(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086454
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】細胞評価システム、細胞評価方法及び細胞評価プログラム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20230615BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230615BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/00 A
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200982
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】514020389
【氏名又は名称】TIS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小糸 直基
(72)【発明者】
【氏名】岩本 恭典
(72)【発明者】
【氏名】田中 真治
(72)【発明者】
【氏名】植村 優
(72)【発明者】
【氏名】小宮 邦夫
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA09
4B029FA11
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】細胞における遺伝子の発現状態を評価する細胞評価システムを提供する。
【解決手段】複数の培養条件で培養された細胞における、培養後の複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の遺伝子の発現の状態を取得する取得部121と、培養条件ごとに、培養前及び培養後における遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成する発現変化度生成部131と、遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、培養条件ごとに、複数のカテゴリそれぞれに含まれる遺伝子であって、発現変化度が所定の変化閾値を超えた遺伝子の種類の数を生成する遺伝子数情報生成部133と、複数のカテゴリそれぞれにおける、発現変化度が所定の変化閾値を超えた遺伝子の種類の数の、培養後の細胞の数への寄与の度合いを生成する増殖寄与度評価部135と、を備える細胞評価システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の培養条件で培養された複数の細胞における、培養後の前記複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子それぞれの発現の状態に関する発現情報を取得する取得部と、
前記発現情報に基づいて、前記複数の培養条件ごとに、前記培養前及び前記培養後における前記複数の遺伝子それぞれの前記発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成する発現変化度生成部と、
前記複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、前記複数の培養条件ごとに、前記複数のカテゴリそれぞれに含まれる前記複数の遺伝子であって、前記発現変化度が所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成する遺伝子数情報生成部と、
前記細胞数情報及び前記遺伝子数情報に基づいて、前記複数のカテゴリそれぞれにおける、前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数の、前記培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成する増殖寄与度評価部と、
を備える細胞評価システム。
【請求項2】
前記増殖寄与度評価部が、前記増殖寄与度情報に基づいて、前記複数のカテゴリごとに、前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数と前記複数の細胞の数が相関するか否かを判定する、請求項1に記載の細胞評価システム。
【請求項3】
前記複数のカテゴリのうち、前記相関があると判定された複数のカテゴリごとに、前記複数の培養条件に含まれる少なくとも2以上の培養条件において前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超えた遺伝子を、前記複数の遺伝子から抽出する遺伝子抽出部をさらに備える、請求項2に記載の細胞評価システム。
【請求項4】
前記複数のカテゴリのうち、前記相関があると判定された複数のカテゴリごとに、前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超えた遺伝子の数が所定の遺伝子数閾値を超えた培養条件を、前記複数の培養条件から抽出する培養条件抽出部をさらに備える、請求項2又は3に記載の細胞評価システム。
【請求項5】
