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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086318
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】排熱回収システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20230615BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20230615BHJP
   F01K 23/06 20060101ALI20230615BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F01K25/10 C
F02G5/04 G
F02G5/04 P
F02G5/04 H
F01K23/06 Z
F01N5/02 A
F01N5/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200746
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA20
3G081BB04
3G081BB07
3G081BC07
3G081BD10
3G081DA03
(57)【要約】
【課題】内燃機関からの排熱が少ない場合でも排熱から回収した熱エネルギーを効率良く動力に還元可能な排熱回収システムを提供する。
【解決手段】排熱回収システムは、内燃機関から排出された排ガスの熱エネルギーを回収する高温側排熱回収部、及び高温側排熱回収部を通過した排ガスの熱エネルギーを回収する低温側排熱回収部、を含む排熱回収装置と、高温側排熱回収部に第1給水を導く第1の給水ライン、及び低温側排熱回収部に第2給水を導く第2の給水ライン、を含む給水ラインと、高温側排熱回収部で気化した第1給水の熱エネルギーにより第2給水を加熱させる蒸気熱交換器と、低沸点熱媒体を循環させる循環サイクルであって、低温側排熱回収部や蒸気熱交換器で加熱された第2給水の熱エネルギーにより、低沸点熱媒体を気化させる蒸発器、及び、蒸発器で気化した低沸点熱媒体により駆動するタービン、を含む循環サイクルと、備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された排熱回収システムであって、
前記内燃機関から排出された排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された高温側排熱回収部、及び、前記高温側排熱回収部を通過した排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された低温側排熱回収部、を含む排熱回収装置と、
前記排熱回収装置に給水を導くための給水ラインであって、前記高温側排熱回収部に前記給水である第1給水を導くための第1の給水ライン、及び、前記第1の給水ラインから分岐して、前記給水である第2給水を前記低温側排熱回収部に導くための第2の給水ライン、を含む給水ラインと、
前記高温側排熱回収部において気化された前記第1給水の熱エネルギーを前記第2給水に伝達し、前記第2給水を加熱させるように構成された蒸気熱交換器と、
水よりも沸点の低い低沸点熱媒体を循環させる循環サイクルであって、前記低温側排熱回収部および前記蒸気熱交換器の夫々で加熱された前記第2給水から回収した熱エネルギーにより、前記低沸点熱媒体を気化させるように構成された蒸発器、及び、前記蒸発器において気化された前記低沸点熱媒体により駆動するように構成されたタービン、を少なくとも含む循環サイクルと、備える、
排熱回収システム。
【請求項2】
前記低温側排熱回収部および前記蒸気熱交換器の夫々で加熱された前記第2給水を前記蒸発器に導くための第2給水導入ラインと、
前記第2給水導入ラインに設けられた混合チャンバと、
前記給水ラインから分岐して、前記給水を前記混合チャンバに導くための給水分岐ラインと、をさらに備える、
請求項1に記載の排熱回収システム。
【請求項3】
前記低温側排熱回収部を通過した排ガスの温度を取得可能に構成された排ガス温度取得装置と、
前記排ガス温度取得装置により取得される前記排ガスの温度が第1の所定温度に近づくように、前記第2の給水ラインを流れる前記第2給水の流量を調整可能に構成された給水量調整装置をさらに備える、
請求項2に記載の排熱回収システム。
【請求項4】
前記低温側排熱回収部は、
前記排ガスと前記第2給水との間で熱交換を行うように構成された第1の低温側熱交換器と、
前記第1の低温側熱交換器を通過した前記排ガスと前記第2給水との間で熱交換を行うように構成された第2の低温側熱交換器と、を含み、
前記排熱回収システムは、
前記第2の低温側熱交換器を通過した前記第2給水を前記第1の低温側熱交換器に導くための中継ラインをさらに備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の排熱回収システム。
【請求項5】
前記蒸気熱交換器は、前記中継ラインに設けられ、
前記排熱回収システムは、前記高温側排熱回収部で気化した前記第1給水を前記蒸気熱交換器に導くための第1の蒸気導入ラインをさらに備える、
請求項4に記載の排熱回収システム。
【請求項6】
前記低温側排熱回収部および前記蒸気熱交換器で加熱された前記第2給水の温度を取得可能に構成された第2給水温度取得装置と、
前記第2給水温度取得装置により取得される前記第2給水の温度が第2の所定温度以下になるように、前記第1の蒸気導入ラインを流れる前記第1給水の流量を調整可能に構成された第1の蒸気流量調整装置と、をさらに備える、
請求項5に記載の排熱回収システム。
【請求項7】
前記第2の給水ラインに設けられた第2給水予熱器であって、前記高温側排熱回収部で気化した前記第1給水の熱エネルギーを前記第2給水に伝達し、前記第2給水を加熱させるように構成された第2給水予熱器と、
前記高温側排熱回収部で気化した前記第1給水を前記第2給水予熱器に導くための第2の蒸気導入ラインと、をさらに備える、
請求項5又は6に記載の排熱回収システム。
【請求項8】
前記低温側排熱回収部を通過した前記排ガスの温度を取得可能に構成された排ガス温度取得装置と、
前記排ガス温度取得装置により取得される前記排ガスの温度が第3の所定温度以上になるように、前記第2の蒸気導入ラインを流れる前記第1給水の流量を調整可能に構成された第2の蒸気流量調整装置と、をさらに備える、
請求項7に記載の排熱回収システム。
【請求項9】
前記内燃機関を冷却した冷却水が前記内燃機関から回収した熱エネルギーを前記給水ラインに供給される前記給水に伝達し、前記給水を加熱させるように構成された給水予熱器をさらに備える、
請求項1に記載の排熱回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関から排出される排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された排熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排熱回収システムには、内燃機関(例えば、舶用主機エンジン)から排出される排ガスの熱エネルギーをエコノマイザなどにより回収し、この回収した排ガスの熱エネルギーにより発生させた蒸気により、発電機の蒸気タービンを駆動し、電力を回収するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5875253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、内燃機関(舶用主機エンジン)の低燃費化に伴い、内燃機関から排出される排ガスの熱エネルギーが減少している。内燃機関から排出される排ガスの熱エネルギーが少ないと、蒸気タービンを駆動して電力需要を賄うことができるだけの蒸気量を確保することが困難になる虞がある。
【0005】
特許文献1には、ガスエンジンから排出された排ガスを熱源として、タービンを備えるオーガニックランキンサイクル(ORC)を駆動させる発明が開示されている。特許文献1に記載の発明では、飽和蒸気を生成可能な排ガスの熱エネルギーを、オーガニックランキンサイクルを循環する熱媒体に伝達させる際に、排ガスと熱媒体との間で熱エネルギーを伝達する中間熱媒体が気化してしまう虞がある。上記中間熱媒体の気化を抑制するためには、排熱回収システムの構造の複雑化を招く虞がある。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、内燃機関からの排熱が少ない場合でも排熱から回収した熱エネルギーを効率良く動力に還元可能な排熱回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態にかかる排熱回収システムは、
