(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086332
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】椅子および着脱式椅子カバー
(51)【国際特許分類】
A47C 7/42 20060101AFI20230615BHJP
A47C 4/28 20060101ALI20230615BHJP
A47C 3/16 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A47C7/42
A47C4/28 Z
A47C3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200769
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 一雄
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
【Fターム(参考)】
3B084EA01
3B084EC06
3B091CA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】着座の状態において着座者の体の収まりが良く安定性に優れ、また短時間の着座だけでなく長時間の着座の際にも体(特には背中)の疲労を軽減可能な椅子および着脱式椅子カバーを提供する。
【解決手段】椅子100は、座部12と、背もたれ部14とを有する椅子本体10と、少なくとも背もたれ部14の正面側を覆う椅子カバー20と、を備え、背もたれ部14が椅子カバーで覆われた背もたれ面34は、腰当接ラインL1より上側において着座者方向に突出する突出部40を有し、突出部40は、背骨当接ラインL2を介して左右一対で構成される。また着脱式椅子カバーは、椅子の背もたれ部の着座者に対向する背もたれ面を少なくとも被覆するカバーであって、背もたれ面を覆う背もたれ被覆面を有し、背もたれ被覆面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部が設けられており、突出部は背骨当接ラインを介して左右一対で構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、背もたれ部とを有する椅子本体と、
少なくとも前記背もたれ部の正面側を覆う椅子カバーと、を備え、
前記背もたれ部が前記椅子カバーで覆われた背もたれ面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部を有し、
前記突出部は、背骨当接ラインを介して左右一対で構成されていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記突出部が、逆ハの字であって着座者の肩甲骨に当接可能な位置に設けられている請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
逆ハの字であって着座者の肩甲骨に当接可能な位置に設けられた突出部である第一突出部と、
前記第一突出部より下方に設けられた逆ハの字の突出部である第二突出部とを有し、
前記第一突出部の逆ハの字の開き角度が、前記第二突出部の逆ハの字の開き角度よりも大きい請求項1または2に記載の椅子。
【請求項4】
椅子の背もたれ部の着座者に対向する背もたれ面を少なくとも被覆する着脱可能な椅子カバーであって、
前記背もたれ面を覆う背もたれ被覆面を有し、
前記背もたれ被覆面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部が設けられており、
前記突出部は、背骨当接ラインを介して左右一対で構成されていることを特徴とする着脱式椅子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子および着脱式椅子カバーに関し、詳しくは着座姿勢を安定させ、着座時における疲労の軽減を図ることが可能な椅子および着脱式椅子カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
背もたれ部を有する椅子に着座した際、着座の状態が安定しない場合、あるいは着座の状態を継続することで背中等に疲労が発生する場合があり問題であった。従来、このような問題を改善する試みがなされている。
【0003】
たとえば特許文献1には、着座面に置かれるマット本体と、当該マット本体の後方部から立ち上がった状態で取り付けられた腰サポートクッション本体が設けられた健康マットの発明が提案されている。上記健康マットの腰サポートクッションには、中央部付近から両サイドに向かって山状に隆起した凸部が設けられており、これによって着座者の腰を後ろから支え、腰痛予防を図ることが特許文献1に説明されている。
