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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086455
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】裁断機および裁断機における表示方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/00 20060101AFI20230615BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20230615BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20230615BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B26F1/00 G
B26F1/40 B
B26D7/01 F
B23Q17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200983
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】391003048
【氏名又は名称】曙機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】板倉 鉱太
【テーマコード(参考)】
3C021
3C029
3C060
【Fターム(参考)】
3C021BB09
3C029FF06
3C060AA04
3C060AA06
3C060BA03
3C060BB08
3C060BD01
3C060BE09
3C060BG07
(57)【要約】
【課題】被裁断材の特性などに応じて刃高などを含めて様々なパラメータの値を設定するとき、作業者が正確に条件設定を行える可動盤を提供する。
【解決手段】作業者が入力設定可能な裁断関連パラメータを画面右半分に表示し、裁断関連パラメータに応じた構成部材のイメージを表す刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INを、画面左側半分に表示する。そして、裁断関連パラメータの数値に基づいて演算されるワーク切残しG1、上限目標位置G2を表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と、
固定盤に対して相対的に上下方向に移動可能な可動盤と、
前記固定盤または前記可動盤に取り付けられる刃型の刃高と、前記刃型と対向するように前記可動盤または前記固定盤に取り付けられる刃当板の厚さとを少なくとも含む裁断関連パラメータの値を、画面に表示する表示処理部と、
前記裁断関連パラメータの値を入力可能な入力操作部とを備え、
前記表示処理部が、裁断位置における前記刃型およびその周辺部の断面または側面模式図(以下、刃型周辺模式図等という)を、裁断関連パラメータの値とともに表示可能であることを特徴とする裁断機。
【請求項2】
前記固定盤または可動盤に取り付けられる前記刃型の搭載面に搭載され、前記可動盤の前記固定盤への移動を規制するストッパーをさらに備え、
前記表示処理部が、前記ストッパーを含めた刃型周辺模式図等を表示することを特徴とする請求項1に記載の裁断機。
【請求項3】
前記表示処理部が、刃型周辺模式図等に表示される各部材のイメージを、実際の各部材の間のスケール関係とは異なるスケール関係で、表示することを特徴とする請求項1に記載の裁断機。
【請求項4】
前記表示処理部が、前記刃型周辺模式図等の中で、前記刃型の刃先および前記刃当板の対向部分を表す拡大断面または側面模式図(以下、拡大模式図等という)を、前記刃型周辺模式図等とともに表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の裁断機。
【請求項5】
前記表示処理部が、拡大模式図等に表示される各部材のイメージを、少なくとも上下方向に沿った実際の各部材の間のスケール関係と等しいまたは略等しいスケール関係で、表示することを特徴とする請求項4に記載の裁断機。
【請求項6】
前記表示処理部が、前記裁断関連パラメータの値を変更する入力操作に応じて、刃型周辺等の中で変更対象パラメータに応じた構成部材イメージを、変更量に合わせて変えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の裁断機。
【請求項7】