内燃機関から排出される排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された排熱回収システムであって、
前記内燃機関から排出された排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された高温側排熱回収部、及び、前記高温側排熱回収部を通過した排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された低温側排熱回収部、を含む排熱回収装置と、
前記排熱回収装置に給水を導くための給水ラインであって、前記高温側排熱回収部に前記給水である第1給水を導くための第1の給水ライン、及び、前記第1の給水ラインから分岐して、前記給水である第2給水を前記低温側排熱回収部に導くための第2の給水ライン、を含む給水ラインと、
前記高温側排熱回収部において気化された前記第1給水の熱エネルギーを前記第2給水に伝達し、前記第2給水を加熱させるように構成された蒸気熱交換器と、
水よりも沸点の低い低沸点熱媒体を循環させる循環サイクルであって、前記低温側排熱回収部および前記蒸気熱交換器の夫々で加熱された前記第2給水から回収した熱エネルギーにより、前記低沸点熱媒体を気化させるように構成された蒸発器、及び、前記蒸発器において気化された前記低沸点熱媒体により駆動するように構成されたタービン、を少なくとも含む循環サイクルと、備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、内燃機関からの排熱が少ない場合でも排熱から回収した熱エネルギーを効率良く動力に還元可能な排熱回収システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態にかかる排熱回収システムを備える船舶の構成を概略的に示す概略構成図である。
図2】本開示の一実施形態にかかる排熱回収システムを備える船舶の構成を概略的に示す概略構成図である。
図3】本開示の一実施形態における給水予熱器を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0011】
(排熱回収システム)
図1は、本開示の一実施形態にかかる排熱回収システムを備える船舶の構成を概略的に示す概略構成図である。幾つかの実施形態にかかる排熱回収システム10は、内燃機関11から排出される排ガスの熱エネルギーを回収するように構成されたものである。排熱回収システム10は、図1に示されるように、内燃機関11から排出された排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された排熱回収装置20と、排熱回収装置20に給水を導くための給水ライン30と、蒸気熱交換器40と、循環サイクル50と、を少なくとも備える。
【0012】
図示される実施形態では、内燃機関11は、主機エンジン11Aを含む。排熱回収システム10は、主機エンジン11Aを備える船舶1に搭載されている。換言すると、船舶1は、排熱回収システム10および主機エンジン11Aを備える。船舶1は、水上に浮遊可能な構造体であり、主機エンジン11Aを駆動させることで自走可能に構成された構造体である。主機エンジン11Aは、供給される燃料(燃料ガスや燃料油)のエネルギーにより、主機エンジン11Aの駆動シャフトに機械的に接続された推進器(図示例では、プロペラ)12を駆動させる駆動力(推進力)を発生させるように構成されている。なお、他の実施形態では、排熱回収システム10は、船舶1以外の構造物、例えば、浮体や陸上に設けられた構造物に搭載されていてもよい。浮体は、自走するための推進器を有さない自走不能な構造体である。
【0013】
図示される実施形態では、排熱回収システム10は、内燃機関11から排出された排ガスを送るための排ガスライン13と、排ガスライン13に設けられた排ガスタービン14、および排ガスタービン14と同軸上に設けられたコンプレッサ15、を含む過給機16と、をさらに備える。
【0014】
(排熱回収装置、給水ライン)
排熱回収装置20は、内燃機関11から排出された排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された高温側排熱回収部21と、高温側排熱回収部21を通過した排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された低温側排熱回収部22と、を含む。給水ライン30は、高温側排熱回収部21に給水である第1給水を導くための第1の給水ライン31と、低温側排熱回収部22に給水である第2給水を導くための第2の給水ライン32と、を含む。
【0015】
高温側排熱回収部21は、内燃機関11から排出されて高温側排熱回収部21に導かれた排ガスと、第1の給水ライン31により高温側排熱回収部21に導かれた第1給水と、の間で熱交換を行うように構成されている。高温側排熱回収部21に導入される排ガスは、高温側排熱回収部21に導入される第1給水よりも高温である。高温側排熱回収部21における排ガスと第1給水との間の熱交換により、排ガスの熱エネルギーが第1給水に伝達される。これにより、高温側排熱回収部21において、排ガスが冷却されるととともに、第1給水が加熱されて気化する。以下、高温側排熱回収部21において気化した、気体の状態の第1給水を第1蒸気とする。
【0016】
図示される実施形態では、排熱回収システム10は、第1の給水ライン31に設けられて第1給水を気相と液相に分離するように構成された気液分離器17と、高温側排熱回収部21において排ガスから熱エネルギーを回収した第1給水を気液分離器17に導くための第1給水送出ライン18と、第1の給水ライン31の気液分離器17よりも下流側(高温側排熱回収部21側)に設けられた第1給水側ポンプ19と、を含む。
【0017】
液相の第1給水は、第1の給水ライン31を通じて気液分離器17に導かれる。第1給水側ポンプ19により、気液分離器17から抜き出された液相の第1給水が高温側排熱回収部21に導かれる。高温側排熱回収部21において排ガスから熱エネルギーを回収した第1給水が、第1給水送出ライン18を通じて気液分離器17に送られる。第1給水送出ライン18を通じて気液分離器17に送られる第1給水には、高温側排熱回収部21において気化した第1蒸気が含まれる。気液分離器17において、第1蒸気が液体の状態の第1給水から分離される。
【0018】
図示される実施形態では、上述した気液分離器17は、ボイラの蒸気ドラムからなる。この場合には、既設のボイラの蒸気ドラムを気液分離器17として流用できるため、排熱回収システム10の製造コストを低減できる。
【0019】
低温側排熱回収部22は、高温側排熱回収部21を通過して低温側排熱回収部22に導かれた排ガスと、第2の給水ライン32により低温側排熱回収部22に導かれた第2給水と、の間で熱交換を行うように構成されている。低温側排熱回収部22に導入される排ガスは、低温側排熱回収部22に導入される第2給水よりも高温である。低温側排熱回収部22における排ガスと第2給水との間の熱交換により、排ガスの熱エネルギーが第2給水に伝達される。これにより、低温側排熱回収部22において、排ガスが冷却されるととともに、第2給水が加熱される。第2給水は、低温側排熱回収部22における加熱後も気化せず、液体の状態が維持される。
【0020】
(蒸気熱交換器)
蒸気熱交換器40は、第1蒸気(高温側排熱回収部21において気化された第1給水)の熱エネルギーを第2給水に伝達し、第2給水を加熱させるように構成されたものである。排熱回収システム10は、図1に示されるように、第1蒸気を気液分離器17から蒸気熱交換器40に導くための第1の蒸気導入ライン60をさらに備える。第1蒸気は、第1の蒸気導入ライン60を通じて気液分離器17から蒸気熱交換器40に導かれる。
【0021】
蒸気熱交換器40に導入される第1蒸気は、蒸気熱交換器40に導入される第2給水よりも高温である。蒸気熱交換器40における第1蒸気と第2給水との間の熱交換により、第1蒸気の熱エネルギーが第2給水に伝達される。これにより、蒸気熱交換器40において、第2給水が加熱される。第2給水は、蒸気熱交換器40における加熱後も気化せず、液体の状態が維持される。
