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特開2023-86489円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池
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  • 特開-円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池 図1
  • 特開-円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池 図2
  • 特開-円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池 図3
  • 特開-円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086489
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/152 20210101AFI20230615BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20230615BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20230615BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20230615BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230615BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/167
H01M50/188
H01M50/107
H01M50/184 D
H01M10/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201043
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】柴岡 浩行
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD15
5H011FF03
5H011GG02
5H011KK01
5H028BB01
5H028BB04
5H028CC08
(57)【要約】
【課題】 外装缶に対しかしめられるとき、ガスケットから抜け落ちない円筒形電池用封口体を提供する。
【解決手段】 円筒形電池用封口体は、円形を有する導電性の平板状の本体を有する。本体は、外装缶の底部と対向するように構成された内表面と、内表面の反対側の外表面とを有する。外表面の周縁部は、封止される外装缶の軸に対して、内表面の周縁部よりも離れて位置する。ガスケットは、短軸の円筒形を有して、外装缶と封口体との間に配置される。ガスケットは、外装缶のかしめ前状態において、本体の外表面と当接する当接部を有する。当接部は、内周面に嵌合された本体のガスケットに対する移動を抑制する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のガスケットに嵌合されて円筒形電池の有底外装缶の開口を封止する円筒形電池用封口体であって、
平らな円形を有する導電性の本体を有し、
前記本体は、前記外装缶の底部と対向するように構成された内表面と、前記内表面の反対側の外表面とを有し、前記外表面の周縁部は、前記本体の中心に対して、前記内表面の周縁部よりも離れて位置し、
前記ガスケットは、短軸の円筒形を有して、前記外装缶と前記本体との間に配置され、
前記ガスケットは、前記外装缶のかしめ前状態において、前記本体の外表面と当接する当接部を有し、前記当接部は、内周面に嵌合された前記本体の前記ガスケットに対する移動を抑制する、円筒形電池用封口体。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記円筒形の内周面において、円周方向に延びる環状の溝を含み、
前記溝のうち、軸と直交する方向に延在する側壁部が前記本体の外表面の縁部と当接する、請求項1記載の円筒形電池用封口体。
【請求項3】
前記側壁部は、前記外表面の周縁部と帯状に当接する、請求項2記載の円筒形電池用封口体。
【請求項4】
前記本体は、前記外表面が底面となり、前記内表面が天面となる円錐台形状を有する、請求項1から3のいずれか一に記載の円筒形電池用封口体。
【請求項5】
円筒形からなり、軸方向の一端が開口する開口端部と、他端部が閉塞された底部とを含み、内部に電極群及び電解液を収容可能な外装缶と、
前記開口端部を封止する円形の板状の封口体と、
前記外装缶の開口端部において前記外装缶の内周面と前記封口体との間に配置される絶縁性の環状のガスケットと、
を備え、
前記封口体は、前記底部と対向する内表面と、前記内表面の反対側の外表面とを有し、
前記外表面の周縁部は、前記外装缶の軸に対して、前記内表面の周縁部よりも離れて位置し、
前記ガスケットは、前記外装缶のかしめ前状態において、前記封口体の外表面と当接する当接部を有し、前記当接部は、内周面に嵌合された前記封口体の前記ガスケットに対する移動を抑制する、円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形電池用封口体および当該封口体を含む円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な電池として、円筒形二次電池があり、その中でもニッケル水素電池は、大容量で且つクリーンである等の理由によって、幅広い分野で利用されている。円筒形アルカリ二次電池では、円筒形の有底外装缶の開口端に、安全弁を備えた封口体を、絶縁性のガスケットを介して配置し、その後、外装缶をかしめて封口体にて開口端を閉塞する構成が一般的である。