前記表示処理部は、刃型周辺模式図等に表される各構成部材のイメージをそれぞれ異なる色で表示し、各構成部材のイメージに対応した裁断関連パラメータの入力枠を、同色で表示することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の裁断機。
【請求項8】
被裁断材の切り残し量または前記刃当板への前記刃型の刃先食い込み量を、入力された裁断関連パラメータの値に基づいて演算する演算処理部をさらに備え、
前記表示処理部が、演算された値を、前記刃型周辺模式図等とともに表示することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の裁断機。
【請求項9】
固定盤または可動盤に取り付けられる刃型の刃高と、前記刃型と対向するように前記可動盤または前記固定盤に取り付けられる刃当板の厚さとを少なくとも含む裁断関連パラメータの値を、画面に表示する方法であって、
裁断位置における前記刃型およびその周辺部の断面または側面模式図(以下、刃型周辺模式図等という)を、裁断関連パラメータの値とともに表示することを特徴とする裁断機における表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートやフィルムなどを刃型によって型抜き可能な裁断機に関し、特に、裁断時において、刃高などのパラメータを画面表示して調整可能な裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムや樹脂シートなどの素材を型抜きする裁断機では、固定盤もしくは上下方向に移動可能な可動盤に対し、トムソン刃型などの刃型が設置される。そして、可動盤を固定盤に向けて移動させ、被裁断材を刃型と固定盤との間で挟みこむことによって型抜きする(例えば特許文献1参照)。
【0003】
刃型は、樹脂フィルム、ゴム、ウレタンフォームなど裁断対象となる素材によって異なる。そのため、素材に合わせて刃型を交換し、刃高の調整を行って裁断する(例えば、特許文献2参照)。そこでは、刃高データに基づいて可動盤の上下方向移動範囲を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-157906号公報
【特許文献2】特開2001-162590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
裁断機による型抜きでは、被裁断材の必要部分を切断する全抜きだけでなく、基材にシール材料を積層させた素材などに対し、ハーフカットの裁断も行われる。この場合、刃高や、刃先が当たる刃当板の厚さなどをパラメータとして入力し、刃の当て板に対する食い込み量、あるいは、ハーフカット素材における基材厚さに応じた切り残し量などを演算する必要がある。
【0006】
上記演算は、パラメータの数に応じて数値入力が煩雑化し、誤った演算処理が行われる恐れがある。しかしながら、作業者の熟練度などによって、入力処理による演算処理結果について、適正か否かの判断が難しい。
【0007】
したがって、被裁断材の特性などに応じて、刃高などを含めて様々なパラメータの値を設定するとき、作業者が正確に条件設定を行える裁断機を提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様である裁断機は、固定盤と、固定盤に対して相対的に上下方向に移動可能な可動盤と、固定盤または可動盤に取り付けられる刃型の刃高と、刃型と対向するように可動盤または固定盤に取り付けられる当て板の厚さとを少なくとも含む裁断関連パラメータの値を、画面に表示する表示処理部と、裁断関連パラメータの値を入力可能な入力操作部とを備える。
【0009】
そして、表示処理部は、裁断位置における刃型およびその周辺部の断面または側面模式図(ここでは、以下、刃型周辺模式図等という)を、裁断関連パラメータの値とともに表示可能である。ここで、「裁断位置」とは、刃型が被裁断材に対して全抜きあるいはハーフカットするときに刃が被裁断材を裁断する(型抜きする)刃型位置を表す。例えば、表示処理部は、固定盤または可動盤に取り付けられる前記刃型の搭載面に搭載され、前記可動盤の前記固定盤への移動を規制するストッパーを含めた刃型周辺模式図等を表示することができる。
【0010】
