(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086488
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ウエブの平滑化装置及び抄紙装置
(51)【国際特許分類】
D21F 3/00 20060101AFI20230615BHJP
D21F 5/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
D21F3/00
D21F5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201042
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138014
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 香織
(72)【発明者】
【氏名】東本 佳久
(72)【発明者】
【氏名】長田 優輔
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CE00
4L055CE71
4L055CF00
4L055CF01
4L055CF41
4L055DA08
4L055EA13
4L055EA23
4L055FA11
4L055FA14
4L055FA22
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】本発明は上記した課題を解決するものであり、装置の占有面積を小さくしつつ、ウエブを平滑化することの可能なウエブの平滑化装置及び抄紙装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明にかかるウエブの平滑化装置は、ウエブWを搬送するベルト48と、前記ベルト48により搬送される前記ウエブWを、前記ベルト48との間で、周面で挟持しつつ回転する回転体50と、前記回転体50に設けられ、前記ウエブWを加熱するための加熱部62と、前記周面の所定範囲で、前記ベルト48を前記ウエブWから離間させる離間部71と、前記離間部71において、前記周面に対し前記ウエブWを所定圧力で押圧する押圧ローラ75とを備えた。また、前記構成において、前記押圧ローラ75は、前記ウエブWの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、前記押圧ローラ75の前記ウエブWを押圧する押圧部の前記幅方向の長さは、前記ウエブの前記幅方向の長さより短く形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを搬送するベルトと、
前記ベルトにより搬送される前記ウエブを、前記ベルトとの間で、周面で挟持しつつ回転する回転体と、
前記回転体に設けられ、前記ウエブを加熱するための加熱部と、
前記周面の所定範囲で、前記ベルトを前記ウエブから離間させる離間部と、
前記離間部において、前記周面に対し前記ウエブを所定圧力で押圧する押圧ローラとを備えたウエブの平滑化装置。
【請求項2】
前記押圧ローラは、前記ウエブの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、
前記押圧ローラの前記ウエブを押圧する押圧部の前記幅方向の長さは、前記ウエブの前記幅方向の長さより短く形成される請求項1に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項3】
前記押圧ローラは、前記ウエブの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、
前記押圧ローラの前記幅方向の長さは、前記回転体の下流側に設置された裁断部において、前記ウエブの前記幅方向両端部分が前記長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物の前記幅方向の長さより、長く形成される請求項1または請求項2に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項4】
前記ウエブの搬送方向で前記離間部より所定量上流側の位置に設置され、前記ウエブの先端部分を前記周面に付着させる付着部を備えた請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項5】
前記付着部は、前記ベルトをかけ渡す一個のローラに設けられ、
前記ローラは、前記周面に対向配置され、
前記ローラにかけられた前記べルトと前記周面との間に隙間が形成され、
前記隙間の大きさは、前記ウエブの先端部分より後続の部分の厚さより大きい請求項4に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項6】
前記ウエブの異常な搬送を検知する検出部を備えた請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項7】
前記検出部が、前記周面での前記ウエブのジャムによる搬送不良を検出したとき、前記回転体を逆方向に回転させるよう前記回転体の動作を制御するジャム制御部を備えた請求項6に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項8】
前記押圧ローラによる前記ウエブの押圧力を調整する調整部を備え、
前記検出部の検出結果に基づき、前記調整部を制御する押圧制御部を備えた請求項6または請求項7に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項9】
前記押圧制御部は、前記ウエブの先端部分より後続の部分が、前記押圧ローラの上流側で前記周面から所定値以上離れたことを前記検出部が検出したとき、前記押圧ローラの押圧力を弱くするよう制御する請求項8に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項10】
