,121b、第一及び第二アクチュエータ通路125a,125b、排出通路129、導出通路123は、メイン収容孔150にそれぞれ開口する。
【0025】
走行モータ111は、弁装置100によりポンプ110から第一及び第二アクチュエータ通路125a,125bを通じて作動油が供給されることで駆動する。
【0026】
ポンプ110から第一及び第二供給ポート121a,121bに供給される作動油は、導出通路123及び第一アクチュエータ通路125a、または、導出通路123及び第二アクチュエータ通路125bを通じて走行モータ111に導かれる。また、走行モータ111の作動油は、第一及び第二アクチュエータ通路125a,125bから排出通路129を通じてタンク119に排出される。
【0027】
導出通路123は、メイン収容孔150から径方向に延びる第一通路123aと、第一通路123aから二方向に延びる第二及び第三通路123b,123cと、を有する。第二及び第三通路123b,123cにより、導出通路123はブリッジ状を呈する、いわゆるブリッジ通路を構成する。
【0028】
導出通路123の第一通路123aにはサブ収容孔160の一部が形成される。第一通路123aは、メイン収容孔150及びサブ収容孔160に連通する。第二及び第三通路123b,123cの間には、コンペンセータスプール180が介装される。第二及び第三通路123b,123cは、それぞれの一端がメイン収容孔150に連通し、他端が第一通路123a及びサブ収容孔160に連通する。
【0029】
第一アクチュエータ通路125aは、バルブブロック10の外周面に開口する第一アクチュエータポート126a及びメイン収容孔150に連通し、第二アクチュエータ通路125bは、バルブブロック10の外周面に開口する第二アクチュエータポート126b及びメイン収容孔150に連通する。また、排出通路129は、軸方向におけるメイン収容孔150の両端部近傍及びタンク119に連通する。
【0030】
このように、メイン収容孔150は、図1における右側から左側に向かって、排出通路129、第一アクチュエータ通路125a、導出通路123の第二通路123b、第一供給ポート121a、導出通路123の第一通路123a、第二供給ポート121b、導出通路123の第三通路123c、第二アクチュエータ通路125b、及び排出通路129の順に、各通路及び各ポートに連通する。つまり、メイン収容孔150には、導出通路123の第一通路123aの開口が、軸方向において第一供給ポート121aの開口と第二供給ポート121bの開口との間に設けられる。なお、特許請求の範囲における「導出通路の開口」とは、導出通路123の第一通路123aの開口のことを指す。
【0031】
メインスプール170は、メイン収容孔150の内周面に摺接する円柱状のランド部を複数有する。具体的には、メインスプール170は、メインスプール170の軸方向の中心部に設けられる供給側ランド部171と、供給側ランド部171が間に位置するように設けられる第一及び第二導出側ランド部172a,172bと、第一及び第二導出側ランド部172a,172bが間に位置するように設けられる第一及び第二排出側ランド部173a,173bと、を有する。供給側ランド部171が、特許請求の範囲における「ランド部」に相当する。
【0032】
各ランド部は、軸方向一端(図1における右側)から軸方向他端(図1における左側)に向かって、第一排出側ランド部173a、第一導出側ランド部172a、供給側ランド部171、第二導出側ランド部172b、及び第二排出側ランド部173bの順に設けられる。
【0033】
供給側ランド部171は、外周面によって、第一及び第二供給ポート121a,121bと導出通路123の第一通路123aとの連通を遮断可能である。第一導出側ランド部172aは、外周面によって、導出通路123の第二通路123bと第一アクチュエータ通路125aとの連通を遮断可能であり、第二導出側ランド部172bは、外周面によって、導出通路123の第三通路123cと第二アクチュエータ通路125bとの連通を遮断可能である。第一排出側ランド部173aは、外周面によって、第一アクチュエータ通路125aと排出通路129との連通を遮断可能であり、第二排出側ランド部173bは、外周面によって、第二アクチュエータ通路125bと排出通路129との連通を遮断可能である。
【0034】
第二排出側ランド部173bは、第2パイロット圧室135bの内壁に接触してメインスプール170の一方のストローク端を規定する。また、第一排出側ランド部173aには、軸方向に突出する突出部174が設けられる。突出部174は、位置規定部138に接触してメインスプール170の他方のストローク端を規定する。
【0035】
各ランド部間には、環状溝が設けられる。供給側ランド部171と第一導出側ランド部172aとの間には、供給側ランド部171の一方の端部に臨む第一環状溝175が設けられる。供給側ランド部171と第二導出側ランド部172bとの間には、供給側ランド部171の他方の端部に臨む第二環状溝176が設けられる。第一導出側ランド部172aと第一排出側ランド部173aとの間には、第三環状溝177が設けられる。第二導出側ランド部172bと第二排出側ランド部173bとの間には、第四環状溝178が設けられる。