【0004】
また特許文献2には、背もたれ部と座部を有する座椅子に関する発明が提案されている。上記座椅子の背もたれ部は、当該背もたれ部を構成するフレームと、当該フレームに対して位置ずれしないように設けられた背面クッションとを有しており、その背面クッション内に、当該背面クッションを構成するクッション材よりも高い弾性を有する長尺押圧部材が、着座した着座者の背骨に沿うように配置されている。また上記背もたれ部を構成するフレームは、着座者が上体を後方に反らせることが可能なように角度調整機構が設けられており、これによって着座者が上体を後方に反らせた際に、着座者の背骨あたりが長尺押圧部材によって強く押圧され、背中全体において高いストレッチ効果を発揮することが特許文献2に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-167320号公報
【特許文献2】実用新案登録第3177783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述する健康マットおよび座椅子は、以下の問題を有していた。
即ち、特許文献1に記載される健康マットは、背もたれ部において、直接に腰に当接する左右方向に伸長した凸部が設けられているため、着座者の体の収まりが悪く、また短時間の着座の場合には一時的な指圧効果を与えうるが、長時間の着座では腰に違和感や負担を与える虞があった。
【0007】
また、特許文献2に記載される座椅子のように、背骨に沿って棒状の長尺押圧部材が設けられた場合も、着座者の体の収まりが悪く着座の状態(特に背もたれ部に背中がもたれた状態)が安定しないという問題があった。また、長尺押圧部材が着座者の背骨に選択的に当接するため、背中の筋肉の疲労の緩和効果が十分でない虞があった。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、着座の状態において着座者の体の収まりが良く安定性に優れ、また短時間の着座だけでなく長時間の着座の際にも体(特には背中)の疲労を軽減可能な椅子および着脱式椅子カバーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の椅子は、座部と、背もたれ部とを有する椅子本体と、少なくとも上記背もたれ部の正面側を覆う椅子カバーと、を備え、上記背もたれ部が上記椅子カバーで覆われた背もたれ面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部を有し、上記突出部は、背骨当接ラインを介して左右一対で構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の着脱式椅子カバーは、椅子の背もたれ部の着座者に対向する背もたれ面を少なくとも被覆する着脱可能な椅子カバーであって、上記背もたれ面を覆う背もたれ被覆面を有し、上記背もたれ被覆面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部が設けられており、上記突出部は、背骨当接ラインを介して左右一対で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する本発明の椅子および着脱式椅子カバーは、背骨当接ラインを介して左右一対で構成される突出部を備えるため着座者の体の収まりがよく着座の状態を安定させることがきる上、上記突出部が、腰当接ラインと背骨当接ラインを避けた領域に設けられることで背中に対し良好な押圧効果を発揮しうる。そのため、本発明の椅子は短時間の着座だけでなく長時間の着座の際にも着座者の背中などの疲労を軽減することができる。
【0012】
また本発明の着脱式椅子カバーは、既存の椅子に対し取り付け可能であるため、椅子自体を買い替えることなく、本発明の椅子と同様の効果を当該既存の椅子において発揮させることができる。また、本発明の着脱式椅子カバーを携帯し、オフィスの椅子や、新幹線や長距離バスなどの座席に取り付けることによって簡易に座り心地を改善することができ、長時間の乗車による疲労軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(1A)は、本発明の第一実施形態の椅子の斜視図であり、(1B)は、(1A)の椅子をフラットな状態にした際のI-I断面図である。
【
図2】(2A)~(2C)は、本発明における突出部の異なる態様を示す説明図である。
【
図3】本発明の効果を説明するための説明図である。
【
図4】(4A)は、(1A)に示す椅子における椅子カバーの一部を示す背面図であり、(4B)は、第一実施形態の変形例に用いられる椅子本体の斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態の着脱式椅子カバーの背面図である。
【