表示処理部は、刃型周辺模式図等に表示される各部材のイメージを、少なくとも上下方向に沿った実際の各部材の間のスケール関係と等しいまたは略等しいスケール関係で、表示することができる。あるいは、表示処理部は、実際の各部材の間のスケール関係とは異なるスケール関係で、表示することが可能である。ここで、「スケール関係」とは、実際の各部材間の相対的なサイズ、長さの違いを比や差など量的に表される関係を示す。例えば、表示処理部は、ライナーなど刃(刃高)と比べて非常に薄い(厚さがあまりない)部材に対し、認識しやすいように、実際の部材間のスケール関係とは異なるように表示することができる。
【0011】
さらに表示処理部は、前記刃型周辺模式図等の中で、前記刃型の刃先および前記刃当板の対向部分を表す拡大断面または側面模式図(ここでは、拡大模式図等という)を、前記刃型周辺模式図等とともに表示することが可能である。例えば、表示処理部は、拡大模式図等に表示される各部材のイメージを、少なくとも上下方向に沿った実際の各部材の間のスケール関係と等しいまたは略等しいスケール関係で、表示することができる。
【0012】
本発明の他の一態様である裁断機における表示方法は、固定盤または可動盤に取り付けられる刃型の刃高と、刃型と対向するように可動盤または固定盤に取り付けられる当て板の厚さとを少なくとも含む裁断関連パラメータの値を、画面に表示する方法であって、裁断位置における刃型およびその周辺部の断面または側面模式図を、裁断関連パラメータの値とともに表示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被裁断材の特性などに応じて刃高などを含めて様々なパラメータの値を設定するとき、作業者が正確に条件設定を行える可動盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態である裁断機の概略的構成図である。
図2】本実施形態である裁断機本体の概略的平面図である。
図3】裁断時のモニタ画面を示した図である。
図4】モニタにおける数値入力画面を示した図である。
図5A】モニタにおける数値変更時の画面を示した図である。
図5B】モニタにおける数値変更時の画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態である裁断機の概略的構成図である。裁断機100は、裁断機本体110と、裁断機本体110の可動盤などを駆動する駆動部120と、裁断機本体110の動作制御を行う制御部140と、表示処理部142と、タッチパネル160を設けたモニタ150とを備えている。作業者は、裁断機本体110に被裁断材を搭載し、モニタ150のタッチパネル160を操作しながら裁断を行う。
【0016】
図2は、裁断機本体110の概略的平面図である。
【0017】
裁断機本体110は、固定盤10と可動盤20とを備え、ここでは上方にある固定盤10に対し、下方にある可動盤20が上下方向に移動するように構成されている。裁断機本体110は、油圧式裁断機として構成可能であり、可動盤20は、図示しない油圧シリンダによって上下方向に往復移動し、駆動部120によって駆動される。
【0018】
可動盤20の上面には、裁ち台30が載置され、PETフィルムなどから成る当て板(以下、全面ライナーという)40Bがその上に設置されている。全面ライナー40Bの表面には、被裁断材Pの型抜きを行う刃型50が設置可能である。刃型50は、ベースとなるベニヤ板などの板材51に対し、型抜き箇所に合わせて埋め込まれた2次元状の刃52を備え、刃先52Mまで含め所定の高さに定められている。刃型50は、例えばトムソン刃型で構成される。なお、刃52の周囲を、スポンジなどの弾性発泡体(跳ね出し)によって包む構成としてもよい。
【0019】
裁断時、刃型50の表面に被裁断材Pが設置される。被裁断材Pとしては、様々な素材が適用可能であり、合成樹脂製シート、樹脂フィルムなどの各種フィルム、セロハン、フェルト、ゴム、ウレタンフォーム、スポンジ、あるいはガラス繊維などが適用可能である。刃型50のサイズは、被裁断材Pのサイズに合わせて成形されている。
【0020】
そして、被裁断材Pの上に、刃型50と対向するように当て板(以下、刃当板という)40Aが搭載される。刃当板40Aは、全抜きによる裁断にはPP板、ハーフカットの裁断にはPETフィルムなどが用いられる。
【0021】
可動盤20の上に搭載された裁ち台30は、固定盤10に対し、上下方向とともに水平方向に平行移動可能である。作業者は、固定盤10から離れた位置(ここでは紙面手前側)に搬送させた裁ち台30に対し、刃型50を全面ライナー40Bに固定し、被裁断材Pを刃型50の上に載せ、そして、刃当板40Aを被裁断材Pの上に載せる。作業者が図示しない押しボタンスイッチに対し操作を行うと、裁ち台30は固定盤10の真下に移動した後、あらかじめ定められた裁断位置に向けて上昇する。