前記ウエブが所定割合の水分を含有する請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のウエブの平滑化装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のウエブの平滑化装置を備えた抄紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抄紙装置及び湿紙の脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエブを平滑化するための機構に関し下記特許文献1には、フェルトによって脱水処理した湿紙を、平滑なベルトに転移して搬送しつつ、プレスローラで押圧する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の装置では、湿紙をフェルトで脱水処理するために、装置が大掛かりとなる。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、装置の占有面積を小さくしつつ、ウエブを平滑化することの可能なウエブの平滑化装置及び抄紙装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかるウエブの平滑化装置は、ウエブを搬送するベルトと、前記ベルトにより搬送される前記ウエブを、前記ベルトとの間で、周面で挟持しつつ回転する回転体と、前記回転体に設けられ、前記ウエブを加熱するための加熱部と、前記周面の所定範囲で、前記ベルトを前記ウエブから離間させる離間部と、前記離間部において、前記周面に対し前記ウエブを所定圧力で押圧する押圧ローラとを備えた。
【0007】
また、前記構成において、前記押圧ローラは、前記ウエブの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、前記押圧ローラの前記ウエブを押圧する押圧部の前記幅方向の長さは、前記ウエブの前記幅方向の長さより短く形成される。
【0008】
そして、前記各構成において、前記押圧ローラは、前記ウエブの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、前記押圧ローラの前記幅方向の長さは、前記回転体の下流側に設置された裁断部において、前記ウエブの前記幅方向両端部分が前記長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物の前記幅方向の長さより、長く形成される。
【0009】
更に、前記各構成において、前記ウエブの搬送方向で前記離間部より所定量上流側の位置に設置され、前記ウエブの先端部分を前記周面に付着させる付着部を備えた。
【0010】
更に、前記各構成において、前記付着部は、前記ベルトをかけ渡す一個のローラに設けられ、前記ローラは、前記周面に対向配置され、前記ローラにかけられた前記べルトと前記周面との間に隙間が形成され、前記隙間の大きさは、前記ウエブの先端部分より後続の部分の厚さより大きい。
【0011】
更に、前記各構成において、前記ウエブの異常な搬送を検知する検出部を備えた。
【0012】
更に、前記各構成において、前記検出部が、前記周面での前記ウエブのジャムによる搬送不良を検出したとき、前記回転体を逆方向に回転させるよう前記回転体の動作を制御するジャム制御部を備えた。
【0013】
更に、前記各構成において、前記押圧ローラによる前記ウエブの押圧力を調整する調整部を備え、前記検出部の検出結果に基づき、前記調整部を制御する押圧制御部を備えた。
【0014】
更に、前記各構成において、前記押圧制御部は、前記ウエブの先端部分より後続の部分が、前記押圧ローラの上流側で前記周面から所定値以上離れたことを前記検出部が検出したとき、前記押圧ローラの押圧力を弱くするよう制御する。
【0015】
更に、前記各構成において、前記ウエブが所定割合の水分を含有する。
【0016】
更に、本発明に係る抄紙装置は、前記各構成のウエブの平滑化装置を備えた。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウエブを搬送するベルトと、前記ベルトにより搬送される前記ウエブを、前記ベルトとの間で、周面で挟持しつつ回転する回転体と、前記回転体に設けられ、前記ウエブを加熱するための加熱部と、前記周面の所定範囲で、前記ベルトを前記ウエブから離間させる離間部と、前記離間部において、前記周面に対し前記ウエブを所定圧力で押圧する押圧ローラとを備えたので、加熱部を備えた回転体の周面に、押圧ローラによってウエブを押圧し、ウエブを平滑化することができる。また、簡単な構成なので装置の占有面積を小さくできる。
【0018】
また、前記押圧ローラは、前記ウエブの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、
前記押圧ローラの前記ウエブを押圧する押圧部の前記幅方向の長さは、前記ウエブの前記幅方向の長さより短く形成される場合は、押圧部によってウエブの幅方向両側端部分を押圧しない。よって、ウエブの幅方向両端部分が回転体に貼り付いて剥離困難となるのを抑制できる。
【0019】
そして、前記押圧ローラは、前記ウエブの長手方向に直交する幅方向に沿って延在し、前記押圧ローラの前記幅方向の長さは、前記回転体の下流側に設置された裁断部において、前記ウエブの前記幅方向両端部分が前記長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物の前記幅方向の長さより、長く形成される場合は、裁断により得られる裁断物の平滑性が維持され、美しい仕上がりとすることができる。
【0020】
更に、前記ウエブの搬送方向で前記離間部より所定量上流側の位置に設置され、前記ウエブの先端部分を前記周面に付着させる付着部を備えた場合は、離間部でベルトがウエブから離間しても付着部によってウエブの先端部分が回転体の周面に確実に付着させることができ、押圧ローラによってウエブを押圧し、平滑化できる。
【0021】
更に、前記付着部は、前記ベルトをかけ渡す一個のローラに設けられ、前記ローラは、前記周面に対向配置され、前記ローラにかけられた前記べルトと前記周面との間に隙間が形成され、前記隙間の大きさは、前記ウエブの先端部分より後続の部分の厚さより大きい場合は、ウエブの先端部分をより確実に周面に付着させることができるとともに、ウエブの後続の部分にベルトの凹凸が形成されるのを抑制することができる。
