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特開2023-86469線維芽細胞増殖促進用組成物、飲食品及び製造方法
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  • 特開-線維芽細胞増殖促進用組成物、飲食品及び製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086469
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】線維芽細胞増殖促進用組成物、飲食品及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20230615BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20230615BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20230615BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230615BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A23L33/135
A61P43/00 107
A61K35/744
A61K8/99
A61Q19/00
A61Q19/08
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201003
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】507039187
【氏名又は名称】株式会社ニコリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(72)【発明者】
【氏名】横川 剛
(72)【発明者】
【氏名】増島 安由子
(72)【発明者】
【氏名】荻野目 夏望
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF14
4B117LC04
4B117LK21
4B117LP20
4C083AA031
4C083AA032
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087MA16
4C087MA28
4C087MA34
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB22
(57)【要約】
【課題】
線維芽細胞の増殖促進効果を有する新規な組成物、飲食品及び製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
乳酸菌又はその処理物を含む線維芽細胞増殖促進用組成物である。このような乳酸菌はクレモリス菌であり、そのなかでもLactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受託番号:NITE BP-03259)を用いることが可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌又はその処理物を含む線維芽細胞増殖促進用組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌はクレモリス菌である、請求項1に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物。
【請求項3】
前記クレモリス菌は、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受託番号:NITE BP-03259)である、請求項2に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物。
【請求項4】
前記乳酸菌又はその処理物は、乾燥物換算の含有量で0.005質量%以上含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物。
【請求項5】
飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加物用素材、動物飼料、動物飼料添加用素材、化粧品及び化粧品添加用素材の少なくともいずれかである、請求項1~4のいずれか一項に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物を含む飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物、飲食品及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚組織の大部分を占める真皮は、コラーゲンと呼ばれる繊維状のタンパク質、エラスチンという繊維状のタンパク質、さらにはヒアルロン酸などのゼリー状の基質などから構成される。そして、この真皮には線維芽細胞と呼ばれる細胞が存在し、当該線維芽細胞においてコラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質が合成される。すなわち、従来から、コラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質は、皮膚の張りや弾力、潤いなどに大きく関与しており、これらを合成する線維芽細胞を増殖することはコラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質の増加をもたらし、皮膚組織の状態改善に大きく寄与することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、生ローヤルゼリー及び乾燥ローヤルゼリーから選ばれる少なくとも一種に抽出溶媒として親水性有機溶媒又は含水親水性有機溶媒を添加して可溶性画分を分離した後、当該抽出溶媒に対して不溶性の画分に中性プロテアーゼを作用して得られる酵素処理ローヤルゼリーを有効成分として含む、線維芽細胞の増殖を促進する組成物が記載されている。しかし、このような組成物は、可溶性画分の分離や酵素処理などの複雑な製造工程を経る必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-029772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、線維芽細胞の増殖促進効果を有する新規な組成物、飲食品及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、乳酸菌、その中でもクレモリス菌、さらにその中でもLactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受託番号:NITE BP-03259)を含む組成物を用いることで、顕著な線維芽細胞の増殖促進効果が得られ、コラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質の増加をもたらし、皮膚組織の状態改善に大きく寄与することが期待できることを見出した。したがって、本発明の第1の局面は、