【0022】
裁断機100は、ここでは圧抜きによる裁断を行うように構成されている。裁断機本体110は、可動盤20の固定盤10にかかる圧力を測定するセンサ(図示せず)を備え、設定圧力に達すると可動盤20の上昇を終了させる。また、裁断機100は、可動盤20の上下方向位置を計測する位置センサ(図示せず)を備え、所定位置に達した時に可動盤20の上昇を停止させるリミット抜きを行うこともできる。
【0023】
全面ライナー40Bには、一対のストッパー60が刃型50の両側に設けられている。ストッパー60は、刃型50が裁断位置を超えて固定盤10へ近づくのを規制する部材であり、可動盤20の上昇によってストッパー60が固定盤10に当接すると、可動盤20の更なる上昇は制限され、裁断位置で停止する。
【0024】
ストッパー60は、ここでは棒状部材で構成され、可動盤20の搬送方向(紙面垂直方向)に沿って配置されている(なお、以下ではストップバーともいう)。ストッパー60は、縦横の長さが異なる矩形の断面形状を有する。
【0025】
本実施形態では、作業者がユーザーインターフェイスの優れたモニタ150の表示画面を見ながら、裁断時に必要なパラメータ値を設定し、被裁断材Pの切り残し量など裁断に必用な情報を確認およびイメージしながら、裁断することができる。表示処理部142は、入力操作に応じてこのような表示画面をモニタ150に表示する処理を行う。以下、図3~5を用いて、モニタ150の画面表示について説明する。
【0026】
図3は、裁断時のモニタ画面を示した図である。
【0027】
モニタ150の画面150Sでは、刃高、刃当板40A(図2参照)の厚さなど、裁断に関連するパラメータ(以下、裁断関連パラメータという)が、画面右側半分に表示される。一方、画面150Sの左側半分では、刃型50、刃当板40A、固定盤10、ストップバー60など、刃型50およびその周囲の部材を示す模式図(以下、刃型周辺模式図という)IMが表示される。
【0028】
上述したように、作業者は、モニタ150に対してタッチパネル操作可能であり、裁断関連パラメータを入力することができる。具体的には、作業者は、刃当板40Aの厚さ、刃型50の刃高、ストップバー60の上下方向高さ(厚さ)、そして、裁ち台30に設置されてその上に刃型50およびストップバー60が搭載される全面ライナーの値を、画面上で入力することができる。
【0029】
さらに作業者は、全面ライナー40Bの上で刃型50と対向するように設置されるライナー(以下、刃型ライナーという)、ストップバー60と全面ライナー40Bとの下部に設置されるライナーの値を入力することが可能である。これらライナーは、図2において図示しておらず、上下方向の刃型50およびストップバー60の高さ微調整用に設置される。
【0030】
図3では、刃当板40Aの厚さ、刃型50の刃高、刃型ライナーの厚さ、ストップバー60の上下方向の高さ(厚さ)、ストップバー60の下部に設置されるライナーの厚さ、そして全面ライナー40Bの厚さが表示される枠を、それぞれ符号A、B、C、D、E、Fで表している。
【0031】
一方、刃型周辺模式図IMは、画面右側に表示される裁断関連パラメータの設定対象となる部材を表示した模式図であり、ここではストップバー60の並ぶ方向(被裁断材Pの長手方向)に沿った断面模式図となる。刃型周辺模式図IMでは、刃型50のイメージを表示するととともに、ストップバー60や刃当板40Aなど、裁断位置、すなわち可動盤20が上昇してストップバー60が固定盤10と当接する位置において刃型50の周囲にある部材のイメージも表示した断面模式図となる。
【0032】
具体的に説明すると、刃型50の刃52の一部断面を一本刃状にして表し、その周囲の板材51も合わせて断面模式図に表示している。そして、ストップバー60の断面模式図を隣り合わせに表示している。被裁断材Pは、ここでは表示していない。
【0033】
図3では、刃型50、刃先52M、板材51、ストップバー60、全面ライナー40Bのイメージを、それぞれ符号50I、52MI、51I、60I、62Iで示している。また、固定盤10、刃当板40Aのイメージを10I、40I、図2では図示していない刃型ライナーおよびストップバー60下部に設けられたライナーのイメージを、それぞれ符号61I、63Iで示している。
【0034】