【0022】
更に、前記ウエブの異常な搬送を検知する検出部を備えた場合は、検出部によってウエブの異常な搬送を検知できる。
【0023】
更に、前記検出部が、前記周面での前記ウエブのジャムによる搬送不良を検出したとき、前記回転体を逆方向に回転させるよう前記回転体の動作を制御するジャム制御部を備えた場合は、ウエブの先端部分を上流側へ逆搬送することで、適切にジャム処理することができる。
【0024】
更に、前記押圧ローラによる前記ウエブの押圧力を調整する調整部を備え、前記検出部の検出結果に基づき、前記調整部を制御する押圧制御部を備えた場合は、押圧ローラの押圧によってウエブの異常な搬送が生じたときに、押圧力を調整することができる。
【0025】
更に、前記押圧制御部は、前記ウエブの先端部分より後続の部分が、前記押圧ローラの上流側で前記周面から所定値以上離れたことを前記検出部が検出したとき、前記押圧ローラの押圧力を弱くするよう制御する場合は、ウエブの搬送不良を自動で解消することができる。
【0026】
更に、前記ウエブが所定割合の水分を含有する場合は、水分を含有するウエブを押圧ローラによって押圧することで、ウエブの平滑性を容易に向上することができる。
【0027】
更に、本発明に係る抄紙装置は、前記各構成のウエブの平滑化装置を備えたので、抄紙により得られる紙の平滑性を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る抄紙装置を備えた製紙装置の構成概略図である。
【
図2】前記抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
【
図3】前記抄紙装置のウエブの平滑化装置周辺の部分拡大図である。
【
図4】前記ウエブの平滑化装置を説明する図である。
【
図5】前記抄紙装置の使用態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる抄紙装置を備えた製紙装置の構成概略図である。
図1に示す製紙装置は、古紙10を製紙原料とする古紙再生処理装置100である場合を示している。
図1において、古紙再生処理装置100は、再生パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3、裁断部4及び各部を制御する制御部9を備えてなる。尚、以下の第1~第4の実施形態では、本発明にかかる抄紙装置Qが、古紙10を原料として裁断物7を製造する古紙再生処理装置100の抄紙部3に用いられる場合について記載するが、必ずしもこれに限定されず、木材等の他のパルプ原料を製紙原料とする製紙装置の抄紙部に用いても構わない。
【0030】
再生パルプ製造部1は、古紙10を離解してパルプ懸濁液を製造する。脱墨部2は、再生パルプ製造部1において製造されたパルプ懸濁液を脱墨する。抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙してウエブWを形成し、得られたウエブWを脱水し、乾燥する。裁断部4は、抄紙部3において得られた裁断前のウエブWを裁断することにより仕上げを行って定型サイズの裁断物7を得る。制御部9は古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。再生パルプ製造部1及び脱墨部2は、それぞれ公知の再生パルプ製造装置及び脱墨装置を利用可能である。
【0031】
図2は、抄紙部3を構成する抄紙装置Q及び裁断部4の概略構成を示す縦断面図である。抄紙部3は、ウエブ形成部11、脱水部14及び乾燥部15が図示しない筐体内に収容されてなる。筐体内には、左右一対の図示しない側板が配設されており、この側板が各部を構成するほとんどのローラを、回動自在に軸支している。
【0032】
ウエブ形成部11では、ウエブWが形成される。ウエブ形成部11は、ヘッドボックス12と、ワイヤー部13とを備える。ヘッドボックス12は、脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に均一に供給するためのものである。ヘッドボックス12は、パルプ懸濁液を貯留する貯留部18と、貯留部18に貯留するパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に流出させる流出部19と、貯留部18の底部に形成されたパルプ懸濁液の流入部20とを備える。
【0033】
流入部20は、脱墨部2から脱墨後のパルプ懸濁液を取出し、貯留部18へ送るための図示しない輸送ポンプが接続されている。
【0034】
ワイヤー部13は、抄紙ワイヤー23と、抄紙ワイヤー23を走行させる図示しないワイヤー駆動部とを備える。抄紙ワイヤー23は複数のベルトローラ24に掛け渡され、展張され、無端状に形成される。抄紙ワイヤー23は上側を走行する往路軌道の下流側端部近傍に設けられた湾曲部21において、上方へ向けて水平面に対し約5°乃至85°程度湾曲して走行する。
【0035】
抄紙ワイヤー23は、ヘッドボックス12から供給されるパルプ懸濁液を濾過してウエブWを形成する。上側を走行する往路軌道の抄紙ワイヤー23の下方には、複数の水切り板26が所定間隔で配置されている。水切り板26はパルプ懸濁液を水切りする。各水切り板26は抄紙ワイヤー23の走行方向と交差する左右幅方向に向けて延在し、抄紙ワイヤー23の下面に摺接される。これにより、水切り板26が抄紙ワイヤー23の網目から流下する液体分である白水を下方へと導くようになっている。
【0036】
また、水切り板26の下方には、該水切り板26より、または抄紙ワイヤー23の網目から直接流下する白水を受ける受水部27を設けている。受水部27は図示しない配管、ガイド等により下方に設置された白水タンク29に接続されている。白水タンク29は、内部に収容する白水を再生パルプ製造部1及び脱墨部2に送るための図示しない配管及び白水循環用ポンプを備え、受水部27において回収した白水を再利用可能に構成している。
【0037】
脱水部14は、脱水ローラ45を備える。脱水ローラ45は、抄紙ワイヤー23の上方へ向けて湾曲した湾曲部21に設置される。脱水ローラ45は、抄紙ワイヤー23を掛け渡すベルトローラ24を兼ねて構成される。
【0038】