【0022】
図示される実施形態では、低温側排熱回収部22は、高温側排熱回収部21を通過した排ガスと第2給水との間で熱交換を行うように構成された第1の低温側熱交換器23と、第1の低温側熱交換器23を通過した排ガスと第2給水との間で熱交換を行うように構成された第2の低温側熱交換器24と、を含む。高温側排熱回収部21は、排ガスライン13における排ガスタービン14よりも排ガスの流れ方向の下流側、且つ低温側排熱回収部22(第1の低温側熱交換器23、第2の低温側熱交換器24)よりも上流側に設けられている。第1の低温側熱交換器23は、排ガスライン13における第2の低温側熱交換器24よりも排ガスの流れ方向の上流側に設けられている。
【0023】
図示される実施形態では、排熱回収システム10は、第2の低温側熱交換器24を通過した第2給水を第1の低温側熱交換器23に導くための中継ライン34をさらに備える。蒸気熱交換器40は、中継ライン34に設けられている。
【0024】
(循環サイクル)
循環サイクル50は、水よりも沸点の低い低沸点熱媒体を循環させるように構成されたものである。循環サイクル50は、蒸発器52およびタービン53を少なくとも含む。蒸発器52は、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された第2給水から回収した熱エネルギーにより、低沸点熱媒体を気化させるように構成されている。タービン53は、蒸発器52において気化された低沸点熱媒体により駆動するように構成されている。
【0025】
循環サイクル50は、低沸点熱媒体を循環させるように構成されている。低沸点熱媒体としては、イソペンタン、ブタン、プロパン等の低分子炭化水素や、冷媒として用いられるR134a、R245faなどを用いることができる。循環サイクル50は、低沸点熱媒体を循環させるための流路である循環流路51と、低沸点熱媒体を液化させるように構成された凝縮器54と、液相の低沸点熱媒体を送るための循環ポンプ55と、をさらに含む。循環ポンプ55は、液相の低沸点熱媒体を圧縮するように構成されている。
【0026】
以下、循環サイクル50における低沸点熱媒体の流れ方向の上流側を単に上流側とし、循環サイクル50における低沸点熱媒体の流れ方向の下流側を単に下流側とする。蒸発器52は、循環サイクル50において、循環ポンプ55よりも下流側、且つタービン53よりも上流側に設けられている。凝縮器54は、循環サイクル50において、タービン53よりも下流側、且つ循環ポンプ55よりも上流側に設けられている。
【0027】
循環ポンプ55は、循環サイクル50において、循環ポンプ55の下流側に液相の低沸点熱媒体を送るように構成されている。循環ポンプ55を駆動させることで、低沸点熱媒体が循環流路51(循環サイクル50)を循環する。循環ポンプ55により圧縮された液相の低沸点熱媒体は、蒸発器52に導かれる。
【0028】
排熱回収システム10は、図1に示されるように、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された第2給水を蒸発器52に導くための第2給水導入ライン33をさらに備える。低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された液相の第2給水は、第2給水導入ライン33を通じて、蒸発器52に導かれる。
【0029】
蒸発器52は、循環ポンプ55の出口側とタービン53の入口側とを繋ぐ循環流路51Aに設けられる。蒸発器52には、循環流路51Aを通じて循環ポンプ55により圧縮された液相の低沸点熱媒体が導かれる。蒸発器52は、循環ポンプ55により圧縮されて蒸発器52に導かれた液相の低沸点熱媒体と、第2給水導入ライン33により蒸発器52に導かれた液相の第2給水と、の間で熱交換を行うように構成されている。蒸発器52に導入される第2給水は、蒸発器52に導入される低沸点熱媒体よりも高温である。蒸発器52における低沸点熱媒体と第2給水との間の熱交換により、第2給水の熱エネルギーが低沸点熱媒体に伝達される。これにより、蒸発器52において、低沸点熱媒体が加熱されて気化する。
【0030】
蒸発器52により気化した低沸点熱媒体は、タービン53に導かれる。タービン53は、蒸発器52において気化した低沸点熱媒体のエネルギーにより、回転するように構成されている。循環サイクル50は、タービン53の回転力を動力として回収するように構成されている。
【0031】
図示される実施形態では、循環サイクル50は、発電機56をさらに含む。発電機56は、タービン53の駆動シャフトに機械的に接続されており、タービン53の回転力を電力に変換するように構成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、循環サイクル50は、タービン53の回転力を電力に変換するのではなく、動力伝達装置(例えば、カップリングやベルト、プーリなど)によりそのまま動力として回収してもよい。
【0032】
凝縮器54は、タービン53の出口側と循環ポンプ55の入口側とを繋ぐ循環流路51Bに設けられる。凝縮器54には、循環流路51Bを通じてタービン53を通過した低沸点熱媒体導かれる。凝縮器54は、タービン53を通過して凝縮器54に導かれた低沸点熱媒体と、循環サイクル50の外部から凝縮器54に導入された外部水と、の間で熱交換を行うように構成されている。上記外部水は、凝縮器54において冷媒として熱交換対象である低沸点熱媒体を冷却できる水(低沸点熱媒体よりも低温の水)であればよい。
【0033】
凝縮器54における低沸点熱媒体と外部水との間の熱交換により、低沸点熱媒体の熱エネルギーが外部水に伝達される。これにより、凝縮器54において、気相の低沸点熱媒体が冷却されて凝縮する。
【0034】
幾つかの実施形態にかかる排熱回収システム10は、上述した高温側排熱回収部21および低温側排熱回収部22を含む排熱回収装置20と、上述した第1の給水ライン31および第2の給水ライン32を含む給水ライン30と、上述した蒸気熱交換器40と、上述した蒸発器52およびタービン53を少なくとも含む循環サイクル50と、を備える。
【0035】
上記の構成によれば、排熱回収システム10は、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された第2給水を、蒸発器52における熱源として、低沸点熱媒体を加熱できる。排熱回収システム10は、内燃機関11からの排熱が少ない場合でも、排熱回収装置20によって排ガスから回収した熱エネルギーを、蒸発器52における熱媒として活用でき、タービン53において動力に還元できる。
【0036】
幾つかの実施形態では、上述した排熱回収システム10は、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された第2給水が、液体の状態を維持するように構成されている。この場合には、排熱回収システム10は、蒸発器52に導かれる給水の蒸気化を抑制でき、蒸発器52に導かれる給水が液体の状態のまま排ガスの熱エネルギーの回収が可能となる。蒸発器52に導かれる給水の蒸気化を抑制することで、排熱回収システム10に蒸気タービンを設けなくてよいので、排熱回収システム10の複雑化を抑制できる。
【0037】
従来の排ガスエコノマイザや蒸気タービン発電機では、主機エンジン11A(内燃機関11)の低燃費化により、主機エンジン11Aから排出される排ガスの熱エネルギーが少ないと、電力需要を賄うことができるだけの蒸気量を生成できない虞がある。このため、排熱回収システム10では、低温熱源からでも排ガスの熱エネルギーを回収可能なタービン53や発電機56が用いられている。
【0038】
主機エンジン11Aから排出される排ガスは、給水を蒸気化できる程度の熱エネルギーを有している。このため、仮に高温側排熱回収部21において排ガスから第2給水に熱エネルギーを伝達させる構成にした場合には、第2給水は、所定圧力(例えば、高温側排熱回収部21における排ガス温度とのピンチ温度以下に相当する給水温度の飽和圧力)以下の条件下では液相を保持することができないので、液相の状態を維持するために給水圧力を上げる必要がある。これに対して、排熱回収システム10では、蒸気熱交換器40において加熱された第2給水は、上記所定圧力よりも低い通常の給水圧力下において液体の状態を維持できる。
【0039】