前記複数のカテゴリが、それぞれ、複数の疾患又は複数の医療目的に対応する、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞評価システム。
【請求項6】
前記発現情報において、実質的に同一と評価される複数の遺伝子が重複する場合、前記遺伝子数情報生成部が、前記重複を取り除く、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞評価システム。
【請求項7】
前記遺伝子数情報が、前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超える前記複数の遺伝子の種類の数であり、かつ、前記培養後の遺伝子発現が所定の発現閾値を超える前記複数の遺伝子の種類の数を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞評価システム。
【請求項8】
複数の培養条件で培養される複数の細胞における、培養後の前記複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子それぞれの発現の状態に関する発現情報を取得し、
前記発現情報に基づいて、前記複数の培養条件ごとに、前記培養前及び前記培養後における前記複数の遺伝子それぞれの前記発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成し、
前記複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、前記複数の培養条件ごとに、前記複数のカテゴリそれぞれに含まれる前記複数の遺伝子であって、前記発現変化度が所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成し、
前記細胞数情報及び前記遺伝子数情報に基づいて、前記複数のカテゴリそれぞれにおける、前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数の、前記培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成することを含む、
細胞評価方法。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の培養条件で培養される複数の細胞における、培養後の前記複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子それぞれの発現の状態に関する発現情報を取得する取得部と、
前記発現情報に基づいて、前記複数の培養条件ごとに、前記培養前及び前記培養後における前記複数の遺伝子それぞれの前記発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成する発現変化度生成部と、
前記複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、前記複数の培養条件ごとに、前記複数のカテゴリそれぞれに含まれる前記複数の遺伝子であって、前記発現変化度が所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成する遺伝子数情報生成部と、
前記細胞数情報及び前記遺伝子数情報に基づいて、前記複数のカテゴリそれぞれにおける、前記発現変化度が前記所定の変化閾値を超えた前記複数の遺伝子の種類の数の、前記培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成する増殖寄与度評価部と、
を実現させるための細胞評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞評価システム、細胞評価方法及び細胞評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる培養条件で培養した細胞の遺伝子の発現状態に基づいて、遺伝子それぞれの発現状態の変化を解析し、遺伝子の機能や細胞の性質を評価する方法が知られている。例えば、特許文献1には、異なる2条件間における複数の遺伝子の発現データを対象にした多変量解析により、複数の遺伝子ごとに、当該2条件間での遺伝子発現が有意に異なることを判定する解析方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている解析方法は、遺伝子ごとに解析する方法であるため、特定の遺伝子に共通する性質に着目して解析することが困難であった。そこで、本発明は、特定の遺伝子に共通する性質に着目して、細胞における遺伝子の発現状態を評価する細胞評価システム、細胞評価方法及び細胞評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る細胞評価システムは、複数の培養条件で培養された複数の細胞における、培養後の複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子の発現の状態に関する発現情報を取得する取得部と、発現情報に基づいて、複数の培養条件ごとに、培養前及び培養後における複数の遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成する発現変化度生成部と、複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、複数の培養条件ごとに、複数のカテゴリそれぞれに含まれる複数の遺伝子であって、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成する遺伝子数情報生成部と、細胞数情報及び遺伝子数情報に基づいて、複数のカテゴリそれぞれにおける、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数の、培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成する増殖寄与度評価部と、を備える。
