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特開2023-8644情報処理方法、学習モデルの生成方法、プログラム、情報処理装置および掘削システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008644
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】情報処理方法、学習モデルの生成方法、プログラム、情報処理装置および掘削システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
E21D9/06 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112362
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(71)【出願人】
【識別番号】593188420
【氏名又は名称】露崎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】三角 久
(72)【発明者】
【氏名】露崎 正行
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC18
2D054GA25
2D054GA42
2D054GA61
2D054GA81
2D054GA92
2D054GA97
(57)【要約】
【課題】掘削機を操作するオペレータを支援する情報処理方法等を提供すること。
【解決手段】情報処理方法は、推進工法による掘削作業中に観測された観測データを取得し、観測データを入力した場合に掘削作業に関する予測を出力するモデルに、取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する処理をコンピュータが実行する。情報処理方法は、ネットワークを介して取得した、推進工法による掘削作業中に観測された観測データを表示し、掘削機50に対する指示を受け付け、ネットワークを介して前記指示を前記掘削機50に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法による掘削作業中に観測された観測データを取得し、
観測データを入力した場合に掘削作業に関する予測を出力するモデルに、取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記観測データは、掘削中の穴の向きに関するデータを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記観測データは、掘削作業の音に関するデータを含む
請求項1または請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
使用中の掘削ヘッドに関する情報を取得し、
観測データを入力した場合に掘削作業に関する予測を出力する複数のモデルから、取得した情報に基づいて1つのモデルを選択し
選択したモデルに取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項5】
取得した前記観測データに基づいて、掘削作業の推進距離と、掘削時の推力との関係を表示する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項6】
ネットワークを介して取得した、推進工法による掘削作業中に観測された観測データを表示し、
掘削機に対する指示を受け付け、
ネットワークを介して前記指示を前記掘削機に送信する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項7】
前記観測データに基づいて、掘削作業の状況を判定する
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
観測データを入力した場合に掘削作業に関する予測を出力するモデルに、取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する
請求項6または請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
掘削作業の状況が、前記掘削機の操作を行なう必要があることを示している場合、必要な操作に関する情報を表示する
請求項7または請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記観測データは、掘削中の穴の向きに関するデータを含む
請求項6から請求項9のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記観測データは、掘削作業の音に関するデータを含む
請求項6から請求項10のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項12】
推進工法用の掘削機に対する操作と、前記掘削機の動作状態との時系列的な関係を含む観測データを、複数回の掘削に関してそれぞれ記録した訓練データを取得し、
ある時点までの観測データを入力、掘削機に対する次の操作を出力として、観測データが入力した場合に掘削機に対する次の操作に関する予測を出力する学習モデルを生成する
学習モデルの生成方法。
【請求項13】
推進工法による掘削作業中に観測された観測データを取得し、
観測データを入力した場合に掘削作業の状況に関する予測を出力するモデルに、取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
推進工法による掘削作業中に観測された観測データを取得する取得部と、
観測データを入力した場合に掘削作業の状況に関する予測を出力するモデルに、取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する表示部と
を備える情報処理装置。
【請求項15】
推進工法用の掘削機と、掘削制御装置と、情報処理装置とを備える掘削システムにおいて、
前記掘削制御装置は、
前記掘削機による掘削作業中に観測された観測データを取得する取得部と、
ネットワークを介して前記観測データを情報処理装置に送信する第1送信部とを有し、
前記情報処理装置は、
前記観測データを表示する表示部と、
前記掘削機に対する指示を受け付ける受付部と、
ネットワークを介して前記指示を前記掘削制御装置に送信する第2送信部とを有し
前記掘削制御装置は、前記指示に基づいて前記掘削機を制御する
掘削システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、学習モデルの生成方法、プログラム、情報処理装置および掘削システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力、ガス、上下水道、および通信等のライフラインの多くは、地中に埋設された管を通じて需要者に供給されている。
【0003】