排熱回収システム10の給水系統において給水が蒸気化する構成にした場合には、上記給水系統を蒸気化に耐え得る配管や構造とする必要があり、上記給水系統の構造の複雑化を招く虞がある。また、排ガスの熱エネルギーを回収した熱媒体に液相を維持させるための方策として、上記熱媒体として高圧水や熱媒体油を用いることが考えられるが、上記熱媒体として通常の給水圧力で送られる給水(第2給水)を用いる場合に比べて、上記給水系統の構造の複雑化を招く虞がある。上記給水系統の構造の複雑化すると、上記給水系統給水系統に設けられる機器の大型化や排熱回収システム10の安全性の低下などを招く虞がある。
【0040】
上記の構成によれば、蒸発器52に導かれる給水(第2給水)として通常の給水圧力で送ることが可能な水(温水)が利用できる。蒸発器52に導かれる給水(第2給水)として水(温水)を用いる場合には、蒸発器52に導かれる熱媒体として高圧水や熱媒体油などを用いる場合に比べて、排熱回収システム10における給水系統の構造の簡略化や給水系統に設けられる機器の小型化、排熱回収システム10の安全性の向上などが図れる。
【0041】
(混合チャンバ、給水分岐ライン)
幾つかの実施形態では、上述した排熱回収システム10は、図1に示されるように、上述した第2給水導入ライン33と、第2給水導入ライン33に設けられた混合チャンバ70と、給水ライン30から分岐して、給水を混合チャンバ70に導くための給水分岐ライン35と、を備える。
【0042】
混合チャンバ70は、その内部に給水を貯留可能に構成されている。混合チャンバ70には、第2給水導入ライン33を通じて、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された第2給水が導入される。また、混合チャンバ70には、給水分岐ライン35を通じて、給水ライン30から分岐した給水が導入される。
【0043】
図示される実施形態では、給水分岐ライン35は、給水ライン30の分岐部P1において、給水ライン30から分岐している。第1の給水ライン31と第2の給水ライン32は、給水ライン30の分岐部P1において分岐している。なお、第1の給水ライン31と第2の給水ライン32は、給水ライン30の分岐部P1よりも上流側や下流側において分岐していてもよいし、給水分岐ライン35は、第1の給水ライン31又は第2の給水ライン32の何れか一方から分岐していてもよい。
【0044】
排熱回収システム10は、給水ライン30の分岐部P1よりも上流側に設けられた給水側ポンプ36と、第1の給水ライン31に設けられた第1給水側流量調整弁37と、をさらに備える。給水側ポンプ36は、給水ライン30における給水側ポンプ36よりも下流側に液相の給水を送るように構成されている。給水側ポンプ36により、給水ライン30における給水側ポンプ36よりも下流側を流れる給水には、給水圧力が生じる。第1給水側流量調整弁37は、第1の給水ライン31における気液分離器17よりも上流側に設けられており、気液分離器17に導かれる第1給水の流量を調整可能に構成されている。
【0045】
気液分離器17に導かれる第1給水の流量は、第1給水側流量調整弁37により上述した気液分離器17における第1給水の貯留量に応じて調整される。具体的には、蒸気化された第1給水を補う分の第1給水が、第1給水側流量調整弁37を通過して気液分離器17に供給される。給水分岐ライン35を通過して混合チャンバ70に導かれる給水の流量を増加させると、その分だけ第2の給水ライン32を通じて低温側排熱回収部22に導かれる第2給水の流量が減少する。
【0046】
上記の構成によれば、給水ライン30を第1の給水ライン31、第2の給水ライン32および給水分岐ライン35の三つに分岐したことで、低温側排熱回収部22に全ての給水を導入する従来の構造に比べて、制御する給水流量を少ないため、給水流量制御の応答性が向上する。上記従来の構造では、例えば、硫酸腐食を抑制するために給水の流量を減らそうとしたときに、給水の全量を給水側ポンプ36により制御する必要がある。これに対して、上記の構成によれば、給水分岐ライン35を通じて混合チャンバ70に導かれる給水の流量を増やすことで、低温側排熱回収部22に導かれる第2給水の流量を減らすように調整可能である。低温側排熱回収部22に導かれる第2給水の流量を調整することで、低温側排熱回収部22における排ガスから第2給水への熱エネルギーの回収量(移動量)を調整できるため、低温側排熱回収部22から排出される排ガスの温度を調整可能である。給水流量制御の応答性を向上させたことで、排ガスの温度制御の応答性も向上する。
【0047】
また、上記の構成によれば、給水ライン30を第1の給水ライン31、第2の給水ライン32および給水分岐ライン35の三つに分岐したことで、低温側排熱回収部22に導かれる第2給水の流量を減らすことができる。第2給水の流量を抑えることで抵抗も減るため、第2給水が導かれる低温側排熱回収部22や蒸気熱交換器40の小型化が図れる。また、上記の構成によれば、混合チャンバ70において、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40の夫々で加熱された第2給水と、給水分岐ライン35により導かれた給水と、を混合させることで、加熱された第2給水を循環サイクル50に導入されるのに適切な均一温度にすることができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、上述した排熱回収システム10は、図1に示されるように、排ガス温度取得装置71と、給水量調整装置72と、をさらに備える。排ガス温度取得装置(図示例では、温度センサ)71は、上述した低温側排熱回収部22を通過した排ガスの温度を取得可能に構成されている。給水量調整装置72は、排ガス温度取得装置71により取得される排ガスの温度が所定温度(第1の所定温度)に近づくように、第2の給水ライン32を流れる給水の流量を調整可能に構成されている。第1の所定温度は、低温硫酸腐食が生じる温度に裕度を持たせた温度(裕度分だけ温硫酸腐食が生じる温度よりも高い温度)である。
【0049】
図示される実施形態では、給水量調整装置72は、給水分岐ライン35に設けられた給水量調整弁72Aを含む。給水量調整弁72Aは、給水分岐ライン35を通じて混合チャンバ70に導かれる流体の流量を調整可能に構成されている。給水量調整弁72Aにより、給水分岐ライン35を流れる給水の流量を調整することで、第2の給水ライン32を通じて低温側排熱回収部22に送られる第2給水の流量を調整できる。なお、給水量調整弁72Aは、第2の給水ライン32や中継ライン34、第2給水導入ライン33の混合チャンバ70よりも上流側に設けられていてもよい。給水量調整装置72は、給水量調整弁72Aに対して開度を指示する不図示の制御装置をさらに含んでいてもよい。また、給水量調整装置72は、給水分岐ライン35を流れる給水の流量を調整可能に構成されていればよく、給水量調整弁72Aに限定されない。給水分岐ライン35に設けられた給水量調整弁72Aの開度を小さくすることで、給水分岐ライン35を流れる給水の流量が減り、第2の給水ライン32を流れる第2給水の流量が増える。給水分岐ライン35に設けられた給水量調整弁72Aの開度を大きくすることで、給水分岐ライン35を流れる給水の流量が増え、第2の給水ライン32を流れる第2給水の流量が減る。
【0050】
図示される実施形態では、排ガス温度取得装置71は、低温側排熱回収部22よりも下流側に位置する排ガスライン13A(13)の温度を測定可能に構成されている。排ガス温度取得装置71により取得される排ガスの温度が所定温度(第1の所定温度)を超える場合には、給水分岐ライン35に設けられた給水量調整弁72Aの開度を小さくすることで、排熱回収装置20を流れる排ガスから更なる熱エネルギーの回収が可能である。また、排ガス温度取得装置71により取得される排ガスの温度が所定温度(第1の所定温度)よりも低い場合には、給水分岐ライン35に設けられた給水量調整弁72Aの開度を大きくすることで、低温硫酸腐食が生じる温度に近づかないように、排熱回収装置20を流れる排ガスからの熱エネルギーの回収が抑制される。
【0051】
上記の構成によれば、給水量調整装置72により、低温側排熱回収部22に送られる第2給水の流量を調整できるため、第2給水の蒸気化を抑制しつつ、低温側排熱回収部22における排ガスから第2給水への熱エネルギーの回収量(移動量)を調整できる。給水量調整装置72により、排ガス温度取得装置71が取得する排ガスの温度が所定温度(第1の所定温度)に近づくように、給水分岐ライン35を流れる給水の流量を調整することで、低温側排熱回収部22において、低温硫酸腐食を抑制しつつ排ガスから第2給水に熱エネルギーをできる限り回収できる。よって、上記の構成によれば、排熱回収システム10は、排ガスから効率的に熱回収を図ることができる。