【0006】
本発明の一態様に係る細胞評価方法は、複数の培養条件で培養された複数の細胞における、培養後の複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子の発現の状態に関する発現情報を取得し、発現情報に基づいて、複数の培養条件ごとに、培養前及び培養後における複数の遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成し、複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、複数の培養条件ごとに、複数のカテゴリそれぞれに含まれる複数の遺伝子であって、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成し、細胞数情報及び遺伝子数情報に基づいて、複数のカテゴリそれぞれにおける、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数の、培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成する。
【0007】
本発明の一態様に係る細胞評価プログラムは、コンピュータに、複数の培養条件で培養された複数の細胞における、培養後の複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子の発現の状態に関する発現情報を取得する取得部と、発現情報に基づいて、複数の培養条件ごとに、培養前及び培養後における複数の遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成する発現変化度生成部と、複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、複数の培養条件ごとに、複数のカテゴリそれぞれに含まれる複数の遺伝子であって、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成する遺伝子数情報生成部と、細胞数情報及び遺伝子数情報に基づいて、複数のカテゴリそれぞれにおける、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数の、培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成する増殖寄与度評価部と、実現させる。
【0008】
なお、本発明において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の遺伝子に共通する性質に着目して、細胞における遺伝子の発現状態を評価する細胞評価システム、細胞評価方法及び細胞評価プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である細胞評価システムの構成を示す図である。
【
図2】遺伝子分類情報記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図3】発現情報記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図4】細胞数情報記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図5】発現変化度記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図6】遺伝子数情報記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図7】増殖寄与度情報の生成方法の例を示す図である。
【
図8】増殖寄与度情報記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図9】判定結果情報記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
【
図10】細胞評価システムにおける処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る細胞評価システム100は、複数の培養条件で培養された複数の細胞における、培養後の複数の細胞の数に関する細胞数情報、並びに培養前及び培養後の複数の遺伝子それぞれの発現の状態に関する発現情報を取得する取得部121と、発現情報に基づいて、複数の培養条件ごとに、培養前及び培養後における複数の遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いを示す発現変化度を生成する発現変化度生成部131と、複数の遺伝子を複数のカテゴリに分類した遺伝子分類情報を用意し、複数の培養条件ごとに、複数のカテゴリそれぞれに含まれる複数の遺伝子であって、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数を含む遺伝子数情報を生成する遺伝子数情報生成部133と、細胞数情報及び遺伝子数情報に基づいて、複数のカテゴリそれぞれにおける、発現変化度が所定の変化閾値を超えた複数の遺伝子の種類の数の、培養後の複数の細胞の数への寄与の度合いを示す増殖寄与度情報を生成する増殖寄与度評価部135と、を備える。