【0036】
供給側ランド部171には、第一環状溝175に開口する第一ノッチ191と、第二環状溝176に開口する第二ノッチ192と、供給側ランド部171の外周面に開口する連通ノッチ193と、が設けられる。
【0037】
第一ノッチ191は、供給側ランド部171の外周面に設けられ、供給側ランド部171の一方の端部からメインスプール170の軸方向に延びるとともに周方向に等間隔を空けて複数設けられる。第一ノッチ191は、メインスプール170の軸方向における長さが全て同じではなく、一部の第一ノッチ191が他の第一ノッチ191とはメインスプール170の軸方向における長さが異なって設けられる。第一ノッチ191及び第一環状溝175によって、メインスプール170の移動に伴い第一供給ポート121aからの作動油を導出通路123に導くとともに通過する作動油の流れに抵抗を付与する第一供給通路195が形成される。
【0038】
第一ノッチ191は、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一供給ポート121aに臨み、導出通路123の第一通路123aには臨まない。よって、第一供給通路195は、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一供給ポート121aと導出通路123とを連通しない。図2に示すように、メインスプール170が前進位置(図1~3における左側)、つまり、中立位置から軸方向における一方のストローク端に移動すると、第一環状溝175は第一供給ポート121aに臨み、第一ノッチ191は導出通路123の第一通路123aに臨んで第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する。つまり、第一供給通路195は、メインスプール170が中立位置から軸方向における一方のストローク端に向けて移動する過程で第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する。一方のストローク端とは、具体的には、メインスプール170の第二排出側ランド部173bが第2パイロット圧室135bの内壁に接触した状態である。なお、第一ノッチ191は、一つのみ設けられてもよく、周方向に異なった間隔を空けて複数設けられてもよい。また、第一ノッチ191は、全てが同じ形状で複数設けられてもよい。
【0039】
第二ノッチ192は、供給側ランド部171の外周面に設けられ、供給側ランド部171の他方の端部からメインスプール170の軸方向に延びるとともに周方向に等間隔を空けて複数設けられる。第二ノッチ192は、メインスプール170の軸方向における長さが全て同じではなく、一部の第二ノッチ192が他の第二ノッチ192とはメインスプール170の軸方向における長さが異なって設けられる。第二ノッチ192及び第二環状溝176によって、メインスプール170の移動に伴い第二供給ポート121bからの作動油を導出通路123に導くとともに通過する作動油の流れに抵抗を付与する第二供給通路196が形成される。
【0040】
図1に示すように、第二ノッチ192は、メインスプール170が中立位置にある状態では、第二供給ポート121bに臨み、導出通路123の第一通路123aには臨まない。よって、第二供給通路196は、メインスプール170が中立位置にある状態では、第二供給ポート121bと導出通路123とを連通しない。図3に示すように、メインスプール170が後退位置(図1~3における右側)、つまり、中立位置から軸方向における他方のストローク端に移動すると、第二環状溝176は第二供給ポート121bに臨み、第二ノッチ192は導出通路123の第一通路123aに臨んで第二供給ポート121bと導出通路123とを連通する。つまり、第二供給通路196は、メインスプール170が中立位置から軸方向における他方のストローク端に向けて移動する過程で第二供給ポート121bと導出通路123とを連通する。他方のストローク端とは、具体的には、メインスプール170の突出部174が位置規定部138に接触した状態である。なお、第二ノッチ192は、一つのみ設けられてもよく、周方向に異なった間隔を空けて複数設けられてもよい。また、第二ノッチ192は、全てが同じ形状で複数設けられてもよい。
【0041】
連通ノッチ193は、メインスプール170の軸方向において第一ノッチ191と第二ノッチ192の間に軸方向に延びて設けられ、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とをそれぞれ連通可能である。連通ノッチ193によって、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とをそれぞれ連通可能であり通過する作動油に抵抗を付与する第三供給通路197が形成される。連通ノッチ193は、第一環状溝175及び第二環状溝176には開口しない。