発進坑に掘削機を設置し、発進坑から推進管を敷設して管路を形成する推進工法が使用されている(特許文献1)。途中の経路を開削しない非開削工法であるため、工事占用面積および騒音が少なく、近隣住民の生活等への影響を抑止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-166531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、掘削中の途中で硬い岩盤、または、埋設済の他の管路等の障害物がみつかる場合がある。推進工法においては、オペレータは障害物を目視確認できず、音および振動等の僅かな情報に基づいて、障害物に対処する必要がある。したがって、工事現場の状況に応じて推進管を適切に敷設するには、掘削機を操作するオペレータに十分な知識および経験が必要である。しかし、熟練したオペレータは不足している。
【0006】
一つの側面では、掘削機を操作するオペレータを支援する情報処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
情報処理方法は、推進工法による掘削作業中に観測された観測データを取得し、観測データを入力した場合に掘削作業に関する予測を出力するモデルに、取得した観測データを入力して、前記モデルから出力された予測に基づく情報を表示する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、掘削機を操作するオペレータを支援する情報処理方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】掘削システムの構成を説明する説明図である。
図2】掘削システムの構成を説明する説明図である。
図3】掘削機の構成を説明する説明図である。
図4】掘削データDBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図5】プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図6】異常判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
図7】表示部に表示される画面の例である。
図8】表示部に表示される画面の例である。
図9】学習モデルの構成を説明する説明図である。
図10】機械学習段階におけるプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図11】学習モデルの使用段階におけるプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図12】実施の形態2の表示部に表示される画面の例である。
図13】実施の形態3のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図14】実施の形態4の掘削システムの構成を説明する説明図である。
図15】実施の形態5の掘削システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、掘削システム10の構成を説明する説明図である。本実施の形態の掘削システム10は、あらかじめ開削した発進坑19から水平または斜めに掘削しながら、推進管52を埋設して管路を形成する、推進工法用のシステムである。
【0011】
掘削システム10は、掘削制御装置40、掘削機50、外部センサ471、測量装置472、情報処理装置30および制御盤37を備える。掘削機50、外部センサ471および測量装置472は、有線または無線を介して掘削制御装置40に接続されている。掘削制御装置40と情報処理装置30とは、ネットワークを介して接続されている。
【0012】
掘削機50は、掘削ヘッド51を備えており、発進坑19の内部に据え付けられている。測量装置472は掘削ヘッド51の進行方向の測量に用いられる。情報処理装置30、掘削制御装置40、掘削機50および測量装置472の詳細については後述する。
【0013】
制御盤37は、有線または無線を介して情報処理装置30に接続されている。制御盤37は、表示部371、ジョイスティック372、制御スイッチ373等を有する。制御盤37は、オペレータが掘削機50を操作する際に使用される。制御盤37は、従来の掘削現場でオペレータが掘削機50を操作する際に使用していたものと同様の外観を有する。制御盤37を使用することにより、オペレータは従来の掘削現場での操作と同様の操作手順で掘削機50を操作できる。
【0014】
外部センサ471は、たとえばマイク、振動センサ、温度センサおよび地盤変位センサ等、掘削状況に関するデータを収集するセンサである。種々のデータを収集する外部センサ471が、発進坑19内、発進坑19の周辺、および掘削経路近傍の地上等に適宜配置されている。外部センサ471は、掘削制御装置40を介さずにネットワークに直接接続される、いわゆるIoT(Internet of Things)デバイスであってもよい。
【0015】
図2は、掘削システム10の構成を説明する説明図である。図2においては、情報処理装置30および掘削制御装置40の構成の詳細を示す。
【0016】
情報処理装置30は、制御部31、主記憶装置32、補助記憶装置33、通信部34、出力部35、入力部36、制御盤I/F(Interface)379およびバスを備える。制御部31は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部31には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)またはマルチコアCPU等が使用される。制御部31は、バスを介して情報処理装置30を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0017】
主記憶装置32は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置32には、制御部31が行なう処理の途中で必要な情報および制御部31で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0018】
補助記憶装置33は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置33には、掘削データDB(Database)61、制御部31に実行させるプログラムおよびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。通信部34は、情報処理装置30とネットワークまたは他の機器との間の通信を行なうインターフェイスである。
【0019】
出力部35は、表示部351およびスピーカ352を含む。表示部351は、たとえば液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)パネル等である。表示部351は、情報処理装置30とは別体の表示装置であってもよい。表示部351は、HMD(Head Mount display)等の、ウエアラブルデバイスであってもよい。スピーカ352は、情報処理装置30とは別体のヘッドホンまたはイヤホン等であってもよい。
【0020】
入力部36は、キーボードおよびマウス等の入力デバイスである。入力部36と表示部351とが積層されて、タッチパネルを構成していてもよい。制御盤I/F379は、情報処理装置30と制御盤37とを接続するインターフェイスである。制御盤I/F379は、たとえばUSB(Universal Serial Bus)等の汎用のインターフェイスである。
