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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008637
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】給水装置及び給水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/00 20230101AFI20230112BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20230112BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230112BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20230112BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C02F5/00 610B
B01D63/02
C02F1/44 Z
C02F1/20 A
C02F5/00 610A
C02F5/00 620A
B01D19/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112353
(22)【出願日】2021-07-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】591203118
【氏名又は名称】株式会社IHI汎用ボイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】河岡 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】神木 哉
(72)【発明者】
【氏名】安達 耕一
【テーマコード(参考)】
4D006
4D011
4D037
【Fターム(参考)】
4D006GA32
4D006HA01
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB07
4D006PB62
4D006PB63
4D006PC80
4D011AA17
4D011AD03
4D037AA01
4D037AA08
4D037AB11
4D037AB12
4D037BA23
4D037CA04
4D037CA05
(57)【要約】
【課題】被処理水を従来よりも効果的に浄化することが可能な給水装置及び給水方法を提供する。
【解決手段】給水路の上流側に設けられ、中空糸膜を用いて被処理水に脱気処理を施して第1処理済水を調整する膜脱気装置と、給水路の下流側に設けられ、電磁気を用いて第1処理済水にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整する電磁水処理装置と備え、第2処理済水を供給先に給水する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路の上流側に設けられ、中空糸膜を用いて被処理水に脱気処理を施して第1処理済水を調整する膜脱気装置と、
前記給水路の下流側に設けられ、電磁気を用いて前記第1処理済水にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整する電磁水処理装置とを備え、
前記第2処理済水を供給先に給水することを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記給水路において前記膜脱気装置と前記電磁水処理装置との間に設けられ、前記第1処理済水を貯留する給水タンクと、
前記供給先に給水された前記第2処理済水の一部を前記給水タンクに回収する回収路と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記供給先に圧縮機が設けられている場合、
前記第1処理済水を前記圧縮機の冷却水として前記供給先に給水する第2給水路をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記第2給水路は、クーリングタワを備えることを特徴とする請求項3に記載の給水装置。
【請求項5】
前記膜脱気装置は、給水時における所定の初期期間だけ作動することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
中空糸膜を用いて被処理水に施す脱気処理と、
電磁気を用いて前記被処理水にスケールの付着抑制処理を施す電磁水処理とを有し、
前記脱気処理と前記電磁水処理とを個別の装置で行うことを特徴とする給水方法。
【請求項7】
