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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086376
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20230615BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20230615BHJP
   F16F 9/40 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/32 J
F16F9/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200840
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591085547
【氏名又は名称】ゴムノイナキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】塩梅 修
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069AA64
3J069CC29
3J069CC30
3J069DD20
3J069DD47
3J069EE03
3J069EE10
3J069EE11
3J069EE32
3J069EE41
3J069EE62
(57)【要約】
【課題】バッフルプレートの大型化に伴う組立性の低下が抑止される緩衝器を提供する。
【解決手段】隔壁上部38の外側に肉抜き部41を設けることにより、隔壁上部38の体積を従来のバッフルプレートにおける隔壁上部の体積と同等に設定した。これにより、ロッドガイド8の組付時にセパレータチューブ20が取り付けられたシリンダ2に対して外筒を芯出しさせるときの、隔壁部37の弾性反力の増大が抑止され、組付け荷重(弾性反力)を従来の緩衝器と同等とすることが可能であり、バッフルプレート31の性能を損なうことなく、緩衝器1の組立性を確保することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に挿入され、前記シリンダ内をシリンダ上室とシリンダ下室とに区画するピストンと、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、
前記シリンダの外周に設けられる外筒と、
前記シリンダと前記外筒との間に形成されるリザーバと、
前記シリンダの外周に設けられ、両端部が前記シリンダに嵌合される中間筒と、
前記シリンダと前記中間筒との間に形成される環状流路と、
前記シリンダの側壁に設けられ、前記シリンダ上室と前記環状流路とを連通する連通路と、
前記中間筒の側壁に設けられる接続管と、
前記外筒の側壁に設けられ、前記接続管と対向する位置に開口する開口と、
前記接続管に接続される減衰力調整機構と、
前記リザーバ内に設けられ、前記シリンダ上室、前記連通路、前記環状流路、前記減衰力調整機構を経て前記開口から前記リザーバへ流れる作動液の流れの方向を制御する隔壁部を有する隔壁部材と、
を備える緩衝器であって、
前記隔壁部は、前記接続管の中心よりも上側に位置し、正面視で円弧状に延びる隔壁上部と、前記隔壁上部の両端から下方向へ延出する一対の隔壁下部と、からなり、
前記隔壁上部及び/又は前記隔壁下部に肉抜き部が設けられることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記肉抜き部は、前記隔壁上部の外側に設けられることを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緩衝器であって、
前記肉抜き部は、前記隔壁上部の内側に設けられることを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の緩衝器であって、
前記隔壁下部に肉抜き部が設けられることを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の緩衝器であって、