【0052】
(第1の低温側熱交換器、第2の低温側熱交換器)
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、上述した低温側排熱回収部22は、上述した第1の低温側熱交換器23と、上述した第2の低温側熱交換器24と、を含む。上述した排熱回収システム10は、第2の低温側熱交換器24を通過した第2給水を第1の低温側熱交換器23に導くための上述した中継ライン34をさらに備える。
【0053】
第2の給水ライン32の一方側は、第2の低温側熱交換器24に接続されている。中継ライン34の一方側は、第2の低温側熱交換器24に接続されており、中継ライン34の他方側は、第1の低温側熱交換器23に接続されている。第2給水導入ライン33の一方側は、第1の低温側熱交換器23に接続されており、第2給水導入ライン33の他方側は、蒸発器52に接続されている。第2給水は、第2の給水ライン32を通じて第2の低温側熱交換器24に導かれる。第2の低温側熱交換器24を通過した第2給水は、中継ライン34を通じて第1の低温側熱交換器23に導かれる。第1の低温側熱交換器23を通過した第2給水は、第2給水導入ライン33を通じて、蒸発器52に導かれる。
【0054】
第1の低温側熱交換器23に導入される排ガスは、高温側排熱回収部21に導入される排ガスよりも低温であり、第2の低温側熱交換器24に導入される排ガスや第1の低温側熱交換器23に導入される第2給水よりも高温である。また、第2の低温側熱交換器24に導入される排ガスは、第2の低温側熱交換器24に導入される第2給水よりも高温である。
【0055】
第1の低温側熱交換器23および第2の低温側熱交換器24の夫々における排ガスと第2給水との間の熱交換により、排ガスが冷却されるととともに、第2給水が加熱される。具体的には、第2の低温側熱交換器24において、第1の低温側熱交換器23を通過した排ガスにより、第2の低温側熱交換器24に導かれた第2給水が加熱される。第1の低温側熱交換器23において、高温側排熱回収部21を通過した排ガスにより、第2の低温側熱交換器24にて予め加熱された第2給水が加熱される。
【0056】
上記の構成によれば、第2の低温側熱交換器24には、第1の低温側熱交換器23で熱エネルギーが回収され、低温となった排ガスが導入される。第1の低温側熱交換器23には、中継ライン34を通じて第2の低温側熱交換器24で加熱された第2給水が導入される。このため、第2の低温側熱交換器24に導入される排ガスや第2給水の夫々は、第1の低温側熱交換器23に導入される排ガスや第2給水の夫々に比べて、低温になっている。第1の低温側熱交換器23および第2の低温側熱交換器24により、排ガスから第2給水へ段階的に熱エネルギーを伝達できる。これにより、排熱回収システム10は、排ガスから効率的に熱回収を図ることができる。
【0057】
図示される実施形態では、排熱回収装置20は、高温側排熱回収部21および第1の低温側熱交換器23が一体的に設けられた排ガスエコノマイザと、高温側排熱回収部21および第1の低温側熱交換器23の夫々とは別体に設けられた第2の低温側熱交換器24と、を含む。第2の低温側熱交換器24は、上記排ガスエコノマイザに対して分離可能に構成されている。第2の低温側熱交換器24は、上記排ガスエコノマイザに比べて、その内部を流れる排ガスの温度が低いため、その流路壁面(伝熱面)に腐食(低温硫酸腐食)を生じ易い。上記の構成によれば、第2の低温側熱交換器24の流路壁面に腐食が生じた場合に、第2の低温側熱交換器24のみを交換すればよく、上記排ガスエコノマイザを交換しなくてもよい。このため、上記の構成によれば、排熱回収システム10における交換コストを低減できる。
【0058】
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、上述した蒸気熱交換器40は、中継ライン34に設けられている。上述した排熱回収システム10は、中継ライン34に設けられた蒸気熱交換器40に第1蒸気を導くための上述した第1の蒸気導入ライン60を備える。
【0059】
蒸気熱交換器40は、中継ライン34を通じて蒸気熱交換器40に導かれた第2給水と、第1の蒸気導入ライン60を通じて蒸気熱交換器40に導かれた第1蒸気と、の間で熱交換が行われて、第2給水が加熱される。蒸気熱交換器40において加熱された第2給水が第1の低温側熱交換器23に導かれる。
【0060】
上記の構成によれば、中継ライン34に設けられた蒸気熱交換器40において、気化した第1給水の熱エネルギーにより第2給水を加熱できる。蒸気熱交換器40により第2給水を加熱することで、第1の低温側熱交換器23に導かれる第2給水と排ガスとの間の温度差を低減でき、第1の低温側熱交換器23における排ガスと第2給水との間の熱交換により、排ガスの温度が低温になり過ぎることを抑制できる。これにより、第1の低温側熱交換器23における低温硫酸腐食を効果的に抑制できる。
【0061】
図1に示される実施形態では、上述した排熱回収システム10は、第2の給水ライン32に設けられた補助蒸気熱交換器41をさらに備える。補助蒸気熱交換器41は、第2の給水ライン32を通じて補助蒸気熱交換器41に導かれた第2給水と、蒸気熱交換器40で熱交換後の高温ドレンと、の間で熱交換を行うように構成されている。補助蒸気熱交換器41に導かれた第2給水と高温ドレンとの間で熱交換が行われて、第2の低温側熱交換器24に導かれる前の第2給水が加熱される。上記の構成によれば、補助蒸気熱交換器41により、第1蒸気に残った熱エネルギーを回収でき、且つ第2の低温側熱交換器24における低温硫酸腐食を抑制できる。何らかの理由により設定している排ガス温度や給水温度において硫酸腐食が生じる場合に、補助蒸気熱交換器41を使用して第2給水の温度を上げることで、第2の低温側熱交換器24から排出される排ガスの温度も上げることができる。これにより、低温硫酸腐食の能動的抑制制御が可能となる。
【0062】
幾つかの実施形態では、上述した排熱回収システム10は、図1に示されるように、第1蒸気を蒸気の供給先61に導くための蒸気供給ライン62をさらに備える。蒸気の供給先61には、船舶1の空調系統61A、又は煙突61Bの少なくとも一方を含んでいてもよい。煙突61Bを介して船舶1において不要な第1蒸気を排出してもよい。図示される実施形態では、第1の蒸気導入ライン60と蒸気供給ライン62は、気液分離器17から分岐部P2までに亘り共有ライン62Aとなっている。第1の蒸気導入ライン60と蒸気供給ライン62は、分岐部P2において分岐している。
【0063】
幾つかの実施形態では、上述した排熱回収システム10は、図1に示されるように、第2給水温度取得装置73と、第1の蒸気流量調整装置74と、をさらに備える。第2給水温度取得装置(図示例では、温度センサ)73は、低温側排熱回収部22および蒸気熱交換器40で加熱された第2給水の温度を取得可能に構成されている。第1の蒸気流量調整装置74は、第2給水温度取得装置73により取得される第2給水の温度が所定温度(第2の所定温度、第2給水設定温度)以下になるように、第1の蒸気導入ライン60を流れる第1蒸気(高温側排熱回収部21において気化した第1給水)の流量を調整可能に構成されている。
【0064】
第1の蒸気流量調整装置74は、第1の蒸気導入ライン60の分岐部P2よりも下流側(蒸気熱交換器40側)に設けられた第1の蒸気流量調整弁74Aを含む。第1の蒸気流量調整弁74Aは、第1の蒸気導入ライン60を通じて蒸気熱交換器40に導かれる第1蒸気(流体)の流量を調整可能に構成されている。なお、第1の蒸気流量調整装置74は、第1の蒸気流量調整弁74Aに対して開度を指示する不図示の制御装置をさらに含んでいてもよい。また、第1の蒸気流量調整装置74は、蒸気熱交換器40に導かれる第1蒸気の流量を調整可能に構成されていればよく、第1の蒸気流量調整弁74Aに限定されない。
【0065】
図示される実施形態では、第2給水温度取得装置73は、第2給水導入ライン33における混合チャンバ70よりも上流側(第2の低温側熱交換器24側)の温度を測定可能に構成されている。第2給水温度取得装置73により取得される第2給水の温度が所定温度(第2の所定温度、第2給水設定温度)を超える場合には、第2給水が気化する可能性がある。
【0066】