前記脱気処理は、給水時における所定の初期期間だけ実施されることを特徴とする請求項6記載の給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置及び給水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、給配水系の水質浄化方法及び装置が開示されている。この水質浄化方法及び装置は、給配水管や冷温水管内の付着スケールの原因となる溶存鉱物質(ミネラル)を、薬品を用いることなく物理的に除去する技術であり、処理タンク内を減圧状態とすると共に処理タンク内において被処理水を散水することによって被処理水中の空気を脱気し、かつ、処理タンク内に設けた電極対に交番電圧を印加することにより被処理水中の溶存鉱物質を金属塩(析出物)として分離除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6-38959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、特許文献1の第1図に示されているように、処理タンク内の上部空間に散水器を設けて被処理水の脱気処理を行い、また処理タンク内の下部空間に電極及び裸電極を設けて溶存鉱物質の分離除去処理を行い、さらに処理タンクの下部に接続する復水用接続管を介して水質浄化処理水を給水タンクに回収するものである。
【0005】
すなわち、この背景技術は、被処理水の脱気処理と溶存鉱物質の分離除去処理とを一つの処理タンク内で常時行うものである。このような背景技術では、被処理水の脱気処理と溶存鉱物質の分離除去処理とを各々に最適化することが困難であり、給水タンク1に回収される水質浄化処理水が十分に浄化されていない虞がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、被処理水を従来よりも効果的に浄化することが可能な給水装置及び給水方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、給水装置に係る第1の解決手段として、給水路の上流側に設けられ、中空糸膜を用いて被処理水に脱気処理を施して第1処理済水を調整する膜脱気装置と、前記給水路の下流側に設けられ、電磁気を用いて前記第1処理済水にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整する電磁水処理装置とを備え、前記第2処理済水を供給先に給水する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、給水装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記給水路において前記膜脱気装置と前記電磁水処理装置との間に設けられ、前記第1処理済水を貯留する給水タンクと、前記供給先に給水された前記第2処理済水の一部を前記給水タンクに回収する回収路とをさらに備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、給水装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記供給先に圧縮機が設けられている場合、前記第1処理済水を前記圧縮機の冷却水として前記供給先に給水する第2給水路をさらに備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、給水装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記第2給水路は、クーリングタワを備える、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、給水装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記膜脱気装置は、給水時における所定の初期期間だけ作動する、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、給水方法に係る第1の解決手段として、中空糸膜を用いて被処理水に施す脱気処理と、電磁気を用いて前記被処理水にスケールの付着抑制処理を施す電磁水処理とを有し、前記脱気処理と前記電磁水処理とを個別の装置で行う、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、給水方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記脱気処理は、給水時における所定の初期期間だけ実施される、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被処理水を従来よりも効果的に浄化することが可能な給水装置及び給水方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る給水装置Aの構成を示す系統図である。