前記肉抜き部は、前記隔壁下部の内側に設けられることを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドのストロークにより生じる作動流体の流れを制御して減衰力を調整する減衰力調整式緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、減衰力調整機構を通って外筒の側壁に設けられた開口からリザーバへ流れる作動液の流れを制御するバッフルプレートを備えた制御弁横付型の減衰力調整式油圧緩衝器(以下「従来の緩衝器」と称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-23661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の緩衝器においては、接続部材を設けずに減衰力調整機構(メインボディ)をセパレータチューブ(中間筒)に接続するように構成することで、バルブ機構部の軸長が短縮されて減衰力調整機構を小型化することができる。この場合、アウタチューブに形成された開口の孔径が大きくなり、これに伴いバッフルプレートが大型化する。ロッドガイドの組付時にシリンダを外筒に対して芯出しさせるとき、バッフルプレートの隔壁部がアウタチューブとシリンダに取り付けられたセパレータチューブとの間で加圧(圧縮)されるが、大型化したバッフルプレートの隔壁部の弾性反力(組付け荷重)の増大により芯出しが困難になり、組立性が低下する。
【0005】
本発明は、バッフルプレートの大型化に伴う組立性の低下を抑止することが可能な緩衝器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に挿入され、前記シリンダ内をシリンダ上室とシリンダ下室とに区画するピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、前記シリンダの外周に設けられる外筒と、前記シリンダと前記外筒との間に形成されるリザーバと、前記シリンダの外周に設けられ、両端部が前記シリンダに嵌合される中間筒と、前記シリンダと前記中間筒との間に形成される環状流路と、前記シリンダの側壁に設けられ、前記シリンダ上室と前記環状流路とを連通する連通路と、前記中間筒の側壁に設けられる接続管と、前記外筒の側壁に設けられ、前記接続管と対向する位置に開口する開口と、前記接続管に接続される減衰力調整機構と、前記リザーバ内に設けられ、前記シリンダ上室、前記連通路、前記環状流路、前記減衰力調整機構を経て前記開口から前記リザーバへ流れる作動液の流れの方向を制御する隔壁部を有する隔壁部材と、を備える緩衝器であって、前記隔壁部は、前記接続管の中心よりも上側に位置し、正面視で円弧状に延びる隔壁上部と、前記隔壁上部の両端から下方向へ延出する一対の隔壁下部と、からなり、前記隔壁上部及び/又は前記隔壁下部に肉抜き部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッフルプレートの大型化に伴う緩衝器の組立性の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る緩衝器の断面図である。
図2図1における減衰力調整機構の拡大図である。
図3】本実施形態に係るバッフルプレートの正面図である。
図4図3におけるA-A断面図である。
図5】本実施形態に係るバッフルプレートの下面図である。
図6図4におけるC部拡大図である。
図7】他の態様を示すバッフルプレートの説明図であって、隔壁上部の内側に肉抜き部が設けられた態様を示す図である。
図8】他の態様を示すバッフルプレートの説明図であって、隔壁下部に切欠き(肉抜き部)が設けられたバッフルプレートの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る緩衝器1は、減衰力調整機構30がアウタチューブ3(外筒)の側壁に横付けされた、所謂、制御バルブ横付型の減衰力調整式油圧緩衝器である。緩衝器1は、車両に縦向きに配置される。以下の説明において、図1における上下方向を緩衝器1における上下方向と称する。また、便宜上、図2における左側(シリンダ2が配置された側)を一側、図2における右側(シリンダ2が配置された側とは反対側)を他側と称する。
【0010】
緩衝器1は、アウタチューブ3の内側にシリンダ2が設けられた複筒構造をなす。アウタチューブ3とシリンダ2との間には、リザーバ4が形成される。シリンダ2内には、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとに区画するピストン5が摺動可能に挿入される。ピストン5には、ピストンロッド6の下端が連結される。ピストンロッド6の上端側は、シリンダ上室2Aを通って、シリンダ2及びアウタチューブ3の上端部に取り付けられたロッドガイド8、及びオイルシール9に挿通され、シリンダ2の外部へ突出される。
【0011】
ピストン5には、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通する伸び側通路11及び縮み側通路12が設けられる。縮み側通路12には、シリンダ下室2Bからシリンダ上室2Aへの作動液の流通を許容するディスクバルブ13(逆止弁)が設けられる。他方、伸び側通路11には、シリンダ上室2A側の圧力が設定圧力に達したときに開弁し、当該シリンダ上室2A側の圧力をシリンダ下室2B側へ逃がすディスクバルブ14(圧力調整弁)が設けられる。