【0012】
細胞評価システム100は、インターネット等のネットワークを介してユーザ端末200及び情報処理システム300と通信可能に接続されるシステムであってもよい。細胞評価システム100は、ユーザ端末200及び情報処理システム300から、細胞の数に関する細胞数情報及び複数の細胞の複数の遺伝子の発現状態に関する発現情報、並びに遺伝子を複数のカテゴリに分類する遺伝子分類情報を取得し、複数の細胞の複数の遺伝子の発現状態を評価する。なお、以下では、特に明示しない限り、複数の細胞を「細胞」、複数の遺伝子を「遺伝子」という。
【0013】
ユーザ端末200は、ユーザが利用するコンピュータであり、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等である。ユーザ端末200は、細胞評価システム100に対し、細胞数情報及び発現情報を提供し、細胞評価システム100から、評価結果を取得する。
【0014】
ユーザは、例えば、細胞の数の計測に用いられる機器を用いて、細胞数情報を取得する。また、ユーザは、例えば、細胞の遺伝子発現状態の解析に使用される遺伝子発現解析機器を用いて、発現情報を取得する。ユーザは、取得される細胞数情報及び発現情報を、ユーザ端末200を経由して、細胞評価システム100に提供する。
【0015】
情報処理システム300は、細胞評価システム100に対し、遺伝子を複数のカテゴリに分類する遺伝子分類情報を提供する。情報処理システム300は、例えば、遺伝子に関する情報(例えば、名称、カテゴリ、塩基配列等)を統合するデータベースであってもよい。
【0016】
なお、ユーザ端末200が、細胞評価システム100に対し、遺伝子分類情報を提供してもよい。この場合、ユーザは、ユーザ端末200を用いて、例えば、遺伝子に関する情報を統合するデータベースから遺伝子分類情報を取得し、適宜加工した後、ユーザ端末200を通じて、加工済みの遺伝子分類情報を細胞評価システム100に提供してもよい。
【0017】
また、情報処理システム300が、細胞評価システム100に対し、細胞数情報及び発現情報を提供してもよい。この場合、情報処理システム300は、例えば、細胞数を計測する機器を制御する制御システムや細胞の遺伝子発現状態を解析する遺伝子発現解析機器であってもよい。例えば、細胞数情報及び発現情報は、細胞数の計測に用いられる機器や遺伝子発現解析機器を制御する情報処理システムからユーザ端末200を経由して、細胞評価システム100に提供されてもよいし、細胞数の計測に用いられる機器や遺伝子発現解析機器を制御するそれぞれの制御システムから直接、細胞評価システム100に提供されてもよい。
【0018】
細胞評価システム100は、遺伝子分類情報取得部111、遺伝子分類情報記憶部112、取得部121、発現情報記憶部122、細胞数情報記憶部123、発現変化度生成部131、発現変化度記憶部132、遺伝子数情報生成部133、遺伝子数情報記憶部134、増殖寄与度評価部135、増殖寄与度情報記憶部136、判定結果情報記憶部137、遺伝子抽出部141、培養条件抽出部142、及び出力部143を備える。細胞評価システム100を構成するコンピュータは、プロセッサ及び記憶領域を備える。細胞評価システム100の各部は、例えば、記憶領域を用いたり、記憶領域に格納されたプログラムをプロセッサが実行したりすることにより実現することができる。
【0019】
遺伝子分類情報取得部111は、遺伝子を複数のカテゴリに分類する遺伝子分類情報を、情報処理システム300から取得し、遺伝子分類情報記憶部112に格納する。なお、遺伝子分類情報取得部111は、ユーザ端末200から、遺伝子分類情報を取得してもよい。
【0020】
ここで、遺伝子分類情報は、遺伝子をカテゴリごとに分類した情報である。遺伝子は、通常、生体内で特定の機能や疾患に関与している。カテゴリは、遺伝子に対応する機能や疾患、医療目的に基づいて分類される遺伝子のグループを示す。カテゴリの名称は、例えば、「サイトカイン」、「転写因子」、「細胞周期」、「細胞接着」、「レセプター」、「リガンド」、「ホルモン」、「ミトコンドリア」、「細胞表面マーカー」、及び「分泌因子」を含む。カテゴリの組み合わせを複数用意してもよい。
【0021】
なお、カテゴリは、所定の条件にしたがって遺伝子を分類する情報であればよく、遺伝子に対応する機能や疾患に基づいて分類される情報でなくてもよい。また、1つの遺伝子が複数のカテゴリに分類されてもよい。また、遺伝子分類情報に含まれる遺伝子は、細胞に含まれる遺伝子を可能な限り網羅してもよく、また、細胞に含まれる遺伝子の一部であってもよい。
【0022】