図6】既存の椅子に対し
図5に示す着脱式椅子カバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、1つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
本発明に関し上下方向とは、座部および背もたれ部が設けられた椅子、またはそれらに対向する面を有する椅子カバーにおいて、座部側を下方向とし、背もたれ側を上方向とするものである。
【0015】
[第一実施形態]
以下に、
図1~
図4を用いて本発明の第一実施形態を説明する。
図1Aは、本発明の第一実施形態の座椅子である椅子100の斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの椅子100をフラットな状態にした際のI-I断面図である。
図2A~
図2Cは、本発明における突出部40の異なる態様を示す説明図である。
図3は、本発明の効果を説明するための説明図である。
図4Aは、
図1に示す椅子100における椅子カバー20の一部を示す背面図であり、椅子100を正面視したとき、露出面とは反対側の面を観察したものである。
図4Bは、第一実施形態の変形例に用いられる椅子本体10の斜視図である。
尚、以下に説明する第一実施形態では、椅子100として座椅子を例に説明するが、本発明の椅子は、座部と背もたれ部とを有する椅子を広く包含し、たとえば座部の下面から伸長する複数の脚部を有する椅子や、車両用椅子などを含む。
【0016】
図1に示すとおり、本実施形態の椅子100は、椅子本体10と、椅子カバー20とを備える。本発明において椅子本体10は、少なくとも座部12および背もたれ部14を有し椅子としての構成を発揮するものであり、本実施形態では、座部12の下端から下方に連続する脚支持部18および背もたれ部14の上端から上方に連続する頭支持部16をさらに備えている。脚支持部18は、椅子カバー20によって覆われており、着座者の脚部を支持する脚支持面38を構成する。また頭支持部16は、椅子カバー20によって覆われており、着座者の頭部を支持する頭支持面36を構成する。尚、本発明において椅子カバー20は、少なくとも背もたれ部14の正面側を覆うカバーであり、本実施形態では、椅子本体10の全体を覆う態様の椅子カバー20を示している。
図1Aに示すとおり、椅子100は、背もたれ部14が椅子カバー20で覆われた背もたれ面34において、腰当接ラインL1より上側において図示省略する着座者の方に向かって突出する突出部40を備えており、かかる突出部40は、背骨当接ラインL2を介して左右一対で構成されている。
【0017】
椅子100は、背もたれ面34において上述する左右一対の突出部40を備えることによって、着座者の背中を安定して受け止めることができる。そのため椅子100に着座した着座者は、背もたれ面34に背中をもたれかけた状態において、上半身の収まりが良く着座姿勢が安定する。また、突出部40は、腰当接ラインL1および背骨当接ラインL2を避けた領域に設けられており、着座者の背中の筋肉や肩甲骨に対し適度な刺激を与え、これによって良好な押圧効果を発揮し得る。
【0018】
尚、本発明において、腰当接ラインL1とは、着座者の腰またはその近傍が当接可能なラインを指す。具体的には、たとえば、座部面32よりも上方かつ背もたれ面34の上下方向において上端から3分の2の高さより下方である任意の位置で、当該背もたれ面34の左右方向に連続するラインを腰当接ラインL1として認識することができる。
また、背骨当接ラインL2とは、着座者の背骨またはその近傍が当接可能なラインを指す。具体的には、背もたれ面34の幅方向における中間点をたどって上下方向に連続するラインを背骨当接ラインL2として認識することができる。
【0019】
図1Bに示すとおり、本実施形態における椅子本体10は、背もたれ部14の上端から上方に連続する頭支持部16を有している。本実施形態では、背もたれ部14と頭支持部16との境界領域に、椅子本体10の前面と背面とを貫通する貫通孔30が設けられている。また、貫通孔30の形状に併せ、椅子カバー20にも貫通孔30に対応する位置に貫通部24が設けられている。このように貫通孔30が設けられることで、長時間の着座の際に、着座者の背中上部から頭下部の辺りと、これに対向する椅子100との間に空気が籠ることが良好に防止される。これにより長時間の着座だけでなく、たとえばリクライニング機能を有する椅子100において、背もたれ部14および頭支持部16を倒して睡眠や休息をとる場合に、首もとの蒸れを防止し快適な状態を維持することが可能である。
尚、背もたれ部14と頭支持部16との境界領域とは、厳密に区画されるものではなく、背もたれ部14と頭支持部16とを跨ぐちょうど境界部分、背もたれ部14の上端寄りの部分、または頭支持部16の下端よりの部分のいずれの領域であってもよい。