脱水ローラ45は、ワイヤー駆動部に連結機構を介して連結され、抄紙ワイヤー23が掛け渡される他のローラ24と同期して回転駆動される。
【0039】
脱水ローラ45の材質は、ステンレス、鉄やアルミ等の金属、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、EPDM,ABS系樹脂やフッ素系樹脂等の合成樹脂、これらが層状に形成され、組み合わせて用いられたもの、金属または合成樹脂のいずれかまたは双方と合成繊維や天然繊維とが組み合わせて用いられたもの等とすることができる。
【0040】
これらのうち、脱水ローラ45に金属を用いることで、強度を確保できる。抄紙ワイヤー23によって濾過され、形成されたウエブWは、脱水部14による脱水前後の状態では、含水率が比較的高いために脱水ローラ45が金属であっても張りつきの問題が生じにくい。しかし、脱水ローラ45をシリコン樹脂やフッ素系樹脂、またはこれらによって表面加工したものとすることで、ウエブWの剥離性が向上する。
【0041】
図2に示す乾燥部15は、ベルト48、回転体50、加熱部62、平滑部70、温度センサ66及び剥離部55を備えている。ベルト48は、抄紙ワイヤー23から受け渡されたウエブWを搬送する。ベルト48は、無端状に形成され、回転体50及び複数のローラ49に掛け渡されている。
【0042】
ベルト48は、回転体50の周面の
図2における左部から反時計周りに上部まで巻回される。ベルト48は、回転体50の
図2における左側で、上方に向けて突出して走行する抄紙ワイヤー23に対向するよう上方に向けて突出して走行する。抄紙ワイヤー23とベルト48とは、対向位置において接触することなく所定量離間して配置される。ベルト48は、抄紙ワイヤー23からウエブWが受け渡される受渡部47を備える。受渡部47は、抄紙ワイヤー23の走行方向が転換される転換位置Tの近傍に設けられる。受渡部47は、ベルト48が走行方向を転換する位置に設けられる。ベルト48は、図示しないベルト駆動部によって走行駆動される。
【0043】
ベルト48は、ウエブWを搬送する。そして、ベルト48は回転体50に巻回された範囲で、ウエブWを回転体50との間で挟持して搬送する。ベルト48の材質は特に限定されず、例えば、金属、ポリエステルやポリフェニレンサルファィド等の合成繊維、麻や木綿等の天然繊維が用いられる。ベルト48は、経糸と緯糸を織り込んだ織物によって形成されることがウエブWの乾燥効率が高い点で好ましい。
【0044】
ベルト48は周回走行する。ベルト48は、平滑部70に設けられた離間部71において、ウエブWから離間される。ベルト48の内方には、内方ローラ73が設置され、ベルト48の外方には、ベルト48を回転体50から退避させる退避ローラ72が設置される。
【0045】
回転体50は、ベルト48により搬送されるウエブWを、ベルト48との間で、周面で挟持しつつ回転する。回転体50は中空円筒状に形成された筒体58を備える。筒体58は、左右の側面が円盤形状の蓋体59により閉塞されている。また、筒体58は、複数の支持ローラ61により回転自在に支持されている。支持ローラ61は周回走行するベルト48の内方に設置される。筒体58は、ベルト48がベルト駆動部によって走行駆動されることにより、従動して回転する。
【0046】
加熱部62は、回転体50に設けられる。加熱部62は、ウエブWを加熱する。
図2では、加熱部62が筒体58の内周面に設置される場合を示す。加熱部62の種類、形状は限定されないが、例えば、加熱部62は、柔軟で可撓性を有し、シート状に形成されたシリコンラバーヒータ等により構成することができる。加熱部62は、回転体50の内周面に全周に亘って貼着されている。
【0047】
平滑部70は、ウエブWの平滑性を向上させる。平滑部70は、ウエブの平滑化装置を構成する。平滑部70は、回転体50の
図2における左下部分に設けられる。
図3は、平滑部70及びその周辺の部分拡大図である。平滑部70は、離間部71、押圧ローラ75、調整部77、検出部76及び付着部67、を備える。
【0048】
離間部71は、回転体50の周面の所定範囲で、ベルト48をウエブWから離間させる機構である。離間部71は、複数の退避ローラ72を備える。退避ローラ72は周回走行するベルト48の外方に設置される。退避ローラ72は、押圧ローラ75を介し、ベルト48の走行方向の上流及び下流にそれぞれ設置される。退避ローラ72は、回転体50との間でウエブWを挟持し走行するベルト48を、部分的に回転体50から離間させる。退避ローラ72は平滑部70においてベルト48を退避位置で走行させる。
【0049】
押圧ローラ75は、離間部71において、回転体50の周面に対しウエブWを所定圧力で押圧する。押圧ローラ75は、ウエブWの長手方向に直交する幅方向Hに沿って延在する。押圧ローラ75は、押圧部85と回転軸84とを備える。押圧部85は、ウエブWを押圧する。
図4は押圧ローラ75の幅方向Hの長さを説明するための図であって、押圧ローラ75、押圧ローラ75の上方に設置された支持ローラ611及び回転体50を後側から見た図である。
図4では説明の都合上ベルト48を一点鎖線で示している。
【0050】
押圧部85の幅方向Hの長さLrは細い実線で示すウエブWの幅方向Hの長さLwより短く形成される。これより、ウエブWの幅方向Hの左右の両側縁領域Eは、押圧ローラ75によって押圧されない。
【0051】
また、押圧ローラ75の幅方向Hの長さLrは、回転体50の下流側に設置された裁断部4において、ウエブWの幅方向H両側端部分Eが長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物7の幅方向Hの長さLsより、長く形成される。
【0052】
ウエブWの側端部分Eは回転体50の下流側に設置された裁断部4において裁断され、廃棄されるか、または改めて再生処理に用いられる。よって、この側端部分Eを平滑化する必要はない。一方、この側端部分Eは、繊維の状態や厚さが安定せず、局部的に厚くなったり薄くなったりする。ウエブWの乾燥時この側端部分Eが回転体50に貼りついてしまうと、乾燥後ウエブWを回転体50から剥離し辛くなる。側端部分Eが裁断部4において、回転体50から適切に剥離できなかった場合には、その剥離できなかった側端部分Eの箇所を起点として後続のウエブWが連なって剥離されなくなり、回転体50へ巻き付くことがある。更に、ウエブWの側端部分Eに塊状の繊維があると、押圧ローラ75でこのような繊維を押圧することで、回転体50に密着することがある。