図2は、遺伝子分類情報記憶部112に記憶される情報の例を示す。遺伝子分類情報記憶部112に記憶される情報は、例えば、遺伝子ID及びカテゴリIDを含む。遺伝子IDは、細胞に含まれる遺伝子を識別する遺伝子識別情報である。なお、遺伝子分類情報に含まれる遺伝子IDは、細胞に含まれる遺伝子を可能な限り網羅した遺伝子IDであってもよく、また、細胞に含まれる遺伝子の一部の遺伝子に対応する遺伝子IDであってもよい。
【0023】
カテゴリIDは、遺伝子を分類するカテゴリを識別するカテゴリ識別情報である。カテゴリは、遺伝子の機能に基づく分類であってもよく、また、遺伝子が関わるとされる疾患に対応する分類であってもよく、また、その他の分類であってもよい。また、1つの遺伝子IDは、複数のカテゴリIDに対応付けられてもよい。
【0024】
図1に示す取得部121は、ユーザ端末200から、複数の培養条件で培養された細胞における細胞数情報及び発現情報を取得し、それぞれ発現情報記憶部122及び細胞数情報記憶部123に格納する。なお、取得部121は、情報処理システム300から、細胞数情報及び発現情報を取得してもよい。また、取得部121は、ユーザの入力操作により、細胞数情報を取得してもよい。
【0025】
ここで、複数の培養条件は、異なる2以上の培養条件を含む。培養条件それぞれは、細胞数又は遺伝子発現の状態に変化を与えうる条件であればよく、例えば、培地の種類や成分、培養庫内の温湿度や空気中の成分、継代の回数、培養前の細胞数に関する条件であってもよい。
【0026】
細胞数情報は、複数の培養条件のそれぞれで培養される細胞における、培養後の細胞の数に関する情報である。細胞数情報は、培養後の細胞数を示す情報又は、培養前の細胞数及び培養後の細胞数の比を示す情報を含み得る。なお、細胞数情報は、細胞の数若しくは密度又はこれらの概数を示す情報を含み得る。
【0027】
発現情報は、複数の培養条件で培養される細胞における、培養前及び培養後の遺伝子それぞれの発現の状態に関する情報である。発現情報は、例えば、遺伝子それぞれに対応するRNAやDNAの量を示す蛍光強度に関する情報であってもよい。
【0028】
発現情報は、通常、細胞の遺伝子発現状態の解析に使用される遺伝子発現解析機器を用いて取得される。まず、ユーザは、所定の実験操作にしたがって細胞を処理する。その後、ユーザは、例えば、遺伝子発現解析機器を用いて、遺伝子それぞれに対応するRNAやDNAの量を示す蛍光強度を計測し、発現情報を取得する。
【0029】
ここで、遺伝子は、特定の塩基配列で示されるRNAまたはDNAだけでなく、RNA又はDNAにコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアント等)、変異体及び誘導体)をコードする遺伝子又はポリヌクレオチドを含む。
【0030】
また、DNAは、2本鎖DNA及び1本鎖DNAを含む。また、DNAは、発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含む。RNAは、2本鎖RNA及び1本鎖RNAを含む。
【0031】
なお、発現情報は、必ずしも同一の細胞それぞれの、培養前後の発現情報である必要はなく、培養前後における細胞群における遺伝子それぞれの発現の状態の情報であってもよい。また、発現情報は、遺伝子発現解析機器にて計測又は出力されるデータ自体であってもよく、また、当該データに所定の統計処理が施されたデータであってもよい。
【0032】
図3は、発現情報記憶部122に記憶される情報の例を示す図である。発現情報記憶部122に記憶される情報は、例えば、培養条件ID、遺伝子ID、培養前発現情報、培養後発現情報を含む。
【0033】
培養条件IDは、細胞の培養条件を識別する培養条件識別情報である。培養条件は、例えば、培地の種類や成分、培養庫内の温湿度や空気中の成分、継代の回数、培養前の細胞数に関する条件を含む。
【0034】
培養前発現情報は、対応する培養条件にて培養する前の発現情報である。培養後発現情報は、対応する培養条件にて培養した後の発現情報である。なお、培養前発現情報及び培養後発現情報は、必ずしも同一の細胞それぞれの発現情報である必要はなく、培養前後における細胞群における遺伝子それぞれの発現の状態の情報であってもよい。
【0035】
図4は、細胞数情報記憶部123に記憶される情報の例を示す。細胞数情報記憶部123に記憶される情報は、例えば、培養条件ID、細胞数情報を含む。
図4では、細胞数情報は、培養後の細胞数を示す。
【0036】
図1に示す発現変化度生成部131は、発現情報記憶部122に記憶される培養前発現情報及び培養後発現情報に基づいて、複数の培養条件ごとに、遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いに関する発現変化度を生成し、発現変化度記憶部132に格納する。
【0037】
ここで、発現変化度は、所定の培養条件での培養前後における、遺伝子それぞれの発現の状態の変化の度合いに関する情報であり、例えば、培養前発現情報に対する、培養後発現情報の変化割合に関する情報である。つまり、例えば、培養前発現情報が「100」、培養後発現情報が「120」の場合、発現変化度は、「120%」であってもよい。また、この場合、発現変化度は、「1.2倍」や「+20%」等であってもよい。
【0038】
図5は、発現変化度記憶部132に記憶される情報の例を示す図である。発現変化度記憶部132に記憶される情報は、例えば、培養条件ID、遺伝子ID、及び発現変化度を含む。