刃型周辺模式図IMは、刃型50およびストップバー60を含めた裁断位置における刃型50の周囲の部材との間で成り立つスケール比、すなわち相対的な長さの比や差、サイズなどの大小を量的に表した関係(スケール関係)を、実際とは異なるように表示した模式図であり、少なくとも上下方向に沿ってスケールの関係が異なる模式図を描いている。したがって、作業者は、入力操作をする必要のある部材であるが、刃型50の刃高、ストップバー60の厚さなどと比べて非常に薄い刃型ライナー、全面ライナーなどを、刃型周辺模式図IMによって、その相対的位置関係も含めて認識することができる。
【0035】
刃型周辺模式図IMの隣には、刃52のイメージ52I部分を拡大した拡大模式図INが表示される。拡大模式図INには、刃先52Mのイメージ52MIとともに、刃当板40A、固定盤10のイメージ40I、10Iが表示される。拡大模式図INでは、刃型周辺模式図IMと異なり、実際の各部材の長さや厚さなどのスケールの関係が、少なくとも上下方向に沿って実質的に維持されたイメージが表示される。その結果、刃先52M、刃当板40Aなど各部材間の相対的な厚さの違いが、そのままイメージとして表示される。
【0036】
刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INにおいて、各部材のイメージは異なる色で表示される。ここでは、刃52、板材51、ストップバー60のイメージ52I、51I、60Iを、それぞれ、赤色、茶色、青色で表示している。また、刃型ライナー、全面ライナー、ストップバー60下部のライナーのイメージ61I、62I、63Iを、それぞれ水色、白色、桃色で表示し、固定盤10、刃当板40Aのイメージ10I、40Iを、それぞれ灰色、黄色によって表示している。
【0037】
一方、画面右側では、刃当板40Aの厚さ、刃型50の刃高、刃型50ライナーの厚さ、ストップバー60の上下方向高さ(厚さ)、ストップバー60の下部に設置されるライナーの厚さ、そして全面ライナーの値がそれぞれ枠A、B、C、D、E、Fに表示されるが、枠A、B、C、D、E、Fは、左側の刃型周辺模式図IMにおいて表示されている対応構成部材と同色で表示される。
【0038】
刃型周辺模式図IMの下には、被裁断材Pの切り残し量(厚さ)、あるいは、刃先52Mの刃当板40Aの切り込み量(厚さ)が、「ワーク切り残し」という表記で表示される(符号G1参照)。また、ストップバー60、ストップバー60用のライナー、全面ライナー40Bの厚さの合算値である「上限目標位置」が表示される(符号G2参照)。ワーク切り残し、上限目標位置は、右側に表示された裁断関連パラメータの数値に基づいて自動演算され、表示される。これら自動演算は、演算部145(図1参照)によって実行される。例えば、刃当板40Aの厚さ0.250mm、刃型ライナーの厚さ0.250mm、全面ライナーの厚さ0.250mm、刃高23.600mm、ストップバーの高さ(厚さ)23.650mm、ストップバー60下方のライナーの厚さ0.500mmの場合、ワーク切り残し量は、0.050mmとなり、また、上限目標位置は24.40mmとなる。
【0039】
図4は、モニタにおける数値入力画面を示した図である。
【0040】
作業者が、例えば数値設定変更対象となる裁断関連パラメータの枠をタッチすると、特定の裁断関連パラメータの値を入力設定可能な入力設定画面GIが表示される。入力設定画面GIは、電卓と同様の数字配列を表示したイメージであり(テンキー表示)、その右側には、過去に設定された数値あるいは規格化された数値など、裁断時に頻繁に使用されるカスタム値DBが一覧表示される。作業者は、テンキーに対する入力操作、あるいはカスタム値DBからの数値選択操作によって、裁断関連パラメータの値を変更可能である。
【0041】
数値入力の間、刃型周辺模式図IMでは、入力対象の部材イメージが点滅表示される。図4では、ストップバー60の入力設定画面を示している。例えば、作業者が、ハーフカット、全抜きによる裁断に合わせてストップバー60の厚さ(高さ)を変えた後、それに合わせてストップバー60の高さの数値を変更する。
【0042】
図5A図5Bは、モニタにおける数値変更時の画面を示した図である。ここでは、刃当板40Aの厚さ変更時の画面を示している。
【0043】
作業者が、刃当板40Aの厚さとしてあらかじめ入力されている値を変更するため、カスタム値DBの中から選び、入力する操作を行うと、刃型周辺模式図IM、拡大模式図INにおいて、刃当板40Aのイメージ40Iが、厚さ変更に合わせたイメージに変更される(図5(B)参照)。ここでは、刃当板40Aが厚くなるように変更されたことにより、刃当板40Aの厚さ変更によって刃先52Mが刃当板40Aに食い込むことが、刃先52Mおよび刃当板40Aのイメージ52MI、40Iから認識される。拡大模式図INでは、各部材間のスケールの関係が、数値変更前、数値変更後における数値に合うように維持されている。
