(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086364
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】車両及び車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60P 3/22 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
B60P3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200823
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】笠 直亮
(57)【要約】
【課題】タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる車両及び車両の製造方法を提供すること。
【解決手段】機器室100は、床を形成する床部111、及び、床部111の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する側壁部112を有する下板110と、天井壁を形成する天井壁部121、及び、天井壁部121の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する側壁部122を有する上板120とを備え、側壁部122の車両幅方向内側面が、側壁部112の車両幅方向外側面に重ね合わされて接合されるので、重ね代を調整することで、上板120の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整できる。その結果、タンク12に対する上板120の位置を調整する作業を行いやすくできる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、そのフレームに架装されるタンクと、そのタンクの車両後方側に配設される機器室とを備えた車両において、
前記機器室は、下板と、上板とを備え、
前記下板は、床を形成する床部と、その床部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する下板側壁部とを備え、
前記上板は、前記タンクに沿って湾曲する天井壁を形成する天井壁部と、その天井壁部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する上板側壁部とを備え、
前記上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面が、前記下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面に重ね合わされて接合されることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面と前記下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面とが重ね合わされる領域は、前記機器室の側壁の車両上下方向中央よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記上板側壁部の車両幅方向内側面が、前記下板側壁部の車両幅方向外側面に重ね合わされて接合され、
前記下板側壁部の上端と前記上板側壁部の車両幅方向内側面とは、連続溶接により接合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記フレームは、前記タンクよりも車両後方側へ延設され、
前記下板が前記フレームに架装されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
フレームと、そのフレームに架装されるタンクと、そのタンクの車両後方側に配設される機器室とを備え、
前記機器室が、床を形成する床部、及び、前記床部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する下板側壁部を有する下板と、前記タンクに沿って湾曲する天井壁を形成する天井壁部、及び、前記天井壁部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する上板側壁部を有する上板とを備えた車両を製造する車両の製造方法において、
前記フレームに前記タンクを架装する第1工程と、
その第1工程により架装された前記タンクの車両後方側において、前記フレームに前記下板の前記床部を接合する第2工程と、
その第2工程により前記フレームに前記床部が接合された前記下板の前記下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面に、前記上板の前記上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面を重ね合わせて接合する第3工程とを備えることを特徴とする車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び車両の製造方法に関し、特に、タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる車両及び車両の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンクの後方に機器室を備えたタンクローリが知られている(特許文献1)。機器室は、床と、左右の側壁と、後方の後壁と、タンクに沿って湾曲する天井壁とから箱状に形成され、内部には、液化天然ガスなどの積載物を給排出するための弁や計器類、配管などが格納される。