【0053】
そこで、ウエブWの平滑化のため押圧ローラ75でウエブWを押圧する場合であっても、押圧ローラ75の幅方向Hの長さLrをウエブWの幅方向の長さLwより短くすることによって、押圧ローラ75でウエブWの側端部分Eを押圧しないようにし、ウエブWの側端部分Eが回転体50に貼り付かないようにできる。また、ウエブWの側端部分Eに塊状の繊維があるときでも、剥離部55でスクレーパー等を回転体50に接触させることでこのような繊維を容易に回転体50から剥離することができる。
【0054】
調整部77は押圧ローラ75によるウエブWの押圧力を調整する。調整部77は図示しない駆動部、カム78、カムフォロア79、弾性部材81及び軸受82を備える。カム78は駆動部の駆動により回転する。カムフォロア79は、カム78の回転に伴って、回転体50に対し近接離間する方向に移動可能に設置される。カムフォロア79の一部の領域はカム78に当接する。カムフォロア79の他の領域は、バネなどの弾性部材81の一方の端部を係止する。弾性部材81の他方の端部は、軸受82に係止される。軸受82は、押圧ローラ75の回転軸84を回動自在に軸支する。
【0055】
検出部76は、ウエブWの異常な搬送を検知する。検出部76は、回転体50の周面でのウエブWのジャムによる搬送不良を検出することができる。また、検出部76は、ウエブWの先端部分より後続の部分Kが、押圧ローラ75の上流側で、回転体50の周面から所定値以上離れたことを検出することができる。押圧ローラ75によるウエブWの押圧時間が所定時間以上になると、押圧ローラ75の上流側に徐々に水分が滞留する。過剰な水分が押圧ローラ75の上流側に滞留すると、
図5に示すように、やがてウエブWは回転体50の周面から局部的に離れてたるみDが生じることがある。このとき、回転体50の周面と剥離したウエブWとの間には、水分が蓄積されている。検出部76は、このようにウエブWが回転体50の周面から所定値以上離れたことを検出する。
【0056】
検出部76の構成は特に限定されないが、例えば発光素子及び受光素子からなる透過センサを用いることができる。発光素子及び受光素子は、押圧ローラ75の上流側で、
図4に示すように、回転体50の幅方向H両側に離間して設置される。発光素子から受光素子への光線は、回転体50の周面からの距離Nが、例えば0.1mm~50mm、好ましくは5mm~30mm、より好ましくは10mm~20mmといった程度離れた位置を通過する。これより、ウエブWが正常に搬送されているときには通光となり、ウエブWのジャムが発生したときや、ウエブWが周面から所定値以上離れたときに遮光となる。
【0057】
付着部67は、ウエブWの搬送方向で離間部71より所定量上流側の位置に設置され、ウエブWの先端部分Gを回転体50の周面に付着させる。
図2、4では、付着部67は、押圧ローラ75の設置位置よりウエブWの搬送方向上流側で回転体50を支持する支持ローラ611に設けられる場合を示す。
【0058】
支持ローラ611は、
図4では、押圧ローラ75の上方に示される。支持ローラ611は幅方向Hに沿って延在する。支持ローラ611は幅方向H両端部の直径が大きく、その間の部分の直径が両端部より小さく形成されている。支持ローラ611は、支持部63及び付着部67を備える。支持部63は、支持ローラ611の直径が大きく形成された両端部に設けられる。支持部63は、ベルト48を介して回転体50を支持する。付着部67は左右一対の支持部63の間に設けられる。付着部67は支持部63より直径が小さく形成される。
【0059】
図3に示すように、付着部67にかけられたベルト48の表面と、回転体50の周面との間に隙間Mが形成されている。よって、付着部67はベルト48を介して回転体50の周面に接触しなくなっている。隙間Mの大きさは、ウエブWの先端部分Gの厚さより小さく、後続の部分Kの厚さより大きく設定される。
【0060】
ウエブWの先端部分Gが付着部67の設置位置を通過する際、回転体50の周面とベルト48との間でウエブWの先端部分を挟持され、押圧される。一方、隙間Mは、ウエブWの先端部分Gより後続の部分Kが付着部67の設置位置を通過する際には、回転体50の周面とベルト48との間で挟持されない。
【0061】
例えば、ウエブWの先端部分Gの厚さが1.5mm~2.0mm程度で、ウエブWの先端部分Gより後続の部分Kの厚さが0.3mm~0.5mm、ベルト48の厚さが0.7mmであるとき、ベルト48から回転体50の周面までの隙間Mを、0.7mmとすることができる。
【0062】
温度センサ66は、
図2に示すように、回転体50の上部後方に設置される。温度センサ66は、筒体58の表面温度を検出する。本実施形態では、温度センサ66が、筒体58の表面に摺動接触し、筒体58の温度を検出する構成としたが、筒体58に非接触のセンサを用いてもよい。剥離部55は、回転体50の上部後方であって温度センサ66より回転体50の回転方向上流側に設置される。剥離部55は、スクレーパにより構成される。剥離部55はベルト48から乾燥後のウエブWを剥がし、ウエブWを裁断部4へと案内する。
【0063】
(裁断部)
図1に示す裁断部4は、ウエブWを所定のシートサイズにカットする裁断刃43を備えている。裁断刃43は、左右一対のスリッター41とカッター42とを備える。スリッター41は、丸刃により構成される。カッター42は、幅方向に沿って延在する上下一対の直刃により構成される。裁断刃43の下方には、裁断により生じた端材を回収する図示しない端材回収箱が設置されている。
【0064】
(制御部)
制御部9は、古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。制御部9はジャム制御部91、押圧制御部92を備える。ジャム制御部91は、検出部76が、回転体50の周面でのウエブWのジャムによる搬送不良を検出したとき、回転体50を逆方向に回転させるよう回転体50の動作を制御する。押圧制御部92は、検出部76の検出結果に基づき、調整部77を制御する。そして、押圧制御部9は、ウエブWの先端部分より後続の部分Kが押圧ローラ75の上流側で回転体50の周面から所定値以上離れたことを検出部76が検出したとき、押圧ローラ75の押圧力を弱くするよう制御することができる。