図5では、パーセントを用いて発現変化度が示されているが、発現変化度の形式はこれに限られない。
【0039】
図1に示す遺伝子数情報生成部133は、遺伝子分類情報記憶部112に記憶される遺伝子分類情報と、発現情報記憶部122に記憶される発現変化度と、に基づいて、複数の培養条件ごとに、複数の遺伝子のカテゴリそれぞれに含まれる遺伝子であって、発現変化度が所定の閾値(変化閾値)を超えた遺伝子の種類の数に関する遺伝子数情報を生成し、遺伝子数情報記憶部134に格納する。
【0040】
ここで、遺伝子数情報は、複数の培養条件及び複数のカテゴリごとに与えられる情報であって、培養前後で、変化閾値を超える発現状態の変化があった遺伝子の種類の数に関する情報である。例えば、ある遺伝子のカテゴリに3つの遺伝子(遺伝子A、B、C)が分類されているとき、ある培養条件において変化閾値を超える発現状態の変化があった遺伝子が遺伝子A及びBのみである場合、当該培養条件及び当該カテゴリに対応する遺伝子数情報は「2」となる。
【0041】
より具体的には、ある培養条件及びある遺伝子のカテゴリにおいて遺伝子数情報が大きい場合、当該培養条件の下での培養により、当該カテゴリに分類される遺伝子の発現が大きく変化したことを示す。一方、遺伝子数情報が小さい場合、当該培養条件の下での培養により、当該カテゴリに分類される複数の遺伝子の発現の変化が小さかったことを示す。
【0042】
ここで、変化閾値は、ユーザ端末200の操作を通じて事前に設定されていてもよく、また、ユーザ端末200の操作を通じて事前に設定された条件(例えば発現情報に連動する条件等)に基づいて、細胞評価システム100が変化閾値を算出及び設定してもよい。例えば、変化閾値は、固定的な値であってもよく、また、例えば発現情報に応じて変動する値であってもよい。これにより、ユーザの算出方針、及び、例えば発現情報に応じた、適切な種類数算出を実現することができる。
【0043】
また、遺伝子数情報生成部133は、培養後の発現が、所定の閾値(発現閾値)を超えた遺伝子の中から、複数の遺伝子のカテゴリそれぞれに含まれる遺伝子であって、発現変化度が変化閾値を超えた遺伝子の種類の数に関する遺伝子数情報を生成してもよい。これにより、遺伝子数情報生成部133は、発現が所定の閾値(発現閾値)を超えない遺伝子を、遺伝子数算出処理の対象から外すことができる。培養後の発現が所定の閾値(発現閾値)を超えない遺伝子は、発現変化度が変化閾値以上であっても、細胞の数への寄与は小さいとみなし得る。
【0044】
また、遺伝子数情報生成部133は、発現情報記憶部122において、実質的に同一と評価される複数の遺伝子が重複する場合、当該重複を取り除いてもよい。例えば、遺伝子数情報生成部133は、実質的に同一と評価される複数の遺伝子に関する複数の発現情報が含まれる場合に、当該複数の発現情報が、後述する増殖寄与度情報に与える影響を取り除くように、補正処理を施した上で、遺伝子数情報を生成してもよい。
【0045】
実質的に同一と評価される複数の遺伝子は、例えば、異なる染色体上に位置するものの、実質的に機能や名称が同一である遺伝子を含み、例えば、性染色体上の遺伝子を含む。発現情報記憶部122に記憶される発現情報に、実質的に同一と評価される複数の遺伝子それぞれに対応する複数の発現情報が含まれる場合、補正処理を施さずに遺伝子数情報を生成すると、当該実質的に同一と評価される複数の遺伝子の複数の発現情報が多重に評価されるおそれがある。その結果、適切な評価結果が算出されないおそれがある。これに対し、遺伝子数情報生成部133は、補正処理を施すことにより、当該多重評価を避けることが可能である。
【0046】
ここで、補正処理は、例えば、実質的に同一と評価される複数の遺伝子における複数の発現情報の平均値を、当該実質的に同一と評価される複数の遺伝子の発現情報とする処理であってもよく、また、実質的に同一と評価される複数の遺伝子における複数の発現情報の最大値を当該実質的に同一と評価される発現情報とする処理であってもよい。
【0047】
なお、実質的に同一と評価される複数の遺伝子に関する複数の発現情報が含まれる場合は、当該実質的に同一と評価される複数の遺伝子が性染色体上の遺伝子である場合に起こり得るが、これに限られない。
【0048】
図6は、遺伝子数情報記憶部134に記憶される情報の例を示す図である。遺伝子数情報記憶部134に記憶される情報は、例えば、培養条件ID、カテゴリID、及び遺伝子数情報を含む。
【0049】
図1に示す増殖寄与度評価部135は、細胞数情報記憶部123に記憶される細胞数情報及び遺伝子数情報記憶部134に記憶される遺伝子数情報に基づいて、複数のカテゴリそれぞれにおける、遺伝子数情報の、細胞数情報への寄与の度合いに関する増殖寄与度情報を生成し、増殖寄与度情報記憶部136に格納する。
【0050】
ここで、増殖寄与度情報は、遺伝子数情報に対応する遺伝子の種類の数が与える、細胞増殖への寄与の度合いに関する情報である。増殖寄与度情報は、例えば、複数のカテゴリそれぞれにおける遺伝子数情報及び細胞数情報の相関係数であってもよく、また、複数のカテゴリそれぞれにおける遺伝子数情報及び細胞数情報を対象とする回帰分析によって算出される決定係数や回帰直線の傾きであってもよい。
【0051】
図7を参照して、増殖寄与度情報の生成方法の例を説明する。