【0021】
情報処理装置30は、オペレータが使用する汎用のパソコン、タブレット、スマートフォン等である。情報処理装置30は、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、分散処理を行なう複数のパソコン、または、クラウドコンピューティングシステムと、端末装置との組み合わせにより構成されてもよい。
【0022】
掘削制御装置40は、制御部41、主記憶装置42、補助記憶装置43、通信部44、掘削機I/F46、測定I/F47およびバスを備える。制御部41には、一または複数のCPU、GPUまたはマルチコアCPU等が使用される。制御部41は、バスを介して掘削制御装置40を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0023】
主記憶装置42は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置42には、制御部41が行なう処理の途中で必要な情報および制御部41で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0024】
補助記憶装置43は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置43には、制御部41に実行させるプログラムおよびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。通信部44は、掘削制御装置40とネットワークとの間の通信を行なうインターフェイスである。
【0025】
掘削機I/F46は、掘削制御装置40と掘削機50とを接続するインターフェイスである。測定I/F47は、測量装置472および外部センサ471と掘削制御装置40とを接続するインタ-フェイスである。掘削機I/F46および測定I/F47は、たとえばUSB等の汎用のインターフェイスである。
【0026】
掘削制御装置40は、汎用のパソコン、タブレットまたはスマートフォン等である。掘削制御装置40は、掘削機50に内蔵された制御用コンピュータであってもよい。
【0027】
図3は、掘削機50の構成を説明する説明図である。掘削機50は、前述の掘削ヘッド51に加えて回転部55、進退部56および内部センサ57を有する。回転部55および進退部56は、たとえば油圧駆動機構である。
【0028】
掘削ヘッド51は、先頭の推進管52と連結されている。掘削ヘッド51が1本の推進管52に対応する距離だけ前進するたびに、最後部の推進管52の後ろに新たな推進管52が連結される。推進管52を連結する工程は、従来から推進工法で実施されているため、説明を省略する。掘削ヘッド51が目的地である到達坑に到達した後、掘削ヘッド51と先頭の推進管52とが切り離される。以上により、管路が形成される。
【0029】
図1および図3においては、軟弱地盤および比較的柔らかな普通地盤の掘削に適した圧入方式用の掘削ヘッド51を模式的に示す。圧入方式用の掘削ヘッド51の先端は、掘削方向に対して傾斜した平面であり、図3に太い矢印で示す向きの圧力を地盤から受ける。オペレータは、回転部55を操作して推進管52を介して掘削ヘッド51を回転させることにより、掘削方向を調整できる。
【0030】
内部センサ57は、たとえば進退部56が掘削ヘッド51を進退させる際の推力、回転部55が掘削ヘッド51を回転させる際の回転トルク、掘削ヘッド51が進退した距離、掘削ヘッド51が回転した角度、掘削機50の消費電力および掘削ヘッド51の振動状態等、掘削機50および埋設済の推進管52の状態を検出するセンサである。
【0031】
掘削ヘッド51の後端に、目標体473が配置されている。目標体473は、たとえば掘削ヘッド51の中心および周辺にそれぞれ配置されたLED(Light Emitting Diode)である。測量装置472は、たとえば電子セオドライトである。電子セオドライトは、光軸が掘削目標方向に向くように設置された状態で、測量に使用される。
【0032】
電子セオドライトは、光軸と目標体473との位置関係に基づいて、掘削ヘッド51の進行方向を測量する。進行方向は、たとえば電子セオドライトの観察光学視野において、掘削ヘッド51の中心に配置された目標体473が光軸からずれた距離により定量化可能である。進行方向は、光軸に対する掘削ヘッド51の進行方向の角度により定量化されてもよい。
【0033】
測量装置472は、目標体473を使用する代わりに、レーザを掘削ヘッド51の後端に照射し、反射光に基づいて掘削ヘッド51の進行方向を測量するタイプの電子セオドライトであってもよい。
【0034】
測量装置472は、測量結果を掘削制御装置40に送信する。測量結果には、目標体473を撮影した画像が含まれてもよい。
【0035】
図2に戻って説明を続ける。測量結果、内部センサ57による検出データ、および測量装置472による検出データは、ネットワークを介してリアルタイムで情報処理装置30に送信される。制御部31は、受信したデータを掘削データDB61に記録する。
【0036】
制御部31は、測量装置472が撮影した目標体473の位置と、光軸との関係を表示部371に表示する。たとえば、制御部31は測量装置472が目標体473を撮影した画像と、掘削ヘッド51の向きを示す文字とを表示部371に表示する。制御部31は、測量した掘削ヘッド51の向きに基づいて、目標体473を撮影した画像を再現してもよい。オペレータは、掘削ヘッド51の向き、すなわち掘削中の穴の向きに関する変化を、直感的に把握できる。
【0037】
制御部31は、その他の各種データを表示部351等に表示する。表示部351に表示される画面の例については、後述する。
【0038】
制御盤37は、音声データをスピーカ352から出力する。なお、マイクが複数配置されている場合、どのマイクの音声をスピーカ352から出力するかを、オペレータが選択できることが望ましい。制御部31は、複数のマイクの音声を合成して、スピーカ352から出力してもよい。
【0039】
オペレータは、表示部371に表示される測量データ、スピーカ352から出力される音声、および表示部351の表示等を確認して、制御スイッチ373を操作する。オペレータが行なった操作は、情報処理装置30およびネットワークを介して、掘削制御装置40に送信される。掘削制御装置40は、オペレータが行なった操作に基づいて掘削機50を制御する。
【0040】
データに異常が生じた場合、制御部31はオペレータに異常発生を通知するか、または、掘削を自動的に停止する。たとえば、掘削ヘッド51が埋設済の他の管路、硬い岩盤、または、コンクリート構造物等にぶつかった場合、掘削ヘッド51の向きが急激に変化すとともに、大きな音および振動が発生する。
【0041】
オペレータは、データを確認するとともに、必要に応じて現場監督等に連絡して、指示を仰ぐ。たとえば、現場監督が掘削ヘッド51をそのまま前進させて障害物を破壊するように指示した場合、オペレータは掘削作業を継続する。同様に、現場監督が障害物を迂回するように指示した場合、オペレータは掘削ヘッド51をいったん引き戻して、掘削方向を調整した後に、掘削を再開する。
【0042】
掘削状況に関するデータが電子化されているため、オペレータは必要に応じて現場監督が所持するスマートフォン等の情報機器にデータを送れる。したがって、オペレータと現場監督とは十分な情報共有を行なえる。したがって、現場監督は正確な情報に基づいて、正確な判断を下せる。