【0012】
シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを区画するベースバルブ10が設けられる。ベースバルブ10には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを連通する伸び側通路15及び縮み側通路16が設けられる。伸び側通路15には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への作動液の流通を許容するディスクバルブ17(逆止弁)が設けられる。他方、縮み側通路16には、シリンダ下室2B側の圧力が設定圧力に達したときに開弁し、当該シリンダ下室2B側の圧力をリザーバ4側へ逃すディスクバルブ18(圧力調整弁)が設けられる。なお、シリンダ2内には作動液が封入され、リザーバ4内には作動液及びガスが封入される。
【0013】
シリンダ2の外周には、上下一対のシール部材19,19を介してセパレータチューブ20(中間筒)の両端部が摺動可能に嵌合される。シリンダ2とセパレータチューブ20との間には、環状流路21が形成される。環状流路21は、シリンダ2の側壁に設けられた連通路22によりシリンダ上室2Aに連通される。セパレータチューブ20の側壁の下端側には、側方に突出して先端が開口する円筒形の接続管23が設けられる。アウタチューブ3の側壁には、接続管23と対向する開口24が設けられる。アウタチューブ3の側壁には、開口24と同軸に配置された略円筒形のバルブケース25が設けられる。バルブケース25には、減衰力調整機構30が収容される。バルブケース25の内径と開口24の孔径とは同一に設定される。
【0014】
図2に示されるように、減衰力調整機構30は、減衰力を発生させる背圧型のメインバルブ51を有する。メインバルブ51の背面(他側面)の外周縁部には、環状のパッキン60(弾性シール部材)が接合される。減衰力調整機構30は、さらに、メインバルブ51が当接するメインボディ52、メインバルブ51の背部に形成されて内圧がメインバルブ51に対して閉弁方向へ作用する背圧室72、背圧室72を形成するパイロットケース73、背圧室72の内圧を調整してメインバルブ51の開弁圧力を制御するパイロットバルブ71、パイロットバルブ71が当接するパイロットボディ74、パイロットバルブ71の下流側に設けられるフェイルセーフバルブ111、及びパイロットバルブ71の開弁圧力を制御するソレノイド121を備える。
【0015】
メインボディ52の他側端面の外周縁部には、メインバルブ51の外周縁部が離着座可能に当接する環状のシート部53が設けられる。シート部53の内周側(メインバルブ51の上流側)には、環状凹部55が形成される。メインボディ52の一側端面の中央には、セパレータチューブ20の接続管23内に嵌合(挿入)される接続部65が形成される。メインボディ52の接続部65とセパレータチューブ20との接続管23との間は、シールリング58によりシールされる。
【0016】
メインボディ52の接続部65の一側端面には、環状流路21に開口する正六角形断面の凹部66が設けられる。メインボディ52は、凹部66と環状凹部55とを連通する複数本(第2実施形態では「6本」)の通路67を有する。メインボディ52の他側端面中央には、パイロットケース73の軸孔105に挿入されるピン部85が設けられる。ピン部85の他側端面には、ソレノイド121の軸線と同軸に配置された通路93が開口する。通路93は、メインボディ52に設けられた凹部66及び導入オリフィス94を介して環状流路21に連通される。
【0017】
メインボディ52の内周部54とパイロットケース73の内周部76との間には、メインバルブ51、リテーナ及びスペーサ(符号省略)、並びに背圧導入弁81が介装される。ピン部85の先端部(他側)は、パイロットケース73の他側端面に開口する大内径部90の底部に設けられた小内径部91内に突出する。そして、ピン部85の先端部に形成されたねじ部(符号省略)に螺合したナット87を締め付けることにより、メインボディ52の内周部54とパイロットケース73の内周部76との間に介装された環状部材に軸力が付与されると共にメインボディ52とパイロットケース73とが一体化される。なお、ナット87を締め付けるとき、六角レンチを凹部66(六角孔)に係合させる。
【0018】
パイロットケース73の一側端面の外周側には、環状凹部77が設けられる。環状凹部77は、メインバルブ51のパッキン60が摺動可能に当接される内円筒面78を有する。環状凹部77の内周縁部には、環状のシート部79が形成される。シート部79には、背圧導入弁81の外周縁部が離着座可能に当接される。シート部79の内周側には、環状凹部80が形成される。環状凹部80は、複数本(図2に「2本」のみ表示)の通路92により小内径部91の内側の空間に連通される。なお、背圧導入弁81の外周縁部には、背圧室72を環状流路21に連通させる複数個のオリフィス(符号省略)が設けられる。