(1)乳酸菌又はその処理物を含む線維芽細胞増殖促進用組成物、である。
【0007】
本発明の好適な態様は、
(2)上記乳酸菌がクレモリス菌である、上記(1)に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物、である。
【0008】
本発明の好適な態様は、
(3)上記乳酸菌が、Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受託番号:NITE BP-03259)である、上記(2)に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物、である。
【0009】
本発明の好適な態様は、
(4)上記乳酸菌又はその処理物は、乾燥物換算の含有量で0.1質量%以上含む、上記(1)~(3)に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物、である。
【0010】
本発明の好適な態様は、
(5)飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加物用素材、動物飼料、動物飼料添加用素材、化粧品及び化粧品添加用素材の少なくともいずれかである、上記(1)~(4)に記載の線維芽細胞増殖促進用組成物、である。
【0011】
さらに、本発明者らは、上記課題を解決するために、乳酸菌、その中でもクレモリス菌、さらにその中でもLactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受託番号:NITE BP-03259)を含む飲食品を用いることで、顕著な線維芽細胞の増殖促進効果が得られ、コラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質の増加をもたらし、皮膚組織の状態改善に大きく寄与することが期待できることを見出した。したがって、本発明の他の局面は、
(6)上記(1)~(4)のに記載の線維芽細胞増殖促進用組成物を含む飲食品、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、線維芽細胞の増殖促進効果を有する新規な組成物、飲食及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、対照1の発光度を基準(1)として実施例1~実施例4で得られた発光度の相対値を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で本発明の線維芽細胞増殖促進用組成物、飲食料及び製造方法を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための一例であり、本発明が当該実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
<線維芽細胞増殖促進用組成物の製造>
本開示において、線維芽細胞増殖促進用組成物は、クレモリス菌の培養工程及び必要に応じて調整工程を経て製造することが可能である。以下、その製造工程について具体的に説明する。
【0016】
本開示において、線維芽細胞増殖促進用組成物は、乳酸菌又はその処理物を含む。すなわち、本開示においては、このような線維芽細胞の増殖促進効果が期待される乳酸菌であればいずれでもよい。このような乳酸菌としては、例えば、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペディオコッカス(Pediococcus)属の乳酸菌が挙がられる。また、このような乳酸菌は、桿菌類か球菌かに分類することも可能であるが、ブルガリア菌、カゼイ菌、アシドフィルス菌、ファーメンタム菌、ブレビス菌、ラクティス菌、クレモリス菌等の桿菌類や、サーモフィルス菌、ペントサセウス菌、ハロフィルス菌、アビウム菌等の球菌のいずれでも好適に使用される。さらに、このような乳酸菌のうち、カスピ海ヨーグルト由来の乳酸菌として知られるクレモリス菌(Lactococcus lactis subsp.cremoris)が特に好適に使用され、その中でも独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されているフローラエイド株(Lactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid)(受託番号NITE BP-03259)がとりわけ好適に使用される。なお、以下においては、特に記載のない限りクレモリス菌を用いる場合について説明するが、当然本開示に係る発明がこれのみに限定されるわけではない。
【0017】
1.培養工程
培養工程は、クレモリス菌を様々な技術によって培養し、クレモリス菌を含む培養組成物を得るための工程である。当該培養工程に用いられる培養方法の一例としては、脱脂粉乳培地、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、塩類、ミネラル類等を含む液体培地、「(商品名)MRSブイヨン MERCK」(Chemicals社)、「(商品名)Difco Lactobacilli MRS Broth」(日本ベクトン・ディッキンソン社)などの市販の培地等を用いた方法によって培養することが可能である。
【0018】
これら培地を用いた培養は、特に限定するわけではないものの、静置で行うことが可能である。また、クレモリス菌の代謝産物(乳酸等)によるpHの低下を抑制するように、培地にアルカリ剤を添加してpH調整しながら、培養(中和培養)を行ってもよい。その場合、添加するアルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水溶液や、アンモニアなどを用いることができる。培養におけるpHは、pH5.0~7.5の範囲が好ましく、さらにpH6.0~7.0の範囲が特に好ましく、その範囲に調整、維持することが好ましい。pH調整は手動で行ってもよいが、pH自動制御装置(pHスタット)などを利用すれば簡便で正確に行うことができる。このように、上記培養方法によってクレモリス菌を含む培養組成物を得ることができる。