図2】本発明の一実施形態においてボイラ水における全鉄値の経時変化を示す特性図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る給水装置A1の構成を示す系統図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る給水装置A2の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
【0017】
最初に、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る給水装置Aは、図1に示すように、原水X0を浄化処理して水利用設備Bに給水する装置であり、軟水装置1、膜脱気装置2、軟水タンク3、給水ポンプ4、電磁水処理装置5、逆止弁6、給水戻り管7及び復水管8を備えている。
【0018】
ここで、給水装置Aのこれら構成要素のうち、軟水装置1、膜脱気装置2、軟水タンク3、給水ポンプ4、電磁水処理装置5及び逆止弁6は配管によって一列に接続されており、全体として給水路Sを構成している。すなわち、第1実施形態における軟水装置1、膜脱気装置2、軟水タンク3、給水ポンプ4、電磁水処理装置5及び逆止弁6は、本発明における給水路を構成している。
【0019】
このような給水路Sでは、例えば軟水タンク3を挟んで上流側と下流側とに区分している。すなわち、軟水タンク3よりも原水X0の受入口に近い方を上流側とし、軟水タンク3よりも水利用設備Bへの給水口に近い方を下流側とする。この給水路Sでは、後述するように上流側から下流側位に向かって原水X0あるいは各種の調製水が流通し、最終的に水利用設備Bに給水される。
【0020】
さて、給水装置Aにおいて、軟水装置1は、給水路Sの上流側に設けられ、原水X0から溶存鉱物質を除去することにより原水X0を軟水化する装置である。周知のように、水は溶存鉱物質の溶存量の指標である硬度に応じて軟水と硬水とに分類される。軟水は、硬水よりも硬度が低い、つまり溶存鉱物質の溶存量が軟水よりも少ない水である。
【0021】
給水装置Aにおける軟水装置1は、軟水の硬度に相当するレベルまで原水X0から溶存鉱物質を除去することにより、原水X0を軟水化する。すなわち、この軟水装置1は、原水X0から調整した軟水X1を成果物として膜脱気装置2に供給する。
【0022】
膜脱気装置2は、上記軟水装置1と同様に給水路Sの上流側に設けられ、軟水X1(被処理水)に脱気処理を施して第1処理済水X2を調整する処理装置である。すなわち、この膜脱気装置2は、周知の中空糸膜を用いることにより軟水X1に含まれる空気等の気体成分つまり窒素及び酸素を主成分とする気体成分を効果的に除去する。このような膜脱気装置2は、第1処理済水X2を軟水タンク3に順次供給する。
【0023】
上記気体成分のうち、酸素は、給水路S、給水戻り管7及び復水管8等、原水X0に基づいて調整された各種の水が流通する流通経路の腐食の原因となる。流通経路の防食という観点から酸素は除去されるべき最も重要な気体成分である。膜脱気装置2は、このように防食上最も重要な気体成分である酸素を特に除去し、軟水X1における酸素の混入量を予め決められた所定レベルまで低下させた第1処理済水X2を調整する。
【0024】
軟水タンク3は、給水路Sにおいて上記膜脱気装置2と後述する電磁水処理装置5との間に設けられた所定容量の液体容器である。この軟水タンク3は、膜脱気装置2から供給される第1処理済水X2に加え、水戻り管7から供給される第2処理済水X4及び復水管8から供給される復水X5を一次的に貯留する。なお、このような軟水タンク3は、本発明の給水タンクに相当する。
【0025】
このような軟水タンク3では、第1処理済水X2、第2処理済水X4及び復水X5が混合することによって混合水X3が調整される。ここで、第1処理済水X2、第2処理済水X4及び復水X5のうち、第2処理済水X4及び復水X5は、第1処理済水X2に基づいて調整された調整水である。したがって、混合水X3は、酸素の混入量が所定レベルまで低下した処理済水である。
【0026】
給水ポンプ4は、軟水タンク3から混合水X3を汲み出して電磁水処理装置5に供給する動力装置である。この給水ポンプ4は、予め設定された所定の回転数で回転することにより、所定流量の混合水X3を軟水タンク3から安定的に汲み出して電磁水処理装置5に順次供給する。
【0027】
電磁水処理装置5は、図示するように給水路Sの下流側に設けられ、電磁気を用いることにより混合水X3にスケールの付着抑制処理を行う処理装置である。すなわち、この電磁水処理装置5は、第1処理済水を含む混合水X3の流場に電極あるいは/及び磁石を配置することにより混合水X3に電磁気を作用させ、以って混合水X3に残存する溶存鉱物質の結晶化等を促進させることにより、給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等に対するスケールの付着を抑制あるいは防止し得る第2処理済水X4を調整する。