【0019】
パイロットボディ74は、他側が開口した略有底円筒形に形成される。パイロットボディ74は、一側がパイロットケース73の大内径部90に嵌合される。パイロットボディ74は、パイロットケース73の大内径部90と小内径部91との間に形成された環状面96(段部)に突き当てられることにより、パイロットケース73に対して軸方向に位置決めされる。なお、パイロットケース73とパイロットボディ74との間は、シールリング98によりシールされる。
【0020】
パイロットボディ74の内側には、パイロットバルブ71及びフェイルセーフバルブ111を収容する弁室100が設けられる。弁室100には、環状流路21から、導入オリフィス94、パイロットケース73に形成された通路93、及びパイロットボディ74の底部中央に形成された通路101を介して作動液が導入される。パイロットボディ74の通路101の他側開口周縁部には、パイロットバルブ71の弁体103が離着座可能に当接するシート部102が設けられる。弁体103は、略円筒形に形成され、一側端部がテーパ状に形成される。弁体103の他側には、外フランジ形のばね受部104が設けられる。弁体103は、パイロットばねとフェイルセーフばねとを一体化させたリターンばね112(非線形ばね)により開弁方向(他側方向)へ付勢される。
【0021】
パイロットボディ74の他側開口内には、リターンばね112、スペーサ及びリテーナ(符号省略)、並びにワッシャ110が積層される。これら積層部品は、パイロットボディ74の他側の外周に装着されたキャップ115によりパイロットボディ74に固定される。キャップ115には、弁室100をキャップ115の外周に形成された環状の流路117に連通させる切欠き116(連通路)が形成される。弁室100は、キャップ115に形成された切欠き116、キャップ115の外周に形成された流路117、パイロットケース73の二面幅89(図2に一面のみ表示)とヨーク122の円筒部123との間に形成された通路118、及びメインバルブ51の外周に形成された環状の流路26を介してリザーバ4に連通される。
【0022】
なお、パイロットケース73とヨーク122とは、パイロットケース73に形成されたねじ部(雄ねじ)をヨーク122の円筒部123に形成されたねじ部(雌ねじ)に螺合して形成された締結部124により締結される。これにより、パイロットケース73とヨーク122との間に設けられたパイロットボディ74、リターンばね112、スペーサ及びリテーナ、ワッシャ110、並びにキャップ115に軸力が作用される。ここで、パイロットケース73とヨーク122とを締結させるとき、パイロットケース73に形成された二面幅89とヨーク122に形成された二面幅138とに工具を係合させる。
【0023】
ヨーク122の他側には、コイル126、コア127、固定鉄心128、可動鉄心129、及び中空の作動ロッド130が組み付けられる。なお、作動ロッド130は、可動鉄心129と一体の構成であるが、別体に構成してもよい。作動ロッド130の一側端部には、パイロットバルブ71の弁体103が固定される。ヨーク122の他側端部には、スペーサ131及びカバー132が挿入され、ヨーク122の他側開口部を塑性加工する(かしめる)ことにより、ヨーク122内のソレノイド内機部品に軸力が作用される。
【0024】
ヨーク122の円筒部123は、バルブケース25の他側開口に嵌合される。ヨーク122は、バルブケース25の段部27に突き当てられることにより、軸方向へ位置決めされる。ヨーク122とバルブケース25との間は、シールリング134によりシールされる。ヨーク122は、バルブケース25に螺合されたナット135を締め付けて止め輪137を圧縮することによりバルブケース25に固定される。
【0025】
そして、コイル126への非通電時には、リターンばね112のばね力により、弁体103が離座方向(他側方向)へ付勢される。これにより、弁体103のばね受部104がフェイルセーフディスク113に当接(着座)し、フェイルセーフバルブ111が閉弁される。
【0026】
一方、コイル126への通電時には、可動鉄心129の推力により、作動ロッド130が弁体103の着座方向(一側方向)へ付勢される。これにより、作動ロッド130がリターンばね112のばね力に抗して推進し、弁体103がシート部102に着座される。ここで、弁体103の開弁圧力は、コイル126に通電する電流値により制御される。なお、コイル126に通電する電流値が小さいソフトモード時には、リターンばね112のばね力と可動鉄心129(作動ロッド130)の推力とが均衡し、弁体103がシート部102から一定の距離離間された状態(図2参照)に保たれる。
【0027】