【0043】
以上により、オペレータは掘削現場から離れた自宅またはオフィス等から、掘削機50を操作できる。本実施の形態の掘削システム10を使用することにより、遠方の掘削現場まで移動する時間を節約できるため、オペレータの実働時間を長く確保できる。
【0044】
なお、オペレータは、複数の掘削機50を並行して操作してもよい。たとえば、複数の穴を並行に掘削する場合、2本目以降の掘削では障害物等のトラブルが発生する可能性が低い。したがってオペレータは、別の掘削現場の掘削機50の操作を並行して行なえる。したがって、一人のオペレータが複数の現場を同時に担当できる掘削システム10を提供できる。
【0045】
図4は、掘削データDB61のレコードレイアウトを説明する説明図である。掘削データDB61は、掘削作業中に外部センサ471、測量装置472および内部センサ57により測定された各種データ、および、オペレータによる掘削機50の操作を記録するDBである。
【0046】
掘削データDB61は、掘削ID(Identifier)フィールド、オペレータIDフィールド、開始日時フィールド、掘削時間フィールド、結果フィールド、掘削ヘッドフィールド、および施工中データフィールドを有する。掘削データDB61は、1本の掘削について、1つのレコードを有する。図4は、1つのレコードを模式的に示す。
【0047】
掘削IDフィールドには、掘削システム10を使用して掘削する孔に固有に付与された掘削IDが記録されている。オペレータIDフィールドには、掘削システム10の操作を担当するオペレータに固有に付与されたオペレータIDが記録されている。開始日時フィールドには、掘削を開始した日時が記録されている。掘削時間フィールドには、掘削に要した時間が記録されている。
【0048】
結果フィールドには、掘削結果が表示されている。「正常終了」は、計画通り正常に掘削が終了したことを示す。たとえば掘削途中で埋設済の他の管路等と交差したために掘削を中止した場合には、「**メートルで他管路と交差したため中止」のように、掘削した距離と、オペレータまたは現場監督が掘削を中止すると判断した理由とが、結果フィールドに記録される。
【0049】
掘削ヘッドフィールドには、掘削ヘッド51の種類が記録されている。前述のように、圧入方式用の掘削ヘッド51が使用される場合には、掘削ヘッドフィールドに「圧入方式用」が記録される。たとえば滞水砂層および硬質地盤に適した水圧バランス方式用の掘削ヘッド51が使用される場合には、掘削ヘッドフィールドに「水圧バランス方式用」が記録される。
【0050】
同様に、礫質、玉石および岩盤層に適した打撃破砕方式用の掘削ヘッド51が使用された場合には、掘削ヘッドフィールドに「打撃破砕方式用」が記録される。粘性土、砂質土および砂礫土に適した単管削孔方式用または二重管削孔方式用の掘削ヘッド51が使用された場合には、掘削ヘッドフィールドに「単管削孔方式用」または「二重管削孔方式用」が記録される。
【0051】
施工中データフィールドには、推力データ、回転トルクデータ、測量データ、音響データ、振動データ、操作データおよび動画データ等、掘削作業中に記録された種々の時系列データが記録されている。施工中データフィールドに記録されるデータは、掘削作業中に観測された、本実施の形態の観測データの例示である。
【0052】
図4には、推力データおよび操作データの例を示す。推力データは、掘削ヘッド51の推進距離と、掘削ヘッド51を前進させる際に進退部56が加えた推力とを関連づけて記録したデータであり、たとえばCSV(Comma Separated Value)形式で記録されている。なお、推進距離はたとえば内部センサ57により測定される。
【0053】
同様に操作データは、掘削ヘッド51の推進距離と、制御盤37を使用してオペレータが行なった操作とを関連づけて記録したデータである。「開始」は、オペレータが掘削を開始する操作を行なったことを示す。進退部56が掘削ヘッド51に所定の推力を加えて、前進させる。「右」は、オペレータがジョイスティック372を「右」の方向に倒す操作を行なったことを意味する。「推力ダウン10%」は、オペレータが進退部56の出力を10パーセント低下させる操作を行なったことを意味する。「前」は、オペレータがジョイスティック372を「前」の方向に倒す操作を行なったことを意味する。
【0054】
データ例の記載を省略するが、回転トルクデータは、掘削ヘッド51の推進距離と回転部55が掘削ヘッド51に加えた回転トルクとを関連づけたデータである。測量データは、掘削ヘッド51の推進距離と、測量装置472により測量された掘削方向とを関連づけたデータである。これらのデータは、推進距離の代わりに、時刻と関連づけて記録されてもよい。施工中データフィールドに、時刻と推進距離とを関連づけたデータが記録されてもよい。施工中データフィールドに、時刻と推進管52の各部分に加わる外圧とを関連づけたデータが記録されてもよい。
【0055】
音響データは、発進坑19内、発進坑19の周辺、および掘削経路近傍の地上等に適宜配置されたマイクを介して録音された音声データである。同様に振動データは適宜配置された振動センサを介して記録された、地盤および掘削機50等の振動データである。
【0056】
図示を省略するが、掘削データDB61には、地盤変位センサにより測定された、発進坑19の周辺および推進ルート上における地盤変位を記録した、地盤変位データも記録される。
【0057】
なお、掘削データDB61は、たとえば掘削ヘッド51の型番およびシリアル番号を記録するフィールド等、掘削工事に関する情報を記録する任意のフィールドを有してもよい。
【0058】
図4に示す各項目は例示である。たとえば水圧バランス方式で掘削を行なう場合、掘削ヘッド51に供給する切羽水の圧力、量および温度と、掘削機50側から排出された排土の密度等とが、施工中データフィールドに記録されても良い。打撃破砕方式で掘削を行なう場合、掘削機50に供給される空気圧力、掘削機50側から排出された排土の密度、または、排土の粒子径等が施工中データフィールドに記録されても良い。その他、掘削方式、掘削ヘッド51の型式、掘削機50の型式、掘削の目的、配置できる外部センサ471の種類等に応じたデータが、施工中データフィールドに記録されてもよい。
【0059】
図5は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。図5に示すプログラムは、発進坑19の開削、掘削機50の設置、および、測量装置472の光軸合わせ等の準備作業が完了した後に実行される。
【0060】
制御部31は、起動準備の指示を掘削制御装置40に送信する(ステップS501)。制御部41は、指示を受信する(ステップS601)。制御部41は、内部センサ57、外部センサ471および測量装置472から取得した施工中データ、および掘削機50の動作状態に関するデータを、情報処理装置30に送信する(ステップS602)。ステップS602により、制御部41はネットワークを介してデータを情報処理装置30に送信する、本実施の形態の第1送信部の機能を実現する。
【0061】