【0003】
ここで、機器室は、床側を形成する下板と、側壁、後壁および天井壁側を形成する上板とを備え、下板の縁部から上方へ立設される部分の上端(以下「下板の上端」と称す)に上板の下端を突き合わせて接合する構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-030301号公報(例えば、段落0018,0024、
図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術のように、下板の上端と、上板の下端とを突き合わせて接合する構造では、タンクに対する上板の位置を調整する作業に手間を要するという問題点があった。
【0006】
即ち、下板の上端と上板の下端とを突き合わせた状態だと機器室の高さがタンクの径よりも大きくなる場合には、下板の上端(又は上板の下端)を削り、上板の位置(高さ位置、傾斜角度)を調整する作業が必要となる。逆に、下板の上端と上板の下端とを突き合わせた状態だと機器室の高さがタンクの径より小さくなる場合には、下板の上端と上板の下端との間に別部材を介在させて、上板を嵩上げする作業が必要となる。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる車両及び車両の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の車両は、フレームと、そのフレームに架装されるタンクと、そのタンクの車両後方側に配設される機器室とを備えたものであり、前記機器室は、下板と、上板とを備え、前記下板は、床を形成する床部と、その床部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する下板側壁部とを備え、前記上板は、前記タンクに沿って湾曲する天井壁を形成する天井壁部と、その天井壁部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する上板側壁部とを備え、前記上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面が、前記下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面に重ね合わされて接合される。
【0009】
本発明の車両の製造方法は、フレームと、そのフレームに架装されるタンクと、そのタンクの車両後方側に配設される機器室とを備え、前記機器室が、床を形成する床部、及び、前記床部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する下板側壁部を有する下板と、前記タンクに沿って湾曲する天井壁を形成する天井壁部、及び、前記天井壁部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する上板側壁部を有する上板とを備えた車両を製造する方法であり、前記フレームに前記タンクを架装する第1工程と、その第1工程により架装された前記タンクの車両後方側において、前記フレームに前記下板の前記床部を接合する第2工程と、その第2工程により前記フレームに前記床部が接合された前記下板の前記下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面に、前記上板の前記上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面を重ね合わせて接合する第3工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の車両によれば、機器室は、下板と、上板とを備え、下板は、床を形成する床部と、その床部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する下板側壁部とを備え、上板は、天井壁を形成する天井壁部と、その天井壁部の車両幅方向両側に配設され側壁の一部を形成する上板側壁部とを備え、上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面が、下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面に重ね合わされて接合されるので、部材を削る作業や別部材を介在させる作業を行わなくても、重ね代を調整することで、上板の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整できる。その結果、タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる。
【0011】