上記の構成によれば、第1の蒸気流量調整装置74により、第1の蒸気導入ライン60を通じて蒸気熱交換器40に送られる第1給水の流量(蒸気量)を調整することで、蒸気熱交換器40における第2給水の加熱量を調整できる。第1の蒸気流量調整装置74により、第2給水温度取得装置73が取得する第2給水の温度が所定温度(第2の所定温度、第2給水設定温度)以下になるように、第1の蒸気導入ライン60を流れる第1給水の流量を調整することで、蒸発器52に導かれる第2給水の蒸気化を抑制できる。
【0067】
主機エンジン11A(内燃機関11)に供給される燃料は、その成分に硫黄が含まれない液化天然ガス(LNG)、アンモニア、水素、メタノールなどである。しかしながら、主機エンジン11Aのパイロット燃料や潤滑油などの成分に硫黄が含まれる虞がある。排熱回収装置20を流れる排ガスの温度が、排ガス中の硫酸が凝縮し始める温度である酸露点以下になると、凝縮した硫酸により排熱回収装置20が腐食(低温硫酸腐食)する虞がある。
【0068】
上述した排熱回収システム10は、上述した低温側排熱回収部22(特に第2の低温側熱交換器24)を通過する排ガスが、予め設定された低温硫酸腐食が発生しない下限温度以上になるように構成されている。しかしながら、実際の運用上において、排ガスを上記下限温度以上とするために、給水の昇温が必要となる可能性がある。
【0069】
図2は、本開示の一実施形態にかかる排熱回収システムを備える船舶の構成を概略的に示す概略構成図である。幾つかの実施形態では、上述した排熱回収システム10は、図2に示されるように、上述した第2の給水ライン32に設けられた第2給水予熱器42と、第1蒸気(高温側排熱回収部21で気化した第1給水)を第2給水予熱器42に導くための第2の蒸気導入ライン63と、をさらに備える。第2給水予熱器42は、第1蒸気(高温側排熱回収部21で気化した第1給水)の熱エネルギーを第2給水に伝達し、第2給水を加熱させるように構成されている。
【0070】
図示される実施形態では、第2の蒸気導入ライン63と第1の蒸気導入ライン60は、気液分離器17から分岐部P2までに亘り共有ライン63Aとなっている。第2の蒸気導入ライン63と蒸気供給ライン62は、気液分離器17から分岐部P2よりも第1蒸気の流れ方向の下流側に位置する分岐部P3までに亘り共有ライン63Bとなっている。第2の蒸気導入ライン63と蒸気供給ライン62は、分岐部P3において分岐している。
【0071】
図2に示される実施形態では、第2給水予熱器42は、第2の給水ライン32を通じて第2給水予熱器42に導かれた第2給水と、第2の蒸気導入ライン63を通じて第2給水予熱器42に導かれた第1蒸気と、の間で熱交換を行うように構成されている。第2給水予熱器42に導かれた第2給水と第1蒸気との間で熱交換が行われて、第2給水が加熱される。第2給水予熱器42において加熱された第2給水が第2の低温側熱交換器24に導かれる。
【0072】
上記の構成によれば、第2の蒸気導入ライン63により、第1蒸気を第2給水予熱器42に導くことができる。第2給水予熱器42において、第1蒸気により第2の給水ライン32を流れる第2給水を加熱できる。第2の低温側熱交換器24に導かれる第2給水を加熱することで、第2の低温側熱交換器24における排ガスと第2給水との間の熱交換により、排ガスの温度が低温になり過ぎることを抑制できるため、第2の低温側熱交換器24における低温硫酸腐食を効果的に抑制できる。何らかの理由により設定している排ガス温度や給水温度において硫酸腐食が生じる場合に、第2給水予熱器42を使用して第2給水の温度を上げることで、第2の低温側熱交換器24から排出される排ガスの温度も上げることができる。これにより、低温硫酸腐食の能動的抑制制御が可能となる。
【0073】
幾つかの実施形態では、図2に示されるように、上述した排熱回収システム10は、上述した排ガス温度取得装置71と、第2の蒸気流量調整装置75と、を備える。第2の蒸気流量調整装置75は、排ガス温度取得装置71により取得される排ガスの温度が所定温度(第3の所定温度)以上になるように、第2の蒸気導入ライン63を流れる第1蒸気の流量を調整可能に構成されている。第3の所定温度は、上記第1の所定温度よりも低温である。第3の所定温度は、上記予め設定された低温硫酸腐食が発生しない下限温度と同じ温度であってもよいし、上記下限温度に裕度を設けた上記下限温度以上の温度であってもよい。
【0074】
第2の蒸気流量調整装置75は、第2の蒸気導入ライン63の分岐部P3よりも下流側(第2給水予熱器42側)に設けられた第2の蒸気流量調整弁75Aを含む。第2の蒸気流量調整弁75Aは、第2の蒸気導入ライン63を通じて第2給水予熱器42に導かれる流体の流量を調整可能に構成されている。なお、第2の蒸気流量調整装置75は、第2の蒸気流量調整弁75Aに対して開度を指示する不図示の制御装置をさらに含んでいてもよい。また、第2の蒸気流量調整装置75は、第2給水予熱器42に導かれる第1蒸気の流量を調整可能に構成されていればよく、第2の蒸気流量調整弁75Aに限定されない。排ガス温度取得装置71により取得される排ガスの温度が第3の所定温度に満たない場合には、第2の低温側熱交換器24において低温硫酸腐食が生じる可能性がある。
【0075】
上記の構成によれば、第2の蒸気流量調整装置75により、第2の蒸気導入ライン63を通じて第2給水予熱器42に送られる第1蒸気の流量を調整することで、第2給水予熱器42における第2給水の加熱量を調整できる。第2の蒸気流量調整装置75により、排ガス温度取得装置71が取得する排ガスの温度が第3の所定温度以上になるように、第2の蒸気導入ライン63を流れる第1蒸気の流量を調整することで、第2の低温側熱交換器24における低温硫酸腐食を抑制しつつ、第2の低温側熱交換器24において第2給水をできる限り加熱できる。
【0076】
図3は、本開示の一実施形態における給水予熱器を説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、図1図3に示されるように、上述した排熱回収システム10は、給水ライン30に供給される給水を加熱させるように構成された給水予熱器81をさらに備える。図示される実施形態では、給水ライン30の一方側(第1の給水ライン31や第2の給水ライン32の夫々の他方側)が給水予熱器81に接続されている。
【0077】
排熱回収システム10は、図1図3に示されるように、蒸発器52から給水予熱器81に給水を導くための給水循環ライン80と、給水循環ライン80に設けられた給水貯留装置(貯留タンク)83と、給水循環ライン80の給水貯留装置83よりも上流側(蒸発器52側)に設けられた給水流量調整弁84と、給水循環ライン80の給水貯留装置83よりも下流側(給水予熱器81側)に設けられた給水循環ポンプ85をさらに備える。
【0078】
給水流量調整弁84を開くことで、給水循環ライン80を通じて蒸発器52から給水貯留装置83に給水が導かれる。給水貯留装置83は、給水を貯留可能に構成されている。給水循環ポンプ85を駆動することで、給水貯留装置83から給水循環ライン80に給水が抜き出され、抜き出された給水が給水予熱器81に送られる。
【0079】
図1図2に示される実施形態では、給水予熱器81(81A)は、上述した内燃機関11を冷却した冷却水(エンジンジャケット水)が内燃機関11から回収した熱エネルギーを給水ライン30に供給される給水に伝達し、給水を加熱させるように構成されている。
【0080】
図1図2に示される実施形態では、排熱回収システム10は、エンジンジャケット水を貯留する貯留部86Aと、貯留部86Aから給水予熱器81にエンジンジャケット水を導くための予熱器用給水ライン87Aと、をさらに備える。給水予熱器81(81A)は、給水ライン30に供給される給水(図示例では、給水循環ライン80を通じて給水予熱器81Aに導かれた給水)と、予熱器用給水ライン87Aを通じて給水予熱器81Aに導かれたエンジンジャケット水と、の間で熱交換を行うように構成されている。給水予熱器81Aに導かれるエンジンジャケット水は、内燃機関11から熱エネルギーを回収することで、給水予熱器81Aに導かれる給水よりも高温になっている。給水予熱器81Aに導かれた給水とエンジンジャケット水との間で熱交換が行われて、給水が加熱される。給水予熱器81Aにおいて加熱された給水が給水ライン30に供給される。
【0081】
図3に示される実施形態では、給水予熱器81(81B)は、上述したコンプレッサ15により圧縮された圧縮気体(例えば、圧縮空気)を冷却した冷却水(圧縮気体冷却水)が圧縮気体から回収した熱エネルギーを給水ライン30に供給される給水に伝達し、給水を加熱させるように構成されている。
【0082】