【0020】
本実施形態における椅子100は、リクライニング機能を備える。即ち、本実施形態における椅子本体10は、背もたれ部14と座部12との境界において角度調整部50を備える。これによって背もたれ部14と座部12とからなる角度を変更することができ、背もたれ部14の角度を前後方向に調節可能である。角度調整部50としては、一般的なリクライニングチェアに用いられる機構から適宜選択される。
【0021】
リクライニング機能は本発明において必須の要件ではないが、リクライニング機能(角度調整部50)により背もたれ部14と座部12との角度が90度を超えるよう背もたれ部14を後方に倒すとともに、かかる背もたれ部14に着座者が背中をもたれかけることによって、自然と突出部40に対する背中の当接圧力を高くすることができる。これによって、着座者は良好な押圧効果を体感することができ好ましい。角度調整部50により後方に倒される背もたれ部14の傾斜角度の範囲は特に限定されず、たとえば、90度を超えて180度までの範囲の角度で適宜決定することができる。
尚、リクライニング機能を発揮するための角度調整部50の替りに、着座者が背中から背もたれ部14に対し力を負荷したとき、かかる背もたれ部14を後方に傾斜させることが可能な傾斜機構が設けられていてもよい。傾斜機構とは、力が付加されたときに変形し、当該力が除去されたときに元の形状に戻る弾性の性質を備えた機構を指し、たとえば、背もたれ部14と頭支持部16とに亘って、あるいはこれらの中間に、ばねなどを設けることで構成することができるがこれに限定されない。上記ばねとしては、板ばね、コイルばね、などの種々のばねを広く含む。
【0022】
また、着座者が所望の姿勢でくつろぐことを可能とするために、本実施形態では、背もたれ部14と頭支持部16とがなす角度を変更可能とする角度調整部50がこれらの境界に設けられており、また同様に、座部12と脚支持部18とがなす角度を変更可能とする角度調整部50がこれらの境界に設けられていることが好ましい。
以下に、本実施形態についてより詳細に説明する。
【0023】
(突出部)
上述するとおり椅子100は、背もたれ面34において、着座者の方に向かって突出する突出部40を備える。突出部40は、背骨当接ラインL2を介して左右一対であればよく、その数や形、向きなどは限定されない。ここで左右一対とは、背骨当接ラインL2を介して左右方向それぞれに突起を有することを広く包含するが、背もたれ面34に対し背中をもたれかけたときの背中の収まりや上半身の安定感の良さから、左右一対の突起は
図1に示すように背骨当接ラインL2を介して鏡映対称の形状であることが好ましい。
【0024】
本実施形態では、
図1Aに示すとおり、腰当接ラインL1より上方において、逆ハの字状の2組の突出部40(第一突出部40A、第二突出部40B)が設けられている。これら2組の突出部40は、
図3に示すとおり、たとえば相対的に上方に配置される第一突出部40Aが、肩甲骨310の少なくとも一部に当接可能な位置に設けられるとともに、第二突出部40Bが、肩甲骨310より下方の位置に設けられるよい。かかる態様によれば、第一突出部40Aによって着座者300の肩甲骨310およびその周囲の筋肉等を良好に刺激することができ、また第二突出部40Bによって着座者300の肩甲骨310より下方の背中320における筋肉等を良好に刺激することができる。
【0025】
尚、本実施形態における第一突出部40Aおよび第二突出部40Bは、いずれも腰当接ラインより上側であって背骨当接ラインL2を介して左右一対となるよう構成されているが、かかる態様は本発明を何ら制限するものではない。本発明では、腰当接ラインより上側であって背骨当接ラインL2を介して左右一対の突出部が少なくとも1つ(1組)備えていればよく、当該突出部の下方にさらに設けられる異なる1組の突出部の一部が、腰当接ラインおよび/または背骨当接ラインに重なることを禁止するものではない。
【0026】
第一突出部40Aと、これにより相対的に下方に配置される第二突出部40Bは、たとえば、
図2Aに示すように、所定長さの細状の棒状片44を用い背骨当接ラインL2を介して逆ハの字等の所定の方向に配置することで構成されてもよい。このとき、第一突出部40Aの開き角度θ1は第二突出部40Bの開き角度θ2よりも大きくする(即ち、開き角度θ1>開き角度θ2)ことで、背中全体を安定させ、バランスよく押圧することができ、より高い疲労軽減効果が期待されるため好ましい。ただし、本発明は開き角度θ1≦開き角度θ2とする態様を包含する。尚、ここでいう開き角度θとは、背骨当接ラインL2に平行な直線と、逆ハの字の突出部40を構成する一方の片の長軸との交差角度を指す。
【0027】
本実施形態の突出部40の変形例として、
図2Bに示すとおり、平面視において円状などの非棒状体である小片45を所定方向に配列することによって逆ハの字等の所定の概観を構成してもよい。