請求項2記載の車両によれば、請求項1記載の車両の奏する効果に加え、上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面と下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面とが重ね合わされる領域は、機器室の側壁の車両上下方向中央よりも下方に位置するので、溶接作業が危険を伴う高所作業となることを抑制できる。
【0012】
請求項3記載の車両によれば、請求項1又は2に記載の車両の奏する効果に加え、上板側壁部の車両幅方向内側面が、下板側壁部の車両幅方向外側面に重ね合わされて接合され、下板側壁部の上端と上板側壁部の車両幅方向内側面とは、連続溶接により接合されるので、雨水などの水が機器室の内部に侵入することを抑制できる。
【0013】
請求項4記載の車両によれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両の奏する効果に加え、フレームは、タンクよりも車両後方側へ延設され、下板がフレームに架装されるので、タンクに対する下板の位置を規定した状態で、下板に対する上板の重ね代を調整できる。その結果、タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる。
【0014】
請求項5記載の車両の製造方法によれば、フレームにタンクを架装する第1工程と、その第1工程により架装されたタンクの車両後方側において、フレームに下板の床部を接合する第2工程と、その第2工程によりフレームに床部が接合された下板の下板側壁部の車両幅方向外側面または内側面に、上板の上板側壁部の車両幅方向内側面または外側面を重ね合わせて接合する第3工程とを備えるので、タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる。
【0015】
即ち、上板(上板側壁部)の下端と下板(下板側壁部)の上端とを突き合わせて接合する場合のように、部材を削る作業や別部材を介在させる作業を行う必要がないので、タンクに対する上板の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整できる。特に、第3工程では、第2工程においてタンクに対する下板の位置を規定した状態で、下板に対する上板の重ね代を調整できる。よって、例えば、機器室を組み立ててから(下板と上板とを接合してから)、その機器室をタンクの車両後方側に配設する場合と比較して、タンクに対する上板の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整できる。その結果、タンクに対する上板の位置を調整する作業を行いやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるタンクローリの側面図である。
【
図3】(a)は、上板の背面斜視図であり、(b)は、上板の正面斜視図である。
【
図4】(a)は、タンクローリの部分拡大側面図であり、(b)は、
図4(a)のIVb-IVb線で切断した機器室の部分拡大断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、機器室の部分拡大背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、タンクローリ10の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態におけるタンクローリ10の側面図である。なお、
図1の矢印U,D、矢印L,R、矢印F,Bは、タンクローリ10の車両上下方向、車両幅方向(左右方向)、車両前後方向をそれぞれ示す。
図2以降においても同様である。
【0018】
タンクローリ10は、液体や気体等の積載物(本実施例では液化天然ガス)を輸送するための車両であり、積載物が積載される円筒状のタンク12と、そのタンク12が架装される車体14と、それらタンク12および車体14の間に介設される一対のサブフレーム16と、タンク12の車両後方側(
図1の矢印B方向側)に配設される機器室100と、タンク12および機器室100の車両下方側(
図1の矢印D方向側)に配設される加圧蒸発器20と、を備えて構成される。
【0019】
車体14は、運転室としてのキャブ14aと、車体14の骨格をなす一対のシャシフレーム14bと、前輪14cを有し地面に対してキャブ14aを支持する前部走行装置と、後輪14dを有し地面に対して車体14の車両後方側(
図1の矢印B方向側)を支持する後部走行装置とを備える。
【0020】
一対のシャシフレーム14bは、車両幅方向(
図1の矢印L,R方向)に所定間隔を隔てつつ車両前後方向(
図1の矢印F,B方向)に延設される梁状の部材であり、その対向間に、複数の連結部材が連結され、平面視梯子状に形成される。タンク12は、一対のシャシフレーム14bに、一対のサブフレーム16を介して架装される。
【0021】
サブフレーム16は、車両前後方向に延設される梁状の部材である。
【0022】
一対のサブフレーム16にタンク12が支持されることで、サブフレーム16の対向間にタンク12を傾斜した状態に配設できる。この場合は積載物が傾斜した側に集まるので、積載物を払い出す際に傾斜下側から払い出すことで、タンク内に残留する積載物の量を減じることが出来る。なお、タンク12は、車両後方側(