【0028】
ここで、このような電磁水処理装置5としては、例えば特許文献1に開示されている方式のもの、あるいは特許第2912809号公報にに開示されている方式のものを採用することができる。いずれの方式を採用する場合であっても、電磁水処理装置5は、特許文献1のものとは異なり個別の装置として構成されているので、電極あるいは/及び磁石の配置または混合水X3の流場の形状を最適化することが可能であり、よってスケールの付着抑制処理の性能を従来よりも向上させることができる。
【0029】
すなわち、電磁水処理装置5は、混合水X3に薬剤を添加する化学的な処理ではなく、混合水X3に電磁気を作用させる物理的な処理によって混合水X3に残存する溶存鉱物質を固形物として析出させる。このような溶存鉱物質の析出によって、溶存鉱物質の溶解量が所定レベルまで低減した第2処理済水X4が調整される。電磁水処理装置5は、このような第2処理済水X4を逆止弁6を介して水利用設備Bに供給する。
【0030】
逆止弁6は、電磁水処理装置5と水利用設備Bとの間に設けられており、第2処理済水X4の逆流を防止する安全弁である。すなわち、第2処理済水X4の正常な流通方向(正方向)は、電磁水処理装置5から水利用設備Bに向かう方向である。逆止弁6は、このような正方向に対して、何らかの異常によって第2処理済水X4が水利用設備Bから電磁水処理装置5に向かう方向(逆方向)に流通することを防止する。
【0031】
水利用設備Bは、第2処理済水X4(処理済水)を利用する設備であり、給水装置Aにおける第2処理済水X4の供給先である。この水利用設備Bは、図示するように水熱管に各々流入する第2処理済水X4を加熱かつ蒸発させて水蒸気を発生させる複数のボイラb1、b2、……を備えている。このような水利用設備Bは、例えば各種の工場や流通設備である。
【0032】
また、この水利用設備Bは、図示するように余剰な処理済水を給水装置Aに返送する機能に加え、各ボイラb1、b2、……の復水を給水装置Aに返送するように機能構成されている。すなわち、この水利用設備Bは、各ボイラb1、b2、……に対して処理済水を分配供給する供給管の先端が上記給水戻り管7の一端に接続されおり、また各ボイラb1、b2、……から排出された復水を回収する回収管の先端が上記復水管8の一端に接続されている。
【0033】
給水戻り管7は、水利用設備Bと軟水タンク3との間に敷設された配管であり、水利用設備Bで余剰となって一端から流入した第2処理済水X4が軟水タンク3に向かって流通する。すなわち、給水戻り管7は、電磁水処理装置5から水利用設備B(供給先)に給水された第2処理済水X4の一部を軟水タンク3に回収する回収路である。なお、このような給水戻り管7の先端には散水器が取り付けられている。
【0034】
復水管8は、上記給水戻り管7と同様に水利用設備Bと軟水タンク3との間に敷設された配管である。各ボイラb1、b2、……では、第2処理済水X4が気化して発生した水蒸気の一部が再凝縮することによって復水X5が発生する。この復水管8は、このような復水X5を水利用設備Bから軟水タンク3に回収する。なお、このような復水管8の先端にも散水器が取り付けられている。
【0035】
このように、第1実施形態に係る給水装置Aは、個別の装置として設けられた膜脱気装置2及び電磁水処理装置5を備える。また、た膜脱気装置2及び電磁水処理装置5のうち、膜脱気装置2は給水路Sの上流側に設けられ、電磁水処理装置5は給水路Sの下流側に設けられている。すなわち、この給水装置Aは、軟水X1に脱気処理を施した後に混合水X3にスケールの付着抑制処理を施す給水方法を実施するものである。
【0036】
次に、第1実施形態に係る給水装置Aの動作つまり給水装置Aを用いた給水方法について、図2をも参照して詳しく説明する。
【0037】
この給水装置Aでは、原水X0が軟水装置1において軟水X1に調整され、当該軟水X1が膜脱気装置2において第1処理済水X2に調整されて軟水タンク3に貯留される。すなわち、給水装置Aでは、軟水X1について脱気処理が施されることにより、給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等の防食の観点から有害な酸素が除去される。
【0038】
ここで、膜脱気装置2は、中空糸膜を用いて軟水X1に含まれる酸素等の気体成分を除去するものであり、よって酸素の混入量を所定レベルまで低下させた第1処理済水X2を調整する。したがって、本第1実施形態に係る給水装置Aによれば、中空糸膜を用いた単独の装置としての膜脱気装置2を備えるので、防食の観点で第1処理済水X2における酸素の混入量を効果的に低減することが可能であり、以って給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等における錆の発生を効果的に抑制することが可能である。