制御部31は、データを受信する(ステップS502)。制御部31は、異常判定のサブルーチンを起動する(ステップS503)。異常判定のサブルーチンは、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて掘削状態に異常があるか否かを判定するサブルーチンである。異常判定のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0062】
制御部31は、ステップS502で受信したデータを、オペレータが認識できる形式で出力する(ステップS504)。具体的には、制御部31は測量装置472が撮影した目標体473の画像を測量結果に基づいて生成して、表示部371に表示する。制御部31は、音声データに基づいてスピーカ352から音声を出力する。制御部31は、後述するように推力等の時系列変化を示すグラフを表示部351に出力する。
【0063】
制御部31は、制御盤37を介してオペレータによる指示を受け付ける(ステップS505)。オペレータは、ジョイスティック372、制御スイッチ373等を使用して、掘削現場と同様の操作手順で指示を行なえる。なお、オペレータが所定の時間操作を行なわない場合、制御部31は「掘削機50の状態を変更しない」という指示を受け付けたと判定する。すなわち、たとえば現在の条件で掘削作業を継続する場合、オペレータは制御盤37を操作する必要はない。
【0064】
制御部31は、掘削を終了するか否かを判定する(ステップS506)。たとえば、オペレータが掘削終了を指示するスイッチを操作した場合、制御部31は掘削を終了すると判定する。掘削を終了しないと判定した場合(ステップS506でNO)、制御部31はユーザから受け付けた操作内容を掘削制御装置40に送信する(ステップS507)。ステップS507により、制御部31はネットワークを介してデータを掘削制御装置40に送信する、本実施の形態の第2送信部の機能を実現する。その後、制御部31はステップS502に戻る。
【0065】
制御部41は、操作内容を受信する(ステップS611)。制御部41は、掘削機50を制御して、受信した操作内容を反映させる(ステップS612)。制御部41は、ステップS602に戻る。
【0066】
掘削を終了すると判定した場合(ステップS506でYES)、制御部31は掘削終了の指示を掘削制御装置40に送信する(ステップS508)。制御部41は、掘削終了の指示を受信する(ステップS613)。制御部41は、所定の終了プロセスにより、掘削機50の動作を停止させる(ステップS614)。制御部41は、掘削機50の動作が停止した旨を情報処理装置30に送信する(ステップS615)。
【0067】
制御部31は、掘削機50の動作が停止した旨を受信する(ステップS509)。制御部31は、表示部351に掘削機50が停止した旨を表示する(ステップS510)。その後、制御部31は処理を終了する。
【0068】
図6は、異常判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。異常判定のサブルーチンは、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて掘削状態に異常があるか否かを判定するサブルーチンである。
【0069】
制御部31は、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて掘削機50の推力が所定の正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS531)。範囲外であると判定した場合(ステップS531でNO)、制御部31は掘削機50の推力に異常があると判定し、主記憶装置32または補助記憶装置33に一時的に記憶する(ステップS541)。
【0070】
正常範囲内であると判定した場合(ステップS531でYES)、またはステップS541の終了後、制御部31は、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて掘削機50の回転トルクが所定の正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS532)。範囲外であると判定した場合(ステップS532でNO)、制御部31は掘削機50の回転トルクに異常があると判定し、主記憶装置32または補助記憶装置33に一時的に記憶する(ステップS542)。
【0071】
正常範囲内であると判定した場合(ステップS532でYES)、またはステップS542の終了後、制御部31は、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて掘削ヘッド51の進行方向が所定の正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS533)。範囲外であると判定した場合(ステップS533でNO)、制御部31は掘削ヘッド51の進行方向に異常があると判定し、主記憶装置32または補助記憶装置33に一時的に記憶する(ステップS543)。
【0072】
正常範囲内であると判定した場合(ステップS533でYES)、またはステップS543の終了後、制御部31は、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて振動データの周波数解析を行ない、周波数特性を算出する(ステップS534)。FFT(Fast Fourier Transform)等の周波数解析のアルゴリズムは一般に使用されているため、詳細については説明を省略する。
【0073】
制御部31は、ステップS534で算出した周波数特性と、事前に様々な地盤について測定した振動データの周波数特性とのパターンマッチングを行ない、類似した周波数特性を示す地盤を抽出する(ステップS535)。地盤は、たとえば「粘性土地」、「軟弱地盤」、「岩盤」、「コンクリート」および「埋設済管路」等である。
【0074】
制御部31は、掘削制御装置40から受信したデータに基づいて音響データの周波数解析を行ない、周波数特性を算出する(ステップS536)。制御部31は、ステップS536で算出した周波数特性と、事前に様々な地盤について測定した音響データの周波数特性とのパターンマッチングを行ない、類似した周波数特性を示す地盤を抽出する(ステップS537)。その後、制御部31は処理を終了する。
【0075】
図7から図8は、表示部351に表示される画面の例である。制御部31は、図5を使用して説明したプログラムのステップS504において表示部351に図7または図8の画面を出力する。
【0076】
図7は、掘削状態に異常がない場合の例を示す。画面の左側には、施工条件欄71、管理条件欄72、運転状況欄73、観測データ欄74が表示されている。画面の右側には、推力グラフ欄751、回転トルクグラフ欄752および方向グラフ欄753が表示されている。
【0077】
施工条件欄71には、工事計画の際に定められた施工条件が表示されている。管理条件欄72には、工事計画の際に定められた管理条件が表示されている。施工条件および管理条件は、工事計画書が記録されたデータベース等から取得される。
【0078】
運転状況欄73には、掘削機50の運転状況がリアルタイムで表示されている。観測データ欄74には、振動データ欄741、音響データ欄742および通知欄748が表示されている。振動データ欄741には、図5を使用して説明したステップS502において掘削制御装置40から取得した観測データのうち、振動データに基づいて判定された、オペレータが注目するべきポイントが簡潔に表示されている。同様に、音響データ欄742には音響データに基づいて判定された、オペレータが注目するべきポイントが簡潔に表示されている。