図7は、3つの培養条件ごとに、横軸に遺伝子数情報を、縦軸に細胞数情報をプロットした散布図の例である。点701(701a、702b、703c)は、それぞれの培養条件での遺伝子数情報及び細胞数情報を示す。直線702は、点701を対象とする回帰分析によって算出される回帰直線を示す。増殖寄与度情報は、例えば、遺伝子数情報及び細胞数情報の相関係数であってもよく、また、回帰分析によって算出される決定係数や直線702の傾きであってもよい。なお、回帰分析の手法は、線形回帰であってもよいし、他の手法であってもよい。
【0052】
また、
図1に示す増殖寄与度評価部135は、増殖寄与度情報に基づいて、複数のカテゴリごとに、遺伝子数情報及び細胞数情報に相関があるか否かを判定し、判定結果に関する判定結果情報を判定結果情報記憶部137に格納することができる。この場合、増殖寄与度評価部135は、増殖寄与度情報が示す相関係数や決定係数に基づいて、それぞれ所定の値を超える相関係数や決定係数を与える場合に、遺伝子数情報及び細胞数情報に相関があると判定することができる。
【0053】
ここで判定結果情報は、遺伝子数情報及び細胞数情報に相関があるか否かに関する、複数のカテゴリごとの判定結果に関する情報である。判定結果情報は、例えば、「相関あり」及び「相関なし」を含む。なお、判定結果情報は、例えば、「1」及び「0」を用いて、「相関あり」及び「相関なし」を示してもよいし、他の形式であってもよい。
【0054】
なお、所定の相関係数や決定係数は、ユーザ端末200の操作を通じて、又は、細胞評価システム100のシステム管理者によって、事前に設定されていてもよく、また、遺伝子数情報及び細胞数情報に基づく統計処理によって、設定されてもよい。
【0055】
図8は、増殖寄与度情報記憶部136に記憶される情報の例を示す。増殖寄与度情報記憶部136に記憶される情報は、例えば、カテゴリID、及び増殖寄与度情報を含む。増殖寄与度情報は、例えば、複数のカテゴリのそれぞれにおける、遺伝子数情報及び細胞数情報の相関係数に関する相関係数情報、遺伝子数情報及び細胞数情報を対象とする回帰分析によって算出される、決定係数に関する決定係数情報又は回帰直線の傾きに関する傾き情報を含む。
【0056】
図9は、判定結果情報記憶部137に記憶される情報の例を示す。判定結果情報記憶部137に記憶される情報は、例えば、カテゴリID、及び判定結果情報を含む。当該情報は、複数のカテゴリのそれぞれにおいて、遺伝子数情報と細胞数情報の相関関係があったか否かを示す。
【0057】
図1に示す遺伝子抽出部141は、増殖寄与度評価部135において相関があると判定される複数のカテゴリごとに、複数の培養条件に含まれる少なくとも2以上の培養条件において、発現変化度が変化閾値を超えた遺伝子を複数の遺伝子から抽出する。
【0058】
遺伝子抽出部141による抽出処理について詳述する。遺伝子数情報生成部133によって生成される遺伝子の種類数は培養条件それぞれで異なりうるが、発現変化度が変化閾値を超えた遺伝子(つまり、遺伝子数情報としてカウントされる遺伝子)の中には、少なくとも2以上の培養条件間で共通する遺伝子が含まれうる。そして、相関があると判定されるカテゴリに分類される遺伝子のいずれかが細胞増殖に関与していると考えられることから、当該カテゴリに分類され、少なくとも2以上の培養条件間で共通する遺伝子は、細胞増殖に関与しているとみなし得る。
【0059】
よって、遺伝子抽出部141は、少なくとも2以上の培養条件に共通して発現状態の変化が見られる遺伝子であり、細胞増殖に寄与しているとみなし得る遺伝子を抽出する。
【0060】
培養条件抽出部142は、増殖寄与度評価部135において相関があると判定される複数の遺伝子のカテゴリごとに、複数の培養条件から、遺伝子数情報が所定の閾値(遺伝子数閾値)を超えた培養条件を抽出する。
【0061】
相関があると判定される遺伝子のカテゴリでは、遺伝子数情報が大きいほど、細胞数情報が大きくなる(負の相関では、遺伝子数情報が大きいほど、細胞数情報が小さくなる)。そのため、相関があると判定されるカテゴリにおいて、遺伝子数情報が遺伝子数閾値を超えた培養条件は、細胞増殖に適した培地条件であると推測することができる。
【0062】
したがって、培養条件抽出部142は、遺伝子数情報に基づいて、相関があると判定されるカテゴリに対応する遺伝子数が遺伝子数閾値を超えた培養条件、すなわち、細胞増殖に適した培養条件を複数の培養条件の中から抽出することができる。
【0063】
また、遺伝子分類情報が、複数の疾患それぞれに関係する遺伝子を、複数の疾患それぞれに対応する複数のカテゴリそれぞれに分類する場合、培養条件抽出部142は、複数の疾患それぞれに関係する遺伝子に関する遺伝子数情報であって、遺伝子数情報が遺伝子数閾値を超えた培養条件を抽出する。
【0064】
相関があると判定されるカテゴリGrにおいて、ある培養条件Cに対応する遺伝子数情報が大きいほど、培養条件Cにおいて、当該カテゴリに分類される遺伝子が強く発現していると考えることができる。ここで、例えば、分泌因子群Xが特定の疾患Dへの治療効果があると考えられ、カテゴリGrに分泌因子群Xが分類されている場合、培養条件Cで培養される細胞は、分泌因子群Xの発現が高いと考えられることから、培養条件Cで培養される細胞は、疾患Dへの治療効果が高いと評価することができる。