図3に示される実施形態では、排熱回収システム10は、圧縮気体を冷却する冷却器86Bと、冷却器86Bから給水予熱器81に圧縮気体冷却水を導くための予熱器用給水ライン87Bと、をさらに備える。給水予熱器81(81B)は、給水ライン30に供給される給水(図示例では、給水循環ライン80を通じて給水予熱器81Bに導かれた給水)と、予熱器用給水ライン87Bを通じて給水予熱器81Bに導かれた圧縮気体冷却水と、の間で熱交換を行うように構成されている。給水予熱器81Bに導かれる圧縮気体冷却水は、上記圧縮気体から熱エネルギーを回収することで、給水予熱器81Bに導かれる給水よりも高温になっている。給水予熱器81Bに導かれた給水と圧縮気体冷却水との間で熱交換が行われて、給水が加熱される。給水予熱器81Bにおいて加熱された給水が給水ライン30に供給される。なお、給水予熱器81は、給水予熱器81Aと、給水予熱器81Bと、を含んでもよい。すなわち、給水予熱器81は、エンジンジャケット水および圧縮気体冷却水の夫々と、給水ライン30に供給される給水と、の間で熱交換を行うように構成されていてもよい。この場合には、給水予熱器81において、エンジンジャケット水および圧縮気体冷却水の夫々を加熱源として、給水ライン30に供給される給水を加熱できる。
【0083】
上記の構成によれば、給水予熱器81により、給水ライン30に供給される給水を予め昇温することで、給水ライン30により導かれる給水(第1給水や第2給水)を所望の温度まで昇温させるために必要な熱エネルギー量を低減できる。このように給水を所望の温度まで昇温させるために必要な熱エネルギー量を低減することで、内燃機関11から排出された排ガスの熱エネルギーを他の用途に活用できるので、排ガスの熱エネルギーの有効活用が図れる。
【0084】
上述した複数の流量調整弁(第1給水側流量調整弁37、給水量調整弁72A、第1の蒸気流量調整弁74Aおよび第2の蒸気流量調整弁75A)の夫々は、全閉と全開に開度調整可能な開閉弁でもよいし、全閉と全開とこれらの間の少なくとも1つの中間開度に開度調整可能な開度調整弁でもよい。
【0085】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0086】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0087】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかる排熱回収システム(10)は、
内燃機関(11)から排出される排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された排熱回収システム(10)であって、
前記内燃機関(11)から排出された排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された高温側排熱回収部(21)、及び、前記高温側排熱回収部(21)を通過した排ガスの熱エネルギーを回収するように構成された低温側排熱回収部(22)、を含む排熱回収装置(20)と、
前記排熱回収装置(20)に給水を導くための給水ライン(30)であって、前記高温側排熱回収部(21)に前記給水である第1給水を導くための第1の給水ライン(31)、及び、前記第1の給水ライン(31)から分岐して、前記給水である第2給水を前記低温側排熱回収部(22)に導くための第2の給水ライン(32)、を含む給水ライン(30)と、
前記高温側排熱回収部(31)において気化された前記第1給水の熱エネルギーを前記第2給水に伝達し、前記第2給水を加熱させるように構成された蒸気熱交換器(40)と、
水よりも沸点の低い低沸点熱媒体を循環させる循環サイクル(50)であって、前記低温側排熱回収部(22)および前記蒸気熱交換器(40)の夫々で加熱された前記第2給水から回収した熱エネルギーにより、前記低沸点熱媒体を気化させるように構成された蒸発器(52)、及び、前記蒸発器(52)において気化された前記低沸点熱媒体により駆動するように構成されたタービン(53)、を少なくとも含む循環サイクル(50)と、備える。
【0088】
上記1)の構成によれば、排熱回収システム(10)は、低温側排熱回収部(22)および蒸気熱交換器(40)の夫々で加熱された第2給水を、蒸発器(52)における熱源として、低沸点熱媒体を加熱できる。排熱回収システム(10)は、内燃機関(11)からの排熱が少ない場合でも、排熱回収装置(20)によって排ガスから回収した熱エネルギーを、蒸発器(52)における熱媒として活用でき、タービン(53)において動力に還元できる。
【0089】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の排熱回収システム(10)であって、
前記低温側排熱回収部(22)および前記蒸気熱交換器(40)の夫々で加熱された前記第2給水を前記蒸発器(52)に導くための第2給水導入ライン(33)と、
前記第2給水導入ライン(33)に設けられた混合チャンバ(70)と、
前記給水ライン(30)から分岐して、前記給水を前記混合チャンバ(70)に導くための給水分岐ライン(35)と、をさらに備える。
【0090】
上記2)の構成によれば、給水ライン(30)を第1の給水ライン(31)、第2の給水ライン(32)および給水分岐ライン(35)の三つに分岐したことで、低温側排熱回収部(22)に全ての給水を導入する従来の構造に比べて、制御する給水流量を少ないため、給水流量制御の応答性が向上する。上記従来の構造では、例えば、硫酸腐食を抑制するために給水の流量を減らそうとしたときに、給水の全量を給水側ポンプ(36)により制御する必要がある。これに対して、上記2)の構成によれば、給水分岐ライン(35)を通じて混合チャンバ(70)に導かれる給水の流量を増やすことで、低温側排熱回収部(22)に導かれる第2給水の流量を減らすように調整可能である。低温側排熱回収部(22)に導かれる第2給水の流量を調整することで、低温側排熱回収部(22)における排ガスから第2給水への熱エネルギーの回収量(移動量)を調整できるため、低温側排熱回収部(22)から排出される排ガスの温度を調整可能である。給水流量制御の応答性を向上させたことで、排ガスの温度制御の応答性も向上する。
【0091】
また、上記2)の構成によれば、給水ライン(30)を第1の給水ライン(31)、第2の給水ライン(32)および給水分岐ライン(35)の三つに分岐したことで、低温側排熱回収部(22)に導かれる第2給水の流量を減らすことができる。第2給水の流量を抑えることで抵抗も減るため、第2給水が導かれる低温側排熱回収部(22)や蒸気熱交換器(40)の小型化が図れる。また、上記2)の構成によれば、混合チャンバ(70)において、低温側排熱回収部(22)および蒸気熱交換器(40)の夫々で加熱された第2給水と、給水分岐ライン(35)により導かれた給水と、を混合させることで、加熱された第2給水を循環サイクル(50)に導入されるのに適切な均一温度にすることができる。
【0092】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の排熱回収システム(10)であって、
前記低温側排熱回収部(22)を通過した排ガスの温度を取得可能に構成された排ガス温度取得装置(71)と、
前記排ガス温度取得装置(71)により取得される前記排ガスの温度が第1の所定温度に近づくように、前記第2の給水ライン(32)を流れる前記第2給水の流量を調整可能に構成された給水量調整装置(72)をさらに備える。
【0093】
上記3)の構成によれば、給水量調整装置(72)により、低温側排熱回収部(22)に送られる第2給水の流量を調整できるため、第2給水の蒸気化を抑制しつつ、低温側排熱回収部(22)における排ガスから第2給水への熱エネルギーの回収量(移動量)を調整できる。給水量調整装置(72)により、排ガス温度取得装置(71)が取得する排ガスの温度が第1の所定温度に近づくように、給水分岐ライン(35)を流れる給水の流量を調整することで、低温側排熱回収部(22)において、低温硫酸腐食を抑制しつつ排ガスから第2給水に熱エネルギーをできる限り回収できる。よって、上記3)の構成によれば、排熱回収システム(10)は、排ガスから効率的に熱回収を図ることができる。
【0094】
4)幾つかの実施形態では、上記1)~3)の何れかに記載の排熱回収システム(10)であって、
前記低温側排熱回収部(22)は、
前記排ガスと前記第2給水との間で熱交換を行うように構成された第1の低温側熱交換器(23)と、
前記第1の低温側熱交換器(23)を通過した前記排ガスと前記第2給水との間で熱交換を行うように構成された第2の低温側熱交換器(24)と、を含み、