【0039】
このような膜脱気装置2で調整された第1処理済水X2は、軟水タンク3において第2処理済水X4及び復水X5と混合して混合水X3となる。給水戻り管7及び復水管8の先端には散水器が設けられているので、第1処理済水X2、第2処理済水X4及び復水X5は、軟水タンク3において効果的に混合される。
【0040】
そして、上記混合水X3は、給水ポンプ4によって電磁水処理装置5に供給され、当該電磁水処理装置5においてスケールの付着抑制処理が施される。すなわち、混合水X3は、電磁水処理装置5によって溶存鉱物質の結晶化等が促進することにより、給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等に対するスケールの付着を抑制あるいは防止し得る第2処理済水X4に調整される。
【0041】
上記電磁水処理装置5は、上述した膜脱気装置2とは別体の単独の装置として、電磁気を用いてスケールの付着抑制処理を行う。このような電磁水処理装置5を備える給水装置Aによれば、給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等におけるスケールの発生を効果的に抑制することが可能である。
【0042】
また、電磁水処理装置5は、混合水X3に電磁気を作用させる物理的な処理によって混合水X3にスケールの付着抑制処理を施すので、混合水X3に薬剤を添加する化学的なスケールの付着抑制処理に比べて環境汚染を発生させない。すなわち、本第1実施形態によれば、環境負荷が小さい給水装置Aを提供することが可能である。
【0043】
そして、電磁水処理装置5で調整された第2処理済水X4は、逆止弁6を介して水利用設備Bに給水されて各ボイラb1、b2、……で水蒸気の発生に利用される。そして、水利用設備Bに給水された第2処理済水X4の一部つまり水利用設備Bで余剰となる第2処理済水X4は、給水戻り管7によって軟水タンク3に回収される。
【0044】
この軟水タンク3に回収された第2処理済水X4は、給水ポンプ4によって電磁水処理装置5に再度供給されてスケールの付着抑制処理が施される。すなわち、本第1実施形態に係る給水装置Aによれば、給水路Sと給水戻り管7とによって第2処理済水X4の循環経路が形成されているので、第2処理済水X4におけるスケールの付着抑制能力をより効果的に向上させることが可能であり、これによっても給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等におけるスケールの発生を効果的に抑制することが可能である。
【0045】
ここで、図2は、各ボイラb1、b2、……の全稼働期間におけるボイラ水への鉄成分の溶解量(全鉄値)の経時変化を示す特性図である。第1実施形態に係る給水装置Aによれば、図2(a)に示すように、各ボイラb1、b2、……におけるボイラ水の全鉄値を各ボイラb1、b2、……の稼働初期から稼働終了期までの全稼働期間に亘って基準値以下に抑えることが可能である。
【0046】
すなわち、各ボイラb1、b2、……のボイラ水として給水装置Aが給水する第2処理済水X4を用いることにより、つまり膜脱気装置2を備えることにより、各ボイラb1、b2、……の稼働期間における全稼働期間に亘って鉄成分のボイラ水中への溶解量(全鉄値)を基準値以下とすることができる。
【0047】
なお、図2(a)では全鉄値が時間の経過とともに徐々に低下する現象が見て取れるが、この現象は給水路S、水利用設備B、給水戻り管7及び復水管8等における第2処理済水X4の流通面にマグネタイトの保護被膜が時間の経過とともに徐々に形成されることに起因するものである。
【0048】
これに対して、図2(b)は、膜脱気装置2を設けない場合を示す比較例である。この図2(b)が示すように、膜脱気装置2を設けない場合、マグネタイトの保護被膜の形成に起因して全鉄値が稼働時間の経過とともに徐々に低下するものの、稼働初期の約12ヶ月において全鉄値が基準値を超えている。
【0049】
このような全鉄値の経時変化を考慮すると、膜脱気装置2を設けるものの各ボイラb1、b2、……の稼働初期だけ膜脱気装置2を作動させることにより、稼働初期における全鉄値を基準値以下に抑えることが考えられる。すなわち、給水装置Aの水利用設備Bへの給水時における所定の初期期間だけ膜脱気装置2を作動させることにより、各ボイラb1、b2、……の全稼働期間に亘って全鉄値を基準値以下とすることが考えられる。例えば、図2(b)の場合、全鉄値が基準値を超える初期の約12ヶ月だけ膜脱気装置2を作動させる。
【0050】