また突出部40の異なる変形例として、突出部40が逆ハの字以外の構成であってもよい。たとえば
図2Cに示すとおり、背骨当接ラインL2を介して左右一対の互いに平行な2本の棒状片44から構成することもできる。
図2Cではより具体的には、左右一対の2本の棒状片44はそれぞれ背骨当接ラインL2に対し平行である。
【0028】
また図示省略するが、本発明における突出部40は、1組または3組以上であってもよく、いずれの場合においても、肩甲骨310に当接可能な位置に少なくとも1組の突出部40が設けられることが好ましい。肩甲骨310に対し突出部40を当接させることによって、背中の疲労軽減効果が効率よく図られ得るからである。
【0029】
突出部40を構成する部材は、特に限定されないが、着座者の背中に著しい違和感を与えないよう配慮するという観点からは弾性部材であることが好ましい。ここで弾性部材とは、着座者の背中がもたれかけられたときに圧縮変形し、当該背中が離間した際に元の形状に戻る程度の弾性変形を示す部材であればよく、たとえば、発泡樹脂成形体、発泡樹脂ビーズ、ゴムなどが挙げられる。中でも、適度な柔軟性、クッション性を発揮し、かつ所望形状に成形容易であるという観点から、上記弾性部材として発泡樹脂体を用いることが好ましい。発泡樹脂体としては、たとえば、ポリプロピレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体などが例示される。
【0030】
椅子100において、突出部40を構成する弾性部材は、背もたれ面34の所定の位置に存在すればよい。本実施形態では、
図4Aに示すとおり、突出部40を構成する弾性部材42は、椅子カバー20の背もたれ部14に当接する所定の位置に設置されている。設置方法は特に限定されないが、本実施形態では、椅子カバー20の所定の位置に弾性部材42からなる棒状片44を収容する収容部22が設けられ、この収容部22に棒状片44を収容することによって、突出部40を構成している。収容部22は、収容部22の内径が棒状片44の外径とほぼ同一とされており、収容部22に収容された棒状片44が内部で移動せず所定の配置位置(たとえば逆ハの字を示す配置位置)を維持できるよう設計されている。
【0031】
このように収容部22を椅子カバー20に設けることによって、たとえば棒状片44を
図4Aに示すように円筒形状に形成することができる。円筒形状の弾性部材42からなる突出部40は、立体的であり、後述する半円筒状の弾性部材42からなる突出部40(
図4B参照)と比較して、着座者の背中に対し良好な刺激を与えることができるため好ましい。尚、収容部22の形状を変更するとともに、これに収容される発泡樹脂体の形状を適宜変更してもよいし、あるいは、収容部22に発泡樹脂ビーズを充填することによって突出部40を構成してもよい。
【0032】
本実施形態に用いられる円筒形状の棒状片44の寸法は特に限定されないが、たとえば直径20mm~45mm、長さ80mm~150mm程度の円筒形状の発泡樹脂成形体が好ましい。
【0033】
収容部22は、例えば、椅子カバー20と同じシート部材で構成されてもよく、また異なるシート部材で構成されてもよい。
【0034】
上述する収容部22を備える本実施形態は、本発明を何ら限定するものではなく、たとえば、突出部40を構成する弾性部材42が椅子カバー20の所定の位置に、直接に、接着または縫合などの任意の接合手段で取り付けられていてもよい。また、椅子カバー20において突出部40が取り付けられる面は、椅子カバー表面201(着座者に接触する面)であってもよいし椅子カバー裏面202(椅子本体10に接触する面)であってもよい。本実施形態では
図4Aに示すとおり、椅子カバー裏面202に収容部22が設けられ、弾性部材42が収容されており、椅子100の一体感が良好であるとともに、突出部40の脱落などが生じ難いよう配慮されている。一方、図示省略するが、椅子カバー表面201に収容部22を設ける態様では、弾性部材42の交換が容易であるというメリットを有する。
【0035】
また、本実施形態の変形例として
図4Bに示すとおり、突出部40を構成する弾性部材42を椅子本体10の所定の位置に取り付けることもできる。この場合には椅子本体10に対し任意の手段で弾性部材42を接合する必要がある。かかる態様では、弾性部材42の外周の少なくとも一部に平面部を設け、椅子本体10の所定の面と当該平面部とを面接触させることで接合状態の安定化を図ることができる。たとえば一例として、
図4Bに示すとおり、長さ方向に切断した半円筒状の弾性部材42を準備し、かかる弾性部材42と椅子本体10とを面接触させて接合させることが好ましい。半円筒状の弾性部材42は、
図4Aに示す円筒状の弾性部材42と比較した場合、着座者の背中に対する押圧効果が低減する可能性があるものの、十分に本発明の所期の課題を達成しうる。