【0079】
通知欄748には、観測データの異常の有無が簡潔に表示されている。図7においては、図6を使用して説明したステップS531からステップS533と、ステップS535と、ステップS537とのいずれのステップにおいても異常がないと判定された場合の例を示す。
【0080】
推力グラフ欄751の横軸は、掘削ヘッド51の推進距離である。横軸の単位はメートルである。横軸の最小値は0メートルであり、横軸の最大値は掘削を予定している距離である。
【0081】
推力グラフ欄751の縦軸は、掘削ヘッド51に加わった推力である。縦軸の単位はキロニュートンである。破線は、推力の基準値を示す。推力は、基準値を超えた場合に、異常があると判定される。実線は、推力の実測値を示す。
【0082】
回転トルクグラフ欄752の横軸は、推力グラフ欄751の横軸と同様である。回転トルクグラフ欄752の縦軸は、掘削ヘッド51に加わった回転トルクである。縦軸の単位はキロニュートン・メートルである。破線は、回転トルクの基準値を示す。回転トルクは、基準値を超えた場合に、異常があると判定される。実線は、回転トルクの実測値を示す。
【0083】
方向グラフ欄753の横軸は、推力グラフ欄751の横軸と同様である。方向グラフ欄753の縦軸は、掘削ヘッド51の中心に配置された目標体473が光軸からずれた距離
である。縦軸の単位は、センチメートルである。破線は、距離の基準値を示す。距離は、正側、負側のいずれかで基準値を超えた場合に、異常があると判定される。細い実線は、左右方向の実測値を示す。太い実線は、上下方向の実測値を示す。
【0084】
オペレータは、推力グラフ欄751、回転トルクグラフ欄752および方向グラフ欄753により、掘削開始から現時点までの掘削状況の時系列的な変化を把握できる。画面に表示されたこれらの情報を確認しながら、オペレータは掘削機50を制御する。
【0085】
図8は、振動データおよび音響データに異常が生じた場合に、制御部31が表示部351に表示する画面の例である。図8は、掘削ヘッド51がコンクリートに接触した場合を示す。振動データおよび音響データのいずれにおいても、コンクリートのパターンが検出されている。通知欄748に、異常がある旨が表示されている。なお制御部31は、警告音または画面の点滅等によりオペレータの注意を喚起してもよい。
【0086】
オペレータは、たとえば掘削機50を緊急停止させる等の処置を行ない、その後の対応策を検討する。なお、図7および図8に示す画面は例示である。表示する項目およびレイアウトは、図7および図8に限定しない。
【0087】
なお推進工法による掘削作業において、オペレータは、仮に掘削現場に居る場合であっても掘削ヘッド51の状態および掘削している地盤の状態を直接確認することはできない。一方、十分な数の外部センサ471および内部センサ57が適切に配置されており、十分な品質の通信回線が確保できていれば、本実施の形態の掘削システム10を用いることにより、オペレータは掘削状態に関する詳細な情報を得ることができる。
【0088】
したがって、本実施の形態の掘削システム10を使用することにより、オペレータは掘削現場に居る場合であっても、掘削現場から離れた場所に居る場合であっても、詳細な情報に基づく適切な判断を行ない、掘削作業を遂行できる。
【0089】
出力部35は、ボディソニックチェアを含んでもよい。制御部31が振動データに基づいてボディソニックチェアを振動させることにより、着座したオペレータは全身を使って振動データを体感的に把握できる。
【0090】
制御盤37の代わりに、出力部35および入力部36が使用されてもよい。特別なハードウェアを用意することなく、汎用のパソコン等の一般的なハードウェアと、掘削機50制御用のソフトウェアとを使用して、オペレータは掘削機50を操作できる。
【0091】
本実施の形態によると、オペレータが自宅またはオフィス等から掘削機50を操作できる掘削システム10を提供できる。遠方の掘削現場まで移動する時間を節約できるため、オペレータの実働時間を長く確保できる。オペレータは空調等が整った自宅またはオフィス等で勤務できるため、オペレータの労働条件を改善できる。以上により、本実施の形態の掘削システム10は、オペレータの人材不足解消に寄与できる。
【0092】
掘削技術を習得すれば、障碍、育児または介護等の事情により、掘削現場での作業が困難なオペレータであっても、掘削機50を操作できる。したがって本実施の形態の掘削システム10は、障碍者雇用の創出、ワークライフバランスの向上、および、ジェンダーギャップの解消等に寄与して、様々な社会問題の解決に貢献できる。
【0093】
本実施の形態によると、たとえば複数のマイクが配置されている場合、オペレータは音響データを聞くマイクを適宜切り替えられる。たとえば、異常音が発生している場合に、オペレータは掘削経路に沿って配置されたマイクを順次切り替えて、それぞれの位置における音を確認することにより、掘削機50の状態を適切に把握できる。
【0094】
本実施の形態によると、掘削中に収集した推力データ等の複数のデータが所定の閾値を超えた場合に、制御部31が表示部351に表示してオペレータの注意を喚起する。さらに制御部31は、推力グラフ欄751等のグラフにより、掘削機50の状態の時系列的な変化を表示する。このようにすることにより、オペレータの判断を支援する掘削システム10を提供できる。
【0095】
複数の情報処理装置30がネットワークに接続されてもよい。たとえば、経験の浅いオペレータが一つの情報処理装置30を使用して掘削工事を担当する場合、熟練したオペレータが別の情報処理装置30を使用して作業の状態を観察し、必要に応じて指導できる。逆に、熟練したオペレータの掘削作業を、複数の訓練中のオペレータがそれぞれ情報処理装置30を使用して作業の状態を見学できる。したがって、オペレータのOJT(On the Job Training)に役立ち、人材不足の解消に寄与する掘削システム10を提供できる。
【0096】
本実施の形態によると、掘削作業中にオペレータが掘削機50の状態を把握する際の情報、および、オペレータが行なう操作は、すべて電子化されてネットワークを介して伝達される。掘削作業の経過に関する情報をすべて電子的に記録できる掘削システム10を提供できる。
【0097】
たとえば、突発的なトラブルが発生した場合、制御部31は電子的に記録された情報から、トラブルが発生する直前の情報を抽出して、オペレータに提示してもよい。オペレータは、トラブル発生前、およびトラブル発生時の状態を再確認することにより、トラブルの原因推定および対策の立案を適切に行なえる。電子的に記録した情報の活用方法に関するその他の例は、後述する。
【0098】
外部センサ471は適宜配置されたカメラを含み、施工中データはカメラを介して記録された動画データを含んでもよい。掘削工事の施工状況を適宜記録する掘削システム10を提供できる。なお、通信回線の容量が十分ではない場合、制御部41は動画データを一時的に補助記憶装置43に記録し、掘削終了後に情報処理装置30に送信してもよい。
【0099】
[実施の形態2]