図1の矢印B方向側)へ向けて下降傾斜した状態(本実施形態ではシャシフレーム14bに対するタンク12の傾斜角度が略1度)とされる。
【0023】
機器室100は、複数の配管、弁等が格納される箱状の部位である。機器室100は、後述するように、下板110(
図2参照)と上板120(
図3参照)とを備え、それらを接合することで(
図4参照)、格納空間を内部に有する箱状に形成される。なお、機器室100の後壁(矢印B方向側の壁)には、開閉可能な扉(図示せず)が配設され、その扉を開放することで、機器室100内の弁等の操作が可能とされる。
【0024】
次いで、
図2及び
図3を参照して、機器室100の構成について説明する。
図2は、下板110の背面斜視図である。
【0025】
図2に示すように、シャシフレーム14bは、タンク12よりも車両後方側(矢印B方向側)へ延設され、そのシャシフレーム14bの延設された部分と下板110との間には、機器室フレーム18が介設される。即ち、機器室100は、機器室フレーム18を介してシャシフレーム14bに架設される(
図4参照)。
【0026】
機器室フレーム18は、車両前後方向(矢印F,B方向)に延設される一対の梁状の部材(縦梁18a)と、車両幅方向(矢印L,R方向)に延設される複数本(本実施形態では3本)の梁状の部材(横梁18b)とから平面視格子状に形成され、縦梁18a及び横梁18bの上部側が下板110に溶接されると共に、縦梁18aの下部側がボルトによりシャシフレーム14bに固定される。
【0027】
下板110は、機器室100の床を形成する床部111と、その床部111の車両幅方向両側(矢印L方向側および矢印R方向側)に立設される一対の側壁部112と、床部111の車両後方側(矢印B方向側)に立設される後壁部113とを備え、ステンレス製(本実施形態ではSUS304)の板を折り曲げて形成される。
【0028】
側壁部112は、機器室100の側壁の一部を形成する部位であり、車両上方(矢印U方向)へ向けて折り曲げられ、床部111の上面からの立設寸法が寸法H1とされる。後壁部113は、機器室100の後壁の一部を形成する部位であり、車両下方(矢印D方向)へ向けて折り曲げられ、床部111の上面からの立設寸法が寸法H2とされる。
【0029】
側壁部112の車両前方側(矢印F方向側)の端部は、タンク12の車両後方側(矢印B方向側)の端部よりも車両前方側に位置し、側壁部112の車両後方側の端部は、床部111の車両後方側の端部と略一致される。後壁部113の車両幅方向(矢印L,R方向)の端部と側壁部112の外側面(車両幅方向外側の面)との間には、車両幅方向に寸法L1の間隔が形成される。
【0030】
このように、側壁部112と後壁部113との間に寸法L1の間隔が形成されることで、床部111に対する側壁部112又は後壁部113の折り曲げ部分の端部まで折り曲げ用治具を当接させることができると共に、折り曲げ部分どうしが重なることを抑制できる。よって、下板110の折り曲げ作業を行いやすくできると共に、下板110の寸法精度を向上でき、上板120との溶接による接合を行いやすくできる。
【0031】
図3(a)は、上板120の背面斜視図であり、
図3(b)は、上板120の正面斜視図である。なお、
図3(b)には、前板130が二点鎖線を用いて模式的に図示される。
【0032】
図3に示すように、上板120は、機器室100の天井壁を形成する天井壁部121と、その天井壁部121の車両幅方向両側(矢印L方向側および矢印R方向側)に配設される一対の側壁部122と、天井壁部121及び側壁部122の車両後方側(矢印B方向側)に配設される後壁部123とを備え、一般構造用圧延鋼材製(本実施形態ではSS400)の板を折り曲げると共に溶接により接合して形成される。
【0033】
なお、本実施形態では、側壁部122及び後壁部123が板を折り曲げて一体の部材として形成され、その一体の部材(側壁部122及び後壁部123)が天井壁部121に溶接により接合される。
【0034】
天井壁部121は、タンク12の外形に沿って円弧状に湾曲して形成される。側壁部122及び後壁部123は、平坦状に形成され、機器室100の側壁の一部および後壁の一部をそれぞれ形成する。なお、後壁部123の開口部分には、上述した扉(図示せず)が開閉可能に配設される。
【0035】
側壁部122の車両前後方向(矢印F,B方向)寸法は、側壁部112(
図2参照)の車両前後方向寸法と略同一に設定される。また、一対の側壁部122の車両幅方向(矢印L,R方向)内側面どうしの間隔は、一対の側壁部112(
図2参照)の車両幅方向外側面どうしの間隔と略同一とされる。
【0036】
後壁部123には、側壁部122の下縁よりも車両下方(矢印D方向)へ張り出す張出領域123aが形成される。張出領域123aの車両上下方向(矢印U,D方向)における張出寸法は寸法H3とされ、後壁部113の寸法H2(
図2参照)よりも大きな寸法とされる(H2<H3)。
【0037】
張出領域123aの車両幅方向(矢印L,R方向)外方側の端部と側壁部122の車両幅方向内側面との間には、車両幅方向に寸法L2の間隔が形成される。なお、張出領域123aの寸法L2は後壁部113の寸法L1(
図2参照)と略同一とされる(L2≒L1)。
【0038】