このような第1実施形態によれば、給水路Sの上流側に設けられ、中空糸膜を用いて軟水X1(被処理水)に脱気処理を施して第1処理済水X2を調整する膜脱気装置2と、給水路Sの下流側に設けられ、電磁気を用いて第1処理済水X2を含む混合水X3にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水X4を調整する電磁水処理装置5を備えるので、被処理水を従来よりも効果的に浄化することが可能である。
【0051】
〔第2実施形態〕
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る給水装置A1は、図3に示すように水利用設備B1を給水先とする装置である。この水利用設備B1は、第1実施形態における複数のボイラb1、b2、……に加えて、コンプレッサCをさらに備える。
【0052】
上記コンプレッサCは、空気等のガスを機械的に圧縮することにより圧縮空気等の圧縮ガスを発生させる圧縮機であり、強制冷却を必要とする要冷却機械である。すなわち、このコンプレッサCは、冷却用流体を外部から取り込むことによって成果物である圧縮ガスを発生させることができる。
【0053】
第2実施形態に係る給水装置A1は、第1実施形態に係る給水装置Aと同様に第2処理済水X4(ボイラ水)を水利用設備B1に給水することに加え、混合水X3を冷却水として水利用設備B1に給水する。このような給水装置A1は、第1実施形態の軟水装置1、膜脱気装置2、軟水タンク3、給水ポンプ4、電磁水処理装置5、逆止弁6、給水戻り管7及び復水管8に加え、第2給水ポンプ9及び第2逆止弁10をさらに備える。
【0054】
第2給水ポンプ9は、軟水タンク3から混合水X3を汲み出し、第2逆止弁10を介して水利用設備B1に供給する動力装置である。この第2給水ポンプ9は、予め設定された所定の回転数で回転することにより、所定流量の混合水X3を軟水タンク3から汲み出して水利用設備B1に順次供給する。
【0055】
第2逆止弁10は、第2給水ポンプ9と水利用設備B1のコンプレッサCとの間に設けられており、混合水X3の軟水タンク3への逆流を防止する安全弁である。すなわち、混合水X3の正常な流通方向(正方向)は、第2給水ポンプ9(軟水タンク3)からコンプレッサCに向かう方向である。第2逆止弁10は、このような正方向に対して、何らかの異常によって混合水X3が水利用設備B(コンプレッサC)から第2給水ポンプ9(軟水タンク3)に向かう方向(逆方向)に流通することを防止する。
【0056】
このような第2給水ポンプ9及び第2逆止弁10は、図示するように軟水タンク3と水利用設備B1とを相互接続する循環路の途中部位に設けられている。すなわち、第2給水ポンプ9の作動によって軟水タンク3から水利用設備B1に給水された混合水X3は、水利用設備B1から軟水タンク3に循環する。なお、第2給水ポンプ9及び第2逆止弁10を含む上記循環路は、本発明の第2給水路に相当する。
【0057】
この給水装置A1では、第2処理済水X4がボイラ水として水利用設備B1に給水され、またこれと並行して混合水X3が冷却水として水利用設備B1に給水される。このような給水装置A1によれば、水利用設備B1における複数のボイラb1、b2、……について見ると、第2処理済水X4が給水されることによって水熱管の腐食が効果的に抑制されると共に水熱管におけるスケールの発生を効果的に抑制することが可能である。
【0058】
一方、水利用設備B1におけるコンプレッサCについて見ると、給水装置A1によれば、当該冷却水が流通する冷却管の腐食を効果的に抑制することが可能である。なお、混合水X3には、電磁水処理装置5でスケールの付着抑制処理が施された第2処理済水X4及び復水X5を含むので、冷却管におけるスケールの発生をある程度抑制することが可能である。
【0059】
さらに、第2実施形態に係る給水装置A1では、冷却水である混合水X3がコンプレッサCと軟水タンク3の間で循環するので、軟水タンク3に貯留された混合水X3の温度が徐々に上昇する。すなわち、軟水タンク3の混合水X3は、コンプレッサCを熱源として加熱(予熱)される。
【0060】
そして、電磁水処理装置5は、このように加熱(予熱)された混合水X3を用いて第2処理済水X4を調整するので、当該第2処理済水X4は、第1実施形態における第2処理済水X4よりも高温となる。そして、この第2実施形態では、このような高温の第2処理済水X4が各ボイラb1、b2、……にボイラ水として給水される。
【0061】
このような第2実施形態によれば、第2処理済水X4(ボイラ水)を予熱するので、各ボイラb1、b2、……の熱効率を第1実施形態よりも向上させることが可能である。また、第2実施形態によれば、水利用設備B1におけるコンプレッサCの排熱を利用して第2処理済水X4(ボイラ水)を予熱するので、予熱コストを最小限に抑えることが可能である。
【0062】
〔第3実施形態〕