【0065】
制御部9は、ウエブWの先端部分Gが付着部67を通過しているときに、回転体50の加熱部62の温度や、回転体50の回転速度を制御することができる。これより、ウエブWの先端部分Gが回転体50の周面に適切に付着するよう調整できる。
【0066】
(作用)
本実施形態にかかる古紙再生処理装置100の作用につき以下に説明する。まず、再生パルプ製造部1において所定量の古紙10を所定量の水とともに所定時間攪拌することで、パルプ懸濁液を製造する。次に、得られたパルプ懸濁液を脱墨部2へ送り、脱墨処理を行って、脱墨後のパルプ懸濁液を得る。脱墨後のパルプ懸濁液に対し、脱墨部2においてまたは脱墨部2から抄紙部3への流通経路の途中位置で加水し、抄紙に適する所定のパルプ濃度に調製し、抄紙部3のヘッドボックス12へ送る。
【0067】
パルプ懸濁液は、ヘッドボックス12の流入部20から貯留部18に流入する。そして、パルプ懸濁液は、流出部19から抄紙ワイヤー23上に流出される。抄紙ワイヤー23上に供給されたパルプ懸濁液は、液体分が抄紙ワイヤー23の網目を通り抜ける。その後、パルプ懸濁液の液体分は、抄紙ワイヤー23の内方位置で水切り板26により下方の受水部27へと導かれ、受水部27で受水された後、白水タンク29内に収容される。白水タンク29内の白水は、再生パルプ製造部1や脱墨部2等へ送られ、再利用される。
【0068】
抄紙ワイヤー23上に残存したパルプは、所定割合の水分を含有する繊維の層であるウエブWとして形成される。制御部9は、抄紙ワイヤー23上で形成されるウエブWの先端部分の厚さを、この先端部分より後続の部分Kの厚さより厚くなるように制御する。
【0069】
このため制御部9は、ウエブWの先端部分を形成するときの抄紙ワイヤー23の走行速度を、ウエブWの先端部分より後続の部分Kを形成するときより遅くするようワイヤー駆動部を制御する。また、これに替えて、制御部9は、ヘッドボックス12から抄紙ワイヤー23上へパルプ懸濁液の供給を開始し、ウエブWの先端部分を形成するときに抄紙ワイヤー23の走行を所定時間停止するよう制御してもよい。更に、制御部9は、輸送ポンプの駆動量をウエブWの先端部分を形成するときの方が、ウエブWの先端部分より後続の部分Kを形成するときより多くするよう制御し、流入部19へ流入させるパルプ懸濁液の量を多くすることで、ウエブWの先端部分を厚くしてもよい。
【0070】
ウエブWの先端部分が形成された後、この先端領域が脱水部14に至ると、ウエブWは、脱水ローラ45の外周面に沿って上方へ向けて湾曲して走行する抄紙ワイヤー23と脱水ローラ45との間で挟持され、脱水される。水平方向へ走行する抄紙ワイヤー23上のウエブWは、脱水ローラ45によって上から押圧され、抄紙ワイヤー23との間で挟持されることで、ウエブWに含まれる液体分が抄紙ワイヤー23の下方へ導かれる。そして、脱水ローラ45の外周面に沿って湾曲して走行する抄紙ワイヤー23との間で徐々に脱水される。ウエブWは、抄紙ワイヤー23の張力によって押圧される。
【0071】
ウエブWの先端部分Gは厚く形成されており、且つ、脱水部14で脱水されることで、ある程度のコシを有することとなる。ウエブWの先端部分Gが抄紙ワイヤー23の転換位置Tに至ったときに、抄紙ワイヤー23から分離され、
図2において実線で示すように斜め右上方へ向けて独立して搬送される。
【0072】
抄紙ワイヤー23から上方へ伸びたウエブWの先端部分Gの長さが、所定長さに至ると、二点鎖線で示すように、ウエブWの先端部分Gは自重によって座屈する。そして、抄紙ワイヤー23に対向するベルト48によって支持される。ウエブWの先端部分Gはベルト48と回転体50の間に入り込み、これらの当接部分においてベルト48と回転体50との間で挟持され搬送される。
【0073】
ウエブWの先端部分Gが支持ローラ611の設置位置に至ると、支持ローラ611の付着部67と回転体50の周面との間で挟持される。回転体50の周面とベルト48との間の隙間Mは、ウエブWの先端部分Gの厚さより小さく設定されているので、ウエブWの先端部分Gは支持ローラ61の付着部67と回転体50の周面との間で、ベルト48とともに挟持搬送され、押圧される。
【0074】
このように、付着部67によって回転体50の周面へウエブWが押圧されることによって、ウエブWの先端部分Gは所定温度に加熱された回転体50に十分に押し付けられる。そして、ウエブWの先端部分Gに含まれる水分は加熱され、短時間で蒸発する。これより、ウエブWの先端部分Gは回転体50に容易に付着され、貼りつけられる。その後ウエブWの先端部分Gが、付着部67の設置位置より下流側へ搬送され、離間部71でベルト48が回転体50から離間しても、ウエブWの先端部分Gは回転体50の周面に貼り付いたままとすることができる。離間部71において回転体50の周面からウエブWの先端部分Gが離れ、適切に搬送されなくなるのを防止することができる。
【0075】
一方、ウエブWの先端部分Gより後続の部分Kは、先端部分Gに比較して厚さが薄く形成されている。そして、付着部67設置位置では、回転体50の周面とベルト48との間の隙間Mが、ウエブWの後続の部分Kの厚さより大きく設定されている。仮に、回転体50の周面に対し、ベルト48を介して付着部67によってウエブWの後続の部分Kが接触され、押圧された場合には、ベルト48表面の凹凸模様が水分を多く含んだウエブWに深く刻まれてしまう恐れがある。しかし、本実施形態では、周面とベルト48との間にウエブWの後続の部分Kの厚さより大きい隙間Mが形成されているので、付着部67によって後続の部分Kがベルト48を介して回転体50の周面に押圧されることはない。よって裁断後に得られる裁断物7の表面の仕上がりをより美しくすることができる。ウエブWにベルト48を接触させないために、支持ローラ611の退避機構を設ける必要ないので、コストを抑えることができる。
【0076】