このように、側壁部122と張出領域123aとの間に寸法L2の間隔が形成されることで、側壁部122と後壁部123との間の折り曲げ部分の端部(張出領域123a側の端部)の変形性に張出領域123aが影響することを抑制でき、寸法精度を向上できる。
【0039】
また、上記寸法L2の間隔により、下板110に上板120を接合する際には、下板110(床部111に対する側壁部112)の折り曲げ部分の端面C(
図5(a)参照)に、上板120(後壁部123又は張出領域123a)の内面を当接させる必要がないので、両者の接合を行いやすくできる。
【0040】
前板130は、機器室100の前壁を形成する部材であり、後述するように、下板110に上板120が溶接により接合された後、タンク12の外側面と、側壁部122の内側面と、床部111(
図2参照)の上面とに溶接により接合される。なお、前板130は、一般構造用圧延鋼材製(本実施形態ではSS400)の板から形成される。
【0041】
次いで、
図4及び
図5を参照して、タンクローリ10の製造方法について説明する。
図4(a)は、タンクローリ10の部分拡大側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb-IVb線で切断した機器室100の部分拡大断面図である。
図5(a)及び
図5(b)は、機器室100の部分拡大背面斜視図であり、
図5(a)では接合前の状態が、
図5(b)では接合後の状態が、それぞれ図示される。
【0042】
タンクローリ10の製造は、シャシフレーム14bにサブフレーム16を介してタンク12を架装し(第1工程)、次いで、タンク12が架装されたシャシフレーム14bに機器室フレーム18を介して下板110を架装する(第2工程、
図2参照)。
【0043】
なお、第2工程では、シャシフレーム14bに機器室フレーム18を接合した後に、機器室フレーム18に下板110(床部111)を接合しても良く、下板110(床部111)を機器室フレーム18に接合した後に、機器室フレーム18をシャシフレーム14bに接合しても良い。
【0044】
図4及び
図5に示すように、第2工程によりシャシフレーム14bに機器室フレーム18を介して下板110を架装した後は、下板110の一対の側壁部112の車両幅方向外側面(
図4(b)左側の面)に、上板120の一対の側壁部122の車両幅方向内側面(
図4(b)右側の面)を重ね合わせて溶接により両者を接合する(第3工程)。
【0045】
ここで、第3工程では、タンク12に対する上板120の位置(高さ位置)を調整する必要があり、タンク12が傾斜されている場合には、上板120の傾斜角度も調整する必要がある。
【0046】
下板110の側壁部112の上端(車両上方側の端面)に、上板120の側壁部122の下端(車両下方側の端面)を突き合わせて溶接により両者を接合する従来の製造方法では、タンク12に対する上板120の位置(高さ位置、傾斜各祖)を調整するために、突合せ部分(側壁部112の上端または側壁部122の下端)を削る作業や、突き合わせ部分に別部材を介在させる作業が必要となり、手間が嵩む。
【0047】
これに対し、上記製造方法(第3工程)によれば、下板110(側壁部112)に対する上板120(側壁部122)の重ね代を変更すれば、上板120を、矢印U,D方向へ移動させることや、矢印L,Rを中心として回転させることができる。これにより、タンク12に対する上板120の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整することができる。
【0048】
特に、第3工程では、第2工程においてタンク12に対する下板110の位置を規定した状態で、下板110に対する上板120の重ね代を調整できる。よって、例えば、機器室100を組み立ててから(下板110と上板120とを接合してから)、その機器室100をタンク12の車両後方側に配設する場合(タンク12及び機器室100の外形がそれぞれ定まってしまうため、それらの製造公差を吸収することが困難となる)と比較して、タンク12に対する上板120の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整できる。
【0049】
本実施形態では、下板110の一対の側壁部112の車両幅方向外側面(
図4(b)左側の面)に、上板120の一対の側壁部122の車両幅方向内側面(
図4(b)右側の面)を重ね合わせて溶接するので、側壁部122の外面を流下する雨水などの水が機器室100の内部に侵入することを抑制できる。
【0050】
第3工程における下板110の側壁部112と上板120の側壁部122との溶接は、上板120の側壁部122の下端(
図4(b)下側の端面)と下板110の側壁部112の車両幅方向外側面(
図4(b)左側の面)との溶接部分A1が断続溶接(本実施形態では、溶接長さ略30mm、ピッチ略100mm)により行われ、下板110の側壁部112の上端(
図4(b)上側の端面)と上板120の側壁部122の車両幅方向内側面(
図4(b)右側の面)との溶接部分A2が連続溶接により行われる。
【0051】
これにより、溶接作業が行いやすい溶接部分A2(下板110の床部111から作業者が下向き姿勢で溶接作業が行え、溶接棒が操作しやすい)には連続溶接を適用し、溶接作業が行い難い溶接部分A1(地面から作業者が上向き姿勢で溶接作業を行う必要があるため、溶接棒の操作が行い難い)には断続溶接を適用できる。その結果、溶接作業の作業性を向上させつつ、下板110(側壁部112)と上板120(側壁部122)との接合強度を確保できる。