電池の製造工程では、封口体は、ガスケットに嵌合された後、ガスケットと共に電池缶開口端に配置される工程が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002-502087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封口体は、外周面が円筒形に成形され、封口体が嵌合されるガスケットの内周面も同様に円筒面を有している。当該構成では、外装缶をかしめるときにガスケットが変形すると、封口体がガスケットより外れてしまうことがあり、電池の短絡や外観不良が発生することがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、外装缶をかしめるときに、封口体のガスケットに対する移動を抑制する円筒形電池用封口体及び当該封口体を備える電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の態様に係る円形電池用封口体は、絶縁性のガスケットに嵌合されて円筒形電池の有底外装缶の開口を封止する円筒形電池用封口体であって、平らな円形を有する導電性の本体を有し、前記本体は、前記外装缶の底部と対向するように構成された内表面と、前記内表面の反対側の外表面とを有し、前記外表面の周縁部は、前記本体の中心に対して、前記内表面の周縁部よりも離れて位置し、前記ガスケットは、短軸の円筒形を有して、前記外装缶と前記本体との間に配置され、前記ガスケットは、前記外装缶のかしめ前状態において、前記本体の外表面と当接する当接部を有し、前記当接部は、内周面に嵌合された前記本体の前記ガスケットに対する移動を抑制する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、封口体は、外装缶へのかしめ前において、ガスケットの内周面に嵌合されると、ガスケットの当接部が封口体の外表面の周縁部に当接する。これにより、封口体のガスケットに対する移動が抑制されて、封口体とガスケットとが一体化される。従って、ガスケットに嵌合された封口体を外装缶の開口部内に配置して外装缶によりかしめるとき、ガスケットに力が作用しても、封口体のガスケットからの逸脱が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る円筒形電池を示す縦断面図である。
図2】ガスケットに封口体が嵌合され、かしめ前状態にある外装缶を示す模式図である。
図3】ガスケットに嵌合される前の封口体とガスケットとを示す図である。
図4】封口体がかしめられた状態の外装缶を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態に係る封口体及び電池を、添付図面を参照しながら以下に説明する。
1.電池の構成
図1に、本発明に係る一実施形態の円筒形電池として、ニッケル水素二次電池1を示す。
【0010】
電池1は、例えば高さが50.5mmで外径が14.5mmのAAサイズの円筒形電池であり、一端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備える。外装缶10は、ニッケルメッキ鋼板を多段プレスにより、一端が開口する開口端部10Aになると共に他端が閉塞された底部10Bとなる有底円筒形状に成形される。また、外装缶10の底壁の外面は、導電性を有した負極端子として機能する。
【0011】
外装缶10内には、略円柱状の電極群12がアルカリ電解液(図示せず)とともに収容されている。
【0012】
電極群12は、それぞれ帯状の正極板16、負極板18及びセパレータ20からなり、正極板16と負極板18との間にセパレータ20が挟まれて渦巻状に巻回されている。負極板18の一部分が、電極群12の最外周部に位置する。負極板18の最外周部が外装缶10の周壁の内面と接触することで、負極板18は、外装缶10と電気的に接続される。
【0013】
正極板16は、正極活物質が充填された帯状の電極である。一方、負極板18は、水素吸蔵合金からなる帯状の電極である。また、セパレータ20は、例えばポリオレフィン系繊維の不織布に親水基を付加したものからなり、アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液又はこれらの混合溶液が用いられる。
【0014】
外装缶10の開口端部10A近傍の正極板16に、集電タブ22の一端が電気的に接続され、集電タブ22の他端は、導電性を有する円形の封口板24に溶接されている。封口板24は、中央にガス抜き孔26を有し、封口板24の外面上にはガス抜き孔26を塞ぐようにゴム製の弁体28が配置されている。なお、封口板24は封口体または本体の一例である。更に、封口板24の外面上には、弁体28を覆うフランジ付き円筒形状の正極端子30が固定され、正極端子30は弁体28を封口板24に押圧している。
【0015】
ガス抜き孔26は、通常、弁体28によって気密に閉塞されている。一方、外装缶10内でガスが異常に発生し、その内圧が高まった場合には弁体28が圧縮されて、ガス抜き孔26が外部と連通するので、ガスが外装缶10から放出される。このように、封口板24、弁体28及び正極端子30は、安全弁を形成する。
【0016】
封口板24は、外装缶10の開口端部10Aに位置し、封口板24の外周面24Aと外装缶10の内周面10Cとの間には、絶縁性材料からなるガスケット32が挟まれている。封口板24及びガスケット32は、開口端部10A側の外装缶10の部分を、封口板24に向けてかしめることによって、外装缶10の開口端部10Aに固定され、開口端部10Aを閉塞する。ガスケット32は、正極端子30に接続される封口板24と、負極端子(不図示)に接続される外装缶10との短絡を防止するとともに、外装缶10からの電解液の液漏れを防止する。
【0017】
2.外装缶、封口板及びガスケットの構造