次に、バッフルプレート31(隔壁部材)を説明する。
図2に示されるように、バッフルプレート31は、開口24に対向させてリザーバ4内に設けられる。バッフルプレート31は、減衰力調整機構30の流路26から開口24を通ってリザーバ4へ流れる作動液の流れの方向を制御し、リザーバ4内の作動液とガスとが攪拌されて生じるエアレーションを抑制する。
【0028】
バッフルプレート31は、セパレータチューブ20(中間筒)の外周に取り付けられ、セパレータチューブ20の外周面28(曲面)に沿って円弧状に湾曲される。図3乃至図5に示されるように、バッフルプレート31は、薄板状の基部32と、基部32の下端縁(下側辺縁)を除く端縁に設けられた隔壁部37とを有する。隔壁部37は、基部32の端縁から他側(図4における「右側」)へ突出し、先端部がアウタチューブ3の内周面7に当接される。
【0029】
基部32は、正面視(図3参照)で、上側部分が略半円形に形成され、下側部分が長方形に形成される。基部32の背面33には、セパレータチューブ20の縮径部29に当接される2つの受座34,34(図5参照)が周方向に間隔をあけて設けられる。基部32の中央には、他側へ突出する接続口35が設けられる。接続口35は、セパレータチューブ20の接続管23の外周に一定の締め代を以て嵌合される。なお、本実施形態のバッフルプレート31は、単一材料の一体成形品であり、例えば、NBR(ニトリルゴム)等の可撓性を有する弾性体により構成されるが、基部32の材料に金属又はプラスチックを用いることができる。
【0030】
ここで、隔壁部37の、接続口35の中心よりも上側の部分(接続管23よりも上側に位置する部分)、即ち、図3における線分B-Bよりも上側の、正面視で半円アーチ形の部分を、隔壁上部38と称する。
【0031】
図6に示されるように、隔壁上部38は、接続管23の軸平面による断面が直角三角形をなす。隔壁上部38は、基部32に対して垂直に設けられてアウタチューブ3の開口24(図2参照)に面する内側面39と、内側面39の背面に形成された外側面40(直角三角形の斜辺に相当)とを有する。内側面39と基部32との稜部には、基部32の背面33側(図6における「左側」)へ凹となる溝36が設けられる。なお、溝36は、隔壁部37の全長にわたって設けられ、隔壁部37がアウタチューブ3とセパレータチューブ20との間で押圧されたとき、隔壁部37が内側へ倒れるように作用する。
【0032】
ここで、図6における破線42は、従来の緩衝器におけるバッフルプレートの外側面、換言すれば、アウタチューブの開口の孔径がバルブケースの内径よりも小さい従来の緩衝器におけるバッフルプレート(以下「従来のバッフルプレート」と称する)の外側面を示す。図6に示されるように、バッフルプレート31は、破線42と外側面40との間の斜線部分が肉抜きされている。便宜上、当該斜線部分を肉抜き部41と称する。本実施形態において、肉抜き部41は、隔壁上部38の外側に設けられる。
【0033】
バッフルプレート31における隔壁上部38の先端角θ1、即ち、隔壁上部38の内側面39と外側面40とがなす角度θ1は、50度よりも小さく設定され、本実施形態では40度である。これに対し、従来のバッフルプレートにおける隔壁上部の先端角θ2、即ち、隔壁上部の内側面と外側面とがなす角度θ2は、大方50度以上であり、例えば54度である。なお、隔壁上部38の先端角θ1は、40度に限定されるものではなく、先端角θ1をバッフルプレート31としての機能が損なわることがない範囲で調整することにより、肉抜き部41による隔壁上部38の肉抜き量、延いては隔壁上部38の体積を調節する。
【0034】
本実施形態では、先端角θ1により、隔壁上部38の体積を、従来のバッフルプレートにおける隔壁上部の体積と同等に調節することにより、組付時に隔壁上部38がアウタチューブ3とセパレータチューブ20との間で押圧されたときの、隔壁上部38の変形(組付け荷重)を制御する。なお、隔壁上部38の先端部、即ち、内側面39と外側面40との稜部には、R部43(外R)が形成される。また、隔壁上部38よりも上側(外側)の部分には、基部32の上端部44が張り出している。さらに、隔壁上部38と基部32の上端部44との間には、R部45(内R)が形成される。
【0035】
一方、隔壁部37は、隔壁上部38の両端から基部32の両端縁(図3における左右両側辺縁)に沿って下方向へ延びる隔壁下部46,46を有する。隔壁下部46,46は、隔壁上部38と同一の断面形状(図6参照)を有することで、隔壁上部38となめらかに連続する。なお、隔壁下部46,46の先端角は、隔壁上部38の先端角θ1と同一に設定される。また、隔壁下部46,46の外側には、上端部44のような張り出した部分は形成されていない。
【0036】
次に、緩衝器1の作動を説明する。