【0042】
図1に示すように、連通ノッチ193は、メインスプール170が中立位置にある状態では、導出通路123の第一通路123aに臨み、第一供給ポート121a及び第二供給ポート121bには臨まない。よって、第三供給通路197は、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とを連通しない。
【0043】
図2に示すように、メインスプール170が前進位置に移動すると、連通ノッチ193は第二供給ポート121b及び導出通路123の第一通路123aに臨み、第三供給通路197は第二供給ポート121bと導出通路123とを連通する。つまり、第三供給通路197は、メインスプール170が中立位置から軸方向における一方のストローク端に向けて移動する過程で、メイン収容孔150の内部を通じて第二供給ポート121bと導出通路123とを連通する。図3に示すように、メインスプール170が後退位置に移動すると、連通ノッチ193は第一供給ポート121a及び導出通路123の第一通路123aに臨み、第三供給通路197は第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する。つまり、第三供給通路197は、メインスプール170が中立位置から軸方向における他方のストローク端に向けて移動する過程で、メイン収容孔150の内部を通じて第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する。なお、連通ノッチ193は、一つのみ設けられてもよく、周方向に等間隔または異なった間隔を空けて複数設けられてもよい。
【0044】
このように、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123との連通が遮断される。図2に示すように、メインスプール170が前進位置に移動すると、第一供給通路195は第一供給ポート121aと導出通路123とを連通し、第三供給通路197は第二供給ポート121bと導出通路123とを連通する。図3に示すように、メインスプール170が後退位置に移動すると、第三供給通路197は第一供給ポート121aと導出通路123とを連通し、第二供給通路196は第二供給ポート121bと導出通路123とを連通する。つまり、本実施形態における弁装置100では、メインスプール170が中立位置から両方のストローク端に移動すると、第一及び第二供給ポート121a,121bの両方と導出通路123とが連通する。
【0045】
このように、本実施形態においては、弁装置100は、メインスプール170が前進位置(一方のストローク端)に向けて移動する過程と、後退位置(他方のストローク端)に向けて移動する過程と、の両方で、メイン収容孔150の内部を通じて第一供給ポート121aの開口から導出通路123の開口に向かって作動油が導かれるとともに、メイン収容孔150の内部を通じて第二供給ポート121bの開口から導出通路123の開口に向かって作動油が導かれる。つまり、メイン収容孔150の内部における第一供給ポート121aから導出通路123への作動油の流れと第二供給ポート121bから導出通路123への作動油の流れは、メインスプール170の軸方向において互いに逆向きである。これにより、第一供給ポート121aから導出通路123に導かれる作動油からメインスプール170に作用する流体力と、第二供給ポート121bから導出通路123に導かれる作動油からメインスプール170に作用する流体力と、を打ち消し合うことができる。よって、メインスプール170のヒステリシスを改善することができ、弁装置100の動作が改善される。
【0046】
なお、第一ノッチ191、第二ノッチ192、及び連通ノッチ193は、メインスプール170の軸方向に対して垂直な断面積がそれぞれ同じであっても、異なってもよい。また、メインスプール170が前進位置に向けて移動する過程において、第三供給通路197が第二供給ポート121bと導出通路123とを連通するタイミングは第一供給通路195が第一供給ポート121aと導出通路123とを連通するタイミングと同じであっても、異なってもよい。さらに、メインスプール170が後退位置に向けて移動する過程において、第三供給通路197が第一供給ポート121aと導出通路123とを連通するタイミングは第二供給通路196が第二供給ポート121bと導出通路123とを連通するタイミングと同じであっても、異なってもよい。
【0047】
このように、供給側ランド部171には、第一ノッチ191、第二ノッチ192、及び連通ノッチ193が設けられる。供給側ランド部171は、外周面における第一ノッチ191、第二ノッチ192、及び連通ノッチ193が設けられない領域によって、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123との連通を遮断する。言い換えれば、供給側ランド部171は、第一、第二、及び第三供給通路195,196,197と、導出通路123と、の連通を遮断可能であり、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123との連通を遮断する。