【0019】
2.調整工程
調整工程は、上記培養工程によって得られたクレモリス菌を含有する培養組成物に対して所望の特性を付与するために調製された調整組成物を得るための工程である。上記培養工程によって得られたクレモリス菌は、培養液の状態からクレモリス菌が濃縮された菌体濃縮液を調製したり、賦形剤を加えたうえ凍結乾燥したりしてもよい。菌体濃縮液は、培養液をそのまま濃縮して調製することもできるが、好ましくは、遠心分離やろ過などの手段によって集菌し、この菌体をさらに精製水などによって洗浄し、所定の菌体濃度になるように精製水などに懸濁させることによって調製する。菌体濃縮液100質量%中のクレモリス菌の菌体の含有量は、乾燥菌体換算で0.1~30質量%の範囲が好ましく、0.5~20質量%の範囲がさらに好ましく、1~10質量%の範囲が特に好ましい。
【0020】
また、菌体濃縮液には賦形剤を含むことも可能である。これにより、凍結したり凍結乾燥したりした後であっても、水と再構成した後に生きた菌としての性質が維持されやすくなる。また、菌体を粉砕・分散した場合、得られる乳酸菌末の再凝集を防止することができる。賦形剤の含有量としては、乾燥物換算で10~99質量%の範囲が好ましく、20~95質量%の範囲がさらに好ましく、50~90質量%の範囲が特に好ましい。
【0021】
このような賦形剤は、特に限定するものではないが、一例としては、デキストリン;マルトデキストリン;キサンタンガム;ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール類;デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、ショ糖等の糖類;アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いるクレモリス菌は、生きた生菌を用いてもよい。その場合、培養した後に、上記賦形剤を添加したうえ、凍結乾燥して粉体状に調製したものを用いることが好ましい。これによれば、クレモリス菌を、生きたままカプセル剤、顆粒、ヨーグルト等の形態にして提供するのに都合がよい。
【0023】
一方、クレモリス菌は、死菌体を用いてもよい。例えば、上記菌体濃縮液を粉砕・分散する工程の前又は後に、菌体濃縮液に加熱処理を施すことができる。さらに、上記菌体濃縮液を粉砕・分散する工程の後に、乾燥粉末化することができる。乾燥粉末化方法としては、凍結乾燥、減圧噴霧乾燥、熱風を用いた噴霧乾燥等の手法が挙げられる。なお、熱風を用いた噴霧乾燥(スプレードライ)を行うことで、通常、乳酸菌は滅失し、死菌体を得ることができる。
【0024】
このように、上記培養工程及び必要に応じて調製工程を含む製造方法によって、線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物を得ることが可能である。
【0025】
<線維芽細胞増殖促進用組成物を含む飲食品等の製造>
上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、飲食品として提供することが可能である。上記のとおり得られたクレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま、又は他の飲食品用原料を組み合わせて、飲食品として提供してもよい。このようなクレモリス菌の菌体又はその処理物に組み合わせる飲食品用原料としては、一例としては、各種糖質や乳化剤、甘味料、酸味料、果汁、フレーバー等が挙げられる。より具体的には、グルコース、シュークロース、フラクトース、蜂蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン類やハーブエキス、穀物成分、野菜成分、乳成分等が挙げられる。
【0026】
また、飲食品の形態としては、例えば、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、飲食品の他の例としては、腸内短鎖脂肪酸産生促進用の健康食品、サプリメント、特定保健用食品、ないし機能性表示食品が挙げられ、例えば、錠剤、顆粒、粉末、カプセル、ドリンク、ゼリーなどの形態で提供されてもよい。
【0027】
上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記飲食品としての用途に加えて、飲食品に添加される添加剤としても利用可能である。すなわち、線維芽細胞増殖促進用の飲食品添加用素材として提供されてもよい。
【0028】
また、上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記飲食品としての用途に加えて、線維芽細胞増殖促進用の医薬品として提供されてもよい。すなわち、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま又は他の医薬用原料と組み合わせて、医薬用の組成物としてもよい。上記クレモリス菌の菌体又はその処理物に組み合わせる他の医薬用原料に特に制限はなく、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、散剤、液剤、粉末剤、ゼリー状剤、飴状剤等の形態にして利用することができる。
【0029】
また、上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記医薬品としての用途に加えて、医薬品に添加される添加剤としても利用可能である。すなわち、線維芽細胞増殖促進用の医薬品添加用素材として提供されてもよい。
【0030】
また、上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記飲食品としての用途に加えて、線維芽細胞増殖促進用の化粧品として提供されてもよい。すなわち、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま又は他の化粧品原料と組み合わせて、化粧料組成物としてもよい。上記クレモリス菌の菌体又はその処理物に組み合わせる他の化粧品原料に特に制限はなく、必要に応じて、化粧料として許容される基材や担体を添加して、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態にして利用することができる。
【0031】