緩衝器1は、車両のサスペンション装置(図示省略)のばね上(車体)とばね下(車輪)との間に縦向きに設けられる。通常の作動状態において、車載コントローラ(図示省略)は、減衰力調整機構30のソレノイド121のコイル126への通電電流を制御することにより、パイロットバルブ71の開弁圧力を調節する。
【0037】
ピストンロッド6の伸び行程時には、シリンダ上室2A内の圧力上昇によりピストン5のディスクバルブ13が閉弁し、ディスクバルブ14の開弁前にはシリンダ上室2A側の作動液が加圧される。これにより、作動液は、連通路22、環状流路21、接続管23を通って減衰力調整機構30に導入される。このとき、ピストン5が移動した分の作動液が、ベースバルブ10のディスクバルブ17を開弁させてリザーバ4からシリンダ下室2Bへ流れる。なお、シリンダ上室2Aの圧力がピストン5のディスクバルブ14の開弁圧力に達してディスクバルブ14が開弁すると、シリンダ上室2Aの圧力がシリンダ下室2Bへリリーフされ、シリンダ上室2Aの過度の圧力上昇が回避される。
【0038】
一方、ピストンロッド6の縮み行程時には、シリンダ下室2B内の圧力上昇によりピストン5のディスクバルブ13が開弁し、ベースバルブ10の通路15のディスクバルブ17が閉弁する。ディスクバルブ18の開弁前には、作動液がピストン下室2Bからシリンダ上室2Aへ流れる。このとき、ピストンロッド6がシリンダ2内に侵入した体積分の作動液が、シリンダ上室2Aから、連通路22、環状流路21、接続管23を通って減衰力調整機構30に導入される。なお、シリンダ下室2B内の圧力がベースバルブ10のディスクバルブ18の開弁圧力に達してディスクバルブ18が開弁すると、シリンダ下室2Bの圧力がリザーバ4へリリーフされ、シリンダ下室2Bの過度の圧力上昇が回避される。
【0039】
減衰力調整機構30に導入された作動液は、導入オリフィス94、メインボディ52に設けられた通路93、パイロットケース73の小内径部91、及びパイロットケース73に設けられた通路92を介して環状凹部80に導入される。ここで、環状凹部80の圧力が背圧導入弁81の開弁圧力に達すると、背圧導入弁81が開弁し、背圧室72に作動液が導入される。
【0040】
そして、メインバルブ51の開弁前(ピストン速度低速域)には、パイロットバルブ71の上流の圧力が弁体103の開弁圧力に達すると、パイロットバルブ71(弁体103)が開弁し、作動液が、導入オリフィス94、通路93、小内径部91、及びパイロットケース73に設けられた通路101を通って、パイロットボディ74内の弁室100に導入される。
【0041】
弁室100に導入された作動液は、キャップ115の切欠き116、キャップ115の外周の流路117、通路118、及びメインバルブ51の外周の流路26を通って、アウタチューブ3に形成された開口24からリザーバ4へ流れる。そして、ピストン速度が上昇し、メインバルブ51の上流の圧力、即ち、複数本の通路67を介して環状流路21に連通された環状凹部55の圧力が、メインバルブ51の開弁圧力に達すると、メインバルブ51が開弁し、環状流路21の作動液が、凹部66、複数本の通路67、環状凹部55、メインバルブ51、及びメインバルブ51の外周の流路26を通って、アウタチューブ3の開口24からリザーバ4へ流れる(放出される)。
【0042】
このように、減衰力調整機構30は、ピストンロッド6の伸び行程及び縮み行程の両行程時において、メインバルブ51の開弁前(ピストン速度低速域)には、導入オリフィス94及びパイロットバルブ71(弁体103)の開弁圧力に応じたソフト特性の減衰力を発生し、メインバルブ51の開弁後(ピストン速度中速域)には、メインバルブ51の開度に応じたハード特性の減衰力を発生する。
【0043】
そして、コイル126への通電を制御してパイロットバルブ71の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度に係らず、減衰力を直接制御することができる。また、コイル126への通電を制御してパイロットバルブ71の開弁圧力を調整することにより、背圧導入弁81を開弁させて背圧室72に導入される作動液の圧力を調整することが可能であり、減衰力特性を広範囲に調整することができる。
【0044】
また、コイル126の断線、或いは車載コントローラの故障等のフェイル発生時に、可動鉄心129(作動ロッド130)の推力が失われた場合、リターンばね112のばね力により弁体103を後退させてパイロットバルブ71を開弁させると共に、弁体103のばね受部104をフェイルセーフディスク113に当接させることにより、弁室100とバルブケース25内側の流路26との間の連通を遮断する。
【0045】