【0048】
コンペンセータスプール180は、複数の弁装置100により制御されるアクチュエータの複数を同時に操作したとき、各アクチュエータ間の負荷を調整する。このように、本実施形態における油圧ショベルが備える複数の弁装置100では、コンペンセータスプール180を用いたロードセンシングシステムが採用されている。
【0049】
コンペンセータスプール180は、一端(図1~3における下端)が導出通路123の第一通路123aに臨んで設けられ、他端(図1~3における上端)が、最高負荷圧(複数の弁装置100により制御されるアクチュエータの負荷圧のうち最も高い負荷圧)が導かれる最高負荷圧室185に臨むように配置される。コンペンセータスプール180は、導出通路123の第一通路123aの圧力が、最高負荷圧よりも所定値だけ高くなるように補償する。これにより、複数の弁装置100によってアクチュエータを同時に駆動する際、アクチュエータの負荷圧の大小にかかわらず、弁装置100のメインスプール170の移動量に応じた流量の作動油を供給することができる。
【0050】
コンペンセータスプール180には、コンペンセータスプール180が最高負荷圧室185側に移動する初期段階において、導出通路123の第一通路123aから第二通路123b及び第三通路123cに通過する作動油に抵抗を付与する絞り部181が設けられる。第二通路123b及び第三通路123cに対する絞り部181の開度は、コンペンセータスプール180が最高負荷圧室185側に移動するにしたがって、大きくなる。
【0051】
コンペンセータスプール180には、その移動位置に応じて第二通路123b及び第三通路123cに対する開度を可変にした圧力導入部182が設けられる。第二通路123b及び第三通路123cに対する圧力導入部182の開度は、コンペンセータスプール180が最高負荷圧室185側に移動するにしたがって、小さくなる。
【0052】
また、コンペンセータスプール180には、高圧選択弁183が組み込まれる。高圧選択弁183は、一端(図1~3における下端)が圧力導入室184に臨み、他端(図1~3における上端)が最高負荷圧室185に臨むように配置される。高圧選択弁183は、最高負荷圧室185の圧力が、圧力導入室184の圧力よりも高いときには閉弁状態を維持する。一方、高圧選択弁183は、圧力導入室184の圧力が、最高負荷圧室185の圧力よりも高いときには開弁し、圧力導入室184の圧力を他の弁装置100の最高負荷圧室185に導く。
【0053】
図1図3を参照して、本実施形態に係る弁装置100の動作について説明する。
【0054】
油圧ショベルのオペレータが、運転室内に設けられる走行操作レバー(不図示)を操作すると、走行操作指令としてのパイロット圧が弁装置100の第1パイロット圧室135aまたは第2パイロット圧室135bに作用する。直進走行を行う場合、オペレータは、左走行操作レバーを前進側に傾けるとともに右走行操作レバーを前進側に傾ける。以下、左右の走行操作レバー(不図示)を同時に前進側に操作して、油圧ショベルを直進走行させる場合の弁装置100の動作として、メインスプール170及びコンペンセータスプール180の動作、及び弁装置100内の作動油の流れについて詳しく説明する。
【0055】
図1に示すように、走行操作レバーが中立位置に保持されていると、メインスプール170は中立位置に保持される。メインスプール170が中立位置にある状態では、供給側ランド部171の外周面によって第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123との連通が遮断されている。また、第一排出側ランド部173aの外周面によって第一アクチュエータ通路125aと排出通路129との連通が遮断され、第二排出側ランド部173bの外周面によって第二アクチュエータ通路125bと排出通路129との連通が遮断される。
【0056】
また、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一導出側ランド部172aの外周面によって導出通路123の第二通路123bと第一アクチュエータ通路125aとの連通が遮断され、第二導出側ランド部172bの外周面によって導出通路123の第三通路123cと第二アクチュエータ通路125bとの連通が遮断される。
【0057】