離間部71において、ベルト48はウエブWから離れ、退避ローラ72に接触しつつ走行する。一方、ウエブWの先端部分Gは、回転体50の周面に貼り付いたまま回転体50の回転に伴い下流側へと搬送される。ウエブWの先端部分Gが押圧ローラ75設置位置に至ると、押圧ローラ75はウエブWの先端部分Gを回転体50との間で挟持し押圧する。
【0077】
押圧ローラ75がウエブWを押圧する幅方向Hの長さLrは、ウエブWの幅方向Hの長さLwより短い。これより、ウエブWの幅方向Hの両側端部分Eを、押圧ローラ75によって所定圧力で押圧することがないので、繊維量の不安定なウエブWの幅方向H両側端部分を押圧したため、側端部分Eが回転体50に貼りついたり、こびりついたりして剥離し辛くなってしまうといった事態を回避できる。
【0078】
また、押圧ローラ75の幅方向Hの長さLrは、回転体50の下流側に設置された裁断部4において、ウエブWの幅方向H両側端部分Eが長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物7の幅方向Hの長さLsより、長く形成されているので、得られる裁断物7の品質を損なうことはない。
【0079】
押圧ローラ75によるウエブWの押圧時間が所定時間以上になり、押圧ローラ75の上流側に徐々に水分が滞留し、検出部76がウエブWの先端部分より後続の部分Kが押圧ローラ75の上流側で回転体50の周面から所定値以上離れ、たるみDが発生したことを検出すると、押圧制御部92は調整部77を制御する。そして、押圧制御部9は、押圧ローラ75の押圧力を弱くするよう制御することができる。
【0080】
具体的には、押圧制御部92は駆動部を所定量駆動する。駆動部の駆動に伴い、カム78が所定量回転すると、カムフォロア79が回転体50に対し離間する方向に移動する。カムフォロア79の移動によって、弾性部材81の圧縮された状態が緩み、軸受82によって軸支された押圧ローラ75によるウエブWの押圧力が所定量弱くなる。
【0081】
このように押圧ローラ75によるウエブWの押圧力を弱くした状態で、抄紙動作を継続する。所定時間経過後に検出部76がなおウエブWのたるみDを検出したままであると、制御部9は駆動部を再度駆動し、押圧ローラ75によるウエブWの押圧力がさらに弱くなるよう制御する。
【0082】
その後も同様に、押圧制御部92は、所定時間ごとに検出部76によるウエブWのたるみDの有無を確認し、これに基づき、駆動部を制御する。押圧制御部92は、検出部76がウエブWの回転体50の周面からのたるみDを検出している間、押圧ローラ75の押圧力を段階的に低下させる。そして、押圧制御部92は検出部76がこのたるみDを検出しなくなると、押圧力を弱くする場合とは逆の方法で押圧ローラ75の押圧力を段階的に強くするよう制御する。これより、ウエブWの押圧力を急激に低下、または上昇させることない。また、押圧ローラ75による必要な最低限の押圧力を維持しつつ、ウエブWの回転体50の周面からの剥離を自動で解消することができる。また、得られる裁断物7の平滑性が急激に変動するといったことはなく、高い品質を維持することができる。
【0083】
検出部76が回転体50の周面でのウエブWのジャムによる搬送不良を検出したとき、ジャム制御部91は、回転体50を逆方向に回転させるよう回転体50の動作を制御する。付着部67や離間部77、押圧ローラ75設置位置及びその周辺は、機構を構成する部品が相互に近接して設置されているために空間が狭く、ウエブWのジャムによる搬送不良が発生する危険性がある。更に、仮にウエブWのジャムが発生したために、回転体50の回転を停止した場合に、使用者が自分でジャムとなったウエブWを取り除くのも困難である。
【0084】
また、ウエブWのジャムが発生しているにもかかわらず、回転体50が停止されず、通常の回転を継続した場合には、ウエブWの先端部分Gが細く形成され、後続の部分Kが厚くなり全体が楔状となって、復旧の非常に困難な状況に陥ることがある。そこで、検出部76が回転体50の周面でのウエブWのジャムによる搬送不良を検出した場合、ジャム制御部91は、回転体50を逆方向に回転させるよう回転体50の動作を制御する。これより、ウエブWは回転体50の逆回転に伴って、上流側へ順次移動される。
【0085】
ウエブWの先端部分Gが支持ローラ611より上流側に逆送されると、ベルト48と回転体50の周面との間で挟持された状態から開放される。支持ローラ611設置位置より上流側は、付着部67や離間部77、押圧ローラ75設置位置よりも広い空間があるので、使用者は、容易に搬送不良となったウエブWを取り除くことができる。ウエブWのジャムに起因し、復旧の困難な状況に陥るのを回避できる。
【0086】
ウエブWは、加熱部62で加熱され、乾燥される。尚、回転体50は、温度センサ66によって温度が検出され、所定温度に維持されている。
【0087】
乾燥部15で乾燥されたウエブWは、剥離部55によってベルト48から剥離され、裁断部4に送られる。裁断部4に送られた帯状のウエブWは、裁断刃で所定のシートサイズに裁断されて裁断物7が完成する。その際、スリッターは、帯状のウエブWの幅方向両端部分Eを長手方向に沿って裁断する。カッターは、上直刃が下直刃に対し、上下動し、ウエブWを幅方向Hに沿って裁断する。裁断刃により裁断された裁断物7の端材は、端材回収箱に回収される。端材回収箱内の端材は、
図1に示すように再生パルプ製造部1に戻され、再度古紙原料として裁断物7の製造に利用される。
【0088】
以上より、ウエブの平滑化装置は、ウエブWを搬送するベルト48と、ベルト48により搬送されるウエブWを、ベルト48との間で、周面で挟持しつつ回転する回転体50と、回転体50に設けられ、ウエブWを加熱するための加熱部62と、周面の所定範囲で、ベルト48をウエブWから離間させる離間部71と、離間部71において、周面に対しウエブWを所定圧力で押圧する押圧ローラ75とを備えたので、ウエブWを押圧ローラ75によって押圧することで、容易にウエブWを平滑化することができる。また、簡単な構成なので装置の占有面積を小さくできる。
【0089】
また、押圧ローラ75は、ウエブWの長手方向に直交する幅方向Hに沿って延在し、押圧ローラ75のウエブWを押圧する押圧部85の幅方向Hの長さLrは、ウエブWの幅方向Hの長さLwより短く形成されるので、押圧部85によってウエブWの幅方向H両側端部分Eを押圧しない。よって、ウエブWの幅方向H両端部分Eが回転体50に貼り付いて剥離困難となるのを抑制できる。