【0065】
したがって、培養条件抽出部142は、複数のカテゴリそれぞれに対応する複数の疾患それぞれへの治療効果が高いことが期待される培養条件を抽出することができる。
【0066】
なお、遺伝子数閾値は、ユーザ端末200の操作を通じて、又は、細胞評価システム100のシステム管理者によって、事前に設定されていてもよく、また、遺伝子数情報及び細胞数情報に基づく統計処理によって、設定されてもよい。
【0067】
出力部143は、遺伝子抽出部141において抽出された遺伝子を示す情報(例えば、遺伝子ID)をユーザ端末200に出力する。また、出力部143は、培養条件抽出部142において抽出された培養条件を示す情報(例えば、培養条件ID)をユーザ端末200に出力する。
【0068】
図10は、細胞評価システム100における処理の例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、細胞評価システム100は、ユーザ端末200又は情報処理システム300から、遺伝子分類情報を取得する(S1001)。次に、細胞評価システム100は、ユーザ端末200又は情報処理システム300から、発現情報及び細胞数情報を取得する(S1002)。なお、細胞評価システム100は、遺伝子数情報の生成時までに遺伝子分類情報を取得すればよく、また、増殖寄与度情報の生成時までに細胞数情報を取得すればよい。
【0070】
続いて、細胞評価システム100は、発現情報に基づいて、発現変化度を生成する(S1003)。細胞評価システム100は、発現変化度及び遺伝子分類情報に基づいて、遺伝子数情報を生成する(S1004)。さらに、細胞評価システム100は、遺伝子数情報及び細胞数情報に基づいて、増殖寄与度情報を生成する(S1005)。
【0071】
そして、細胞評価システム100は、増殖寄与度情報に基づいて、少なくとも2以上の培養条件に共通して発現状態の変化が見られる遺伝子を抽出し、抽出される遺伝子を示す情報をユーザ端末200に出力する(S1006)。また、細胞評価システム100は、増殖寄与度情報に基づいて、遺伝子数情報が遺伝子数閾値を超えた培養条件を抽出し、抽出される培養条件を示す情報をユーザ端末200に出力する(S1007)。なお、遺伝子の抽出・出力及び培養条件の抽出・出力は、独立した処理であり、両者の処理の順番は問わない。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明した。細胞評価システム100は、遺伝子分類情報及び発現変化度に基づいて生成される遺伝子数情報に基づいて、増殖寄与度情報を生成することができる。これにより、細胞評価システム100は、複数のカテゴリごとに、複数のカテゴリそれぞれに含まれる遺伝子の、細胞の増殖に対する寄与の度合いを算出することができる。
【0073】
また、細胞評価システム100は、増殖寄与度情報に基づいて、遺伝子数情報及び細胞数情報に相関があるか否かを判定することができる。これにより、細胞評価システム100は、細胞増殖に寄与すると考えられるカテゴリを特定することができる。
【0074】
また、細胞評価システム100は、遺伝子数情報及び細胞数情報に相関があると判定される場合、カテゴリごとに、発現変化度が所定の閾値(変化閾値)を超えた遺伝子を抽出することができる。これにより、細胞評価システム100は、細胞増殖に寄与すると考えられる遺伝子を、カテゴリに分類される遺伝子の中から特定することができる。
【0075】
また、細胞評価システム100は、遺伝子数情報及び細胞数情報に相関があると判定される場合、遺伝子数情報が所定の閾値(遺伝子数閾値)を超えた培養条件を抽出することができる。これにより、細胞評価システム100は、細胞増殖に適した培養条件や、カテゴリに含まれる遺伝子の発現に適した培養条件を特定することができる。
【0076】
また、細胞評価システム100は、遺伝子数情報の生成の際に、実質的に同一と評価される複数の遺伝子に関する複数の発現情報が増殖寄与度情報に与える影響を取り除くように、当該複数の発現情報を補正処理することができる。これにより、細胞評価システム100は、発現情報に実質的に同一と評価される複数の遺伝子に関する複数の発現情報が含まれる場合であっても、適切に増殖寄与度情報を生成することができる。
【0077】
また、細胞評価システム100は、遺伝子数情報の生成の際に、培養後の遺伝子発現の状態が所定の閾値(発現閾値)を超える複数の遺伝子の中から、発現変化度が所定の閾値(変化閾値)を超える複数の遺伝子を抽出し、遺伝子数情報を生成することができる。これにより、細胞評価システム100は、細胞の数への寄与が小さいとみなし得る遺伝子を評価の対象から外すことができる。
【0078】
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
100 細胞評価システム、111 遺伝子分類情報取得部、112 遺伝子分類情報記憶部、121 取得部、122 発現情報記憶部、123 細胞数情報記憶部、131 発現変化度生成部、132 発現変化度記憶部、133 遺伝子数情報生成部、134 遺伝子数情報記憶部、135 増殖寄与度評価部、136 増殖寄与度情報記憶部、137 判定結果情報記憶部、141 遺伝子抽出部、142 培養条件抽出部、143 出力部、200 ユーザ端末、300 情報処理システム