外装缶10は、一端が開口する中心軸X(以下、軸Xと称す)を有する内径Rの有底円筒形であり、図2に示すように、内周面10Cにおいて、開口端部10Aよりも僅かに底部10B寄りの部分に、内周面10Cから軸Xに向けて突出して内径を縮小させると共に円周方向に延びる封口板受部10Dが形成されている。封口板受部10Dは、外装缶10の開口端部10Aから挿入された封口板24が、外装缶内に配置される部分である。封口板受部10Dは、内径Rが、外装缶10の内径Rより小さく、且つ後述する封口板24の直径よりも小さい。
【0018】
封口板24は、図3に示すように、厚みWの導電性の平板からなり、本実施の形態では、厚み方向が軸Xと平行になる円錐台形状を有する。封口板24は、外装缶10の開口端部10Aに封止されるときに外装缶10の底部10Bと対向する内表面24Bと、内表面24Bと厚み方向に対して反対側にある外表面24Cとを有する。また、封口板24は、内表面24Bが円錐台形の天面となり、外表面24Cが円錐台の底面となる。すなわち、外表面24Cの周縁部24Dは、軸Xに対して、内表面24Bの周縁部24Fよりも離れて位置する。
【0019】
封口板24は、外装缶10に挿入したときに、封口板受部10Dに係止されるため、内表面24Bの直径Rは、封口板受部10Dの内径Rよりも大きい。従って、外表面24Cの周縁部24Dと内表面24Bの周縁部24Fとを接続する外周面24Aは、筒状であり、内表面24B側に仮想頂点を有する円錐面を形成する。外周面24Aは、外表面24Cと同じ半径を有する円板のC面取りによって形成しても良い。
【0020】
ガスケット32は、絶縁性の短軸の有底円筒形からなり、封口板24が嵌合された状態での外径Rは、外装缶10の内径Rより僅かに小さい。ガスケット32は、円筒面32Aと、外装缶10の底部と対向して中心が開口する底面部32Bとを有する。円筒面32Aは、その内周面32Cに、円周方向に延びる環状の溝32Dが形成される。溝32Dは、図3に示すように、円筒面32Aの軸と直交する方向と平行に面が延在する側壁面32Eと、側壁面32Eの径方向において軸Xから最も離れた部位P1と底面部32B内側の縁部P2とを繋ぐ傾斜面32Fとから構成される。側壁面32Eは、当接部の一例である。側壁面32Eの外径は、封口板24の外表面24Cの直径Rと同じRである。また、溝32Dの軸方向の幅Wは、封口板24の厚みWと同じである。溝32Dは、円筒面32Aの内周面32Cを底面部32Bの周縁部P2より径方向外方に向けてC面取りして形成することもできる。
【0021】
さらに、ガスケット32は、内周面32Cの、溝32Dに対して底面部32Bとは反対側に、軸Xに向けて緩やかに突出してガスケット32の内径を短縮させ且つ円周方向に延びる内径部32Gを有する。内径部32Gは、封口板24をガスケット32に嵌合させる過程における暫定的なシート部を構成する。この内径部32Gの内径Rは、封口板24の内表面の直径Rより小さい。なお、他の実施の形態において、ガスケット内周面の内径部32Gは、省略しても良い。
【0022】
3.外装缶の封止
電池1は、外装缶10の開口端部10Aより内部に電極群12を挿入した後、集電タブ22の一端を正極板16の所定部位に溶接し、アルカリ電解液を外装缶10内に注入する。
【0023】
封口板24は、図3に示すように、内表面24Bがガスケット32の底面部32Bと接触するように、ガスケット32の内周面32Cによって画定される空間に嵌合される。より詳細には、封口板24は、ガスケット32の底面部32Bに向けて押し込まれると、外周面24Aが内周面32Cの内径部32Gを乗り越える。さらに、溝32Dに外周面24Aが係合し、その結果、封口板24はガスケット32の内周面32Cに固定される。このとき、ガスケット32の溝32Dの側壁面32Eに、封口板24の外表面24Cの周縁部24D及び周縁部近傍が当接することにより、封口板24は、ガスケット32に固定されて一体化する。次に、集電タブ22の一端がガスケット32の底面部32Bを介して封口板24に接続される。その後、封口板24は、外装缶10内部に挿入され、図2に示すように、封口板受部10Dに配置される。
【0024】
次に、封口板24をかしめ固定するために、外装缶10の開口端部10Aの縁部を、治具によって、ガスケット32の円筒面32Aの開口端と共に軸X方向に向けて折曲する。外装缶10をかしめるとき、封口板24は、ガスケット32に嵌合して固定されているので、ガスケット32に変形が生じても、封口板24の外周面23Aがガスケット32の溝32Dより外れない。図4に、外装缶10をかしめて開口端部10Aを封口板24で封止したあとの外装缶10を示す。
【0025】
このように、外装缶10をかしめるときに、封口板24がガスケット32から外れないので、封口板24と外装缶10との接触、すなわち電極の短絡を防止できる。また、封口板24が外装缶10に対し予定した箇所に固定されるので、電池1の外観不良の発生も防止できる。
【0026】
4.実施例
上記実施の形態の封口板及びガスケットを有するAAサイズの円筒形電池を実施例として10,000本製造し、比較例として従来構成の封口板の外周面が円筒面であると共に溝の無いガスケットを有する従来構成のAAサイズの円筒形電池を10,000本製造して、外装缶10をかしめる時のガスケットからの封口板の外れの発生率を比較した。
【0027】
【表1】
【0028】
5.考察
表1から分かるように、実施例の電池では、封口板の外れは10,000本の製造では、全く発生しなかった。一方、比較例の電池では、封口板の外れは10,000本の製造では、2本の電池に封口板のガスケットからの外れや抜け落ちが発生し、その発生率は0.02%であった。電池は電源として汎用されている現状を考慮すると、実社会では、相当数の不良品の発生につながる。このように、ガスケットに封口板の外周面を係合させて固定することで、より高品質な電池の製造が可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1 電池
10 外装缶
10B 底部
10A 開口端部
24 本体(封口体)
24B 内表面
24C 外表面
32 ガスケット
32E 側壁面
32C 内周面
X 軸
図1
図2
図3
図4