【0044】
そして、ワーク切り残しの値G1も、刃当板40Aの数値変更に合わせて自動的に修正される。例えば、上記のワーク切り残し量「0.050」mmが算出された上記裁断関連パラメータの値に対し、刃当板40Aの厚さが「0.25」mmから「0.5」mmに変更されて刃先52Mが刃当板40Aに食い込む場合、刃先52Mが刃当板40Aに食い込むためにマイナス表記となり、「―0.200」mmとなる。他の裁断関連パラメータについても数値変更の入力操作が行われると、ワーク切り残しの値G1および上限目標位置G2が自動的に変更される。
【0045】
作業者は、様々な裁断関連パラメータの設定値をメモリなどに保存することが可能であり、必要に応じて読み出して画面に反映させることができる。制御部140は、これら条件設定の保存、読み出しを、プログラム管理機能と連動させて行う。
【0046】
このように本実施形態によれば、作業者が入力設定可能な裁断関連パラメータが、画面右半分に表示される一方、裁断関連パラメータに応じた構成部材のイメージを表す刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INが、画面左側半分に表示される。そして、裁断関連パラメータの数値に基づいて演算されるワーク切り残しG1、上限目標位置G2が表示される。
【0047】
実際の刃型50およびその周囲の構成部材に関する刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INをモニタ150に表示することにより、作業者は、入力設定対象となっている部材およびそれらの相対的位置関係、厚さや長さの違いなどを、全体的に把握することが容易となり、正確に条件設定を行うことができる。また、拡大模式図INを表示することにより、全抜きまたはハーフカット時の刃先52Mの食い込み量あるいは被裁断材Pの切り残し量を容易に把握することができる。
【0048】
さらに、裁断関連パラメータの値を変更する操作を行ったとき、拡大模式図INにおいて対応する部材のイメージが変更量に合わせて変化するため、作業者は数値の違いによって被裁断材Pの切り残し量などがどのように変化するか認識することが容易となる。特に、刃高、刃当板40Aの厚さを変更する入力操作を行ったとき、被裁断材Pの切り残し量あるいは刃先52Mの食い込み量がどのように変わるか容易に認識することができる。
【0049】
本実施形態では、被裁断材Pの切り残し量、上限目標位置を自動演算するとともに、管理プログラムと連動して条件設定値やその条件時の刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INを記録、保存し、必要に応じて読み出すことができる。刃型交換の都度、条件設定が変わるためにパラメータ入力が必要となるが、管理プログラムと連動してパラメータ値の保存、読出しを行うことにより、次回刃型交換時における条件設定の再現が容易となる。
【0050】
また、カスタム値DBを表示することにより、入力間違えなどを防ぐことができる。さらに、刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INのイメージの色と、それに対応するパラメータ値が表示される枠の色を同色にしているため、誤って他の部材に対して数値入力変更するといったミスを防ぐことができる。
【0051】
刃型周辺模式図IMは、刃型50および両側のストップバー60全体を表示する模式図としてもよい。これに合わせて、上述した裁断関連パラメータ以外のパラメータを設定するように構成することも可能である。また、刃型周辺模式図IMおよび拡大模式図INを断面図として表示する代わりに、側面模式図として表示してもよい。また、刃型周辺模式図および拡大模式図(あるいは側面図)のいずれか一方を表示するように構成してもよい。
【0052】
上述した表示画面は、ファームウェアなどのプログラマブルな論理回路によって構成してもよく、また、タブレットなどの端末によって表示処理および画面表示を行ってもよい。ストッパーに関しては、別の場所に設ける、あるいは設けない構成にしてもよい。また、固定盤に刃型を設置する構成にすることも可能である。裁断機本体110については、上方に可動盤、下方に固定盤を設ける構成にしてもよい。これらの構成に合わせ、刃型周辺模式図および拡大模式図を表示すればよい。
【符号の説明】
【0053】
100 裁断機
110 裁断機本体
142 表示処理部
150 モニタ


図1
図2
図3
図4
図5A
図5B