【0090】
そして、押圧ローラ75は、ウエブWの長手方向に直交する幅方向Hに沿って延在し、押圧ローラ75の幅方向Hの長さLrは、回転体50の下流側に設置された裁断部4において、ウエブWの幅方向H両端部分Eが前記長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物7の幅方向Hの長さLsより、長く形成されるので、裁断により得られる裁断物7の平滑性が維持され、美しい仕上がりとすることができる。
【0091】
更に、ウエブWの搬送方向で離間部71より所定量上流側の位置に設置され、ウエブWの先端部分Gを周面に付着させる付着部67を備えたので、離間部71でベルト48がウエブWから離間しても付着部67によってウエブWの先端部分Gを回転体50の周面に確実に付着させることができ、押圧ローラ75によってウエブWを押圧し、平滑化できる。
【0092】
更に、付着部67は、ベルト48をかけ渡す一個のローラ49に設けられ、ローラ49は、周面に対向配置され、ローラ49にかけられたべルト48と周面との間に隙間Mが形成され、隙間Mの大きさは、ウエブWの先端部分Tより後続の部分Kの厚さより大きいので、ウエブWの先端部分Gをより確実に周面に付着させることができるとともに、ウエブWの後続の部分Kにベルト48の凹凸が形成されるのを抑制することができる。
【0093】
更に、ウエブWの異常な搬送を検知する検出部76を備えたので、検出部76によってウエブWの異常な搬送を検知できる。
【0094】
更に、検出部76が、周面でのウエブWのジャムによる搬送不良を検出したとき、回転体50を逆方向に回転させるよう回転体50の動作を制御するジャム制御部91を備えたので、ウエブWの先端部分Gを上流側へ逆搬送することで、適切にジャム処理することができる。
【0095】
更に、押圧ローラ75によるウエブWの押圧力を調整する調整部77を備え、検出部76の検出結果に基づき、調整部77を制御する押圧制御部92を備えたので、押圧ローラ75の押圧によってウエブWの異常な搬送が生じたときに、押圧力を調整することができる。
【0096】
更に、押圧制御部92は、ウエブWの先端部分Gより後続の部分が、押圧ローラ75の上流側で周面から所定値以上離れたことを検出部76が検出したとき、押圧ローラ75の押圧力を弱くするよう制御するので、ウエブWの搬送不良を自動で解消することができる。
【0097】
更に、ウエブWが所定割合の水分を含有するので、水分を含有するウエブWを押圧ローラ75によって押圧することで、ウエブWの平滑性を容易に向上することができる。
【0098】
更に、抄紙装置Qは、ウエブWの平滑化装置Qを備えたので、抄紙により得られる紙の平滑性を向上可能である。
【0099】
尚、上記各実施形態では、古紙再生処理装置100に脱墨部2を設けたが、脱墨部2を省略しても構わない。また、押圧ローラ75は、ウエブWの長手方向に直交する幅方向に沿って延在したが、長手方向に交差する方向に延在してもよい。また、押圧ローラ75のウエブWを押圧する押圧部83の幅方向Hの長さLrは、ウエブWの幅方向Hの長さLwより短く形成されたが、ウエブと同じ長さであってもよく、ウエブより長くてもよい。
【0100】
また、押圧ローラ75の幅方向Hの長さLrは、回転体50の下流側に設置された裁断部4において、ウエブWの幅方向H両端部分Eが長手方向に沿って裁断され、除去されて製造される裁断物7の幅方向Hの長さLsより、長く形成されたが、裁断物の幅方向長さと同じでもよく、短くてもよい。また、ウエブWの搬送方向で離間部71より所定量上流側の位置に設置され、ウエブWの先端部分Gを回転体50の周面に付着させる付着部67を備えが、付着部を設けなくてもよい。付着部を設けない場合、離間部を回転体の上部に設けることで、ベルトが回転体から離間しても、ウエブが回転体から離れないようにできる。
【0101】
また、付着部67は、ベルト48をかけ渡す一個のローラである支持ローラ611に設けられたが、ローラとは別に付着部を設けてもよい。また、支持ローラ611にかけられたべルト48と回転体50の周面との間に隙間Mが形成されたが、隙間はなくてもよい。また、隙間Mの大きさは、ウエブWの先端部分より後続の部分の厚さより大きく形成したが、ウエブの後続の部分の厚さと同じであってもよく大きくてもい。
【0102】
また、ウエブWの異常な搬送を検知する検出部76を備えたが、検知部を設けなくてもい。検知部は透過センサにより構成されたが、カメラを用いてもよく、押圧ローラの回転量を基にウエブの異常な搬送を検知してもよい。また、制御部は、検出部76が、回転体50の周面でのウエブWのジャムによる搬送不良を検出したとき、回転体50を逆方向に回転させるよう回転体の動作を制御するジャム制御部91を備えたが、ウエブの状態応じて、回転体の回転を停止するか、逆回転させず正方向へ回転してもよい。
【0103】
また、押圧ローラ75によるウエブWの押圧力を調整する調整部77を備えたが、調整部77はなくてもよい。また、制御部9は、ウエブWの先端部分より後続の部分が、押圧ローラ75の上流側で回転体の周面から所定値以上離れたことを検出部76が検出したとき、押圧ローラ75の押圧力を弱くするよう制御する押圧制御部92を備えたがが、ウエブの搬送開始からあらかじめ設定した所定時間経過後に押圧ローラの押圧力を弱くするよう制御してもよい。また、押圧力は段階的に弱くしたが、押圧力を弱くするタイミングをウエブの状態に合わせ、可変としてもよく、押圧力を弱くする量を可変としてもよい。
【0104】
ウエブWが所定割合の水分を含有したが、水分を殆ど又は全く含まない繊維の層であってもよい。また、ウエブの平滑化装置は抄紙装置の乾燥部に設けられたが、ウエブ形成部に設けてもよく、裁断部より下流側に設けてもよく、他の装置例えば、繊維圧縮物製造装置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0105】
H 幅方向、M 隙間、Q 抄紙装置、W ウエブ、4 裁断部、7 裁断物、48 ベルト、50 回転体、62 加熱部、67 付着部、71 離間部、75 押圧ローラ、76 検出部、77 調整部、85 押圧部、91 ジャム制御部、92 押圧制御部。