【0036】
(椅子カバー)
次に椅子カバー20について説明する。椅子カバー20は、少なくとも背もたれ部14の正面側を覆う範囲で椅子本体10を被覆すればよく、本実施形態における椅子カバー20は、具体的には、椅子本体10の全体を覆っている。椅子本体10の全体を覆う椅子カバー20は、開口を設けず、椅子本体10に対し繰り返し着脱できないよう取り付けられてもよく、あるいは、ファスナーなどで繰り返し開閉可能な開口を設け、椅子本体10に対し繰り返し着脱可能に構成されてもよい。
また、背もたれ部14などを部分的に覆うよう構成された椅子カバー20の場合であっても、椅子本体10に対し繰り返し着脱できないよう接合等されて取り付けられてもよく、あるいは、椅子本体10に対する取付手段を椅子カバー20に設け、かかる椅子カバー20を椅子本体10に対し繰り返し着脱可能としてもよい。
【0037】
椅子100は、背もたれ面34において腰当接ラインL1より上側であって、背骨当接ラインL2を介して左右一対の突出部40が設けられていることが重要である。従って、本発明において椅子カバー20は、
図4Aに示すとおり背もたれ部14に当接する所定の位置に突出部40が設けられた態様であってもよいし、
図4Bに示すとおり突出部40が設けられた椅子本体10の少なくとも背もたれ部14の正面を覆う態様であってもよい。
【0038】
椅子カバー20は、立体的な椅子本体10を容易に被覆可能とするためにシート状物で構成されることが好ましい。上記シート状物としては、布、樹脂シート、本革、合成皮革 人工皮革などなどが例示される。たとえば、シート状物を適宜、椅子本体10の立体形状に併せて裁断して裁断シートを作製し、これらを縫合するなどして椅子本体10の立体形状に併せた椅子カバー20を作製することができる。
【0039】
(椅子本体)
椅子本体10は、少なくとも、座部12と、背もたれ部14とを有する。椅子本体10の形状およびこれを構成する部材などは特に限定されず、広く椅子一般の構成から適宜選択することができる。たとえば金属部材などで椅子本体10の骨組みを構成し、これに発泡樹脂体などで肉付けすることで椅子本体10を構成することができる。上記骨組みを構成する金属部材などとしては例えばスチール、ステンレス、鉄、アルミ、カーボンなどが例示され、また上記発泡樹脂体としては、ポリプロピレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体などが例示される。上記発泡樹脂体の硬さは、突出部40を構成する部材と同程度かそれ以下であると、突出部40による効果が得られやすいため好ましい。
【0040】
図4Bに示すとおり、椅子本体10の背もたれ部14に対し、突出部40が設けられる場合、椅子本体10とは別に製造された棒状片44あるいは小片45などを背もたれ部14の所定の位置に接合してもよいし、背もたれ部14の表面に突出部40が位置するよう、背もたれ部14と突出部40とを予め一体成形することもできる。
【0041】
[第二実施形態]
次に、
図5、
図6を用いて本発明の第二実施形態である着脱式椅子カバー200について説明する。
図5は、本発明の第二実施形態の着脱式椅子カバー200の背面図である。尚、ここでいう背面とは、着脱式椅子カバー200の着座者と接触する面とは反対側の面を指す。
図6は、既存の椅子400に対し本実施形態の着脱式椅子カバー200を取り付けた状態を示す斜視図である。着脱式椅子カバー200は、既存の椅子400に着脱可能に取り付けることができることを必須とすることを除き、上述する第一実施形態における椅子100に設けられた椅子カバー20と同様の構成を採用し得る。したがって、本実施形態の着脱式椅子カバー200の構成は、第一実施形態における椅子カバー20と共通の構成については、適宜第一実施形態の説明が参照される。
尚、
図6に示す椅子400は、基台420に支持された座部412、座部412の外縁から上方に起立して設けられた背もたれ部414、背もたれ部414の上部からさらに上方に連続する頭支持部416を備える車両用の椅子である。ただしこれは一例であって、着脱式椅子カバー200は、少なくとも座部412と背もたれ部414とを備える種々のタイプの椅子に適用可能である。
【0042】
着脱式椅子カバー200は、椅子400の背もたれ部414の着座者に当接する面である背もたれ面430を少なくとも被覆可能であるとともに、椅子400に対し繰り返し着脱可能なカバーである。したがって、着脱式椅子カバー200は、背もたれ面430を覆う背もたれ被覆面210を備える。かかる背もたれ被覆面210は、腰当接ラインL1より上側において着座者方向に突出する突出部40(第一突出部40A、第二突出部40B)が設けられており、突出部40は、背骨当接ラインL2を介して左右一対で構成されている。突出部40に関する詳細については、適宜第一実施形態の説明が参照される。