走行操作レバーの前進側への操作が開始されると、第1パイロット圧室135aにパイロット圧が作用し、メインスプール170が前進位置に移動する。図2に示すように、メインスプール170が前進位置(中立位置から図1~3における左側)に移動すると、第一供給ポート121aと導出通路123の第一通路123aとが第一供給通路195(具体的には、第一環状溝175及び第一ノッチ191)を通じて連通する。さらに、第二供給ポート121bと導出通路123の第一通路123aとが第三供給通路197(具体的には、連通ノッチ193)を通じて連通する。このように、第一通路123aには、第一及び第二供給ポート121a,121bの両方から作動油が導かれるため、第一及び第二供給ポート121a,121bの片方から作動油が導かれる場合と比較して、第一及び第二供給ポート121a,121bから第一通路123aに導かれる作動油の量が増加される。
【0058】
また、第一及び第二供給ポート121a,121bからの作動油は、第一ノッチ191及び連通ノッチ193によって絞られて第一通路123aに導かれる。仮に、作動油がノッチ等の絞りを介さずに第一及び第二供給ポート121a,121bから第一通路123aに導かれると、第一供給ポート121aと第一通路123a、及び第二供給ポート121bと第一通路123aが連通した瞬間に多くの作動油が第一通路123aに導かれ、第一通路123aに流入する作動油の流量を制御することができない。これに対し、本実施形態の弁装置100では、第一ノッチ191及び連通ノッチ193によって、第一通路123aに流入する作動油の流量を制御しつつ第一及び第二供給ポート121a,121bから第一通路123aに導かれる作動油の量が増加される。
【0059】
導出通路123の第一通路123aに作動油が導かれると、第一通路123aの圧力により、コンペンセータスプール180が最高負荷圧室185の圧力に抗して、図示上方に移動する。コンペンセータスプール180が図示上方に移動すると、絞り部181の開度が大きくなる。このため、絞り部181の開度が大きくなるにしたがって、導出通路123の第一通路123aから第二通路123b導かれる作動油の流量が増加する。
【0060】
メインスプール170が前進位置にある状態では、導出通路123の第二通路123bと第一アクチュエータ通路125aとがメインスプール170の第三環状溝177を通じて連通する。よって、第二通路123bに導かれた作動油は、第三環状溝177を通じて第一アクチュエータ通路125aに導かれる。
【0061】
第一アクチュエータ通路125aに導かれた作動油は、第一アクチュエータポート126aを通じて走行モータ111に供給され、走行モータ111が回転する。走行モータ111から排出された作動油は、第二アクチュエータポート126bを通じて第二アクチュエータ通路125bに導かれる。メインスプール170が前進位置にある状態では、第二アクチュエータ通路125bと排出通路129とがメインスプール170の第四環状溝178を通じて連通する。よって、第二アクチュエータ通路125bに導かれた作動油は、第四環状溝178を通じて排出通路129に導かれ、タンク119に排出される。
【0062】
なお、左右の走行操作レバーを後退側に操作したときには、メインスプール170の動きは上述の動きと逆になる。つまり、図3に示すように、メインスプール170が後退位置(中立位置から図1~3における右側)移動すると、第一供給ポート121aと導出通路123の第一通路123aとが第三供給通路197(具体的には、連通ノッチ193)を通じて連通する。さらに、第二供給ポート121bと導出通路123の第一通路123aとが第二供給通路196(具体的には、第二環状溝176及び第二ノッチ192)を通じて連通する。そして、導出通路123の第一通路123aから第三通路123c、及びメインスプール170の第四環状溝178を通じて第二アクチュエータ通路125bに作動油が導かれる。一方で、走行モータ111から排出された作動油は、第一アクチュエータポート126a、第一アクチュエータ通路125a、及び第三環状溝177を通じて排出通路129に導かれ、タンク119に排出される。
【0063】
このように、本実施形態における弁装置100は、メインスプール170が、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とをそれぞれ連通可能な第三供給通路197を有する。これにより、メインスプール170が両方のストローク端に移動すると、第一及び第二供給ポート121a,121bのいずれか一方からではなく両方から導出通路123に作動流体が導かれる。そのため、第一及び第二供給ポート121a,121bから導出通路123を通じて走行モータ111に導かれる作動油の流量が増加される。よって、走行モータ111の出力が増加する。
【0064】
さらに、本実施形態における弁装置100は、第一ノッチ191、第二ノッチ192、及び連通ノッチ193により、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とがそれぞれ連通される。よって、第一及び第二供給ポート121a,121bからの作動油が第一ノッチ191、第二ノッチ192、及び連通ノッチ193によって絞られて導かれるため、第一ノッチ191、第二ノッチ192、及び連通ノッチ193によって導出通路123の第一通路123aに流入する作動油の流量を制御しつつ第一通路123aに流入する作動油の流量を制御することができる。