さらに、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る給水装置A2は、図4に示すように、第2実施形態に係る給水装置A1にクーリングタワ11、第3逆止弁12及び第4逆止弁13を付加した構成を備える。
【0063】
クーリングタワ11は、流入口に第3逆止弁12の一端が接続され、出力口に第4逆止弁13の一端が接続されており、混合水X3が第3逆止弁12を介して流入口に流入すると共に、混合水X3が出力口から第4逆止弁13に向けて流出する。このようなクーリングタワ11は、混合水X3を大気(外気)と直接または間接的に接触させることによって混合水X3を強制冷却(自然冷却)する一種の熱交換器であり、冷却塔とも言われるものである。
【0064】
第3逆止弁12は、一端がクーリングタワ11の流入口に接続され、他端が第2給水ポンプ9の吐出口及び第2逆止弁10の一端に接続されている。また、第4逆止弁13は、一端がクーリングタワ11の流出口に接続され、他端が第2逆止弁10の他端及びコンプレッサCの流入口に接続されている。これら第3、第4逆止弁12、13は、クーリングタワ11における混合水X3の逆流を防止する安全弁である。
【0065】
このような第3実施形態に係る給水装置A2では、混合水X3がクーリングタワ11によって強制冷却される。給水装置A2では、混合水X3がコンプレッサCの排熱によって加熱されるが、同時にクーリングタワ11によって強制冷却される。例えば、複数のボイラb1、b2、……が稼働を停止し、コンプレッサCのみが稼働した場合、混合水X3は、コンプレッサCの排熱によって温度上昇し易くなる。
【0066】
このような事態に対して、第3実施形態に係る給水装置A2によれば、混合水X3がクーリングタワ11によって強制冷却されるので、混合水X3の過度な温度上昇を抑制することが可能である。また、混合水X3は外気によって自然冷却されるので、冷却コストの削減が可能である。したがって、第3実施形態によれば、水利用設備B1の稼働状態に依らず混合水X3の過度な温度上昇を低コストで抑制することが可能である。
【0067】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では複数のボイラb1、b2、……を少なくとも備える水利用設備B、B1を供給先としたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明における供給先はボイラを備える設備に限定されず、配管の防食やスケールの発生が懸念される全ての設備に適用可能である。
【0068】
(2)上記各実施形態では、給水路Sにおいて膜脱気装置2と電磁水処理装置5との間に設けられた軟水タンク3(給水タンク)に給水戻り管7(回収路)を介して第2処理済水X4の一部を回収した。すなわち、上記各実施形態では、電磁水処理装置5で調整された第2処理済水X4の一部が電磁水処理装置5を循環するように構成し、膜脱気装置2を循環するように構成していない。
【0069】
この理由は、膜脱気装置2における脱気処理については循環させることによる効果が期待できず、中空糸膜をいたずらに劣化させるだけになることを考慮したものである。これに対して、電磁水処理装置5におけるスケールの付着抑制処理については、第2処理済水X4の一部を循環させることによって、スケールの付着のさらなる抑制効果が期待でき、また電極等の劣化を招来させる虞がない。
【0070】
しかしながら、本発明は上記各実施形態に限定されない。すなわち、必要に応じて軟水タンク3(給水タンク)を軟水装置1と膜脱気装置2との間に設けることによって、第2処理済水X4の一部を膜脱気装置2及び電磁水処理装置5の両方に循環させてもよい。
【0071】
(3)上記各実施形態では軟水装置1を備えたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、上記各実施形態は軟水装置1において原水X0に分離除去処理を施し、当該分離除去処理の後に電磁水処理装置5で混合水X3に対してスケールの付着抑制処理を施す。しかしながら、例えば電磁水処理装置5に分離除去処理を補うスケールの付着抑制能力が備わっている場合には、軟水装置1を削除してもよい。
【0072】
(4)上記各実施形態では、給水戻り管7を設けることによって複数のボイラb1、b2、……で余剰となった第2処理済水X4(ボイラ水)を軟水タンク3(給水タンク)に回収したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電磁水処理装置5における1回のスケールの付着抑制処理のみによって十分なスケールの付着抑制効果が得られる場合には、給水戻り管7を削除してもよい。
【0073】
(5)上記各実施形態では、復水管8を設けることによって復水X5を軟水タンク3(給水タンク)に回収したが、本発明はこれに限定されない。例えば復水X5に何らかの原因で不純物が混入した場合には、復水管8に設けた開閉弁を閉じることによって復水X5の軟水タンク3(給水タンク)への回収を遮断してもよい。なお、この場合、各ボイラb1、b2、……の復水X5は、別途設けられた排水路を用いて排水される。