前記排熱回収システム(10)は、
前記第2の低温側熱交換器(24)を通過した前記第2給水を前記第1の低温側熱交換器(23)に導くための中継ライン(34)をさらに備える。
【0095】
上記4)の構成によれば、第2の低温側熱交換器(24)には、第1の低温側熱交換器(23)で熱エネルギーが回収され、低温となった排ガスが導入される。第1の低温側熱交換器(23)には、中継ライン(34)を通じて第2の低温側熱交換器(24)で加熱された第2給水が導入される。このため、第2の低温側熱交換器(24)に導入される排ガスや第2給水の夫々は、第1低温側熱交換器(23)に導入される排ガスや第2給水の夫々に比べて、低温になっている。第1の低温側熱交換器(23)および第2の低温側熱交換器(24)により、排ガスから第2給水へ段階的に熱エネルギーを伝達できる。これにより、排熱回収システム(10)は、排ガスから効率的に熱回収を図ることができる。また、第2の低温側熱交換器(24)を、排ガスエコノマイザ(高温側排熱回収部21および第1の低温側熱交換器23)に対して分離可能に構成させることができる。これにより、第2の低温側熱交換器(24)に腐食が生じた場合に、第2の低温側熱交換器(24)のみを交換すればよく、上記排ガスエコノマイザを交換しなくてもよい。このため、上記の構成によれば、排熱回収システム(10)における交換コストを低減できる。
【0096】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載の排熱回収システム(10)であって、
前記蒸気熱交換器(40)は、前記中継ライン(34)に設けられ、
前記排熱回収システム(10)は、前記高温側排熱回収部(21)で気化した前記第1給水(第1蒸気)を前記蒸気熱交換器(40)に導くための第1の蒸気導入ライン(60)をさらに備える。
【0097】
上記5)の構成によれば、中継ライン(34)に設けられた蒸気熱交換器(40)において、気化した第1給水の熱エネルギーにより第2給水を加熱できる。蒸気熱交換器(40)により第2給水を加熱することで、第1の低温側熱交換器(23)に導かれる第2給水と排ガスとの間の温度差を低減でき、第1の低温側熱交換器(23)における排ガスと第2給水との間の熱交換により、排ガスの温度が低温になり過ぎることを抑制できる。これにより、第1の低温側熱交換器(23)における低温硫酸腐食を効果的に抑制できる。
【0098】
6)幾つかの実施形態では、上記5)に記載の排熱回収システム(10)であって、
前記低温側排熱回収部(22)および前記蒸気熱交換器(40)で加熱された前記第2給水の温度を取得可能に構成された第2給水温度取得装置(73)と、
前記第2給水温度取得装置(73)により取得される前記第2給水の温度が第2の所定温度以下になるように、前記第1の蒸気導入ライン(60)を流れる前記第1給水(第1蒸気)の流量を調整可能に構成された第1の蒸気流量調整装置(74)と、をさらに備える。
【0099】
上記6)の構成によれば、第1の蒸気流量調整装置(74)により、第1の蒸気導入ライン(60)を通じて蒸気熱交換器(40)に送られる第1蒸気(第1給水)の流量(蒸気量)を調整することで、第1の蒸気熱交換器(41)における第2給水の加熱量を調整できる。第1の蒸気流量調整装置(74)により、第2給水温度取得装置(73)が取得する第2給水の温度が第2の所定温度以下になるように、第1の蒸気導入ライン(60)を流れる第1蒸気(第1給水)の流量を調整することで、蒸発器(52)に導かれる第2給水の蒸気化を抑制できる。
【0100】
7)幾つかの実施形態では、上記5)又は上記6)に記載の排熱回収システム(10)であって、
前記第2の給水ライン(32)に設けられた第2給水予熱器(42)であって、前記高温側排熱回収部(21)で気化した前記第1給水(第1蒸気)の熱エネルギーを前記第2給水に伝達し、前記第2給水を加熱させるように構成された第2給水予熱器(42)と、
前記高温側排熱回収部(21)で気化した前記第1給水(第1蒸気)を前記第2給水予熱器(42)に導くための第2の蒸気導入ライン(63)をさらに備える。
【0101】
上記7)の構成によれば、第2の蒸気導入ライン(63)により、第1蒸気(高温側排熱回収部21において気化した第1給水)を第2給水予熱器(42)に導くことができる。第2給水予熱器(42)において、第1蒸気により第2の給水ライン(32)を流れる第2給水を加熱できる。第2の低温側熱交換器(24)に導かれる第2給水を加熱することで、第2の低温側熱交換器(24)における排ガスと第2給水との間の熱交換により、排ガスの温度が低温になり過ぎることを抑制できるため、第2の低温側熱交換器(24)における低温硫酸腐食を効果的に抑制できる。何らかの理由により設定している排ガス温度や給水温度において硫酸腐食が生じる場合に、第2給水予熱器(42)を使用して第2給水の温度を上げることで、第2の低温側熱交換器(24)から排出される排ガスの温度も上げることができる。これにより、低温硫酸腐食の能動的抑制制御が可能となる。
【0102】
8)幾つかの実施形態では、上記7)に記載の排熱回収システム(10)であって、
前記低温側排熱回収部(22)を通過した前記排ガスの温度を取得可能に構成された排ガス温度取得装置(71)と、
前記排ガス温度取得装置(71)により取得される前記排ガスの温度が第3の所定温度以上になるように、前記第2の蒸気導入ライン(63)を流れる前記第1給水(第1蒸気)の流量を調整可能に構成された第2の蒸気流量調整装置(75)と、をさらに備える。
【0103】
上記8)の構成によれば、第2の蒸気流量調整装置(75)により、第2の蒸気導入ライン(63)を通じて第2給水予熱器(42)に送られる第1蒸気の流量を調整することで、第2給水予熱器(42)における第2給水の加熱量を調整できる。第2の蒸気流量調整装置(75)により、排ガス温度取得装置(71)が取得する排ガスの温度が第3の所定温度以上になるように、第2の蒸気導入ライン(63)を流れる第1給水の流量を調整することで、第2の低温側熱交換器(24)における低温硫酸腐食を抑制しつつ、第2の低温側熱交換器(24)において第2給水をできる限り加熱できる。
【0104】
9)幾つかの実施形態では、上記1)~8)の何れかに記載の排熱回収システム(10)であって、
前記内燃機関(11)を冷却した冷却水が前記内燃機関(11)から回収した熱エネルギーを前記給水ライン(30)に供給される前記給水に伝達し、前記給水を加熱させるように構成された給水予熱器(81)をさらに備える。
【0105】
上記9)の構成によれば、給水予熱器(81)により、給水ライン(30)に供給される給水を予め昇温することで、給水ライン(30)により導かれる給水(第1給水や第2給水)を所望の温度まで昇温させるために必要な熱エネルギー量を低減できる。このように給水を所望の温度まで昇温させるために必要な熱エネルギー量を低減することで、内燃機関(11)から排出された排ガスの熱エネルギーを他の用途に活用できるので、排ガスの熱エネルギーの有効活用が図れる。
【符号の説明】
【0106】
1 船舶
10 排熱回収システム
11 内燃機関
11A 主機エンジン
13,13A 排ガスライン
14 排ガスタービン
15 コンプレッサ
16 過給機
17 気液分離器
18 第1給水送出ライン
19 第1給水側ポンプ
20 排熱回収装置
21 高温側排熱回収部
22 低温側排熱回収部
23 第1の低温側熱交換器
24 第2の低温側熱交換器
30 給水ライン
31 第1の給水ライン
32 第2の給水ライン
33 第2給水導入ライン
34 中継ライン
35 給水分岐ライン
36 給水側ポンプ
37 第1給水側流量調整弁
40 蒸気熱交換器
41 補助蒸気熱交換器
42 第2給水予熱器
50 循環サイクル
51,51A,51B 循環流路
52 蒸発器
53 タービン
54 凝縮器
55 循環ポンプ
56 発電機
60 第1の蒸気導入ライン
61 蒸気の供給先
61A 空調系統
61B 煙突
62 蒸気供給ライン
62A,63A,63B 共有ライン
63 第2の蒸気導入ライン
70 混合チャンバ
71 排ガス温度取得装置
72 給水量調整装置
73 第2給水温度取得装置
74 第1の蒸気流量調整装置
75 第2の蒸気流量調整装置
80 給水循環ライン
81,81A,81B 給水予熱器
83 給水貯留装置
84 給水流量調整弁
85 給水循環ポンプ
86A 貯留部
86B 冷却器
87A,87B 予熱器用給水ライン
P1,P2,P3 分岐部

図1
図2
図3