このように、フェイルセーフバルブ111により、環状流路21から、導入オリフィス94、通路93、小内径部91、通路101、弁室100、切欠き116、流路117、通路118、流路26、及び開口24を経由してリザーバ4へ流れる作動液の流れが制御される。そして、フェイルセーフバルブ111の開弁圧力を可変させることにより、開弁圧力に応じた減衰力を得ることが可能であり、同時に、背圧室72の内圧、延いてはメインバルブ51の開弁圧力を調整することができるので、フェイル発生時においても一定の減衰力を得ることが可能である。
【0046】
そして、開口24からリザーバ4へ流れる作動液は、バッフルプレート31(隔壁部材)の隔壁部37の内側の空間に封入されるので、リザーバ4内の作動液の液面から隔絶される。さらに、バッフルプレート31により、開口24からリザーバ4へ流れる作動液が上方向及びセパレータチューブ20の周方向へ移動することが抑止されるので、開口24からリザーバ4へ流れる作動液の噴流が、リザーバ4内の作動液の液面近傍に渦や気泡を発生させることを抑止することができる。
【0047】
このように、バッフルプレート31により、ガスと作動液が撹拌されることによるエアレーションの発生が抑止されるので、安定した減衰力を得ることができる。また、バッフルプレート31により、減衰力調整機構30からリザーバ4へ流れる作動液の流路面積の急激な拡張が緩和されるので、リザーバ4へ流れる作動液の流速の急激な増加が抑制され、渦の発生を抑止することができる。これにより、渦の発生によるキャビテーションの発生も抑制されるので、安定した減衰力を得ることができる。
【0048】
ここで、従来の緩衝器では、接続部材を設けずに減衰力調整機構のメインボディをセパレータチューブ(中間筒)に接続することで、バルブ機構部の軸長が短縮されて減衰力調整機構を小型化することができる。この場合、メインボディとアウタチューブ(外筒)との干渉を回避するためアウタチューブに形成された開口の孔径が大きくなり、これに伴いバッフルプレートが大型化する。ロッドガイドの組付時にシリンダを外筒に対して芯出しさせるとき、バッフルプレートの隔壁部がアウタチューブとシリンダに取り付けられたセパレータチューブとの間で加圧(圧縮)されるが、大型化したバッフルプレートの隔壁部の弾性反力(組付け荷重)の増大により芯出しが困難になり、組立性が低下する。
【0049】
これに対し、本実施形態では、隔壁部材37の弾性反力の大半を発生する、セパレータチューブ20の接続管23の中心よりも上側に位置する隔壁上部38の外側、及び隔壁上部38の両端から下方向へ延びる一対の隔壁下部46に肉抜き部41を設けることにより、隔壁上部38の体積を従来のバッフルプレートにおける隔壁上部の体積と同等に設定した。
本実施形態によれば、ロッドガイド8の組付時にセパレータチューブ20(中間筒)が取り付けられたシリンダ2に対して外筒を芯出しさせるときの、バッフルプレート31の隔壁部37の弾性反力の増大が抑止されるので、組付け荷重(弾性反力)を従来の緩衝器と同等とすることが可能であり、バッフルプレート31の性能を損なうことなく、緩衝器1の組立性を確保することができる。
【0050】
なお、本実施形態は、前述した態様に限定されるものではなく、例えば以下のように構成することができる。
前述した態様では、肉抜き部41を隔壁上部38及び隔壁下部46の外側(外側面40)に設けたが、図7に示されるように、肉抜き部41を隔壁上部38及び隔壁下部46の内側(内側面39)に設けて、隔壁上部38及び隔壁下部46の体積を従来のバッフルプレートにおける隔壁上部及び隔壁下部46の体積と同等に設定するようにバッフルプレート31を構成してもよい。なお、図7における破線42は、従来の緩衝器におけるバッフルプレートの内側面である。
また、隔壁上部38及び隔壁下部46の外側と内側との両側に肉抜き部41を設けて、隔壁上部38の体積を調整するようにバッフルプレート31を構成してもよい。
また、本実施形態では、肉抜き部41を隔壁上部38及び隔壁下部46に設けたが、肉抜き部41を隔壁上部38と隔壁下部46とのいずれか一方に設けてバッフルプレート31を構成してもよい。
いずれの態様も、前述した作用効果を得ることができる。
また、図8に示されるように、隔壁下部46に切欠き48(肉抜き部)を設けて、隔壁部37全体の剛性(弾性反力)を調整するようにバッフルプレート31を構成してもよい。なお、切欠き48の数量、形状、及び位置は適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 緩衝器、2 シリンダ、2A シリンダ上室、2B シリンダ下室、3 アウタチューブ(外筒)、4 リザーバ、5 ピストン、20 セパレータチューブ(中間筒)、21 環状流路、22 連通路、23 接続管、24 開口、30 減衰力調整機構、31 バッフルプレート(隔壁部材)、38 隔壁上部、41 肉抜き部、46 隔壁下部
図1
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図8