【0065】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0066】
弁装置100は、メインスプール170が、前進位置(一方のストローク端)に向けて移動する過程で第二供給ポート121bと導出通路123とを連通し、後退位置(他方のストローク端)に向けて移動する過程で第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する第三供給通路197を有する。これにより、メインスプール170が両方のストローク端に移動すると、第一及び第二供給ポート121a,121bのいずれか一方からではなく両方から導出通路123に作動流体が導かれる。そのため、第一及び第二供給ポート121a,121bから導出通路123を通じて走行モータ111に導かれる作動油の流量が増加される。
【0067】
弁装置100では、メインスプール170が前進位置に向けて移動する過程と、後退位置に向けて移動する過程と、の両方で、メイン収容孔150の内部を通じて第一供給ポート121aの開口から導出通路123の開口に向かって作動油が導かれるとともに、メイン収容孔150の内部を通じて第二供給ポート121bの開口から導出通路123の開口に向かって作動油が導かれる。つまり、メイン収容孔150の内部における第一供給ポート121aから導出通路123への作動油の流れと第二供給ポート121bから導出通路123への作動油の流れは、メインスプール170の軸方向において互いに逆向きである。これにより、第一供給ポート121aから導出通路123に導かれる作動油からメインスプール170に作用する流体力と、第二供給ポート121bから導出通路123に導かれる作動油からメインスプール170に作用する流体力と、を打ち消し合うことができ、メインスプール170のヒステリシスが改善され、弁装置100の動作が改善される。
【0068】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0069】
<変形例>
上記実施形態では、第三供給通路197は、供給側ランド部171の外周面に形成される連通ノッチ193を有する。これに代えて、図4に示すように、第三供給通路197は、メインスプール170内を軸方向に貫通して設けられる第一貫通孔293aと、第一貫通孔293aと連通するとともに供給側ランド部171を径方向に貫通する複数の第二貫通孔293bと、を有してもよい。第二貫通孔293bは、メインスプール170の軸方向に並んで複数設けられる。複数の第二貫通孔293b同士は、第一貫通孔293aを通じて連通する。メインスプール170が前進位置(図4における左側)に移動すると、図4における一番左側の第二貫通孔293bと、一番右側の第二貫通孔293bと、を通じて第二供給ポート121bと導出通路123とが連通する。また、メインスプール170が後退位置(図4における右側)に移動すると、図4における一番右側の第二貫通孔293bと、一番左側の第二貫通孔293bと、を通じて第一供給ポート121aと導出通路123とが連通する。
【0070】
また、図5に示すように、メインスプール170の供給側ランド部171に小径部171aと、小径部171aを挟むような位置に設けられる一対の大径部171bと、小径部171aと一対の大径部171bとの間に設けられる一対のテーパ部171cと、が設けられてもよい。この場合、第三供給通路197は、連通ノッチ193に代えて、一対の大径部171bをそれぞれ径方向に貫通する一対の第一貫通孔393aと、一対の第一貫通孔393aのそれぞれと連通するとともにテーパ部171cに開口する複数の第二貫通孔393bと、を有してもよい。複数の第二貫通孔393bのそれぞれは、一対の第一貫通孔393aいずれかと連通するとともにテーパ部171cに開口する。メインスプール170が前進位置に移動すると、図5における左側の第一貫通孔393aと、当該第一貫通孔393aと連通する第二貫通孔393bと、を通じて第二供給ポート121bと導出通路123とが連通する。また、メインスプール170が後退位置に移動すると、図5における右側の第一貫通孔393aと、当該第一貫通孔393aと連通する第二貫通孔393bと、を通じて第一供給ポート121aと導出通路123とが連通する。これらの構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0072】