また、上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記化粧品としての用途に加えて、化粧品に添加される添加剤としても利用可能である。すなわち、線維芽細胞増殖促進用の化粧品添加用素材として提供されてもよい。
【0032】
また、上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記飲食品としての用途に加えて、線維芽細胞増殖促進用の動物飼料として提供されてもよい。すなわち、例えば、上記クレモリス菌の菌体又はその処理物を、そのまま又は他の動物飼料用原料と組み合わせて、動物食餌用組成物としてもよい。例えば、家畜、競走馬、鑑賞用動物、ペット等、動物用の飼料に利用してもよい。
【0033】
また、上記において製造されたクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物は、上記動物飼料としての用途に加えて、動物飼料に添加される線維芽細胞増殖促進用の動物飼料添加用素材として提供されてもよい。
もよい。
【0034】
このような用途を有するクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物において、上記菌体又はその処理物の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜決めることが可能である。一例としては、上記菌体又はその処理物の乾燥物換算の含有量にして、0.005~100質量%の範囲が好ましく、0.01~50質量%の範囲がさらに好ましく、1~30質量%の範囲が特に好ましい。また、菌体数に換算した含有量にして、5×10~1×10cfu/gの範囲が好ましく、1×10~5×10cfu/gの範囲がさらに好ましく、1×10~3.3×10cfu/gの範囲が特に好ましい。
【0035】
また、このような用途を有するクレモリス菌を含む線維芽細胞の増殖促進効果を有する組成物において、他の機能性材料と組み合わせて使用することも可能である。このような機能性材料としては、ビフィズス菌末、酪酸菌末、ビタミンCやビタミンB群などのビタミン類等が挙げられる。機能性材料の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜決めることが可能である。
【0036】
<線維芽細胞増殖促進効果の測定>
上記のとおり製造されるクレモリス菌を含む組成物において、線維芽細胞増殖促進効果があるか否かの確認は、一例としては、市販の正常ヒト線維芽細胞とクレモリス菌を溶解した懸濁液を用いることで行われる。具体的には、線維芽細胞増殖用に調製された所定の培地に、所定の濃度となるようにクレモリス菌組成物を添加する。そして、市販の正常ヒト線維芽細胞を当該培地に播種する。所定時間経過後、培養液の上清を除去し、平衡塩溶液や所定の試薬を添加して、発光度によって線維芽細胞の増殖効果を測定する。
【0037】
なお、クレモリス菌組成物が添加された培養液に正常ヒト線維芽細胞を溶解する前に、あらかじめ線維芽細胞増殖用に調製された培地に播種して、所定時間前培養するようにしてもよい。また、細胞の増殖効果は発光度によって測定しているが、発光度測定法以外にも、菌体重量法、濁度法、顕微鏡法などのいずれで測定してもよい。
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例0039】
<クレモリス菌の線維芽細胞増殖効果の測定>
1.試験試料
当該測定においては、試験試料である乳酸菌としてLactococcus lactis subsp.cremoris Flora aid(フローラエイド)株(受託番号:NITE BP-03259)を用いた。
【0040】
2.培養及び測定
増殖効果を測定するための線維芽細胞には、市販の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF:Lifeline Cell Technology社製)を用いた。まず、96穴プレートの1ウエルに、NHDF2×10個を含む5%牛胎児血清(FBS)添加ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)細胞浮遊液200μLを加え、温度37℃、湿度約95%、CO濃度5%に制御したCOインキュベータ内で72時間前培養を行った。その後、血清飢餓培養を行うため、培地を0.25%FBS添加DMEMに交換し、更に24時間COインキュベータ内で前培養を行った。
【0041】
前培養終了後、試験試料試料を添加した培地(0.25%FBS添加DMEM200μL)に交換した。このとき、試験試料であるフローラエイド株の終濃度は、0.05質量%(実施例1)、0.1質量%(実施例2)、0.5質量%(実施例3)、1.0質量%(実施例4)とした。また、0.25%FBS添加DMEMのみで培養したブランク群(対照1)を設けた。72時間後、CellTiter-Glo試薬(Promega社製)を用い、発光細胞生存性アッセイ法にて添加した試料の細胞増殖効果を評価した。測定機器にはSpectraMax i3X(ソフトウエア:SoftMax(登録商標)Pro7,MOLECULAR DEVICES社製)を用い、統計学的有意性はDunnett′s testを用いて評価した。
【0042】
3.結果
その結果得られた対照1及び実施例1~4の培地における発光度の実測値を表1に示した。また、図1には、対照1の発光度を基準(1)として、実施例1~実施例4で得られた発光度の相対値を示した。表1及び図1によると、実施例1~実施例4のいずれにおいても、対照1と比して、ほぼ用量依存的に発光度が増加しており、正常ヒト線維芽細胞の顕著な増殖が確認された。すなわち、0.05%~1.0%の範囲において、フローラエイド株を含有する組成物が線維芽細胞の増殖促進効果を顕著に有することが確認された。また、上記のとおり、ヒトにおいて線維芽細胞の増殖は、コラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質が合成に大きく関与する。そのため、線維芽細胞の増殖促進効果が得られることによって、コラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質の増加をもたらし、皮膚組織の状態改善に大きく寄与する可能性が確認された。
【0043】
【表1】
【0044】
このように製造された組成物においても線維芽細胞の増殖促進効果やコラーゲン等のタンパク質やヒアルロン酸等の基質の増加をもたらし、皮膚組織の状態改善に大きく寄与すことが可能である。

図1