本実施の形態は、学習モデル65を使用してオペレータを支援する掘削システム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0100】
図9は、学習モデル65の構成を説明する説明図である。学習モデル65は、現在までに掘削制御装置40から受信した施工中データ等の入力を受け付けて、オペレータが次に行なう操作に関する予測を出力するモデルである。
【0101】
学習モデル65に入力される入力データは、たとえば図4を使用して説明した推力データ、回転トルクデータ、測量データ、音響データ、振動データおよび操作データである。なお、入力データは上記に列挙したデータの一部であってもよい。入力データは、掘削工事現場の地盤調査結果を含んでもよい。学習モデル65は、補助記憶装置33または情報処理装置30に接続された外部の大容量記憶装置に保存されている。
【0102】
図9に示す例では、オペレータは掘削機50の操作を行なわずに、現状維持のまま掘削を継続する確率が80パーセントであり、掘削ヘッド51を右に向ける操作を行なう確率が2%、掘削ヘッド51を後退させる操作を行なう確率が1%、非常停止ボタンを押す確率が1%である。
【0103】
学習モデル65の生成に使用される教師データは、過去に掘削データDB61に記録されたデータのうち、たとえば熟練したオペレータが担当して、「正常終了」した掘削に関するデータである。学習モデル65は、たとえばRNN(Recurrent Neural Network:再起型ニューラルネットワーク)、またはLSTM(Long Short-Term Memory)等の、時系列データの予測に適した任意の機械学習手法を用いて作成される。
【0104】
学習モデル65は、CNN(Convolutional neural network)またはランダムフォレスト等の、任意の機械学習手法を用いて作成されてもよい。学習モデル65は、掘削時間に基づいて報酬を定める強化学習により作成されてもよい。
【0105】
なお、学習モデル65は、たとえば圧入方式用、水圧バランス方式用等、掘削ヘッド51の種類に生成される。学習モデル65は、掘削ヘッド51の型式ごとに生成されてもよい。学習モデル65は、掘削を行なう土質ごとに生成されてもよい。学習モデル65は、さらに推進管52を埋設する深さごとに生成されてもよい。制御部41は、掘削工事の条件に対応する学習モデル65を選択して使用する。
【0106】
図10は、機械学習段階におけるプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。以下の説明においては、情報処理装置30が学習モデル65の生成に使用される場合を例にして説明する。図10のプログラムは情報処理装置30とは別のハードウェアで実行され、機械学習が完了した学習モデル65がネットワークを介して補助記憶装置33に複写されてもよい。一つのハードウェアで学習させた学習モデル65を、複数の情報処理装置30で使用できる。
【0107】
図10のプログラムの実行に先立ち、たとえばRNNまたはLSTM等の未学習の学習モデル65が準備されている。図10のプログラムにより、準備された学習モデル65の各パラメータが調整されて、機械学習が行なわれる。
【0108】
掘削データDB61から条件に合うレコードを抽出した、訓練データDBが構築されている。訓練データDBの構成は、掘削データDB61と同一である。以下の説明では訓練データDBに記録されたレコードを訓練レコードと記載する。なお、複数の情報処理装置30でそれぞれデータが記録された掘削データDB61を用いて訓練データDBを作成することにより、多数の訓練レコードを有する訓練データDBを作成できる。
【0109】
制御部31は、訓練データDBから1エポックの訓練に使用する訓練レコードを取得する(ステップS551)。1エポックの訓練に使用する訓練レコードの数は、いわゆるハイパーパラメータであり、適宜定められている。
【0110】
制御部31は、学習モデル65の入力層に、ある位置まで掘削ヘッド51が進むまでの施工中データが入力された場合に、オペレータが次に行なった操作が出力層から出力されるように、モデルのパラメータを調整する(ステップS552)。
【0111】
制御部31は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS553)。たとえば、制御部31は所定のエポック数の学習を終了した場合に、処理を終了すると判定する。制御部31は、訓練データDBからテストデータを取得して機械学習中のモデルに入力し、所定の精度の出力が得られた場合に処理を終了すると判定してもよい。
【0112】
処理を終了しないと判定した場合(ステップS553でNO)、制御部31はステップS551に戻る。処理を終了すると判定した場合(ステップS553でYES)、制御部31は学習済のモデルのパラメータを補助記憶装置33に記録する(ステップS554)。その後、制御部31は処理を終了する。以上の処理により、学習モデル65の機械学習が完了する。
【0113】
図11は、学習モデル65の使用段階におけるプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。図11のプログラムは、図5を使用して説明した実施の形態1のプログラムの代わりに、掘削作業中に使用される。
【0114】
ステップS502までの処理は、図5を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。制御部31は、使用中の掘削ヘッド51に対応する学習モデル65を選択する。制御部31は、掘削を開始してからその時点までにステップS502で受信した施工中データを、選択した学習モデル65に入力して、次にオペレータが行なう操作の予測を取得する(ステップS561)。
【0115】
制御部31は、ステップS502で受信したデータと、ステップS561で取得した予測とを、オペレータが認識できる形式で出力する(ステップS562)。制御部31は、制御部31は、制御盤37を介してオペレータによる操作を受け付ける(ステップS505)。以後の処理は、図5を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。
【0116】
図12は、実施の形態2の表示部351に表示される画面の例である。制御部31は、図11を使用して説明したプログラムのステップS562において、図11に示す画面を出力する。図12に示す画面の基本構成は図7および図8と同様であり、運転状況欄73に推奨操作欄76が追加されている。推奨操作欄76に、学習モデル65から取得された「右」の操作が表示されており、熟練したオペレータであれば掘削ヘッド51を右に向ける操作を行なう可能性が高いことを示している。
【0117】
制御部31は、図9を使用して説明した確率に基づいて推奨操作欄76の表示態様を定めてもよい。たとえば制御部31は、確率が高い場合には大きな文字で推奨操作欄76を表示し、確率が低い場合には小さな文字で推奨操作欄76を表示する。学習モデル65から、複数の操作に対して同程度の確率が出力された場合、制御部31は複数の操作を推奨操作欄76に表示してもよい。
【0118】
本実施の形態によると、熟練したオペレータが行なう操作に関する予測を常時提示することにより、オペレータを支援する掘削システム10を提供できる。