【符号の説明】
【0074】
A、A1、A2 給水装置
B、B1 水利用設備
S 給水路
1 軟水装置
2 膜脱気装置
3 軟水タンク(給水タンク)
4 給水ポンプ
5 電磁水処理装置
6 逆止弁
7 給水戻り管
8 復水管
9 第2給水ポンプ
10 第2逆止弁
11 クーリングタワ
12 第3逆止弁
13 第4逆止弁
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路の上流側に設けられ、中空糸膜を用いて被処理水に脱気処理を施して第1処理済水を調整する膜脱気装置と、
前記給水路の下流側に設けられ、電磁気を用いて前記第1処理済水にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整し、前記第2処理済水を供給先に給水する電磁水処理装置と
前記給水路において前記膜脱気装置と前記電磁水処理装置との間に設けられ、前記第1処理済水を貯留する給水タンクと、
前記供給先で余剰となった前記第2処理済水を前記給水タンクに回収する回収路と
を備えることを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記供給先に圧縮機が設けられている場合、
前記第1処理済水を前記圧縮機の冷却水として前記供給先に給水する第2給水路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記第2給水路は、クーリングタワを備えることを特徴とする請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記膜脱気装置は、給水時における所定の初期期間だけ作動することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項5】
中空糸膜を用いて被処理水に施して第1処理済水を調整する脱気処理と、
前記第1処理済水を所定の給水タンクに貯留する貯留処理と、
電磁気を用いて前記第1処理済水にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整する電磁水処理と、
前記第2処理済水を供給先に給水する給水処理と、
前記供給先で余剰となった前記第2処理済水を前記給水タンクに回収する回収処理と
を有することを特徴とする給水方法。
【請求項6】
前記脱気処理は、給水時における所定の初期期間だけ実施されることを特徴とする請求項5記載の給水方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路の上流側に設けられ、中空糸膜を用いて被処理水に脱気処理を施して第1処理済水を調整する膜脱気装置と、
前記給水路の下流側に設けられ、前記第1処理済水の流場に電極あるいは/及び磁石を配置することにより前記第1処理済水にスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整し、前記第2処理済水を供給先に給水する電磁水処理装置と、
前記給水路において前記膜脱気装置と前記電磁水処理装置との間に設けられ、前記第1処理済水を貯留する給水タンクと、
前記供給先で余剰となった前記第2処理済水を前記給水タンクに回収する回収路と
を備えることを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記供給先に圧縮機が設けられている場合、
前記第1処理済水を前記圧縮機の冷却水として前記供給先に給水する第2給水路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記第2給水路は、クーリングタワを備えることを特徴とする請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記膜脱気装置は、給水時における所定の初期期間だけ作動することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項5】
中空糸膜を用いて被処理水に施して第1処理済水を調整する脱気処理と、
前記第1処理済水を所定の給水タンクに貯留する貯留処理と、
前記貯留処理後の前記第1処理済水に電磁気を用いてスケールの付着抑制処理を施して第2処理済水を調整する電磁水処理と、
前記第2処理済水を供給先に給水する給水処理と、
前記供給先で余剰となった前記第2処理済水を前記給水タンクに回収する回収処理とを有し、
前記脱気処理と前記電磁水処理とを個別の装置で行うことを特徴とする給水方法。
【請求項6】
前記脱気処理は、給水時における所定の初期期間だけ実施されることを特徴とする請求項5記載の給水方法。