【0043】
本実施形態の着脱式椅子カバー200は、既存の椅子400に対し取り付けるだけで、着座時における背中等の疲労を低減可能である。そのためたとえば、着座者は着脱式椅子カバー200を携帯し、オフィスの椅子あるいは新幹線やバス等の車両の椅子に対し、当該着座者が座る際に着脱式椅子カバーを取り付けることで、着座状態の快適化を容易に図ることができる。椅子400の使用が終了した際には適宜、着脱式椅子カバー200を取り外せばよい。
【0044】
図5に示す通り、本実施形態における着脱式椅子カバー200は、シート状物からなる背もたれ被覆面210を有し、これを椅子400の背もたれ部414の背もたれ面430を覆う位置に配置するための取付手段を備えている。たとえば、本実施形態では具体的には、
図5に示すとおり、背もたれ被覆面210の上部外縁に取り付けられた二本の紐状物(上部取付手段220)および背もたれ被覆面210の下部外縁に取り付けられた二本の紐状物(下部取付手段230)を取付手段として備える。ただし、本発明の趣旨を逸脱せず椅子400に対し着脱式椅子カバー200を取り付けることができる範囲において、上記取付手段は適宜変更可能である。また取付手段を設ける替りに、着脱式椅子カバー200を周方向に連続するよう構成し上方から被せるように、椅子400に対し着脱式椅子カバー200を装着することもできる。
【0045】
図6に示すとおり、本実施形態では具体的には背もたれ部414の着座者に対向する背もたれ面430のみを被覆する態様の着脱式椅子カバー200を示したが、本発明の着脱式椅子カバーはこれに限定されず、たとえば、さらに座部412および/または頭支持部416の着座者に対向する背もたれ面430を被覆する被覆面を備えた態様、および背もたれ部414における背もたれ面430とは反対側の面まで被覆する被覆面を備えた態様、椅子400全体を覆う態様などを包含する。
【0046】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)座部と、背もたれ部とを有する椅子本体と、
少なくとも前記背もたれ部の正面側を覆う椅子カバーと、を備え、
前記背もたれ部が前記椅子カバーで覆われた背もたれ面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部を有し、
前記突出部は、背骨当接ラインを介して左右一対で構成されていることを特徴とする椅子。
(2)前記突出部が、逆ハの字であって着座者の肩甲骨に当接可能な位置に設けられている上記(1)に記載の椅子。
(3)逆ハの字であって着座者の肩甲骨に当接可能な位置に設けられた突出部である第一突出部と、
前記第一突出部より下方に設けられた逆ハの字の突出部である第二突出部とを有し、
前記第一突出部の逆ハの字の開き角度が、前記第二突出部の逆ハの字の開き角度よりも大きい上記(1)または(2)に記載の椅子。
(4)前記突出部が、弾性部材を用いて構成されており、
前記弾性部材が、前記椅子カバーの前記背もたれ部に当接する所定の位置に設置されている上記(1)から3のいずれか一項に記載の椅子。
(5)前記椅子本体は、前記背もたれ部の上端から上方に連続する頭支持部を有し、
前記背もたれ部と前記頭支持部との境界領域に、前面と背面とを貫通する貫通孔が設けられている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の椅子。
(6)椅子の背もたれ部の着座者に対向する背もたれ面を少なくとも被覆する着脱可能な椅子カバーであって、
前記背もたれ面を覆う背もたれ被覆面を有し、
前記背もたれ被覆面は、腰当接ラインより上側において着座者方向に突出する突出部が設けられており、
前記突出部は、背骨当接ラインを介して左右一対で構成されていることを特徴とする着脱式椅子カバー。
【符号の説明】
【0047】
10・・・椅子本体
12・・・座部
14・・・背もたれ部
16・・・頭支持部
18・・・脚支持部
20・・・椅子カバー
22・・・収容部
24・・・貫通部
30・・・貫通孔
32・・・座部面
34・・・背もたれ面
36・・・頭支持面
38・・・脚支持面
40・・・突出部
40A・・・第一突出部
40B・・・第二突出部
42・・・弾性部材
44・・・棒状片
45・・・小片
50・・・角度調整部
100・・・椅子
200・・・着脱式椅子カバー
201・・・椅子カバー表面
202・・・椅子カバー裏面
210・・・背もたれ被覆面
220・・・上部取付手段
230・・・下部取付手段
300・・・着座者
310・・・肩甲骨
320・・・背中
400・・・椅子
412・・・座部
414・・・背もたれ部
416・・・頭支持部
420・・・基台
430・・・背もたれ面
L1・・・腰当接ライン
L2・・・背骨当接ライン
θ1、θ2・・・開き角度