【0119】
情報処理装置30が掘削現場に配置されており、オペレータは掘削現場で掘削機50の操作を行なってもよい。情報処理装置30が掘削現場に配置されている場合、情報処理装置30と掘削制御装置40とは有線により接続されていてもよい。
【0120】
[実施の形態3]
本実施の形態は、十分に信頼度の高い予測を出力するように学習した学習モデル65を使用して自動掘削を行なう掘削システム10に関する。実施の形態2と共通する部分については、説明を省略する。
【0121】
図13は、実施の形態3のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS502までの処理は、図5を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。
【0122】
制御部31は、予定していた掘削が終了したか否かを判定する(ステップS571)。具体的には、ステップS502で受信したデータに含まれる推進距離が予定に達した場合に、制御部31は掘削が終了したと判定する。
【0123】
終了したと判定した場合(ステップS571でYES)、制御部31は掘削終了の指示を掘削制御装置40に送信する(ステップS508)。以後の処理は、図5を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0124】
終了していないと判定した場合(ステップS571でNO)、制御部31は、掘削を開始してからその時点までにステップS502で受信した施工中データを学習モデル65に入力して、次にオペレータが行なう操作の予測を取得する(ステップS572)。
【0125】
制御部31は、ステップS572で取得した予測が掘削機50の停止であるか否かを判定する(ステップS573)。停止であると判定した場合(ステップS573でYES)、制御部31は、掘削が完了していないにも関わらず、掘削機50を停止する旨を、オペレータに通知する(ステップS574)。通知は、たとえば警告音、画面の点滅、オペレータが所持しているスマートフォンへのメッセージ送信等、任意の手段により行なえる。
【0126】
停止ではないと判定した場合(ステップS573でNO)、またはステップS574の終了後、情報処理装置30はステップS572で取得した操作を掘削制御装置40に送信する(ステップS575)。その後、制御部31はステップS502に戻る。
【0127】
制御部41は、操作内容を受信する(ステップS611)。以後の処理は、図5を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0128】
本実施の形態によると、学習モデル65を使用して自動的に掘削を行なう掘削システム10を提供できる。たとえば、掘削ヘッド51が埋設済の他の管路、硬い岩盤、または、コンクリート構造物等にぶつかった場合等、イレギュラーな状況においては、掘削機50を自動的に停止させるとともに、オペレータに通知する掘削システム10を提供できる。
【0129】
[実施の形態4]
本実施の形態は、汎用のコンピュータ90とプログラム97とを組み合わせて動作させることにより、本実施の形態の掘削システム10を実現する形態に関する。図14は、実施の形態4の掘削システム10の構成を示す説明図である。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0130】
本実施の形態の掘削システム10は、情報処理装置30の代わりにコンピュータ90を含む。コンピュータ90は、制御部31、主記憶装置32、補助記憶装置33、通信部34、出力部35、入力部36、制御盤I/F379、読取部39およびバスを備える。コンピュータ90は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレットまたはサーバコンピュータ等の情報機器である。
【0131】
プログラム97は、可搬型記録媒体96に記録されている。制御部31は、読取部39を介してプログラム97を読み込み、補助記憶装置33に保存する。また制御部31は、コンピュータ90内に実装されたフラッシュメモリ等の半導体メモリ98に記憶されたプログラム97を読出しても良い。さらに、制御部31は、通信部34および図示しないネットワークを介して接続される図示しない他のサーバコンピュータからプログラム97をダウンロードして補助記憶装置33に保存しても良い。
【0132】
プログラム97のうち、制御部31により実行される部分は、コンピュータ90の制御プログラムとしてインストールされ、主記憶装置32にロードして実行される。プログラム97のうち、制御部41により実行される部分は、ネットワークを介して掘削制御装置40に送信されて、掘削制御装置40の補助記憶装置43に記憶される。記憶されたプログラムは、掘削制御装置40の制御プロゴラムとしてインストールされ、主記憶装置42にロードして実行される。
【0133】
以上により、コンピュータ90と掘削制御装置40とは、連携して上述した掘削システム10として機能する。
【0134】
[実施の形態5]
図15は、実施の形態5の掘削システム10の機能ブロック図である。掘削システム10は、推進工法用の掘削機50と、掘削制御装置40と、情報処理装置30とを備える。掘削制御装置40は、取得部83および第1送信部81を備える。情報処理装置30は、表示部84、受付部85および第2送信部82を備える。
【0135】
取得部83は、掘削機50による掘削作業中に観測された観測データを取得する。第1送信部81は、ネットワークを介して観測データを情報処理装置30に送信する。表示部84は、観測データを表示する。受付部85は、掘削機50に対する指示を受け付ける。第2送信部82は、ネットワークを介して指示を掘削制御装置40に送信する。掘削制御装置40は、指示に基づいて掘削機50を制御する。
【0136】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
10 掘削システム
19 発進坑
30 情報処理装置
31 制御部
32 主記憶装置
33 補助記憶装置
34 通信部
35 出力部
351 表示部
352 スピーカ
36 入力部
37 制御盤
371 表示部
372 ジョイスティック
373 制御スイッチ
379 制御盤I/F
39 読取部
40 掘削制御装置
41 制御部
42 主記憶装置
43 補助記憶装置
44 通信部
46 掘削機I/F
47 測定I/F
471 外部センサ
472 測量装置
473 目標体
50 掘削機
51 掘削ヘッド
52 推進管
55 回転部
56 進退部
57 内部センサ
61 掘削データDB
65 学習モデル
71 施工条件欄
72 管理条件欄
73 運転状況欄
74 観測データ欄
741 振動データ欄
742 音響データ欄
748 通知欄
751 推力グラフ欄
752 回転トルクグラフ欄
753 方向グラフ欄
76 推奨操作欄
81 第1送信部
82 第2送信部
83 取得部
84 表示部
85 受付部
90 コンピュータ
96 可搬型記録媒体
97 プログラム
98 半導体メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
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