【0052】
なお、本実施形態では、下板110の側壁部112の寸法H1(
図2参照)が90mmに設定される。側壁部112の寸法H1は、機器室100の側壁の車両上下方向(矢印U,D方向)寸法(床部111の上面から、天井壁部121と側壁部122との境界までの寸法)の略半分よりも小さい寸法(例えば、略370mm以下)とされることが好ましい。ステンレス製の部材(下板110)の使用量を抑制して、材料コストを低減しつつ、溶接部分A2における溶接の作業性を確保できるからである。また、上記した機器室100の側壁の車両上下方向寸法が例えば2mを超えるような比較的大きな車両では、接合位置が高くなり過ぎることを抑制することで、溶接作業が危険の伴う高所作業となることを抑制できる。
【0053】
上述したように、下板110及び上板120の後壁部113,123には、寸法L1,L2の間隔が形成される(
図2及び
図3(b)参照)。そのため、
図5に示すように、下板110(床部111に対する側壁部112)の折り曲げ部分の端面Cに、上板120(後壁部123又は張出領域123a)の内面を当接させることを不要として、両者の接合を行いやすくできる。
【0054】
一方で、後壁部123には、上記寸法L2により、開口部が形成されるため、本実施形態では、下板110及び上板120の内面にふさぎ板140が溶接により接合され、開口部がふさがれる。ふさぎ板140は、正面視矩形の板を折り曲げて形成され、一方の外側面が下板110の側壁部112の内側面に、他方の外側面が上板120の後壁部123及び張出領域123aの内側面に、それぞれ対面される。なお、ふさぎ板140は、一般構造用圧延鋼材製(本実施形態ではSS400)の板から形成される。
【0055】
第3工程では、下板110と上板120との接合と共に、タンク12と上板120の天井壁部121との接合が行われる。また、それらの接合の後、前板130が、タンク12、下板110及び上板120に接合される。
【0056】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0057】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、横梁18bの本数は、2本以下でも良く、3本以上でも良い。また、断続溶接の溶接条件(溶接長さ、ピッチ)も板厚などに応じて任意に設定できる。
【0058】
上記実施形態では、一対の側壁部112の車両幅方向外側面に、一対の側壁部122の車両幅方向内側面を重ね合わせる場合を説明したが、次の配置としても良い。
【0059】
例えば、一対の側壁部112の車両幅方向内側面に、一対の側壁部122の車両幅方向外側面を重ね合わせても良い。或いは、車幅方向一方側(例えば、矢印L方向側)では、側壁部112の車両幅方向外側面に、側壁部122の車両幅方向内側面を重ね合わせ、車幅方向他方側(例えば、矢印R方向側)では、側壁部112の車両幅方向内側面に、側壁部122の車両幅方向外側面を重ね合わせても良い。これらの配置であっても、上記実施形態の場合と同様に、下板110に対する上板120の重ね代を調整することで、タンク12に対する上板120の位置(高さ位置、傾斜角度)を容易に調整できる。なお、側壁部112の車両幅方向内側面に側壁部122の車両幅方向外側面を重ね合わせる場合、溶接位置も当該重ね合わせ部に沿って行う。
【0060】
上記実施形態では、機器室フレーム18の縦梁18aをサブフレーム16とは別の部材から構成する場合を説明したが、サブフレーム16をタンク12の後方へ延設し、そのサブフレーム16の延設部分に複数本の横梁18bを接合して、機器室フレーム18としても良い。
【0061】
上記実施形態では、下板110の後壁部113を車両下方(矢印D方向)へ向けて折り曲げる場合を説明したが、下板110の後壁部113を車両上方(矢印U方向)へ向けて折り曲げても良い。この場合でも、上記実施形態の場合と同様に、下板110(側壁部112)に対する上板120(側壁部122)の重ね代を変更し、上板120を矢印L,Rを中心として回転させた場合に、床部111に対する後壁部113の折り曲げ角度を調整することで、後壁部113に後壁部123を当接させることができる。
【0062】
上記実施形態では、タンク12を車両後方側へ向けて下降傾斜させる場合を説明したが、タンク12を車両前方側へ向けて下降傾斜させても良く、タンク12を傾斜させず、シャシフレーム14bと平行としても良い。
【0063】
上記実施形態では、本発明の適用対象(車両)として、タンクローリを例示したが、他の車両に本発明を適用しても良い。他の車両としては、タンクトレーラーやタンクセミトレーラーが例示される。
【符号の説明】
【0064】
10 タンクローリ(車両)
12 タンク
14b シャシフレーム(フレーム)
16 サブフレーム(フレーム)
18 機器室フレーム(フレーム)
100 機器室
110 下板
111 床部
112 側壁部(下板側壁部)
120 上板
121 天井壁部
122 側壁部(上板側壁部)
矢印L,R 車両幅方向
矢印U,D 車両上下方向
矢印F,B 車両前後方向