流体圧ポンプ110からアクチュエータとしての走行モータ111へ供給される作動流体の流れを制御する弁装置100は、軸方向に移動可能なスプールとしてのメインスプール170と、メインスプール170を摺動自在に収容するバルブボディとしてのバルブブロック10と、を備え、バルブブロック10は、流体圧ポンプ110から吐出される作動流体がそれぞれ供給される第一及び第二供給ポート121a,121bと、走行モータ111に連通する第一及び第二アクチュエータ通路125a,125bと、タンク119に連通する排出通路129と、第一及び第二供給ポート121a,121bからの作動流体を第一及び第二アクチュエータ通路125a,125bに導く導出通路123と、を有し、メインスプール170は、メインスプール170の移動に伴い第一供給ポート121aからの作動流体を導出通路123に導くとともに通過する作動流体の流れに抵抗を付与する第一供給通路195と、メインスプール170の移動に伴い第二供給ポート121bからの作動流体を導出通路123に導くとともに通過する作動流体の流れに抵抗を付与する第二供給通路196と、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とをそれぞれ連通可能であり通過する作動流体に抵抗を付与する第三供給通路197と、第一、第二、及び第三供給通路195,196,197と、導出通路123と、の連通を遮断可能なランド部としての供給側ランド部171と、を有し、供給側ランド部171は、メインスプール170が中立位置にある状態では、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123との連通を遮断し、第一供給通路195は、メインスプール170が中立位置から軸方向における一方のストローク端に向けて移動する過程で第一供給ポート121aと導出通路123とを連通し、第二供給通路196は、メインスプール170が中立位置から軸方向における他方のストローク端に向けて移動する過程で第二供給ポート121bと導出通路123とを連通し、第三供給通路197は、メインスプール170が一方のストローク端に向けて移動する過程で第二供給ポート121bと導出通路123とを連通し、メインスプール170が他方のストローク端に向けて移動する過程で第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する。
【0073】
この構成では、メインスプール170が、一方のストローク端において第二供給ポート121bと導出通路123とを連通し、他方のストローク端において第一供給ポート121aと導出通路123とを連通する第三供給通路197を有する。これにより、メインスプール170が両方のストローク端に移動すると、第一及び第二供給ポート121a,121bのいずれか一方からではなく両方から導出通路123に作動流体が導かれる。そのため、供給ポート121a,121bからアクチュエータに導かれる作動流体の流量が増加される。
【0074】
弁装置100は、バルブブロック10には、メインスプール170を摺動自在に収容する収容孔としてのメイン収容孔150が設けられ、メイン収容孔150には、第一供給ポート121a、第二供給ポート121b、及び導出通路123がそれぞれ開口するとともに、導出通路123の開口が、軸方向において第一供給ポート121aと第二供給ポート121bとの間に設けられ、メインスプール170が一方のストローク端に向けて移動する過程と、他方のストローク端に向けて移動する過程と、の両方で、メイン収容孔150の内部を通じて第一供給ポート121aの開口から導出通路123の開口に向かって作動油が導かれるとともに、メイン収容孔150の内部を通じて第二供給ポート121bの開口から導出通路123の開口に向かって作動油が導かれる。
【0075】
この構成では、第一供給ポート121aから導出通路123に作動流体が導かれる際に生じる流体力と、第二供給ポート121bから導出通路123に作動流体が導かれる際に生じる流体力とを互いに打ち消すことができる。
【0076】
弁装置100は、第三供給通路197が、供給側ランド部171の外周面に開口し、第一供給ポート121aと導出通路123、及び第二供給ポート121bと導出通路123とをそれぞれ連通可能な連通ノッチ193を有する。
【0077】
この構成では、第三供給通路197の連通ノッチ193、第一供給通路195、及び第二供給通路196により、第一及び第二供給ポート121a,121bの両方と導出通路123とを連通することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0079】
10・・・バルブブロック、100・・・弁装置、110・・・ポンプ(流体圧ポンプ)、111・・・走行モータ(アクチュエータ)、119・・・タンク、121a・・・第一供給ポート、121b・・・第二供給ポート、123・・・導出通路、125a・・・第一アクチュエータ通路、125b・・・第二アクチュエータ通路、129・・・排出通路、150・・・メイン収容孔(収容孔)、170・・・メインスプール(スプール)、171・・・供給側ランド部(ランド部)、175・・・第一環状溝、176・・・第二環状溝、193・・・連通ノッチ、195・・・第一供給通路、196・・・第二供給通路、197・・・第三供給通路
図1
図2
図3
図4
図5